私と憲法302号(2026年7月25日号)


悪法が次々 数に物言わせ やりたい放題の高市政権

「この焼け野原は市民が引き取る」

異例づくめで始まった特別国会が小幅延長を経て終わろうとしている。悪法を山ほど通過させて。

2026年幕開けは波乱だらけだった。アメリカトランプ大統領によるベネズエラ攻撃、大統領夫妻誘拐、そして高市政権による解散総選挙の匂わせ、衆議院の立憲民主党の解体と突然の公明党との合流、新党結成。毎日目まぐるしく情勢が変化する中、衆議院選挙が真冬の中行われ、投開票日の2月8日。野党は大敗北。自民党に圧倒的多数の議席を譲ってしまった。

そこからが民衆の反撃だ。「この焼け野原は市民が引き取る」と宣言してから、日本の市民運動は1日単位で進化を遂げ、国会周辺に留まらず全国各地に既存していた市民運動を媒介して光の速さで広がって行った。

国会外を取り巻く状況は希望に満ちているが、国会内は相変わらずの焼け野原状態だ。衆議院における立憲野党はわずか。立憲がまだ参議院に残っているのがわずかな救いのようだ。野党第一党さえも中道へ合流するか否かで揺れている不安定な状況の中で真っ先に通った悪法は国会情報局の設置だった。スパイ防止法は今国会は見送りになったものの、その道筋をつけると言わんばかりの危険な悪法が通ってしまった。

その後は矢継ぎ早に個人情報保護法改悪、皇室典範の一部改悪、国旗損壊罪、改憲手続法案の一部改正など悪法や改憲への布石となるようなものが続々と可決・成立した。あまりの高市政権の横暴の酷さに国旗損壊罪の共同提出者でもある国民民主党と参政党も本会議を欠席。自民党内でも岩谷氏が退席し棄権した。国会空転を横目に高市政権は文字通り数の力で「やりたい放題」である。

国会閉会を目前に悪法を成立させ、維新の会肝いり法案である副首都法を通すために小幅延長を決定。7月17日で閉会予定だった特別国会は翌週まで延長され、副首都法も成立させられる見込みだ。他にも参議院で保留となっていた改憲手続法一部改正案も延長期間に可決成立させようとしている。党利党略の国会延長を絶対に許すことはできない。

国旗損壊罪の中身は「日の丸」を損壊しているのを見ていた人が「不快な気持ち」になることを持って処罰の有無を決めるなど、不可解なものが多く、今後どのように運用されるのか全く見えない。「何が処罰の対象になるか分 からない」という事がこの法律の恐ろしい所だ。いかようにも悪用できるものではないだろうか。

また、皇室典範に関しては、男性議員たちだけで、男系男子といった家父長制丸出しの議論をし、強行成立させたことは、世界に日本は人権後退国であると宣言したに等しい。東京では「ふぇみん」と「女たちの戦争と平和資料館(wam)」が共催で「『皇族の存続』や女性天皇の議論を認めず、私たちは天皇制廃止を求めます」と銘打った院内集会が開かれた。市民連絡会もこの取り組みに賛同団体として名を連ねた。女性天皇の誕生を!といった議論が広がっているが、人権問題を天皇制にあてはめ女性も天皇になれるようになったところで、本当に問題は解決できるのだろうか。本質はそこではない。女性天皇だろと誰だろうと、天皇制は身分制度であることは変わらない。また女性天皇の実現といった似非ジェンダー平等を唱えることによって、天皇の戦争責任の追及が有耶無耶になる危険性がある。

女性が天皇になっても天皇の戦争責任はなくならない。天皇の存在により、どれだけ多くの人々が犠牲になり、今もなお差別され抑圧の中で暮らしていることを忘れてはならない。代替わりしたからと言って過去のことにしてはならない。私たちが加害の歴史に向き合うのと同じく、天皇も加害の歴史に向き合い、天皇制を即時廃止すべきだ。

今、特別国会では比例定数削減は見送りとなったが、体制を整えて臨時国会に再登場してくることが見込まれる。この「見送り」と言った判断にいたらざるを得なかったのは世論の反発に恐れをなしたからだろう。しかし、この判断を持って、自民党の鈴木俊一幹事長は「定数削減については、今国会での成立は諦めて、次なる国会に回すということでお譲りをした。従いまして、互譲の精神、こう言っているので、野党の方もこれを譲ってもらえないとおかしい」とのたまった。廃案にしたわけでもないのにも関わらず何をいうか。

この比例定数削減は、野党なんていらない、女性議員なんていらないと言われているに等しい法律だ。とりわけ女性議員にとって比例枠はとても重要だ。小選挙区制度の中で女性たちが選挙で闘うには多くのハードルがある。6年おきに改選がある参議院と違っていつ解散があるか分からない衆議院において小選挙区で候補者になるには女性の人生計画に制限を受ける。例えば、臨月の状態で解散総選挙になったとしても選挙運動はまともにできないからだ。他にも、日本の選挙活動の未だ主流となっているマッチョなやり方も女性の政界進出を阻んでいる。毎晩のように飲み歩き、夏祭りは何件もハシゴし、一日に何杯もビールを飲み、何本も何杯もフランクフルトや焼きそばを食べるような選挙活動は女性にはなかなかできない。男性だってそんな選挙活動できる人ばかりではないだろう。ビックリ人間の様なマッチョな選挙活動が候補者本人の政策的内面よりも評価されがちな状態だ。そういった流れの中で、比較的安定している比例枠で女性たちが当選しやすいのは明らかだ。

2024年の衆議院選挙での小選挙区と比例区での女性の当選率は小選挙区、約17.5%、比例代表、約44.1%と約2.5倍も差がある。世界を見ても日本の国会議員の数は少ない。女性議員も少ない。世界水準に合わせて比例定数を増やすなら理解できるが、大幅に減らそうとしているなんて民主主義の破壊と言わざるを得ない。民意を踏みにじる高市政権に声をあげ、こちらも体制を整え直して臨時国会で比例定数削減を廃案に追い込もう。

見送りになったのは比例定数削減だけではない。改憲条文起草委員会は野党第一党の中道の強い反対もあり実現しなかった。しかしまったく油断できない。中道を除いても改憲勢力は圧倒的多数だ。中道が日和らぬよう、引き続き市民の声が必要となってくる。改憲反対全国署名の要求項目の2番目には「起草委員会の設置に反対」と項目があることが重要だ。この全国署名をひろげ、起草委員会の設置も引き続き断念させ、改憲をとん挫させよう。

警察・右翼の妨害に負けず市民運動の爆発へ

高市政権の支持率は発足以降、最低数を更新している。世論の流れも変わってきた。その焦りの表れなのか、7月19日の国会前を中心とした抗議行動に警察と右翼が一体となって激しい妨害攻撃を仕掛けてきた。

発端は6月19日の19日行動だった。スタッフが到着したときにはすでに右翼が数名、メインステージから横断歩道を挟んだ向こう岸に場所を占拠し、19日行動が終わるまで始終マイクを通してヘイトスピーチをして妨害したのだ。もちろん警察には抗議し、右翼をどかすよう要請したが警察は「右翼にも表現の自由がある」と言って取り合わなかった。それどころか、右翼の車両も動かそうともせず、路上駐車を黙認した。

翌月の7月19日はスタッフ内でも外部に情報が漏れないよう細心の注意を払いながら、午後遅い時間帯の開催時間だが、午前中から仲間たちと場所取りをしに行った。しかし右翼たちは早朝からメインステージを含む一角をすべて占拠していたのだ。警察は何の対応もせず、私たちから右翼を守るかのように手厚くコーンを立て守りに入っていた。

日韓断交などと書かれたのぼり旗が幾本も立ち並んで口汚いヘイトスピーチにメインステージの移動を決断せざるを得なくなった。私たちの集会には様々なルーツを持つ仲間たちが参加するからだ。

国会正門前から仕方なく、国会図書館前にメインステージを移動させ、音響をセットした。この日の最高気温は34度。炎天下のなか、本来日陰の多い憲政公園をまたいだ国会正門前ではなく、直射日光照らす国会図書館前に結集させられた。日陰を探し、縁石に座る高齢者の中には発言予定者の97歳の女性もいた。その人たちに対して警察は移動して日向に行くよう執拗に迫った。集会の中頃、参加者がピークに達しているなか、国会図書館前はすし詰め状態になった。身動きが取れず、群衆雪崩が起きてもおかしくない状況だ。日陰は車道にある。怒った参加者の一部と車道の日陰に出て一時的にでもすし詰め状態を解消しなくてはならなくなった。

たったの数分の車道解放だったが参加者が動き、身動きがとれるようになり何とか体調が回復した。息が吸えるようになったと、後から多くの声が寄せられた。
しかし警察機動隊員らは、その市民を強引に暴力的に狭い歩道に押し戻そうとしてきた。主催者が歩道に戻るようアナウンスしたが、警察はその主催者らも突き飛ばした。けがをしたり突き飛ばされた被害を受けたほとんどが小柄な女性だった。

高市改憲勢力は右翼と警察権力と一体となり、19日行動を妨害し潰しにかかっていることは火を見るより明らかである。

このような卑劣な妨害、暴行に負けず、怒りを力と連帯につなげ、さらなる市民運動の爆発的高揚につなげよう。来る8月19日、そして戦争法「成立」から11年を迎える9月19日には全国各地多くの市民の立ち上がりを持って高市政権を圧倒させよう。

記述・7月21日
(事務局長 菱山南帆子)

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改憲手続法一部改定の参議院での強行可決に際して

第221特別国会に提出された「改憲手続法改定」案は、7月22日の参議院憲法審査会で賛成多数で可決され、同24日の参議員本会議で可決された。

今回の国会に提出された修正案は、問題が多すぎるほどの欠陥法である改憲手続法の根本的な問題にメスを入れたものではなく、直近の公職選挙法の改定(なり手不足の投票立会人の選任要件の緩和、投票箱運搬不可能な事態が起きた場合の離島現地での開票作業、FM放送での広報も可とする、など)に合わせた部分の修正に絞った微修正の改定案だった。

