私と憲法292号(2025年9月25日号)


「戦争する国」へまっしぐらに進む政府・「防衛」省

石破自公政権は衆院選と参院選の敗北(東京都議選でも)で行き詰まり、退陣することになった。内外に重大課題が山積しているにもかかわらず、参院選の投、開票から秋の臨時国会まで、まる3か月近くの政治空白をつくり、くわえて、この中で私たちはまたも自民党の党首選による1か月近くの政治ショーを観劇させられている。この事態が物語るものは、自公政権成立の1999年から数えても四半世紀にわたる(民主党政権の3年余はあったが)自公連立政権の終焉であり、政治の混迷・流動化の時代の到来だ。

戦争準備と一体の「スパイ防止法」の企て

トランプ米大統領はこの5日、国防総省を、「戦争省」と呼ぶ大統領令に署名した(正式な改称には連邦議会の承認が必要となるため、当面、国防総省の「第2の名称」として追加する形になる)。大統領令は「防衛だけでなく、わが国のために即座に戦争を遂行する意思を明確にする」としている。

このところ、日本もそうした「戦争する国」に向けた動きが進んでいる。

戦争の準備と関連してこの秋の臨時国会では「スパイ防止法」案提出のうごきが再燃しそうだ。参院選で議案提出権を得た参政党は、臨時国会に向け維新の会や国民民主党などと連携しながらその提出を目指している。参政党の神谷宗幣氏は、参院選中の演説で公務員をやり玉に挙げ、「極左の考えを持った人たちが社会の中枢に入っている。極端な思想の人たちは辞めてもらわないといけない。これを洗い出すのがスパイ防止法だ」と語った。神谷氏は、戦前の治安維持法を「悪法と言うが、共産主義者にとって悪法だろう」とうそぶいた。

戦後、このトンデモない弾圧立法への反省から日本国憲法には「思想・信条の自由」「信教の自由」「表現の自由」などが規定された。

しかし参政党の「新日本憲法(構想案)」にはそうした人権規定が一切ない。スパイ防止法案は中曽根康弘政権下の1985年に自民党が「国家秘密法案(スパイ防止法案)」を提出し、国会内外の反対で、86年に廃案に追い込まれた。その後、自公政権は「国家秘密法案」よりも秘密指定の対象を広げる「特定秘密保護法」を2013年に閣議決定し、2014年12月に施行した。今回のスパイ防止法案はこれをさらに強化しようとするものだ。先の参議院選挙では、維新の会、国民民主党、参政党などがいずれも同法の制定を公約に掲げた。自民党も「政策インディックス」に掲載し、成立の構えだ。

中国封じ込め戦略、「南西シフト」から全国化へ

直近の国政選挙の2連敗で、従来自民党など改憲勢力がくわだててきた憲法審査会を舞台にした明文改憲による戦争合憲化の道が容易でなくなり、壊憲派はいま明文改憲を待たずに具体的な戦争の準備を進める路線に舵を切っている。中国封じ込めを念頭に置いた自衛隊の「南西シフト」戦略に従い、西日本・九州などを中心に軍備強化の動きが急速に進んできた。この動きはいまや北海道も含め全国化している。

 防衛省は2018年に長崎県佐世保市の陸自相浦駐屯地に「水陸機動団」を発足させた。これは「敵」に占領された離島の奪還の任務を担う部隊で、24年に同県大村市の竹松駐屯地に3つ目の連隊を置き、約3000人規模の大部隊になった。これに対応して有事に水陸機動団を輸送する「足」となる航続距離の長い輸送機V22オスプレイが25年7月、佐賀市の陸自佐賀駐屯地に17機が配備された。

 「有事」に「敵」の艦艇などを攻撃する地対艦ミサイル部隊も、奄美大島(鹿児島県)や沖縄本島、先島諸島(沖縄県)などに続き、25年3月に大分県由布市の湯布院駐屯地に配備された。防空面では、25年8月に宮崎県新富町の空自新田原基地に最新鋭ステルス戦闘機F35Bが配備された。垂直離着陸が可能な海自護衛艦での運用が想定されている。これは専守防衛下では保有できないとされてきた事実上の空母だ。鹿児島県西之表市の馬毛島では2本の滑走路を備えた空自の大規模な基地が建設中で、これは自衛隊のF35Bや水陸機動団、米軍の空母艦載機などの訓練拠点となる。

