私と憲法74号(2007年6月25日)


参院選に際して~九条改憲阻止の歴史的な闘いの第1歩に

安倍与党は通常国会終盤でとうとう国会の会期を延長した。野党からだけではなく、与党内からも噴き出していた不満を押し切って、必死になって「丁半ばくち」のような国会運営の挙にでた。

安倍晋三首相は「美しい国」「戦後レジームからの脱却」「主張する外交」などと称して、この国会では新保守主義イデオロギーを前面に立てて攻勢に出た。改憲手続き法、米軍再編特措法、イラク派兵特措法延長、教育三法改悪、少年法改悪などなど諸悪法を一挙に強行し、集団的自衛権問題での「有識者懇」の設置もすすめた。昨年の教育基本法改悪と防衛省昇格法などと合わせ、安倍の取り巻き連中は歴代内閣が数十年にわたって出来なかったことを安倍内閣は一挙に解決したなどと礼賛した。

しかし、この側近だけに頼って形成された「日本会議内閣」のもろさはこの間にも次々と露呈した。持論の「従軍慰安婦」問題では「狭義の強制性」を否定したが、矢はアジア諸国からだけでなく米国の議会やメディアからも飛んできた。「拉致問題」を振りかざした北東アジア外交は米国政府にまで見捨てられ、日米両政府の間に大きな溝ができた。訪米に続いて、財界をひいて訪れた中東では、予想を超える対日感情の冷却化に直面した。サミットでも次回開催国であるにもかかわらず、得点らしいものはあげられなかった。安倍の「主張する外交」は行き詰まった。内政はといえば、柳沢厚労相の「子生み機械」などの暴言、利権まみれの松岡農水相の自殺などなど閣僚のタガのゆるみに加えて、年金問題の暴風が吹いた。こうして追いつめられた安倍首相は、ただただ参院選対策のための時間を得ようとして、国会の延長に踏み切り、新保守主義を前面に出すだけでは参院選の旗色は悪そうだとして、姑息にも社会保障などともいいだした。

来る参院選はこうした安倍政権に審判を下す重要な機会だ。野党第一党の民主党は憲法問題をはじめ自民党と類似するところがあまりにも多い。こうしたことから参院選での与野党逆転にまったく価値を見出さない人々がいることは理解できる。しかし、私たちはそれでもまず安倍与党の敗北、参院での与野党勢力の逆転を実現することの重要性を主張したい。改憲内閣、日本会議内閣の安倍政権に、この参院選で与野党議席の逆転の痛打を浴びせることは決して無意味ではない。もしそれが実現できれば以降の民衆運動にとっても重要な布石となるに違いない。だが、このことは私たちが民主党への投票を訴えることを意味しない。さまざまな野党の存在が必要であり、とりわけ憲法改悪に反対する社民党と共産党の存在とその議席増は不可欠だ。

この間、私たちは9条改憲に反対する勢力の共同を訴え、院外でそのために微力を尽くしてきた。同時に今度の参院選でこれらの人々の全面的な共同は不可能であるとも判断してきた。どうやってそうした共同を実現するか、それに向かってどのように努力するか、オール・オア・ナッシングではない。選挙の共同が全てでもない。事態が切迫しているとはいえ、いやそうであるからこそ、現下の条件のもとで、あきらめずに、しかしあせらずに9条改憲阻止の強大なネットワークの形成とそれによる勝利をめざしてひきつづき全力で奮闘するよう訴えたい。この時代に生きる者の責任において、復古主義者の安倍内閣とその追従者らによる「戦後レジーム」の打破などを絶対に許してはならない。(事務局 高田健)

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第23回市民憲法講座(要旨)
今日の改憲状況と9条改憲阻止の可能性

高田 健(許すな!憲法改悪・市民連絡会)さん
(編集部註)5月26日の講座で高田さんが講演した内容を、編集部の責任で大幅に要約したもの。要約の文責は全て本誌編集部にあります。

安倍暴走国会

5月14日、改憲手続き法が参議院本会議を通過しました。この採択がどういう意味を持っているのかをはじめに考えてみます。国会の前にいて私は「今度の166通常国会は145国会と本当に同じだ」と思い、「とうとうこんなところまできてしまった」とも考えました。1999年の145国会もたくさんの悪法が通り、「憲法調査会」を国会に設置する法律も通りました。佐高信さんはこの145国会を「地獄の釜のふたが開いた」と表現した。今度の166国会は、それ以上の国会になりつつあります。改憲手続き法のあと、教育三法や米軍再編特措法、イラク特措法の延長もあります。

この改憲手続き法は去年の5月に衆議院に正式にかけられましたから、だいたい1年近くの審議を衆議院ではやりました。ところが4月16日に参議院に移ってからは1ヶ月弱で終わった。大型連休がありましたから、20日余りの審議期間で参議院はこの法律を通してしまった。衆議院も1年かけたといいますけれど、最後はもうばたばたで、最後は議長席のマイクがすっ飛ぶような状態で強行採決をした。衆議院は定例日を設けて週に1回ないし2回、審議をしてきた。なぜかというと、法案の討論をやるには国会議員だって勉強しなきゃいけない。それから討論された内容を文献や法律に当たり、出された意見について調べた上で議論に臨むわけです。毎日審議をしても深まるわけではない。一定の熟慮する期間が必要です。

ところが参議院に移ったら、審議日程も前の日に決める。途中では夜の9時までやりたいという提案まで自民党はする。とにかく審議時間を稼ごうと毎日毎日やるという提案をしてきた。自民党が夜の9時までやるなんて、朝の9時から夜の9時までまともな審議ができるわけはないですよ。実際はみんな眠っていたりあくびをしていたり、他所にいってたり、いろんなことをしている。地方公聴会も、参議院では公聴会をやった翌日討論をしているから速記に起こす暇もない。だから公聴会で話を聞いてもそれを審議に役立てることができない。これは公述人も地方公聴会傍聴の人たちも本当に怒っていました。形式だけのために自分は呼ばれているのかということで。

要するに参議院ではわずか20日余りでこんなに重要な法案を強行採決してしまった。これは議会制民主主義という彼らがつくってきた国会の審議のルールや慣行を踏みにじって、ともかくも急ぐ、急ぐということでやられてしまった。これだけは私たちは絶対に覚えておかなきゃいけない。

なぜ安倍政権はかくも焦ったのか

なぜ急いだかについてはいろんな理由がいわれます。今年になってひとつはアメリカからアーミテージレポートが出ました。4月末に、安倍さんがアメリカに行って日米首脳会談をやった。同時並行で防衛大臣もアメリカに行って、2+2の会議をやって日米防衛相の会議もやられた。アーミテージレポートは2月に出され、表題は「米日同盟-2020年に向けアジアを正しく方向付ける」です。アーミテージは安倍さんがアメリカに行く直前にわざわざ日本に来て、首相官邸で話をしています。 このアーミテージレポートが

