2月の総選挙を終えてから、激動の日々が続いている。
高市政権圧勝の後に待ち受けていたのは戦後最大と言っても過言ではない改憲の危機だ。憲法審査会における改憲賛成は96%を占めている。多少の不満もありつつも、たった1年3か月だったが、立憲民主党が衆議院憲法審査会の席を大きく占め、審査会会長が枝野氏だった時がもはや懐かしい。
このような状況になったのであれば、もう回りくどく改憲への道を探る必要はない。ストレートに本丸である憲法9条に手を突っ込んでくる可能性は十分にある。予算審議を異例の速さでこなし、今月末にも憲法審査会を再開させようとしている。7月まで予定されている特別国会期間中、毎週衆議院の憲法審査会が開催されるとなると、改憲発議へとあっという間に進んでしまうであろう。今回憲法審査会の会長になった古屋圭司氏は、改憲条文案起草委員会の設置の強行も示唆している。
また改憲への動きと共に、国家情報局設置法案やスパイ防止法などの悪法も強行して通そうという動きが強まっている。これらを合わせたとしても今年上半期の国会外での運動は重要になっている。とりわけ、衆議院における国会内での改憲反対派の激減により、より私たちの運動が今後の日本の方向性を決めるキーポイントになることは間違いない。
他にも熊本県健軍、静岡県富士などへの長射程ミサイル配備が住民無視で進んでいる。現地の住民は長射程ミサイル配備予定地を取り囲んだり、スタンディング、デモをするなど抗議行動を一層強めている。日本全国基地化といった大軍拡が本格的に始まっている。
このような状況の中で、アメリカ・イスラエルは突如として日本時間2月28日イラン攻撃を始めた。イランが核保有を目指しているというようなことを口実にしているが、どこからどう見ても違法極まりない蛮行である。年明け早々にベネズエラの大統領を誘拐し攻撃を始めたり、2か月後にはイランを攻撃したり、アメリカ・トランプ大統領の無法ぶりに全世界の市民は声をあげ、反戦運動を開始している。トランプ大統領から日本政府がホルムズ海峡に自衛隊派兵を要求されたことに対し、国内のSNSでは大反対の声が溢れた。
高市首相は会談場所に到着するや否や、トランプ大統領に抱きつき、属国ぶりを露呈していた。あれほどまでにも「ぶら下がり外交」を批判されたのにも関わらず、今度は「抱きつき外交」とは確信犯に他ならず、長年にわたる日本での女性解放運動を愚弄する行為である。
首脳会談の内容は、自衛隊派兵は免れたものの、停戦後の機雷除去での派遣を求められる可能性は高い。そして案の定、莫大な投資を要求された。
約11兆5千億円の対米投融資だ。さらにはミサイル共同開発・生産で一致してきた。機雷除去での自衛隊派兵も、アメリカへの投資も、ミサイル共同開発も、私たちの暮らしを犠牲にしてまで行うことなのかという事で怒りの声をあげていこう。
そして日米首脳会談が行われた3月19日。安保法制が施行されてちょうど10年のこの日、毎月行われている国会議員会館前での「19日行動」には1万1000人の市民が詰めかけた。
まさに「詰めかけた」という表現通りの人の集まりだった。議員会館前に留まらず、国会図書館前は図書館の中庭にまで人が溢れた。憲政記念会館まで列は伸び、国会を半分何列もの人々が取り囲んだ。それだけではない、永田町自民党前、永田町小学校、赤坂見附駅の方面、衆議院第一会館、第二議員会館の間の坂道も溜池山王駅までペンライトを持った人々の光が連なった。マイクの音が聞こえない場所では、YouTubeでの中継配信を参加者がスマホで流していた。驚くのはいつも絶対に警察は入れてくれない、国会議事堂側の歩道にもあふれ出した参加者が、光を持って集まったことだ。かつての運動を知っている仲間は、国会議事堂側にも人を入れてしまうのは2008年の教育基本法改悪反対運動以来だという。
この光のウネリは東京だけではない。全国各地で19日の夜に、ペンライトを持って集まろうと有志が呼びかけて一斉に実施された。なぜ19日に行動を起こすのかいまいち理解していない人たちまでもが、SNSで「毎月19日には何らかの行動があるらしい」と呼びかけ「19日行動」という名称が一気に新しい層に広がり市民権を得ている。
この広がりのスピード感は、従来から運動に関わっている仲間たちも追いつかないほどだ。それほどに急速に、今までデモに行ったことのない市民にデモが広がっている。大きな特徴は20~40代の女性が参加者の多くを占めるという事だ。
ペンライトを持って行こう!の呼びかけを1カ月前の2月19日の19日行動で行った際、1000人が集まり、少なくない数のペンライト勢が集まったのだが、たったの1カ月で1万人も増えた。こんなにもペンライトムーブが広がるとは主催側も思っていなかった。それだけ市民運動の内部も、外の雰囲気や流れが分かっていなかったという事だ。
韓国で去年、尹元大統領による戒厳令に抗議した弾劾デモでは、アイドル応援棒(=ペンライト)を持ってきてK-POPに合わせてコールをする姿を見た、長年の民衆運動家や労働組合はすぐに順応した。労組では労組オリジナルのペンライトを作った。今までK-POPの追っかけをしている若者を内心バカにしていた大人たちは、いっせいにK-POPを聴くようになった。ジェネレーションギャップが一気に縮まったそうだ。(韓国には兵役制度があるため、自分が「推している」アイドルの子が兵役に行っている間は、お願いだから何も起きないでほしい。といった切実なファンの気持ちを踏みにじろうとした尹大統領は許さない。そういう強い気持ちを持ったファンが、グループのペンライトを持って多く参加したという背景もあったそうだ。)
いまの日本の市民運動の状況も、これに似ていると感じる。ペンライトブームが起きるまでこんなにも多くの人が1人1本を所持しているレベルでペンライトが日常にあるとは思わなかった。さらに、こんなにも「推し活」がメジャー化しているという事も知らなかった方は多いのではないだろうか。
新たに参加している多くの層は「ゆとり世代」が多い。教育の影響もあるのだろうか。ゆとり世代が生まれ育った時代は、労組は総評が解体、3派に分裂、国労からJRに、消費税も導入、バブルも崩壊し、先の見えない不景気の中で幼少時代を過ごし大人になった。「良い時代」を知らないから怒る理由もなく、とにかく静かに目立たず平穏に暮らしていきたいという優しい人が多い。自分の意見も言いにくい、対立や争いをとことん嫌う世代でもある。
失われた35年、閉塞感の中で生きながら、自分の好きな歌やグループ、漫画、俳優、「何者にもなれない」けれども誰かを応援することで生きがいと希望を見出して、日々を一生懸命に生きている女性たち。結婚する人もいるけれども、非婚を選ぶ人も多い。韓国でも日本でも一世風靡した「82年生まれ、キムジヨン」の小説はまさにこの時代の「私たち」だと言って、多くの女性たちが読んだ。そんな女性たちが今立ちあがっている。
「孫や子に戦争の未来を残したくない」といった決起理由だけではなく、「私の日常を壊さないで」という新しい多くの女性たちの決起が始まったのだ。新しく運動に参加してくる人たちが多くいる、その流れをしっかりとつかみ、韓国民衆運動のようにアップデートをしていこう。
2月8日の衆議院選挙の結果、リベラル議員が壊滅に近いほど落選した。その状況を焼け野原と表現し始めた。この焼け野原は、今回完全に市民運動が引き取った形になった。選挙では確かに自民が圧勝した。しかしそれは高市自民党政権は市民の中に渦巻く閉塞感に火をつけ、表層を?っ攫っただけだ。本当に地殻を動かし山を動かせるのは国会外の民衆だ。来たる改憲発議に向けた本格化する動きに市民運動は新しいウィングを獲得し、立ち向かおうではないか。
(事務局長 菱山南帆子)
内閣総理大臣 高市 早苗 様
米国およびイスラエルによるイランへの軍事攻撃は、イラン国内ではすでに1300人以上ともいわれる市民の生命を奪っています。そのなかには、米国による小学校への爆撃により失われた多くの子どもたちの命も含まれます。イランによる周辺国への攻撃や、イスラエルによるレバノンへの攻撃も重なって、中東全域が破滅的な戦火に陥りつつあります。世界経済への影響も甚大であり、事態は一刻の猶予も許しません。
さらに、原油の流出や火災、爆撃等によって大量の温室効果ガスや有害化学物質が排出され、水や空気、土壌や生態系が深刻に汚染されています。世界保健機関は、先日のイランの石油施設への攻撃後に降った黒い雨が健康被害をもたらし、深刻な大気汚染を引き起こしていると警告しました。戦争は最大の環境破壊であり、将来世代に健康被害を残し、生態系を壊滅させ、気候危機を加速させます。
日本国内の世論調査では、圧倒的多数の人々がこの軍事攻撃を「支持しない」と回答しています。3月19日に日米首脳会談に臨む高市総理におかれましては、トランプ米大統領へ以下の通り強く働きかけ、毅然とした外交姿勢を示すよう要請いたします。
