私と憲法295号(2026年1月1日号)


共同代表年頭のあいさつ

平和への綱引きに加わり、行動を

暉峻淑子(埼玉大学名誉教授)

2026年が戦後最悪の危険な年になるのか?!?

私たちは、今、あらゆる場面で戦争と平和の綱引きをしているまっさいちゅうではないだろうか。すでに高市政権は、台湾有事や核武装問題で理性を失っている。私たちが、ありったけの手と力を集めて、片時も綱引きの手を緩めず平和に向けての綱を引っ張り続けなければ、何がきっかけで、国民の命が危険にさらされるかわからない。一人でも多くの人が、平和への綱引きに加わって、行動しなければならない年なのだと、自分に言い聞かせて身を引き締めている。合言葉は一
つ。「国民を戦争にひきずりこむような政権は、絶対に許さない。退場を!」?理性的に、といえば、命の危険は軍事問題だけではない。?

初春のお雑煮をまえに、昨年の令和の米騒動を思い出してもらいたい。?

コメの値段が暴騰し、スーパーの棚から国産米が姿を消し、備蓄米放出効果があがらないことで、世論は騒然とした。他方では、食料の無料炊き出しに並ぶひとや、子供食堂の困難が訴えられたが、なぜ日本の農業がここまで衰退し、そのことによって何を失ったかという根本的な議論はほとんど盛り上がらなかった。問題は、戦争になれば、食料の自給率38%の日本では、これまで依拠していた食糧の輸入が止まり、飢餓のなかで、国民は生きていけなくなるという現実なのだ。石破政権は、その現実を令和の米騒動から学び、これまでの減反政策を転換し、国内におけるコメの増産を認めたが、高市政権はそれに反し、再び事実上の減反政策をとる構えである。輸入によって表面的には支えられている食糧は、戦争でほぼ止まる。

国民もメデイアもその現実を真剣に見ようとしない。あるジャーナリストは私に言った。「コメが高い。スーパーの棚に米がないというけど、米がなくても他に食べるものはたくさんある。飽食社会の日本で、なぜ米に大騒ぎするのか理解できない」と。私はその時マリー・アントワネットの「貧民はパンをよこせと言って騒いでいるけどパンがないならなぜお菓子を食べないの」という言葉(真偽のほどは確実ではない)を思い出した。ジャーナリストは続けて言う。「飢えるってどういうことですか。我々には実感がわかない」。?

戦前の戦争の経験者や原爆の生存者が語り部を必要とするように、自給率38%の見せかけの飽食しか知らない日本人に、戦争中の飢餓の語り部も必要なのかもしれない。?

農家の働き手が軍隊に取られ、物資不足で肥料や農機具の補充もできず、ひっ迫した食糧生産に対して政府は、1942年、食糧管理法を制定して、国民に米穀通帳を持たせた。食糧管理法によって、農家では家族の食べる自家用米を除き、生産したコメ、麦などの穀物全量が政府によって買い上げられ(供出と呼ばれた)、政府はそれを国民に配給した。米穀通帳には、世帯の家族や年齢が記され、それを基準としてコメが配給された。たとえば大人は1日330グラム。10歳以下の子供は1日150グラムだったが、それで生きていけるわけはない。法を守って配給だけで暮らしていた東京地方裁判所の判事、山口良忠さんが栄養失調で死んだことが新聞で報じられた。その配給でさえ遅配・欠配は日常だったから、国民は、木の実や野草や昆虫やカタツムリなどの食べられるものは根こそぎ自力で調達した。子供が学校に持っていく弁当は蒸したサツマイモが、芋のツルをゆでたものも変わり、弁当も持っていけなくなってからは、午前中の授業クラスと午後からの授業クラスに分かれた2部式授業になった。柿の木の葉にはビタミンCがあるといわれていたので、どの家の柿の木も葉のない裸の木になっていた。敗戦を迎えた8月には1か月に3日分の配給があるだけだった。開業医もおカネでは診てくれず、米やイモなどと引き換えに診察をし、やっと薬を出してくれた。当時の食事といえば、おかゆの中に大根場を大量に入れ、糠をパラパラと入れて、家畜の食べ物のようなものを、苦い薬を飲むように口の中に入れたらすぐに飲み込み、何とか飢餓に陥らないようにした。泥棒も夜中に他人の家の台所に忍び込み、食べられるものを盗む泥棒が多かった。(当時の食事情を知りたければ、農文協出版「復刻 昭和20年8月 食生活指針」や栄養士、近藤とし子著「根の営み」草土文化社 などを読んでほしい。)栄養失調の国民は仕事をする元気もなく、エネルギー消費をふせぐためただじっとしているほかはなかった。戦後1960年代には国民の飢餓状態は克復されたが、その日本で、なぜ自給ではなく輸入に頼る食生活になってしまったのか。食糧は武器より相手を打ち負かす力を持っている。?

農業は自然を相手にする産業であり、山地の多い日本では海外の米に比べ生産費が高い。工業や金融業、情報産業のようにタイパ、コスパによって利潤をあげ、輸出でも稼げる産業に比べ、カネのかかる国内農業を、政財界は安い輸入に置き換えた方が効率的だと考えた。その代償が自給率38%なのだ。さらに自動車その他の海外輸出の代償として、海外から日本国内市場開放を迫られ、減反している日本にコメが輸入されることになる。値段より、いざというときの自給率が国民の生存にとっては大事なのだ。アメリカは自給率104%。フランス121%。ドイツ83%。イギリス86%。・・・。日本の米は高いのだろうか。5キロ4千円のコメとしても茶わん1杯のご飯は38円である。200円板チョコの5分の1.たばこの1本半。7枚切り食パンの1枚・・・。?

もし、戦争になれば、令和の米騒動程度ではないことを国民は知るべきだ。

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共同代表年頭の挨拶

戦後80年の憲法

高良鉄美(琉球大学名誉教授)

新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

周知のとおり、8月15日は敗戦の日ですが、日本ではカレンダーを見ると終戦記念日と書かれているのがほとんどです。しかし、国際社会では違う意味が込められています。連合国のほとんどは戦勝記念日という形で、しかも8月15日の日付は少なく、9月2日または3日となっています。この違いをどうとらえるべきでしょうか?

日本国内では、ポツダム宣言の受諾(8月14日)と天皇の玉音放送(8月15日)を受けて終戦記念日とされています。つまり、明治憲法上、天皇に軍
事大権があり、帝国議会が関われないもので、戦争終結は玉音放送をもって完結していました。したがって、8月15日は、日本自ら戦争を終えた形の表現をとっています。ところが、これはあくまで日本国内の受け方でしかありません。

連合国は、降伏調印をした9月2日を対日戦勝記念日VJDay(Victory over Japan Day)としています。米国では日本が8月15日に降伏したことを知っており、報道もなされていました。しかし、本当に日本が降伏をしたのか正式な降伏調印がなされないと確約されないと考える面もあって、将軍から大統領となったトルーマンからすれば、9月2日が対日戦勝記念日とするのが適切であったのでしょう。そこには日本に対する疑心暗鬼の思いも見え隠れします。軍国主義に突っ走り、アジア・太平洋地域を席巻していた日本が、そう簡単に軍国主義を止め、武装解除するだろうか、民主主義を強化し、基本的人権の尊重を確立するだろうか、日本国民の自由な意志に従って、平和的傾向を帯びかつ責任ある政府が樹立されるだろうか、という疑念だと思います。これらの項目はポツダム宣言の主要な条件であり、いかに連合国が日本に懐疑的な視点を持っていたかがうかがえる。まさに、その疑念が当たっており、今の日本の政情はかつての歴史の歯車を逆回転させている状態ではないのか!

歴史の歯車を逆回転させない装置として日本国憲法があり、第9条が軍国主義の復活を抑え、平和の希求のモチベーションとなっているのです。

8月15日の敗戦によって天皇主権が実質的に終わり、日本国憲法の3原理の1つである国民主権が生まれたとする八月革命説について、戦後80年の今こそ光を当てるべき時だと考えます。「私と憲法」の意味もグッと見える風景が変わってくるかもしれません。憲法が期待しているのは主権者の力なのです。

昨年は、8月15日を境に戦後80年となりました。そうすると、今年の8月14日までは戦後80年なのです。日本国憲法はまさに戦後80年のその時期に魂を込められ、産声を上げることになっていったのです。1945年12月26日、鈴木安蔵をはじめ7人の憲法研究会メンバーが「憲法草案要綱」を発表しました。第1条(便宜上番号を振っています)「日本国の統治権は日本国民より発する」と明確に国民主権を謳っています。それだけではありません。

第10条「国民は国民請願国民発案および国民表決の権利を有する」として、請願だけでなく、イニシアティブ(法案を含む国民発案)やレファレンダム(国会と同様の議決を含む国民投票)まで規定しています。まさに国民主権の真髄であり、80年経った今でも輝きを失っていません。そして第18条で「国民は民主主義ならびに平和思想に基く人格完成、社会道徳確立、諸民族との協同に努める義務を有する」として、「民主主義と平和思想」まで謳っているのです。

極め付きは、第28条「議会は国民投票によって解散を可決されたときはただちに解散しなければならない。」と、第29条「国民投票により議会の決議を無効にさせるためには有権者の過半数が投票に参加した場合でなければならない」の両規定で、議会(国会)の解散や議決権にまで国民の力が及ぶとしていたことです。議会だけではありません。第33条では「国民投票で不信任を決議されたときは内閣は辞職しなければならない」として、内閣の総辞職まで国民の主権者力で決めることができる規定も置いていました。
会計および財政の章では、第49条に「租税の賦課は公正でなくてはならない。消費税を偏重して国民に過重の負担を負わせることは禁止する。」と定めており、主権者としての国民を重税による生活負担から保護する姿勢をとっていたことは、日本政治の現状における問題点を突いているとさえ言えます。国家権力の横暴から国民を守るという憲法の特質をしっかり活かすことができるのは、やはり憲法によって「主権が国民に存する」と明確に宣言された主権者国民だけなのです。
今年は「主権在米」とさえ揶揄されてもおかしくない国政の窮状を、国民が主権者力を磨いて、「主権在民」の王道へと導くために、憲法の盾としての80年の力をあらためて考えていく年にしませんか。国の政治のあり方を最終的に決定する最高の権力を持つ、「主権者」だからこそできるのです。