際限なく拡大する軍事予算

政府は8月12日、安全保障環境の急速な悪化を踏まえるとして、2022年策定の安保3文書の「国家防衛戦略」と「防衛力整備計画」を前倒しで改定する方向を打ち出した。今秋にも与党内で議論を始め、来年末の閣議決定を目指している。この中で現在の「安保3文書」で国内総生産(GDP)比2%を目標としてきた軍事関連予算を将来的に積み増ししようという狙いがある。

9月末にまとめる来年度の概算要求では、防衛費の大幅な増額が打ち出される。安保3文書など現行の整備計画で、27年度までの5年間で約43兆円と定める防衛費の枠を超える増額ペースとなる見込みだ。防衛省は8月末、2026年度国家予算の概算要求で、過去最大額の8兆8454億円を請求することを決めた。トランプ大統領の米国政府はこれでも少ないと更なる大幅増額を要求してくるのは疑いない。

財務省に提出された26年度予算概算要求一般会計要求の総額は、過去最大の122兆円台になった。しかし、国の財政運営は厳しい状況が続き、歳入全体の4分の1を国債が占めているという異常な財政構図は変わっていない。これによって25年度末の普通国債の発行残高は、1129兆円にまで膨らむ。この国債依存の財政運営で、今次の国債費は32兆3865億円にのぼる。

政府は岸田政権下の22年策定の安保3文書における「新国家安全保障戦略」などで、以降5年間の軍事費総額を43兆円に増やし、歴代自民党政権の下で国内総生産(GDP)比1%程度の枠内で推移してきた軍事費を、関連予算も含めて5年後の27年度には倍増させ2%まで増額する方針を決めた。この結果25年度の軍事費はすでにGDP比1.8%に上った。

5か年計画の4年目にあたる来年は8.8兆円が予定されている。この中でドローンなど「攻撃用無人機」の大量導入に3千億円を計上、空と海上、海中で無人機を活用した沿岸防衛体制(SHIELD)の構築を打ち出した。沿岸部に侵攻してきた「敵艦」艇の迎撃や情報収集など多様な用途に無人機を投入するためだ。  昨今の世界では「無人機」は戦争の在り方を大きく変えている。無人機はウクライナやガザなどパレスチナの戦場に大量投入され、無差別攻撃に使われている。政府はこのロシアのウクライナ攻撃でも使用されている無人兵器の大量導入に乗り出そうとしている。

敵機地攻撃能力の保有の具体化

 今回の軍事予算では「敵」の射程圏外から長射程ミサイルで攻撃する「スタンド・オフ能力」の整備に1兆円以上を投じ、防衛省が開発中の国産長射程ミサイルを25年度以降、陸上自衛隊の健軍駐屯地(熊本市)、同富士駐屯地(静岡県)など全国6道県に配備する計画だ。

初の国産長射程ミサイルとして開発中のミサイルは健軍、富士などの「12(ヒトニ)式地対艦誘導弾能力向上型だけでなく、全体の運用開始を28年度から27年度に前倒しする。これらは艦船から発射する「艦発型」および航空機から発射する「空発型」の両方で、海上自衛隊横須賀基地を母港とする護衛艦「てるづき」、航空自衛隊百里基地(茨城県小美玉市)に配備予定のF2戦闘機での運用も並行して進めようとしている。

さらに、米国で発射実験済の、朝鮮半島や中国を含む射程2~3千キロにおよぶ音速の5倍以上の高速で変則軌道で飛行する「島嶼防衛用高速滑空弾」を25年度に富士駐屯地(静岡県小山町)特科連隊に配備し、次年度に上富良野駐屯地(北海道上富良野)、えびの駐屯地(宮崎県えびの市)に部隊を新設し、全国的に配備する計画がある。これらは南西諸島のみならず九州、その他からでも中国大陸を攻撃することが可能で、逆に言えば九州、その他が相手国からの攻撃対象となり、直接戦場になる可能性をはらむものだ。