非常に象徴的な、今回しゃにむに改憲の法案を急いだ理由のひとつだと私は思っています。これは実際上アメリカ政権の対日政策の基本になっていると考えていいと思います。第二次アーミテージレポートの一番の特徴は、米日同盟を「地球的規模」の同盟に位置づけています。6年以上前に出されたアーミテージレポートでは「アジア太平洋」を中心にした日米同盟でした。今回は地球的規模で対処していく日米同盟のために集団的自衛権の行使などを積極的に進めようと非常に細かいことが書いてあります。

久間防衛大臣がゲーツさんに言われたことは、たとえば「北朝鮮からアメリカに向かって飛ぶかもしれない大陸間弾道弾について日本がそれを撃ち落さないようなことであれば日米同盟は成り立たない、集団的自衛権を行使できる体制を一刻も早くつくって欲しい」ということです。実は前からアメリカからこういう要求はあり、それが非常に象徴的にこの日米防衛首脳会談の中で言われたということだと思います。このふたつに表されるようなアメリカの要求が、私は今回の強行採決に次ぐ強行採決をやった最大の要因だろうと思います。

他にも急いだ理由として、参議院選挙の直前に強行採決をすると評判が悪くなると、公明党が自民党に「早くやれ、早くやれ」といったとか、それはだいたいあたっていると思います。

安倍は「究極の護憲派」?
5月14日に強行採決される日、私は国会の前に立っていながらいろんなマスコミから聞かれました。「大変でしょう」とか「やっぱり悔しいでしょう」とか「これから厳しいですね」とか、だいたいそういうふうに答えてくれということを質問してくるんです。けれど、今回は本当にそういう気がしなかった。私は今回の強行採決、あるいは今回の改憲手続き法の通過という動きの中では敗北感はありませんでした。もちろん政治的に敗北したのは間違いないんだと思うんです。しかしそんなにガックリきませんでした。

その理由はふたつあると思います。ひとつは安倍さんのというか、自民党のこの法案にかけた計画が大きく狂ってしまった、このことが大切だと思います。自民党は「この法案は自公民でやる」といっていた。たとえば今年の元日の「毎日新聞」は、民主党の憲法の責任者の枝野幸男さんと自民党の実際の事務方の責任者の舛添要一さんの大きな対談がやられています。この中でもふたりが意気投合しているのは「自公民で、要するに自民党と民主党が一致してやらなかったらこの法律をやる意味がないよ」と話しています。これは枝野さんと舛添さんだけに特殊的なことではなくて、自民党の改憲派の憲法調査会メンバーは大方こういうふうに考えていました。

憲法調査会は延々、7年間やってきました。衆議院の中山太郎という人を中心に自民党の憲法調査会の委員たちが一貫して追求してきたことのひとつが、この自民党と民主党の協調体制のもとで憲法問題を進めるということです。自民党内にはこれに反対や批判もずいぶんありましたが、中山さんや舛添さんたちは、これが「どうしても」という条件だといっていた。

なぜ自公民でやらなければならないかというと、憲法96条は、両院の総議員の3分の2以上の賛成をもって改憲の発議をし、国民投票にかけると定めている。両院の総議員ですから衆議院も参議院もそれぞれ総議員の3分の2の賛成がないと改憲発議ができないというのはあまりにも有名です。改憲手続き法は一般法ですから、過半数の賛成があれば法案は成立しますけれども、過半数で押し切って喧嘩をしたら3分の2が必要なときに3分の2にならないというのが自民・民主の幹部の共通認識です。

だから両党が一致してはじめて改憲ができる。それはそうですよね。だって手続き法を作るのは何のためかといったら改憲のために作るんですから、改憲のときに3分の2にならないような関係を作ってしまって手続き法を通してもそれは意味がないというのは非常によくわかる話です。それをずっと狙ってきたのに、今回壊れちゃった。

なぜ壊れたか。直接的には民主党の枝野さんなどが怒った理由は、去年の12月の段階で、安倍首相が「自分の任期中に憲法改正をやりたい」と言った、そして166国会冒頭の施政方針演説で安倍首相が「この国会で改憲手続き法を通して欲しい」と演説した。立法府である国会あるいは委員会に対して、内閣が、行政府が公然と注文をつけた、介入したわけです。民主党の幹部にしてみればなんとかうまくまとめてきたのに、脇から安倍さんが「自分の任期中に改憲をしたいんだから今度の法律を通せ」などと余計なことを言う。

民主党の中では「今度の法案に自分たちが賛成なのは近く改憲をやるかやらないかということとは関係がない。憲法96条があるから、憲法ができたときから改憲手続き法はあるべきだった。60年前からあるべきだった。」という説明をしてきた。実は自民党も国民に対してはそういう説明をしてきた。「立法不作為」だったというわけでしょ。立法のほうが当然あるものを作っていなかった、だからきわめてニュートラルなものですよと説明をしてきた。この説明が全部おじゃんになった。枝野さんはいわばメンツを丸つぶれにされてしまった。枝野さんにとっては大問題ですね。本音がどこにあるかは別ですよ、しかし建前はそれでまとめてきたので、安倍のようにやったら改憲がますます遅れる、そういう意味で安倍は「究極の護憲派」だといっている。そういう意味で「社民党や共産党よりも安倍は護憲派だ」と枝野さんはものすごく怒ったわけです。枝野さんはそれでさっさと民主党の衆議院憲法調査会の責任者を降りました。代わりになったのが平岡さんという「リベラルの会」の中心メンバーで民主党の中では護憲派といわれる人です。だから民主党の体制はそこでガラリ変わって、ますます安倍は究極の護憲派だってことになりました。

しかし本質的に見てそうなのかというと、マスコミが書いているのは小沢さんが参議院選挙対策で、何でもいいから自民党と喧嘩しろといったんだとか、いろいろな説明があります。いずれにしても今度の国会で自公民路線が破綻したというのは、長年自民党が狙ってきた方針がひとつ崩れてきた意味ではすごく大きいものがあります。

「改憲議連」とのたたかい

もうひとつ、中山太郎さんが中心になって作った「改憲議連」、それがこの手続き法の素案を作ってから5年半かかった。この5年半で非常に重要だったと思うのは、憲法をめぐる世論が明らかに変わったことです。新聞の世論調査などを5年前から見ると、ちょうど「Vの字」です。5年半前は下がっていたのが、2004年から逆転してまた9条を変えないほうがいい、憲法を変えないほうがいいというのが増え始めた。これは自民党の重大な誤算だと思います。

1994年に読売新聞が改憲試案を出しました。あの時はびっくりしたのを今でも覚えています。大手の新聞社が憲法の全面改正案を出した。

そして1997年、ちょうど10年前の5月に中山太郎さんを中心にした「改憲議連」ができた。「改憲議連」というのは実は私たち市民連絡会が勝手に名前をつけたらいつの間にか一般的にけっこう通用するようになった名前で、正式には「憲法調査会設置推進議員連盟」です。国会の裏のキャピトル東急というホテルがあったんですが、そこに朝早く国会議員たちが集まって設立総会をやるという小さな新聞記事がありました。私たちはそこに押しかけて、ホテルに入っていく議員たちの黒塗りの車のひとつひとつにプラカードを示しながら、反対行動をした。中山太郎さんの「改憲議連」と、この市民連絡会なども含めて市民運動がずっと対峙してきた10年間ですね。