参院審査会の採決では法案提出者の自民・維新・国民民主・参政にくわえ、立憲民主党・公明が賛成し、共産・れいわが反対した。

今回の改正では2021年の同法改正時に付則で「法施行後3年後をめどに必要な措置を講じる」とされていたネット広告の規制や国民投票運動の資金規制などについてはふれられず、また各界から同法の根本問題と指摘されて来た「最低投票率」の設定の必要や、識者からは2年は必要と指摘されている国民投票運動期間が短すぎる(2~6か月)こと、公務員の国民投票運動に対する不当な規制など(他にも多々ある)も見送られた。立憲は「インターネット広告の規制の在り方」などに関する付帯決議をつけさせ、「これで国民投票法が完成するわけでは全くない」(小西洋之議員)と強調したが、法案には「賛成の立場」からの議論をすすめた。共産の山添拓議員は今回の法律で「積み残した課題」は国民投票の「結果を左右する重大な論点だ」と「反対」を主張したが、提案者の新藤義孝・衆院憲法審与党筆頭幹事は「積み残しではなく、検討出来たところから整備していく」と答え、欠陥法の抜本的改正は約束しなかった。

なぜ改憲派はこうした公選法並びの微修正の強行にこだわったのか。各界が指摘してきた同法がもつ各種の重大な欠陥を持ったまま国民投票を実施すれば、改憲に対する有権者の意思が正当に反映せず、資金力などのある改憲派に圧倒的に有利な結果をもたらすのは明らかだ。ともかくも公選法とは並行できる「修正」を強行することで、国民投票のさいに有する重大な欠陥を放置したまま、「国民投票強行可能」と言い張る足場をつくりたかった。明文改憲の準備が進んでいることを演出したかったのだ。まさに「改憲発議の準備」だ。この改憲派の狙いを暴露・追及しないまま、今回の改定箇所は「毒にも薬にもならないから賛成してもよい」「付帯決議を勝ち取った」などと弁明することは重大な誤りだ。改憲派は今回の改定で、改憲への道を掃き清めようとしたのだ。だからこそ、立憲は「法案賛成の立場」などではなく、改憲反対の立場から、改憲手続法の狙いを暴露し、そのためにもごまかしの改定に反対しなければならなかったのではないか。まさに「策士、策に溺れる」の図そのものと言われてもしかたがない。

改憲手続法に反対する人々の一部には「今回の国民投票法が通ったら改憲されてしまう」「終ってしまう」と危機感をあおる人もいた。そんなことはない。それは無責任な煽りであり、敗北主義だ。この国会の結果を見て挫折感をもった人々もいる。立憲の裏切りを指弾するひともいる。もしかして、参議院の立憲は反対してくれるかもしれないとの期待もあっただけに、気持ちはわかるが、闘いはこれで終わりではない。

改憲手続法が重大な欠陥をもった悪法である以上、世論を盛り上げ、各党に働きかけ、抜本的改定を実現する運動をつくり出すことが必要だ。改憲手続法が成立して以来、この20年、私たちはそうやって粘り強くたたかい、国民投票・明文改憲の動きを阻止してきた。

あわせて、いま最も緊急なことは改憲派がねらう審査会に「改憲条文起草委員会」設置を阻止する闘いを創り出すことだ。

国会の外では改憲反対の「請願署名運動」が全国で広がり、地道に、地道に世論をつくり出す懸命の市民の努力がある。妨害や弾圧に屈せず、くりかえしとりくまれる戦争反対、改憲反対、高市退陣を要求する数万規模の国会前集会をはじめとするペンライトデモの全国的拡大がある。多くの市民が立ち上がっている。
たたかいはこれからだ。(共同代表:高田 健)

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市民連合声明:女性議員を減らす比例定数削減法案を許さない――民主主義を守ろう!

自民党と日本維新の会は衆議院議員定数を1割削減するという法案を6月に提出しました。比例代表45議席削減をねらうという民主主義軽視、女性蔑視の暴走法案です。今国会では成立が先延べされましたが、断念したわけではありません。
大政党すなわち自民党や現職に有利で死票が多い小選挙区制(289議席)と比べ、比例代表制(176議席)は女性や新人、少数政党が当選しやすい制度として機能してきました。この比例代表枠を削ることは少ない女性議員をさらに削ること、多様な民意を削ることにほかなりません。今年2月の衆院選結果を基にした共同通信社の試算でも比例45議席が削減された場合、議席減少率は男性の23%減に対し女性は35%減と、女性の方がより深刻な打撃を受けることが明らかにされています。
現在、日本の女性国会議員比率(衆議院)はわずか14.6%であり、世界ランキング(下院)では184カ国中147位という低さです。比例定数削減法案が成立すればさらに順位を落とすこととなり、政府が自ら掲げる男女共同参画推進にも完全に逆行しています。世界水準からも大幅な遅れを見せているジェンダー平等がますます遠のきます。
そもそも日本の国会議員数は人口当たりでみれば諸外国と比較して大幅に少なく、OECD38カ国中でも下から3番目という低さです。つまり国会議員は市民、国民にとって遠い存在であり、私たちの声が議員に届きにくいということです。比例定数削減法案は党利党略をむきだしにした、議会制民主主義を破壊する悪法、女性を狙い撃ちするミソジニー法案です。断じて許すわけにはいきません。
市民連合は比例定数削減法案に強く反対し、市民の運動を広げていくことを大きく呼びかけます。

2026年7月8日
安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合

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たからてつみの最近の憲法問題5
良い憲法を作ることは容易だが、行うことは難しい―80年前の8月の憲法暦―

80年前の8月は衆議院で、憲法改正草案要綱の審議が最も緊迫し、修正案が可決される天王山の月であった。一般にGHQ案を基にした政府案が衆議院に出され、そのまま可決したと思われがちだ。しかし、衆議院で修正した条項は68ヵ条に及ぶ。衆議院憲法改正案委員会、特に憲法改正小委員会は政府案を「民主化が不十分」として、人権・統治機構・皇室財産の扱いにいたるまで、文言調整を含めば、ほぼ全文に修正を加えていた。

重要な修正や新設規定の代表例を挙げてみよう。当初政府案には皇室財産について国有化規定が第10条として存在しており、小委員会でも8月17日、「皇室財産は原則国有とする」 という修正案で固まっていた。これに対し、衆院議長らが、小委員会に対し、皇室財産にはもっと慎重に対応すべき、皇室の尊厳を護るべき、などと修正案に反対し、吉田首相に申し入れた。しかし、越権行為ではないかと、21日に議長不信任案が提出され、23日に議長辞任となった。結果的に第10条は幻となり、皇室財産については現行の第88条のみの規定となった。皇室財産の扱いをめぐり、衆院議長の辞任劇まで至り、翌日に憲法改正草案の裁決をしたのだから、大変な事件だったといえる。

次に同じ8月17日、社会権規定の整備(生存権・勤労権・休息などの挿入)が、衆議院憲法改正小委員会での修正で行われた。GHQ草案では「社会国家的要素」があまり見えなかったが、日本側修正によって大幅に増強されたのである。小委員会が、GHQ草案を基礎にしつつ、日本側の修正案を新設としてまとめたことは重要な意義を持つ。GHQ草案には、憲法研究会の案から出た「健康で文化的な最低限度の生活」はなかったが、小委員会が国家は国民の生活に保障すべきとして、現在の憲法25条に盛り込んだのである。

1946年8月24日、帝国議会衆議院本会議において、賛成421、反対8という圧倒的多数により大日本帝国憲法改正草案が可決された。実は、憲法改正草案の採決を目前にした本会議場で、御年96歳の政治家、「憲政の神様」と呼ばれた尾崎行雄が演説をしていたのだ。壇上で語った「良い憲法を作ることは容易だが、行うことは難しい。」という言葉が、今回のタイトルにした。

これは、単に名言という言葉では括れないほど重要な意味を含んでおり、また、現在の日本の政治状況にも当てはまる問題なのである。私たちは民主主義という用語を使い、民主制や民主政と言ったりする。この二つは発音は同じでも意味はずいぶん違う。ここでは民主主義とは制度ではなく、それを運用する人々の政治姿勢、活動の場、政治文化、教育など、政治の総体つまり、民主政のことを強調しているのである。尾崎の言葉は、議事堂が瓦礫に囲まれた、戦災状態の当時の日本のみに向けられたものではなく、憲法を生かすのは、主権者、私たち国民なのだ という普遍的なメッセージをあらためて、今も問いかけている。

このことは、同じ演説の中で尾崎が残した「憲法は国民の精神の表現である。」という、もう一つの言葉にも込められている。憲法が単なる法ではなく、国民がどんな社会、世の中を望み、 どのような政治文化を育てようとしているのか、その思い、精神の総体が憲法なのである。尾崎はまさに新しい憲法を目の前にして、「これを生かすのは国民自身だ」と強く訴えていたのだ。制度を作ることは容易にできるが、それを運用し、育て、守り続けるのは、 政治家でも官僚でもなく、ほかでもない、私たち国民なのである。どれほど立派な憲法でも、 国民が無関心であれば権力は簡単に暴走する。逆に、国民が主体的に使えば憲法は強い力を持つ。国民が憲法に駆動力を与えるのだ。こうして、憲法の価値は条文の美しさではなく、それを生かす国民の不断の努力にあると説いていた。

憲法の文言がどうのというのではない。憲法の精神を生かす政治文化が育たず、官僚が国家を支配し、議会は国民の代表としての役割を果たせなかった。 その結果が、軍部の暴走であり、戦争であり、敗戦であると強く批判し、訴えた。尾崎の憂えた同じような政治状況が今現在の国政にすでに滲んではいないだろうか?! 私たち主権者、国民は、今まさにその正念場にいる。

さて、8月と憲法、国民主権といえば、宮沢俊義(当時、東京帝大助教授、貴族院議員、)の8月革命説に言及しないわけにはいかない。8月革命説は1945年8月のポツダム宣言受諾、敗戦によって、日本の主権が天皇から国民へ移ったという“法的革命”が起こったと捉える学説である。8月革命によって主権者となった国民が、明治憲法の改正手続きとして行われた日本国憲法を制定したという考え方で、憲法改正の正統性を説くものでもある。8月は、少なくとも法的な意味で、憲法制定権力としての国民が生まれた瞬間であった。さらに8月革命説は、旧来の日本の政治文化(臣民、無関心)に対抗するために、主権者としての不断の努力を求めるものでもある。
(琉球大学名誉教授・前参議院議員・共同代表 高良鉄美)

