声明・論評

私たちは日朝両政府に対して、ロケット発射問題での瀬戸際政策の即時中
止と、「日朝平壌宣言」(2002年)にもとづく関係の回復への真摯な努力を
求めます

朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)は4月4日から8日までの間に、試験通信衛星「カンミョンソン2号」(光明星2号)を打ち上げると国際海事機関(IMO)に事前通報した。中国、ロシアなどは北朝鮮に対してロケット発射の自制を求めている。北朝鮮の意図はどうあれ、それは北東アジアの緊張をいたずらに激化させ、朝鮮半島の非核・平和をめざす6カ国協議の進行にマイナスの影響を与えるものとならざるをえないからである。

麻生首相は北朝鮮が発射準備をしているロケットについて、「日本に、上空をいきなり飛んでくる確率が極めて高い」「直接日本に危害が及ぶのであれば、自衛隊法で対応できる」などと発言し、非難した。日本政府とマスメディアはこの問題について、「日本上空の通過は許さない、迎撃すべきだ」などと、連日、危機感と北朝鮮に対する敵意をあおり立て、日本の領土、領海内に落下する場合に備え、自衛隊に対して「破壊措置命令」を発令して迎撃体制をとろうとするなど、緊張を激化させている。日米政府はみずからの人工衛星の開発は棚上げにして、「人工衛星だとしても、弾道ミサイルと発射装置はほとんど同じで、国連決議違反だ」などとして、一方的に北朝鮮に対する「制裁」を検討している。

これに対して北朝鮮軍総参謀本部は「(人工衛星を迎撃することは)戦争を意味する」「本拠地に対する正義の報復打撃戦を開始する」などと声明している。折しも韓国では大規模な米韓合同軍事演習が行われ、朝鮮半島の軍事的緊張は極度に高まっている。

いま、日朝両国政府は互いに相手の脅しに屈しないとして、チキンレースさながらの非難合戦をエスカレートさせている。この戦争の危険すれすれの「瀬戸際政策」は20世紀の遺物であり、北東アジアの民衆の平和の願いに反するものである。私たちはこのような力による威嚇は決して平和につながらないし、まして9条を持つ日本政府がとるべき道ではないと考える。

2002年、小泉純一郎元首相の訪朝を機に発表された「日朝平壌宣言」は日朝国交正常化をめざして、過去の歴史における過ちを反省し、対話によって日朝間の諸問題を誠実に解決する決意を表明し、両国は国際法を遵守し、互いの安全を脅かす行動をとらないことなどを約束した。にもかかわらず、この間は国交正常化のための日朝間の対話は進まず、「拉致」問題での非難の応酬に終始し、北朝鮮は核開発とミサイル実験を継続し、日本政府は「制裁」と敵視キャンペーン、ミサイル防衛(MD)体制の構築など敵対行動を強めるばかりで、北東アジアの緊張は激化する一方であった。そうしたなかで朝鮮半島の非核・平和をめざす6カ国協議も停滞したままで、協議は破綻の危機にさらされている。

この重大な危機を前にして、私たちは日本政府、並びに米国政府に対して北朝鮮のロケット発射準備に対する軍事的対応の動きを直ちに中止し、「制裁」ではなく「日朝平壌宣言」を基礎とした対話による北朝鮮との関係の回復、6カ国協議の再開のための必要なあらゆる外交的努力を真摯に行うよう要求する。いま米国内部からも「過剰な対応をすべきではない」という声が出ている。懸案の「拉致」問題もこの対話の過程でしか解決できないことは明らかである。

同時に北朝鮮政府に対して、予定されているロケット発射を中止し、6カ国協議の話し合いのテーブルにつくよう要請する。

私たちはアジアの民衆と共に、憲法9条を持つ国の市民として、米軍再編の名の下に推し進められている日米軍事同盟の強化など、北東アジアにおける一切の戦争政策と緊張の激化の企てに反対し、9条を真に生かした平和と共生のアジアをつくり出すよう尽力する。

2009年3月25日
許すな!憲法改悪・市民連絡会

このページのトップに戻る
「声明・論評」のトップページに戻る