2001年の冬、中山太郎さんたちの改憲議連がこの国民投票法と国会法改正の素案を作り、次の年の国会で採決したいと発表しました。いまから5年半前というのはそれです。しかし反対運動ももちろんありましたし、自民党の中でもまとまらないし、国会のほかの政党の中もまとまらない。何度も何度も繰り返しながら今日まできて、去年の5月にようやっと改憲手続き法案として国会に正式に上程されたという経過をたどります。10年前と5年半というのはそういう関係があります。

そういう中で5月14日を迎え、今度の法案の採択は必ずしも運動側の、運動としての敗北とはならないんではないか、これからの憲法改悪を食い止めていくところに結びついてきた運動をやれたんではないかと自負するところです。

世論の大きな変化

先ほどのV字型のことでひとつだけ言っておきます。実は5月を前後してたくさんの世論調査がありました。読売新聞、NHK、共同通信、毎日新聞、沖縄タイムス、静岡新聞とか、さまざまなメディアの世論調査が共通の傾向を示しました。厳密に言いますと「毎日新聞」だけがちょっと違うんですが。

一番わかりやすい読売新聞の世論調査を紹介しておきます。「憲法改正に賛成か反対か」ということでは、賛成46.2%で、改正しないほうがいいというのは39.1%です。だから改正のほうが多いのは確かです。しかし、2004年以来ずっと改正のほうが減り始め、それが過半数を割り、改正と、改正しないほうが良いとの差が7%くらいまでに接近してきました。そして憲法9条については、「解釈や運用で対応するのは限界なので9条を改正する」、9条を変えましょうというのが35.7%で、「9条を厳密に守り解釈や運用では対応しない」が20.0%、「これまで通り解釈や運用で対応する」が35.8%、要するに9条の明文改憲はしないほうがいいというのが55.8%あったということです。これは変えようという35.7%に対して20%くらいの差があったわけです。

この数字が、他の回答の数字から見ても妥当だと思うのは、たとえば「9条の2項を変えないほうがいい」という意見も54.1%%ですから。一番改憲を進めてきた読売新聞の調査でこうだったわけです。

ですから安倍内閣にとって強行採決は「必ずしも成功したというばかりではない」といった第2番目の問題での、この世論の動きはあらためて覚えておいていただきたいと思います。この世論調査の流れが「Vの字」型になっているということをぜひ確認をしておいていただきたいと思います。

改憲案作りにすぐ着手しようとする憲法審査会

これから私たちはどうするか。
この法案は5月18日に公布され、実際に発効するのは今度の臨時国会からです。その臨時国会に「憲法審査会」が設けられます。たぶん今の憲法調査特別委員会を組織替えするだけだと思います。もう、憲法審査会の衆議院の会長は中山さんだなんていうことは公然と言われていますから。その憲法審査会が何をやるかということですね。

憲法審査会がやる仕事はこの法律では3つです。ひとつは改憲原案を作ることです。憲法審査会が原案を作って、それを国会で討議して本会議で採択をして、発議をする、その改憲原案を作るのが憲法審査会の一番重要な仕事になります。いよいよ戦後60数年の歴史の中で始めて国会の中に改憲原案を作り得る機関が作られたということです。

しかしいちおうこの改憲原案は3年間は凍結だとされています。与野党の駆け引きの中でそうしないとなかなかまとまらないというのがありまして、3年間の凍結期間が設けられました。後の2つは付随的な仕事で、憲法一般の調査が第2の仕事です。第3の仕事は今度通った改憲手続き法そのものについても審査をするということですから、憲法審査会の最大の仕事は改憲原案を作るということです。

しかし凍結されているから3年間は安心かというと実はそうじゃないですね。法律というのはつくられてしまうと本当に怖いし、これも私たちは絶対心しておかなければいけない。これから法律ができたらどんなことになるかという典型的な例です。もう自民党の中では「原案は作らないけれども、大綱なら作っていいだろう」、「原案は作らないけれども骨子の討議をするのは別に悪いと書いていない」とか。

凍結だという3年目が来たときにはほとんど大綱が完成する状態を作れるということです。私たちは3年過ぎてから改憲原案を作ると、あの法律からは読んじゃいます。それで安心したら、とんでもない、実はもう臨時国会が始まったら、そこからがある意味で改憲原案の作成過程だ、そう考えておく必要があるのではないか。
こういうこともあるんです。今度の参議院選挙でもし与野党逆転ということになったら、どうなりますか。衆議院の憲法審査会は中山さんが会長で50人のうち27人か28人は自民党で、共産党と社民党と国民新党が1・1・1ですから民主党はそれから公明党の人数を引いた16人くらいになりますか。委員会の役員とかも会長は自民党から出ます。もし与野党逆転すると参議院の憲法審査会の会長は民主党になります。そうすると衆議院の憲法審査会で作る改憲原案と参議院の憲法審査会で作る改憲原案とかなり違ったものができちゃう可能性があるわけです。これはとんでもないことなんですね、彼らにとっては。そうなったとき「合同審査会を作る」というのが今度の法律の中にあるんです。合同審査会をやって、実際には衆議院の主導権でやっちゃおうと考えているのは間違いないんですが、彼らはそこまではまだ言っていません。

だから参議院で逆転してくれたら、これは一歩前進で食い止める上では面白い。でも、そういう場合でもやれる方法は考えているということです。

改憲手続き法の抜本的再検討から始めよ

ではどうするのか。今度の法律が通ったときに18項目の付帯決議がついた。付帯決議をつけるから、民主党は物理的な抵抗をやってくれるなと参議院ではそういったんです。参議院の場合は粛々とやられたんですね、だから強行採決でもなかった。

民主党はこの18項目の付帯決議で自分たちの言い分を自民党は飲んだ、そういう意味では今回の法案は負けてもやむなしというふうにした。18項目の付帯決議で妥協してしまうのは反対ですけれども、これがついたことはこの法案の審議が極めて不十分だということです。だから18もの(註)をつけてこれについてはまたこれから討議しますよ、あるいはこれから検討しますよということです。今まででも付帯決議がついた例がないということはないですけれども、こんなに出るのは異例のことではあるんです。政府が出した法案に議会が審議をして採決するときに議会が付帯決議をつけることは一般的にはあるんです。でも提案者は自分たち議会です。議会が提案しているのに最後に付帯決議をつけるのはもう討議不十分、欠陥法案だということを出した人たちが認めているという法案です。だからこれから即やってもらわなきゃいけないことは、この法案自身がまだ大変な問題がいっぱいあって欠陥法案だということを、次の臨時国会の冒頭からやってもらわないといけない。憲法審査会の第一番目の討議はそれをやってもらわないといけない。