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第205回市民憲法講座 「いま憲法審査会はどうなっているか」――任期延長改憲と「イメージ案」を中心に

田中 隆(弁護士 改憲問題対策法律家6団体連絡会)

(編集部註)6月20日の講座で田中隆さんが講演した内容を編集部の責任で要約したものです。要約の責任はすべて本誌編集部にあります。

自由法曹団で長く活動していまして、最近は自由法曹団を含む、改憲問題対策法律家6団体連絡会という団体を作って、改憲問題、とくに憲法審査会、明文改憲関係に対応してきています。

憲法審査会の動きは、衆議院では毎週開催され、高市政権が選挙に勝ったことから、やたら改憲派が元気になり動きが激しくなっています。テーマで言うと、任期延長を含む緊急事態条項と、一昨日は9条をもう一回やるというような議論になりました。参議院の合区の問題をどうするのかと、参議院だけでなく衆議院にまで出てきています。また、改憲手続き法――国民投票をどうするかもあります。

一番まとまりそうな危険がある任期延長改憲と、それに衆議院法制局がまとめたイメージ案というのがありますので、それを中心にお話しします。さらに9条とか、あるいは合区だとか。改憲手続きをスケッチ的に押さえてみます。

憲法審査会のこれまでの経過と憲法改正手続き法

最初に憲法審査会と、これまでの経過を確認的に追ってみます。まず憲法改正手続きを最初に確認します。

一応3段階あります。国会に憲法改正原案が出されなければならない。その憲法改正原案は誰が出すのか。これが国会議員あるいは憲法審査会が出すというのが、憲法ではなくて法律の規定です。

その次のページに複雑な条文が並んでいます。これは国会議員の任期延長で改憲がやられたら、こんな憲法になってしまうよという、いわば改憲されそうな憲法です。こちら偽物ですから、これが本当の憲法と思わないでください。

改憲原案の提出が国会議員――国会議員の場合は衆議院なら100人、参議院なら50人以上です。それから憲法審査会自身が原案を出せます。

原案が出たらどうなるか。衆参両院の各議員の総議員・全員ですね、総議員の3分の2以上の賛成があれば、憲法改正案を議決をして、これで国民に対して発議をする。これは憲法96条の前半の方です。それで国民投票になります。その国民投票で国民の投票者の過半数が賛成すれば、憲法改正が成立してしまう、これが憲法改正手続きです。

今日のテーマの憲法審査会というのは、この憲法改正をやるために作られた、そういう審査会です。いつから作られたかというと、ほぼ20年前になりました。2007年の5月に第一安倍政権の下でしたけれど、この改憲手続法が、これも強行採決で成立しました。この改憲手続法によって国会法が改正されて、その国会法で作られたのが憲法審査会、つまり2007年までは憲法審査会なんてものはなかった。だからやろうとしたって明文改憲はできない状態だった。

憲法審査会の運営に特徴的な中山方式

この憲法審査会を登場させて、改憲手続き法を登場させた。これが第一次安倍政権の下で国会に登場しましたが、この第一次安倍政権が一体どんなことをやろうとしていたのか。はっきり言えば自分の任期中に9条の改憲をやるということを宣言して、それでこの改憲手続き法を強行採決した。ですから私たちは、当時からこの手続き法そのものにかなり強く反対をして、国会に散々押しかけました。これをやられてしまうと改憲の道筋、改憲のレールが引かれてしまう。誰も改憲をやろうなんて言ってないですから、レールそのものを引くことはない、というのが我々の主張でした。

しかし結果的には強行されてしまった。しかも強行採決でやられました。公平な手続きかというと、改憲ができそうな方向に傾いたレールだと私たちは言いましたが、改憲に傾斜した手続きのような格好になってしまいます。

ただ、この改憲手続き法、憲法審査会ができるまでに、ずいぶん長い検討の経過があって、当時の民主党なんかも作ること自体には反対しないで検討に参加していました。日弁連やあるいは学者も、随分参考人として聞かれて意見を言った、なんていう経過があり、ある種の憲法審査会を進めていく準則みたいなものが確立されていったのも事実です。

当時は憲法調査会でしたが、調査会の会長が中山太郎議員でした。もう亡くなりましたが、この中山太郎氏の名前を取って、中山方式と国会でも言われています。ちょっと他の委員会にはない、いくつかの準則があります。1つ、審査会の運営は、与野党の合意でやる。普通の委員会だと、強行採決を結構やりますが、さすがに憲法審査会は、それをやってはいけないんだよと、こういうルールです。

それから、改憲は憲法審査会が、慎重に議論してやっていくべきなんで、改憲原案は審査会から作っていこう。これが本当に徹底されますと、さっき紹介した衆議院100人以上、参議院50人以上での提案がほとんどできなくなる。要するに審査会から改憲へと。

3つ目は改憲を、政局や政治にさせてはいけない、政局化させてはいけないといったルール、これが作られて、それなりに守ろうとされてきた。しかしながら安倍だとか今の高市のように外から改憲だと叫ぶのがいますが、これは中山方式の準則から言えば、それを踏みにじっていくということにもなるわけです。

その審査会ですが、何せ改憲のために作られていて、そして憲法審査会から改憲案をと、この道行きを走っていますから、基本的には憲法をめぐる論議、あるいは参考人の質疑を続けてきています。傍聴されるとわかると思うんですが、他の委員会と違って、政府に対する質問というのは全くありません。他の委員会は、政府が大体法案を出して、それに対する質疑応答でやるわけですから、政府が登場しますが、憲法審査会には政府は全く登場しない。憲法改正手続きに内閣は全く権限ないわけですから、首相が首相として来てはいかんわけです。だから閣僚は登場しません。憲法についていろんな議論をして、そして改憲案を作っていこうという流れですから、憲法をめぐる様々な問題を議論して改憲案の準備をしているというのが、この間の憲法審査会の流れです。

緊急事態条項や国会議員の任期延長などが浮上

審査会が始動したのは、改憲手続き法が作られた07年から4年経った2011年10月でした。4年半動けなかった。改憲手続き法強行に反発をし、それから当時進んでいた構造改革による貧富の格差に反対をし、安倍政権は選挙に惨敗して政権交代になります。やっと審査会が始動したのは11年10月で、憲法についてのいろんな論点検討なんてことをやっていました。そこに再び安倍政権が登場して、2017年、自衛隊明記など4項目の安倍改憲が現れてきた。これが今に至る自衛隊明記改憲の始まりで、もうほぼ10年近くになります。

安倍さんにしてみたら、自分が作らせた憲法審査会だと思っていますから、そこで改憲の議論が順調にいくと思ったかのようなんです。しかし、実は憲法審査会では安倍改憲の議論は全くされませんでした。むしろ憲法審査会の側が、安倍改憲の議論をするのを拒絶した。だって審査会にしてみたら、審査会の議論を積み上げて、憲法改正に行くというのが、本来の準則です。外から、俺が総理になったから、自衛隊明記だと押し付けられたのじゃたまらない。これが野党だけではなくて、憲法審査会を作った自民党のメンバーの中でもそんな雰囲気がありました。安倍さんが首相である間、安倍改憲は一度も審査会で議論に乗らなかった。妙なものです。

結果的にそのこともあり国民の批判もあったから改憲が頓挫をする。その憲法審査会が再び動き出したのは21年の6月、今から5年前です。その前の年、安倍さんが退陣した。これが背景でありました。21年6月最初に憲法審査会がやったのが、改憲手続法の中で国民投票についての細かい改正案が出されまして、公選法並び7項目改正案という変な名前です。

要するに公職選挙法の選挙の手続きと、改憲国民投票の手続きは同じ選挙ですね。公選法の方が細かい手続きがされているから、この公選法の手続きに国民投票の手続きを合わせようと、だから公選法並びといって。この改正案がずっと前に出されましたが議論できなかった。それを可決したのが21年6月、これがほぼ始まりです。

ここから議論があれこれ続き、翌年22年にはオンライン審議を取りまとめ、そこから緊急事態条項や9条の議論になだれ込んでいきます。背景にあったのはコロナの感染で、どうも感染症拡大で国会が十分に開けなくなくなるかもしれないじゃないか。外にはロシアがウクライナに侵略をして、戦争の現実が迫っているではないか。これにどう対応するんだ。だから緊急事態条項だ、そして9条だと、こういう議論になだれ込んでいきました。

このあたりから衆議院は毎週開催する。これも時間も決まっていまして木曜日午前、参議院はそこまでは行きませんが、大体その3分の2から半分強必ずやる、これは大体水曜日の午後です。

緊急事態条項、緊急政令だとか、話は概ね国会議員の任期の延長に収斂していきます。

国会機能を維持するためには、国会議員の任期を延ばさないといけない。国民の代表の国会議員の任期延長だから、これだと内閣が独裁するというような非難は、かわせると思ったんでしょうね。こっちの議論をほぼ5年間積み上げ続けることになります。

自民の大勝で改憲派が圧倒的多数を占める

そして最近です。24年、26年と選挙がガタガタとあって、憲法審査会もそれにはいわば振り回されます。24年の10月の総選挙では、御承知のように自民党が大敗します。その結果、与党が過半数割れして、改憲派が3分の2に届かない。そうすると、もう衆議院でも可決できないわけです。

可決できないなら議論してもしょうがないか。

衆議院の憲法審査会の会長が、立民の枝野さんになります。船田さんと一緒に改憲手続き法を作った人物で、彼が座りましたからさすがに無茶はしないし、できない。さらに翌年の25年1月参議院選挙でも自民党・公明が後退をして、参議院でも与党が過半数割れとなります。こっちでも憲法審査会の会長がこれは立憲民主の長浜さんになって、要するに立憲民主が衆参の会長を務めていますから、進まないんです。はっきり言って、穏やかな審査会だったのが本当のところです。

それがガラッと変わったのが、2月の総選挙で自民党が大勝しまして、立民と公明が作った中道が惨敗しちゃった。自民党単独で3分の2を超え、改憲派が4分の3を超えました。憲法審査会で、実は自民党が、50人中34人、慎重反対は中道改革を慎重と考えて5と、共産1です。だから自民党の34とあと10人の改憲派の44が圧倒的多数を占めてしまっている。