1. 国際法の遵守と即時停戦
現在行われている軍事攻撃は、主権国家に対する武力行使を禁じた国連憲章第2条4項に明白に違反するものです。法を無視した軍事攻撃を続けることは、さらなる混沌と憎しみの連鎖を招きます。米国が、イランへの軍事攻撃を直ちに停止するとともに、イスラエルに対してもイランおよび周辺国への軍事攻撃の即時停止を働きかけるよう、日本政府として強く求めてください。
イランによる反撃が民間人の命を奪い、危険にさらしていることは由々しきことです。私たちはイラン政府に対してもそうした行為の停止を求めています。しかし、事態の経緯からして、まず米国が攻撃を停止しなければこの危機が収束しないことは明らかです。
2. 軍事協力および財政支援の拒否
日本は米国主導のこの戦争に、いかなる形でも協力すべきではありません。報道によれば、米海兵隊が在日米軍基地からイランに向けて出撃しており、さらにトランプ大統領は、日本に対してホルムズ海峡の安全確保のための自衛艦派遣を期待しているとのことです。しかし、日本は、自衛隊を派遣すべきでないことはもちろん、軍事費の財政支援も、断じて行うべきではありません。
その理由は、以下のとおりです。
● 法的根拠の欠如: 2015年の安保法制の違憲性の疑いはさておいたとしても、憲法および現行法に照らして、日本が今回の軍事行動に対して自衛隊を派遣することを正当化しうる法的根拠は皆無であり、実施は不可能です。
● 現場の危険性: 戦火が拡大する中での自衛隊の派遣はあまりに危険であり、隊員の命を不当なリスクに晒すものです。
● 外交的代償: 万が一日本が、財政面を含め、支援を行えば、長年築いてきたイランとの友好関係のみならず、中東諸国やグローバルサウス諸国からの信頼を決定的に損なうことになります。
3. エネルギー安全保障と経済的安定への道
ホルムズ海峡の安定化と原油やLNGの安定供給は、日本にとって死活的な課題です。しかし、そのために必要なのは戦争への加担ではなく、戦争を今すぐ止めさせることです。軍事衝突の激化こそが供給網を破壊する最大のリスクであり、平和的な解決こそが日本のエネルギー安全保障を担保する唯一の道です。
そして、長期的には、輸入化石燃料に頼る社会から脱却していくことが必要です。
4. 核問題は外交で解決を
今回の軍事攻撃の「理由」とされたイランの核開発問題は、重大な問題ですが、外交によって解決すべきです。軍事力では核問題は解決できません。そもそも米国もイスラエルも核兵器を保有しています。米国は核不拡散条約(NPT)のもとで核廃絶への義務を負っており、イスラエルは自身の核保有について情報公開を求められています。今のままでは、国際的な核不拡散体制そのものが破壊されてしまいます。
一昨年の日本被団協のノーベル平和賞受賞は、核兵器が「絶対悪」であることを世界に再認識させました。イランの核開発問題は、来月開かれるNPT再検討会議や核兵器禁止条約などを通じて外交的に解決すべきであることを、米国に強く促してください。
友好国が過ちを犯しているときに、それに盲従したり忖度したりすることは、責任ある国家の行動とはいえません。国際的な「法の支配」が危機にある今こそ、「平和国家」を標榜してきた日本の外交の真価が問われます。歴史の正しい側に立ち、真の意味で国民の安全と国際社会の安定につながる外交を展開されることを、強く求めます。
2026年3月18日
APLA
ANT-Hiroshima
安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合(市民連合)
WE WANT OUR FUTURE
FoE Japan
オルター・トレード・ジャパン
核兵器廃絶をめざすヒロシマの会(HANWA)
グリーンピース・ジャパン
原子力資料情報室
原水爆禁止日本協議会(日本原水協)
原水爆禁止日本国民会議(原水禁)
Japan Emergency Peace Action: 平和を求める緊急アクション
日本国際ボランティアセンター
日本平和委員会
パルシック
ピースデポ
ピースボート
フォーラム平和・人権・環境(平和フォーラム)
Voice Up Japan
許すな!憲法改悪・市民連絡会
(以上20団体、50音順)
80年前、1946年の4月といえば、敗戦からまだ1年も経っていない時期であったにもかかわらず、戦後の日本社会がどのように歩んでいくのか平和憲法成立に向けた土台づくりが整ってきた最も重要な月間の一つに当たる。大きな土台石として挙げられるのは4月が「政治体制の大変革期」であったことである。
まず、4月10日に戦後初の、そして最後の帝国議会の衆院総選挙が実施されたことである。この選挙は、それ以前の衆院選挙と異なり、女性が初めて投票・立候補した歴史的意義のある選挙であった。これまで女性の声が反映されなかった帝国議会に女性の代議士が39人誕生したことは、まさに「大変革」である。いわば民意を反映する、民主主義の「新しい」議会の形になったのだ。驚くべきは、女性候補者78人のうち39人が当選したのであるから50%という高い当選率だったことである。男性はというと候補者約2,690人中429人が当選し、当選率は16%弱でしかなかった。
政府は3月に「憲法改正草案要綱」を発表したが、その憲法改正案が新しく変革した「帝国議会」へとやがて正式に提出されるに至るわけである。女性参政権を含む新しい選挙制度で選ばれた議員から成る衆議院が憲法改正案を審議する主体となるのだから、この4月の重要な直前の準備段階がなければ、5月以降の帝国議会での本格審議、ひいては10月の日本国憲法の成立へとつながらなかったといっても過言ではない。ちなみに女性議員たちは、憲法制定に当たって、憲法14条における男女平等条項の実現をはじめ、憲法24条の家庭内平等、家父長制の廃止など家族制度の民主化や、憲法26条に定める教育の機会均等、憲法27条、28条において女性の勤労にも深く関わる労働基本権の保障など、女性の権利保障について積極的に質疑をし、議会外でも講演活動を行っていた。民主政治における女性の力は大きい。現下の夫婦別姓問題なども、しっかり憲法の問題であることを民主政治に活かさなければならない。
また、政治的変革は帝国議会の構成だけではなく、内閣も実質的に変わっていったのである。4月10日の選挙で吉田茂のいる自由党が第1党となったので、4月23日に幣原内閣は総辞職をしていたが、正式には引継ぎのために職務を続けておく、職務執行内閣として1か月ほど残存いたのである。明治憲法と基本的に変わらぬ「憲法改正案(松本案)」を提出した松本委員会は、幣原内閣下の憲法問題調査委員会であった。また、GHQ案(マッカーサー草案)を受けて、合議調整し政府案を作成した幣原内閣が役割を終え、総辞職すると、5月に吉田内閣へとバトンタッチしたのである。憲法改正を主導し、その後の憲法審議を担う新体制への移行が始まったといえる。つまり、政府として憲法改正案を作成したのが幣原内閣で、6月に正式に帝国議会へ憲法改正案を提出したのが吉田内閣なのである。また、貴族院議員や官僚が多く、途中まで陸軍、海軍大臣もいた幣原内閣から戦後政党政治の再出発としての吉田内閣へと顔ぶれも変化した。民主政治における選挙の力は大きい。「憲法によって主権者となった」私たちは、選挙権行使の重要性を今こそ再認識しなければならない。憲法改悪の足音がソコまで来ている窮状であるが、「国民投票法の違憲性」を訴える力も必要である。これについては別の機会に譲りたい。
実は、幣原内閣は実質的に総辞職をした前日、つまり4月22日、明治憲法下で天皇の最高諮問機関である枢密院に憲法改正案を提出していたのだ。同日以降、枢密院で計8回の憲法改正草案の審査が行われ、いよいよ憲法改正案は帝国議会提出への準備が整っていった。私たちは一般的になかなか憲法前文のその前の部分を見る機会がないが、天皇の詔書という形で、日本国憲法が明治憲法73条の規定による改正という形式でなされたことが書かれている。ところが、明治憲法73条には「枢密院(あるいは枢密顧問)」の文言はない。ただし、天皇の国務行為(勅命)には枢密院の諮詢が制度上必要とされており、そのため、憲法改正案は必ず枢密院で審議されることになっていた(枢密院官制・枢密院令)。したがって、 憲法改正案は枢密院で正式に審議(4~5月、可決(10月)されたのである。枢密院では①「改正手続の適法性」が最初に問題にされ、「これは改正ではなく新憲法制定ではないか」との疑問がでたが、改正で落ち着いたという。②象徴ということについて「天皇主権から国民主権への転換は改正の範囲を超える」、「天皇の統治権が否定されるのは問題」などの意見が出たが、枢密院は「国際情勢・占領下の現実を踏まえ、やむを得ない」と判断した。枢密院のこの姿勢、判断がなければ、私たちは未だ臣民だった?
