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東京新聞【社説】憲法審査会 改憲を前提とせずに
2016年11月25日
憲法をめぐり、国権の最高機関である国会で議論を深める意義は理解するが、必要のない改憲にまで踏み込んではならない。まずは改憲を前提とせず、全国民の代表として議論を尽くすべきだ。
衆院できのう憲法審査会が開かれた。約一年五カ月ぶりに議論を再開した十七日に続き、この臨時国会二回目である。審査会は参院でも十六日に開かれている。
きのうの衆院の審査会では立憲主義、憲法改正の限界、違憲立法審査の在り方について、各党が自由に意見を述べ合った。
民進党の枝野幸男憲法調査会長は、自民党が野党時代の二〇一二年に作成した改憲草案について「立憲主義に反し、憲法を統治の道具であるかのごとく考えている。立憲主義を踏まえたものと(自民党が)認識しているのなら建設的な議論は困難だ」と批判。
これに対し、自民党の中谷元・前防衛相は「人権を保障するために権力を制限する立憲主義の考え方を何ら否定するものではない」と反論した。
自民党の改憲草案は天皇元首化や国防軍創設など国民主権、平和主義の観点から問題が多く、全国民に憲法尊重義務を課すなど立憲主義に反する内容が盛り込まれている。家族の協力義務を定めるなど復古的で時代にもそぐわない。
自民党は憲法審査会の再開に当たり、改憲草案をそのまま提案することは考えていないとして事実上封印したが、草案の考え自体を放棄したか否か明確ではない。
憲法は国の最高法規である。改正は全国民の代表である国会議員の幅広い賛同が前提だ。少なくとも、野党第一党の賛同を得られないような改憲案は、たとえ衆参両院で三分の二以上の賛成が得られるとしても、発議すべきでない。
改憲草案の考え方に、民進党が賛同していない以上、草案自体が憲法論議を深める障害になっていることは否定できまい。建設的な議論のためにも、自民党は撤回するのが筋ではないか。
今国会における衆参三回にわたる憲法審査会での議論で明らかになったのは、改憲に前のめりな自民党の姿勢である。
現行憲法に著しい不備があり、国民の間から改正を求める意見が澎湃(ほうはい)と湧き上がっているのならまだしも、そうした状況でないにもかかわらず、改憲を強引に推し進めるのなら「改憲ありき」との誹(そし)りは免れまい。
「改憲のための改憲」には反対だ。何度でも強調しておきたい。