2月11日夜から12日午後にかけて、東京都内で「第8回 許すな!憲法改悪・市民運動全国交流集会」が開かれ、30都道府県から150人を超える市民活動かが参加した。
この集会を呼びかけたのは「許すな!憲法改悪・市民連絡会」と「憲法改悪反対運動共同会議(憲法共同会議)」(「憲法」を愛する女性ネット/憲法を生かす会/市民憲法調査会/全国労働組合連絡協議会/VAWW-NETT Japan/ふぇみん・婦人民主クラブ/平和憲法21世紀の会/平和を実現するキリスト者ネット/平和をつくり出す宗教者ネット/許すな!憲法改悪・市民連絡会)で、参加者は憲法をめぐる政治状況と、市民運動が当面する課題、憲法改悪を阻止していく展望などについて意見を交換した。「憲法共同会議」は今回初めて共催に加わった。2日間の討議を経て、参加者は互いに熱心に意見を交換し合い、経験を交流し合い、確信を胸に秘めながら各地に帰っていった。
集会全体の総合司会を市民連絡会の土井登美江さんと星野正樹さんが行った。
2月11日の18:00から始まった全体集会では、開会挨拶を内田雅敏(「許すな!憲法改悪・市民連絡会」事務局長)が行い、つづいてこの間の運動の協力関係を反映して次の3団体から連帯挨拶があった。福山真劫(「フォーラム平和・人権・環境」事務局長)さんは、労働組合の「連合」のなかにあって、憲法改悪に反対する声を強めていくために奮闘する決意をのべ、川村俊夫(「憲法改悪阻止各界連絡会議」事務局長)さんは「5年前には私がここで挨拶するなどとは考えられなかった」とこの間の共同の前進と今後のいっそうの協力を表明し、中川香(「陸・空・港湾労働組合20団体」)さんは共に反戦平和・憲法改悪反対のために闘おうと挨拶した。3人の連帯挨拶に全国からの参加者は惜しみない拍手を送った。
集会への提起は風邪で欠席した浅井基文(明治学院大学教授)さんの分も含めて、高田健(許すな!憲法改悪・市民連絡会事務局次長)さんが「改憲動向と私たちの課題」と題して行い、「厳しい情勢ではあるが、私たちには勝利の展望が持てる。同心円的な運動ではなく、経験主義を排して、同円多心のあたらしい壮大な運動をつくりだそう」と呼びかけた。情勢論以外の部分の報告要旨は以下の通り。
勝利を現実のものとするための共同行動の形成をめざして、(1)全国の至る所に「憲法を獲得する人びと」=憲法の3原則を実現する人びとを大量につくりだしながらたたかっていくこと。(2)地域や職場に「九条の会」などの、共同し、学び、行動する組織を無数に作り出す作業が進んでいる。「九条の会」はすでに約1000カ所にできた。(3)憲法論と運動論を区別して扱い、それぞれの前進を実現することに熟達すること。憲法論の差異で憲法運動が分化してきた歴史を克服し、「不戦・非武装」派から「専守防衛」派に至る9条明文改憲反対派の結集をすすめよう。(4)「この指とまれ」でやるのではなく、「同円多心」の運動を作ろう。組織を立ち上げるのが目的ではなく、立ち上げる過程を重視することが必要だ。(5)なぜ私たちは、集会ごとに「参加者の誹謗中傷禁止」「意見の違いに暴力で対処することに反対」などの原則を掲げるのか。これは「排除の論理」とは全く異質のものだ。私たちは思想信条の違いで「排除する」のではない。はたして暴力行為に寛容に対処することで運動は広がるのか。それは運動の発展にマイナスになるだけだ。(6)国会で改憲の発議を阻止する闘いをあきらめてはならない。(7)しかし「国民投票」に勝利するための準備も必要だ。9条改憲に消極的な世論は多数だが、これに安住できない。問題はこの声の組織化に成功するかどうかだ。改憲派も必死の攻勢をかけている。(8)なぜ、改憲の国民投票法案に反対するのか。選挙における「小選挙区制」のようなものだ。あくどいルールには反対し、それでも仕掛けられたら、挑戦する以外にない。(9)発議の際に決定するという「一括投票」の危険な企てを暴露しよう。国民投票は「ワン・イシュー ワン・ヴォート(一つの事項に一個の投票)」原則だ。ほかにも年齢や国籍制限など投票人名簿問題、投票の分母問題、運動とその期間などなど、問題はたくさんある。改憲派が多数を占める国会への「よりよい国民投票法案」作りの運動ではなく、政府・与党が準備している国民投票法案の危険性を全面的に暴露する中で、国民投票の際には改憲にうち勝つ力を蓄えることが重要だ。