私と憲法72号(2007年4月25日)


改憲手続き法をごり押しする安倍内閣と与党にたいし、 9条改憲反対の広範な世論を基礎に全力でたたかおう

与党は4月12~13日、衆議院の特別委員会と本会議で、改憲手続き法案を強行採決した。法案は翌週から参議院での審議に移った。憲法にかかわる重要法案であるにもかかわらず、実に郵政民営化法案(約120時間)の半分にも満たない極めて短い審議時間であった。

しかし、今始まった参議院憲法調査特別委員会の審議の異常さはこれにも増して目に余る異常な状態だ。16日の参院本会議での主旨説明で、衆議院での強行採決で図に乗ったのか保岡興治・法案提案者(衆議院議員)は「(参院では)ゼロから議論を始めるのではなく、衆議院での審議を踏まえて、まさに良識の府として足らざるところを集中的に審議されると思う」などと述べ、議場が騒然となった。これは二院制における参院の意義を公然と否定した発言で、のちに陳謝、発言議事録削除となったが、与党は反省するどころか、翌日からは3時間、6時間、7時間と連日の審議強行となった。当然の結果として次第に委員席は空席が目立ちはじめ、居眠りやあくびをする者も相次いだ。委員は十分な討論の準備もできないありさまだ。これはできれば5月3日までに成立させたい、遅くとも5月中旬までには成立させたいという右派強硬派で占められた安倍政権与党執行部による国会運営なのだ。

社民と共産に委員の連日開催に反対し、衆議院同様に審議の定例日を設けよと主張した。19日、民主党は「地方公聴会の開催」などの条件を挙げ、「具体的な回答が無ければ明日の審議には絶対に応じない」と主張した。民主党が与党に提示した条件は、(1)民主党の全議員質問の保障、(2)地方公聴会の開催、衆院比例ブロックを基準に全ブロックで行う(衆院でやった信越、近畿は除く)9ブロックで。(3)参考人質疑~6テーマごとの開催、①国民投票の対象(憲法に限るのか)、②最低投票率、③メディア規制、④運動規制(公務員地位利用など)、⑤国民投票無効訴訟、⑥両院のあり方(協議会、審査会、広報)などだった。この結果、与党は20日の開催はやめ、23日に3時間参考人質疑、24日に仙台と名古屋で地方公聴会を同時開催すると回答し、民主党と合意した。

しかし、この参考人は与党推薦2人、民主2人、地方公聴会の公述人も同様に2人づつとなった。なぜ共産、社民の参考人、公述人の推薦をなくしたのか。なぜ地方公聴会は同時開催にしたのか(衆議院では2か所同日だったが、時間をずらして委員たちは両方出席できた。同時開催だと委員を1人しか出せない共産、社民は自動的に一方は出席できなくなる)。このような少数会派の発言権を奪う非民主的な運営はあってはならないし、与党の責任は当然だが、同意した民主党の責任も問われるべきだろう(これを「野党の意見がある程度入れられたのだから、一歩前進」などと喜んではいられない)。野党は結束して、与党の「はじめに出口(強行採決)ありき」の委員会運営に反対して闘わなくてはならない。

朝日新聞はここにきて14日と19日と続けて「改憲手続き法案(同紙は「国民投票法案」というが)」について、「廃案にしてでなおせ」「最低投票率について議論せよ」という主旨の社説を出した。沖縄や北海道など、地方紙の主張も同様の意見が多い。NHKをはじめ各報道機関の世論調査でも、同法案の今国会の成立を求める声は少数だ。与党はこれらを無視して今国会での強行をはかっているが、それは民意に背いている。

安倍首相は米国の要求に沿い、9条を変えて集団的自衛権の行使ができる日本、「戦争のできる国づくり」をめざしている。改憲手続き法案はその不可欠の布石だ。しかし、これも世論の多数の声ではない。また読売新聞、NHK、共同通信と、相次いで発表された憲法についての世論調査の結果は、改憲一般でもこのところそうした意見が減少していることを示しているだけではなく、9条についてはより明確に、改憲反対が改憲賛成を大きく上まわっていることを示しており、これが増加傾向にあることを示している。

これらは安倍改憲内閣の政治への人びとの反応であり、この間の「九条の会」をはじめとする多くの人びとの運動の反映であるに違いない。

この数年の改憲手続き法案に反対する運動(国民投票法案反対の運動も含めて)は、国民投票への一般的な期待もあり、広げることは容易ではなかった。しかしこの困難を打開しながら、私たちは市民連絡会関係だけでも全国からの数十万人の署名や数次にわたる団体共同声明など、一定の拡がりを作ってきた。それだけでなく各界の人びととの共同の運動の中で、闘いは大きく拡がり、この悪法の本質や内容についての見解も広く普及されつつある。昨年末の成立といわれた法案を阻止し、通常国会冒頭にもといわれた状況をうち破り、与党の3月はじめという計画も押し返し、5月3日までにはという安倍首相の企ても阻止してきた。すでに自公民3党による共同提案と採択という改憲派の計画は破綻した。枝野民主党前筆頭理事が言ったように、与党単独採決は、両院の総議員の3分の2の賛成という改憲発議条件を困難にした「究極の護憲」にほかならない。これらの闘いが憲法改悪、とりわけ9条改悪に反対する運動の重要な支えとなっていることは疑いない。今、この改憲手続き法案に反対する運動は最大の山場に至っている。この参議院の闘いは廃案か、成立かの分かれ目だ。私たちはあきらめずに全力で闘い、9条改憲反対のさらなる運動を巻き起こさなければならない。(事務局 高田健)

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第21回市民憲法講座(要旨)
安倍政権と「集団的自衛権」-憲法の語り部となるために-