敵」国の領域内を射程に入れた敵基地攻撃能力(「反撃能力」と称する)を備えた長射程ミサイルの配備が、従来から歴代政府によって憲法9条の許容範囲とされてきた「専守防衛」をさらに形骸化させる。これは自衛隊創設以来初めて敵基地攻撃能力を保有することであり、東アジア地域の緊張を激化させることは明らかだ。  このほか、攻撃能力強化のために米国から巡航ミサイルトマホークを25~27年度に、最新の「ブロック5」を最大200発、旧式の「ブロック4」を同200発導入することになっている。「旧式」とはいうものの現代戦対応型であり、取得費はミサイル分およそ1694億円と関連器材分847億円ほどをあわせて22540億円程度にのぼる。 軍事力の全国的で全面的な強化

ミサイル配備だけでなく、地上部隊も増強する計画だ。陸自第15旅団(那覇)は普通科(歩兵)連隊を1つ増強し、現行2300人程度から、3900人程度まで増強、師団に格上げする。2025年9月11日から25日にかけて、日本各地、とりわけ沖縄県内において実施されようとしている日米共同実動軍事演習「レゾリュート・ドラゴン25」(不屈の竜)は、沖縄など8都道県で実施される対中戦争、「台湾有事」を念頭に置いた、参加規模1万9200人(昨年は8900人)の大規模実戦訓練であり、軍事的緊張を高め、地域住民の生命、生活、平和に重大な脅威をもたらすものだ。

この演習では、与那国島への高機動ロケット砲システム「ハイマース」(HIMARS)や、米海兵隊の輸送機MW―22オスプレイ運用と陸自オスプレイの全国への展開、石垣島への無人地対艦ミサイルシステムネミシス(NMESIS)、対空短距離兵器マディス(MADIS)の戦闘訓練、さらには宮古島での12式地対艦ミサイルの輸送訓練、うるま市ホワイトビーチにおける無人艇(ALPV)の展開など、自衛隊を米軍の指揮下に置く最新兵器の実戦運用を目的とした日米ミサイル網統合を推進する軍事演習が行われる。

沖縄以外でも、オスプレイやCH47のほか、多数のヘリを展開しての負傷者輸送訓練、兵站訓練(補給品の空中投下訓練)、対艦戦闘訓練、上陸戦闘訓練などを計画されている。北海道では、九州・沖縄のミサイル部隊を束ねる第2特科団と米軍とが共同で実弾射撃訓練、また米軍の遠征前進基地作戦の中核部隊である第12海兵沿岸連隊(沖縄)と陸自12式地対艦ミサイル部隊とが指揮機関訓練をするなど、一層具体的な戦闘を想定した、米軍指揮下での日米が一体となる共同訓練が行われる。中でも、山口県の岩国基地において国内初となる米軍中距離ミサイル発射装置「タイフォン」(TYPHON)の展開は重大なエスカレートだ。「タイフォン」の展開を認めれば、米軍中距離ミサイルの日本配備に道を開くことになりかねない。日米拡大抑止が強化されるもとでの”核搭載可能”な中距離ミサイル配備は、米軍による日本-アジアでのミサイル戦争態勢の本格化だ。

また、嘉手納基地における米軍無人偵察機の「無期限展開」、海上保安庁による無人機の追加配備など、軍事的緊張の増大は日々現実のものとなっている。九州・西日本、そして全国で戦争体制づくりがすすめられ、このままでは「日本列島が米軍の捨て石」にされる危険性がある。

  一方、横須賀では英空母プリンス・オブ・ウェールズが寄港し、これに搭載されたF35Bが空母に改修された自衛隊の「かが」に初めて着艦した。イギリスとの戦闘機の共同開発、相互の軍事支援協定、初めての武器等防護がすすめられ、事実上の軍事同盟になっている。

これらの軍事力の強化について、中谷元防衛相は省内の会議で「我が国の安全保障環境は戦後最も厳しく、複雑になっている。防衛力・抑止力のさらなる強化に向けてスピード感をもって実施していく」と発言した。この安保環境の厳しさはだれが挑発し、つくり出しているのか。軍事覇権大国中国にその責任の一端があることを否定するのは不当だが、日米軍事同盟を柱として、西太平洋一帯で軍事力を強化し、挑発している中谷防衛相らの日米当局の責任はまぬがれない。

