2021年8月30日
憲法9条を壊すな!実行委員会
今回のアフガニスタン(ガニ)政府の崩壊とタリバンによる政権掌握という事態に際して、日本政府は8月23日、NSC(国家安全保障会議)をひらき、現地に滞在する日本人や「カブールからの撤退を希望する大使館のアフガニスタン人スタッフ」などの国外退避のために、自衛隊の中央即応連隊の100名の武装した戦闘員を含む300名の自衛官を載せたC-2、C-130などの4機を現地に送った。
しかし、報道によると現地の情勢の困難性から、27日、自衛隊機は退避を希望していた日本人1名と米国の要請によるアフガン人14名を載せてパキスタンに撤退した(すでに在アフガン日本大使館員は、政府が自衛隊派兵を決定する前に英国の軍用機で国外に撤退していた)。この自衛隊の作戦は、当初はアフガニスタン人関係者など500名以上の退避を想定していたが、事実上、失敗に終わった。
間もなく米軍も現地を撤退し、タリバン中心の新政権が実効支配することで一段落を迎えることになるが、アフガン内部の諸勢力の確執は容易に収まるものではなく、今後長期に動揺と混乱は続くかも知れない。
2001年の9・11米国同時多発テロを契機に米国が「報復戦争」を呼号して、日本など同盟国の協力の下で20年間にわたって進めて来た米国史上最長の戦争は、2兆ドルの戦費を費やし、2500人の米兵を含め3600人のNATO加盟国兵士が死亡し、15万以上のアフガニスタン人のいのちをうばっただけで、タリバンが復権するという結果になった。いったい、なんのための戦争だったのか。
私たち日本の市民運動は米国の報復戦争開始直後から「テロにも報復戦争にも反対!」「武力で平和は作れない!」と主張して行動してきた。この立場は今日、一層その正当性が証明されていると確信する。しかし、この20年で世界が失ったものはあまりにも大きい。歴代の米国政府と、NATOなど同盟国および「テロ特措法」などで対テロ報復戦争に加担した日本政府の責任は重大だ。
にもかかわらず、今回の日本政府による「在外邦人等の輸送」を名目にした自衛隊機の派兵は、戦争協力への反省もないままに強引に進められたものだ。日本政府は当初の関係国機での撤退の方針を急遽転換して、臨時国会も開かずに、菅政権の独断で、23日のNSCの短時間の会議で、自衛隊法84条の4にもとづくものとして、武装した中央即応連隊という自衛隊選りすぐりの戦闘部隊を搭乗させた自衛隊機のアフガン派兵を決定した。自衛隊の派遣には相手国の同意が必要だが、その同意もなければ、自衛隊法にいう輸送の安全な実施の保障の確認もない。
2015年の安保法制から、先の「日米共同宣言」に至る日米同盟強化の戦略は、国際政治で台頭しつつある中国に対する封じ込め戦略であり、力対力で進める戦略は世界の平和に逆行するものと考えている。アフガン戦争の経験が示したように「武力で平和は作れない」のであり、日本政府は日本国憲法第9条の精神で、軍事力の行使とそれへの加担ではなく、対話と共生による世界の平和を実現すべきだと考える。
2001年までのタリバン政権には、特に女性をはじめ人々の人権について重大な多くの問題があった。しかし、圧倒的な米欧の武力侵攻の間に首都は明け渡したが、地方への『戦略的撤退』を行い、文字通り持久戦に持ち込んで欧米軍に打撃を与え、疲弊させ、外国軍頼みのカブール政府の無能と腐敗から勢力を伸長させてきた。これに対し自公政権・外務省などは、『テロ組織をかくまった』としてタリバンを『対テロ戦争』の標的とした米国の侵攻に安易に加担し、アフガニスタンの事態の実相認識やタリバンとの接点も持つことがなかった(中村哲医師やNGOの意見や経験も無視してきた)。今回の自衛隊機派遣をめぐる混乱は、そうしたことの結果でもある。さらに、私たちは、この自衛隊派遣の強行が、この間の安倍・菅政権が進めてきた米国と結んだ『自由で開かれたインド太平洋戦略』につながる要素も持っており、その既成事実づくりの一環にもなりうることに重大な危惧を表明する。
今回の菅政権による自衛隊機のアフガン派兵は一見、だれもが反対しえない「邦人救出」を名目に隠れて実施された極めて危険な軍事行動であり、私たちは断乎、これに抗議する。近代の歴史を振り返れば「邦人救出」が侵略戦争の名目になったことは少なくない。
私たちは菅政権による違憲・違法のアフガニスタン派兵に強く抗議する。