金子勝(立正大学教授・憲法学)さん

(編集部註)3月24の講座で金子さんが講演した内容を編集部の責任で大幅に要約したもの。要約の文責は全て本誌編集部にあります。

お手元にびっくりするような分厚いレジメと資料を用意させていただきました。何でかというと、今日のタイトルの下に「憲法の語り部になるために」というサブタイトルを付けさせていただきました。われわれが改憲を阻止するためには、みなさんが今日勉強されたことを憲法の語り部として、いろんなところでお話ししていただくために若干基本的な資料をお届けするという趣旨がひとつ。もうひとつは皆さんの質問に備えてです。

最初に資料の説明ですが、1枚目はいま問題になっている集団的自衛権の根本にある1960年6月23日に結ばれた日米安全保障条約です。これを結んだのが安倍首相のおじいさん、岸信介ですね。この安保条約をもっと軍事的に強化しようと「日米安全保障共同宣言」がつくられました。そしてこの日米安全保障共同宣言に基づいて戦争のやり方を書いたのが「ガイドライン」といっている「日米防衛協力のために指針」ですね。その次が一番新しい小泉さんとブッシュさんが結んだ「新世紀の日米同盟」です。60年の「日米安全保障条約」と「日米安全保障共同宣言」と「ガイドライン」と「新世紀の日米同盟」で現在の安保条約がつくられています。この安保条約を実行するためには日本国憲法は邪魔ですから、自民党は日本国憲法を廃止して日米安保条約が実行できる憲法をつくるよ、ということで新憲法草案をつくったわけです。

最後の資料は、国際社会では憲法九条を自分の国の憲法に入れようという動きが起こっているということです。1991年の湾岸戦争のときに、世界中の憲法とアメリカの憲法に日本国憲法九条を入れようという運動を起こした人がチャールズ・オーバービーさん。1991年3月18日、自分の誕生日にオハイオ州で「第9条の会」を作った。その9年後の1999年5月11日から15日までオランダのハーグで世界中のNGOが集まって「ハーグ平和アピール市民社会会議」が開かれた。ここで「公正な世界秩序のための10の基本原則」が採択され、一番目に「各国議会は、日本国憲法第9条のような、政府が戦争をすることを禁止する決議を採択するべきである」を入れた。こういうふうにして各国議会で政府が戦争してはいけないとなったら、戦争できなくなってしまうわけです。

2000年には世界中のNGOが集まって国連本部で開催された「ミレニアム・フォーラム 平和安全保障及び軍縮テーマグループ」の最終報告書(http://disarm.igc.org//millsd.html)を読むと、このグループの中で最も多く取り上げられた論題とか提案は「すべての国が、日本国憲法第九条に表現されている戦争放棄の原則を自国の憲法において採択する」でした。2006年6月にはカナダのバンクーバー市が主催した「第1回世界平和フォーラム」で、「バンクーバー平和アピール2006」が採択された中に「各国政府による憲法上での戦争放棄(例えば日本の九条のように)」というかたちで、自国の憲法に九条を入れようという運動が大きくなっています。いろんな国際社会で、どういう基準が一番いいかというとやはり九条だというんですね。だから九条は21世紀の「北斗七星」、人類の導きの星になるだろうというのが世界の動きです。それなのに日本では九条を潰そうとしている。九条を守る運動は世界中の個人と団体と政府と手を結ぶことができる。改憲派はね、アメリカとしか手を結べないんですよ。

集団的自衛権と9条

2005年11月22日に自由民主党は現在の日本国憲法を廃止して新しい憲法をつくるという新憲法草案を決定しました。本当は自民党は1955年11月15日の結成だから、結成記念だと11月15日なのに、なんで22日に延びたか? 実は天皇家の長女、紀宮清子さんが結婚した日です。自民党は国民主権を言っているけれども天皇家の方が大切だから党大会を1週間延ばした。これが自民党の本質ですね。そして新憲法草案の内容を先取り的に実行しているわけです。教育基本法の改悪も防衛庁の省昇格もみんなこれは新憲法草案をやっていますね。その一方で憲法を廃止するために改憲手続きを整えよう、ということです。ことしの5月3日は日本国憲法60周年ですから、5月3日までに改憲手続き法をつくれば日本国憲法60周年記念を阻止したことになる。安倍内閣総理大臣は自分でやれるかどうかは別として「6年の間に、総裁の任期中に憲法改正を目指したい」という。どこを目指すかというと、「時代にそぐわない条文として典型的なのは九条だから、日本を守る観点や国際貢献を行う上で改正すべきだ」と2006年10月31日のアメリカのCNNテレビとイギリスのフィナンシャル・タイムズのインタビューで答えた。

そのうえ総理大臣になったときの所信表明演説で「日米同盟がより効果的に機能し、平和が維持されるようにするため、いかなる場合が憲法で禁止されている集団的自衛権の行使に該当するのか、個別具体的な例に即し、よく研究してまいります」といっています。2007年1月26日の国会の施政方針演説でも内容は同じことを言っている。安倍氏は日米同盟のために、日本国憲法のもとで集団的自衛権を行使できるかどうかを、内閣法制局は行使できないと言っているから、おれの力で使えるようにすると言っている。改憲ができるまでは解釈改憲によって集団的自衛権を使えるようにするとしているんです。そうすると「日米同盟」とはいったい何だ。昔は「日米同盟」に反対した鈴木善幸という総理大臣はクビになったんですけれども、いまは平気で言っている。

日米同盟とは何か

日米安保条約体制に基づいてつくられている日本とアメリカとの関係を日米同盟といっています。現在の日米安保条約の構成は1960年6月23日に発行した日米安保条約です。2番目は1996年4月17日に発行した「日米安全保障共同宣言」。これを結んだのがクリントンと橋本龍太郎で、これが「日米安全保障共同宣言-21世紀に向けての同盟」。3番目が1997年9月23日に作成された「ガイドライン」-「日米防衛協力のための指針」、そして4番目に「新世紀の日米同盟」、これは2006年6月29日に、小泉さんがアメリカで結んだ。この4つで現在の日米安保条約体制がつくられているわけです。この中身を見ておかないと日米同盟はわからない。

