私と憲法34号(2004年2月20日発行)


派兵の次にくるものは…

雑誌『現代』3月号に立花隆が「イラク派兵の大義を問う」という文章を書いている。すこし長いけれど、引用しておきたい。

(イラクで自衛隊に)死者が出ると小泉はすぐにイラクに飛んで、日の丸で棺を覆った遺体とともに日本に帰る。自衛隊の儀仗兵たちが、厳粛な葬礼の音楽とともにそれを迎え、空港でも基地でも、厳粛なセレモニーが繰り返される。犠牲者は手厚く国葬の礼をもって葬られる(天皇ならびに三権の長、三軍の長、国会議員、政府高官の多くが臨席。そのあと遺族が望めば靖国神社にも祭られる)。

一連のセレモニーの中で、小泉は犠牲者たちが危険をかえりみずに国家につくした勇気と犠牲的精神の高貴さをほめたたえ「私と日本国民は全員あなたたちを誇りに思います」と涙ながらにいう。さらに、「あなたたちの死を無駄にはしません」といい、涙をぬぐおうともせず、国民にこう呼びかける。「ここで引いてはなりません。ここで撤退することは、彼らの遺志を無にすることです。どんなにつらくても、どんなに苦しくても、テロに屈せず、我々に国際社会から託された任務を果たそうではありませんか。この尊い犠牲の上に立って、我々の義務を果たしつづけることが、日本国憲法にいう、国際社会において名誉ある地位を保ちつづけることになるのです」。

こういうシーンが繰り返し、繰り返しテレビで報道されることで、みんななんとなくそのほうが正しいのではないかと思うようになり、イラク派兵はなおもつづき、小泉人気はなおもつづく。

これはブラックジョークに過ぎるとは思うが、しかし、私たち市民などの闘いが成功しなければありえないことではないと思うがゆえにあえて引用した。我々が直面している小泉内閣は政治的には危険な新しい国家主義であり、経済政策的には弱肉強食推進の新しい自由主義であり、立憲主義や法治主義による政治ではなく、人びとの政治不信を踏み台にした小泉人気に依拠した人治主義的性格を濃厚に持った内閣だ。だから首相とその周辺はとりわけマスコミ対策に熱中し、支持率の維持に血道をあげるのだ。歴代の政権で小泉首相ほどあからさまに改憲を主張し、かつ憲法を踏みにじった首相は珍しい。歴代の首相で彼ほどあからさまに対米追従を告白し、居直った者は珍しい。こういう政治のもとで憲法の根幹にかかわる自衛隊のイラク派兵が強行されたのだ。小泉首相が自衛隊員がイラクの人々を殺し、あるいは殺される状況が来るのを想定していないわけがない。だからこそ、彼はアジアの人々の反対を無視して元日に靖国神社に強行参拝したのであるし、2月10日の衆議院予算委員会で「(A級戦犯が合祀されていても)抵抗感を覚えていない」「A級戦犯の合祀をとやかくいう立場にない」などと答弁している。確信犯なのだ。国に小泉純一郎あり、都に石原慎太郎ありだ。こういう連中が行政のトップを占めているのが今日の日本社会だ。

これを迎え撃つ私たちの闘いは尋常ではない覚悟を必要とされている。アウトサイダー気取りの作家・辺見庸が「閾下のファシズムを撃て」(『世界』3月号)などとぼやきつつ運動に水をかけている。「ろくな抵抗もない、…辻褄が合わないな、間尺に合わないな、と口ごもる」ことで対抗できる小泉ではない。彼は他人の足にまとわりついて運動の足どりを乱しているだけだ。これらも含めて飲み込むような力強い反戦の奔流を作り出そう。いま憲法違反の派兵を進め、「殺し、殺される関係」の上に成立しようとしている違憲国家を批判し、自衛隊の派兵に反対し、イラクとインド洋からの撤退を要求する巨大な市民運動を出現させよう。      (事務局 高田健)

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憲法百人一首(本歌取り百の戯言)

