私と憲法32号掲載(2003年11月発行)


イラク派兵を許してはならない

イラクへの派遣予定の自衛隊員の家族や恋人によるメディアへの投書が多くなってきた。

朝日新聞の声欄には11月12日に「恋人に迫った派遣をやめて」(会社員 葛西裕美 札幌市 23歳)、11月16日には「自衛官の彼に別れを告げられ」(無職 上原理子 千葉県 34歳)という投書が載った。週刊誌の「週刊女性」や「SPA」なども自衛隊員の声や恋人・妻・家族などの声を取り上げている。平和運動関連のさまざまなインターネットのサイトにも自衛隊関係者からの書き込みが多く見られる。それらの中には「もし、夫がイラクで死んだら、私も生きる希望がないから死ぬつもりだ」というものまである。

葛西さんは「改めて小泉首相の無責任な発言に腹が立ちます。考えてみてください。とてもとても大事な人が戦地に行くのです。.....なぜ戦争が起きてしまったのか、なぜとめることができなかったのか、いろいろなことが頭をよぎります。昔、戦争を体験した人たちもこんな思いをしたのでしょうか。それならなおのこと、同じことをくりかえさないで、と思います。自衛隊のイラク派遣、本気でやめて下さい」という。

この国はいま決定的な曲がり角にさしかかった。かつて小沢一郎が自民党の幹事長だったころ、「普通の国」を目指すといった。これは欧米諸国並みの「普通の帝国」のことだ。明治期の日本は1874年の北海道屯田兵で国内植民地支配を開始し、台湾出兵も行った。以来約70年、1945年までの近代史は「普通の国」を目指し、それに追いつこうとした侵略戦争の歴史だった。そして45年から今日まで、不戦・非武装の憲法をもつ「普通でない国」の約60年は「普通の国」を目指す勢力と、それに反対する勢力のせめぎあいの歴史だった。いま、小泉内閣と財界などはこの歴史を清算して、日本を新たな「普通の国」=帝国に変貌させようとしている。日本資本主義の近現代史の第3段階をこのように塗り替えることを許していいものか。これは、いまを生きる私たちに問われている歴史的な問題だと思う。

「帝国」をめざす勢力にとって、憲法の3原則は邪魔だ。2005年には自民党の改憲草案を作るという。歯噛みして引退した中曽根元首相は来年にも彼の改憲案を作るという。次の通常国会では憲法改悪のための国民投票法案と、それに伴う国会法の一部改定案が出されるようだ。国会では改憲反対の立場をとる社民党と共産党への攻撃がすさまじい。私たちはいま、この憲法の明文改憲という歴史の逆流に大手を広げて立ちはだかる。かつて無法なファシズムの台頭に「ノー・パサラン(やつらを通すな)」と立ち上がったスペインの市民たちの勇気にならわなくてはならない。「改憲派を通すな」の思いをしっかりと確認したい。

すでに始まった市民8団体呼びかけの9条改憲阻止の全国署名運動を成功させよう。また私たちは近く「改憲のための国民投票法案」阻止の共同声明運動を提唱する予定でいる。読者のみなさんのご協力をお願いしたい。「自衛隊のイラク派遣、本気で止めてください」の叫びを私たちは本気で受け止めなくてはならないと思う。「時はいま」ではないか。
(事務局・高田健)

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11・3憲法集会を作り上げた改憲反対の共同への思い

憲法公布57周年にあたる11月3日午後、都内で「11・3憲法集会」が開かれた。この集会はこの間、改憲反対の共同行動を強めてきた市民団体~アンポをつぶせ!ちょうちんデモの会、「憲法」を愛する女性ネット、憲法を生かす会、市民憲法調査会、STOP!改憲・市民ネットワーク、全国労働組合連絡協議会、日本消費者連盟、日本山妙法寺、日本YWCA、VAWW-NET Japan、ピースアクション21、ふぇみん婦人民主クラブ、平和憲法21世紀の会、平和を実現するキリスト者ネット、平和をつくり出す宗教者ネット、許すな!憲法改悪・市民連絡会の18団体が実行委員会を結成し、開催したもの。

受付や書籍販売のスタッフのみなさん、会場警備を担当した全労協の皆さん、朝早くからリハーサルをしてがんばった朗読劇の皆さんや、ミニ・ピースコンサートのみなさんなど、大勢のスタッフの協力で集会は始まった。開会間もなく集会会場は参加者でいっぱいになり、参加者は510人を数えた。

司会はキリスト者平和ネットの西原美香子さんと市民連絡会の土井登美江さん。集会冒頭に実行委員会を代表して市民連絡会事務局長の内田雅敏弁護士が力強く開会挨拶をした。門間幸枝とピースシンガーズのミニミニ・コンサートは会場にさわやかな雰囲気を作ってくれた。イラクから帰ってきたばかりの日本国際ボランティアセンターの原文次郎さんのイラク報告、民間航空機のパイロットで航空安全会議議長の大野則行さんの有事法制に反対する運動の報告と、充実したプログラムがつづいた。

来日中で帰国を延期して講演に立ったノーマ・フィールドさんのお話は参加者に共感と感動をよんだ。朗読劇「悪魔のささやき」は日本YWCAの俣野尚子さんの脚本・演出で、実行委員会スタッフの出演だった。小森陽一さんの講演は力強く、今日の憲法問題を鮮明させてくれた。特別報告の大内裕和さんはときおり笑いを誘いながら教育基本法改悪の狙いを暴露した。最後に事務局から許すな!憲法改悪・市民連絡会の高田健さんが今後の憲法改悪反対運動の方向について問題提起した。以下はその要旨。

政府が進めようとしているイラクへの自衛隊派兵は、憲法を踏みにじる暴挙であり、アメリカの無法な戦争に加担するもので、国の進路を誤らせる暴挙だ。総選挙と、その後の活動を通じてなんとしても阻止しよう。イラク派兵の動きと並行して、憲法改悪の動きが強まっている。これに反対する共同の行動を強めたい。すでに2004年5・3憲法集会実行委員会事務局は活動を再開した。8団体で構成されているが、ここがいま「憲法改悪に反対し、9条をまもり、平和のために生かす全国署名運動」を呼びかけた。来年5月3日までを期限とする署名運動で、目標は数百万人としている。同時に、改憲反対のポスターやロゴマークも公募している(応募要項P10参照)。改憲の国民投票法など、危険な政治的動きに対しては共同で院内集会なども開くことになっている。これらの共同行動の積み上げの上に、近い将来、もっとも広範なネットワークを作って、憲法9条改悪反対の5000万人署名運動なども提起できるようにしたい。この場から、改憲阻止の共同行動を出発させよう。

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