そういう数の中で、4月の自民党大会で高市さんが、時は来たんだと、来年の自民党大会まで、つまり今から1年間ということを言った。これがざっくり言って憲法審査会と憲法改正手続きのいわば20年近くの大雑把な経緯です。ここまでがいわば前置きでして、今日メインにしようと思っている国会議員任期延長改憲は少し中身も含めて追っていきます。

国会議員任期と任期延長改憲の「論点」

まず任期延長改憲問題とはどんな問題で、どう展開したのか。

憲法の中に国会議員の任期が何年か、これは憲法に書かれています。衆議院議員は4年、参議院議員は6年、そして衆議院議員は解散で終了する。つまり解散したその途端に衆議院議員は前議員になる。参議院議員は6年あるけれど3年ごとに半数を改選する。これは憲法の45条、46条に書いてある。

そして憲法54条に衆議院の解散の規定があります。解散をした場合には解散の日から40日以内に総選挙をやらなければいけない。その総選挙の日から30日以内に国会――特別国会といいますが、これを招集しなければならない。特別国会で必ず最初にやるのは、

解散で総選挙をやっていますから、内閣総理大臣の選出の手続きをやる。この2月の総選挙の結果、高市が選ばれたのが、その特別国会の頭ですね。

議員の任期と、衆議院の解散から総選挙、その後の国会招集までは憲法に書いてあります。選挙は当然それ以外もあるわけで、衆議院については任期満了後の総選挙、これは過去2回だけやられています。

参議院については3年に1回ずつ任期満了後の選挙があります。こういう選挙については憲法には書いてありませんので、公職選挙法でそのやり方が決まっている。原則は任期満了の30日以内前に選挙をやる。しかしその30日の間に国会がある時にまさに選挙はできませんから、国会の終了を待ちます。そして選挙をやる。だから国会の終了した時にすぐ任期が切れると、参議院議員でも選挙になった時には任期がもうすでに満了している、前議員だということが起こることになります。この辺がちょっと、公選法のやや、ややこしいところです。

任期延長改憲の論点はその通り行けばいいけれど、緊急事態で選挙がうまくいかなかった場合どうすればいいのか。こういう問題をたててきます。実は今までこんなことは全くなかったんです。

東日本大震災時の対応と改憲論・反対論の立て方

では緊急事態とはどんな事態を言うかというと、自然災害、感染症、それから内乱など、及び武力攻撃その他これに匹敵する事態、ざっと並べておきまました。憲法改正の「イメージ(案)」による「憲法改定想定条文」54条の3というところに、今のような事態がずらっと並んでいます。こんな事態の時どうするのか。

実は地方選挙については何とかしようという規定があります。特別の法によって公職選挙法の選挙期日を延期する。つまり地方選挙をいつやるか決まっていませんし、地方議員の任期は公職選挙法で決まっているのであって、憲法で決まっているわけではないから、法律で変えられます。

もう15年前になる東日本大震災の時には、この特別法で、自治体の選挙を延期しました。54の自治体で、最長11月20日まで延期した。別に、3月11日に選挙だったわけではないんですよ。

被災地が、例えば2ヶ月後、3ヶ月後に選挙を迎えても、これではまだできないね、と言うのだったら延期をする。一番延ばしたのが、11月20日まででしたから、結局最長8ヶ月延ばした。これと同じことが、国政選挙でも起こるだろう。あるいはこの東日本大震災の時が総選挙の投票日だったら、一体どうするんだと、こういう議論の立て方になります。それに対する改憲論と反対論の立て方を簡単に紹介します。

改憲論は、選挙を延期し、議員任期を延長する。これを憲法改正でやるんだという。だって議員の任期は憲法に書いていますから、これを延ばすには憲法を変えるしかないという理屈になります。

なんでそうしなければならないか。選挙は一斉に、同時にやらなければいけない。選挙一体の原則となる論拠でして、参議院の緊急集会や、公選法の繰り延べ投票というのは、極めて限定した場合しか使わない。こういう理屈になります。

それに対して、改憲は反対である、改憲する必要はないという反対論があります。一番大事なのは主権者国民の選挙権行使を保障することだ。最大限、選挙は急いでやらなければならない。一部やれないというなら、それは繰り延べ投票を活用すればいい。どうしても選挙を遅らせなければいけないなら、その間に参議院の緊急集会があるではないか。こちらを活用すべきだ、というのが改憲反対論です。

この改憲論と改憲反対論が、実は憲法審査会でほぼ5年間、論争を続けてきているのが実情です。

賛成と反対の会派の構成はその下に書いておきます。この問題では5つの党派が、改憲を主張してきました。自民・維新・国民・それに公明、有志は無所属議員が作った会派で、もう現在は存在しません。一応5党派がこれは任期延長改憲を進めるんだという主張でした。それに対して立憲民主、共産、れいわ、社民は、消極反対という対抗が続いていきます。

任期延長改憲論の推移と参議院の対応

どう展開したかというと、まだちゃんと条文がまとまっているわけではないですが、議論を始めてほぼ1年目の23年3月に、維新の会と国民民主党と有志の会が、任期延長の条文案を作ります。結構長い500字くらいある条文ですが、これを発表します。しかしあくまで条文案で、それを憲法審査会にも国会にも提出されることはありません。あくまで発表しただけです。この辺も、実は憲法審査会の特徴なんですよ。

普通だと、大体議員立法で法案を作ったら出しますよね。出して議論して、たくさん集まったら過半数で可決できるから。ただ憲法審査会ではそれぞれの会派が勝手に案を作ったとしても、発表するのは勝手だけど、それを憲法審査会に出して審議することはしない。これ、繰り返しますが、改正案を作っていくのはあくまで憲法審査会の中で作っていくのであって、外で作ったものを持ち込むのはダメよという、かなり頑固なルールが生きているんです。だから、三党派条文案というのは作られましたが、出ずに終わっています。

その間22年の12月と23年の6月と衆議院の法制局が論点整理をして発表しています。衆議院の法制局というのは、議員立法のために法案を作るのを援助する法律専門家の機関です。国会の中の機関です。ただ、さっき言ったように立民、共産なんかの消極、反対意見もありますから、この論点整理の中には反対意見や消極意見も書き込んで、こんな議論だよということを一応は公平に書いたものです。それで5年間進んできて、この総選挙があって、さっきの無所属議員の“有志の会”という会派がなくなって、中心メンバーだった議員は自民党に入っています。

ややこしいのは、任期延長改憲反対だった立憲民主党、任期延長改憲は賛成だった公明が一つになりまして中道改革という政党を作った。立憲民主党は反対で議論してきている。公明は自衛隊明記だとか、それ以外の緊急政令に対しては反対ないし、慎重意見だったんですが、任期延長改憲だけは賛成だった。ここだけとってみると、賛成の政党と反対の政党が一つの政党になっている。どっちに行くんだという話になる。厳密には未だに実ははっきりしていません。どうするんだって話はどの分野でも起こる話です。という問題にぶち当たっているのが悩ましいところで、これが衆議院の状況です。

参議院は断続的に議論してきていますが、実はちょっと衆議院とは温度差があります。やっぱり参議院の緊急集会は、参議院の役割の一つす。衆議院の改憲論というのは、参議院の緊急集会の役割は大したことないんだというふうに考えて、だから任期を延長させないといけない。こういうわけですから、参議院の側から言っても面白くないのはそりゃそうなんですよ。

しかも、それを参議院と相談の上でやろうというのはまだしも、参議院がやろうと言ってないのに衆議院が勝手に進めちゃっている。気分感情から言って参議院議員が反発するのはわからないわけではありません。そういう議員のプライドもありまして、あまり積極的ではなかった。しかもさらにややこしいのは、参議院ではまだ立民と公明は分かれていまして、どうやら少なくともここしばらく、簡単に合併はしないようです。立民の皆さん、自分たちは立民で頑張ると言っている。だったらなんで合併したのかってなりますが、言ってもしょうがない。

そうすると一体この問題、この後どうなっていくのかという悩ましい問題が、参議院側でも実は出てきます。

条文起草委員会の設置が争点化している

もう一つ、今の審査会の議論との関係で補充をします。衆議院の中では、これもかなり前から維新の会や自民の議員が言っていますが、ここまで議論を積み上げてきたんだから、もう条文化をちゃんと審査会でできるのではないか。その条文化するための条文起草委員会を作るべきだと、言い続けています。改憲案は審査会の中で作るというのが中山方式ですから、外で作ったって出せないわけです。だったら中で作るというのは、進める側の理論としてわからないのではないんです。

その条文起草委員会を、設置するかしないかが、審査会の中の手続きをめぐる争点になってきつつあります。

ちなみにこの条文起草委員会というのは、法律にはないんですが、国会の中には委員会の中に小委員会ができるという規定は、国会の規則にあるんです。同じように審査会でも憲法審査会の中に、小委員会を作れるという規定があります。細かい法律ですが、衆議院憲法審査会規定7条というのがあります。だから作れないことはない。しかし作るには、審査会の中に機関を作るわけですから、議決が必要です。そして議決は、与野党の合意でやるというふうになっていますから、与党だけで、多数決で強行はできない。やるためには、作ることについての野党第一党の賛成がどうしても必要になる。

具体的には中道改革がいいよというか、いやダメよというかで決まってしまう。中道改革がいいよと言っても、共産党が反対するのは分かっています。分かっているんですが、ここで同意がいるのは、野党第一党の同意がいると言っているので、野党第一党の同意があったら、二党三党以下の、一人か二人しかいないところが同意しなくても、これはできるというのが現にやられていて、そういう話になります。

起草委員会を作ると議決することは、そのテーマ、任期延長で議決した場合は任期延長の改憲案を衆議院の審査会に出すと決めたに等しいものです。あとは条文の調整をやって条文がまとまらなければ、それはバラバラになるんですが、そこまでやったら条文をまとめるでしょう。そうすると条文をまとめてしまったら、衆議院憲法審査会として任期延長改憲の原案を出すということになっていかざるを得ない。だから中道改革がそれに同意するかどうか、逆にそんなもの作っちゃいけないという声を寄せられるかどうかが、かなり今の局面では大事になってきます。