これはインターネットのサイトに掲載されているものです。百人一首のすべての歌を本歌取りの形をとって憲法問題に読み込んだものです。会員の方に教えて頂き、あまりにおもしろいので冒頭の部分を取り出して掲載致します。全体を読みたい方は以下のサイトを見てください。

http://boat.zero.ad.jp/~zaw04991/kenpo100nin1syu.html

たまには息抜きでこういうのも良いのではないでしょうか。(編集部)

あきれたな かれの演説 美辞をならべ その口先は 嘘にぬれつつ  天智天皇
春過ぎて 夏来りなば 息絶えの 九条干すてふ 国の香具師ども  持統天皇
取り引きの 与野党の尾の しだり尾の まがまがし世を 人は忌むらん  柿本人麻呂
海の外に うち出でて見れば 白煙の 異国の大地に 弾はふりつつ  山部赤人
湾岸に 砂漠ふみわけ 泣く人の 声きく時ぞ 戦はかなしき  猿丸大夫
また詐欺の だませる話に よく似たる 白きを見ては 黒と言いける  中納言家持
天の原 ふりさけ見れば 祖国なる まぶたの裏に 浮かびし貴女かも  安倍仲麿
わが党は 都の中に どかっと住む 余をうぢ虫と 人はいふなり  貴撰法師
党の色は 移りにけりな いたづらに わが身保つに 腐心せし間に  小野小町
これやこの 行くも帰るも 別れては 泣くも泣かぬも 出兵の時  蝉丸
わたの原 八十島かけて こぎ出でぬと 人には告げよ いーじす艦隊  参議篁
天つ風 軍靴の通い路 吹きとぢよ へいわの姿 長くとどめよ  僧正遍照
終値の 端より落つる 袖の下 金ぞつもりて 淵となりぬる  陽成院
中東の しのぶ民衆 誰ゆゑに 乱れそめにし こんないらくに  河原左大臣
君がため 海の外に出でて 銃をうつ わが衣手に 血潮は降りつつ  光孝天皇
立ち別れ 故国の山河 ともに生ふる まつ人思い いつ帰り来む  中納言行平
法やぶる 世論も聞かず 自民党 からやくそくに はらくくるとは  在原業平朝臣
米国の 大樹に寄る人 よるさえや 兵の通ひ路 人目どうでも  藤原敏行朝臣
なにはあれ 短き任期の ふしの間に やらでこの事 やめるものかは  伊勢
わびぬれど いまこそ好期 なせばなる みをつくしても 変えむとぞ思ふ  元良親王
今来むと いひしばかりに みさいるの 防衛予算を 持ち出でつるかな  素性法師
吹くからに 国の法理の しをるれば むべ答弁を 法螺といふらむ  文屋康秀
中継見れば 千々にものこそ 悲しけれ わが国会に 人はあらぬか  大江千里
このたびは 取るも取りあへず 先遣隊 砂漠の錦 米のまにまに  菅家
名にし負はば 学歴等の 詐欺かな 人に知られて 去るよしもがな  三条右大臣
第九条 人の願いの 強くあらば 今ひとたびの 息吹待たなむ  貞信公
永田町 吹かれ流るる 小泉くん いつ見きとても 嘘しかるらむ  中納言兼輔
世の中は 冬ぞさびしさ まさりける 医療も福祉も かれぬと思へば  源宗千朝臣
心あてに 折らばや折らむ 九条の げに目障りな 反戦の花  凡河内躬恒
石破氏の つれなく見えし 別れ話 ますこみばかり 憂きものはなし 壬生忠岑
そらとぼけ 有り合わせの弁と 聞くままに 審議の果てに ゆれる採決  坂上是則
小泉に 藪のかけたる しがらみは 流れもあへぬ 改憲なりけり  春道列樹
久方の 光のどけき 春の日も しず心なく 人の散るらむ  紀友則
誰をかも 死ぬ人にせむ 九条の 今も昔も 友ならなくに  藤原興風
首相はいさ 民の心も知らないで 顔ぞいくさの 方に向きける  紀貫之

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