声明・論評

全国各地の原発立地自治体の首長への要請

まず、昨年3月11日の東日本大震災およびそれに伴う福島第一原発の過酷事故により被災された方々、失われたかけがえのない多くの命に、心からのお見舞いとお悔やみを申し上げます。

さらに、被災者のために力を尽くしてこられた自治体首長のみなさま、とりわけ被災市町村の方々の、困難を乗り越え、復旧にむかう御努力に敬意を表します。

福島原発の爆発事故は、大量の放射性物質を原子炉外に拡散させ、福島の人びとからふるさとを奪い、また多くの人びとの生活を破壊し、地域と自然環境に甚大な被害をもたらしました。そのうえ事故は現在も進行中で、汚染が今後どのように地域と人体に影響を与えるかもわからないまま、私たちは健康と将来への不安の中に生きることを余儀なくされています。

このような悲惨をけっして繰り返さないように、私たち9人は昨年6月、原子力発電に頼らない社会を目指して、「『さようなら原発』1000万人署名」と脱原発のための5万人規模の集会を呼びかけました。集会は昨年9月19日に開かれ、東京の明治公園に6万人を超える人々が集まり、脱原発の意思を力強く表明しました。また1000万人署名も大きな広がりを見せています。

日本政府は、原発に依存しない社会をつくるとして「エネルギー基本計画」を今春にも示し、国民的議論を展開するとしています。しかし、一方で原発の稼働期間を事実上60年に延長することを可能にする「原子炉等規制法改正案」の提出や停止原発を稼働させるための「安全評価(ストレステスト)」の容認など、無反省に、事故前の状況に回帰しようとしています。

しかし、福島原発の事故とその後の顛末から明白になったことは、「安全な原子力発電」などというものはあり得ないという厳然たる事実です。つまり核と人類は共存できないのです。終末的災厄をようやく生き延びた私たちが、ふたたびこの地震頻発国で自滅を図るような行為は許されません。

地域住民の生活と命の安全を守るために、日夜こころを砕いておられるみなさま。命に勝る経済効率などはないことをご賢察ください。いま停止中の原発の稼働を認めず、行き場のない使用済み核燃料をこれ以上ふやさないようにしてください。

今回の事故で地震にもっとも弱いのが使用済み核燃料プールであることが周知されました。決して再稼働を認めることなく、代替エネルギーの道をともに考え、原発のない社会へむかいましょう。みなさまの再稼働を認めない慎重な姿勢は、日本中ばかりか、世界の人びとの支持と信頼を勝ち得ております。これは誇るべき決意です。

さらに今後も、原発に依存しない社会を実現させ、地域のひとたちを安心させ、新時代にむかって歴史をつくる、強い指導力を発揮されんことをお願い申し上げます。

(原発立地県知事・市町村長名)殿

2012年2月8日
「さようなら原発」一千万人署名市民の会

呼びかけ人
内橋 克人(経済評論家)
大江健三郎(作家)
落合 恵子(作家)
鎌田  慧(ルポライター)
坂本 龍一(音楽家)
澤地 久枝(作家)
瀬戸内寂聴(作家)
辻井  喬(詩人・作家)
鶴見 俊輔(哲学者)

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