さて、最も重要なのが③9条、戦争放棄についての見解である。「自衛権まで否定するのか」「国際法上の地位はどうなるのか」などの疑問が出たが、枢密院では「国際平和の理念として評価できる」という意見が多数だったのである。この枢密院の平和に関する意見も非常に重要な歴史的事実であり、憲法の普遍性を物語るものといえる。
これら3つ(女性参政権の実現選挙、内閣総辞職、枢密院審議)が揃って初めて、5月以降の帝国議会での本格審議が可能となったのである。この4月の思いと動きを胸に、「改憲許さじ!」だ。
(共同代表・前参議院議員 高良鉄美)
報道によれば,トランプ米大統領は3月14日,自身のSNSでホルムズ海峡を利用する各国を名指しで同海域への艦船の派遣に期待を示した。19日に予定される高市訪米の際にも取り上げられる可能性がある。
2015年の安保法制の審議の際,日本が集団的自衛権を発動することが想定されるケースとしてホルムズ海峡の封鎖が例示されたが,その場合でも,国連憲章に違反しないことが前提条件であると政府自身が説明している。
今回の場合,そもそもの発端は,和平協議中であるにもかかわらず,米国とイスラエルがイランを先制攻撃したことであり,国連憲章違反は明白である。
スペイン、イタリアを除く欧州各国と日本は,イランの核開発や反撃による湾岸諸国の人的・物的被害のみを問題視しているが,イスラエルの核保有や多くの子どもたちが犠牲となった学校への襲撃については沈黙している。これは明らかにダブル・スタンダードであり,米国の言い分を追認するものでしかない。
戦闘行為の一環として敷設された機雷の除去は,戦時国際法上,交戦当事国としての戦闘行為に該当する。タンカーの護衛についても,戦時国際法上の中立義務違反とされ,交戦当事国と看做されかねない。
原油価格の高騰で暮らしや経済に悪影響が生じていることは事実であるが,だからといって,憲法違反の派兵に応じる筋合いはない。
多国間の対話による紛争の解決は近代国際法の歩みの一つの結実点であり,いかなる国もこれを無視して暴走することは許されない。
憲法で武力による紛争の解決を放棄した日本は,外交努力による中東問題の解決に率先して取り組むべきであり,米国からの派兵要請に断じて応じてはならない。
2026.3.16
許すな!憲法改悪・市民連絡会
私は毎週金曜日の夕刊を楽しみにしています。新聞によって少し違うかもしれませんが、私が購読している全国紙の金曜日夕刊には映画評が掲載されます。SNSには疎く、2月8日投開票の第51回衆議院議員総選挙以降は、ある人物の動く姿やよくわからない笑顔を見ることもしんどく感じているため、最近はテレビのニュース番組もほとんど見ていません。そんな私にとって、新聞は重要な情報源になるのですが、映画評を参考に映画館に足を運んでいます。最近では、新聞で紹介されていた、「ブゴニア」を観に映画館へ行ったところ、「金子文子」の映画チラシを発見!前述の「ブゴニア」は、陰謀論にどっぷりはまった人物や、余白がない現代の狂気と人間の悲しみ・怖さを表現しており、現代社会を反映した映画として紹介したかったのですが、こちらはまたの機会に。
前置きが長くなりましたが、今回紹介する映画は「金子文子 何がわたしをこうさせたか」です。「私と憲法」の読者のみなさんの多くは、「金子文子」についてご存知の方も多いかもしれませんが、どんな人物かを先に紹介します。金子文子は、1903年に生まれ、反逆の人生を生きた虚無主義者/無政府主義者です。私は恥ずかしながら、映画の中の金子文子が、「私は虚無主義だ」と言っているのを聞いて、「きょむ」とは何だと漢字に変換できていませんでした。文子は、父親が出生届を出さず、「無籍者」として育ち、9歳の時に朝鮮に住む祖母の家に引き取られますが、そこでは壮絶な虐待を受けます。そして、13歳で自殺を決意しますが、思いとどまり、16歳で内地に戻ります。苦学のすえ、キリスト教、社会主義、無政府主義、無政府主義と辿り、権力や生物の絶滅を謡う「虚無主義」にたどり着きました。
本映画は、朝鮮での祖母からの壮絶な虐待に絶望した文子が川に身を投げようとする場面から始まります。しかし、死ぬくらいなら自分の運命に盾突いて生きようと踵を返す。ここにも、文子の確固たるものが描かれているようにも感じました。そして、映画では、日本に戻ってから、獄中においても国家権力に屈しない文子の強さが描かれています。社会が水平・平等であることへの強い想い、その平等な社会と反するのは天皇であり、皇太子であり、彼らへの否定を明確に語っています。また、権力による転向強要にも抗う金子文子を演じる俳優は、金子文子に見えてしまうのです。もちろん、私は金子文子に会ったことはないのですが、きっとこういう人だと思わせてくれます。
なぜこのような描き方をできるのかと思って映画を観ていましたが、上映後の舞台挨拶で監督の話を聞いてわかりました。浜野佐知監督自身が、権威や権力に抗ってきた女性だったということがよくわかりました。冒頭、「女性にはなれない職業がある」と語られ、それが映画監督だと。日本の映画界は男性社会であることを赤裸々に話されたうえで、本作では、「シスターフッド」を描きたかったと話されたことが非常に印象的でした。実は映画の中で、文子を担当する女性の看守が文子と接する中で、少しずつ、文子に想いを寄せ、気づけば、男性に抗うような姿勢を見せる場面も描かれているのですが、当時本当にこのようなことがあったのかと少し疑問も感じながら、見終えたところでした。また、女性の教戒師が人権について唱え、少女の囚人が文子を慕うような場面も登場します。これらも、終了後に、監督の言葉を聞き理解しました。事実かはわからないが、文子の存在によって、まわりの女性が変わっていくこと、文子を知ることで連帯することを描きたかったのだと。また、映画の中では、文子が若い女性囚に自身の万年筆を託す場面があります。文子は、「考えて、考えて、書くんだよ」と伝えますが、これも、監督の想いだと受け止めています。
さいごに、舞台挨拶での浜野監督の言葉を紹介します。
「底が抜けたような、とんでもないことになりそうな日本。100年前の過酷な運命に逆らって23歳で死んだ文子の、自分の頭で考えて、自分の足で立って、自分の心で動くということを考えてほしい」「とんでもない社会に心が折れそうに(次頁下段へ)なるかもしれないが、そういう時に文子を思い出して欲しい。ひとりで国家に抗った人がいたことを」
本映画が広い世代に観られることを望みます。そして、文子の想い、浜野監督の想いが、共感の輪として広がることを願います。
小出真理子
布施祐仁さん(ジャーナリスト)
(編集部註)2月7日、広島県呉市で行われた「戦争と改憲の流れをとめる」という集会で布施祐仁さんが講演した内容を編集部の責任で要約したものです。要約の責任はすべて本誌編集部にあります。
私もこの呉の日鉄跡地の問題について非常に注目をしておりまして、地元の皆さんからいろいろ学ばせていただきたいなと思って来ました。明日の衆議院選挙は、なかなか厳しい結果が出るというふうにも予測されています。でもこれは終わりではなくて、まさにスタートだと思っています。そういう意味では、明日の結果を見て落ち込む前に、今日、これから何をすべきかという方向性を定め、新しい出発として捉える場になるかと思っています。
高市さんが解散をした時の会見、皆さんもお聞きになられたと思います。高市早苗が首相としてふさわしいかどうかを国民の皆さんに信任を問う、ということを何度も強調していました。そして首相が話した場面で、正直ゾッとするような感じを抱きました。次のように述べました。
“これから選挙が終われば国会が始まると、この後政府が提出しようとしている法律案。これもかなり賛否の分かれる大きなものでございます。”これがどういう法律案か、何も言っていません。
“だからこそ国会が始まる前に国民の皆様の信任を問いたい。そう考えました。そして、信任をいただけたら、これは力強く進めてまいります。信任をいただけなかったら、私は責任を取ります。それぐらいの強い思いで一歩でも一歩でも政策を進めたい。非常に難しい政策もあるけれどもこれを進めたい。そのために信を問いたい。こう考えましたと。”
信任を得られなかったらやめるけれども、信任が得られたら、何かわからないけれども国論を二分するような政策を力強く進めていきたい。そういうふうに記者の前で、テレビの前で宣言しました。非常にゾッとするような印象を抱きました。中身がわからないわけですから。
では、この国論を二分するような政策とは何なのか。一つはこの会見でも高市首相が非常に強調していた積極財政ですね。
予算案を審議するわけですから、これまでの自民党の政策の中で「初めて、私はこの積極財政という四文字を入れさせることに成功した」と、選挙でも盛んにアピールしています。積極財政とは何か。失われた30年と言われています。企業は海外で儲けていますけれども、民間が日本の国内でなかなか投資をしない。だから政府が税金を使って国内に投資をするということを積極的に進めていく。昔で言うと、ケインズ政策といって、公共事業にお金を回すことですね。それによって景気を刺激する、あるいは経済成長につなげていく。それをやるためにお金が必要です。
でも、お金はないわけです。どうするかというと、一時的には借金をする。国債を発行して、そのお金で政府が投資をする。じゃあ、その借金は貯まっていくと大変ではないか。でも、高市さんの話では、それによって経済成長すれば税収が増えて、借金した分は取り返せるという話です。
では、何に税金を使って投資しようとしているかというと、高市は、危機管理分野を重点的に投資をしていくとして、主に3つに私はまとめました。
1つは、経済安全保障です。いま言っているのは、エネルギーです。日本は、エネルギー、石油とか食料の多くを海外から輸入に頼っている。でも日本に輸出している国が、もう輸出しないと言うと入ってこなくなりますね。これは経済安全保障としてまずいということで、こういった分野に投資をする。
具体的には、中国が高市首相の台湾有事発言で、レアアースを日本に対して輸出制限しています。これを政府は南鳥島の海底にある泥をすくって、レアアースが含まれているということで、この開発を進める。それも採算度外視でやると、先日政府も言っていました。
あるいは、半導体とか薬です。今は中国から抗生物質がたくさん入ってきています。そういったことも国内で開発をしたい。ワクチンとか、そういう分野に投資をしていくと言っています。
2番目は、防衛力の強化です。すでにアメリカが今の日本の防衛費では足りない、もっと上げろと言っている。これに応えて、さらにこれを増やす。
3つ目は防災、国土強靱化です。いろんなインフラ投資をしていく。こういったことに大胆に借金もして積極財政で投資を進めていく、これが高市政権の考え方です。これを今回の選挙で問うとしています。