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共同代表年頭の挨拶

以民促官・飲水思源―日中国交正常化に至る道―

2025年12月8日
内田 雅敏(弁護士)

サンフランシスコ講和条約と日華平和条約

1972年9月29日、田中角栄首相と周恩来国務院総理による日中共同声明が発せられ、日・中国交正常化がなされた。国交正常化交渉の中で最も問題となったのは、中国の対日戦争賠償請求と台湾問題であった。この二つは相互に関連している。

1951年9月8日締結され、翌52年4月28日、発行したサンフランシスコ講和条約は、日本の戦争賠償義務を免除した。このサ条約には、日本の侵略戦争の最大の被害国であった中国の署名はない。

当時、中国共産党(中華人民共和国)と国民党(中華民国)の国共内戦中であったため、いずれの政権も講和会議に招かれなかった。

サ条約が発効した52年4月28日、日本は国民党政権との間で、日華平和条約を締結した。国民党政権はこの日華平和条約で日本に対する戦争賠償請求権を放棄した。否、「放棄させられた」。戦争賠償請求権を放棄したサ条約に倣えと米国に強要されたのである。

それから20年、1972年9月、日中国交正常化交渉で、中国側は、日華平和条約は締結当初に立ち戻って無効であると主張し、日本側は、日中国交正常化と同時に日華平和条約は失効するが、それまでは有効に成立している主張した。そして、戦争賠償請求権の問題はすでに日華平和条約で解決済みであると強弁した。

周恩来総理の決断

当時深刻な中・ソ対立を抱えていた中国は、何としても中・日国交正常化を果たさなければならなく、戦争賠償請求権問題は決着済みという日本側の強弁を飲み込んだ。日中共同声明本文第5項である。毛沢東主席と周恩来総理は、いわゆる「二分論」即ち、〈我々は日本の軍閥と戦ったのであり、日本の民衆と戦ったのではない。日本の民衆も戦争の被害者だ〉を唱え、戦争賠償請求権の放棄に不満な民衆を抑えこんだ。共産党の独裁政権だから出来たことで、民主主義国家では出来なかった。

1972年9月、戦後27年を経たとはいえ、中国民衆間には日本軍による侵略の記憶はまだまだ鮮明であり、日本の首相を迎えることに対する反発もあった。

周恩来総理は、「なぜ日本の田中総理を招請するのか、これは毛沢東主席と党中央の重要な戦略的配置である」とし、「まじめに準備し、田中一行の応対を立派になし遂げよう」と呼びかけ、

「過去において日本軍国主義が長期的に中国を侵略し、日本兵のもたらした苦しみを十分に味わった。

家が破壊され、家族がばらばらになった。深い恨みはいつまでも忘れがたい。日の丸を見ると腹が立つ。それなのに、なぜ日本の首相を中国に招くのか、納得できないという人もいるだろう。

このような気持ちはよく理解できる。日本軍国主義が中国を何十年にわたって侵略し、中国人民に災難をもたらした。この歴史は忘れてはならない。しかし、我々は感情で政策を決めてはならない」と説得した(『NHKスペシャル 周恩来の決断』NHK出版)。そして田中訪中に先立つ9月14日、上海では有線放送を使って、14万人の幹部が「なぜ田中訪中が必要か。何故日本との国交樹立に踏み切るのか」といった点について宣伝教育を受けた(同)。

私たちは、この周恩来総理の決断を思い起こす必要がある。もちろん田中首相にも日本に帰ったら「刺されるかもしれない」という覚悟もあったはずだ。

共同声明に際して、周恩来総理は、田中角栄首相に「言必信 行必果」の語句を贈った。〈言ったことは互いに守らなければならない。行ったことは互いに結果を出さなくてはならない〉というような意味だろうか。田中首相は、即座に「信は万事の本」と応じた。

大平外務大臣の台湾問題についての国会報告

日中国交正常化を果たした田中首相らは72年9月30日帰国した。同年10月28日第70回国会において、大平正芳外務大臣は、報告に立ち、台湾問題については以下のように述べた。

「次に,台湾の地位に関してでありますが,サン・フランシスコ講和条約により台湾を放棄したわが国といたしましては,台湾の法的地位について独自の認定を行なう立場にないことは,従来から政府が繰り返し明らかにしているとおりであります。しかしながら,他方,カイロ宣言,ポツダム宣言の経緯に照らせば,台湾は,これらの両宣言が意図したところに従い中国に返還されるべきものであるというのが,ポツダム宣言を受諾した政府の変らざる見解であります。共同声明に明らかにされている『ポツダム宣言第8項に基づく立場を堅持する』との政府の立場は,このような見解を表わしたものであります」。

同年11月8日、衆議院予算委員会でも、大平外務大臣は、「わが国は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であるとの中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重するとの立場をとっております。したがって、中華人民共和国政府と台湾との間の対立の問題は、基本的には、中国の国内問題であると考えます。わが国としてはこの問題が当事者間で平和的に解決されることを希望するものであり、かつ、この問題が武力紛争に発展する可能性はないと考えております」と答弁している。

民間交流のレールの上に乗って

1972年9月25日、北京空港で初めて周恩来総理と会った田中首相は、「私は、永い民間交流のレールの上に乗って、今日ようやくここに来ることが出来ました」と述べたという。大平外務大臣も前記国会報告で「日中国交正常化はもとより政府のみの力によって成就したものではありません。この際,わたくしは,これまで長きにわたって日中の交流と国交の正常化に尽力をおしまれなかった与党,野党の関係者をはじめ,各界の先達に対し,深い敬意と感謝を表明いたします」と述べた。「以民促官」、民間交流が政府を動かした。「飲水思源」、日中友好に尽力した先人たちに思いを馳せよう。

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女性相談会報告

衣食住さえもままならない シングルマザーの家庭や子どもの現実

私たちの命は国家のためにあるんじゃない!権力者のためにあるんじゃない!

菱山南帆子(市民連絡会事務局長)

2025年12月14日、東京・北区にて女性の相談会が開催された。107名の相談者、キッズは14名が寒い雨が降るなか集まった。

私は保育士として今回も託児の責任者として相談会に参加した。年に約3回の相談会をコロナ禍以降、定期開催をしてきたが、状況は悪くなる一方だ。今回の託児スペースで目の当たりにした現実を報告したいと思う。

この日はとても寒くて雨が降りしきっていたのだが、その中、子どもを2人、自転車の前後に乗せて1時間以上もかけて相談会場に来た親子がいた。子どもが託児に来たが下の子がレインコートを着たままなので、脱がせると洋服が上半身びっしょり。1時間以上抱っこひもで前に抱えられながら雨に晒されていたからきっと、首の隙間から雨が吹き込んでしまったのだろう。

そして兄弟そろって髪の毛が長い。下の子は産まれてから髪の毛を切ったことがないのではないか?と思うほどだった。櫛も入れられていない状況で鳥の巣のようにもじゃもじゃになっていた。洋服を乾かすために脱がそうと1枚めくってぎょっとした。洋服が重ね着してあるのだが、そのうちの真ん中の洋服が穴だらけだったのだ。穴だらけだから重ね着をしていたのだ。

オムツもパンパン。カンパで購入したオムツがあったのでオムツを替えようとしたとき、母親が迎えに来た。慌てた様子で「オムツ替えがないから替えないでください」と言ってきたので、「相談会のオムツがあるので大丈夫ですよ」と言いながら、タダならぬ切迫した雰囲気を感じ、「オムツいりますか?持って行ってください」と言って封は空けてしまったが、まだたくさん残っているオムツの袋をお渡しした。母親はとても喜んでいて、オムツが高くてと言っていた。

子どもたちが置いてあるおにぎりをバクバク食べていたので、サンドイッチもあるよ?と話すと目を輝かせて「食べたい!」というので、相談会スペースに母親と一緒に移動しながら取りに行った。その間に「お母さん、お腹空いてないですか?」と聞くと「なんで私がお腹空いているってわかったんですか?実はお腹が空いていて。いつも子ども優先なので」と言っていた。

まずはお母さん、ゆっくり1人でご飯食べてください。子どもたちは保育士たちが見ていますからと言って、おにぎりを2つ、炊き込みご飯を一杯手渡して、相談会のカフェスペースに母親だけ残して私はサンドイッチを持って託児所に急いだ。

腹ペコの子どもたちが食べ始めた瞬間に母親が託児所に戻ってきた。おにぎり2個と炊き込みご飯をどれだけの速さで食べたのだろうか。いつも時間に追われ、ゆっくり食事もしていないことが手に取るように感じられた。

次の予定があるからと、子どもたちを着替えさせ、荷物を一緒にもって外に置いてある自転車のところまでついていくことにした。下の子に靴を履かせようとしたらブカブカで、マジックテープをきつくしても安定しない。母親が申し訳なさそうに「靴が大きくて…全部貰い物なので」と言っていた。「中に柔らかくした新聞紙とか詰めるといいですよ」とアドバイスをした。

抱っこひもで下の子を抱える時、餅付きの相方のように上の子が手際よく母親をサポートしていた。何をするときも3人でいつも助け合いながらこうやって生きているのだ。母親が「レインコート破れちゃって・・・」と言いながら恥ずかしそうにレインコートを着た。そのレインコートは胸元がパックリ破けていた。そうか、だから下の子の服が濡れていたのか。

荷物と子どもと母親を乗せた自転車はまるでサーカスの様な状況だった。見送ると、姿が小さくなるまで上の子が後ろの自転車の席から「ありがとうございまーす!ありがとうございまーす」と何度もお礼を言って遠ざかる姿を見て心が痛んだ。お腹いっぱいご飯を食べることは本来当たり前のことでなければならないのに、こんなにも子供に何度もお礼を言わせてしまう社会は一体何なんだろうか。

託児室に戻り保育士仲間と「マジでミサイルとか武器とか買っている場合じゃないから!」と怒りの会話が止まらなかった。

オムツの中が快適で、お腹いっぱい食べられて、成長に見合った洋服や靴を履いて、寒い思いもせず過ごす。そんな衣食住さえもままならない状況にしてきたのは誰なのか。日本が戦争を始めたら真っ先に飢えるのはこのような立場が弱いシングルマザーの家庭や子どもたちだ。

