WORLD PEACE NOW
解散・総選挙をめぐってあわただしい国会でいま、来年1月に期限が切れる「洋上給油新法」をさらに延長する法案の審議が行われています。米国ブッシュ政権のアフガニスタン・イラク戦争と占領、そして日本政府の加担と自衛隊派兵に反対してきた私たちWORLD PEACE NOWは、アフガニスタンでの戦争のために多国籍軍の艦船に海上自衛隊が石油を供給する「洋上給油新法」の延長に強く反対します。
米国のブッシュ政権が開始したアフガニスタンへの戦争は国際法にも国連憲章にも違反する一方的な先制攻撃でした。2001年10月に始まったこの戦争を支援するために当時の小泉政権は、海上自衛隊をインド洋に送り、米軍を中心とする多国籍軍に石油を無料で供給しました。海上自衛隊のインド洋・アラビア海での給油活動は、2003年のイラク戦争開始に際して、「テロ特措法」にも違反してイラクを攻撃する米艦船に石油を供給することにつながりました。
昨年11月に「テロ特措法」の期限が切れ、海上自衛隊は給油活動を中止して帰国することになりました。しかし当時の福田政権は、年をまたいで延長された臨時国会で、参議院で否決されたにもかかわらず衆議院の3分の2の多数で再可決するという異例の方法によって新テロ特措法=洋上給油新法を強行的に成立させ、インド洋での多国籍軍に対する給油活動を再開したのです。
米国がアフガニスタンとイラクで始めた「対テロ」戦争と軍事占領は、完全に破綻してしまいました。数十万人にのぼるイラクの人びと、アフガニスタンの人びとが殺され、数百万人の人びとが難民となりました。米兵の死者もすでに5000人を超えています。イラクとアフガニスタンでは平和と社会復興が進む気配は見られず、多くの人びとが占領軍による殺戮と破壊に怒りをこめて反対しています。戦争は出口のない泥沼状況に陥っています。戦争をただちに終わらせ、占領軍を撤退させるべきです。
今年4月17日に名古屋高裁で航空自衛隊のイラクでの多国籍軍支援活動は戦闘行為であり違憲であるという画期的な判決が出されました。それも大きな要因となって、政府は年内にイラクから航空自衛隊を撤収させると発表せざるをえませんでした。
しかしアフガニスタンに対しては派兵を継続するというのです。麻生首相は「テロと戦っている世界の中にあって、日本だけがテロとの戦いを放棄してアフガニスタンから撤収するという選択肢はない」と述べました。本当でしょうか。ブッシュ米大統領は「テロとの戦いは数十年かかる」と公言しています。日本政府はこの先、何十年も自衛隊をアフガニスタンでの戦争に参加させるつもりなのでしょうか。戦場は今やパキスタンにまで広がっています。
カルザイ・アフガニスタン大統領は、米軍とNATOとの住民への爆撃作戦に憤激し、「米軍及びNATOが国内に駐留する可否を検討する」と述べるともに国内武装勢力との政治的交渉の仲介をサウジアラビアに依頼しました。アフガニスタンに派遣されているイギリス軍の司令官は「アフガニスタンでの戦争に勝利することはできない」と語り、交渉による和平の道を支持しています。
アフガニスタンでのいわゆる「武装勢力掃討作戦」は、アフガニスタンの人びとへの復興支援活動を行っているNGOの活動をもきわめて困難な状況に追いやっています。この8月、長年にわたってアフガニスタンの貧しい農民への支援活動を続け、現地の人びとから強い信頼を得てきたペシャワール会の伊藤和也さんが誘拐・殺害されるという悲劇が起こりました。これは戦争によって平和をもたらすことはできないことを改めて私たちに教えています。
こうした重大な問題をふくんだ「給油継続法案」を、「解散・総選挙」をめぐる駆け引きの材料とし、ほとんどまともな審議もないままに通してしまうことなど許されるものではありません。さまざまな角度から徹底的に問題点を論議し、廃案にすべきです。そして「対テロ戦争」の誤りをはっきりと反省し、武力によらない支援の道を探るべきです。
それこそがイラクやアフガニスタンの人びと、そして全世界の民衆が望んでいる方向だということを私たちは確信しています。
私たちは訴えます。洋上給油継続法案を廃案へ。イラクとアフガニスタンでの戦争・占領を終わらせ、自衛隊の撤退を。自衛隊海外派兵恒久法をつくるな。
2008年10月18日