ただ、日本の国債借金の残高は、すでに1100兆円で、よくGDPとの比較で言われます。もう200%、日本の年間GDPの2倍以上に膨れています。政府の毎年の税収、国家予算の歳入というのは、税収プラス借金で、税収がだいたい80兆円ぐらいです。それで言うと、もう14倍です。年収500万円の個人に置き換えて考えると、7000万円の借金を背負っていることで、当然破綻している。普通で考えたら、今そういう状況になっている。さらにそれを借金してまで積極財政をしていくということですので、日本の財政状況はマーケットから非常に厳しい目で見られています。
ですから、国債の長期金利はじわじわと、どんどん上がっている。国債というのは借金ですから返していかなきゃいけないんですね。利率が上がるということは、返す額が増えていくわけです。返せなくなったら破綻ですから、国の経済財政が破綻する。非常に危険な状況に日本の財政状況は入っている。
でも高市さんは、成長しないとどうしようないから、ここは積極財政でやるってことなんですね。つまり成長か破綻かという、ギリギリの挑戦を高市政権はやろうとしている。しかもその一つに防衛力と危機管理といって、軍事の分野を中心に据えているのが非常に大きな特徴です。
この軍事ですけれども、すでに日本は2022年に岸田内閣が、アメリカの要求に従うという形で決めました。従来GDP比1%で推移してきた日本の防衛費を2027年度、5年後にGDP比で2%に倍増させることを決めました。2027年までの予定だったけれども、高市政権が誕生すると、これを前倒しで今年度中に達成するといって、補正予算で処置をして、もうGDP比2%規模になっています。
アメリカは、世界の同盟国に対して、GDPの2%は足りない、もっと上げろと言っています。昨年6月、NATOは国防費をGDP比の3.5%に上げる。プラス、インフラ関係と関連する経費も合わせてGDP比5%ということを決めました。その後、トランプ政権は、ヨーロッパのNATO諸国以外のアジアの同盟国、日本や韓国やフィリピンやオーストラリア、そういった国々に対しても、NATO並みに上げなさいとした。すでにお隣の韓国は早い時期に3.5%を目指すことを決めました。日本はまだ数字は上げてないけれども、さらに防衛費を値上げすることを高市政権はやろうとしています。
ちなみに、3.5%というと21兆円です。現在が10兆円ですから、さらに10兆円規模で防衛費を上げる可能性が非常に高い。高市首相が、今回の選挙で自民党が多数を取ったら、私は信任されたんだと。この積極財政の一つである防衛費の増額も含めて、力強く進めていくようにに動いていくのではないか。
この軍拡の流れ、今日のテーマである「大軍拡の流れから考えるに日鉄呉跡地問題」ですので、この間の軍拡の動きを振り返ってみます。
岸田内閣が、2022年に日本の防衛力を抜本的に強化することを決め、進めてきました。これは一言で言うと、台湾有事を想定した軍拡だった。高市さんは首相になる以前は、それを明確に口にすることはしませんでした。特定の事態を想定するものではないと、ずっと言っていました。しかし、現実には特定の事態を想定しないでは何もできない。どういう防衛力を強化するかは、何かの事態を想定しないとできないわけで、口にはしてこなかったけれども、実際には台湾有事を想定して進めてきたものです。
いつからかというと、2021年4月に大きな動きが始まった。当時の菅首相とバイデン大統領が、ホワイトハウスで初めて会談した。この時に発表された日米共同声明の中に、52年ぶりに台湾に関する言及が盛り込まれました。日本の首相とアメリカ大統領はしょっちゅう会談していますけれども、52年間台湾に関して触れることはしなかった。台湾が中国の領土の一部だというのが中国政府の立場ですから、日本もアメリカも中国と国交を結んで以降、それを100%同意はしない、でも異論は唱えないという約束をして中国と国交を結んでいます。それで、この台湾の問題に関して日米の首脳会談でああだこうだということはしなかったわけです。
ところが2021年の日米首脳会談で、52年ぶりにこの問題に触れた。その文言は、台湾海峡の平和と安定の重要性について触れただけです。台湾有事が起きたら日米で一緒に介入する、なんてことは当然書けません。でも52年ぶりにこの問題に触れたことの意味というのは、実はそういう意味だった。仮に台湾で何か有事が起きた場合には、日米が一緒になってそこに関与していく。そういう一つの首脳間の確認をしたということです。
それが現れたのはその3ヶ月後で、当時は財務大臣の麻生太郎副総理です。今も選挙中に似たような発言をしています。その麻生さんが、国会での答弁ではなくクローズドの講演会のようなところで発言しています。台湾で大きな問題が起きれば、存立危機事態に関係しても全くおかしくない。そうなると、日米で一緒に台湾の防衛をやらないといけないと発言しました。これは単に麻生さんが思いつきで言ったことではないんですね。首相と大統領の間でそういった話し合いがあっての、この発言だということです。
そして、さらにその年の12月、共同通信がスクープをした情報です。アメリカ軍と自衛隊が・制服組が台湾有事を想定した日米共同作戦計画を作った。つまり、台湾有事が起きた時に、米軍と自衛隊が一緒に作戦を行う、つまり一緒に軍事介入するという計画作りをスタートさせたという記事が出ました。
そして年が明けた1月に、日米の2プラス2の外務・防衛大臣の会議を開きました。そこで、あらゆる事態に日米が一体になって対応し、戦略も完全に合わせることを確認しています。その年の12月に、岸田政権が安保三文書という戦略文書を策定します。その数ヶ月前、アメリカも国家安全保障戦略、国防戦略という、アメリカ版の安保三文書を策定しています。日米で完全に合わせている。そこで、防衛力の抜本的強化といって、5年後に日本の防衛費を倍増させる計画を具体的に決めた。こうした一連の流れがありました。
この延長戦上に高市さんの昨年11月7日の発言もあった。高市さんの頭の中には、高市さんだけでなく、自民党のいわゆる国防族といわれる政治家の頭の中には、もう台湾有事が起きたら、日本はアメリカと一緒になって戦うという前提で、この間、軍拡を進めてきたということです。自衛隊もそうです。
アメリカが、仮に台湾有事が起きたときに、どのように自衛隊と一緒に戦おうとしているのか。そのことを簡単にご説明したいと思います。その前提に地図お見せしています。これはアメリカ軍が中国との戦争になった時、どういうふうに戦うかを考える際のアメリカが前提としている一つの例だと思ってください。
タイトルに、中国は介入阻止能力を強化している、と書いてあります。
中国はこの間、軍拡をしています。その目的の一つは介入阻止です。中国が自らの領土の一部とみなしている台湾の問題をめぐって、米軍・アメリカが軍事的に干渉してくる。そうなったときに、アメリカ軍が干渉してくるのを阻止する。それが中国の考え方です。そういう考え方に基づいて、中国は近年アメリカ軍が介入して来られないようにするため、長射程のミサイルや空母など、中国の本土から離れたところまで作戦を行える能力を強化してきました。
その結果、今こういう状況になっています。赤とか黄色の色が出ています。この赤いところは、中国のミサイルの射程圏内です。つまり、アメリカはこの中に入っていけなくなっている。赤いところに入ってしまうと中国からミサイル攻撃を受けてしまうので、あの赤いエリアには入れないと考えています。見てください。日本はどうなっているか。真っ赤っ赤ですね。
アメリカ軍・アメリカは、台湾有事で中国との戦争になったら、日本には入っていかれないと考えています。あれ、おかしい。日本にいるではないかと思います。その日本にいる米軍も出ていきます。なぜかというと、中国のミサイルが届いてしうから日本は危険だ。それがアメリカの考えのベースになっています。それを表したのがアメリカ軍の考え方です。
地図の下に、インサイドフォースとアウトサイドフォースと英語で書いています。インサイドは内側で、アウトサイドは外側です。内側の部隊と外側の部隊の二段構えで考えています。今、日本に駐留している米軍の主力は空軍と海軍です。沖縄には海兵隊がいますけれども、基本的には空軍と海軍の主力です。空軍と海軍の中心というのは、人ではなく、装備ですね。空母とか戦闘機とかそういう、アメリカの税金で買った数百億、数千億する高価な装備を日本に配備しています。
でも、いざ戦争になったら、さっきお見せしたとおりです。日本中が中国のミサイルの射程圏内ですから、狙われる。そうすると、アメリカの税金で買った数百億円、数千億円する高い装備が一気に破壊される恐れがある。ではどうするか。日本にいたら危ないから日本から出て、そのミサイルが届かない外側、離れたところに陣取ります。まずそれがアメリカの考え方です。これがアウトサイド外側の戦力です。
じゃあ全部日本からいなくなるかというと、そうではない。残す部隊がいます。それは何。陸上部隊です。陸上部隊というのは、陸軍と海兵隊です。陸軍と海兵隊の、地上から発射するミサイルを日本あるいはフィリピンに置いて、その日本やフィリピンからミサイルを発射して作戦を行うことも考えています。これがインサイド戦力、内側の部隊の役割です。日本はもう真っ赤っかなわけです。中国のミサイルが射程圏内に入っている。だから、戦闘機とか空母とかイージス艦とかは、一旦日本から離れた場所に引き上げるわけです。
なんで、陸上部隊は日本に置いておくのか。一つは安いからです。艦船とか飛行機は非常に高額で、ミサイルに狙われて破壊された。それに比べて地上から発射するミサイル発射機は非常に金額が安いということと、もう一つは隠すことができる。飛行機とか艦船が、海の上にあると隠せない。敵に見つかって攻撃されやすい。陸上の場合には、地形を利用して山の中にとかいろんな形で隠すことができる。比較的見つかりにくい。見つかって攻撃されたとしても被害額は少ない。そういうアメリカ側の考えがあります
日本列島には、地上から発射するタイプのミサイルをあちこちに配備をする。それを表したのがこの地図です。ただ、こういう真っ赤かな中国の射程圏内にある日本において、そこにミサイルを置いて、いわば中国とミサイルの打ち合いをするという考え方です。これは当然、中国のミサイルも飛んできますから、危険なわけです。なので、米軍の中にも、そんな危険な任務を米兵にやらせるのか。中国のミサイルが届く射程圏内に残って、向こうの攻撃を受けながら作戦を行うなんて危険じゃないかという声がある。
そういう声があると、こういう危険な役割はなるべく日本にやらせようじゃないか。それは何かというと自衛隊です。同盟国の部隊に、危険な任務、最前線の任務はなるべく担わせる。それがアメリカの考え方ですね。