実は国会審議の最後のころに問題がいっぱい出ました。マスコミが比較的批判を書くようになった。たとえば最低投票率、これも付帯決議で入っている。最低投票率という規定がないままに何%の投票率でも多ければとにかく改憲案が通ったというのはおかしいではないかとマスコミも最後はどんどん書き始めた。それ以外にもたくさん問題はあって、この間市民運動はそれをいっぱい指摘してきましたし、私たちもパンフレットを何度も作ってきました。

そういう中のひとつの大きい問題はテレビスポットコマーシャルの問題ですね。今度の法律ではテレビスポットコマーシャルが投票日の2週間前まではだめですけれども、それより前は自由です。市民連絡会は全期間、有料テレビスポットコマーシャルは禁止にしろと要求しました。当初学者の一部からは「あんたたち、変なこと言うなあ」と言われましたね、「言論の自由、表現の自由を自分たちで縛るというのか」って。もちろん正しいって支持してくれた学者もいます。しかし私たちはそれを主張し続けました。

たとえばそういう中で、カタログハウス、「通販生活」の社長の斉藤さんは、あそこはテレビコマーシャルでやっている会社ですからCMについてはプロ中のプロです。彼が丁寧に説明して、どんなにこれは不平等なものか、もしこれを自由にしたらそれは金持ちの自由であって金を持っていない人にとってはとんでもないことになるということを暴露してくれました。15秒で有名タレントが出てきて「明るい日本、新しい憲法」「もう暗い過去の服は脱ぎ捨てよう」なんてのを朝から晩までやられたらたまったもんじゃないですよ。私たちがどんなにがんばったって何本コマーシャルを作れるか。もう資金力がぜんぜん違います。これを野放しにしたら大変なことになる。これも付帯決議にはいっています。

私たちはこれを「言論・表現の自由」の問題とは思っていません。たとえばドイツではナチスの宣伝をすることは禁じられていますよ。あのハーケンクロイツをつけて宣伝をすることはドイツでは当然「だめだ」ということになっています。これ表現の自由違反でしょうか。基本的にはそういう問題だと思うんです。だから今度のテレビコマーシャルの問題で金にあかせて膨大なCMができる体制のことを表現の自由一般で言ってもらっちゃ困るというのが私たちの意見だった。そうではなくてテレビ討論とか無料の広告とか、要するに平等になるかたちでテレビをいっぱい使わせる方法はいくらでもあるんです、本当にみんなの表現の自由を保障する方法は。

まずこの法律の廃止法案の運動をやってみませんか、といいたいと思います。イラク派兵の延長の問題で民主党は廃止法案を出しましたけれども、運動の背景もないですから採決されて終わりです。そうではなくて運動の中でこの法律はとんでもない18項目もの付帯決議がついているような法律だと廃止法案を作るような運動は可能性があると思います。

まず、改憲発議が出来ないような状況をつくる

「さあ手続き法ができたから国民投票でがんばらなきゃ」って行くのはちょっと待ってくださいと私は思います。法案が通ったからといって、さあ「改憲にバツをつけよう」などと呼びかける運動をすぐやるのは私は待ってくださいと言いたいと思うんです。

まず第一番目にやらなきゃいけないことは、彼らが改憲の発議をできない状態を作れるかどうかなんです。これはこの市民憲法講座で井口先生が話してくれましたが、市民の中では今度の法律について非常に誤解があります。改憲手続き法が通ったら、国民投票のときは憲法九条に賛成か反対かどちらかを選べるんだ、それはそれでけっこう面白いかもね、という意見があります。それは面白いですよ。だってさっきのような世論の状態で、今やってきたら私は負けるとは思いませんね。

ところが今度の手続き法はそういうものじゃない。憲法96条によって問われるのはは「国会の3分の2の多数の議員たちが作った案に賛成か反対か」ということです。私たちが問われるのは、9条改憲に賛成か反対かではなく、彼らが作った案に賛成か反対かなんです。9条を守るという案を対抗しては出せない。

国民投票というと直接民主主義で、いいことのように思う。ふだんは私たちは国会議員しか選べませんから、直接投票ですぐに反映できるのは、「これはいいじゃない」と思う人はかなりいます。ところがそこは違うんです。今度出ている法律は、微妙な違いに見えますけれど実は決定的な違いです。案は議会の3分の2の人たちが案を作るんです。ここは私たちは絶対幻想を持てないんです。

もうひとつ大事なことは、国民投票をやるかやらないかも私たちが決められない。今負けそうだなと、あの人たちが思ったらやらなければいいんです。いつ、どのような内容でやるかは全部議会の3分の2の人たちが決める。私たちの希望は一切聞かれないです。だから彼らにとって不利だと思ったら、国民投票がはじめてやられるのは3年後どころか5年後か10年後かもしれない。

それでも、彼らが国民投票をやれない状態を作ることは、まず第一に大事なことだと思います。「出したら自分たちが負けるな」って彼らが思う状態を作れるかどうかです。そうすれば9条改憲は阻止できるというのがひとつなんです。

「集団的自衛権の行使」は究極の解釈改憲

しかし、今のようにどんどん解釈を拡大をされていったらどうするのか。改憲は発議をしたら負けるから発議しないで、その代わり憲法解釈をどんどん拡大していくのが、安倍さんなんかが考えている第二番目の方法です。

今、改憲派は第一番目は明文改憲をやりたい。それをやりながらもうひとつ、二段構えです。
特に集団的自衛権のところに象徴的に現れているように内閣に私的諮問機関の有識者懇談会を作った。こんなばかげた話はないですよね。だいたい自分たちで「有識者懇談会」って平気で言うんですもんね。

有識者懇談会の中身は、全部安倍さんの友達ですよ。いちおう議会制民主主義なり三権分立なりを尊重する建前をとれば、多少賛成意見が多くなる仕組みにするかもしれませんが、それでも反対意見とか有力な意見を入れますよ。ところが今回の人たちにはこれがまったくない。マスコミでもこれだけは言っていますよ。議論をいくらやっても結論は最初から見えているじゃないか、これを「やらせ」といわなくてなんだというんです。

ですから第一番目は発議をさせないたたかい、第二番目はこの有識者懇談会などを使った究極の解釈改憲を打ち破っていく運動がこれから大変ですね。この二番目のほうは難しいですよ、なかなか。私たちも理屈を言わないといけないですもんね。四つの類型についてこれは憲法上使えるか使えないか検討してくれ、もう使えると安倍さんは結論を持っているわけです。使えるようにうまく理屈づけをしてくれといっているだけですよ。

安倍さんのいう中身はめちゃくちゃです。その典型は、北朝鮮がミサイルを発射して、それが日本に向かっているのかアメリカに向かっているのか発射した時点ではわからない、日本は日本に向かっているものだけ撃ち落すというのが、今のMD体制です。けれど安倍さんは「そういう無責任なことでは日米同盟は壊れる、アメリカに向かっているミサイルも落とす、これが憲法違反かどうか」といっているわけです。そうすると、そうだよなあ、日米って仲間だから自分のところに来たものは阻止するけど、アメリカに向かったやつは防止しないというのはおかしいよな、ってだいたい思うように仕組みができている。そういうふうに集団的自衛権の拡大解釈進めようとしています。