相談会はバンドエイドの様なものだ。傷口を多く緊急処置。緊急処置も大事だが、なぜその傷口が出来てしまったのか、根本的治療も必要だ。女性の相談会に参加しているスタッフは労働組合運動や弁護士、市民運動家など、日々社会活動をしている人たちが集まっている。それは、バンドエイドと根本的治療の両方が無いと、この問題は解決しないとよくわかっているからだ。

相談会の翌日の12月15日、高市発言撤回を求める首相官邸前行動に、託児室で一緒に活動していた保育士の仲間が組合の委員長として参加した。寒空の中、首相官邸に向かって彼女はこう叫んだ。「わずか40円のオムツも節約しないと生きていけないのですよ!命を何だと思っているんだ!私たちの命は国家のためにあるんじゃない!権力者のためにあるんじゃない!」

この思い、高市首相には届くだろうか。きっと届かない。だから私たちは声をあげ続ける。一刻も早く高市政権を退陣させなければならない。

そしてこの物価高騰のなか、女性の相談会へのカンパが減っている上に、物資を購入するのにも一苦労だ。
次回の相談会は3月。その時には子どもたちに靴やオムツ、お腹いっぱいになるくらいのおにぎりを用意しておきたい。
カンパ先 ゆうちょ銀行 店名: 〇九八(ゼロキュウハチ)普通 口座番号: 2698367

女性による女性のための相談会実行委員会
296号(2026年1月1日)

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第199回市民憲法講座 トランプ化するアメリカと日本のゆくえ

中野晃一さん(上智大学教授)

(編集部註)11月29日の講座で中野晃一さんが講演した内容を編集部の責任で要約したものです。要約の責任はすべて本誌編集部にあります。

私が専攻している政治学は社会の病理ではないけれども、何がどう間違っているのかを研究しているつもりでいるので、まずしっかり見て、どれぐらい状況が悪いのか、暗闇の中に一筋の光が見えるようなところになればと思います。今日は「トランプ化するアメリカと日本のゆくえ」ということでお話させていただきます。

高市自民党政権誕生の意味

まず高市さんですけれども、かなりまずいじゃないですか。要は、首相になってはいけない人がなっちゃった。海外メディアから、よく取材を受けるんですよ。本当に腹が立ちますけれども、衆議院選のときよりも、自民党の総裁選があるときの方が取材依頼が多い。それは海外から見ていると、日本の総理が新しく決まるのは衆議院選挙ではなくて、自民党の総裁選だということが分かっているからですね。衆議院選挙なんて大して関心がないわけです。

思い返しても、55年体制の時は基本的にそんなことはなかったわけです。2009年に民主党が勝って鳩山さんがなった時は、最大野党の代表が総理になった。次に野田さんが負けて安倍さんが戻ってきた時も、選挙の結果によって最大政党になったところが首相になったというのはあるけれども、これは本当に例外ですね。それぐらい首相は自民党の総裁選によって決まっています。

自民党の総裁選は、われわれ一般の人間には投票権がない。自民党の党員でしか投票できないわけで、自民党の党員は日本の有権者人口の1%を満たない人たちです。99%の有権者は、総裁選を単に見せられているだけです。見せられて、誰が一番いいですかと言われてみんなでその話をしているなんて、さすがにひどすぎないか。それがさも一大事であるかのようにずっとメディアジャックが続いていくわけで、結構ベラボーな話です。

シンガポールは、豊かな国の中で民主主義とは政治学的にも見なされていない国の割と珍しい例です。街が綺麗だとか、治安がいいとか、カジノがあるとか、いろいろありますね。シンガポールは、いつも同じ政党が政権を握っているから選挙の結果と関係ないですね。日本とそういう意味では同じだけれども、日本は民主主義だとか、アメリカは民主化した国だと褒められている。一方でシンガポールは、豊かだけれども人権が弾圧されているし、野党がちゃんと競争できないようになっている。日本だって裏金だとか、統一協会だとか問題は無数にある。けれども、シンガポールは非民主国家で日本は民主国家と言われている。シンガポールの人たちに、日本の真似をするといいよ。そうすれば、同じ政党がずっと勝ち続ける。けれども日本は民主国家だと言ってもらえるかな、というぐらいですね。本当はすごくデタラメな話なわけです。

さらには、総裁選があって高市当選が決まった時が、ちょうど28日間です。自民党の総裁選も選挙期間が公式にはあって、告示されて12日間です。衆議院選挙と同じです。去年、衆議院選挙がありました。石破さんが総裁になった後、間もなく解散して負けたわけです。石破さんが新しく総理になって解散して、実際に選挙があるまでちょうど28日間でした。衆議院選挙も選挙期間が12日間です。戦後どんどん短くなっている。

戦後の大選挙区だった時代は、選挙期間がもっと長かった。ところが小選挙区制を導入して、もう一つはお金がかかるといけないと言って、選挙期間を短くしている。だから、野党に勝ち目がなかなかない。こっちは何とか共闘して、候補者を調整して、それで新人、場合によっては女性を立てるようなことをやってきた。でも当時だったら創価学会もあって、統一協会から何から全部、選挙が始まった時には終わっているわけじゃないですか。そういう意味では、12日間しか公式にはない。その前にやると事前運動になると圧力をかけている総選挙と、実は総裁選にかけている時間が全く同じです。1%しか有権者のうちで投票できない。決選投票になると、自民党の例の裏金議員とかそういう人たちで決めている。そういう意味では高市さんが勝っても別に驚かないわけです。

驚いたのは、麻生さんが高市さんを総裁にしたということが今回起きたことです。2021年、2024年、2025年と、この間の総裁選について見ると、要はヤクザの抗争ですね。派閥が解散したとかいっても、結局、麻生派があと押ししたことによって決選投票で決まったと言われるように、実際には派閥がある、あるいは今派閥ができつつあるわけです。だから、旧安倍派というのがなくなって、ヤクザの親分がいなくなったから後目争いをいろいろやっている。その中で下村博文が消えたとか萩生田ちょっと一回休みみたいな感じになっている。そんな感じでやっているわけじゃないですか。

その隙をついて高市さんが出てきた感じです。これで、もし首相をある程度長いこと、高市さんがやることになってしまったら、その後はなんとなく高市派的なものがあることになる。今も事実上、菅派的なものがあるわけです。その後、それがより長く続くものになるかはわからないけれども、基本的に自民党の総裁選というのはヤクザの抗争なわけですよ。

わずか一年の間に何が変わったのか

もっと言うと、自民党の総裁選がある限り派閥はなくならないし、いわゆる政治とカネの問題はなくならない。それは、自民党の総裁が首相になる仕組みになっているから、実際には自民党の裏金議員とか、ああいう人たちが次の総理を決める仕組みができている。自民党の総裁は公職ではないですから、公職選挙法の対象にならない。だから、後ろに手が回らないわけです。政治資金を買収とか何とかしても、自民党の総裁は、あくまでも政党で、公党ではあるけれども、公職選挙法によって規定されているポストではないからお金が飛び交うわけです。

自民党を1955年に作った時からずっとそうなわけです。派閥の連合体としてスタートして、その中で様々にお金をやり取りする。お互いに妥協したり、こいつを潰そうとかとヤクザ同士がやっている。それでずっと日本の首相が決まっている。そういう仕組みがある限り、自民党が万年与党である限り、絶対に政治と金の問題はなくならないわけです。政治資金規制法でも、今回もまた高市さんが「そんなことよりも」定数削減をした方がいいみたいなことを言った。

彼らは、ほとぼりが冷めるのを待っていて、忘れたら同じようにやっていく。今回だって、しれっと萩生田さんとか麻生さんを復権して、「そんなことよりも」と言ってのける。マスメディアは完全にそっちについている。そういう体たらくで決まっていくが日本の自民党の総裁選なので、誰がなるかというのは、どのヤクザ集団が誰を押すかで決まっていくわけです。最終的には決選投票で決まることになるわけです。

構図としては、2021年の岸田さんがなったときです。菅さんが辞めさせられたときから、要は仁義なき戦いの世界に自民党は入っていた。

安倍さんが辞めたときは、急に辞めたから菅さんしかないとなった。安倍さんの周りにいた安倍さんも含めたボスたちは、みんな菅で行くしかないと合意したわけです。その時にやっていた人たちが、安倍さんと麻生さんと二階さん、菅さん。この4人が安倍政権を最後まで支えていた人たちで、ただその間に隙間風が吹いていたわけです。

二階さんが、あまりにも長く幹事長を続けていたから、安倍さんは辞めさせたかった。安倍さんは、岸田さんが次になりたいと言う。岸田さんは当選の同期なんですね。岸田さんにやらせてあげようと思ったけれど、安倍さんが二階さんを辞めさせようと思っても、辞めさせられなかった。その時に、二階さんを応援して辞めさせないように頑張ったのが菅さんだった。そこで、二階さんと菅さんが近づいて、安倍さんと麻生さんは甘利さんにやらせたい、岸田さんにやらせたいとか思っていて、敵対関係が始まっていた。

その延長戦で起きたのが2021年のことで、菅さんが1年で辞めさせられた後に岸田さんがなった。安倍さんはあの時、高市さんを1回目では担いだけれど、勝てないのは分かっていたわけです。ただ、岸田さんに党内の右派は“これだけ強いんだぞ”という示威行為をして、見せつける。最終的に岸田さんにやらせてあげることで、岸田さんを後ろから操縦できるようにな体制を作ったわけです。

これで岸田さんが辞めると2024年には、びっくりびっくりなわけです。私は、まさか石破さんになると思わなかった。なぜなら、今まで4回も総裁選を負けて挙句の果てに、かつて派閥を持っていたのにそれも解散したくらいに、人がついてきていなかったわけでね。今になると石破さん良かった、みたいな目をして、冷静になろうという感じじゃないですか。

世界的に見ると、ジョージ・W・ブッシュは良かったとか、小泉さんの方がマシだったとか、いろいろ言うようになって、そのうち高市より安倍さんが良かったとか。気をつけないと、そのうち高市さんが良かったって言うようになりますからね。

石破さんは確かに今から比べるとまともだとは思うけれども、ただどう考えても自分が好きみたいな感じの人じゃないですか。人と話すよりも自分の声を聞いているのが好きな感じのタイプの人。この人は、一人ごとをずっと喋っているのかなという感じの人だから、党内に友達があんまりいないわけですよ。

