声明・論評

総務省「改憲手続法リーフ」の問題点

市民連絡会は総務省のリーフレット(http://www.soumu.go.jp/senkyo/kokumin_touhyou/index.html)を批判する視点をとりあえず、レジュメ的にまとめました(担当者・小川良則)。

1 なぜ今この段階で?
   改憲手続法は2007年に「成立」したものの、多くの「宿題」を積み残している。
   その多くは、細部の技術的な「詰め」ではなく、根幹部分の見直しに及ぶもの。
   (1) 一般的国民投票の是非、一般的国民投票も視野に入れた投票対象の検討……付帯決議1
   (2) 投票権者の範囲、成人年齢の見直し……付帯決議2
   (3) 投票の 法
    「関連事項毎」という発議項目の括り方の検討……付帯決議3
     最低投票率の検討……付帯決議6
   (4)広報・広告
    広報協議会の中立性・公正性の確保…付帯決議8
    有料広告の規制についての検討……付帯決議13
   ⑤運動規制
    地位利用として禁止される行為の明確化……付帯決議11
    罰則の構成要件の明確化と選挙運動との峻別……付帯決議12・14
   ⑥憲法審査会
    定足数・議決要件の明確化と少数会派への配慮……付帯決議16
    両院合同審査会における各院の意思の尊重……付帯決議18
    周知すべき中身が全く詰まっていない段階でのフライング→予算消化と既成事実

2 図の多用で視覚効果に訴える反面,正確さが犠牲に(意図的にミスリード?)
  (1)「国民投票」という「制度の発足」と「国民投票の実施」とは全くの別物であるのに、投票箱と投票人を描くことで、あたかも近日中に国民投票が実施されるかのような印象を読む人に与えかねない。
  (2)標題が事実に反する。当初、改憲議連では、国民投票に関する法律と発議手続に関する法律を2段階で整備する予定でいたが、実際には両者を一本化して改憲手続法として制定された。国民投票の部分だけを強調することで、直接民主制や参加をイメージさせる一方、「改憲手続法」と呼んだ場合の「どこをどう改正するのか」という不安や反発を回避。
  (3)国会における発議手続の説明が単純過ぎる。

  1. 両院の議決が異なった場合、憲法96条を素直に解釈すれば、廃案とすべきだが、現実の改憲手続法には両院協議会の既定があり、極論すれば成立するまで何度もリターンマッチができるようになっているにもかかわらず、その記載がない。
  2. 憲法審査会の「両院合同審査」や、両院合同審査会による「両院への勧告」という二院制の根幹に関わる部分についても触れられていない。

  (4)広報・運動についても法案審議での問題提起や付帯決議が反映されていない。

  1. 広報協議会に有識者等を入れるかどうかの議論もあったにもかかわらず、単に両院から10名ずつとの記載があるのみ。
  2. 広報協議会の構成は議席割が基本であることの説明を省くことで、改憲勢力が圧倒的多数を占める下での広報の公正さへの疑問を隠している。
  3. 資金力を背景とする世論誘導への懸念から有料公告全面禁止論が出されたり、付帯決議で検討事項とされたことの記載が抜け落ちている。
  4. 運動規制は「必要最小限」と記載しているが、刑法や公務員法など別の法律での規制の危険性は以前から指摘されてきたところである。

  (5)投票の説明として、「改正案ごとに一票」という説明文とともに投票用紙の見本が描かれているが、その様式については、法案審議の過程で,発議項目の括り方とも関連して,さまざまな議論があったところである。代表的な例は下記のとおり。

  1. 改正案は投票用紙に刷り込むのか、記載台の前に掲示するのか。
  2. 項目が複数にわたる場合、1枚の用紙に記載するのか、用紙を分けるのか。

(6)開票の説明のところで、成立要件について、単に「投票総数の2分の1を超えた場合」と記されているが、法案審議の過程で、正統性確保のため最低投票率をとの議論があり、付帯決議にも検討条項が盛り込まれたことが反映されていない。

3 見切り発車で既成事実
   2008年度予算での広報リーフレット
   2009年度予算での国民投票に関するシステム構築

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