まず60年の安保条約は軍事的な問題と経済問題の両方で構成されています。第2条は経済問題で、いま日本とアメリカとの関係のいっさいはここから出てきています。この前半はNATOと同じような文章で、日本とアメリカは資本主義国だからお互いに資本主義を発展させていこうということですが、これは枕詞みたいなものですね。問題なのは後ろです。「締約国は、その国際経済政策におけるくい違いを除くことに努め、また、両国の間の経済的協力を促進する」、日本とアメリカとの間で経済的な対立が起きたら日本の犠牲においてアメリカの言うことを聞きなさいということをいっている。これが日米協力だ。だから日本の農業も商業もみんな安保条約から潰されている。例えばシャッター商店街があるでしょ。昔はスーパーができるときには地元の商店街の許可がないとつくれなかった。けれどもアメリカの「トイザラス」というおもちゃのスーパーが新潟県に上陸するときに、アメリカの要求で今後スーパーは地元の許可がなくてもつくれるというふうにしちゃった。日本のスーパーものっかった。

それから日本の農業は小麦の輸入自由化、果物の自由化、米の自由化です。これによって日本の農業は潰された。郵政民営化、これはアメリカの保険会社「アフラック」と関係があります。国民の貯金をアメリカの銀行と保険会社がかっぱらうための郵政民営化です。最近、挙げられている談合も、談合があるとアメリカの建設会社が、日本の市場で金儲けができないから、早く潰せといっているからやっているだけの話です。もっとも談合なんてあっちゃいけないんですよ。

第3条、第5条、第6条

第3条は「締約国は、個別的に及び相互に協力して、持続的かつ効果的な自助及び相互援助により、武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力を、憲法上の規定に従うことを条件として、維持し発展させる」。この「憲法上の規定」は日本国憲法じゃないです。岸信介は安保条約を結ぶときにアメリカに、安保条約が成立したら必ず憲法九条を潰します、と約束した。だからこれは新しい憲法を先取りして書いたわけです。けれども岸が国民に倒されて自民党は改憲ができなかったから、九条が残り困っている。だから早く九条を潰せ、集団的自衛権を使えと言っているのがアメリカです。けども主旨は日本に毎年毎年軍事費を増やせという軍拡の義務付けです。あんまり軍事費を増やすと困るので、いまは手の込んだことをやっている。例えばスパイ衛星を打ち上げるのは防衛費でなく、内閣府です。海上保安庁は、外国では軍事費だけれど日本は警察費になっている。そうやって軍事費が増えるのをごまかしている。

第5条は、日本がどこかの国から襲われたらアメリカは自分の国が襲われたと思って日本と一緒に戦争しましょうということです。それから日本の米軍基地が襲われたら、日本も自分の国が襲われたと思って一緒に戦争しましょうという規定です。米軍基地から飛び立った飛行機がどこかの国と戦争をやっても自分の国が襲われたと思って一緒に戦争しましょうという規定です。これがいままで一度も発動されなかったのは、憲法九条があって国民が戦争に反対したからです。

第6条は、「極東の平和」のためにアメリカは日本のどこにでも軍事基地を日本のお金でつくることが出来ると言っています。いま133カ所の米軍基地が日本にあります。米軍のための海水浴場、ゴルフ場もある。三宅島は、夜間訓練基地をアメリカはつくれといったけれど、島民の85%が反対してつくれなくて、硫黄島につくった。それが硫黄島は不便だからといま横須賀で訓練をやっている。これが安保条約です。

安保の拡大

60年の安保条約は「極東」で戦争をするとしたけれど、極東じゃ狭いから、安保条約をもっと拡大しようということで、「日米安全保障共同宣言」が1996年4月17日に結ばれた。戦争する範囲を「アジア太平洋地域」に拡大しました。日本政府の説明によると日本列島と朝鮮半島の半分、大韓民国と台湾、フィリピン、が極東です。これが60年の安保条約で決めた日本とアメリカが戦争する地域です。アジア太平洋地域は地球の半分です。残りの半分はNATOで戦争するとアメリカはいっています。これが日米安全保障共同宣言の大きな目的です。

日米安全保障共同宣言の目的は、1995年2月27日に公表されたアメリカ国防総省の報告書「東アジア太平洋地域に関するアメリカの安全保障戦略」(東アジア戦略報告)、この「東アジア太平洋地域」が「アジア太平洋地域」です。それによると、21世紀はアジアの時代になるから、ここでアメリカは金儲けができないとアメリカの将来に決定的にマイナスになる。ここで金儲けできるように軍事力をつぎ込まなきゃいけない。これが日米安全保障共同宣言の主旨です。

1990年代初頭からグローバリゼーションが始まります。日本ではグローバリゼーションは「経済の地球規模化」と言っているけれど、グローバリゼーションとは大企業が世界中で金儲けするのを正当化する理論です。発達した資本主義国の大企業は自分の国だけで金儲けをしているわけじゃないんです。トヨタを例に挙げると本社の指令で世界中のトヨタの子会社が車をつくる、こういう企業のことを多国籍企業といっています。アメリカが一番発達していて、コカコーラ、ペプシコーラ、マクドナルド、運動靴のアシックス、日本でいえばトヨタ、日産はルノーに買収されたからフランスの多国籍業、その他ソニー、ナショナル、みんな多国籍企業。アメリカの大企業がアジア太平洋地域で儲けた金を襲われたりしたら困るから、そこで軍事力をつぎ込むために日米安保条約を強化するといって日米安全保障共同宣言が結ばれたわけです。