これに基づいて、近年日米が一体となった軍拡が進められてきています。これは相当進んでいます。とくに去年、それが如実に現れた例を2つ紹介したいと思います。
1つは主に私が近年取材のフィールドにしている、いわゆる南西諸島といわれる鹿児島の種子島から沖縄の与那国島にかけての島々です。
左側の写真は、昨年9月の石垣島での写真です。
石垣島には2024年に駐屯地が開設されました。自衛隊の駐屯地ですね。そこで昨年9月、米軍と自衛隊の共同訓練が行われました。そこで、初めて海兵隊が開発をした最新鋭の地対艦ミサイルを石垣島に展開しました。そして海兵隊のミサイル部隊と、自衛隊の配備されたミサイル部隊が一緒になって中国軍の船を陸上から攻撃するという想定の訓練を行いました。
合わせてもうひとつあります。ここからも近い、山口県の岩国基地です。
ここではアメリカの陸軍が開発をした最新鋭の中距離超射程ミサイルです。石垣島に展開した地対艦ミサイルより射程の長い、射程1600キロ以上の巡航ミサイルを地上から発射できるタイフォンという新しいシステムです。これを初めてアメリカ本土から輸送機で日本に持ち込んで、日本からそのミサイルを発射するという想定の訓練を行いました。
このように、アメリカは、仮に台湾有事が起き、中国との戦争になった時には、アメリカの領土、グアムとかからではなく、日本やフィリピンにミサイルを持ってきて、そこから中国軍をミサイルで攻撃をする。そういうふうに考えています。そういう作戦計画に基づく訓練がもう既に行われています。
日本は全部中国の射程圏内、真っ赤なレッドエリアですから危険だ。だから、それはなるべくならば日本にやらせようという考えなわけです。そういうアメリカの考えに追随しているのが日本政府です。
それを表しているのはこれです。今年3月に、熊本の健軍駐屯地に自衛隊の長射程ミサイル配備が開始されます。これまでお話ししたミサイルの射程は200キロぐらいです。地対艦ミサイルですから、南西諸島に配備しても中国本土には届かない距離です。一気には台湾海峡にも届かない距離でした。
ところが、ミサイルの射程を1000キロまで伸ばした能力向上型をこの間開発して、すでにほぼ完成している。これをこの3月から、熊本の健軍駐屯地に配備をする。その次には静岡にも配備し、全国各地に配備をするということで進めています。
この自衛隊の長射程ミサイルは、熊本に配備すれば上海まで届くような距離です。この自衛隊の長射程ミサイルは、戦争になった時のどのように使うかというのは、米軍と一体に運用するということをもうすでに言っています。
この長射程ミサイルに限らず、石垣島で昨年9月に訓練が行われ、いま南西諸島に配備をされている射程200キロぐらいの地対艦ミサイル。これは、有事には米軍も地対艦ミサイルを石垣島とか宮古島に持ち込んで、自衛隊と一緒になってミサイルを発射する想定の訓練をやっています。同じような訓練をアメリカのハワイのミサイル訓練所でもやっています。石垣島でやっている訓練と違うのは、実際にミサイルを撃っています。そういう場所がアメリカにあるんですね。地上だけではなくて、周辺の海も含めたミサイル訓練場があります。
2022年にハワイで行われた訓練の様子を図示した、陸上自衛隊の内部文書があります。目標情報の収集から、日米共同による火力調整、分担ですね。あの船は自衛隊が攻撃する、あの船は米軍が攻撃するという調整を行うわけです。そして、目標の設定から発射まで一連のサイクルを日米一体に行う。
注目していただきたいのは、ここです。日の丸と星条旗が掲げられた、日米共同指揮所というのが設けられています。ミサイル発射機はそれぞれ別々ですけれども、指揮をする司令部は一体になって、共同指揮所になっています。共同指揮所というと、自衛隊の司令官と、米軍の司令官が横に並んで座って相談しながらやっているとイメージしがちですけれども、そうではありません。
この訓練を視察した米陸軍の太平洋陸軍司令官が、こういうコメントをしています。私が去年出した「従属の代償」という本の冒頭でも紹介していますけれども、おそらく自衛隊、あるいは日本政府からすると、なんでそんなことを言ってしまうのか。それは言ってほしくなかったなということですよ。でも、アメリカ軍からすると当たり前のことなので、普通に口にしてしまうんですね。
なんて言っているか。“自衛隊の兵器システムは、アメリカの火力統制下で訓練を行った”と。つまり自衛隊のミサイル部隊に対して統制、つまり命令しているのは米軍なんですよ。
つまり、米軍の指揮下に自衛隊が組み込まれる形で自衛隊ミサイルを発射している。これが日米一体化の実態です。対等ではないんですね。米軍の下に自衛隊が組み込まれる形になっています。まさに米軍の手足となって自衛隊がミサイルを発射する、そういう関係なわけです。
その時の訓練の米軍が公表している映像がありますので、ご覧いただきたいと思います。これが陸上自衛隊のミサイルです。実際にアメリカ海軍の退役した艦船を海に浮かべて、そこに目がけて、自衛隊のミサイルと米軍のミサイルが一緒にミサイル攻撃を行って船を撃沈するという、非常に実践的な訓練をアメリカでは行っています。
石垣島とか日本ではそういった訓練はできないので、あくまでもミサイルを実際に発射する手前までの訓練ですけれども、アメリカではこういう訓練を既にやっています。これが実は自衛隊の本質なんです。
これは今に始まった話ではなく、すでに自衛隊が生まれた時から、実際に戦争になった時には自衛隊は米軍の指揮下に入って、一緒になって作戦を行う前提で組織を作ってきました。元自衛隊のトップだった方の発言を紹介します。栗栖さんという元統合幕僚会議長を務めた方が退官後でありますけれども、次のように話しています。
日本の現在置かれているポジションと自衛力形成の過程を見ますと、陸上自衛隊や米陸軍、海上自衛隊や米海軍、航空自衛隊や米空軍が、それぞれ自分の手足として使う目的で創設してきた。こういうことを、かつて自衛隊25万人のトップだった方がはっきり述べています。これが自衛隊の発足以来の最大の特徴であると私は考えています。
ただ、栗栖さんがこのことを言った時と今では、まるで状況が違います。何が違うかというと、前提が大きく変わっています。この発言の前提にあったのは、あくまでも日本有事です。仮に日本がどこかの国に攻撃された場合に、米軍と自衛隊が日本を防衛するために共同作戦を行う。その時も主導するのは米軍だと。米軍が能力的には自衛隊よりあらゆる面で上回っていますから、米軍が主導する。だから、自衛隊は米軍の指揮下に入って共同作戦を行うという前提だった。
当時、何でそうだったかというと、憲法9条が自衛隊を縛っていたからです。自衛隊が武力を行使できるのは、あくまでも個別的自衛権の行使だけ。日本がどこかの国に攻撃された場合にしか自衛隊は武力を行使できないという縛りがかかっていたので、前提となっているのは日本有事です。
ところが今は前提が違います。日本が攻撃された事態ではなくて、日本の外でアメリカが戦争した時に、日本が集団的自衛権を行使して一緒に戦う。まさに台湾有事が起きた時に戦う。そういう前提で、その前提は大きく変わっているということです。
先日、九州沖縄地域から出ている共産党の田村貴昭さんが防衛省から入手した記事で、「赤旗」でも報道されました。陸上自衛隊の内部の会議で使われた文書のスライドの中に、将来の戦争のイメージということで、こういうグラフィックが載っていた。まさに日本からミサイルを発射している。相手は中国軍かどうかわからないですけれども、同じように向こうからも攻撃を受けています。当然、日本からミサイルで攻撃すれば相手はそこを狙ってくるわけです。だから、抗堪化といって、攻撃を受けてもそれに耐えられるような準備をする。それが重要だということで、陸上自衛隊は様々なことを進めています。
何をやっているか。一つは主要な司令部の地下化です。主要な自衛隊部隊の司令部を地上に置いておくと、ミサイル攻撃を受けて司令部が全滅してしまったら部隊は動けませんから、自衛隊の頭脳となる司令部を地下に持っていく。その工事を全国各地で進めています。とくに優先的に進めているのは、航空基地です。航空基地は最初に狙われるということで、航空部隊の司令部はまず地下に行く。
陸上自衛隊でいうと熊本です。健軍駐屯地には西部方面総監部という九州沖縄地域の陸上自衛隊のトップ頭脳があります。そこを優先的に地下に持っていく。あとは、那覇駐屯地です。南西方面の陸上自衛隊の主要司令部を地下に持っていくことを進めています。
さらに自衛隊の航空基地です。だいたい駐機場は一箇所です。広いエリアがあってそこに駐機場がある。いざ有事の時は、真っ先に向こうのミサイルが飛んでくることを考えると、一箇所に固まって機体を置いておくと、そこにミサイルが着弾したら全滅です。そこで、なるべく分散して置けるような場所、分散パッドといいますが、それを隠して整備することも進めています。
つまり日本が戦場になり攻撃を受けることは、大前提の作戦になっています。それがこれまでの岸田軍拡、2022年に閣議決定された安保三文書に基づいて進めてきた、ミサイルを中心とする軍拡です。
高市軍拡は何をやろうとしているのか。一つのキーワードは無人機です。米軍は台湾有事の戦い方において、少し前は、日本やフィリピンの第一列島線に地上発射式のミサイルを置いて、そこからミサイルの撃ち合いをする。そして戦争に打ち勝つという考えでした。今は、ウクライナでの戦争の教訓なんかを得て、ミサイルにはミサイルでは高い。もっと安くて効果的なものがある。それがドローンだ、という考え方になっています。
ハワイにあるアメリカ・インド太平洋軍司令官が、数年前にこういう作戦を打ち出しました。ヘルスケープ作戦――地獄絵図作戦というふうに呼びます。もし中国が台湾に侵攻するようなことがあったら、台湾海峡を地獄絵図のようにしたいと、そう発言しました。
それは何かというと、ミサイルではなくて大量の攻撃型ドローンで、台湾海峡を越えてこようとする中国軍を攻撃する、そして台湾に上陸させない。そういう作戦は、ミサイルよりもドローンの方がいいという話が出てきています。もちろんミサイルも使うけれども、同時にドローンによる作戦を重視するということで進めています。
日本もそれに続けということで、高市政権が来年度の防衛費の予算に盛り込んだ。自衛隊もミサイルだけではなくて大量のドローンを取得する。多層的沿岸防衛体制シールド、盾ですね。ドローンによる盾を作るという構造です。まさにミサイルも、ドローンも、全てアメリカに追随してアメリカと同じことをやっているのが日本の防衛政策です。
これが実は、この呉の日鉄跡地複合防衛拠点に絡んできます。
様々な形で構想があります。一つは岸壁です。