実はこれは本当に笑い話ですが、成層圏を飛んでいく大陸間弾道弾を撃ち落とす能力は日本にはありません。だから今、議論していること自身が、できないことを、合憲かどうか議論している、本当にへんちくりんな議論です。そういう議論をあれこれやっているんです。

前回の講座で前田さんが話してくれましたが、今ミサイル防衛=MDをものすごい金をかけて日本はやっていますね。北朝鮮のミサイルを落とさなければいけないということで、埼玉県の入間基地にパトリオットが配備された。ところが射程距離が20キロなので、入間にあったんでは官邸と皇居を守れないそうです。だから危なくなったら、入間から道路を走って、近くまで来ないと防衛できない。ところが移動し始めたら周りの人――入間の人はなんて思うか、あっ俺のところは守らないで、あっちを守るのかとパニックになるわけです。それでパニックにならないように普段から出たり引っ込んだりして慣れさせるというんです。だから普段は防衛のためか訓練のためなのかが入間周辺の人たちにわからないようにしょっちゅう出たり入ったりしよう、なんてことまで真面目に考えている。この前、新聞のトップで出ていましたね。この程度のMD体制ですよ、日本のミサイル防衛というのは。

実はアメリカのミサイル防衛の技術もそうで、本当に未完成の兵器です。軍事評論家で真面目な人はずっと丁寧にその辺を説明しています。でもこういう第一類型のようなことを、今の有識者たちが秋には「安倍さん、これは合憲です。やってください」と出す。そうすると「国会で有識者懇談会が合憲だということを出しましたから、これは大丈夫です」といって強行して押し切ろうとする。明文改憲に反対するだけではなくて解釈改憲に反対するような仕事が非常に大事になってくると思います。

具体的にいえば、憲法審査会で、有識者懇と同じような議論をやっていくと思います。ここで議論して、やっぱりそういうのは憲法違反じゃないという結論をだすと思います。委員会の議員の構成は多数ですから、そういう意見が多くなるのは当たり前です。この憲法審査会が解釈改憲の機関化する可能性があります。

内閣法制局はずっと集団的自衛権の行使は違憲だといっている。安倍さんはここに手を突っ込んでいるわけです。実は有識者懇談会をやる前に新しくなった法制局の長官を3回も官邸に呼んだそうです。それも表から呼ぶと新聞記者が騒ぐから裏口から入らせて3回説得して、「お前は内閣の機関なのになんで生意気なことを言うか、私の内閣はこうやりたい。あなたはそれに沿って解釈を作ればいい」と脅している。でも官僚というのはそういうときにそう簡単に頭が切り替わらないそうです。それなりに筋道が立っていないといくら安倍さんに言われたからってすぐそうならなくて、内閣法制局長官はいまだに抵抗している。

内閣法制局がそういう状態であるなら、憲法審査会を安倍さんや、自民党が狙うような権威付けの機関にしていく可能性が非常にあります。そこで憲法違反の発言がまたやたらに出てくる可能性があります。

憲法をまったく理解していない安倍首相

今度の参議院選挙で安倍さんは憲法を争点にするといっている。私も憲法を争点にするならやったほうがいいと思います。野党は正面から受けて立ってくれたらいいと思いますが、憲法を争点にするといっているときに、この前、小沢さんと安倍さんの党首討論の中で安倍さんはびっくりするようなことを言っていました。小沢さんからそれは自民党の新憲法草案のことかという趣旨のことを問いただされたら、「それはそうでしょう、私は自民党の責任者です。自民党の責任者が自民党が作った新憲法草案を掲げて堂々と選挙を戦うのは当然でしょう」と彼は言った。小沢さんはそれで終わっちゃったけれど、本当はこれ自身、重大な憲法違反ですよ。

憲法96条は日本国憲法の全面改定を想定していません。憲法96条をちゃんと読むと新憲法草案は認められないです。憲法改正をやって「今の憲法と一体のものとしてこれを公布する」、まあ天皇が公布するんですけれど、そう書いてある。だから変えたところを今の憲法と一体のものとして公布するというんです。新憲法草案だと一体にならない。全然別のもので、96条は「全とっかえ」という改憲方式は想定していません。

ところが安倍さんはそういうことを国会の場で堂々と言ってしまいます。たぶんあの人は本当にわかっていないと思います。そういうことを言って何で悪いのかという話になると思いますが、それを野党も追及できないのは悔しいですね。だから今度の参議院選挙で安倍さんが、新憲法草案で争うということ自身が憲法99条違反です。憲法の遵守義務違反です。憲法擁護義務の違反ですよ。

改憲のための「変化球」もありうる

先ほどの読売新聞の世論調査なんか安倍さんが一番良く知っているわけです。だから改憲策動はそう簡単にストレートにはこないんです。9条をすぐにでも変えられるならすぐに9条を提案したい。しかしすぐに変えられないのなら、二段構えでやるという意見がもういっぱい出てきています。たとえば環境権とかで、2011年に1回やっておく。そうするとみんな国民投票に参加するから、次の国民投票の時にはもっと参加しやすい、2回目に9条をやろうという意見もあります。

もっと具体的な構想があります。たとえば自民党の中山太郎さんの場合は「3年という期間は決して長くはないので、週に2~3回は委員会を開く。2011年の後半に改憲を実現するときには89条違反の私学助成などの改憲は抵抗が少ないのではないか」と言っています。私学助成、学の独立の問題で難しいところです。でも憲法学者の解釈の結論は出ていますが、自民党は私学助成が憲法違反だって言うわけです。ここは現実と違うから変えよう、これだったら野党も反対できないだろうというわけです。それから裁判官の給料の問題があったでしょ。裁判官の給料も値下げはできないんですが、この前やっちゃった。これが80条。だから80条と89条、これでまずやろう。要するに野党からみてもこれは現実とあわないと思うのはこのふたつくらいしかない、これなら通るというんです。

これで国民投票は何%いくと思います? 89条と80条。そんなのに何で金使って国民投票までやるのって、ここにいる人たちは思うでしょう。行かないと、投票率20%とか15%になる、最低投票率を決めておくと成り立たない。彼らが必死で最低投票率の規定に反対する理由はこういうところにあるわけですよ。悪知恵が本当に働くと思います。こういうところからやって「改憲慣れ」させようかなどということを自民党の憲法調査会の会長がもう公然とマスコミなどに話し始めました。そして自公民路線を復活させたいということを言い出している。

だから改憲の本丸が9条を変えたいということにあるのは間違いないですが、これからの情勢の中でここを見定めてくると思います。私たちもこれに対応できるものを作っておかないと、絶対に9条からくると思っていたらやられちゃいます。大事なことはこういう場合に「あれもあるかもしれない、これもあるかもしれない、わぁ大変だ」ということじゃないんです。彼らの狙いの一番肝心は九条だということを依然として言い続けることが大事です。9条の改憲以外は全部「クセ球」だ、本当の狙い、本丸はまさに9条だということを、89条でくるときも繰り返し明らかにしていくことによって、私たちが憲法改悪を阻止していく可能性が出てくるのではないか。