その宣言では、日米安保条約の対象範囲は「原則としてアジア太平洋地域」で、場合によっては「全世界」になる。2番目には日米安保条約は日本と日本の米軍基地が襲われたら戦争するといったけれど、もう一つ「日本の周辺地域で、日本の平和と安全に重要な影響を与える事態が生じたら、日本とアメリカは戦争する」ことを新設するといっている。これが「周辺事態」といわれるもの。例えばネパールで王様同士が殺し合いをやった、これが周辺事態だといえば戦争に行くわけです。中東でもアメリカが周辺事態だといえば戦争に行くということです。とにかく日本とアメリカが襲われなくても、日本とアメリカが「これはちょっと危険だな」と思うとみんな戦争に行くのをつくった。だから戦争する方法がふたつできたわけです。

ガイドラインの見直しと周辺事態法

3番目に、1978年のガイドラインの見直しです。それが1997年の「日米防衛協力のための指針」です。ここにはふたつの戦争のやり方が書いてあります。ひとつは日本と日本にある米軍基地が襲われた場合で「日本に対する武力攻撃がなされた場合」の戦争の方法です。これもアメリカが判断します。アメリカが判断すると、日本国内とその周辺、海空域でアメリカ軍と自衛隊が共同で戦闘を行う。戦闘というのは一番最前線で鉄砲を撃つことです。それからアメリカ軍と自衛隊は相互に後方支援を行う。後方支援というのは軍隊同士がお互いにものを交換する、役務を交換する、アメリカ軍が困っているから、傷ついているから助けてやれ、日本の基地や港などの施設、情報も与えようといものです。それから戦闘参加者、兵隊が傷ついたり、海で船が沈んでいるときに「ヘルプ、ヘルプ」といっていたら救援活動をやる。これが後方支援で、これがないと戦争なんてできません。後ろから鉄砲の弾を送る、食べ物も送らないといけない。戦争というのは戦闘行為と後方支援が一体化して初めて行うことができるわけです。日本国政府は憲法九条があるから後方支援は軍事活動ではないからできるといって、いまアフガニスタンの戦争で油を提供しています。油を提供することは立派な戦闘行為・戦争行為ですよ。

さらに日本とアメリカの軍事基地が襲われたときのために「武力攻撃事態法」が制定された。武力攻撃事態法では、自衛隊と米軍が戦争しているときに国民が反対すると撃ち殺してもいいことになっている。例えば軍事基地をつくるための土地取り上げに反対すると、自衛隊は撃ってもいいことになっている。もうひとつは「周辺事態(日本周辺地域における事態で、日本の平和と安全に重要な影響を与える場合)があった場合」の戦争の方法です。これも「原則としてアジア太平洋地域」で、場合によっては「全世界」で、周辺事態が生じたというアメリカの勝手な判断で、周辺事態ができると、アメリカと日本が共同で戦争を行う。その場合日本には憲法九条があってピストルを撃てないから、日本列島全体をアメリカの軍地基地にしてアメリカの後方支援をやりなさい。ピストルを撃つためには集団的自衛権が必要で、いまのところ集団的自衛権は使えないから、だから日本列島を基地にしてアメリカの戦争に全面的に協力しなさいということです。

日本がやることは、例えば港と飛行場はすべて24時間労働者付きでアメリカ軍に解放する。日本の港は自治体が管理していて国が管理しているのは自衛隊の基地しかない、飛行場も国が管理しているのはいまは羽田だけ、あとはみんな民間空港だから、その労働者付きですべての飛行場と港を米軍に優先的に使用させる。その上で、アメリカ兵が遭難していたら自衛隊が救助に行く、戦争地域でアメリカの一般市民が困っていたら日本とアメリカは一緒になって助けに行きましょう、国連の安全保障理事会で経済制裁が行われたら一緒になって経済制裁をやりましょう。こういうことを一緒にやることになります。

その上で日本のアメリカ軍に対する後方地域支援は、補給――武器弾薬以外は戦争に行くアメリカが必要なすべてを日本がただでアメリカに提供する。水から食べ物から油からいっさい、これが補給です。それから輸送――米軍の軍艦に必要なものを日本から日本の船で運んでやる。米軍基地から米軍基地まで日本が物資を運んでやる、これが輸送です。それから整備――戦場で壊れたアメリカの軍艦や飛行機、戦車、ジープを日本でただで直してやる、部品もただでやる、これが整備。それから衛生――アメリカの兵隊が傷ついたら日本で手術をしてやる。すべての病院は米軍が優先です。アメリカ兵が病気になったら薬もただで渡す、これが衛生。それから警備――日本人や在日外国人から米軍基地が襲われないように警備する。自衛隊、機動隊、ボーイスカウト、ガールスカウト、ガードマンが米軍基地をガードする。自衛隊員や機動隊員がピストルを撃つこともある。それから通信――宇宙衛星放送はすべて米軍に提供するといっているから、BS見ているときにいきなり迷彩服の米兵が出てくることがあるかもしれない。それから地雷撤去――例えば公海上の地雷を、先に自衛隊員が撤去に行って自衛隊員が沈んでから、アメリカの軍艦が行く。こういうことのために「周辺事態措置法」が制定されたんです。

アメリカの集団的自衛権の要求については、2000年10月11日付けで「アメリカ国防大学国家戦略研究所」の特別報告書「合衆国と日本-成熟したパートナーシップに向けて」という、アーミテージ・レポートで言っています。「日本が集団的自衛権を禁じていることが両国の同盟関係を制約している」。だから「我々はアメリカとイギリスとの特別の関係を米日関係のモデルと考えている。これには以下の諸点が必要である」ということでガイドラインをきちんと日本は実行しなさい、日本の自衛隊と米軍がもっと一体化しなさい、集団的自衛権を使えるようにしてそれをやりなさい、と言っています。