最後にもう一つ。じゃあ発議が議決できるのか。憲法96条で総議員の3分の2、衆議院は自民党単独で3分の2ですから、衆議院で言えば、数においては残念ながら勝ち目はないです。問題は参議院です。参議院は総数248議席で、この場合の総議員は法定数で言いますから、3分の2つは166です。166以上、任期延長改憲に賛成する会派があれば、衆議院で議決して参議院でも通ってしまうこともある。ここが微妙です。自民と国民と維新の改憲三派、これは145でこれでは足りません。あと21足らないです。

それに続く会派はどこかと言うと、公明です。公明が21議席。その次の参政が15議席、この辺りが全部乗ったら一気にいってしまいます。

公明党は、中道と合併する前は、任期延長改憲はいいよと言っていたわけだから、乗ってしまうと参議院でもいってしまう。も本当にそれでいいのかっという話になっている。参政党は憲法改正をしろと言っている創憲政党だけどれも、なぜか感染症が入ったものにだけは断じて応じないと言い続けています。何せ反ワクチンがありますからここは結構頑張るんです。

この辺の駒組みがどうなるか。それを国民の声や、国会の中での戦いで封じ込められるかで、この改憲が進むかどうかが決まっていく。こんな局面です。

任期延長改憲についてイメージ案の登場

任期延長改憲についてイメージ案というのが登場してきました。どんな経過で登場したかというと、今年の4月23日に緊急事態条項で集中審議をしました。これまでの議論の延長でした。ところがその5日後、審査会の幹事会で議論を続けるだけではなくて、衆議院の法制局に条文のイメージ案を作ってもらおうじゃないか、ということが議論されて、これが決められてしまうんです。共産党は反対したんですが、これに中道改革が同意してしまいます。とにかく中道改革が同意したら、共産党が反対しても進んでしまう。

連休を挟んで、かなり衆議院法制局も努力はしたんでしょう。5月14日にイメージ案というのを提出し、それを説明しました。昨年まで衆院法制局の局長で、何遍も審査会に登場して説明をやった橘幸信という人です。彼がいま特別参与でして、おそらく彼が中心になってまとめたんだろうと言われているものです。このイメージ案を提出し、このイメージ案について討議をします。

当然ながら改憲3派は積極です。中道は今のところ慎重ないし、立憲民主も批判をしている。共産党も反対している。参政党は感染症がある以上反対だと言い張っています。みらいの党は立法事実でも丁寧な議論が必要だと言っていますから、まだ完全にまとまっているわけではないんです。ただ繰り返しますが、衆議院の場合には自民・維新・国民で3分2を超えていますから、やる気になったら強行はできるんです。具体的な問題は、条文起訴委員会ができていくあたりが次の課題になってきます。

このイメージ案はどんなものなのか。11ページぐらいの冊子になっていまして、ご覧になりたいのだったら、衆議院の憲法審査会のホームページの中に会議日誌という項目があります。そこから入っていくと5月14日のところにイメージ案というPDFが載っています。印刷すれば11ページくらい。中はやたら細かい字で書いていて、いろんな資料が載っかっています。中身をみますと、緊急事態なんかにかかるいろんな問題が載っかっています。

任期延長とかオンライン国会とか緊急政令とか、あるいは解散権の制限とか、いろんなことが載っていますが、任期延長とそれ以外で扱いが全く違います。任期延長の部分だけは法律家である法制局が全部条文を組んで、さすがに条文を載せるわけにいかないので、イメージという格好で載せている。

それに対して他は論点を書いただけで、それ以外の部分については反対意見があると書いています。ところが条文案も書いた任期延長だけは、反対意見は一切触れていません。賛成、反対、中立の条文なんてないんです。この中には専門家の立場から整理作成したと書いていますが、あくまで任期延長改憲に賛成している人たちの意見だけを公平かつ中立に整理したものであって、議論全体を公平に整理したものでは決してありません。

これが既成事実化されては大変だと言われましたが、もともと公平公正な整理じゃありませんから、既成事実化なんてことは絶対させてはいけない。さっき紹介した、第54条の条文は、このイメージ案に載っている法制局が作ったものを、90%までそのまま採用して、私は少し略称なんかをつけましたけれど、条文に配列するならこうなるはずだ、というのを作りました。もちろん橘さんと私は同じ人間ではないから、多少違うことを考えて表現するかもしれませんが、こんな法律になるはずです。

どんなこと決めているのかという中身を、箇条書き的に抽出したのが大体7項目になっています。その箇条書きの確認だけしてみます。

任期延長改憲イメージ案・総選挙は延期できる改憲

冒頭にあるのは、総選挙は延期できる。正確に言うと、解散の後の総選挙が延期できるということです。さっき条文で紹介したように、解散した後40日以内に総選挙をやらなきゃいけない、これが憲法の規定だった。それを延期できる。当然憲法を変えます。

どんな時に延期できるかというと、選挙の一体性が害される広範な地域で40日以内に実施が困難な場合、内閣の判断で延期ができる。さてこの選挙の一体性が害される広範な地域って、どのくらいの地域なのか。何とも書いていません。何とでも解釈できてしまうんですが、どうやら議論の中では例えば、衆議院総選挙だったら2つの比例ブロックにまたがるぐらいだと一体性を害する、こういう風に言っている人もいます。

しかしその一体性が害されるほど広範な地域で、これはできないよね、と思った場合は、延期できちゃう。これが一点目です。

二つ目、選挙困難事態という、新しい概念が憲法に登場します。

一番と同じように、広範な地域で、今度は相当程度長期間困難なことが明らかな時、これまた口を噛みそうです。広い地域で相当長い期間できない。ではその相当長い期間はどのぐらいなんだ。これは書いてないです。

ここもいろんな説がありました、70日が基準だという人がいます。なんで70日かと言うと憲法の中に、40日と30日と書いてある。足したら70日だよねと。これ意味ないです。40日に選挙をやれ、30日に国会を開けといっているだけで、なんで足した70日が選挙延期になるのか。

つまり後半で、長期間困難な場合は、内閣が選挙困難事態と認定して、ただしこれは国会が承認する。この国会の承認も、3分の2という説と、過半数という説があります。

では3つ目。その選挙困難事態の期間はどのぐらいなのか。これなんとも書いていない。○月○年、いくらでも延ばせることになりかねないんですが、一応6ヶ月とか1年とかあたりが議論されています。

6ヶ月延ばせる、1年延ばせる。じゃあ1年くらいにできるようにならなければどうなるか。それについてはできないから仕方がない。また国会の承認で延長できる。だったらずっと延長したらどうなのかという問題になってくるから、今度は延長の上限を作りましょう、という話になる。だから1年が上限という説があってみたり、いや2年だと説があったり、これも明確な基準はない。どこかで決めるんです。これが3つ目、これが54条の4選挙困難事態の期間です。

任期延長改憲・選挙の期日、議員の任期、

4番目、選挙の期日はいつやるのか。選挙困難事態が終わったらすぐやるよ、これ54条の5です。ただ1年延ばしておいたら、復興が早くて8か月でできるようになったらどうするのかという話になる。だから期間中に可能になった場合は、国会の議決で実施ができる。こんどは縮めるという、これが54条の5です。

その次5つ目。選挙が延びた場合の、議員の任期はどうするんだ。ここが要です。本来4年とか6年と決まっているのを選挙で延ばす。選挙の前日まで延長する。つまり選挙が1年半延びたら、6年の参議院議員は7年半になる。衆議院議員は最長4年ですが5年半までいく。こういうことですね。これが任期延長です。

ややこしい問題があるのは、例えば任期満了の後に緊急事態が起こったらどうするんだ、解散の後に起こったらどうなる、だってもう身分なくなっているんです。その場合には任期を復活させるしかない。いっぺん解散でなくなった任期が生き返る。だから前議員になった人がまた現議員に戻って、生き返るという格好になります。 これが議員の任期で54条の6というところに書かれているのがそれにあたります。

もう一つ、選挙困難事態中にやってはいけないこと。国会は閉じてはいけない、衆議院は解散できない、憲法改正の発議はできない、改憲国民投票もできない、54条の7です。改憲派が、大体皆さんそういうふうに言っているようですね。

最後7項目、別の切り口の問題です。参議院の緊急集会は、今まで解散の場合にできると規定がありましたけれど、任期延長の場合もできるというふうに改正する、これが54条の2になります。

上のものを条文として組んだのがイメージ案というものです。

イメージ案のように改憲されてどうなるか

もしこのイメージ案が、その通り憲法に改憲で持ち込まれたらどうなるか。深刻な変容が起こると私は思います。まず国政選挙が、いろんな選挙困難との関係で3つに分かれてしまいます。

何もなかった場合か、選挙困難が起こったけれど局地的な場合、これが予定通り40日以内になります。その間は緊急集会とか繰り延べ投票を活用します。

その次に、選挙困難の基準が分かりません。さっきの例で言えば2つ以上の衆議院の比例ブロックにまたがるような形で困難が起こった。極端な言い方をすると東北地方と関東地方、茨城県の北部と福島県の南部あたりで地震が起こった。そうすると福島南部と茨城北部で選挙ができない、2つの比例ブロックで選挙ができないことになります。この場合については選挙をやるわけにはいかないから、全部の選挙を延期すると、なります。

3つ目に、その広範な、今の例で言うと福島県南部と茨城県北部で地震が起こって、これは2つのブロックに関わるから広範だと考えて、深刻な被害があったから、とてもじゃないが、70日はおろか3ヶ月たっても復興ができそうにない。だから、選挙困難事態を認定して、選挙を6ヶ月延期する、ということを決定ができる。それをやりますと、今の例で、茨城県北部と福島県南部の人たちが、選挙できないだけではなくて、全国の選挙ができなくなりますから、全部の国民の選挙権は半年なら半年遅らせられます。

例えば、あと半年任期があるうちの選挙だったらまだしも何とかなりますが、任期が終わった後の選挙、あるいは解散後の選挙だったら、終わったはずの議員の任期が半年延びる。こういうことになります。

条文でいうと40日というのは総選挙だけですから、解散総選挙の例で言います。任期満了後の衆議院の総選挙とか参議院の国政選挙は、これは公選法で規定していますから、その公選法の中にも選挙の延期だとか、あるいは選挙困難事態も当然入り込みます。憲法が変わるんですから。だから、極端に言わせると、どの国政選挙でも今言った3段に分かれます。