9条改憲に反対する多数派の形成を

9条改憲に反対する政党の得票率は残念ながら13%くらいしかないのに、9条改憲に反対だという意見は過半数いるというこの問題です。これをどう解くかです。

「九条の会」などで梅原猛さんや三木睦子さんが私たちと一緒にやってくれていることの大事さはそこにあると思います。三木さんたちのような人がこの社会にはいっぱいいるということだと思います。社民党支持と共産党支持だけで集まるんだったら私たちの運動は、9条改憲阻止は勝てません。自民党を支持していて9条が大事だなんておかしい、論理矛盾だ、なんていったって始まらないですものね。そうじゃなくて一緒にやればいいんですね。そういう運動をこれからの時間に私たちがどれだけ広く作ることができるかというところにかかっている。そのことは決して容易ではないけれど、私たちはここの可能性に賭けていくことによって、もし最悪、彼らが一方的に国民投票をやってきた場合でもこれを打ち返せるだけの運動を作っていくことが大事なんじゃないか。

5年くらい前から言い始めましたが、市民連絡会は、5千万署名という夢をいまだにというか、これからますます持っています。国民投票になる前に5千万署名運動をやりたい。「九条の会」もいま署名をやったらいいのにとか、人によっては「九条の会」は今度の参議院選に候補を立てたらいいのにとか言う人もいます。でも今は「九条の会」はそうやっていません。私たちも憲法改悪に反対する署名はやっていますけど、いま5千万署名はやっていません。

しかし、どこかの時点では有権者の過半数を集めるような署名を9条改憲に反対するいろんな勢力が手をつないで、すごくわかりやすい1項目くらいでインターネット署名なんかまで使って5千万署名を国民投票に先立ってやることができたらどうなるか、そういう夢も依然として私たちは持っています。

この間、改憲手続き法に反対する署名は市民連絡会は数十万しか集めていません。平和フォーラムさんなどは300万くらい、全労連さんも何百万か集めていると思いますから、全体で改憲手続き法に反対する署名はたぶん概算で1千万くらい集まっていると思います。だから5千万と考えると気が遠くなるような話ではあります。

しかし、先日はマスコミ関係や出版労連やあるいは全港湾さんなどが憲法労組連を作って、憲法労組連だけで1千万署名をやりはじめました。逆に言えば憲法労組連で1千万署名を集めるなら、5千万署名だって不可能じゃないと思います。

「国民投票」になれば好機として受けて立つ

そして最後に、向こうが出してきた国民投票を否決したときにこの社会がどうなるかということを考えてほしい。内閣はぶっ飛びますよ。宮沢喜一元首相もそう言っています。自民党の改憲派に対して、「あんたら改憲、改憲って簡単に言うけど内閣の2つや3つ、下手をしたらぶっ飛ぶよ。そういうことを覚悟して言ってるのね、それなら賛成だよ」と。そう思いますよ。

彼らが全力をあげて国民投票を出してきたときに私たちのほうがそれを拒否する投票に勝利したときには、この社会の今までの支配的な政治勢力、国会の3分の2の政治勢力は威信失墜です。彼らの中でも執行部総辞職、内閣の総辞職要求だって出ます。新しい政治再編がそこで始まると思うんです。

そしてその投票をするときには、私たちは今日の私たちではなくて自覚を高めている私たちです。主権者として、有権者として、人によってそれぞれその考え方はいろいろ違うと思います。しかし今度の憲法改悪に対して自分はNOと入れると自覚を高めた人たちがこの社会の半数以上いる状態が否決するという状態ですから、そこから新しい政治再編、政治的激動が始まると私は思います。

60年安保のあのデモ以上の事態が起きるし、そういう状態を作らなければいけない。5千万署名運動をやるというのもそうです。

60年の安保改定阻止国民会議のたたかいはやっぱり政治的には負けたんです。60年安保は岸内閣を打倒しましたけれども安保条約は改定された。今度は内閣を打倒しただけではすまないわけです。憲法9条を変えさせない闘いです。そういうたたかいを一連の運動の中で作り上げていくことができるとしたら、私たちはこの国の未来に希望が持てるかなあと思います。

アメリカではブッシュ政権が孤立して、この前の世界銀行の総裁まで首がとられて、ネオコンの幹部はみんないなくなっている。アメリカはネオコンがガタガタになっているのに、日本ではネオコンのような安倍内閣ができてしまった。

戦後ずっと主流派になれなかった復古主義者どもが今この国の政治を握っています。中曽根ですらできなかった、小泉ですらそこまでは言えなかったネオコンと同じような安倍内閣が今できているもとで、私たちはこれと対決してかなきゃいけないという時代にいま入っている。

しかし、私は未来に対しては一種の楽観主義者です。
というのは、以上申し上げたような一定の根拠があり、がんばっていけば、勝機を切り開くことも可能だと思うからです。

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野党各党の衆参両院憲法調査特別委員の皆様/野党各党の責任者の皆様

許すな!憲法改悪・市民連絡会
憲法改正手続き法の抜本的再検討についての要請書

この通常国会で「憲法改正手続き法」が成立しました。しかしその経過は衆議院では、審議の不充分性を指摘する野党各党の反対を無視しての強行採決であり、参議院では野党が法案に反対する中で、18項目もの付帯決議をつけた上での採決でした。これは法案の審議がただただ与党の日程上の都合で急がれ、審議がまったく尽くされていないことの証明であるばかりか、成立した改憲手続き法制自身が重大な欠陥を持った法制であり、この施行にあたっては抜本的な再検討が必要であることを示すものであると考えられます。

ことは最高法規である憲法の改正にかかわる法制の問題です。もしも欠陥法制のまま憲法改正の発議と国民投票が実施されるようなことがあるなら、悔いを千載に残すことになります。
次の臨時国会からは憲法審査会が発足します。

憲法審査会の設置目的は「日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制について広範かつ総合的に調査を行い、憲法改正原案、日本国憲法の改正手続に係る法律案を提出できるものとすること」とあります。であるならば憲法審査会にとっては、まず第一にこの欠陥法制である改憲手続き法の抜本的な再検討こそ緊急の課題であると考えます。

私たちは両院の憲法調査特別委員会で問題になり、議論された多くの論点がいまだ納得いくように解明されていないと考えておりますし、付帯決議で指摘された諸問題だけをみても憲法と民主主義の根幹にかかわる極めて重要な問題であると考えております。

とりわけ、例えば最低投票率の規定に関する問題、公務員・教育者の地位利用による国民投票運動の規制の問題、罰則の適用の問題、テレビ・ラジオの有料広告規制の問題、国民投票の対象・範囲の問題、国民投票広報協議会の運営の公正性などの問題、凍結期間の憲法審査会の審議のあり方の問題などなどは、先の法案審議の終盤においてマスメディアなどからもさまざまに問題が指摘されてきたところであり、議論がつくされておりません。多くの人々がこれらの点に十分に納得しているとは到底考えられないのが現状ではないでしょうか。