それでこれは無理だなと思ったけれども、やっぱり安倍さんの流れでこういうことになった。決選投票に残ったのが石破さんになったら、ぐっと動いて高市止めろという話になって、石破さんが勝った。驚くべきことは、菅さんと岸田さんという安倍さんを支えていた人たちが、なんと反安倍の筆頭と思われていた石破さん支持に回った。これがもうヤクザの仁義なき戦いということなわけです。権力争いということになったら、これまでの遺恨も何も気にしないで組むときは組むし、今までの味方も切るという話になるわけです。その時、岸田さんがグッと動いたのが驚いたけれども。なんでこんなことが起きたのかというのは、アメリカにいると逆に分かったところがありました。

日米安保村のブレーキ効かず

私は去年の1年間ハーバードにいました。ハーバードにいて国務省の関係者、あるいはアメリカの日本政策、いわゆるジャパンハンドラーみたいな研究をしているような人たち、みんなから言われるのは、高市は勘弁してと言われていた。つまり岸田さんと菅さんが、石破さんを支持することで高市を止めるのは、どう考えても日米安保村が動いたという話です。

当時はまだバイデン政権でした。去年の9月だったと思います。大統領選挙でトランプが勝ったのは11月です。その前なで、ハリスになってどうなるかという中で、バイデン政権としては旗色は悪いけれども、まだ勝負ができる状態だった、そんな感じの時です。その時は日米同盟強化路線ということでやっていた。中国を封じ込める作戦。バイデンは民主主義対先制主義だとか、正義の味方G7みたいな感じでやっていた。中国やロシアや北朝鮮をくっつけたいのかというような、イデオロギー色というか、リベラルホークって言ったりします。自由と民主主義のためだったら武器を持って立ち上がれ、みたいな感じです。今はそうでなくなったから、ウクライナがはしごを外されている。自分たちは直接やらないけれども、ウクライナに武器を持ってやれと後押しをやっていた。

その文脈の中で高市さんになると、タカ派とバカ派ですね。タカ派の右にバカ派が出てきた。これ、私が発明したのではなくて、誰かが言った話です。今言っているのはほとんど私しかいないので、言うとよく怒られますが。でも、高市さんのおかげでバカ派というのが正当化されるようになってきた。それだけまずいことになっているわけです。結局、安保タカ派で、とにかく好戦的で、抑止だ抑止だとやるのは、彼らの論理があるわけです。私はそれには反対だから、タカ派は良くないし間違ってると思うけれど、バカ派までいくと、靖国だったり、歴史修正主義の問題になってくる。もう理性というか合理的に話せる世界ではなくなっているわけです。

その観点からすると、抑止論者からしてみても、高市さんみたいな人は迷惑なわけですね。今、中国が激怒しているみたいなことを引き起こして、かえってこっちが劣勢になるというのがあって、もし戦争ということになったら、こっちの責任になってしまうようなことになってきます。

あとは日本と韓国の準軍事同盟化を進めていたわけですから、それがうまくいかなくなると韓国側が困ります。実際に韓国の外務省の側がアメリカの国務省に対して、高市勘弁してほしいと言ってという話も聞きました。そういう具合で、自民党の議員が止めにかかったというのは、やっぱり高市になるとアメリカとの関係がうまくいかないというのがおそらく働いただろうというのはあります。

それがあったので私も今回は、1回戦では負けても決選投票で高市を止めるという1年前の繰り返しになるかなと思っていました。読み違っていたのは、今回、日米安保村が動かなかったということだと思います。バイデンが辞めてトランプになって、日米安保をこの間ずっとやってきた人たちは、もう外に追いやられています。トランプの外交政策、安全保障政策をやっている人たちは、これまでそういうことをやってきた人たちではありません。トランプは別に深い考えがあるわけではないけれども、とにかくやってる感を出すために、バイデンがやってきたことは全部ひっくり返すみたいなことをやるわけです。同盟強化路線から、一気に同盟国にも関税をぶっかけたりして、同盟国からむしり取る方が熱心なのか、みたいに思う人がいるけれど、一つにはそういう理由があるわけですね。

安倍の新右派連合の分裂

そんな中で安倍さんを支えていたタカ派とバカ派が分裂し、石破さんと高市さんがつながった中で起きたことです。石破さんの時は、何とかアメリカにくっついていく形で、いわゆる経済安全保障を盛んに言っていた。つまり、経済と安全保障を統合して中国を封じ込めることを、アメリカにどんどん組み込まれる形で日本がやる。これは安保法制だったり特定秘密保護法だったり、この間の安倍さんの流れでずっと進めてきたことです。こちらと、歴史修正主義的なバカ派的なところ、つまり靖国的な日の丸旗を振って喜んでいるような人たちが一緒になって、安倍さんを支える体制があった。安倍さんが辞めて菅さん、岸田さんになって、我々からすると何を言っているかわからないが、自民党がリベラルになりすぎたみたいなことを言います。そういう股裂き状態になっているのが、今も続いている自民党の状況です。

逆に言うと、疑似政権交代みたいになっている。高市さんの完全にタガが外れた感じがある。高市政権は何に似ているのかと思うと、第3次安倍政権とか第2次麻生政権かとかを思うけれど、意外ともう一つ似ているところがあるのは、小泉政権です。

つまり、森さんの内閣支持率は8%まで落ちていました。それが、小泉さんがメディアジャックをして勝てないと思ったら勝った。あの時だって、我々はカヤの外で劇場型って言われるぐらいに見せられていた。負け犬だと思われた小泉さんが勝ったから、ワーみたいな感じで盛り上がった。自民党をぶっ壊す、と言って隠したわけです。詐欺に片方を担がされたような感じがあったけれども、その時も8%の支持率が、一気に80%近くまで上がったわけです。

小泉さんは当時の森派の会長をやっていた。派閥の代表が総理大臣になった時は、派閥を一応辞めるという習慣がありました。岸田さんは岸田派の会長を続けたので、辞めないことで批判されたわけです。いろんな政治と金、汚職の問題があったとき以降、派閥はやめることになった。森さんは、総理になったときに清和会の会長をやめている。そのときに派閥の会長になったのが小泉さんです。小泉さんは、森さんが神の国発言だなんだとひんしゅくをかっていたときは、ずっと派閥の会長としておとなしく支えていた。

その彼が自民党をぶっ壊す、派閥をぶっ壊すと言って、ぶっ壊したかった旧竹下派や旧宏池会をぶっ壊した。ぶっ壊したけれど、清和会は大きくなった。今回もその2匹目のどじょうを狙っているふうに見えるところがある。結局リベラルだと言って、ちょっと穏健な自民党を徹底的に叩いて、それを面白く見せることによって、実際には裏金議員だったり、統一協会とか、関与したの人たちをロンダリングする。きれいになりました、みたいな感じで「まだその話をしてるのか、そんなことよりも」とやるわけです。

ただ石破さんは、結局中途半端になった。だからある種、高市さんみたいな突撃隊的な人じゃないといけない。総理とかトップになると、政権を長引かせたいというのもあるけれど、バランスをとってできるだけ政権基盤を作ろうとする。石破さんと高市さんは、党内の政権基盤が弱のが基本的に共通している。

有名な話ですが高市さんだって、あんまり友達がいないわけです。彼女は安倍派だと誤解されているけれども、清和会はなくなってから久しいですね。基本的に一匹狼で、政治信念はとんでもない右翼で、安倍派の中でうまく仲良くやっていたわけではない。安倍さん一人に一生懸命ついていたけれども、その前は森さんだったり、その前はもちろん小沢さんについてた時もある。あと奈良の奥野誠亮という、例の歴史修正主義の問題で大臣を辞めた議員がいたわけで、奈良でそういうところにいた人なわけです。

だから、基本的に右翼的な心情を持っていて、自民党みたいに女性が少ない政党の中で、やっぱり浮いていると思います。だって、女性に優しい議員とか、政党なわけではないですから。やっぱり一番肝心なところは、女性は関われない。そうすると、女性であることを武器化して突撃するのが高市さんの役割で、稲田さんとか、そのうちの一人だった。その高市さんが結局勝っていった裏側はなにか。

石破さんは、もともとはタカ派が売りだった。そのタカ派ぶりも、石破さんは地位協定の改定とか、あとは核共有、東アジア版NATOとかって言っていた。彼の発想は、アメリカとの関係において、アメリカの言いなりになるだけの国防みたいな発想ではないわけです。もちろん彼は対等にできるとは思っていないけれども、例えば、東アジア版NATOや核共有の枠組みを作ったら、アメリカに任せるだけではなくて日本も関与できると思っているところがあった。

変わる政権枠組みを作れない野党の責任

選挙に負けた結果、石破おろしが起きた。石破さんについては、支えていた方もいると思います。私もその心情はわかりますが、政治学的に見て、日本の衆議院選挙では基本的に次の総理が決まらない。今いる総理さえやめさせられないなら、選挙の意味は何なのだろうと本当に思います。どう考えても石破さんは、自民党の総裁として、政府の総理として、衆議院と参議院選挙2回連続負けて過半数割れしていて、それでも続けるのは、やっぱり無理ですよ。

民主主義の形式だけ考えても、一体何のために投票しているのか分からない。問題は、野党の側がそれに代わる政権枠組みを作れないで、挙句の果てに玉木みたいなしょぼいのを出してくるところが、本当にもうどうしようもないわけです。そういう意味では野党の側に責任がある話です。野党支持者までが石破頑張れと言っている状態は、どれだけ野党がダメになっているのか、そういう話じゃないですか。

石破さんは、宿題で残っていた日本学術会議をつぶして辞めたぐらいしか、ほとんど何の業績も残ってない。80年の所感を出したのは、出さないよりは良かったかもしれないですが。

高市がなったことは、トランプがアメリカで大統領になっていることも背景にあります。別にトランプの側が高市を応援していたのではないですよ。ただ、日本の自民党の次の政権枠組みをどうするかということについて、アメリカが完全に傍観しているわけではないことは、別に今に始まったことではない。日米安保村がこの既定路線をグリップして変えさせないようにやろうとしていたのがバイデン政権です。