呉には、数年前に海上輸送軍という、台湾有事の際に陸上自衛隊の装備や物資を、本土からどんどん輸送していく。南西諸島にも自衛隊の部隊配備がされていますけれども、どこの島も数百人という小さい規模です。戦争になったら攻撃を受け、自衛隊員が死んでいく。そうなった時に本土からどんどんと部隊を送り込んでいくという構想です。その輸送の能力は海上自衛隊にはないということで、新たに海上輸送軍を発足させました。これを運用するのは陸上自衛隊です。陸上自衛隊が初めて運用する、船の部隊を作りました。
今年3月には、その一つの部隊を兵庫の海自阪神基地に作りました。新しい船の部隊も作ったので、呉基地の岸壁は手狭になっているということで、新たにここの岸壁も利用する。しかもかなり大きいので、大きな艦船も着岸可能になると思います。
注目していただきたいのは、無人機製造整備エリアが設けられていることです。呉の日鉄の跡地をアメリカも重視し、日本もこれからやっていこうとしている無人機の、開発製造拠点にしようということです。
さらに私が注目しているのは、ここの民間企業誘致です。これはまさに高市首相の積極財政成長戦略の中核に位置づけられている危機管理投資、その一つの柱が防衛、軍事なわけです。軍事分野にどんどんと投資をして、それで成長していこう。これからは自衛隊の使う分だけではなく、米軍が使う分も作る。あるいは東南アジア諸国、世界中にそれを輸出して儲けて、それで日本の経済成長につなげていく
これが高市さんの経済成長戦略ですから、その一つの拠点としてこの呉の土地を活用しよう、自衛隊だけでなく民間のさまざまな、ドローンには比較的新しいスタートアップ企業とか新規のベンチャー企業も参入している、そういう企業もここに誘致して、自衛隊、防衛省と一体になってそういった開発を進めていく。そういう形になるのではないかと思います。
私がなんで日鉄の問題に関心があるかというと、私の住んでいる神奈川県には日産という大きな会社があります。日産が今、経営が非常に大変な状況になっていて、追浜にある日産の大きな広大な土地を売却しようとしています。これを防衛省に売るのではないかという話があって、そういったところが軍事投資の拠点になるのではないかと私は見ています。
神奈川県の川崎に、東芝という会社の兵器を作る工場があります。ここが防衛省からの発注も増えたということで手狭になって、新たな工場を作っています。その工場を作るお金は、国が出している。国が兵器を作る企業にどんどんとお金を投資する。工場を作るお金も国が出るから、どんどん作ってくださいというふうにやっているわけです。
呉の跡地の複合拠点も、国がお金を出してさまざまな施設を作るから、という形で誘致をすることがイメージされているのではないか、というふうに思います。
当然こういう拠点になれば、他にも火薬庫とかヘリポートとか、それに補給ですね。その輸送部隊もここに置かれたわけですから、南西方面に運ぶような物資もここに集積をするということも想定していると思います。ですから、皆さん懸念されているように、有事になれば真っ先に、そこは攻撃拠点になる、攻撃を受ける目標になると思います。例えばミサイルを製造している三菱重工。工場が名古屋にあります。そういった工場も真っ先に攻撃目標になるだろう。地下に持っていくような構想もこれから出てくると思います。
工場を地下に作るなんていうのは大変ですね。企業にお金を出させるにではなく、国がお金を出して工場も作る、一部には弾薬工場を国有化する。戦時中の工廠ではないけれども、国有の工場を作ってそこを民間企業に使わせて兵器や弾薬を作らせることも、政府の中では議論されているということです。
こういう状況で、本当に台湾有事という形で戦争になれば、まさに日本が戦場になる。とりわけ軍事施設のある場所は攻撃目標になる。全てが軍事施設だけに命中するわけではないです。少し外れれば、熊本も、この呉も、どこに行っても周辺には市街地が広がっている。そこにミサイルが着弾すれば極めて大きな被害が出ることはもう避けられないと思います。
高市首相は台湾有事存立危機事態だとか、安倍さんも、台湾有事は日本有事だとかそういう発言がありました。台湾有事というのは、今の状況で起きてしまうと、まさに日本が戦場になることなので、これは絶対に起きてはならない、起こしてはならないことです。
台湾の問題に関して、日本がどう関わるべきかということを簡単に整理してみます。これはあくまで私の考えですが、日本は1972年に中国と国交を正常化した際に、台湾が中国の領土の一部とする中国政府の立場、これを十分に理解し尊重するという約束をしています。ですから、これを尊重するというのは、中国との外交関係の一番重要なベースにあるわけです。やはり、その約束を守っていくことは、非常に重要ではないかなと考えます。
とはいえ、中国が武力によって台湾の人々の意思を無視して統一するようなことは絶対にあってはならないと思っています。もし仮にそういうことがあれば、日本が介入するしないに関わらず、様々な形で日本が影響を受けるでしょう。例えば台湾からたくさんの難民が日本に来るとか、日本のシーレーンも、あの近くを通っている。そういう点からも、やっぱりあってはならない。武力による統一には、日本としては反対し、あくまでも平和的にこの問題を解決するように求めていくのは絶対に必要だと考えています。
そのことと、いざ起きたら軍事介入するのかは全く別の問題です。軍事介入することを批判すると、では台湾を見捨てるのか、みたいな話がよく出てきます。そこは丁寧に区別をして議論しないといけないと考えています。
もう一つ、民主主義という点からもあります。高市さんが、あるいは安倍元首相が言ったように、台湾有事が起きた時にその台湾を防衛するために、日本はアメリカと一緒になって中国と戦争するのか。そういう国民的なコンセンサスが果たしてあるのだろうか。私は、それはないと見ています。
日本世論調査会という、共同通信と加盟社で作る会が、一昨年の8月、台湾有事に関する世論調査を行いました。その結果です。アメリカとの集団的自衛権を発動し、日本も武力行使に加わると答えたのは9%、外交努力や経済制裁など非軍事の手段で対応するべきというのは54%です。圧倒的多くの人々は、軍事介入するではなく、アメリカと一緒になって戦うのではなくて、あくまでも非軍事的な手段によって関わるべきだという人が多い。
この世論調査の結果を見ても、いま政府が進めているような、台湾有事になったらアメリカと一緒になって戦う。これは主権者の合意を得たことではないと思います。民主主義という点から言っても、それを政府だけで進めるのは極めて問題があると考えます。この台湾の問題をめぐって、日本はやはり戦争の予防という点でも、実際に戦争が起きてしまった場合であっても、あくまでも非軍事的に関与するというのが日本のあり方ではないかと考えています。
ただ政府はそういう考え方をしていない。高市さんが言ったように、日本が存立危機事態というふうに認定しなくても、日本がこの戦争に巻き込まれる可能性は極めて高いという事実を、私たちは直視しなければいけないと思います。なぜかというと、石破さんも、一昨年8月に出した著書の中でこうはっきり述べています。
読み上げますね。・・・中国が台湾に武力攻撃を行い、アメリカがこれに反撃する状況となれば、アジア有数の戦略拠点である在日米軍基地はフル稼働となるでしょう。基地使用についての事前協議が明示的にあるかどうかは分かりませんが、日本としてこれに応じないという選択肢はほぼありません。そうなれば、日本は中国から直接の脅迫あるいは武力行使を受けることになる可能性が高まります。
実は、それを防ぐ手段一つだけあるんですよ。
それは何かというと、米軍に日本の基地を使わせないことです。日米安保条約に関する取り決めに、事前協議制というのがあります。日本がまだ攻撃を受けていないのにアメリカが日本の外で戦争する、そして日本の基地からその攻撃を行う時には、あらかじめ日本政府と事前協議をしなければいけないというルールが日米間にはあります。そこで日本がイエス――使っていいですよと言わない限り、アメリカは日本の基地を使って、外に対する攻撃はできません。だから、日本がNOと言えば、アメリカは使えない。
こういうケースたくさんあります。2003年にアメリカがイラクを攻撃した際に、最初にトルコの米軍基地からイラク攻撃しようという計画を作りました。そして、トルコに使っていいかと言ったら、トルコは拒否をしました。結果的にアメリカは、トルコの基地を使ってイラクの攻撃作戦を行いませんでした。他にも、アメリカがかつてリビアに空爆を行った時、イタリアの米軍基地を使おうとした。その時イタリア政府はノーと言いました。こういう例はたくさんあります。
でも日本は、自民党政権は、石破さんも仮にそういう事前協議が持ち込まれても、日本としてNOという選択肢はほぼないと、あらかじめ言っている。なぜかというと、自民党政調会長をやっている小野寺さんの発言を紹介します。アメリカから日本に支援要請が来たとき、日本は同盟国として断れない。断れば同盟が決定的に毀損すると、はっきり言っています。つまり、NOと言ってしまうと日米同盟が壊れてしまうから、NOとは言えないと言っている。これが日本政府の考え方です。
世界を見たら決してそうではないんですよ。
アメリカが去年、イランの核施設を攻撃しました。その時に、いち早く米軍基地を使わせないと言ったところは、カタールです。イランに一番近い米軍の航空基地は、カタールにあるアル・ウデイド空軍基地というでっかい基地があります。カタールの政府は、いち早くイラン攻撃に使わせないと言った。なぜかというと、それを使われるとイランからのミサイルは、アメリカ本土ではなく自分たちの国に向かってくるからです。でも、その後カタールとアメリカの関係が壊れたなんてことは一言も聞きません。
これは当たり前です。独立国と独立国ですから。でも日本政府はなぜか、NOと言ってしまったら、もうアメリカとの関係が壊れてしまうと考えている。石破さんですら。となると、日本が存立危機事態と認定しようがしまいが、日本は戦争に巻き込まれる。どうせ戦争に巻き込まれるなら、最初から参加して早く終わらせた方がいいと風に考えている人が、自衛隊の中で結構います。
こういう政府のままで本当に台湾有事が起きてしまうと、もう日本は戦場になってしまう。日本に住んでいる人々は多くの犠牲を強いられる。そういう状況に、日本が置かれているということです。