参議院の採決の際に与党が賛成した「付帯決議」を与党自身がどのように取り扱うのか、私たちは注目しております。与党はまずこの付帯決議を誠実に取り扱い、そこで指摘された問題点の解明のための審議を行うべきだと思います。野党の皆さんも与党がこうした問題を無視し、暴走することのないよう、設立される衆参両院の憲法審査会の冒頭からこれにそった法制の抜本的再検討を断固として要求すべきであると思います。私たちは国会の外からそうした野党の皆さんの努力を支持し、協力する所存でおります。

以上の要請をぜひ御検討いただきまして何らかの形で御意見をお知らせ願えれば幸いです。
2007年6月18日

上記の要請に応えて、6月21日、日本共産党衆議院憲法調査特別委員の笠井亮議員から以下の文書が届きました。

許すな!憲法改悪・市民連絡会御中
「憲法改正手続き法の抜本的再検討についての要請書」、ありがとうございます。
要請書の主旨はごもっともだと考えます。
憲法審査会は、次の国会で設置されることになっていますが、その設置をめぐっても、また、審査会での調査、改憲原案づくり、審査をめぐっても、その一つひとつが改憲案の発議をゆるさない重要なたたかいの場となります。改憲政党の野望をくじくために、力を尽くしたいと思います。
自ら欠陥法であることを告白した付帯決議についても、法律を作った当事者である与党にたいして、その責任を果たさせることが重要だと考えます。
  そして、なによりも、直面する参議院選挙で、改憲政党に痛打を与えるために全力をあげます。これからも、ともに力をあわせてがんばりましょう。

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資料:5・3憲法集会のあゆみ(2001年~2007年)

2001年 生かそう憲法、高くかかげよう第九条――2001年5・3憲法集会

【会場】日比谷公会堂  5000名。集会後・銀座パレード。

【主催団体】:2001年5・3憲法集会実行委員会(憲法改悪阻止各界連絡会、憲法を生かす会、平和憲法21世紀の会、平和を実現するキリスト者ネット、許すな!憲法改悪市民連絡会)、“今週の憲法”編集部(オブザーバー))。

【スピーチ】 加藤周一(評論家)、澤地久枝(作家)、土井たか子(社会民主党党首)、志位和夫(日本共産党委員長)。

【各界からの発言】戦争への道を許さない女たちの連絡会・吉武輝子、航空安全推進連絡会議・大野則行、2001年女性の憲法年連絡会議・守谷武子、高校三年生、平和憲法を広める狛江連絡会・小俣眞智子、日本山妙法寺・武田隆雄。

【憲法劇】V2プロジェクト。【演奏】チェロ・福村忠雄 ピアノ・林さち子。
【各界からのメッセージ】川田悦子(衆議院議員)、紀平悌子(日本婦人有権者同盟)、久保田満宏(日本青年団協議会会長)、小林洋二(全国労働組合総連合議長)、佐々木秀典(民主党衆議院議員)、島袋宗康(沖縄社会大衆党委員長・参議院議員)、藤崎良三(全国労働組合連絡協議会議長)、矢田部理(新社会党委員長)、中村敦夫(参議院議員)、松下直子(全国婦人団体連絡協議会事務局長)。
【チラシのメッセージ】奥平康弘(東京大学名誉教授)、杉原泰雄(一橋大学名誉教授)、大津健一(日本キリスト教協議会総幹事)、辛淑玉(人材開発コンサルタント)、吉永小百合(俳優)、加藤剛(俳優)、喜納昌吉(歌手)。

2002年 生かそう憲法、高くかかげよう第九条、許すな有事法制――2002年5・3憲法集会

【会場】日比谷公会堂 5000名。集会後・銀座パレード。

【主催団体】:2002年5・3憲法集会実行委員会(憲法改悪阻止各界連絡会議、憲法を愛する女性ネット、憲法を生かす会、市民憲法調査会準備会、女性の憲法年連絡会、平和憲法21世紀の会、平和を実現するキリスト者ネット、許すな!憲法改悪市民連絡会)。
【スピーチ】コスタリカからの連帯の言葉・カルロス・バルガス(国際反核法律家協会副会長)、小田実(作家)、暉峻淑子(埼玉大学名誉教授)、志位和夫(日本共産党委員長)、土井たか子(社会民主党党首)。

【各界からの発言】平和をつくりだす宗教者ネット・小河義伸、全港湾労働組合・伊藤彰信、CHANCE!・海南友子、女性の憲法年連絡会・中小路貴子、子どもと教科書ネット21・糀谷陽子。
【太鼓】のむぎ平和太鼓。
【各界からのメッセージ】川田悦子(衆議院議員)、紀平悌子(日本婦人有権者同盟会長)、小林洋二(全国労働組合総連合議長)、小森龍邦(新社会党委員長)、島袋宗康(参議院議員・沖縄社会大衆党委員長)、中村敦夫(参議院議員・みどりの会議代表)、東和文(日本青年団協議会会長)、藤崎良三(全国労働組合連絡協議会議長)、横路孝弘(衆議院議員)、和田正江(主婦連合会会長)。

【チラシのメッセージ】加藤剛(俳優)、加藤周一(作家)、澤地久枝(作家)、大津健一(日本キリスト教協議会総幹事)、杉原泰雄(一橋大学名誉教授)、吉永小百合(俳優)。

2003年 生かそう憲法、高くかかげよう第九条――2003年5・3憲法集会

【会場】日比谷公会堂  2500名 集会後・銀座パレード

【主催団体】:2003年5・3憲法集会実行委員会(憲法改悪阻止各界連絡会議、憲法を愛する女性ネット、憲法を生かす会、市民憲法調査会、女性の憲法年連絡会、平和憲法21世紀の会、平和を実現するキリスト者ネット、許すな!憲法改悪市民連絡会)

【スピーチ】特別発言 教育基本法「改正」問題につい。て・永井憲一(法政大学名誉教授)、池田香代子(翻訳家/『世界がもし100人の村だったら』再話者)、山内徳信(元読谷村長/平和憲法・地方自治問題研究所所長)、土井たか子(社民党党首)、志位和夫(日本共産党委員長)。

【各界からの発言】5・4全国高校生大集会実行委員会・西之原恵美子(私のピースアクション)、真言宗僧侶・石川勇吉、エッセイスト・朴慶南、弁護士・内田雅敏。
【ダンス・パフォーマンス】ピースボート・TEAM SPACE。

【各界からのメッセージ】紀平悌子(日本婦人有権者同盟会長)、熊谷金通(全国労働組合総連合議長)、小森龍邦(新社会党委員長)、島袋宗康(沖縄社会大衆党委員長・参議院議員)、東和文(日本青年団協議会会長)、藤崎良三(全国労働組合連絡協議会議長)、横路孝弘(衆議院議員)、和田正江(主婦連合会会長)。

