声明・論評

アメリカ合州国大統領
バラク・フセイン・オバマ・ジュニアさま

私たちはシリアへの軍事攻撃に強く反対します

アメリカ合州国政府は、シリアにおいて化学兵器が使用され、多数の市民の死傷者が出たことを理由に、シリアへの空爆を行う方針であるとの報道に、私たちは深い危惧の念を抱き、無謀な軍事介入をしないよう強く求めます。

言うまでもなく、私たちも化学兵器の使用には強く反対しています。それは国際法違反であるだけでなく、無差別に多数の罪のない市民の生命と健康を奪う非人道的な行為だからです。

現在、シリアでは国連調査団が、化学兵器の使用の有無や使用した者の特定のために活動してきました。国際社会は、調査団の報告を待ち、まず事実を知ることが必要です。そして責任者が明らかになれば、いかなる方法でその責任を問うかを国連安保理で議論すべきです。人道に対する罪は、それが政府当局者や軍人によるものであれ、国際刑事裁判所(ICC)で裁くことができるし、そうすべきです。

しかし、調査団の報告を待つこともなく、証拠も確実でない段階で、いくつかの情報や推測に基づいてアサド政権によるものと断定し、しかも「懲罰」として武力攻撃を加えるのは、その行為自体が国際法と国際秩序を無視したものです。もし合州国政府が証拠を持っているのなら、全世界に提示すべきです。ブッシュ大統領時代に、「イラクは大量破壊兵器を保有し、テロリストと深い関係にある」との虚偽に基づき、国連調査団の報告を待つことなくイラク攻撃に踏み切った誤りを犯してはなりません。

また、懲罰的空爆は、いくつかの軍部隊や基地に打撃を与えることができるでしょうが、化学兵器は移動可能なうえに、それを破壊すれば逆に被害を拡大させることになります。それを避けるしかない空爆は、象徴的なものにとどまり、根本的解決にはつながりません。

さらに、私たちが最も恐れていることは、空爆により罪のない市民にさらに犠牲が出ることです。あなた方は、「それは正義のための行動の副次的被害だ」と言うでしょう。しかし、生命を奪われる一人ひとりの市民、一人ひとりの子どもにとっては、断じて「副次的被害」などではありません。あなたは、これら犠牲者に責任が取れますか?

シリアにおいては、世襲された独裁体制の下で多くの民衆が苦しんできました。それからの解放を求める反政府運動が発展し、シリアは内戦状態にあります。この困難な状況の中で、国際社会の使命はあくまで平和の回復をめざし、一日も早く政治的解決をはかることにあります。この点では私たちは、安保理常任理事国の意見が一致していないことを危惧しています。5大国は、すべてに優先して政治的解決の道を探る義務があります。それも行わないままに武力攻撃を行うことは、政治的解決の可能性を失うことになりかねません。

 最後に、安倍首相などは「いかなる場合にも化学兵器の使用は認められない」と発言しました。しかしその政府は、化学兵器に勝るとも劣らぬ非人道的な核兵器は、「使用が必要な場合がある」と公言しています。「人道」の仮面をかぶった、このような二枚舌は、断じて受け入れられません。
私たちは、この緊急の事態にあたり、米欧諸国が軍事攻撃を始めないよう強く要求します。

2013年8月30日
WORLD PEACE NOW 実行委員会
03-3221-4668 fax03-3221-2558

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