トランプのようにアメリカが再び偉大になればそれでいいということで、同盟国であろうと何だろうと、韓国とか日本が核保有をしても構わないよみたいなことを平気で言うわけです。だから何の道理も理屈もないわけです。それよりももっと金払えみたいな感じで、みかじめ料を徴収しに来るぐらいしかやることはない。今回日本に来たのも、完全にそうじゃないですか。そんな政治になっているのがあると思います。

高市政権の実態とは

2000年の森さんの時の衆議院選挙から、直近の石破さんが負けた選挙までの衆議院選挙結果です。全体の投票率と、自民党の比例区と小選挙区における得票率、あと議席の割合です。それに民主党あるいは立憲民主党の同じく得票率、小選挙区における投票率、議席を並べた表です。投票率を見ると、62.5%が森さんの時で、小泉さんの郵政民営化選挙の時に67.3%、そして民主党の政権交代ができた時の69.3%が、70%に近づいた時です。70%というのは、中選挙区制時代の終わりの頃の低い方のレベルです。

小選挙区を導入して、日本の投票率はガクッと下がっている。結局、死に票が多いから投票したい人がいないというので、中選挙区の時だったらば3人5人が当選するから選択できたけれども、これはどっちかを選べ、コカコーラとペプシコーラを選べと言われたって、どっちも飲みたくないということはあるわけです。そういうような状態になってくると、投票率が下がることはあると思います。

ただ、郵政民営化選挙みたいにテレビでワーと盛り上がって、女性刺客対抵抗勢力みたいにですね。あるいは政権交代が起きるのかというようなときは、やっぱり投票率が上がった。

ただ、安倍さんが戻ってきたときに、59.3%になって10ポイント下がっている。しかもその後52.7%とか53.7%というようなことで、50%の前半ぐらいを低迷する状態です。今また早く解散総選挙を来年の頭とかいろいろいわれている。普通に考えたら投票率は低いだろうと思います。下手したら50%を割ることが、初めて衆議院選挙でも起きてしまうかもしれない。要は基本的に熱気みたいなものはないです。石破さんが負けた時も、やっぱり低いところに来たということなんですね。

次に得票率で、比例と小選挙区があります。これは絶対得票率というもので、普通、皆さんがご覧になっている相対得票率と違います。絶対得票率は、棄権した人も含めて全有権者を母数にして、そのうちの何パーセントの人が自民党あるいは立憲民主党に投票したかということで、まず半分の人がほぼ棄権している。残りの中で、それも含めて何パーセントが投票しているかになるから、とても低いわけです。投票に行った人だけのもので見るともっと高く出るわけです。

比例をご覧いただくと、驚くのは自民党は森さんの時から基本的に人気がない政党です。

これは、森さんが寝ていてくれればいいと言った時の選挙です。森さんは、言ってはいけない本当のことを言ってしまう人ですね。彼はお座敷芸でそういうことを言うのが好きだから、普段仲間の中で言っているようなことを表で言っちゃう。わきまえている女性がいい、みたいなことを言うから身内にはウケるけれど、世間的には貧縮で、寝ていてくれればいいというのは自民党的には本音だった。

昔、自民党は投票率が上がると勝てた。ところが、今は投票率が上がると負けるのがパターンになっているので、低いほうが良いというのは森さんのときからありました。それは、比例区では結局6人に1人ぐらいしか自民党に投票しない。小泉さんの郵政選挙の時は4人に1人投票したわけで、25%だから、これはとても高い。その後またガクッと落ちています。

安倍さんが、野田さんの時の16%、17%、17.3%といって、安倍さんは3回衆議院選挙に圧勝しています。ところが1回も麻生さんの得票率を上回っていません。なぜ麻生さんは政権を失ったのに安倍さんが戻ってきた時は、ずっと麻生さんを下回る得票なのに勝っているのか。それは小選挙区で野党が分裂して、票が割れるようになっているからです。小選挙区だと4人に1人ぐらいが自民党に投票するという。これは創価学会の人たちも含めて投票していて、これがほとんど動かないわけです。これが小選挙区のマジックで、ずっとやってきている。

何が大きく変わったかと言ったら、かつての民主党、今の立憲民主党がどれだけ票を失ったかというところですね。小泉さんの時は上り調子だったけれども、その後、野田さんで負けて以降、10%を割るようになって、今も10%の前後を動いている。だから比例なんかで見ると、今回立憲民主党は議席を一応伸ばしたけれども、比例においてはこれまで負けている数字とほとんど変わらない。11.1%しかないわけです。小選挙区では若干持ち直してきているのがこの間の傾向です。これも枝野さんで野党共闘をやって負けた時の小選挙区の得票率よりも、今回の野田さんの去年の選挙の時の方がやっぱり少ないですね。小選挙区においてもそんな状況になっています。

石破さんになってから、2024年の選挙の時は、これまで小選挙区で4分の1取っていたものが、もうガクッと落ちてきているというようなことです。小選挙区で有権者の5分の1、比例区の方で7分の1しか取れなくなっているのが現状です。

それが立憲に流れているかといったら、そういうことにはなっていない。だから、維新だとか国民民主だとか参政党だとか、その時によってどこが一番勢いがあるかは別にしても、結局よりエッジの立った、より過激な右寄りの政党の方が悪目立ちをして、立憲が野田さんみたいに「私は中道です」、「穏健です」みたいなことを言っても、そこには票はいかないということが現実だということだと思います。

台湾ロビーと好戦的な高市さんの陣営

私ちょっと変な自慢がありまして、石破さんが総裁になる、あるいは高市さんが総裁になるというのは予測できなかったけれど、高市さんが総裁になって以降は結構予測が当たっています。高市さんはやばいから、この人にはならないだろうと思った。でもやばいのが分かっているから、どういうやばいことをやるのかは大体予測できるわけです。案の定、してはいけない人を総理にしたから、こんなことになっているのが今の状況です。だから、高市さんになるとならないでは、えらく違っていた。本当に後先考えない、右しか分からない感じの人だからだろうと思います。

10月7日に自民党の役員人事をやっている。高市さんは4日に総裁になった後、しばらく組閣できなかった。公明党が抜けた状態になっていた時に、自民党の役員人事を決定した。この段階で官房長官に木原さんだろうと言われていて、それ以外は全貌がわからなかった。ただ、はっきり分かるのはチーム台湾です。もう完全に日華懇。日本と中華の議員懇談会という、いわゆる台湾ロビーです。

それに対して中国側の本土側と交流する議員連盟が日中議員連盟です。日華懇は佐藤栄作だったり、岸信介だったり、そういう人たちがやっていた親台湾側の議員の役員名簿がそのまま入っているわけです。だから安倍さん亡きあとは麻生さん、高市さんが日華懇の一番のスターだったわけですよ。自衛隊を退職した幹部も呼んだりして、民進党政権がやっています。民進党政権の側の人たちがどんどんお金を使って呼んでもらって、台湾有事は日本有事だって言って喜んでもらう。中国に議員が行くのと、台湾に議員が行くのって逆転している。どう考えたって、外交ができる国ではないんですね。隣国で、これだけ経済関係から歴史的な問題から、とにかく神経を使わなければいけない、うまくやっていかなければいけない、それが簡単ではない国に行かないから。デタラメな話です。

今だと台湾の南の高雄に安倍さんの銅像が建っています。ここは、もともと旧帝国海軍の駆逐艦が沈没したというので、台湾の人たちが建てた祠があって、靖国神社の宮司さんみたいな人がいます。そこに安倍さんの銅像を建てた。今年のゴールデンウィークの時に高市さんが行っています。その後、官房副長官になった尾崎正直と参議院議員の佐藤啓の2人と大臣になった黄川田さんの4人ぐらいで行っています。 中国側からそれを見ると、戦争をする気なのかという感じがするわけですね。

どうしてこんな好戦的な陣営でやるのか。自民党の役員人事で、麻生さんのおかげで総裁になれたので麻生さんを副総裁にして、それで萩生田さん、これも日華懇の幹事長かな。木原は、事務局長です。彼、熊本が出身でしょ。熊本のTSMC半導体工場を呼んだところがすぐ隣にいるわけですよ。麻生さんだって、福岡じゃないですか。だから半導体利権ですよ。そういうのもあって、ビジネスもやりながら、親台湾でずっとやってきている人たちが入っている。中国からは、とても冷たい感じで見ていると思いますよ。高市さんの仲間のというのは、日華懇ぐらいしかいない。

今回、選挙対策委員長になった古屋圭司さん。自民党が、元維新で無所属になった3人を釣って入れたのが古屋だと記事に出てまいしたが、あの古屋圭司が今の日華懇の会長です。有村晴子さん、神道政治連盟(神政連)が組織内議員として推薦しているのは、山谷恵子と有村晴子さんの2人だけです。その有村さんは日華墾の総務会長かな。だから、自民党の役員議員を見るとそんな感じになっています。

石破さんの時は、林芳正さんは元日中議員連盟の会長をやっいてた人です。森山幹事長も今の日中議員連盟の会長です。二階さんは5年ぐらい幹事長をやっていた。安倍さんから菅さんの時にかけて、あれだけ右に寄っていても、あれだけ親台湾でやっていても、一応党の側ではパイプがあったわけです。ところが、高市さんになって、党の側で一切中国とのパイプが見えない状況になっている。閣僚を見てもそういうのはいない。林芳正さんなんかは、外交とは何の関係もない総務大臣になっていますから。今のような空気だと、何もできないじゃないですか。

小泉さんは、もう防衛で頑張って次を狙うんだみたいな感じです。今回も、せっかく8月に靖国神社行ったのに、バカ派の票が取れないで、リベラルすぎると言われて負けた。彼からすると次にやると考えたら、もっとバカ派の信頼を得なければいけないと思っている。

完全に一線を越えた高市の国会答弁

高市政権は、もう完全に暴走列車みたいなことになっている。中国といつぶつかるかっという話になると思っていたら、国会答弁で完全に一線を超えてしまった。しかも用意された答弁ではなくて、自分で普段総理になる前に言っていたことを言っちゃった、ということになったわけです。高市発言をどう評価するかというのは結構難しいわけですよ。直前にトランプと会っていたし、アメリカとの関係でどうなのか。真相はまだわかりません。

