第179臨時国会が10月20日から始まった。冒頭の両院の本会議で憲法審査会の委員の選出が行われ、その後、衆議院は大畠章宏(民主)を会長に50名で、参院は小坂憲次(自民)を会長に45名で審査会を構成した。これで改憲原案が審議できる場が整ったことになる。永田町は改憲の階段をまた一歩、登った。
この選出過程は極めて異常であった。もともと改憲手続法の制定過程で民主党は憲法審査会の設置に消極的であり、先の第178臨時国会においても、野田佳彦首相は、「(憲法改正について)政治家個人としての持論はあるが、首相の立場として憲法を順守し、現行憲法下で最善を尽くす」とのべ、「震災復興など喫緊の課題が山積し、憲法改正が優先課題とは考えていない」と答えていた。
従来の党の方針を覆し、直近の首相発言の舌の根も乾かないうちに、国会での野党(自民・公明)対策と称して、共産党、社民党の反対を押し切って、憲法審査会の委員の選出を強行した。国会で、直接憲法問題にかかわる委員会の設置を自公民による多数決で決めるということは異常なことであり、許し難い暴挙である。私たちは心からの怒りを込めて抗議する。
選出された委員の顔ぶれをみると改憲派が圧倒的に多い。会派別には、衆議院の幹事は民主7名(会長含)、自民2名、公明1名、委員は民主25名、自民10名、公明共産、社民、みんなの党、国民新各1名。参議院の幹事は民主4名、自民4名(会長含)、公明、みんな各1名、委員は民主15名、自民12名、公明3名、みんな、共産、日改、社民、国民各1名である。もしも民自公が何らかの改憲で合意すれば、憲法審査会は改憲原案を決定できることになる。野田首相が「大連立」志向を持った政治家であることや、衆参の与野党議席のねじれから民主党が議会対策でたえず改憲政党の自民党の要求に引きずられる立場にあることを考慮すれば、その危険性は油断ならないものがある。
野田佳彦首相は就任直後のオバマ米国大統領との首脳会談で「辺野古新基地の促進」と「TPP(環太平洋経済連携協定)の早期結論」を要求されると、11月のハワイでAPECの場での再度の日米首脳会談に宿題を間に合わせようとするかのように、閣僚級の要人の沖縄訪問がひんぱんに行われ、民主党内ではTPPへの参加の検討が強引に進められている。懸案の「原発」対処も、菅前首相の「脱原発依存」からの転換に踏み出した。放射能被害が首都圏にまで拡大していることが明らかにされているなか、首相の感覚は何万、何十万、何百万もの被災者・住民の意識からまったく離れている。さらに米国の要求に応えて、前原政審会長は武器輸出3原則の緩和を言い、首相も見直しは必要だと呼応した。南スーダンへのPKO派兵も準備されている。財務相は来年の通常国会での消費税増税を公言している。
これらのいずれもが憲法の理念に反する悪政である。東日本大震災と原発震災によって、幾多の人びとが生命と生活を脅かされている下で、いま緊急に必要な課題は改憲どころか、憲法の遵守であり、25条や13条などの実現である。
私たちは民自公など各党による改憲のための憲法審査会の始動という暴挙を糾弾し、今後の審査会の動向をしっかり監視し、憲法改悪に反対する闘いを、共同できる全ての人びとと協力し、全力で強化する決意を表明する。
2011年10月21日
許すな!憲法改悪・市民連絡会