私と憲法33号(2004年1月20日発行)

憲法9条を高くかかげ、イラク派兵反対の大運動を!

1月19日、陸上自衛隊先遣隊はクウェート・イラク国境を越え、イラクの戦場に重武装して入った。現行憲法下で初めての事態であり、不戦・非武装を掲げた現行憲法に対する小泉内閣の許されない反逆行為だ。憲法遵守義務を有する内閣総理大臣が率先して憲法を踏みにじるという、この立憲主義の放棄は、歴史の教訓によれば民主主義の放棄であり、ファシズムへとつながっていく。

同じ19日、第159通常国会が始まった。市民団体はこの日、予想をはるかに超える300名の参加で院内集会を持ち、小泉首相の政治に異議をとなえた。市民の怒りは急速に高まっている。

国会ではイラクへの自衛隊の派兵の承認案件や「国民保護法制」など有事関連6法案上程の動き、北朝鮮経済制裁関連法案などの動きと並行して、自民党や民主党の中で改憲の声が強まっている。とりわけ民主党の菅代表が憲法の積極的な見直しを主張し、9条改憲にまで踏みこみかねないような見解を表明したことは重大な変化だ。与党の公明党が消極的な姿勢を見せてはいるものの、憲法改悪のための手続き法案=国民投票法案と国会法改正案もこの国会に出される恐れはある。

自民党憲法調査会は昨年7月、安全保障分野の改憲要綱案をまとめ、「自衛権の保有を明記し、自衛隊を自衛軍とする。集団的自衛権の行使を認める。首相は国家緊急権を宣言できる」などとし、「国際貢献を自衛隊の任務として条文化する」とした。同党調査会の最高顧問の山崎拓前副総裁は「自衛隊を海外に出すことが論議を呼ぶのは、国際貢献を果たすとの国是が憲法前文に明記されていないからだ」と主張し、自衛隊が海外で戦争に参加できることを明記しようとしている。

自民党は1月16日に開いた党大会で2004年運動方針を採択し、あらためて「21世紀の新しい時代にふさわしい国際国家の建設を目指し、明年11月の立党50周年を目途として『新憲法草案』を起草する」と明記、「全国各地で公聴会を開催し、改憲の国民的議論を展開する」などとしている。

民主党は今回の大会で菅代表が「2006年までに党の改憲案をまとめる」という方向に踏み切った。具体的な検討項目としては、(1)代議制に加え国民投票や住民投票などの直接民主主義の導入、(2)人間と社会のあるべき姿を盛り込む、(3)公共の福祉の概念と財産権の関係、環境権保護などをあげ、第9条に関連する問題では、菅代表は自衛隊とは別に「国連待機部隊」の形で設けることを検討すると述べた。これに対し、小泉首相や保岡興治自民党憲法調査会長は「話し合う土台ができた」と歓迎している。

今国会ではイラク派兵の承認や補正予算、2004年度予算案、「国民保護法案」など有事関連7法案の採択、年金法の改悪、道路公団問題など行政改革関連法案等の審議が予定されている。しかし7月投票と決定している参議院選挙との関係で、会期延長はきわめて困難だ。

私たちも加わっている反戦の市民団体・NGOなどのネットワークである「WORLD PEACE NOW」は、自衛隊のイラク派兵反対を掲げて、いま全力で共同を広げ、行動しようとしている。目前には「WORLD PEACE NOW1・25」が予定され、3・20のイラク攻撃から1年の日の国際共同行動には日比谷公園を中心に近年なかった規模での行動を準備しはじめた。2月13日には明治公園で大集会も計画されつつある。これらの力でイラク派兵計画をやめさせ、改憲の動きを阻止しなくてはなたない。私たちの運動如何ではそれが可能になる条件が生まれてくるに違いない。日本の反戦運動も大きな節目にたった。私たちは広範な人びとの共同のために力を尽くしたいと願っている。(事務局 高田健)

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