憲法通信第31号(2003年10月発行)

小泉首相が改憲案の取りまとめを指示

小泉首相が自民党総裁選前の8月25日、結党50周年となる2005年11月までに自民党改憲案と「国民投票法案」を取りまとめるよう山崎幹事長(現・副総裁)に指示した。同党内では今年11月に予定される衆院総選挙の公約に「改憲案の策定」が盛り込まれ、次の総選挙では「改憲」を争点にするとも言われている。

この「指示」は山崎幹事長側からの差し金とも報じられたが、小泉首相は記者会見で「自民党結党の精神が自主憲法制定だったこともあり、結党50年記念にふさわしい。政党として憲法改正案を考えるのもいいことだ」、「国会でも憲法調査会が設置されて、今議論されている。民主党も憲法改正が必要だと言っている。憲法改正は国民的議論の上にやるべきだから、いい時期じゃないかと思う」、「9条だけじゃない。全体のね、新聞社も憲法改正案を出しているから、新聞社だけに任せないで政党がどういう改正案を考えているかも、国民的議論を引き起こすのにいいんじゃないか」など、自らの意思として語った。

首相発言は、自民党憲法調査会が7月、「自衛権の保有を明記し、自衛隊を自衛軍とする。集団的自衛権の行使を認める。首相は国家緊急事態を宣言できる」などの憲法改正要綱をまとめ、中山太郎・衆院憲法調査会長が05年1月までの憲法調査会の調査期間を短縮して、04年春の通常国会で「最終報告」を出したいと表明したこととも連動しており、ついに政府トップが改憲を表明したものとして重大な意味を持つ。

この日、山崎幹事長は「(北朝鮮の)ミサイル発射の意図が明確になっても(日本からは)攻撃はできない。憲法9条があるためだ」と語った。「ミサイル発射の意図」が具体的に何を指すのか不明だが、これは「自衛」が名目なら先制攻撃もできるようにするということだ。そうなれば事はミサイルにとどまらない。「攻撃されるかも知れない」「テロの恐れがある」というだけで先制攻撃をする道が開かれ、米国の論理と同じになる。憲法9条の完全否定だけでなく、国連憲章第2条の「武力行使を慎む」という精神をも否定するものだ。また山崎氏は「衆参両院の憲法調査会の活動は論憲のレベルで終わる。憲法改正に反対の党もあるからまとめることはできない。やはり自民党が改正案をまとめて世に問う必要がある」とも語った。国会の憲法調査会の目的は憲法についての「調査」にあり、改憲の方向や内容を出すことではない。その意味では「論憲」にとどまるのは当然で、山崎発言はそれを無視し、力で改憲を推進することを宣言したものだ。

これに対し公明党幹部は、「9条は堅持だ。9条を改正するとなれば、自民党と激しく対立することになる」と語った。しかし同党の議員は憲法調査会で、「論憲で終わるなら意味はない。(改憲は)安全保障問題から先にやるべきだ」などと発言しており、党としてそれを否定してこなかった。民主党は小泉首相が指摘したように改憲派が多数を占め、積極改憲論の自由党と合併すればその勢いは強まろう。有事法制で見せたように、抽象的な字句上の「対案」で対抗しているように見せかけることになる危険性をはらんでいる。

国会での「護憲派」が1割になり、小選挙区制や「北朝鮮脅威」キャンペーンの下で早期に3分の1を回復する見通しが立たない中で、憲法改悪反対の市民運動の役割は限りなく大きい。今年の11月3日の憲法集会、来年の5月3日の憲法集会などを起点に、「生かそう憲法、高くかかげよう第9条」の広範な声を全国的にどれだけ上げられるかが、日本の未来を決めることになる。
(事務局・筑紫建彦)

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