声明・論評

千葉大学の栗田禎子教授が南スーダン外相あてに手紙を出しました。大変参考になると思われますので、ご紹介致します。できれば同様のメッセージや手紙を、多くのみなさんに南スーダン政府に寄せて頂ければ良いかもしれません。
(インターネットで the Republic of South Sudan と検索すると公式サイトがあり、Contact usというアドレスから連絡もできるようになっています)。

南スーダン共和国外相への手紙(自衛隊派遣問題)

南スーダン共和国 外務・国際協力担当大臣閣下

まず初めに、南スーダン共和国が今年七月、神聖な権利である自決権の行使の結果、誕生したことをお祝い申し上げます。貴国に明るい未来が訪れ、人々が平和と民主主義と繁栄とを享受することをお祈りします。

日本政府が南スーダンにおける国連PKO(UNMISS)への自衛隊部隊派遣を計画していることが報じられています。しかしながら、日本の市民の多くは、以下のような理由から、これが両国間の友好関係を開始するのにふさわしい方法であるとは考えていません。

1.日本の軍国主義的・拡張主義的過去に対する真剣な反省の結果として生まれた日本国憲法は、その第9条において、戦争の放棄、戦力の不保持を明確に定めています。自衛隊(それは1950年代のアメリカの東アジアにおける軍事政策の結果として作り出されたものです)の存在はこの原則と矛盾しており、その正統性をめぐっては多くの議論がなされてきました。自衛隊の法的地位は、日本政治において依然センシティヴな問題でありつづけています。

自衛隊の海外派兵はといえば、これは一層センシティヴな問題です。日本政府は1990年代以降、主としてアメリカの圧力のもとに、さまざまな名目で自衛隊の海外派兵を拡大することをめざしてきましたが(時には国連PKO参加の名目で、またある時はイラク占領軍の一部として)、日本の市民の多くは、日本は平和憲法の原則を堅持すべきだという考えから、この政策に反対してきました。

2.上記のような批判をかわすため、日本政府は今回の南スーダンへの自衛隊派遣に関しては、自衛隊は安全な地域(ジュバなど)で、もっぱら川港や道路建設等の非軍事的・人道的活動に従事するのだ、と説明しています。だとすれば、しかしながら、なぜ軍事組織を送る必要があるのか、なぜ文民ではだめなのか、という疑問が生じます。

ご存じのように、南スーダンでは既に多くの日本のNGO等が住民の福利や社会・経済的状態の改善のために活動しています。日本政府に求められているのはそのような活動を励まし、推進することであって、軍隊を送ることではありません。言うまでもなく、外国軍の存在は(たとえ平和的な名目であっても)一国の主権に対する潜在的脅威となります。

3.南スーダンへの自衛隊の派遣は、より広い文脈では、東アフリカおよび「アフリカの角」地域に対する先進諸国の関心の高まり(その背景にはこの地域の経済的・戦略的重要性があります)のなかに位置づけられます。日本は既に「海賊対策」という名目でソマリア沖に海上自衛隊を派遣しており、さらにこの作戦の一環としてジブチに陸上基地も建設しています。また、将来的には日本がこの地域において、アメリカの「アフリカ軍」との緊密な協調関係のなかで活動することになることも予想されます。過去においてアフリカの植民地や収奪を引き起こしたのは、まさに先進諸国のこのような経済的・軍事的野心だったということを忘れてはなりません。さまざまな形の植民地主義・新植民地主義によって翻弄され、辛酸を嘗めてきた南スーダンのような国は、諸外国が抱く関心の背景に充分に注意を払い、自国民の権利を守るために全力を尽くす必要があると考えられます。

以上の理由から、自衛隊の派遣という日本政府の提案を受け入れる前に、その背景を注意深く検討して頂きたいと思います。日本政府に対し、人道的支援は歓迎するが、これは文民によってできることであり、自衛隊の存在は必要ない、と伝えてください。

両国間の関係は、友情と相互信頼に基いた、より健全で平和的な形で開始されるべきと考えます。

2011年10月27日
栗田禎子(千葉大学教授)

このページのトップに戻る
「声明・論評」のトップページに戻る