もともと公職選挙法は、弁護士の私が読んでも嫌になるくらい複雑な規定を持っていますが、それがますます複雑になって誰も分からなくなる。

政府か国会の多数派が選挙延期などを判断

次なる問題があります。国会延長とか、あるいは途中で選挙をやるとか、これを誰が判断するのか。判断できるのは、みんな政府か国会の多数派です。選挙を延期する。選挙困難事態を認定し承認する。まだダメだからと言ってそれを延長する。できるようになったから、今度は国会の議決でやるようにしよう。

この議決の対象は何だと思いますか。今の例で言うと、福島県の南部か茨城県の北部で地震がありました。相当ひどい被害が出ました。一体この地震の被害が、どのぐらい先まで続くであろうかという話、そんなものをあらかじめ客観的に科学的に判断できるわけがありません。無理でしょう。それができるぐらいなら、復興計画は計画通りにいくわけです。誰だって将来の復興なんて分かりやしない。

誰も判断できないものを、多数派が議決をすれば決められてしまって、それで任期が延長されてしまう。延長されて任期が続く人が決めるわけですから、自分で自分の命を延ばすに等しいことになる。あるいは自分で自分の政府の寿命を延ばすというのに等しいことになる。こんな判断に政治的な思惑が介在をして、恣意的な判断になるというのは、誰が考えても、よっぽどおめでたいとしか言いようがないんです。

さすがにこれを言っている人も、そういうことをおそれる可能性があります。だから裁判所の判断を受けたらどうだかと、裁判所を持ち出す案もあります。私も弁護士を50年やっていますけれど、裁判所がそんなに公正なものだと思っていません。それ以前の問題なんです。

最高裁判所に持っていこうと、東京地方裁判所に持っていこうと、どの裁判官が判断できるか。今の例だったら水戸地裁でも構わない。福島県南部と茨城県北部の巨大な地震の被害が、どのくらい広がって、いつくらいまで続くかということを判断できるんですか?失礼ながらこれも確かに立民の質問だった。

こんなことをやりますと、現実に災害が起こった時に、任期延長させたいから被害が誇大に評価されるのではないか。あるいは選挙を遅らせるために、復興に力が注がれていないのではないか、なんて疑惑が起こりかねない。そんな疑惑を起こすことが、本当に被災者に寄り添っていると言えますか、という話です。

太平洋戦争開戦の10ヶ月前も議員任期を延長

もっと言えば、軍事的緊張が高まって、いつ事態が発生するかわからない。そんな緊張が高まった話なんて、初めから政治的問題ですから、そのことを口実にして選挙の延期を考える。これが政治的に使えることは、当たり前の話です。現に戦前はそれをやったわけです。

憲法というのは、そんなことを許すような理念とか構造を持っているのか。なんで日本国憲法には、議員任期をわざわざ書き込んだのか。戦前の大日本帝国憲法には書いていませんでした。かといって決まっていなければ選挙はできないから、あれは法律で書いておいたんです。法律で書いてあったから法律を変えれば、延ばせた。

あの、太平洋戦争開戦の10ヶ月前、1941年2月、衆議院議員の任期を延長した。こんな非常時に選挙をしている場合ではない、これが理由でした。簡単に言えば、選挙を回避して、対米英戦争に全力を集中させるため、10ヶ月後に戦争に突入していった。そんなことを繰り返させないため、恣意的な任期延長を許してはいけないから、憲法に4年、6年と書いた。その最長4年、6年という議員を選ぶ国民の選挙権、これは主権者国民の一番重要な権利であって、そのことは憲法前文や一条に正面から書かれている。解散後の任期満了の選挙困難事態で、国民が選挙権行使の機会を奪われ、前議員がゾンビのように復活する。こんなことを、国民主権を定める憲法が認めるわけがないんです。

さらに国会の解散とか国政選挙の行為は、これは重要な主権者の国民に関わる行為ですから、天皇の告示行為にされています。憲法7条の告示行為で、3と4です。解散後や公示後の選挙困難事態は、天皇が国事行為として行った行為の効力を、天皇と関わりなく執行させる。戦前にやったら不敬罪ですよ。私が言うのは全く変な話です。私はそんなに天皇さんについても持ち上げるべきでははないんですが、しかしこの国の構造、憲法の構造はそうしてきたわけです。

それを、議員が自分の任期を延長するためにつまみ食い的に変えた結果、憲法の理念や構造と全く違うものを作ってしまった。その憲法の理念と全く違う条文がどんな条文になるか、まさにこれなんです。

イメージ案の条項というのは、15項目、それを条文に私なりに配列すればこうなります。条文の字数にしたら1500字を下りません。ものすごく長い。だって、原則を外して例外を組んでいけば延びるのは当たり前です。

今の憲法の前文から103条のおしまいまで、条文の文字は1500字です。ほとんど新しい付け加えです。
この1500字を今ある憲法の1500字に足しますと、12000字になりますが、12000字のうち、8分の1の1500字が、議員が任期を延ばすための条項で占められます。

長い短いの問題だけじゃない。複雑怪奇のこのごちゃついた条文と、基本原則基本理念をはっきりさせて、の国家権力というものを縛るために作った憲法とは、質が全く違うものになります。こんな法律を作らないといけない国家は、本当に駄国家だ。そんな国家にしないために、明確な理念を定めた憲法を我々は作り守ってきたのじゃなかったのか。

国家権力を縛る条項とは明らかに異質な条項の中に、外部から武力攻撃なんてものが書き込まれる。それが自衛隊や国防規定の明記や緊急政令、緊急財産処分の入り口になる、その危険性は重大だと思います。

ここから先は私の主観です。おそらく衆議院法制局の橘さんたちもこういうの作った。これを書いていて、いい憲法だと思って書いてないと思います。国会議員さんたち、あんた方が議論したことを専門家が条文にすると、こんなものになるんだよ。あんた方本当にこんな憲法にしていいんかいと、私は言い返している気がしてならない。少なくとも法律家が心から喜んで書いた文書でないことは、50年法律家やった人間としてわかるつもりです。

国会議員の任期延長は本当に必要なのか

もう一つ別の切り口です。国会議員の任期延長は本当に必要なのかという問題です。まず任期延長が必要な事態は発生するのか。これを立法事実と言います。チームみらいが、立法事実があるかが大事だと。私は同意見です。そこを検証しないで、何か変えるための改憲を言うというバカな話はないんです。よく出されるのは東日本大震災なので、その東日本大震災との関係、これも立憲と議論したので、書いておきました。

東日本大震災の場合には、地方選挙では最長8ヶ月延ばさざるを得なかった。被災地は全部が被災していますから、その被災地の選挙を多少延ばさざるを得ないのはしょうがない。そこまではわかります。しかし、さっきの例で福島県南部と茨城県北部で延ばすのは無理はないとして、全国本当に延ばす必要があるのかという、この問題になります。東日本大震災で地方選挙を延期した自治体で、その期間本当かどうかは別ですが、総選挙ができないと考えた。本当に努力してもできないのかどうかは別です。

その場合で69名が選出不能になる、14.8%。これ実は、昨年の3月13日に、これまた法制局や衆議院審査会事務局がかなり詳細な資料を作ってくれていまして、これもホームページに載っています。

確かに10%以上不能です。しかし最長8ヶ月ですから、どんどんできるようになって、最後はどこだったか、一つの町だけが8カ月残った。努力すればもっと早くできたかもしれない。その努力をすることをやめて、このために何ヶ月も選挙を延ばして、全員の任期を延長して、全員の選挙権行使を送らせる理由があるかと、こういう問題になります。

参議院選挙はそうはいかないのではないかという議論が必ず出てきます。悩ましいんですよ。

参議院議員を同じ選挙でやりますと、実は58名が決まりません。半分近い46.4%です。なんでなのか。参議院選挙は50人が全国比例です。全国比例代表の厄介なのは、一地域でも投票がないと、誰も決められないと、一応、衆議院法制局は考えている。実は本当にそうなのかという議論はあります。

だって全国比例で、どこかの選挙が無効になったら、それが有効になる。やり直すまで当選確認を出せないかという話になって、仮にここの町の票が全部次の人に入ったとしても変わらないのだったら、これも当選にできるわけです。そのサイズによってはやれなければいけないんですが、一応この話は全国比例だから一部でも投票ができなかったら決められないと言っています。だから半分近くが入らない。

大変だという気はしますが、ただ、参議院はまだ半分残っているわけです。選挙は半分しかやっていないから。その残っている半分を足した参議院議員全体からいえば23.2%、20%ぐらいだけです。そしてそれをどんどん減らしていく。

公選法を固定して憲法改正を考えるのは本末転倒

どうも参議院は参議院はと議論をするから、私もそれなりに選挙制度を追ったことがありますから、あえて言っておきます。全国比例代表というのは、何も憲法が要請して作っている制度ではありません。憲法の中に全国選挙については書いていません。本当に全国単位の選挙をやったら、選挙困難の問題が深刻に起こると言うなら、全国単位の選挙をやめればいいだけの話です。

だってブロック単位の選挙にすれば、このブロックはダメかもしれない。他でもできるわけです。今、参議院の選挙制度をどうするかという議論がされていて、多くの政党がブロック単位の大選挙制度だとか、ブロック単位の比例代表制を主張しています。

私は、以前は両方の選挙制度関係の責任者をやっていまして、その時、確か参議院議員が、6ブロックの大選挙区制がのぞましいという意見書を持って、参議院議員を回ったことの覚えがあります。その時に、8ブロックがいいとか、10ブロックがいいとか、その議論をしたことがあります。ブロック制にしたら憲法違反だと、誰も言いませんでしたよ。当たり前です。だから、そんな提案をどんどんやっていますから。本当に選挙困難が深刻になるというなら、そうすればいい。

私はそんなに選挙困難は起こらないと思っています。そっちを言うなら、公選法の選挙制度を変えればいいのであって、公職選挙法を固定して、その上に立っている憲法の方を変えようというのは、これは完全に逆立ちの議論です。

これをやると実は次が登場します。だったら、全土が燃えちゃったらどうするんですか、という話しになります。そのうちには日本が沈んでしまったらとか、地球が燃え尽きたらとか。時々こういうSF的な話が登場して、国会の中ですらやられるから困るんです。