国民投票は歴史上初めてのことで、主権者としてのかつてない自覚を生み出すという意味で、ピンチはチャンスでもある。(10)いずれは憲法改悪反対の5000万署名運動に取り組むような準備と決意を。際限のない解釈改憲、派兵国家化の具体的あらわれに一つ一つ全力で抗し、運動を組織しながら、九条の会などをはじめ、全国の隅々まで、そのための主体を、多様に、重層的に形成するための作業に全力で取りかかる。津々浦々にそのための共同のセンターの形成をめざそう。このたたかいは憲法3原則にそった世直しにつながるものだ。
各地からの報告では北海道の山口たかさん、沖縄の加藤裕さん、広島の岡本三夫さん、大分の池田年宏さん、高知の金さんが発言した。それぞれ短い時間ではあったが、具体的な実践に裏付けされた感動的な報告があった。引き続いて行われた交流会では、冒頭に福島瑞穂社民党党首が挨拶し、その後、全国の仲間がつぎつぎに挨拶した。ここでは若い仲間たちと女性たちが大活躍し、元気に発言した。
2月12日は朝9:00から、3会場に分かれて分散会が行われた。
昼休みを切り上げて12時40分から「9LOVE」の藤岡亜美さんたちによる活動の映像紹介があり、各地から来た仲間たちはその若者のエネルギーに目を見張った。
13:00からは再度の全体会で、分散会報告のあと、各運動体からの発言があった。発言は「GPPAC(武力紛争予防のためのグローバル・パートナーシップ)」について「ピースボート」のチョウ・ミスさん、「立川自衛隊監視テント村」への反戦ビラ弾圧事件について加藤克子さん、中学生の反戦運動について菱山南帆子さん、VAWWーNET JapanからNHK番組改竄問題について上田佐紀子さん、憲法24条をめぐる改憲派の動向について本山央子さん、国民投票法案について筑紫建彦さんが行った。
2日間のまとめを高田健さんが次のように提起した。(1)来賓の顔ぶれの政治的幅の広さと、全国各地から幅広い活動者の結集という特徴。今日の憲法状況を反映して、会議は参加者の地域や層の厚さから見て、過去7回の交流集会の中で最大のものとなった。また、参加者に若者と女性が多かったことも今回の重要な特徴であった。(2)今後の私たちのたたかいは容易ではないが、皆さんの発言は確信に満ちて、明るかった。(3)いま各地で作られつつある「九条の会」は確かに多くの未熟さを持つかも知れないが、あきらめず共同行動の発展のために努力しよう。9人の知識人が呼びかけたアピールの方向で運動が発展するよう奮闘することが求められている。(4)全国各地に憲法9条の改悪を許さない共同の機関を作りだすために、2日間の討議の成功を生かして、その先頭に立とう。
最後に「集会決議」(別掲)の提案を日本消費者連盟の冨山洋子さんが行い、参加者全員で採択した。
広島 谷本幸恵
第8回許すな!憲法改悪・市民運動全国交流集会に参加させてもらって、目がさめた思いをしています。憲法改正を唱える動きが活発になっているのを感じ、憲法改悪を許してはいけないと思いつつ、憲法改悪の動きや内容についても具体的にあまりよく知らなかったのです。今回の集会は、各地で活発に活動されている人たちが集まり、その活動の報告からお互いの経験を学びあい、論議しあって、全国の情報を共有し、「どういうふうに憲法を守り育てていくのか?」考えていこうと言うものでした。私の場合は、それとは少し視点がずれているかもしれませんが、この集会に参加して感じたこと、また今の思いなどを伝えたいと思います。
「憲法が危ない、憲法9条が危ない、今ここで声を上げなければ」、と思っている人たちが大勢いることを知り、そしてまたそれを大きな力にして、憲法を守り育てていこうと奮闘している人々が全国にたくさんおられることを肌で感じました。市民運動、労働運動、政党、宗教界、行政などの広範なネットワークを作ることによって、運動が大きく広がっているという報告も数多く聞きました。
