2000年5月3日憲法集会

2000 私と憲法のひろば報告(2000年5月3日)

五月三日の憲法記念日に東京・両国の江戸東京博物館で行われた集会、「私と憲法のひろば」にはさまざまな市民団体などの呼びかけで、六百五十人以上の人びとが集まり、憲法改悪阻止の決意を誓い合った。これは今年で四回目になるこの「ひろば」ではもっとも多い参加者で、人びとの時代に対する危機感を反映したものとなった。

集会では三人の講師の講演やアトラクションの和太鼓演奏、イラスト展示「I LOVE 憲法」、各政党のあいさつ、他の集会からのメッセージ、いくつかの市民運動体からの活動報告など、多様な催しが行われ、入口での書籍などの物販も人びとでにぎわった。この集会全体を通して手話通訳のスタッフがついた。

冒頭、実行委員会を代表して、「許すな!憲法改悪・市民連絡会」事務局の高田健さんが集会の基調を次のように提起した。

憲法調査会の発足を契機に、国会だけではなく、さまざまなメディアでも改憲論が横行している。これほどの改憲論の横行はかつてなかった事態だ。読売は本日の新聞で「読売新聞社第二次試案」を出した。九四年の改正案よりいっそう反動的になった。前案の自衛のための「組織」は自衛のための「軍隊」に明示され、「緊急事態」条項を新設し、人権よりも「国の安全や公の秩序」を重視するという方向を明示した。

日本最大の読者数を誇る読売が九四年から系統的に改憲論を振りまき、自民党や他の政党の一部がこれに呼応して改憲議連を作り、そして昨年憲法調査会の設置を強行、今年の通常国会から憲法調査会が動きだした。

昨年、私たちはこの場で「許すな!憲法改悪・市民連絡会」を結成した。その時に私はある新聞が「憲法調査会などそう簡単にできない」と主張していたことにたいして、その根拠は何もない、新聞がこういう予測をながすこと自体が、結果として憲法調査会の設置に利することになる。その場合、どのように責任をとるのかと問うた。不幸にも危惧は的中した。このように、概していわゆる「護憲派」などに改憲への危機感が薄いとはいえないだろうか。

この国では九条を変えてはならないという人たちは多い。しかし、その多くが本当に九条が改憲されてしまう危機が来ているという認識にはない。まだ私たちはそれらの人びとと気持ちを同じくすることに成功していない。

市民連絡会は微力だが、このために多くの人びとの連携を呼びかけて来た。まだ大きな仕事がわたしたちの前に待っている。

この三~五年で改憲問題の当面の帰趨が決まる。国会の力関係を打ち破っていくのは院外の民衆運動以外にない。いま市民運動は全力をあげて奮闘する時だ。この期を逃しては悔いを千載に残すことになる。

だからこそ、昨年までの運営と少し変えて、この実行委員会は市民団体という性格でありながら、本日は改憲反対の政党、社民党、共産党、沖縄社会大衆党、新社会党を招いて、あいさつをいただくことにした。また、本日、私たちから申し入れをして、いま別々に集会を開いている他の護憲団体、とくに共産党系と言われる「憲法改悪阻止各界連絡会議(憲法会議)」と連合系と言われる「フォーラム平和・人権・環境」の皆さんからもメッセージをいただいた。今後、本格的に連携して改憲阻止の一大運動をひろげなくてはならないという思いからだ。

本日ここに集まった私たち一人ひとりは小さな市民団体や個人のネットワークだが、たぶん私たちにできることがある。九条改憲を許さない、憲法改悪を許さない大きなひろいネットワークをつくるうえで、わたしたちも重要な役割を果たさなくてはならない。昨年からの流れの中でそれをつよく感じている。

このネットワークで、昨年の第百四十五国会での悪法目白押し状況と闘ってきた。憲法調査会は作られてしまったものの、運動の中で市民のネットワークは広がり、今後の運動に展望を開いた。市民連絡会は新崎盛暉さん、暉峻淑子さんに共同代表を引き受けていただいているし、もう一人の共同代表の奥平康弘さんとは、先日、憲法調査会市民監視センターを発足させることができた。

この厳しくなりつつある時代に、私たちは反撃の足場をつくりつつあると思う。しかし、それだけでは足りない。今日、この場にきていて、こころざしを同じくする人はぜひ市民連絡会に加わって協力していただきたい。

改憲派はこれから三~五年で改憲をすると言っている。再び日本が本格的なアジア侵略に乗り出すことがないように、「新しい戦前」状況を「新しい戦前」ではなくするために、今日の広場を成功させることを契機にして、ともに頑張りたいと思う。

多彩なプログラム

つづいて、沖縄から新崎盛暉・沖縄大学教授が講演し、現在の沖縄の状況を中心に報告し、角田由紀子弁護士が女性の人権問題と憲法について報告した。

写真 和太鼓演奏のグループ「TAWOO」は、女性を中心に十一人の打ち手が登場、琉球太鼓のアレンジをはじめ、多様な、力強いプログラムの演奏を行い、会場の拍手を呼び起こした。

メッセージはアメリカのオハイオ大教授のC・オーバービーさん、フォーラム人権・平和・環境、憲法会議から寄せられた。

山内敏弘・一橋大学教授は憲法状況とそれへの対応について講演した。

政党からの連帯あいさつでは、共産党の佐々木陸海衆議院議員、社民党の星野・平和人権環境委員長、新社会党の栗原前参議院議員が発言し、沖縄社会大衆党の島袋委員長がメッセージを寄せた。

市民運動からの連帯あいさつとして、キリスト者平和ネットの大津健一さん(日本キリスト教協議会総幹事)、憲法調査会市民監視センターの内田雅敏さん(弁護士)、自公保ストップ首都圏ネットの古沢くみ子さん(北区区議)が発言した。

憲法のイラスト展示では参加者が休み時間に投票した結果に基づいて「私と憲法のひろば」賞も発表された。

集会は最後にアピールを採択した。

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