【チラシのメッセージ】暉峻淑子(埼玉大学名誉教授)小田実(作家)、一番ヶ瀬康子(大学教員)、山田洋次(映画監督)、ジェームス三木(脚本家)。

2004年 とめよう憲法改悪 立ち上がろう9条の実現のために イラク派兵を許さない――2004年5・3憲法集会

【会場】日比谷野外大音楽堂 5000名。集会後・銀座パレード。

【主催団体】:2004年5・3憲法集会実行委員会(2003年と同じ)

【リレートーク】マオリティオ・グッビオッティ(イタリア「平和のテーブル」)、チョン・ギュンラン(韓国「平和を創る女性の会」国際連帯委員会委員長)、福島瑞穂(社会民主党党首)、志位和夫(日本共産党委員長)。

【各界からの発言】次代を願う若い世代から中学生の声、女性の立場で・水野英子(東京都地域婦人団体連盟)、宗教者として・鈴木伶子(日本キリスト教協議会)、働く者から・内田妙子(航空労組連絡会)、教育を守ろう・丸浜江里子(杉並の教育を考えるみんなの会)、地域とともに・中尾こずえ(許すな!憲法改悪・北部市民連絡会)。

【歌と語り】横井久美子(シンガーソングライター)、【コント】THA NEWS PAPER。
【司会】大原穣子。

【ポスター&ロゴマーク審査発表】小河義伸(平和を実現するキリスト者ネット)。
【プレコンサート他】うたごえ合唱団。ポスター&ロゴマークの審査発表。リゴベルタ・メンチューとオスカー・アリアスからメッセージ。デモ出しでは「生田卍とSOSO」が演奏。

【各界からのメッセージ】永六輔(放送タレント)、紀平悌子(日本婦人有権者同盟会長)、熊谷金道(全国労働組合総連合議長)、小森龍邦(新社会党中央本部委員長)、高橋哲哉(東京大学教授)、藤崎良三(全国労働組合連絡協議会議長)、松浦利明(日本青年団協議会会長)、横路孝弘(民主党衆議院議員)。

【海外メッセージ】ノーベル平和賞受賞者=リゴベルタ・メンチュー・トゥム、アリアス・オスカー、 韓国イラク派兵反対非常国民行動351団体一同。
【チラシのメッセージ】石坂啓(漫画家)、姜尚中(東京大学教授)、鶴見和子(上智大学名誉教授)、宮城泰年(聖護院本山修験宗宗務総長)、山内敏弘(龍谷大学教授)、渡辺一枝(作家)。

2005年 九条を守る大きなうねりを!とめよう憲法改悪――2005年5・3憲法集会【会場】日比谷公会堂 5000名。集会後・銀座パレード。

【主催団体】:2005年5・3憲法集会実行委員会(2003年と同じ)

【構成】連帯のあいさつ 三木睦子(三木武夫記念館館長)。スピーチ 山崎朋子(ノンフィクション作家、小林武(愛知大学教授)、志位和夫(日本共産党委員長)、福島瑞穂(社会民主党党首)。

【各界からの発言】教育基本法・八尋麻子(教育基本法をとめよう!全国連絡会)、ビラ入れと言論の自由・荒川康生(葛飾ビラ配布事件)、信教の自由・糸井玲子(日本キリスト教協議会)、基地問題・呉東正彦(原子力空母の横須賀母港問題を考える市民の会)。

【コーラス】神楽坂女性合唱団有志。

【集会へのメッセージ】糸数慶子(参議院議員)、紀平悌子(日本婦人有権者同盟代表)、熊谷金道(全国労働組合総連合議長)、小池清彦(元防衛庁教育訓練局長)、小森龍邦(新社会党中央本部委員長)、藤崎良三(全国労働組合連絡協議会議長)、松浦利明(日本青年団協議会会長)。

【チラシのメッセージ】天木直人(元レバノン大使)、大石芳野(フォトジャーナリスト)、小森陽一(東京大学教授)、城山三郎(作家)、ベアテ・シロタ・ゴードン。

2006年 憲法改悪のための国民投票法はいらない とめよう『戦争をする国』づくり 生かそう9条のちから――2006年5・3憲法集会

【会場】日比谷公会堂 4000名を越える参加者 集会後・銀座パレード。

【主催団体】:2006年5・3憲法集会実行委員会(2003年と同じ)

【構成】スピーチ 富山和子(立正大学名誉教授)、李俊揆・イジュンキュ(韓国・平和ネットワーク政策室長)、志位和夫(日本共産党委員長)、福島瑞穂(社会民主党委員長)。

【各界からの発言】日本国憲法について思うこと・ジャン・ユンカーマン(映画監督)、教育基本法について・東本久子(教育基本法「改正」反対市民連絡会)、基地問題について・大野芳一(新横田基地公害訴訟団)、グローバル9条キャンペーン・笹本潤(日本国際法律家協会)。

【Qちゃんサンバ】ミュージカル・ギルドq.。

【各界からのメッセージ】井出本榮(全日本海員組合組合長)、糸数慶子(参議院議員)、岡下進一(日本青年団協議会会長)、熊谷金道(全国労働組合総連合議長)、栗原君子(新社会党委員長)、平岡秀夫(衆議院議員・民主党)、藤崎良三(全国労働組合連絡協議会議長)、水野英子(NPO法人東京都地域婦人団体連盟副会長)。

【チラシのメッセージ】山崎朋子(作家)、山本俊正(日本キリスト教協議会総幹事)、香山リカ(精神科医)、俵義文(子どもと教科書全国ネット事務局長)、湯川れい子(音楽評論家・作詞家)、山内敏弘(龍谷大学教授・憲法)。

2007年 憲法施行60周年 生かそう憲法守ろう9条 改憲手続き法はいらない 2007年5・3憲法集会&1万人パレード

【会場】第1部憲法集会 日比谷公会堂 6000名を越える参加者
第2部1万人の銀座大パレード 7000人。

【主催団体】:2007年5・3憲法集会実行委員会(2003年と同じ)

【構成】スピーチ 植野妙実子(中央大学教授・憲法学)、浅井基文(広島平和研究所所長)、福島みずほ(社会民主党党首)、志位和夫(日本共産党委員長)。

【歌&コント】オオタスセリ

【各界からのメッセージ】岡下進一(日本青年団協議会会長)、川内博史(衆議院議員・民主党)、櫛渕万里(NGOピースボート事務局長)、栗原君子(新社会党委員長)、坂内三夫(全国労働組合総連合議長)、藤崎良三(全国労働組合連絡協議会議長)、村中祐生(宗教者九条の会世話役 天台宗僧侶)、元木末一(陸・海・空港湾労組20団体 全国港湾労働組合協議会議長)。

【チラシのメッセージ】李俊揆・イジュンキュ(韓国・平和ネットワーク)、熊岡路矢(日本国際ボランティアセンター理事)、西野瑠美子(「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク・VAWW-NETジャパン共同代表)、森田実(政治評論家)、富山和子(立正大学名誉教授・環境学)、ジャン・ユンカーマン(映画監督)、小山内美江子(脚本家)。

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