分散会での話の中に「自分が住んでいる地域で、憲法改悪に反対する人を半数以上獲得するには何をしなければいけないか」、と問題を出していた人がいましたが、そう考えるとまだまだやらなければいけないことがたくさんあるように思います。そうはいうものの、まずは自覚した個人ひとりひとりが、自分のできるところで声を出し、自分の言葉で自分の思いを伝えていくことからはじめることが大切だと感じました。そして、「憲法が危ない、憲法9条が危ない、今ここで声を上げなければ」、と思っている人たちが集まれる場、自分の思いを表現できるような場、「憲法を守り育てる力」にすることができる場を身近なところでつくっていく必要があります。もうすでにできているところもありますが、もっともっと全国津々浦々に作り出していかなければ、とても今の流れを押しとどめることはできないでしょう。今回この集会に参加して、たくさんの人がそうした力をつくりだしてきている、これからもつくりだしていってかならず大きな力にしていけるという希望を持つことができました。
仙台 小針史朗
おじさん、おばさん、おばあちゃん、おじいちゃんたちが出席メンバーの大半を占める集会に参加することがこのところ多かったせいか、11・12日の両日の全国交流集会には少しばかりの<カルチャーショック>を蒙ってしまった。
同時に、地面に尻を付け、長時間たむろしている若者や人込みの乗物の中で、他人の迷惑を顧みず大声で携帯電話を掛けている若者(もっとも、最近は若者ばかりではないが…)、そういう彼等に接することが日常的であるため、今回の交流集会に全国から参加して来た若人たちには、別な意味で感心させられてしまった。
参加の若人は、皆がそれぞれキラキラ輝いており、まぶしいばかりの存在であった。15歳の女子中学生。イラク反戦のビラを校門前で継続的に撒き続け、最近では、活動に協力してくれる仲間も増えているとのこと。交流集会で活動報告をしている彼女の姿は〃凛〃としており、自分自身の言葉で話し掛けるその迫力は、聴き入る大人たちを唸らせるには、十分過ぎる程の内容であった。
高知から参加の2名の男女大学生からは、それぞれの出身地のお国言葉で平和憲法を語る活動を実践している状況の紹介があった。お国訛りで聞く9条も、なかなか乙なものだと妙に感心させられることしきりだ。
東京からは、渋谷の駅頭で〃9〃の数字をサッカーのサポーターよろしく顔にペインティングをほどこし、トレーナーやティーシャツにもプリントした出で立ちで<パフォーマンス>を繰り広げている若人たちによる活動報告がなされた。
今回の2日間の全国交流集会に参加して、つくづく感じたことは、「まだまだ日本の若人たち、捨てたもんじゃないぞ!日本の未来をきっと彼等が切り拓いて行ってくれるぞ!」という熱い確信であった。
会場での彼等の<キラキラ>している姿を目の当たりにして、久しぶりに目頭を熱くしたものは、20数年前の自分自身の姿をオーバーラップしたせいであろうか?
平和資料館・草の家 事務局長 金英丸(キム・ヨンファン)
軍事独裁時代、大統領が変わると必ず憲法が変えられ、憲法が民衆の権利を守るより、むしろ権力維持の道具として利用された韓国社会。そこで生まれ育った私にとって、平和憲法を守ろうとする日本の平和運動は最初理解し難しい面もあった。法律そのものは権力者が自分の利益を守るためにつくったものであり、だから私は出来るだけ悪い法律を破ろうと思いながら生活してきた。韓国社会では悪法に対して民衆が体を張った抵抗によってそれを破り、その過程で生じた数え切れない犠牲の上にいまの民主主義をつくった。
私は日本での活動を通して平和憲法の歴史を片耳ながら学ぶ事になった。あの戦争の犠牲の上で、いまの平和憲法が生まれた事を忘れては行けない。平和憲法は、日本民衆の不戦の誓いであり、戦争によって犠牲になったアジア民衆との友好の約束である。
いま平和憲法を捨てようとする人々が誰なのかを見てみよう。戦後60年を迎えるわたしたちには、支配と被支配、抑圧と不信、加害と被害という不幸な歴史に染められた東アジアの過去を見つめ、友好の未来をともにつくる歴史的な課題がある。しかし、平和憲法を無視してきたいまの権力者たちは、アメリカの侵略を先頭に立って支持する一方、朝鮮に対する経済制裁を叫び、東アジアでもう一つの憎しみを挑発している。