ところが、高市さんの頭の中の前提には、アメリカがやる場合、日本は一緒にやらざるを得ないと、先日も報道ステーションで言っていました。日本は、助けないとアメリカとの関係が壊れる。でも、その前提が、実は大きくガラガラと崩れている。トランプ大統領は昨年10月に中国の習近平主席とプサンで会談をしました。その時に台湾問題は一切口にしなかった。貿易問題だけに絞りました。トランプが吹っかけた、関税を100%とか150%かけるといったことに対して、中国はレアアースの輸出を制限するということで応じて、その貿易戦争も一時休戦で合意しました。この4月にもトランプ大統領は北京に行く予定ですので、そこで最終的にこの貿易戦争、ディールを結ぶのではないかと言われています。
その後、トランプ大統領は、SNSにG2の会議だったと書いている。G2とは何かというと、米中二極体制です。これまでは、アメリカ一極体制、G1でアメリカは覇権国家として世界を支配するとやってきたけれども、もうそうではない。これからアメリカと中国でやっていく。中国を、アメリカとある種並び立つ存在として認めるかのようなことをSNSに書き込みました。
さらにその直後のインタビューで、こういうふうに答えています。中国を叩きのめすのではなく、むしろ協力することによってアメリカはより大きく、より良く、より強くなれると思う。これまでは中国を何とかねじ伏せようとやってきた。そうではなく、むしろ中国と協力していった方がより強いアメリカにすることもできる。アメリカにとっても利益になる。
そういった考え方がより明確に示されたのが、12月初旬にホワイトハウスがアメリカ政府としての国家安全保障戦略という戦略文書を発表しました。それを読んでも、はっきりと中国とはこれからは安定的な関係を築いていく、と。中国と安定的な関係を持続させることによって、アメリカ30兆ドルのGNPを2030年代には40兆ドル台まで増やすことができる。アメリカのトランプさんは、アメリカファーストですね。アメリカの利益を第一に考えた場合には、中国と対立するのではなくて、中国とうまくやっていく。安定した関係を作ることがアメリカの利益になる、経済成長になるということをはっきりと書いています。
この国家安全保障戦略の中で、キーワードとして書かれているのはモンロー主義です。モンロー主義というのは19世紀1823年だったと思いますが、当時のモンロー大統領が打ち出したアメリカの外交政策基本方針です。当時はまだ帝国主義の時代でしたから、ヨーロッパの列強、イギリスとかフランスとかスペインとか、そういった国々が世界中に植民地を置いて、世界を分割支配するような時代でした。
そこに、新興国としてアメリカという国が徐々に国力を強めていきました。でも、まだそこまでアメリカは強くなかったので、モンロー大統領が打ち出した考え方は、西半球、南北アメリカ大陸はアメリカの勢力権だと。これは認めろと、その代わりアメリカはヨーロッパの皆さんの国々の植民地には手を出しませんよ。つまり、新興国であるアメリカが、既存の列強の覇権主義国とお互い勢力権を相互承認すると認め合う。そのことによって自国の安全を確保しようというのがモンロー主義でした。
これをもう一回トランプ大統領が引き出して、モンロー主義をトランプ政権の外交安保戦略の基本に据えると明確にしています。
ですから、年明け早々にベネズエラに対して攻撃を行いました。あれはまさにこのモンロー主義の実践なわけです。南北アメリカ大陸は、アメリカの支配勢力圏にする。だからアメリカに盾突く政府は倒していく。一番反米だったのはベネズエラのマドゥロ大統領だったので、その大統領を拘束して、排除をする。
さらにマドゥロ大統領は、反米であると同時に中国やロシアとの関係を深めていた。このモンロー主義でいうと、西半球はアメリカの勢力圏なので、19世紀で言うとヨーロッパの国々にはアメリカには手を出せないと同じように、トランプ大統領は中国やロシアが西半球には手を出してくるなよと。一番接近していたベネズエラのマドゥロ大統領を排除した。
その次にやろうとしているのは、グリーンランド、そしてパナマ運河です。パナマ運河は、中国の企業が香港の企業が一部港の管理権を獲得している。トランプ大統領は、もう一回、アメリカがそれを奪還するみたいなことを言っている。パナマ政府は、パナマの主権だから、もう一回アメリカの持ち物にするというトランプ大統領には反対しています。一旦中国の企業と結んだその契約も破棄した。だから今、中国とパナマ政府も非常に揉めているけれども、そういう状況も生まれています。グリーンランドもそうです。
西半球ではアメリカの勢力圏として、まさに力こそ正義という論理に基づいて、場合によっては武力も使って支配していくという露骨な姿勢をむき出しにしています。一方で、西半球以外の地域に対しては、原則的に支配したり覇権を追求したり、干渉・介入はしないということも書いてあります。そこがこれまでのアメリカの政策と大きく転換しつつあるところかなと思います。
これまではバイデン大統領自身も、もし台湾有事が起きたら我々は軍事介入するというような発言も何度もバイデン大統領の口から飛び出していました。中国に対してはそういった姿勢で臨んでいました。けれども、トランプ大統領はそれとは打って変わって、台湾有事になった時にアメリカはどう対応するかと聞かれても、一切答えない。むしろそんなことは私の任期中には起きないだろう、という返し方をずっと続けています。
1月中旬に国防総省が、国防戦略という戦略文書を発表しました。この中でも同じように、中国とは安定的な関係を築いていく強調して、しかも台湾という文字は一言も出てきません。これまでは、台湾だ、台湾だと台湾有事の脅威を煽ってきたのに、今回は台湾の一言も書いてありません。これはおそらく4月にトランプ大統領が中国に行って習近平主席と貿易問題で今交渉を詰めている段階ですから、中国を刺激しないという意図も働いていると思います。
ちなみに、高市首相に対しても、トランプ大統領は電話会談の際に、台湾問題で中国を刺激するなという助言をしたという報道もありました。トランプ大統領の対中政策は、そういった方向に転換していると見ることができるのではないかと思います。
この国家安全保障戦略の戦略文書の中には、アメリカは共存する関係を続けてこそ、中国との貿易によって経済的な利益を得られる、繁栄が得られると書いています。一方で、日本やフィリピンとかオーストラリアというアジアの同盟国に対しては何を求めるか。中国抑止のために、もっと国防費を増やすように要求すべきだ。つまり、アメリカ自身は中国とうまく環境を作っていくと同時に、中国を牽制する抑止の役割は同盟国にやらせる。非常に都合のいい話ですね。自分たちはおいしいところ全部取っていって、軍拡して中国を抑止すれば当然緊張も高まりますし、経済的な関係も影響します。そういう中国を刺激するような部分はなるべく同盟国にやらせる。自分たちは経済的に安定的な環境を築いていく。普通に考えて非常に調子のいい、都合のいい戦略を描いているわけです。
先ほどのGDPの3.5%だと21兆円で、5%になると30兆円になります。そんなに増やして何にするのか。一つやろうとしているのは原子力潜水艦です。原子力潜水艦というのは、一つ作るのに数千億円かかります。もちろん一つ作っただけでは運用できませんから、数隻作る。しかも常に整備をしていかなければならないので、そうすると数兆円という規模になります。そんなお金はこれまではなかったわけです。
でも防衛費を20兆、30兆に増やすとなるとそういうお金も出てくるので、自民党と維新の政権合意の中では、原子力潜水艦の保有も検討するということが盛り込まれています。
原子力潜水艦に関して一つ追加すると、ただの原子力潜水艦ではないんです。ミサイルを垂直に発射できるタイプ。そういった発射機を備え付けた潜水艦と、はっきりと書いています。ミサイルを垂直に発射できるというのは対地攻撃ができる。つまり潜水艦からミサイルを発射して、敵の陸上を攻撃できるようなミサイルです。そういう原子力潜水艦を作る。
仮に中国と戦争になった場合、中国のミサイルの射程圏内は、日本も含めて周辺のエリアがレッドゾーンになっていますから、そこには入っていけない。しかも海の上は隠すことができないので攻撃を受けやすい。だから地上にミサイルを置くといいました。唯一、船で敵に見つからないのは、潜水艦なんですよ。でも今、自衛隊が持っている潜水艦は通常型の潜水艦ですので、一定期間たつと一回浮上しなければいけない。
原子力潜水艦は、ほぼ無制限に潜り続けることができます。ですから相手に見つからない。しかもそこからミサイルを発射できる。原子力潜水艦というのは、そういう意味では一番いいわけです。それを持とうとしている。
さらに、これが大きな問題になってくるのは、韓国も持とうとしています。韓国は、アメリカが持っていいとなっている。ただ、韓国は国産で作ります。なぜかというと韓国は、もうトランプ自身が同盟国を守らない。同盟国を守るためにアメリカが血を流すことはしない。お金を出すこともしない方向ですから、アメリカに頼れない。だったら、自分たちで自分たちの国を守るという方向で考えた時に、原子力潜水艦を持つという考え方になっています。
これがいいかどうかは別にして、なんで国産で作るのか。アメリカになるべく依存しない形で作る。水面下で話を聞くところによると、日本では、今のところアメリカから原子力潜水艦を買うような話です。アメリカのバージニア級の攻撃型原潜を買うか、あるいは共同で生産するか、みたいな話があるということも聞きました。
このバージニア級の攻撃型原潜はどういう問題が出てくるかというと、しょっちゅう、横須賀とか佐世保とか沖縄のホワイトビーチに寄港しています。この潜水艦に今は核ミサイルは搭載されていません。
90年代に、核ミサイルはこの潜水艦に積みません、よいうことでアメリカが撤去しました。でもトランプ政権は2032年~3年頃までに、もう1回、核ミサイルをその潜水艦に搭載する計画で進めています。搭載されるとどういうことになるか。日本の横須賀や佐世保や沖縄にしょっちゅう入ってきているアメリカ軍の潜水艦に、核ミサイルが載ったまま日本に入ってくることです。
日本は非核三原則ですね。持ち込ませずが、入っています。非核三原則を堅持でいくのであれば、これからは原子力潜水艦の入港を認めないと言わなければいけない。でも言えない。おそらく自民党は、それを言っちゃうと日米同盟は壊れてしまうと思うから、認めないのだったら非核三原則の方を変えざるを得ない。
昔は、密約があったんですよ。非核三原則がありながら、核ミサイルを積んだ船とか飛行機が日本に一時的に入るのは認めるという密約があった。密約がアメリカの公文書館から見つかっても日本政府はそんなのありませんと、ずっと白を切り続け、嘘をつき続けてきました。ところが民主党に政権交代して岡田外相が調べてみたら、やっぱりありましたと出てきた以上、密約はもう使えない。どうするかというと、非核三原則を見直すしかないと、今、自民党は考えている。
いま中道改革連合が、非核三原則を自民党・高市政権が見直そうとしているけれど、我々はやっぱり堅持すると言っています。けれども、一方で日米同盟基軸とも言っています。