2006年の安保条約

2006年「新世紀の日米同盟」は、「21世紀の地球的規模での協力のための新しい日米同盟」なんです。アジア太平洋地域ではなく、こんどは地球的規模でアメリカと日本が戦争をする安保条約をつくらなければいけないというものです。この2006年の安保条約は、まず「全世界」で、アメリカがあくまでも主人公でアメリカと日本の国益――国益とは国家と多国籍企業の利益のことをいうんで、国民の利益なんて入っていません――、アメリカの価値観とそれに基づく行動を最高のものとして、それに反対するものは、国でも民族でも集団でも、アメリカ主導で理由がなく戦争をやる、そういう安保条約にするのが2006年の安保条約、現在の安保条約であり日米同盟です。したがって現在の安保条約は米国至上主義、米日核軍事同盟体制、アメリカの核戦略によって日本は守られる。安倍内閣は非核三原則を本当に潰したいと思っているんですよ。日本にアメリカの核兵器がこなくちゃ核軍事同盟体制ができないわけですから、アメリカの核兵器が表から入れるように非核三原則を潰すといっているわけです。

ブッシュ大統領は今度の安保条約はNATOと結合すると、2006年11月29日にいった。安倍総理大臣も2007年1月12日のNATO本部での演説で協力しますと言った。21世紀の安保条約はNATOとも結合して世界中で戦争するんですね。経済分野では日米同盟を強化する、だから日本の市場を全面的にアメリカに解放する。まだ入ってない農業分野で日本の市場を完全にアメリカの金儲けの場にするのが2006年の新しい安保条約です。

在日米軍と自衛隊の再編

現在アメリカは在日米軍と自衛隊の再編を行っています。在日米軍再編は2014年に完了するとアメリカは言っています。2014年には日本もアメリカと一緒に世界中で戦争をしなきゃいけないわけで、そのために改憲しなきゃいけないから、だから安倍内閣は今年中に改憲手続きをつくらなければならないんです。これはアメリカの必要から言っているんです。だったら改憲派はどうして「押しつけ改憲」を批判しないんでしょうか?在日米軍と自衛隊の再編は、まず沖縄のアメリカ海兵隊、殴り込み部隊の18,000人の8,000人だけをグアム基地に移転させる。2番目にキャンプ座間にアメリカ陸軍戦闘司令部を創設する。陸上自衛隊中央即応集団というのはアメリカの海兵隊と同じようなもので、これをつくって2012年までに座間に司令部を移転する。3番目、アメリカ海兵隊岩国基地に厚木基地の第五空母航空団を移転する。それからアメリカ海兵隊キャンプ・シュワブ沖に普天間飛行場の代替基地をつくる、これがV字型というやつですね。航空自衛隊航空総隊司令部が在日アメリカ空軍司令部のある横田飛行場に2010年度に移転する。ここでも自衛隊の司令部が米軍の司令部と一緒になる。自衛隊の完全なアメリカ軍化が狙われているわけです。

地球的規模での日米同盟のための集団的自衛権

2007年に発表された第二次アーミテージ報告「米日同盟-2020年に向けてアジアを正しく方向付ける」では、中国は大国化する、インドは経済力で中国を抜く、朝鮮半島は統一化するという。このために日本は2020年までに集団的自衛権が使えるようになって、アメリカと日本が世界中どこでも一緒に戦争できるようになったらこんなにアメリカにとって好ましいことはない。そういうことはわれわれは大歓迎だ。だから早く集団的自衛権を使えるようにしなさいといっています。これが安倍首相が集団的自衛権を使えるようにするといった基礎です。したがって安倍連立政権が集団的自衛権を行使できるようにしようとしているのは「地球的規模での日米同盟」を1日も早く可能とするためです。もうひとつは日本が国際連合の安全保障理事会の常任理事国となるためです。常任理事国は国連軍ができると国連軍に軍隊や指揮者を派遣しなければいけないわけです。安全保障理事会の常任理事国になることは憲法九条を潰すことですね。そのふたつで集団的自衛権を行使できるようにすることが安倍首相の狙いです。

自衛権とは何か

自衛権とは何かということです。自衛権は昔はただひとつ個別的自衛権だけでした。国際連合ができて、集団的自衛権ができたからいまは自衛権というと個別的自衛権と集団的自衛権になったんですね。自衛権はどうやって生まれたのかというと、第一次世界大戦後にできた新しい国家の権利です。第一次世界大戦前は、頻繁に使われたのは国家の「自己保存権」、国家が自己を保存するために必要なすべてのことをなしうる国家の権利、自己保存権を持っている、その中のひとつとしてたまたま自衛権が使われたということです。自国の存立を脅かす相手国に違法性の責任のない危険な事態を排除するために必要な措置、の一形態として自衛権が使われたのであって自衛権という言葉はほとんど使われなかった。

それまでの戦争は市民から遠いところで兵隊が戦争をやっていて市民は関係なかった。兵隊だけが死んでいた。しかし第一次世界大戦で初めて飛行機で都市が襲われることによって、兵隊以外の一般市民が巻き込まれる戦争になった。ここから戦争が変わってくるわけです。第一次世界大戦の結果、国家の武力行使、自衛戦争も侵略戦争もみんな違法だという考え方ができたんですね。それが国家の武力行使を違法視する国際法制定ということで、1928年8月28日に「不戦条約」がパリで調印され、戦争をやっちゃいけないと言ったわけです。ただしこの条約を承認するときに、自衛権に基づく武力行使は不戦条約の「抛棄スル戦争」の範囲内に含まれないとする一般的了解が成立した。そして、自衛権の発動条件を厳しく限定して自分の国に「侵略があった場合」、「攻撃があった場合」だけ自衛権を発動できるようにして、自衛権だけは違法性から除こうという考え方から、初めて自衛権という考え方ができました。したがって自衛権というのは「外国からの違法な侵害に対し、自国を防衛するため、緊急の必要がある場合、それを反撃するために武力を行使しうる権利であって、それが緊急やむをえないものであり、また侵害の程度と均衡を失しないものである場合には、違法性を阻却され国際法上合法的なものとされている」もの。本来、戦争はすべて駄目だけれども、自分の国が襲われたときだけは処罰しないでおこうという権利であって、自衛権というのは戦争ができる権利じゃなくして自衛権を行使した場合だけ処罰しないでおこうという権利です。日本では自衛権というと戦争ができる権利だとあるけど、あれは間違いです。こういうふうにして自衛権ができた。