日本の戦後民主主義がいま最大の危機に置かれていると言われる。人生をかけて平和を守ってきた先輩の皆様の危機感が切実に伝わってくる。しかし、先輩たちの運動がなかったら、いままでの平和はなかったと思う。いま必要なことは平和憲法を大事にするすべての人々との連帯であり、平和に対する信念である。先輩たちの運動から学び、世代、国家、民族、性別、政派を超える市民連帯をつくりたい。
市民の抵抗権・革命権を提唱した平和憲法の先駆者植木枝盛、日本帝国主義に対する徹底的な抵抗を通した東アジアの市民連帯を描いた反戦詩人槇村浩。彼らを生んだ土佐の地から、わたしたちも皆様とともに連帯し闘って行きます。最後に一生を平和運動に尽くし、去年平和の風となった「平和資料館・草の家」設立者故西森茂夫さんの土佐弁日本国憲法第9条を紹介します。
西森茂夫
肌の色がちごうても
宗教や言葉がちごうちょっても
みんな兄弟姉妹 同じ尊い人間ぞね
国の主人公であるあたしらあは
道理ある生き方をして
事がおこっても話し合いで解決するぞね
力づくで相手をねじふせたり
おどかしたりしたらいかん
戦争は金輪際せんということが
よその国を侵略し ヒロシマ・ナガサキを経験した
苦い歴史の教訓ぞね
ほんじゃき 戦車や軍艦や地雷や爆弾はもたれん
持つ必要もない
国家が戦争する権利は認めん
あたしらあは 人間の尊厳にかけて人と人とが
殺し合う戦争はせん
憲法を生かす会東京 和田成枝
2月の寒い2日間。昨年に続いての参加となりました。しかし、昨年この会に参加し自分に課した宿題、「難しいことではあるが、若い人たちに参加を呼びかけ、活動の広がりを目指す」と、しかし現実と目標とのギャップがあまりにも大きく埋められないまま反省しつつ迎えた2回目の全国交流会。
しかし、課題が重い2日間でしたが、課題とは裏腹に希望と元気をもらい、次の予定もあり促され、去りがたい気持ちで会場を後にしました。
今回の交流会は、スタッフとしてお手伝いさせていただいた関係もあり、話を十分聞くことは出来ませんでしたが、それを補うに余りある充実感がありました。1日目夜の交流会では大部屋に入りきれないほどで、中学生からの発言。お国言葉の憲法9条。各地からの発言。高田さんの話された「同円多心」のミニ版? この状況が全国に広がったとき、改憲阻止はなるのでしょう。
この交流会に参加する前は、改憲の動きが急だと言うのにおきまりの街頭宣伝や集会参加、学習会、とこれで本当にいいのだろうか。国会では護憲の議員はわずか、これでは改憲されてしまう、と言うあせり。私の周り、いわゆるフツーの友人、知人は政治問題、特に憲法の話しは避けて話そうとしません。イラクのこと、憲法問題、基地問題など等の話の出来る人とはお互い「ガンバリましょう」これでは気持ちが空回りしていて発展も無く、暗い気持ちになっていました。
しかし、暗い気持ちは2日目の全体会の分散会報告や各団体からの報告等ですっかり影を潜め、苦労しながらも、運動の広がりを示す明るい話に気持ちが変わってきていました。そして高田さんの纏め。この交流会は私にとって気持ちの切り替えができたことで大きな収穫でした。当たり前のことですが、自分に出来ることをしていくこと。
この間の「九条の会」の成功は、9条改悪に反対する人々がまだまだ多くいることを物語っています。友人、知人のフツーの人も改悪に反対しているかもしれない。議論するのが面倒なのかも、あきらめず機会をとらえソフトに話してみよう。誰も戦争を望んでいる人はいないはず、と自分に言い聞かせ、これは自分にしかできないことなのですから。そして明るく運動はしていこう、しかし、本音は「しんどい」。
今、歴史が作られる只中に私たちはいると思います。くらい歴史を繰り返えさせないためにも、未来を担う子供たちに再び悲惨な戦争体験をさせないためにも「しんどい」などとは言ってはいけないと言い聞かせて、これからも闘っていくことを確認させられた交流会でもありました。
「憲法改悪のための国民投票」を迎え撃つ幅広い共同のネットワークを全国の津々浦々につくり出しましょう
いま改憲派は「対テロ」という口実で日本を「戦争のできる国」に変えるために世論を煽り立てようとしています。そのターゲットは9条を中心とする憲法の平和主義です。自民党は小泉首相を本部長とする「新憲法制定推進本部」をつくり、4月には改憲試案を発表する予定であり、日本経団連など財界3団体も憲法改悪を押し進めるための報告書を発表し、右派マスメディアも積極的にこれらをあと押ししています。中曽根康弘元首相の世界平和研究所の「憲法改正試案」や鳩山由紀夫民主党元代表の「新憲法試案」など、改憲案も相次いで発表されています。