今のところわかっているものを見ると、高市さんの失言だけれども、うっかり口が滑ったというレベルかと言ったら、それは普段から言っいていることを言ったということですよね。そこは森さんの神の国発言もそうだれども、総理になってはいけない人がなった時は、これは本人の質だけではなくて、どれだけメディアが守ってくれるかというのもあるわけです。森さんの場合には、最初からメディアが敵対的だったでしょ。その時は、神政連で神の国とか言ったら、それが記事になるわけです。彼からすると、ずっと神政連で神の国といって票を集めてきたのに、急に総理になって言ったら注目浴びて、彼からするとはめられたとかと思っていると思うんですよ。

高市さんの場合には、自分でハマっちゃった。国会答弁で言ったわけだから、メディアからしたって、カバーなんかしようがないです。それがもうそのまま流れた。しかも本人も今まで言ってきたことがあるし、もう覆水盆に返らずじゃないけれども、極めて難しいわけです。撤回すると言って撤回したら、では台湾で例えば海上封鎖みたいな事が起きたときに、日本はもう行きませんと宣言したのかということになる。それはアメリカからしては受け入れられない話になってきます。アメリカは曖昧戦略ということをやっているわけで、行くか行かないかわからないということで、ギリギリの線で彼らはやっているわけです。

ところが、日本の側がやると言って、それはどうしても日本が行くことになるでしょう、みたいなことを言った。そんじょそこらの口の滑り方じゃないわけです。まさに本当に台湾有事や日本有事みたいなことを言ったわけです。言った以上、撤回することになると困るから、決着つかないわけですね。私は、彼女が辞めるしかないと思います。けれども、なかなか簡単には辞めないでしょうから、ちょっと大変だなという状況だろうというふうに思います。

公明党も、なんであのタイミングでやめたのか。もちろん萩生田さんが復権するからとか、ずっと安倍さんに付き合ってきたツケが出て、選挙に勝てなくなっている。それでもうやってられないというふうになったのは明らかにあると思います。ただ、高市さんがどれだけ右寄りで、どれだけ親台湾で反中国なのかというのは、公明党は分かっていたと思います。

報道によると、やめると言った前の日に、斉藤さんが中国の大使と会っている。別に中国の側がやめろと言ったことは、もちろんないと思います。ただ中国からすると、高市になってパイプがないから、とりあえず公明党のところと会ったんだろうと思います。ところが公明党からしたって重荷ですかね。安倍さんと付き合ってここまで来て、挙句の果てには、チーム台湾みたいな政権ができて、これのパイプをやってくれと言われても困ると思う要素はあると思います。

この10月10日は、公明党が連立離脱をすると言って、石破さんが戦後80年所感を出した日です。中華民国の国慶日ですね。中華民国、台湾の政権が自立したいわゆる建国記念の日みたいな日です。そこに古屋圭司さんとかが行っている。こうして政権の入っている政党の幹部がいっている同じタイミングで、連立離脱するわけです。すでにこの段階から、台湾の問題で大きなことになるというのは見えていた部分があるだろうと思います。

G2・トランプショックという政策の変化

11月24日にトランプ・習近平の電話会談がありました。木原さんは否定しているけれども、翌日の25日にトランプから高市さんに電話があって、「ちょっとトーンダウンした方がいい」みたいなことを言われたと、釘を刺されたということですね。要請があったのか助言があったのか、日本のメディアもどういう表現なのかは、真相はよくわかりません。はっきりしていることは、日本の側からすれば、トランプに梯子を外されかかっているということが表に出るとこれほどまずいことはないので、一生懸命「そうではない」と言いたいんだろうと思います。

ただ外交的に見て、トランプが習近平と話した後に高市さんに電話をして、台湾問題について何かしらの助言であろう。ましてや要請とか釘を刺すとか、その行為自体が明らかに米中が共同で日本を管理し始めていることです。これ、右翼が怒らないのがおかしい話です。台北追随でここまで来て、トランプの威を借りて中国に対して威張れると思ってワーワー騒いでいた結果、いつどの段階でトランプに梯子を外されるだろうか。これも私は当てちゃったんですよ。絶対そうなると思ったんですよ。それはトランプの政策で変わっている部分があるからです。

中国側とアメリカ側は、いわゆるG2です。2カ国で東アジアを管理していこう、場合によっては世界のことについて話をしていこう。G7とかG20ではなくて、もうG2の時代だと。トランプ自身が、初めてアメリカの大統領として最近「G2」という言葉を使った。日本の外務省からすると真っ青ですよ。日米安保村の人たちは、とにかくそれだけが避けたくて、日本の頭越しに習近平とアメリカの大統領が握手することが一番怖いわけです。そのために一生懸命「反中反中」と言ってアメリカに縋りついて、「いやいやアジアは日本を通じて」みたいな感じでやっていた。今やニクソンショック再来のトランプショックが見え始めるところまで来ている。

それは、中国の方がアメリカにとっては大事で、緊張関係はあるけれども、中国と直接やる。その時に日本が変なことをやると困るから、ということで、日本を共同管理する方向に移っているわけです。

だって順番が大事で、トランプと習近平が話してから、とにかく「俺、中国とうまくやりたい時だから、ちょっとおとなしくしてよ」と高市に電話をしている。これは外交の失敗以外の何ものでもありません。

だって中国相手に戦争するなんていう無理な話、あるわけないじゃないですか。1940年代に中国に勝てなかった国が、今中国とやって勝てるわけがない。中国は人口が10倍あって、GDPが4倍に迫っていて。向こうは核保有国で、こっちは島国で原発54機揃えていて、食糧さえまともにまかなえない国です。これ、好戦的な抑止論者が言う「継戦能力」というやつ。日本には継戦能力がないわけです。

敵基地攻撃ミサイルは、敵のミサイルをピストルで撃つ話です。中国が何千発もミサイル持っている時に、撃ってきた全部にピストルで当てて落とせますか。そもそも、そんなにあるわけないです。だから長期的に戦争ができるわけはない。一発二発で決まって終わる話じゃないわけです。エスカレートするかしないいうのは、こっちが決定することではなくて、第二次世界大戦の時にあれだけやって、悲惨なことになった。むやみに戦線広げて補給ラインが全然なくて。今も補給ラインも産業力もないのにこんなことになっている。

これは憲法学者の石川健治さんに教わったんですれけど、憲法9条の第2項に「陸海空軍その他の戦力を保持しない」とあります。「その他の戦力」について、私ずっと謎だったんですよ。だって陸海空軍以外に何があるのか。なんで「その他」なのか。「その他の戦力」は、産業力のこと、軍産学複合体のことです。石川さんに教わった。つまり、戦前の帝国大学の時から東大の工学部は陸軍とべったりになって軍事研究をやって、産業体がそれを作るということです。結局そういう意味での戦力がなければ戦争はできないわけです。

陸海空軍があっても、要は武器がなければどうにもならない。だから、この間の武器輸出だ、開発だ、あるいは軍産学複合体を作ろうとして、日本学術会議を潰して軍事研究に誘導しようとやっているのは、一生懸命、戦力を作ろうとしているわけです。

安全保障のジレンマというように、こっちが抑止力を高めようとしたら、向こう側だって「なんかやる気だな」と思ってやるわけです。日本がかつてパールハーバーを攻撃したように、準備が整う前に叩いた方がいいということが起きる。ウクライナだって戦争になったのは、別に9条があるからウクライナがロシアに攻められのではなく、ウクライナは軍拡をしていたわけですよ。だから、下手な軍拡は、やった方がやらないより怖いんですよ。

例えば、どこか治安が悪いところに行って、例えばアメリカみたいに銃を規制していないで危ないところだから、「自分も銃を持った方がいいのかな」と思う人はいないでしょ。武器を持った方が安全になるなんてヤクザに、「この辺ヤクザの抗争があるから自分もどっちかに入ろう」みたいな感じです。おかしいじゃないですか。その辺の発想が完全にずれている。やたらとこう好戦的なモードになって、なんとかかんとかやってこうというような形になっているのが、恐ろしいところだと思います。

極めて脆弱な政権基盤が危険性を呼んでいる

高市さんは政権基盤が極めて脆弱です。見ていて奇妙なのは、「高市総裁になってどうなる」と言っていたのに、総理になったら高市さんが閣僚に指示を飛ばしたとかね、非核三原則を見直すとかとむちゃくちゃなことです。今までで考えたら一内閣でできないことを、3つも4つもドンドン言うじゃないですか。それが「こういう方針でこれからいきます」みたいに大本営発表で新聞とかに出ると、「やばい、起きるのか」と思うけど、よく考えたら起きちゃいけないし、起こせるはずが本当はないわけですよ。

だって、3人の維新からこぼれ落ちた人たちを入れて、ようやく衆議院で過半数に達したというだけの状況ですよ。維新は「連立」と言っているけれども、政治学的には連立とは言わない。閣外協力だから。行政府に大臣とかを出してないと連立とは言わない。維新はそこに行きたいのだろうけれども、いきなり行くと困るから、まだ中途半端に閣外協力で「定数削減やらないと抜けるぞ」とかって言って、おいしいとこだけ取ろうとしている。政策を無理矢理引っ掛けて飲ませる。だけど、政府で一緒に答弁する側には立ってない。だって答弁立てるような人、いないじゃないですか。どいつもこいつもスキャンダルだらけだから。大臣になると、政党の幹部と違って、国会で答弁させられます。だけど、そこに出せるような人がいないから、今のところ一番無責任な状況になるわけです。

安倍さんの時は、決して民意で選ばれているわけではないけれども、選挙制度のマジックで衆参両院の過半数を軽く超えて、場合によっては3分の2になる中で、右傾化を進めた。長期政権を築きたいから、バカ派の方向よりタカ派の方向にどんどん行っていた。モリカケだなんだと出てくると、ドンドンとアメリカにくっついていくことで、なんとか政権を延命しようとしてきたわけです。安倍さんだって結局、働き方改革や外国人労働者だとか、あるいはインバウンドの観光業とか、全部安倍政権からやっていることです。そういうことを優先させて、結局ナショナリストだとかそんな部分は、ちょっと横に置いておいていた。