科学的には全く予見もされていない事態を想定して、憲法を論じるのは根本的に間違っています。主権国家日本という国があって、統治ができることを前提として作っている憲法が、対象とする範囲外のものです。起こり得ないSF的な事態を持ち出して、こんなことがあるからなんてものを憲法に組み込んだら、必ず誰かがそれを乱用して、普通の事態に適応しようとする。その危険の方がはるかに大きいというのが、歴史的教訓です。

繰り延べ投票とその実例をみる

繰り延べ投票は、一条だけ公選法に入っています。「天災その他避けることのできない事故により、投票所において、投票を行うことができないとき、又は更に投票を行う必要があるときは、都道府県の選挙管理委員会(市町村の議会の議員又は長の選挙については、市町村の選挙管理委員会)は、更に期日を定めて投票を行わせなければならない。」

つまり、できなかったら、もう一回やらせなさい。できなかったからと、投票権が奪われる理由がないですから、それは繰り延べしてやりましょう。現に2回だけ参議院議員選挙でやったことがあります。

1回目の1965年熊本県でした、2回目の1974年三重県、実は私はこの時を知っています。たまたま私は滋賀の隣でしたから。ある町で参議院選挙ができなかった。当時は比例ではなくて、全国の個人名選で、49位50位と、51位52位が接戦だった。

そこの町に、この4人の候補者と、たまたま自民党と共産党でしたが、この候補者、政党がどっと集まって、救援活動と合わせて選挙運動をやりました。まあそうなるでしょうね。選挙運動だけやったら反発を食いますから、やっぱり救援をしながら、支持を訴える。双方、必死だったんでしょう。結果は、順位は変わらなかった。こんな話がありましたが、誰もそれが憲法違反でけしからんとは言いませんでした。

いやいやもっとその範囲が広かったらどうするんだとか、あるいは、市町村の選挙区単位でいいのか、という議論もあります。私も実はあまりにも単純すぎて、こんな議論があるんだったらきちっと繰り延べ投票の規定を改正した方がいいと思いました。でもそれは公職選挙法で決められています。

広い地域で延期が必要な場合、都道府県の選挙管理委員会が決めるとか、選挙区の中でできるだけまとまって遅らせるようにするとか、いろんな方法があります。いざとなったら、それを中央選挙会が承認するとしても、公職選挙法を充実させれば解決する問題です。そこをそのままにしておいて、また憲法を変えよう。これも完全に本末転倒という気にしかなりません。

ところが改憲派は、この繰り延べ投票は間違いだという風に言い続けます。

なんで間違いか。さっきの三重県の、ある町だけ1週間遅らして、他の選挙区は開票も済んでいる。したがって周りの町の開票結果がわかっていますから、当選者はわかっている。当選者が分かってから選挙をしてどうするんだ。それは分かりますね。それでも選挙やったんです。

それから、選挙というのは同時にやるから意味がある。選挙の時期が、ある選挙区だけ遅れるなんてことをやってはいけない。選挙一体の原則に反する、こういう。誰だって選挙は、まとまって同時にやった方がいいことは間違いないんです。そのために努力すべきです。しかし災害で、どうしてもここだけできない時に、全部を遅らせるのか、ここだけ待ってもらうか、という議論をしているわけです。そして待ってもらった時に、この人たちに選挙ができないようにはできないから、投票権を保障する。

そうしたら、彼らは確かに選挙の結果を分かった上で、知事選挙だったら信任投票みたいになる。だって遅れた選挙区でみんなが知事じゃない候補者に投票したら、この知事の被災地に対する施策が信頼を受けてないということの証拠になる。それだって投票をさせないよりはまだいいではないか。やむを得ない例外の例だと。だから参議院選で2回やったけれど、誰も違憲とは言ってない。さらに選挙は一体でやった方がいいというのには誰も異論はない。

だけど選挙を一体にしないといけないから、全部遅らせていいか。それほどの必要性があるかというほど、憲法上の価値があるとは言っていません。選挙一体の原則は憲法学説には全く書いてありません。

憲法学者はそんなものないと言っています。憲法学説上ないものを、国会議員があると言ってはいかんとは言いませんけども、なんとなく自分たちの任期を延ばすために、ない原則を作っている印象がしてしょうがない気がします。

参議院の緊急集会についてと選挙の強靭化

参議院の緊急集会は、戦前の緊急勅令を導入してはいけないから、それに変えて組み込まれた緊急事態対処条項です。解散だけではなく、任期の延長にも類推適用するというのが、現在の憲法学会の多数説になります。本来緊急集会というのは、次の特別国会招集までの70日間を一応想定しているけれど、これがどうしても遅れる場合には、これまたやむを得ない例外ですから、これを超えても開催が可能だというのもこれも憲法学会ではもう異論がありません。

どうも改憲派はこの緊急集会は70日しか開けないとか、緊急集会は少しの機能しか持ってないと、こっちを限定します。それを限定しておいて、だから任期延長する必要がある、こういう理屈になる。私に言わせるとペテンとしか思えないんです。

緊急集会は、やむを得ない例外です。だから緊急状態がひどかったら、少し拡張せざるを得ない場合が起こり得る。そのやむを得ない例外を限定しておいて、国民の選挙権を奪う、遅らせるというとんでもない例外を引っ張り出すのは、どう考えても本末転倒のはずです。しかし、永田町というのはこういう理論論戦だけで動かない、厄介なところであります。だから、反対運動をやろうというふうに、呼びかけざるを得ないんです。

選挙困難事態は、ない方が良いんです。こんな事態は起こってはいけないんです。武力攻撃や内乱等を起こさないためには、平和主義や民主主義を徹底すればよろしいんです。

自然災害や感染症は確かに避けられない。そのために対策を今も充実していますが、ますます充実させればいい。そして何かあった時に、最大限選挙がやれるように選挙を強靭化と言っています。例えば郵便投票を拡大するとか、ネット投票を認めるとか、あるいは避難所でも投票を認めるとか、こういう今の選挙をもっと充実さなければいけないこと、いっぱいあると思うんです。

それは、実は我々が散々言ってきたことです。

選挙を強靭化する、充実させることは一切放棄しておいて、選挙が困難だから自分たちの任期を延ばす。誰のためか。この点も含めて決着済みの問題だと思います。

憲法審査会にかかわる諸問題と各党の見解

まず、9条改憲、いわゆる明文改憲。改憲の本丸でして、戦争をする国を憲法面で保障し加速する、ということでした。自民党が自衛隊明記、維新が9条2項を削除・国防軍の書き込み、国民が2項を維持するかどうか微妙ですが、とにかく戦力としての自衛隊。公明党はその自衛隊明記等には賛成しないで、統治機構の中に自衛隊の位置づけを書き込むことがあり得ると言っている。これが今年の選挙まででした。

これがどうなるかと思っていたら、一昨日、衆議院憲法審査会で、9条についての集中審議がやられました。そこで各会派・政党の立ち位置が新しくより鮮明になりましたので、紹介しておきます。

まず自民党はやっぱり自衛隊明記です。2項そのまま。ただ微妙な点が加わっているのは注意した方がいい。自衛隊を明記するが、自衛隊の憲法上の位置づけは変えない。しかし何も変わらないかというトーンではもうなくなりました。書き込むことによって、国防を充実強化する。これは速記録で、新藤さんという代表幹事が言ったのを読んでおきます。

「憲法9条を改正することは安全保障法制、要するに戦争法制ね、安全保障法制の完成をもたらし、国の防衛を担う自衛隊の活動内容と必要な機能が一層充実することにより、国防体制の強化につながると考えている」

10年前に安倍改憲が登場した時に言っていたセリフとは明らかに変わってきていることは頭に置いてください。あの頃はただ自衛隊を書き込むだけです。なんで書き込むのかと言ったら、教科書に自衛隊が違憲と書いているから、自衛隊員がかわいそうではないか、憲法学者の中にも違憲論がいっぱいある。だから自衛隊を書き込んで合憲にする。書いても書くだけですから何も変わりません。これの反論は簡単で、何も変わらないなら何で憲法を変えるんですかという話です。

それが10年経って、自衛隊を戦力軍隊にするとは言わないけども、これによって国防体制の強化を引き起こすと言っている。つまり戦争をする国を強化すると公然というに至ったということです。これは同じ自衛隊明記改憲が登場したとしても、その危険性が拡大した。それだけこの10年の間に実態が先行したんです。この実態が、ここまで進んだだけの9条改憲のもたらす問題とも考えなければいけない。

維新の会。9条2項を削除する、国防軍を明記する、集団的自衛権全面容認をする。軍事裁判所を作る。自衛隊員は国家公務員ではなく軍人になる。戦前と同じです。戦前、軍人は国家公務員ではありません。あくまで軍人です。そして自民党の言っている自衛隊明記とは作用法。つまりどんな行動をするか、あるいは組織法とも全く違うということを強調しました。

国民民主が微妙でして、そんなこと言っていたら進まないじゃないか、早くまとめろ、というのが彼らの意見です。国民民主の代表の玉木が、早く集約しないと間に合わない、早く論点整理をしろと。しかし、国民民主党としては、自衛隊を戦力として認めるべきだ、それを9条2項を維持してやるか、削除してやるかは今検討している。

参政党。自分たちは新しく憲法を作り直す、創憲を主張しているから、根本的改正が必要であって、自衛隊明記などでは全く不十分である。これでは諸国軍と全く異質なものになり続ける。だからほぼ維新に近いわけです。

この4党は明確に9条の改憲を主張している。

共産党の反対はよろしいですから、微妙なのがチームみらいです。立法事実を確認してから行くべきだという。一応真っ当なこと言っています。まだ9条は、直接は出てない。

中道改革は2項の削除に反対する。さらに違憲論解消のための自衛隊明記は不要である、反対である。ここまでは一応いいんですが、ただそこで終わってないのが頭が痛いです。自衛隊をめぐる憲法改正論議は重要である。その議論そのものが必要であると言って、やめろと言わない。ここが結局、立憲民主と公明党をくっつけていますから、両方のエッセンスをとらざるを得ない。どっちかまだわからない。

ただ議論は現時点ではまだ拡散していて、国民民主党の玉木が言うように、一体いつになったらまとまるんだいという状態に、今あることは事実です。

この後に一体どのように論点整理がされていくか。それから任期延長でやろうとしている改憲と、同じスケジュールでやろうとするのかは、これからも監視し批判をする必要があります。どんな形の9条改憲であっても、危険性は全然変わりません。それも戦争を許さない、9条に手を付けさせない、というふうに闘いを強める必要があるのは、言うまでもありません、