第162通常国会には「憲法改正国民投票法案」と、憲法調査会をこの法案を審議するための常任委員会にするための「国会法改定案」などが提出されようとしており、あわせて自衛隊の海外派兵を本務化するなどの自衛隊法改定案や、その他の戦争法も出されようとしています。このままでは、今年の国会は憲法9条を踏みにじる「改憲国会」になってしまいます。
しかし、一方ではどのマスコミの世論調査を見ても、自衛隊のイラク派兵や憲法九条の改悪には多くの人びとが「NO」といっています。永田町の改憲機運の盛り上がりとは反対に、これを危惧する人びとの声が全国で急速に広がっています。今年夏、ニューヨークで開かれる国際NGO会議で東北アジア各国のNGOが協力して「憲法9条で紛争抑止を」の声を上げようという運動も起きています。国内でも、従来からの運動に加え、「九条の会」や「憲法行脚の会」をはじめ、全国各地でさまざまな憲法改悪反対の運動と組織が生まれ、発展しています。そしてこの「市民連絡会」と「憲法共同会議」が呼びかけた「第8回許すな!憲法改悪・市民運動全国交流集会」に全国各地約30都道府県から150人以上の活動家が結集し、熱心に討議したことも、憲法改悪に反対する運動が強まっていることを示しているものです。
いま日本国憲法の基本理念は施行以来最大の危機にたたされています。しかしながら改憲派が日本を欧米列強並みの「普通の国」にするという野望を実現するためには、なんといっても「国民投票」を実施し、そこで過半数を占めなければなりません。これは憲法の平和主義が広範に定着してきた日本社会では容易なことではありません。だからこそ改憲ははあらゆる手段を尽くして、世論を変えようとしているのです。
憲法改悪を阻止しようとする全ての人びとは共同し、憲法9条改悪を許さないためのもっとも広範な共同をつくりだす必要があります。そのネットワークを全国津々浦々に誕生させることは当面する最も切実な課題です。思想・信条や政治的立場などの違いを超えて、9条改憲阻止をねがう全ての人びとが共同し、運動を拡げなければなりません。全ての政治グループや市民団体・個人は全力をあげて、この課題に誠実かつ積極的に取り組まなければならないと考えます。私たちは体制を整えて国民投票を迎え撃ち、広範な有権者一人一人の自覚した意思に依拠して、これに勝利しなくてはなりません。私たちが国民投票に勝利することは不可能ではありません。この勝利はあらためてこの社会で憲法3原則を生かし、発展させていく決定的な契機となるでしょう。いまを生きる私たちには子々孫々に至るまで、このような社会を残していくための責務があると思います。
この歴史的局面に際して、私たちは全国の市民のみなさんに「ともに学び、ともに行動し、ひろく共同する」ことを訴えます。
2005年2月12日
第8回許すな!憲法改悪・市民運動全国交流集会参加者一同
大分の仲間たちが近く準備している総会のアピール案です。
目の前に銃がつきつけられているわけではありません。空から爆弾が落ちているわけでもありません。そんな今、憲法・教育基本法の改悪や、まさにその入り口となる憲法改悪のための国民投票法案が忍び寄っていると言われても、平和が脅かされているということは身近に感じられないのかもしれません。
しかし、政府は確実に私たちの未来を戦争へとねじ曲げようとしています。有事関連法しかり、日の丸・君が代の強制をはじめとする愛国心の押しつけしかり、そして両性の平等規定への攻撃しかりです。マスコミに介入することもはばからず、マスコミ自身も政府への批判を控える事態にまでなっています。戦争を肯定する若者づくりを進める教育基本法改悪の手続きは今この時も行われています。戦争協力への世論操作と憲法改悪のための国民投票法案も準備が進められており、このままでは今国会は、歴史に取り返しのつかない汚点を残すものになるかもしれません。