ところが、高市さんは、政権基盤が弱いから、維新だ、あるいは参政党だ、国民民主だという形で、とにかく前に突っ込んでいくことでしかできなくなっている。挙句の果てには、公明党がもういないから、次の選挙で普通に考えたら去年の選挙よりも票数は減る。そこに至る前に何とか無理やり盛り上げて、なんとか政権枠組みを作っている。まだ途中で、できていないけれど、逆にその怖さがあります。

公明党がいなくなった分だけ身軽になったのも事実です。公明党はブレーキにはならなかったけれども、私は「重い燃料」って言っています。重い燃料だから、スピードはそんなに出なかった。けれども、今その燃料がなくなったから、単に惰性でも坂を転げ落ちているような感じになって、まさに暴走列車みたいな感じでブレーキも何もない。止まったら終わりみたいな感じだから、とにかく「突っ込め突っ込め」と続けているわけです。大将が突っ込んだから、周りの人たちも慌てて「大将をとられたらまずい」と一緒になって突っ込んでいる。もう完全に大日本帝国じゃないですか。完全に終わりが始まっている感じで、相当まずいと思いますね。

「責任ある」という経済がまずい

そろそろ話題になっていますけれども、経済がまずい。「責任ある積極財政」とか「責任ある」とつければなんでも言えるみたいな感じになっています。後先考えずにジャブジャブやっている。防衛予算だって使い切れないのにバンバンつけている。使い道があるのではなく、とにかく先に使う約束をして本末転倒になっている。トランプに媚びを売ってアメリカの武器を買うとか、とにかく他の国にも圧力になるようにトランプの優等生になろうとしてやっている。合理的に戦争を考えた時の準備をしているのかと言ったら、そんなことはできていない。それがいいとも思わないけれど、それさえできてないわけです。

戦時中であれば、「次にここで勝ったらここから賠償金が取れる」と思っているのかもしれないけれども、そういう状況にはないわけです。もう財政破綻が起きる、あるいは今の円安がさらにどんどん安くなっていく。そうすると食料・燃料がさらに高くなることが目に見えている。そんな中で、中国にも経済制裁、レアアースだって寸前まで来ていて、まともに考えてできるわけがない。

経団連会長が中国大使に会いに行ったと言っている。それもいいけれども、まず高市に会いに行けよという話です。自民党にしたって官僚にしたって、多少ものが分かる人だったら、完全にまずい状態だというのは分かっているはずです。ところが、マスコミの沈黙はこんな具合で、恐ろしいですよね。

好戦的な民主党、最終的には金次第の共和党

アメリカの話です。アメリカのバイデン・ハリスがなんでトランプに負けたのというところで、まずお話をしたい。日本の状況と重なったり、日本に参考になりそうなところと、状況が違うから気をつけなければいけないところがごちゃ混ぜになっているので、簡単な結論が出る話ではないことはご承知ください。

ただアメリカで、なぜトランプがしっちゃかめっちゃかやれるような状況になったのかということです。まず、第一政権であれだけ狂っていたのに、なんで第二政権ができたのか。しかも今回は選挙人代表だけではなくて、有権者票でもトランプがハリスを上回っている。それはとにかく争点の問題なんですね。

争点の一つの大きな問題は、民主党に特徴的ですが、バイデンはよく言えば人権外交とかそういうことをやります。けれども、悪く言うとリベラルイデオロギーを振りかざして好戦的なんですね。共和党は、最終的には要はお金です。トランプでも結局はお金の話です。だから日本の自民党政権は、ずっと民主党政権よりも共和党政権の方が好きなんですよ。いろんなことを批判されても、結局共和党の側にうまく貢いだり、譲歩をしたりすれば、共和党の側はお金にしか関心がないから、そこでなんとか妥結ができる。ところが民主党の側は、いろいろうるさく人権だとか民主主義だとかという条件を出してきたりする。求めているものは同じで「結局、なんだ俺らに従えって話なのに説教たれる」というので嫌われるわけです。

だから、そこはアメリカの二面性なわけです。説教たれて金をむしるか、説教たれないで金をむしるか、どっちか。わかりやすく言うとそういう話です。

トランプが意外と東アジアで人気なのは、その理由なわけです。「こいつより率直だな、正直だな」というのが分かる。バイデンとかハリスが出てくると、説教まで垂れてお金を持っていかれなきゃいけないのか。腹が立つわけです。そこが、アメリカ人の人たちが分かっていないところで、実際は、少なくとも東アジアなんかでは、はみんなよく分かっているところだろうと思います。

大義名分として「自由だ、民主主義だ」と言いながら、戦争のやめ方を知らない。結局、自分たちは参戦するわけではなくて武器を売って、もちろんウクライナ人たちにとってみれば自存自衛のための戦争なのかもしれないけれども、アメリカから見れば代理戦争なわけです。

実際にバイデン政権の国防長官も口をすべらしたけれども、「ウクライナ戦争でロシアを弱めるんだ」と。そういうのは本音としてあります。それだけでやっているわけではないけれども。だから単純にウクライナの応援をすればいいのかと言ったら、そこが本当に難しいところです。どうやって休戦を勝ち取って、その中から撤退を勝ち取っていくのかが現実的にあったところを、バイデンはそういうことは全く考えずに、とにかく突っ込む突っ込む。それで、引っ込むことができなくなった。それが一つにはアメリカの有権者から見れば戦争ばっかりやっている。アメリカではForever Warという表現があります。永遠戦争みたいな。要はアメリカのリベラルエリートは、とにかく終わりのない戦争を続けるんだと。実際そういう感じなわけですね。

だからアメリカというのは、戦争を始めるのは始めるが、終え方を知らない。そんなことがあるからほとんど勝たない。冷静に考えてみて、「アメリカがついているから大丈夫」みたいなのが完全に間違っているのはそこです。つい最近だってアフガニスタンから撤退して、タリバンの天下になった。その前だってベトナム戦争があり、朝鮮戦争だってあるわけです。台湾のことだってそうです。結局アメリカが入ったからって、特にアジアにおいて、最後までアメリカがクリーンヒットで勝ったこと、それは原爆2つ落としたり東京大空襲だったり、人道的な犯罪をたびたびやって勝った日本に対してしかないんですよ。

それ以降は、基本的にアメリカは中途半端な状況で終わっている。その後の面倒なんか見やしない。儲けること以外は。今となったら領土的な関心もなくなっているから、マーケットだけ、資源だけ抑えればいい、そういうのがイラクみたいな状態になるわけです。だから、アメリカがいれば守ってくれるなんて、もう寝ぼけるのもいい加減にした方がいい。

両党の移民政策でトランプの方が「本当に見える」

気をつけないといけないのは、日本でも今「外国人政策」みたいになっている。外国人政策も、ほんと腹が立つフレームです。もともと外国人政策なんて政策あるわけない。だって、「外国人政策」というのは、すごい排外主義的な政策の名前です。もともと日本では「移民政策はありません」ということの言い訳で作っていた。

移民政策は、普通の国はあります。日本は、自民党の下で「移民は受け入れません。純血を守ります」みたいな感じで、「移民政策はありません」と言った。実際には安価な労働が欲しい、だから裏口の外国人研修生だとか、昔の上野公園にいたイランの人とか、そういう具合で、実際には裏口で入れるのもバブルの前からやっている。その時にいないはずの人たちがいる。それを「外国人との共生」として、「外国人政策」という名前として作りました。

移民政策がないから「外国人政策」というのがあった。現実に受け入れているから、それをどうするかという政策だった。それが、今や急に排外主義的に「外国人問題をどうしますか」みたいな話になっている。これは本当にひどい話で、結局「外国人政策」ということで、野党までが「外国人政策どうしますか」とやると、アメリカの民主党の二の舞になります。

アメリカだって、不法移民だと言っている人たちって、歴代の政権が、必要だから裏口で入れてきた。それでなければ経済が成り立たないような仕組みになって、それはそれで大きな問題だけれども、それを急に悪魔化して問題だというようになってきた。ハリスは「私は検察官で、もともと悪い人たちをいっぱい牢屋に入れて、悪い移民は入れていた」という感じになって、「いい移民と悪い移民」みたいな話になって乗っている。小野田紀美とどう違うのかという話です。そういうようにリベラル側が乗っているので、支持が得られないというのも明らかな現実です。

これは我々にとっても参考になるところだと思いますが、トランプの方が「本当に見える」というのが恐ろしいところです。日本でも、石丸だとかNHK党の捕まった人もいて、いろいろ出てきました。普通の我々の感覚からは「なんでこんな詐欺師みたいな人たちに引っかかるの」と思うけれども、欲望をむき出しにしたり、タブーを破ることで、向こうの方が本当っぽく見える。それに対して我々は、建前だけを言っていて嘘っぽいと見られる状況があります。

トランプみたいに全く何の知性も感じられない言葉を使って、最近でも記者会見で女性記者をブタ呼ばわりしたりする。日本ではあまりニュースになってないけれど、アメリカではそれを効果的にやっている。それをやることで、一部の人たちは「トランプは確かに品がないし、一線越えているけれど、逆に言うと自分を飾ることなく本気で政治をやっている」と思っている人たちがいます。そこに妙な信頼感が生まれて、「あっちの方が真正だ、正直だ」となる。メキシコとの間に壁を作る話もそうですが、ポイントは、公約を文字通りやるとは思ってないけれども、言っていること自体は本気だ。「こいつ、女性を憎悪している」とか「本気で移民を憎悪している」という、そこの部分を評価している人が投票しているのです。

今起きてることの怖いところは、リベラル左派のまともなような人たちが一生懸命考えて真面目に施策を出しても、それを満額回答で出すのは難しい。民主党政権の時も、東日本大震災があったりしても、そんな勝手にできるわけではないですね。いわゆる埋蔵金の実態だってわからない。子供手当てを何万円と言ったのにこれしか出さなかったみたいなところで叩かれる。一方でデタラメを言って、実現しないのに、なんとなくOKってことになっちゃう。そういう非対称性があるのは、その辺の力学が働いていることがあります。

それから何が学べるのかと言ったら「ああはなりたくないよな」としか言いようがないけれども、ただやっぱり何か考えなければいけないところがあるわけです。

つまり、いい政策を出してそれを慎重に伝えれば、真面目な人には分かってくれるみたいな世界に、我々は生きてはいない。政治がそういうような前提や常識の上で成り立たなくなっている。もちろんTikTokだ、YouTubeの動画だ、フェイクニュースだとかいろいろあるわけです。そういうのも含めて我々は考えなければいけないところがあると思います。

