自民 「自衛隊の明記」など憲法改正案の提示見送り

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自民 「自衛隊の明記」など憲法改正案の提示見送り

2018年12月10日 16時05分

国会では、会期末の10日、憲法審査会が開かれましたが、自民党が目指した「自衛隊の明記」など4項目の憲法改正案の提示は見送られました。また、審査会の幹事懇談会で、国民投票の実施に伴うテレビ広告の規制をめぐって、民放連=日本民間放送連盟は、CM量の自主規制は行わない考えを示しました。

国会会期末の10日、衆議院憲法審査会は、与野党が出席して開かれ、成立に至らなかった国民投票法の改正案を継続審議にする手続きを行いました。

この国会では、与野党の対立などから、実質的な審議は行われず、自民党が目指した「自衛隊の明記」など4項目の憲法改正案の提示は見送られました。

また、審査会のあとに開かれた幹事懇談会では、国民投票の実施に伴うテレビ広告の規制をめぐって、民放連=日本民間放送連盟から意見を聞き、民放連は、CM量の自主規制は行わない考えを示しました。

これに対し、自民党の幹事は「われわれは、憲法に自衛隊を明記する考えなどを表明しているが、広告を出す場合、どのように扱われるのか」などと、党の改正案に言及しながら質問しました。

与党側の筆頭幹事を務める自民党の新藤元総務大臣は、記者団に対し、「改正案の提示はしていない。改正案は、すでにさまざまな場所で明らかにしており、提示したとか、しないとかを論点にする必要はない」と述べました。
立民 山花憲法調査会長「今後は民放連の出席も」
衆議院憲法審査会の野党側の筆頭幹事を務める立憲民主党の山花憲法調査会長は、記者団に対し「民放連は『従前から量的な規制をやるという話はしていない』という説明だった。今後、与野党を問わず、しっかりと議論すべきで、民放連を憲法審査会に呼ぶ必要が出てきたのではないかと思う」と述べました。
共産 志位委員長「断念に追い込んだのは成果」
共産党の志位委員長は記者会見で「安倍総理大臣が『審査会で自民党の改憲案を提示する』と公言していたが、断念に追い込んだのは、最大の成果で、野党共闘と国民の世論の1つの勝利だ。ただ、今後も諦めないと思うので、手綱を引き締めて、手を緩めずにやっていきたい」と述べました。
維新 馬場幹事長「来年は議論深めたい」
日本維新の会の馬場幹事長は、記者会見で「来年の通常国会では、『職務怠慢』や『職場放棄』と言われないよう、審査会を開いて議論を深めていきたい」と述べました。

憲法の岐路 憲法審査会 合意の原則に反しては

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憲法の岐路 憲法審査会 合意の原則に反しては

強引に改憲を進めようとする安倍晋三首相の姿勢は、国民が政治に求めているものから懸け離れている。議論が進まなかったのはその帰結と見るべきだ。

衆参の憲法審査会が実質的な審議をしないまま今国会の日程を終えた。直接の原因は下村博文・自民党憲法改正推進本部長の発言だ。審査会開催に野党が消極的だとして「国会議員としての職場放棄だ」などと批判した。

立憲民主党など野党は反発し審議をボイコットした。衆院憲法審の森英介会長(自民)はその後、主要野党が欠席する中、審査会を会長職権で開催。火に油を注ぐ結果になった。

流れを追うと、安倍首相の姿勢が根っこにあって一連の無理押しにつながっていることが分かる。

首相が昨年の憲法記念日にビデオメッセージで、「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」と述べたのが始まりだった。最近は10月の会見で「自民党がリーダーシップを取り次の国会に改正案を出すべきだ」とハッパを掛けた。今国会の所信表明でも「国会議員の責任を果たしていこう」と述べている。

自民執行部は首相に合わせて憲法関連の党内人事を一新している。野党との協調を重視してきたメンバーに代えて、下村氏ら首相に近い議員を起用した。

下村氏の「職場放棄」発言は首相の意に沿おうとしたあまりの勇み足だったのだろう。執行部の狙いが裏目に出た形である。

そもそも自民党の改憲4項目、▽9条への自衛隊明記▽緊急事態条項▽参院選の「合区」解消▽教育充実―は党内事情や野党対策が優先された結果、全体の整合性が取れていない。いまなぜこの4項目なのか、説得力が乏しい。

各種世論調査を見ると、国民の多くは改憲を緊急テーマと見ていない。国民が求めるのは暮らしの安心である。改憲を急ぐ安倍政権の姿勢に無理がある。

審査会の前身である衆参の憲法調査会は与野党合意を重視する運営を続けてきた。5年間の審議を経て2005年4月に報告書をまとめ、発表している。調査会として一致できたこと、できなかったことを整理し、その後の議論のたたき台とした。

審査会の運営が広い合意を目指す原則に立ち返らない限り、議論の深まりは期待できない。国民の理解も得られないだろう。

(12月7日)