緊急政令、緊急財産処分(緊急事態条項)

緊急政令、緊急財産処分(緊急事態条項)。これは国会の議決がいとまがない場合に、内閣に独裁的権限を付与するものであることをご承知ください。こうなりますと、さらにとんでもない事態が想定され、国会が開催できない事態、東京直下型の地震が来たらどうするのか。ともかくチームみらいが言ったのか、他でやればいいじゃん。憲法の中に東京が首都とは書いていませんし、国会は東京でしかやってはいけない、どこにも書いてない。

東京が本当に燃えちゃったら、大阪か名古屋か知りませんけれど、そこに集まってもらってやればいい。どうしても行けないなら、そのためにオンライン審議の議論をしたんでしょ。最悪オンラインででも国会議員が意見交換する、それは憲法違反ではないと言った、となるわけです。

そこを知ってから、いやいやオンライン審議すらできない事態もあるじゃないですか。いや電気が完全に不通になって電波が一切飛ばない。そんな状態で人間が生存できてるんですか? 地球が燃え尽きる日に近い事態を持ち出して、せっかく議論したオンラインですら会合ができないことがあるからという。ここまで持ち出さなければならない議論をいまだにやっています。自民と維新が積極的ですが、さすがに他は慎重です。ただ参政党あたりが乗る可能性はちょっとあるかなと気がしていますが、さすがにこれはそう簡単にはいかないはずです。

すでにいろんな法制が整備されていて、災害法制や感染症法制もかなり充実しています。私は大反対をやった法制だから褒めたくはないですが、有事法制もそれなりにきちっとできています。警察法制というのも緊急対処法制があります。これらは闘った、いわば敵なんですが、そういう法制を作っておきながら、これで役に立たないから全権を内閣に与える。なんでこれを作ったのかと、むしろ言いたくなります。これも議論では決着済みのはずだと私は思っています。

参議院の合区解消の問題について各党の立場

次に参議院の合区の解消の問題がまた急浮上してきました。5月3日の憲法記念日の産経のインタビューで、高市首相が任期延長改憲とそれから参議院の合区解消をやると言ったらしいです。急に自民党が衆議院でも参議院でも、合区解消のための改憲が必要だと言い出しました。

ご承知のように参議院は、鳥取・島根、徳島・高知で合区になっていまして、さらに格差が拡大しています。このまま合区を続けますと、飛び地の合区をするしかなくなる。どうするのか。はっきり言って誰も合区をやろうとは言ってない。地元からは合区をやめてくれと言われている。

それにはどうすればいいかというと、選挙区は行政区域、区画地域的な一体性、地勢を総合的に勘案して決めるというふうに、憲法に書き込めと、これは自民党案の素案です。つまり簡単に自治体単位で選挙をするというふうに憲法に書いてしまったら、合区をしないでも最高裁は、違憲と言わないでしょう、というロジックです。

ところが今年になって自民党が衆参で主張して、参議院の審査会で2回続けて参考人の陳述をやりました。こっちは自民党と国民民主党は積極ですが、今のところ他は慎重、ないし反対です。ほとんど自民党と一体化している維新の会も、この点だけは自民党と意見が違って、ブロックによる大選挙区制を主張している。十分あり得る選挙なんです。

だから維新と公明が大選挙区によるブロック制、共産党はブロックによる比例代表制、それから立憲民主は、合区の解消が必要だが、憲法改正に反対という立場です。さすがにこちらで3分の2は、簡単にはいかないと思います。

これはさっきから言っている、選挙制度をどうするか。選挙をどうするかという問題で、公職選挙法の問題として正面から議論すべき問題です。それをやりもしないで、憲法を変えろという議論に持ち込むこと自身が、全く法外の話だと考えています。

公平性に欠ける改憲手続きの問題

最後に改憲手続きの問題です。改憲に傾斜した改憲手続き法になっていまして、最低投票率の規制がありません、それから公務員、教育者の国民投票運動に規制がかぶっています。加えて、選挙はお金の点でも、ペーパー、選挙物資の点でも、がんじからの規定があって、これも問題だと私は言ってきています。それに比べると、国民投票には、ほとんど規定や禁止がなく、自由すぎると思っています。

何でもかんでも自由にすればいいというわけではないので、なんせ有料広告も2週間だけ規制して、あとはいくら金をかけてもいい。私は公職選挙法の本まで書きましたけれど、いくらなんでも金があるやつはいくらでも選挙に金を使っていいと変えるとまでは、言ったおぼえはないですよ。

やっぱり公平な問題があるわけです。それを国民投票法はそうしてしまった。だから金で改憲が買われる危険というのは、依然としてあります。欠陥法だとずっと言い続けている。それから20年経って、情報に関する情勢が大きく変わってしまいました。あの当時は広告といったら、新聞かテレビだった。

この20年の間で、インターネット上の広告費の方がはるかに多くなって、ネット上の宣伝の方が、はるかに影響力がある。そうするとネット広告をどうするか、という問題を考えざるを得ない。さらにこの数年の選挙を見ますと、ネット広告だけではない。私はほとんど使ってないですが、要するにSNSの中で、とにかくいろんな情報が飛び交う。その中にフェイクや誹謗中傷が氾濫をする。さらにはアテンションエコノミー、SNSで情報を飛ばしてそれをたくさんの人が見ると、それでお金が稼げるという、いわば拡散が商売としてやられる事態まで起こってしまった。これは選挙の方でも甚大な問題ですから、国民投票にこれが持ち込まれてよろしいのかという問題は確かに深刻な問題です。

改憲手続き法の改正

最初にふれた公選法並びの改正、今から4年前に附則4条が付けられました。これは自民・公明が賛成しました。

国民投票の公平及び公正を確保するために、コマーシャル規制や資金規制、ネット適正利用の措置を3年目途に行うということを決めました。それから実は5年経ったんです。しかし全く措置はされていません。自民・維新は自主規制でといい、立憲民主は法規制を強く主張し、国民民主も一部法規制を主張したんですが、今度は逆にこれが取りまとめられない。そのままずっと放置されたままできてしまう。その間に公職選挙法も細かいところが変わっていまして、それで10日前に国会に登場したのが今度は公選法並びの3項目が提出されました。

細かいところですが、大事と言えば大事です。立ち会い人をどの範囲から選ぶとか、FM放送で放送していいかとか、いろんな問題があります。そのこと自体が根本的に間違っているとまではさすが私も言う気はありません。ただ今選挙に関わっている問題が、ここが中心なのか。これで解決するのかといったら、在外投票者の問題だと、違憲判決まで出ています。郵便投票とかネット投票、いろんな解決性が必要なのに、それに手を付けないでここだけやった。厳しい批判があるべきです。

ただ、この改正案は通りましたけれど、その中で、この国民投票の公平及び公正を確保するために、これからの措置をやらなければならないという附則はそのまま残りました。それを直ちにやらなければならないという附帯決議は、中道改革が言い出して、自民党や維新も含めて提案していますから、改憲派も自分が提案してやらねばならないと附帯決議をつけました。

これはこれで意味はあると思います。自分たちがやらねばならないと附帯決議をつけたのだから、これはやるべきことをやってないことを認めたことにはな
る。附帯決議は確か法的拘束力はないですから、やぶったらそれっきりです。しかしそうは言っても、それを無視して改憲に突っ走るなんてことは許してはならないし、できないということを政治的に言い続けていく、いうことは必要だろうと思います。

審査会の動きに関心を持ち、起草委員会を作らせない

まず、審査会の動きに関心を持っていただきたいし、広めていただきたいということです。審査会の傍聴を高田さんは毎回行かれているようですが、私も時々行きます。はっきりと衆参とも傍聴者は増えています。反対派の方の傍聴者も増えていますが、先日私が行ったら衆議院の傍聴者紹介議員が10人ぐらいいました。7人ぐらいは改憲賛成派の議員の紹介でした。つまり推進派の方も、この時期にやはり傍聴させて、と考えているわけです。みんなが入れるわけではないですが、やはり関心を持つことです。

それから、ネットで視聴が可能ですし、提出された資料や会議録もネットで全部見ることができます。はっきり言って、傍聴していても聞いていて、気持ちの悪い発言が大半です。だからといって目をつぶるわけにいかないから、どんなひどいことを言っているのかを聞いてやって、それを広めることも私たちの仕事と思うしかありません。

皆さん方は、国会行動を含めて戦争と改憲反対の声を広めておられます。昨日2万6千人の人たち、すごいと思います。各地からも19日行動の参加者が増えている、若い人が増えてきて、若い人が発言するような新しい動きについても聞いています。そんな動きをぜひ広めていただきたい。

それからもう一つ、改憲反対の署名の中に起草委員会を作ってはならないと入っていることの意味を、もう一度確認していただきたい。起草委員会ができてしまうということは、審査会が改正案を出すことです。任期延長であれ、9条であれ、出しますよということを決めるに等しいわけです。だから、発議はずっと先、国民投票はずっと先かもしれないが、今の焦点は起草委員会が作られるかどうかです。あの署名は、今この時大事なんだということをぜひ頭に置いていただきたいと思います。

最後に、長くやったものとしての一つの立場からです。改憲手続き法が登場して20年。その当時、私は自由法曹団の幹事長として、ずっと国会に張り付いて論戦をサポートした。安倍政権の時もその後も、改憲派が、衆院でも参院でも3分の2を占めた時期があった。おそらく安倍さんはすぐ改憲できると思ってたんじゃないか。それでも、改憲を許さずにここまでやってきました。

その20年こそ、あの政治改革、構造改革で作った、新自由主義の道、あるいは世界の戦争に行く道だった。格差が拡大して、未来に展望が持てない。そういう人が増えてしまった。その声が、例えば国民民主に行ってみたり参政に行ってみたりして、今回は高市に集まった。だけど彼らが少なくともこれまでの政治が本当に良かったと思って投票してないことはわかるわけです。だから高市に票が集まったようだけれど、憲法を変えろという声なんてどこにも高まっていない、守るというのは正確だと思います。今各地で声が高まっている。これが憲法審査会、改憲手続法の20年だということ、これにもう一度確信をもち、頑張っていきたい、頑張っていただきたいと思います。

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