「金」を優先して中間選挙で勝ちたいトランプ

とにかくアメリカの分断はかなり深刻なので、少しだけ触れます。アメリカの地図ですが、州レベルで何が起きているか。今回もニューヨーク市でマムダニが勝ったとか、州選挙でニュージャージーとバージニアで民主党が勝って、女性の知事が誕生しました。これからも反転攻勢が起きるのではないかと期待が高まっているところはありますが、一直線にいく話ではありません。というのは、アメリカは本当に二極化している。日本の比ではない二極化をしていて、どこに住んでいる、どの州によるかで全然違います。

私はハーバードにいて、マサチューセッツ州、ボストンのそばです。あそこはリベラルのところだから、州議会の上院下院、州知事、全部を民主党が抑えています。州議会議員なんて、上院の75%を超えるのが民主党、下院議員だと85%ぐらいだったかな。ほとんど民主党の一党独裁です。カルフォルニアも同じです。一方では民主党が全部抑えているとろがあれば、共和党が逆に全部抑えているところがあります。50州のうち11州しか、知事・議会の上院下院が両党で分かれているところがありません。大統領選挙の時もそうで、青い州、赤い州で、どちらかが抑えているところは、最初から相手にしていないわけです。

問題はスイングステートと言われるような未決のところで、この辺の投票者がターゲットです。例えばガザの戦争について、バイデンが何もできなかったことによって、たまたまアラブ系の移民が多い選挙区で全然票が取れない結果、ここを落としたみたいなことが起きます。ボルテージが上がって反トランプのところはもう反トランプだけれども、逆に親トランプでも民主党なんてどうしようもないと思っているところがあって、その間の対話は全くありません。どっちかをどっちかにひっくり返すなんて、ほとんどできないようなところがいっぱいになっています。そうすると、この先どういう政治になるのかはかなり見えないところがあります。

来年11月に中間選挙があり、上院の3分の1と、下院の選挙があります。今トランプは、上院も下院も多数派を握っている。今、最高裁も抑えて、大統領も抑えているから、デタラメをバンバンやるわけです。最終的に法廷闘争で負けたって、その間兵糧攻めにできるから、ハーバードも含めて大変なことになっている。それを維持するためには中間選挙で何とか上院と下院の過半数を維持したいとトランプは思っている。中国との間で自分は上手いディールをやって、アメリカの雇用を増やしたとか、アメリカの経済を強くしたということが言いたいわけです。トランプが4月に中国に行くと、来年の年内に習近平がトランプに会いにアメリカに行くことが電話会談とかでも確認されています。

その中で高市さんがあんなことをやっていて、トランプが高市さんの応援をするわけがありません。その辺のずれ方、見えていなささは、もうすさまじい。逆に言うと外務省だとか防衛省だとか、あるいは国際政治学者とか、一体何をやっているんだろうと私なんか見ていて思います。下手をすると梯子を外される方向に向かいつつあることになります。

あの高市さんの答弁だって、アメリカが介入しなければ、「どうするの」という話になったわけです。アメリカは、まあ介入するわけがないですよ。軍需産業があるから、危機を煽って武器を売っていこうとしているから、日本の在庫一掃みたいに古い武器が売れるわけです。それを喜んで買うバカがいるから売るということでやっているわけです。実際のところ煽ることは煽るけれども、トランプはその辺がバイデンと違うところで、結局「金」なわけです。

ニクソンショックは、もともとニクソンもとんでもない右翼の共和党です。実際に捕まったわけだし。今はトランプみたいなのが出てきたから、ニクソンとかブッシュとかレーガンとか、みんな「昔は良かった」みたいになりかねないです。そのニクソンがキッシンジャーとともに中国と国交を結んだわけです。キッシンジャーだって、ベトナム戦争の戦争犯罪人じゃないですか。そういうことを何でやるかと言ったら、結局「金」なわけですよ。金のことを優先させる人たちの方が、戦争をやらないところがあるわけです。武器は売りたいけれども、実際に経済がうまく回らなくなるような経済的損失がある。まして、レアアースをまた止められたら、アメリカなんて持たなくなるわけです。そこは、何とかディールをつけたい方向に移っていて、日本が浮いていることになると思います。

日本でも琴線に触れる市民運動をもう一度

そんな中で我々が一体何ができるのかというところに、戻ってくるわけです。一つには野党をどうにかしないといけないけれど、正直頭が痛いと思います。私、去年1年間いなくて本当によかったなと思っていますけど、居たって何もできなかった。それぞれの政党が大きな問題を抱えていて、いろんな無理が出てきたのがぐちゃぐちゃになって、政党間もぐちゃぐちゃになっている。結局、社民党だって常に期待大になっていて、共産党までそういうふうに向かうような状況になっている。立憲民主党がずっと右にいっているみたいな感じです。やっぱり左派がもう一回なんとか持ち直さないと。立憲のリベラルは、左派が強いと左側に引っ張られるからなんとかなるけれども、中道とかって言ってどんどん右に行けば、一緒になって中道が動いたみたいな感じになりますから、当てにはならないわけです。そこは、何とか左側を強くしないとどうしようもないと思います。ただ短期的に政党とどうにかするのは、なかなか難しいですね。

問われているのは、市民社会の側でどれだけもう一回立ち直していけるかということだろうと思います。この場で皆さんに「頑張ってください」みたいな話で申し訳ないけれども、どうですかね。もうちょっと頑張らないと、どうにもならないところではないかと思います。結局、こっち側もこの間のことで疲れてきている。とにかく罵倒されて揶揄されて正当性を剥奪されている。だから、どれだけ右側に狂っているかで注目を浴びるような状況だから、どう反転させていくのかと、本当に難しいと思うところです。

最後に一つだけ申し上げると、後先を考えないで突っ込むのは、右側が盛んにやっていることです。これは破滅への道だと思うから、それを真似することはできない。デジタル化した時代だなんだと言われても、結局メッセージの内容自体はアナログなんです。それは、どういうストーリーが語られているか、どういうところが人間のレベルで共鳴しているか。若い人の言葉で言うと、「エモい」かどうかなんですよ。

「エモい」って言って、どれくらいわかる人いますか。私もよくわかってないけれど、エモーションから来ていて、要は感情というか、琴線に触れるというか、ちょっと昔の言葉で言うと「臭い」っていうか。人間のレベルで触れるかどうかというところだと思うんです。どれだけ本気が見えるのかどうか、というところじゃないかと思います。

2015年の運動があれだけ大きくなった一つの理由は、あれを止めるのは普通に考えたら難しかったけれども、「もしかしたらできるんじゃないか」と思った。若い人たちも年配の方たちも含めて、本気で毎日毎日「とにかく止めるんだ」と言ったのは、「ひょっとしたらひょっとするんじゃない」ということです。やっぱり何か歴史を作っている感じがあったと思うんですね。

平和への思いをそれぞれの肉声で語る

今は参政党みたいなのがそんな感じになっている。それは我々の側からすると、非常に不本意なことではないかと思います。これだけ本気でやってきていることなのに、なんかこう文切り型だったり、昔の人が昔のことを言っているみたいに取られていて非常に不本意なところだと思います。だけど今、ここまで戦争の危機が迫ってきている状況になっている。首相を含めて政権が、とにかく突っ込むことしか知らない危ない状態になっていることで言うと、私は回り回ってやっぱり平和主義をストレートに訴えるのがいいのではないかと正直に思うところです。

立憲主義は大事ですけれども、結局形式論、法的な議論なので、我々が立憲主義をこの間も訴えてきたことの一番大事なところは、二度と再び戦争してはいけないということです。それをより多くの人に伝えるために立憲主義みたいな綺麗な言葉で言った。改憲派も護憲派も「やっぱり憲法は守らなきゃダメでしょう、立憲主義は守らなきゃいけないでしょう」と大同団結を図っていたところがあります。別にそれを捨てるとか、それがもう終わったということは言うつもりはありません。けれども、何が足りなくなっているかで言えば、やっぱり平和への思いを、どう揶揄されたりどうバカにされたりしても、それぞれの肉声で語ることが、私は大事なのではないかなと思っています。

もちろん年齢によっても違います。皆さんの中でも実際に戦争体験がある方は、そんなにいないだろうと思います。けれども、私は1970年生まれですが、戦争の傷跡というのを見ながら育っているというのは、実感としてあるんですよ。1970年代、下手したら80年代まで、日本の、例えば新宿西口で傷痍軍人が物乞いしていた姿を、子供ながらに見て覚えています。当時見ていたアニメの主人公がほぼ孤児設定になっている。やっぱり戦争が残した傷跡は、戦争が終わった途端に終わるわけではないですね。私はそういう意味では、自分自身も戦争体験を共有していると思っています。それがなければ絶対に戦争を始めないといけないとなります。要は、全く異なる他者でいろいろ考えの違いがあり、批判したい思いもあるけれども、そこと共存していく道を選んでいくということ。問題があるなら、話し合いながら先送りしていくこと。そのことに何をバカにされる必要があるのだろうかということです。これを我々が、もう一回本気で訴えることが大事ではないかと思います。

傍観ではなく前にすすもう

私は、学者として政治学が専門なので、できるだけ分析して、何か絶望的な状況についても「なぜ絶望的なのか」ということを理解するところから始めようと思っています。自分で言うのもなんですけど、そこそこ頭いいんですよ。だけど、一番頭がいいかと言ったら、悔しいけれど一番頭ではないですね。一番頭のい
い人たちはあんまり役に立たないんですよ。一番頭いい人たちというのは、先まで読めるので、下手をすると「やらない理屈」を見つけるのが上手ですよ。だからやる前に降参してしまう。

だけど、歴史を動かしてきた人たちは、バスチーユ監獄に突っ込んだ人とか、マーティン・ルーサー・キングと一緒に歩いた人とかです。それは、どこかで負けるかもしれないけれど、「やるか」というところで頑張ったわけです。実際に歴史を動かす人たちは「やらない理由」を見つけるよりは、散々考えて悩んだ挙句「うーん」と思いながら、前に進むのか進まないのかというところで分かれてくると思います。今こういう状況になってきたら、やっぱりもう一回踏ん張らないと、声を上げないといけない。

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