そうすると、外交で自分の国を守るのは自衛権の範囲外です。それから侵略者が上陸してきて国民がそれに抵抗するのは「抵抗権」ですから、これは自衛権の範囲外ですね。自衛権は「国家が軍事力で自分の国を守る権利」ということです。したがって日本国憲法からすると九条は国家の自衛権は軍隊を認めてないから使えない、交戦権を否認しているから使えないわけです。自衛権は使えないけれども抵抗権をわれわれは使うことはできる。こういうふうにして自衛権が整理されるわけです。

第二次大戦後に作られた集団的自衛権

そして国際連合憲章はもうひとつ新しい「集団的自衛権」をつくりました。国際連合憲章51条は、「安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間各加盟国は、自衛権(個別的又は集団的自衛の固有の権利)を行使することができる。この自衛権の行使に当たって加盟国がとった措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならない」となったわけです。そこでは「固有の権利」と書いてある。国際法の世界では「固有の」というのは自然法上の権利ではなくて、単なる「国家が持つ」ことの修飾語的な意味しか持っていないと理解されています。第一次世界大戦後に「自衛権」が生まれ、第二次世界大戦後に初めて「集団的自衛権」(right of collective self-defence)がつくられたわけです。

集団的自衛権は「自国が直接攻撃を受けていなくても、連帯関係にある他の国が攻撃を受けた場合、それを自国に対する攻撃とみなして反撃しうる国家の権利」です。自分の国は関係ないけれども同盟国が襲われたら一緒に戦争しましょうという権利で、集団的自衛権が認められるためには単純な「あの国かわいそうだから助けてやれ」というのでは駄目です。自分の国と深い関係がある国が襲われたら初めて自分の国が襲われたと考えられる、それが集団的自衛権ですね。

地域軍事条約と集団的自衛権

じゃあ何で集団的自衛権ができたかというと、国連憲章は常任理事国が一国でも拒否権を使って反対したら何も決まりません。同時に、国連憲章は各地域が軍事同盟を結ぶことを認め、各地域の軍事同盟の下で何らかの軍事行動が行われるときに安全保障理事会の許可が必要とされた。そうすると武力攻撃をする国が常任理事国、あるいはその指示を受ける国である場合には安全保障理事会で許可を得ることが難しいわけです。この問題では1945年3月2日に米州諸国の間でチャプルテペック協定が署名され、第二次世界大戦後に「全米相互援助条約」が締結されることが約束されていました。それから1945年3月22日にはアラブ連盟規約が署名され、アラブ連合の軍事条約がつくられることになったんです。だけども国連憲章ができたので困っちゃった。そこで、これはアメリカの「発明」ですが、集団的自衛権という新しい言葉をつくって、自分の国が直接攻撃を受けていなくても、連帯関係にある他の国が攻撃を受ける場合には自国に対する攻撃とみなして反撃できる、この場合も自衛権のひとつだから安全保障理事会の許可は必要ないというふうにして地域的な軍事条約を認めた、こうして集団的自衛権がつくられたんです。

この集団的自衛権という言葉ができると、だいたい地域的な軍事条約はこの集団的自衛権を入れている。1947年9月2日の全米相互援助条約、1949年のNATOの基になる大西洋条約、1955年の、いまはなくなってしまったワルシャワ条約、1960年の日米安保条約、みんな集団的自衛権を入れることになった。自衛権だから国連の安全保障理事会の許可がなくても、安全保障理事会が措置をとるまでの間、勝手に戦争できるということになった。日本国憲法はすべての戦争をやってはいけないけれども、国連憲章はちょっとだけ戦争をやってもいいといっている。そのちょっとだけが自衛権と集団的自衛権だということです。

集団的自衛権はいずれにしろ自分の国には関係ないから、集団的自衛権を発動するとみんな「侵略」になっちゃうんです。ハンガリー、チェコ、アフガニスタンでも、ベトナム戦争でもソ連もアメリカも集団的自衛権を使った。グレナダでもそう。

安倍首相の集団的自衛権こそ危険

日本国憲法では、自衛権は行使できる、集団的自衛権はあるけれども使えないというのが内閣法制局の見解です。この理由は、集団的自衛権は自分の国は襲われていないのに他の国が襲われたら攻撃していいわけですから、九条の下では認められません。だから九条がある限り集団的自衛権は認めないのが現在までの内閣法制局の見解です。これに噛み付いているのが安倍内閣総理大臣です。安倍内閣総理大臣は、まずひとつは日米同盟の双務性のために集団的自衛権を使えるようにしなければいけないと言っている。「公海上で日本の艦艇と米国の艦艇が一緒に並走しているときに米国の艦艇に攻撃があった場合、日本は見てみぬふりができるか」(2006年9月8日 NHKのインタビュー)、だから集団的自衛権を使えるようにしなければいけない、という議論です。集団的自衛権を認めると日本は平和になると言っています。

この問題点は、仮に日米同盟の双務性を高めてもアメリカと日本が対等になることはありません。そ(前頁より)れから集団的自衛権を行使したら逆に日本は危険になります。なぜなら日本が世界中でアメリカと一緒になって戦争したら、真っ先にテロに狙われます。自分の国を襲う国があるから反撃のテロが起こるので、集団的自衛権を行使したら逆にテロに襲われる。安倍さんのいうことと反対のことが起こります。大量破壊兵器の攻撃も集団的自衛権を行使したら狙われるということです。「普通の国」というのは「危険な国」なんです。