本当に攻撃型原潜に核ミサイルが積まれるようになった時に、果たしてアメリカに対して原潜入ってくるなと言えるのか、私自身も心配しています。本来は、日本がアメリカの核の傘からも出ますというスタンスを取らない限り、非核三原則は維持できない。それは両立できないことだと考えなければいけない段階に来ているのではないかと考えています。
もう一つ原子力潜水艦に関して言うと、原子力潜水艦は日本も持つべきだと言っている自民党の国防族、あるいは自衛隊の元幹部の中には、核共有という構想もあります。
アメリカのバージニア級攻撃型原潜に、核弾頭のついた巡航ミサイルを再び搭載することになったとしたら、です。自衛隊も同じタイプのバージニア級の攻撃型原潜を持つことになれば、場合によっては米軍の核ミサイルを自衛隊の潜水艦にも積んで、場合によっては自衛隊がアメリカの手足となって核ミサイルを撃つ。これはヨーロッパのNATOがやっている核共有です。
ヨーロッパの場合は、米軍の弾薬庫に置かれている核ミサイルを、戦争になった時にドイツとかの戦闘機に乗せて、それをドイツ軍が落とす。そういう核共有がNATOにはあります。日本版の核共有というのは、米軍と自衛隊が同じタイプの原子力潜水艦を運用して、場合によっては米軍の核ミサイルを自衛隊が運用する。潜水艦を持つことによって、将来そういう道も開けるのではないか、という構想を言っている人もいます。先日、高市首相の補佐官が日本も核保有を検討すべきだというのは、そういう一つのメッセージもあるのかなと思っています。
そういう意味で高市軍拡というのは、非常に危険なところに踏み込んでいくんだろうと思います。しかも今、中国との関係が非常に悪化している状況です。高市さんは、場合によっては台湾有事に軍事介入しますよ、戦争するかもしれないということを言ってしまった。中国は日本の自衛隊が持つ装備も、場合によっては台湾有事において使われるとみなしてくるわけです。そういう条件のもとで、さらに軍拡をする、原子力潜水艦を持つ、ドローンもたくさん持つっていうことが、どういう結果をもたらすか。これも明白です。
中国が日本に対する圧力を一層強めてくるでしょう。それは経済的な圧力だけでなくて、軍事的な圧力も含めてです。そうなれば、もっと日本にレアアースとか薬とかが入ってこなくなる。経済的な面での影響も非常に大きくなりますし、私が危惧しているのは軍事的な緊張です。中国軍が日本の周辺海域で、自衛隊を牽制するために訓練をする。それに対して自衛隊もその近くで訓練や、警戒監視行動する。非常に接近した近い距離で自衛隊と中国軍がそこにいるというときに、先日あったようにレーダーを照射したとか偶発的な衝突が起きてしまう。こういう危険が高まると思います。
最悪、偶発的な衝突で中国軍と自衛隊の間で交戦が起きたときに、アメリカが助けに来てくれるかといえば、くれないですよ。トランプ大統領の姿勢は、完全に高みの見物です。そういう状況は、日本にとって最悪のシナリオです。
最悪な戦争にならなくても、アメリカは、自分は中国とうまくやっていくけれど、同盟国に対しては中国を抑止するためにもっと軍事費を上げて、しかもアメリカからもっと兵器を買ってくれと言っている。防衛費がさらに10兆、20兆上がるとなると、財源どうするんですか。今回の候補者に取材をしたら、自民党の候補者の多くが、国民の負担を増やしても防衛力を大きく増やすべきだと答えました。これは増税ですよ。戦争にならなかったとしても国民の暮らしが破壊される、まさに亡国の道だと思います。
では、こんなことをやって誰が得するのか。得するのは、アメリカの軍事企業と日本の一部の三菱とかそういう兵器を作る企業だけです。トランプ大統領がモンロー主義の方向に転換したというのは、アメリカの国力の低下を反映していると思います。世界を支配するような力がアメリカにもなくなっている。アメリカ一国で世界の軍事費の4割を毎年使っている。もう世界の覇権を追及しないなら、そんないらないじゃないですか。じゃあ減らすか、ということです。
そうじゃない。トランプ大統領はもっと増やすと言っている。これ、矛盾していますよね。増やしたお金で、ゴールデン艦隊といって黄金艦隊を作る。トランプという名前の艦船を作る。戦艦ヤマトみたいな巨大な艦船を作って、あらゆる最新のものをそれにつぎ込むと言っています。これは、これまで米軍が中国との戦争を想定したときにやろうとしてきたことと真逆です。だって、大きいものは一番狙いやすいですから。しかもそれが高額だと、一気に狙われて沈められたら全部おじゃんになるわけです。小さいもの、安いものでやっていくとしていたのに、真逆なことをトランプ大統領はしている。
これ、ビジネスでしかないんですね。軍需産業でいろんなものを作って世界に売っていく。グローバル化でどんどん製造業が海外に出てしまったけれど、もう一回アメリカ国内に戻して、アメリカの経済政策の一つに兵器産業を位置づけています。日本にとっては何の得にもならない方向に、日本はアメリカに追随して向かおうとしています。こういう何の得にもならない、しかも最悪戦争になって日本が単独で中国と交戦するような方向は、やめなければいけない。とにかくアメリカについていけばいいんだ。中国と外交ができない首相ですから、トランプのアメリカにしか頼るものがない。これ最悪なことじゃないですか。
対米従属の政治とは決別しなければ日本の未来はないと思います。アメリカに依存しない安全保障は何か。こういう話すると、アメリカに依存しないなら日本がもっと軍事費を増やして、自主防衛で日本も核兵器持つ必要があるのではないか、みたいに言う人がいます。それはあまりにも選択肢として狭いでしょう。安全保障というのは、軍事だけではないんですね。やっぱり外交によって信頼を醸成し、そのことによって戦争を予防していく。そういう大きな手段があることに目を向けるべきです。
アメリカがモンロー主義で西半球以外は介入しないというスタンスになると、中国はもっと覇権国家になる。中国が支配するアジアになるという人がいます。また、中国に支配されるくらいだったら、アメリカに支配されてた方がいいという人もいるんですね。対米従属から脱却すべきだと言うと、お前は中国の属国になりたいのかとか言われます。でも本来そうした二者択一ではないんですね。
もう一つの道を私は提案したいと思います。それはアメリカの覇権か中国の覇権ではなく、覇権のないアジアを作っていくという、もう一つの道です。実は中国の習近平主席も、繰り返し次のように述べています。中国はどこまで発展しても永遠に覇権を唱えず、拡張せず、勢力範囲を求めないと。
これも、実際にやっていることと違うと思われる方、非常に多いと思います。確かにそういう面はあります。ただ、トランプ大統領はこういうことすら言わない。今日の朝日新聞に、これまでのアメリカも確かに国際法を守らず、軍事化を行ったことがたくさんあったとあります。でも、一応その国際法に違反ではないとい
う説明をしようとしてきた。でもトランプ政権は、その国際法を窓の外から投げ捨てている。そこが非常に危険だと述べていました。今回のベネズエラ攻撃に対しても、中国は、はっきりと批判しています。
昨年、トランプ大統領と習近平主席が会談したときに、トランプ大統領はこれからアメリカと中国のG2でやっていきましょう、と言った。中国はトランプ大統領の言葉に対して、それに同意はしなかったんです。あくまでも覇権のない、要は国連憲章に基づいた秩序が重要だ、と言葉では言っています。だから中国を信じようということではないです。重要なのは何か。こういうふうに言っている、この言葉をしっかりと中国に守らせるような外交を、日本はしていかなければいけないと思っています。そのことは十分に可能だと考えます。それを進めていく上で重要なのは、日本だけではできません。韓国、そしてASEAN諸国との連携が非常に重要になってくると思います。
先日のダボス会議で、カナダのカーニー首相が演説した内容が非常に注目を集めました。大国間競争の世界において、その狭間にある国々には選択肢があります。大国の歓心を買うために互いに競い合うのか、それとも連携して影響力を持つ第三の道を切り開くかです。ハードパワーの台頭に目を奪われて、正当性、誠実さ、ルールの力、私たちがそれを共に行使することを選択する限り、依然として強力だという事実を見失ってはなりません。
カナダは非常に困っているわけです。アメリカと隣り合わせですからね。51番目の州になると言われている。これまではカナダも安全保障をアメリカに依存して、アメリカが国際法を無視してイラクに侵攻したり、いろんなことをやったときに、アメリカがやった場合には沈黙してきた、と。日本ほどではないと思いますけれども、カナダなりにやっぱりアメリカには顔色をうかがってきた。そういうことが、今回のトランプを生み出してしまったのじゃないか、と。
これからは、力の強い大国に対して力で勝てない国々は、誠実さ、信頼によってつながりあって、ルールに基づく秩序であったり、そういう世界を守っていかなければいけない。だから、ミドルパワーの国々の連携が重要だと訴えている。まさにこれが第三の道だと思います。
ただここでミドルパワー、中堅国しか視野に入っていないのは、非常に問題だと思います。アジアでは、すでにASEANが覇権のないアジアを作るために、アメリカの側にも中国の側にもつかないで、その仲介外交で覇権のないアジアを作るための外交を展開しています。だからASEANと韓国と日本が協力して、中国に対して外交をやっていけば、アメリカの支配か中国の支配かではなくて、本当に覇権のない、協力し合うような秩序を作っていくことができると思っています。そういう方向を目指すような政治にしていくことが必要だと思います。
明日の選挙結果は非常に厳しいものになると言われていますが、新しい希望を感じさせるようなことも起きています。今朝の日刊スポーツですけれども、X、SNS上で「#ママ戦争を止めてくるわ」というハッシュタグがトレンド入りしています。昨晩ぐらいからですかね。急激に多くの人が呟いて、新聞記事にもなっています。
高市政権になってさらに軍拡をする。しかも中国と非常に関係が悪い中で軍拡すると、戦争になってしまうのではないか。しかも憲法9条まで変えると言っている。そういう中で、これはやばいんじゃないかと思う人が増えていることが現れたと思います。そういう意味では、明日の選挙は一つの新しい運動のスタートだという高田健さんの最初のお話ありました。これから、今日のタイトルである「戦争させない、そして9条改憲NO」ということを軸にする。国会の中でも市民社会の中でも多くの人を結集するような新しい運動を明日からスタートさせて大きく広げってことが、これからの今年の一番重要な課題になってくるということです。