第9条や第24条をはじめとする憲法を改悪するということはすなわち、日本を戦争する国にするということであり、両性の差別を促し個人の尊厳を否定し、市民が公の名の下に支配されるということです。そもそも世論や国民の意思が憲法改正に傾いているのなら「国民投票法案」により改訂条項を変える必要はないはずです。まともなやり方では憲法「改正」がおぼつかないから無理を押し通そうとしているにすぎません。私たちの暮らしが、そして、子どもや孫たちが戦争へと操られようとしているのを黙って見過ごすわけにはいきません。
攻撃を開始した最大の理由であった大量破壊兵器の不在が証明された今でさえも、政府にはアメリカを後押ししたことに対する反省のかけらもありません。イラクの十数万人にも及ぶ死者、劣化ウラン弾による何世代にも渡るであろうヒバクによる犠牲者は今も生み出されています。
私たちは「加害者」としての自覚を持たなければなりません。
本日、「憲法・教育基本法改悪に反対する市民連絡会おおいた 2005総会」に多くの市民が集い、憲法・教育基本法改悪を許さないという意志を確認しました。
……まるで、街の流れに逆らわないでいさえすれば安心が得られて、面倒にまきこまれることもなく、生活も簡単になるかのようだった。茶色に守られた安心、それも悪くはない。……(『茶色の朝』フランク・パヴロフ より)
「安心」の中にいた主人公はしかし、最後には自分自身が捕らわれようとする際も身を任せてしまいます。私たち自身が、まさに今、その渦中にいるという危機感を持ち、「思考停止」をやめ、それぞれの場でできうることを考えながら、全国の仲間と思いを共にしていきます。
これまで培ってきた繋がりをさらに広め、そして深めるべく、より多くの市民・団体への働きかけを行い、憲法・教育基本法改悪に反対する広範なネットワークをつくっていきます。憲法改悪の意図をとらえるとともに、教育基本法についての学習をさらに深め、「反対」の声をさらに多くの市民・団体に訴えていきます。
私たちは、憲法・教育基本法改悪および憲法「改正」国民投票法案に断固反対します。
以上、決議します。
2005年3月12日
憲法・教育基本法改悪に反対する市民連絡会おおいた 2005総会
市民連絡会も事務局団体をつとめる「5・3集会実行委員会」が声明をだし、さらに大きく運動を拡げるため、以下の「アピール」をだしました。
小泉内閣と自公与党はイラクへの自衛隊派兵を1年延長し、軍事占領を続ける米国に積極的に加担しています。彼らはいま、「対テロ」という口実を用いて日本を「戦争のできる国」に変えるため、憲法9条の破壊を極限までおしすすめようとしています。いま自民党は小泉総裁をトップに「新憲法制定推進本部」をつくり、今年11月までに憲法改悪案をまとめるといい、日本経団連など財界も憲法の改憲を押し進めるための報告書を発表し、これを後押ししています。マスコミのなかでも改憲のムード作りはかつてなく強まっています。
改憲派は憲法改悪のための「国民投票法案」と、憲法調査会をこの法案を審議するための常任委員会にするための「国会法改定案」をこの通常国会に出そうとしています。衆参の憲法調査会は4月末にも「憲法は変えるべきだ」という最終報告を出す方向で作業を急いでいます。この改憲手続き法の動きには公明党も同調し、民主党も応じる構えです。このままでは、今年の国会は「改憲国会」になってしまいます。
しかし、一方ではこの情勢の下で、改憲に反対する人びとの声が急速に広がり、全国各地でさまざまな憲法改悪反対の運動が生まれ、発展しているのを見ることができます。また各種の世論調査では6割以上の人びとが9条改憲に反対しています。これらの声を大きく結集し、行動に変えていくなら、憲法改悪の企てをうちやぶるための大きな可能性が開けるのではないでしょうか。
本年5月3日、憲法記念日に私たちは東京・日比谷公会堂を中心に5回目の「5・3憲法集会」を開きます。そしてこの日に向けて、一日だけの共同行動ではなく、それぞれの地域で現在の憲法をめぐる状況を学び、語り合う集会を開き、まわりの人びとに知らせながら平和の行動を起こすなどの多様な活動を積み重ねていきたいと思います。「5・3憲法集会」を大きく成功させ、その力で憲法改悪を絶対に許さないという思いを広げ、大きなうねりにするため、広く共同し、行動を起こそうではありませんか。
2005年1月
2005年5・3憲法集会実行委員会