安倍首相の「自然権としての集団的自衛権」の誤り

もうひとつ、安倍さんは集団的自衛権を国家が持つ自然権としている。「国連憲章第51条には、『国連加盟国には個別的かつ集団的自衛権がある』ことが明記されている。集団的自衛権は、個別的自衛権と同じく、世界では国家が持つ自然の権利だと理解されているからだ。……日本も自然権としての集団的自衛権を有していると考えるのは当然であろう。」(「美しい国へ」 132頁)

ここで決定的な間違い、国際社会から非難を受ける間違いがあります。「自然権」とはどういう権利かということです。国家のつくる法によって保障される以前に、その法よりもっとレベルの高い法、これを「自然法」といっています。自然権は、国家ができる前に存在している自然法によって承認される権利のことであって、ヨーロッパで自然権は基本的人権のことを指したんです。国家より前に存在しているレベルの高い法によって認められた基本的人権だから国家は基本的人権を尊重しなければいけないというかたちで基本的人権が生まれた。そのときに使われたのが自然権です。そうすると国家が有する権利は国家ができてからだから、自然権にはなり得ないわけです。これが欧米の常識です。自衛権とか集団的自衛権は国家ができてからの権利だからこれは自然権にはなり得ないです。だから国連憲章も「固有の権利」であって、「自然の権利」といっていないわけです。「固有の権利」というのは「国家の持つ権利」という意味です。

したがって国家は自分がつくった権利だから自衛権も集団的自衛権も放棄したって、行使しなくたって別におかしくも何ともないわけです。国家が勝手に決めればいいんです。日本が使わないといったらヨーロッパがおかしいと笑うことはない、笑うのはアメリカだけですよ、使わせたいからね。21世紀は自衛権の放棄が、集団的自衛権の放棄と不行使が世界の歴史の方向の主流だということ、その最先端が日本だということだということです。結論から言えば、安倍さんは地球的規模の日米同盟を実行するために、世界中で侵略戦争をやりたいものだから、自衛権の「亡者」になっているわけです。理論的には何の正当性も持ち得ない、これが安倍政権の集団的自衛権です。

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世界は9条をえらび始めた~2008年5月「9条世界会議」を成功させよう

「9条世界会議」日本実行委員会事務局長/ピースボート共同代表)川崎 哲

 「私は、一人の地球市民として憲法9条を支持します。--もうこれ以上もうこれ以上の軍事化の必要はなく、多額のお金は我々が今直面している諸問題を解決するために使われるべきです。すべての国の憲法が9条を持つべきです。必要なのは、そのような国際キャンペーンを行うことであって、9条を日本から取り除くことではありません。」 ジョディ・ウィリアムズ(地雷廃絶国際キャンペーン、ノーベル平和賞受賞者)

2008年5月、「9条世界会議」を開催する。これは、日本の憲法9条を支持する世界の声を集め、9条を世界へと広げるための国際イベントである。ノーベル平和賞受賞者や、世界の著名人、国際NGOの人々を多数日本に招いて、9条の考え方である「武力によらない平和」を実現するために世界の市民にできることを議論しあう。

日時は2008年5月4~6日、場所は幕張メッセ(予定)ほか全国各地を予定している。すでにジョディ・ウィリアムズ(ノーベル平和賞受賞者、地雷廃絶国際キャンペーン)が基調講演者として確定している。同時に、シリン・エバディ(イラン)、マイレッド・マグワイア(アイルランド)、ワンガリ・マータイ(ケニア)などのノーベル平和賞受賞者女性(「ノーベル女性イニシアティブ」www.nobelwomensinitiative.orgを構成)らがこの会議に強い関心を示している。

今年1月「9条世界会議」日本実行委員会が発足し、準備を開始した。講演会や多数の分科会、音楽イベントなどを組み合わせた賑やかな集まりにして、総勢1万人が集まるものをめざしている。

■なぜ「9条世界会議」なのか

戦争の放棄と軍隊の不保持をうたった日本の9条は、アジア・太平洋戦争の惨害と反省の上に立って、世界に対する「不戦の誓い」として生まれた。そして60年以上にわたって、日本とアジアの人々の (次頁へ)信頼関係の礎となってきた。

いま世界は、暴力と戦争の連鎖に覆われている。イラク情勢は泥沼化し、中東は大きな危機を抱えている。また朝鮮半島の核問題で、東アジアは新たな軍拡競争にさしかかっている。「9・11テロ」の2001年以来、世界の軍事費は右肩上がりに増加し、今や年間1兆ドルを超している。そうした中、武力の発動を押さえ軍備を撤廃していくことは地球規模の緊急課題となっている。「武力によらずに平和をつくる」という9条の基本理念は、21世紀の世界がまさに求めているものである。この理念を世界で主流化するための大きなムーブメントを起こすことが、「9条世界会議」運動がめざすものである。

同時に、「普通の国」とか「国際貢献のための改憲」といった陳腐な議論が国内で大手を振るう今、9条のもつ「世界の共有財産」としての価値を日本の多くの参加者が見つめ直す。そのことによって「9条世界会議」は、日本の多くの人たちにとって、9条のもつ価値を再発見し9条をもう一度選び取るチャンスを提供する。

■どのような会議にするのか

この10年間、すでに数多くの国際NGO会議の場で日本の9条は高い評価を得てきた。1999年のハーグ平和会議(HAP)、2005年の紛争予防国連会議(GPPAC)、2006年のバンクーバー世界平和フォーラム(WPF)等々である。これらの会議は日本の9条が「アジア太平洋の平和の基盤」であり「各国は日本の9条のような戦争禁止条項をもつべきである」と繰り返し指摘してきた。しかし、これらNGOの評価は日本の市民社会に広く共有されてきたといえるだろうか。また、これら世界の声は、世界の市民がとるべき具体的な行動や、政府がとるべき具体的な政策を提供してきたといえるだろうか。答えはいずれも否、あるいは不十分であったろう。

