声明・論評

私たちは自衛隊イラク派兵特措法の2年延長に反対します。イラク特措法を廃止し、自衛隊をイラクとインド洋からすぐ撤退させるよう求めます

内閣総理大臣 安倍晋三様
防衛大臣   久間章生様

WORLD PEACE NOW
2007年5月19日

5月14日、衆議院の特別委員会で自衛隊のイラク派兵を2年間延長するための「イラク復興支援特別措置法」(以下イラク派兵特措法)の改悪案が与党の賛成で可決され、15日の本会議で可決されました。

ブッシュ米大統領が主導したイラク侵略戦争と占領に反対してきた私たちWORLD PEACE NOWは、自衛隊をイラク占領軍の一員として継続的に参加させるイラク派兵特措法の改悪に反対し、航空自衛隊をイラクからただちに撤退させることを強く求めます。合わせて、アフガニスタンで現在も継続している多国籍軍による戦争と占領を支援するためインド洋に配備されている海上自衛隊をただちに帰還させることも求めます。

開戦以来4年以上が経過したイラク戦争は、もともと国際法にも国連憲章に違反したものでした。さらにブッシュ大統領が開戦の口実にした「フセイン政権とアルカイダとの関係」や「イラクによる大量破壊兵器の保有と使用の脅威」もまったくの虚偽であったことは、当のブッシュ政権も認めています。アメリカ、イギリスとともに「有志連合」の一員として戦争・占領に参加した諸国も次々とイラクから撤退しています。米国でも来年までに軍隊を撤退させる法案が議会で成立しています。しかしブッシュ政権は、こうした人びとの願いを踏みにじり、今年になって3万人に上る軍隊を増派しました。「武装勢力掃討」を名目にしたこの増派によって、戦闘はさらに激化し、治安はますます悪化し、イラクの人びとの苦しみは言語に絶するものになっています。それればかりではありません。ブッシュ政権はイランへの新しい軍事攻撃の準備を進めています。

小泉前内閣は、開戦直後にアメリカの戦争への支持を表明し、憲法に明白に違反するイラク派兵特措法を成立させ、自衛隊をイラクに派兵しました。小泉内閣を継承した安倍内閣も、国際的にその誤りが明確になったイラク戦争と占領を支持し、自衛隊イラク派兵をさらに2年間も継続させようとしているのです。

イラクでは数万人とも数十万人とも言われる一般市民がこの戦争で殺されました。さらに住む家や地域を破壊され、国内・国外に難民として脱出しなければならなかった人びとも数百万人に上ります。米兵の死者も増えつづけ4月には3300人を超えました。

米軍のイラク占領は一般市民の虐殺、アブグレイブ刑務所での拷問・虐待など数多くの戦争犯罪を伴っています。私たちは、この現実をしっかり見据える中から、「武力で平和はつくれない」ことを改めて確認しています。

安倍政権と防衛省は、自衛隊のイラク派遣は「人道復興支援」のためであると強調してきました。しかし事実はどうでしょうか。航空自衛隊の輸送機がクウェートの基地からイラク各地に輸送している物資・人員の9割が国連の活動や「人道支援」のためではなく、米軍を中心にするイラク占領軍の軍事作戦のために使用されていることが明らかになっています。「治安維持」「安全確保」という名でイラク市民を殺害するための兵員や武器の輸送のために航空自衛隊の輸送機が使われているのです。

安倍首相は国会答弁の中で「中東地域から石油資源の9割近くを輸入している日本にとって、湾岸・中東地域の平和と安定は死活的に重要」と、この戦争が「石油のための戦争」であることを認めました。こうした戦争のために人びとを殺し、殺されることはゴメンです。イラクの平和と復興のためには、何よりもこの悲劇をもたらしている最大の原因である占領をただちに終わらせることが前提です。

自衛隊のイラク派兵は、米国の世界規模での戦争に自衛隊を全面的に参加させるための踏み台でした。海外派兵を本務とする自衛隊法の改悪、防衛庁の省への昇格、そして現在、参議院で審議されている米軍再編特措法案による日米の軍事一体化にもこの動きが現れています。安倍内閣は改憲手続き法を成立させ、9条改憲への動きをスピードアップさせるとともに、現憲法の下で禁じられていた「集団的自衛権」の行使を認める「有識者懇談会」を設置しました。今回上程されたイラク派兵特措法の2年延長もその流れの中に位置しています。

私たちは、戦争と占領をただちにやめ、イラク派兵特措法の2年延長法案を廃案にすることを、再度、訴えます。航空自衛隊をイラクからすぐ戻せ、海上自衛隊はインド洋からすぐ戻せ。イラクの人びとによる平和と復興のための国際的な支援は、そこから始まるのです。

WORLD PEACE NOW
東京都千代田区三崎町3-21-6-301 (市民連絡会)
TEL 03-3221-4668 FAX 03-3221-2558

このページのトップに戻る
「声明・論評」のトップページに戻る