それゆえ「9条世界会議」は、二つの具体的達成目標を掲げる。第一は、極力多くの日本の市民に9条を支持する世界の声を届けることである。第二は、9条の理念を世界規模で実現していくために「市民と政府に何ができるか」に関する具体的で明快な行動指標を提示することである。

第一の目標は、主会場の幕張メッセ(予定)で行われる7000人規模の全体会を通じて達成する。ノーベル女性の講演や、世界の紛争地の若者らによる音楽なども盛り込む。ピースコンサートの計画もある。護憲運動のために気勢を上げる決起集会をめざすのではない。国内9条論争において自分の考え方を確立しきれていないような人たち~平和を望むが日本の9条にも確信を持ちきれないという「常識的」な市民たち~に足を運んでもらい、率直に世界の声に触れてもらう機会を作り出す。そのためには、そこに至る事前広報プロセスやメディアワークがきわめて重要になる。

第二の目標は、数十の分科会や自主企画を通じて実現する。こちらは「会議」としての本体部分といえる。「9条を使って世界を平和にする方法」あるいは9条の理念を実行に移すためのメカニズム(「9条メカニズム」)を明らかにする。そして、その実現のために行動する世界的なネットワークを立ち上げる。

日本のように平和憲法を持つ国は、その意義を見つめ活用する。アフリカなど紛争からの復興途上にある国々は、新たに平和憲法を採択する。あらゆる都市、地域社会や大学、企業等で非軍事を定める条例や規則を定める。軍事費を大幅に削減し、それを貧困根絶、環境、人権といった「人間の安全保障」に役立てる。東アジアには、軍拡競争ではなく地域的な軍縮と不可侵の制度を作る。そのための道筋と課題を、参加型・持ち寄り型の手法を通じて、論議しあう。
展示やブースのコーナーも多数設ける。最後に「9条世界宣言」(仮)のような文書の採択をめざす。

■参加と応援を求む

「9条世界会議」の成功は、従来の組織の枠組みにとらわれない柔軟かつ広範な市民の結集にかかっている。すでに約50名の呼びかけ人が各界から名を連ねている。その中には、池田香代子氏(翻訳家)、新倉修氏(国際法律家協会会長)、吉岡達也氏(ピースボート共同代表。以上3名共同代表)のほか、品川正治氏(経済同友会終身幹事)などの経済界、後藤祥子氏(日本女子大学学長)などの学術界、湯川れい子氏(音楽評論)などの芸能界、その他宗教界、ジャーナリスト等々が名を連ねている。

ぜひとも多くの個人・団体が、「9条世界会議」を成功させていくためのこれから一年間の運動に合流されることを呼びかけたい。ボランティアもあらゆる面で急募している。この一年間の運動を通じて、「9条改憲・軍事化への道が世界常識」という謬論を逆転し、「9条と非軍事化こそが地球市民の選択」という力強いメッセージを、日本国内および世界中に轟かせよう。

■賛同金 個人1口2.000円 団体1口10.000円/
振込先:郵便振込口座 00150-5-539142 「9条世界会議」/

■ウェブサイト:http://www.article-9.org グローバル9条キャンペーン

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大阪の反改憲運動の現状報告

中北 龍太郎(弁護士、とめよう改憲!おおさかネットワーク共同代表)

大阪の反改憲市民運動は、90年代初頭から毎年複数の市民団体の呼びかけで開いてきた5.3憲法集会の取り組みに発しています。今は亡き松井義子さん(大阪YWCA平和委員会代表、長年韓国人被爆者問題に取り組む、著書に「平和のパン種」)の献身的な活動に負うところ大で、「憲法改悪を許すな!第2回全国交流集会in大阪」の成功もその努力の賜物でした。

改憲の動きが強まってくる中で、より行動的なネットワークづくりの必要性を痛感し、昨年11月、5.3憲法集会の主催団体の呼びかけで約50団体の参加を得て、とめよう改憲!おおさかネットワークを結成することになりました。

改憲手続法案の国会審議が始まるや、私たちは、民主党大阪府連への申入れ、「9の日行動」の一環として3月には大阪駅前での情宣活動、4.9緊急デモのほか、4.12全国集会(日比谷野音)への参加、4.13自民党府連への抗議などを行ってきました。

3.28衆議院憲法調査会大阪公聴会では、私は公述人として、改憲手続法案が9条改憲を目的としていること、極めてアンフェアーな悪法であることを強く訴えました。与党推薦の公述人も含めて公述人全員が審議を尽くすことを求め拙速採決に反対しました。

引き続き、参議院で廃案にすべく、議面行動や全国の運動と連帯して改憲手続法案への反対行動を展開する所存です。

それとともに、反改憲の草の根世論を高めるべく、意見広告や11.3憲法集会などに取り組むことにしています。

こうした「とめよう改憲ネット」の独自の取り組みとともに、様ざまな共同活動を担っています。九条の会の初めての地方集会が04年9月に大阪で開催され、3700人の参加を得ましたが、この成功をバネにして、05年5月に九条の会おおさかの立ち上げに協力し、昨年に続き今年も5・3憲法集会の準備を支えています。

9条世界会議や映画「日本の青空」上映運動にも積極的に参加していくことになっています。
憲法の外堀を埋める米軍再編など海外派兵の動きと内堀を埋める改憲手続法の動きによって、戦後平和・民主主議を新たな戦争の時代へと日本の根本を変える大反動期に入りました。戦後培ってきた民衆のすべての力を結集するとともに、21世紀にふさわしい創意に満ちた運動展開が求められています。全国の皆さんとともに、私たちのネットワークも前進していきます。

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