米国指揮下の「ワン・シアター」軍事同盟の強化

中谷元・防衛相は5月末、シンガポールで開かれた「アジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアローグ)」で、インド太平洋地域での多国間の協力を目指す海洋戦略「オーシャン」(OCEAN/One Cooperative Effort Among Nations)」構想を打ち出した。日米当局が従来から提唱していた「ワンシアター(一つの戦域)」構想の言い換えだ。

加えて日米以外の同盟国との連携強化も「自由で開かれたインド太平洋」の名のもとに異常な規模と速度で進められている。  それはASEANの分断策動にとどまらず、NATOとの連携や、例えば「日豪2プラス2」の開催と「もがみ型」改良型護衛艦の輸出なども決定され、すすんでいる。「日豪共同声明」では、互いを「同志的連携の中核的な柱」と位置づけ、「共同の抑止力を強化する」と述べた。そのうえでペニー豪外相は、「(両国だけで中国に対抗するには限界があり、抑止力の向上には米国を交えた日米豪3か国の連係が鍵であり、)会合で繰り返し触れたのは、我々の同盟国は米国なので多国間協力を進めようということだ」と強調した。

海上自衛隊は毎年、「いずも型護衛艦隊」を東シナ海、南シナ海等インド太平洋地域に半年以上派遣し、10数か国と共同訓練を進め、航空自衛隊はことし2月に日米豪共同訓練「コープ・ノース」を実施、4月には米比共同訓練にオブザーバー参加、7月にはグアムなどで米軍主催の多国間共同訓練をしている。陸上自衛隊も5月、米比合同演習に韓国海兵隊とともに参加、8月、日米豪共同指揮所演習を日本で実施、米・インドネシアなどとの統合・共同実動訓練をインドネシアでおこなっている。  トランプ米政権は日本を含むアジアの同盟国にも、北大西洋条約機構(NATO)が目標に掲げた国防関連費GDP比5%を基準に軍事費の増額を求めている。このままでは日本の軍備費拡大が急速に進むことは不可避だ。
 これらの異常な軍備拡張に国会審議の内外を通じて断固として反対し、反戦の世論形成をはかれるかどうか、いま立憲野党や私たちに問われている問題は深刻だ。
      (高田健 共同代表)

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長射程ミサイル能力向上型の配備撤回に向けて連帯を!!平和を求め軍拡を許さない女たちの会・熊本

事務局長 海北由希子

今年3月16日、共同通信がはじめて「長射程ミサイル能力向上型」の九州先行配備を報じた時、配備先とされたのは大分県の由布市と熊本市でした。そのニュースが流れた時はさすがに「軍都熊本」の県民にも動揺がみられ、今までには感じたことのない不安が沸き起こった様子でした。しかし、数日後に開かれた中谷防衛大臣の記者会見でそれはすぐにかき消されてしまいました。“長射程ミサイル能力向上型の先行配備先は未定です。配備先が決まり次第、速やかに地域住民に丁寧な説明をします” という発表をしたのです。それを全国の主要メディアが報じ、それを見た人たちの多くは、なんだ、そういうことだったのか、と軽く受け流してしまいました。

それから約5ヶ月後の8月29日、防衛相は初めての配備先を健軍駐屯地に決定したと発表しました。しかし昔から「軍都」と呼ばれ、自衛隊が身近にある熊本県民にとって自衛隊は見慣れた光景です。新たなミサイルが配備されると言われても、それが今までの生活にどう影響するのか良くわからないまま受け入れてしまう危機に面しています。

自分のすぐ近くに射程1000kmの長射程ミサイルが配備されることには興味がない人たちも、テレビやYouTubeで流れてくるガザのジェノサイドやウクライナの情勢は気になります。画面の向こう側の出来事は別世界の出来事だと思うからです。電源をオフにすれば消え、また見たくなったらスイッチを入れ、画面の向こうの世界を覗く。軍事ドローンがミサイルのように使われ、AIの自動認証システムを使ったドローンが対象物(人)を探しながら飛んできて、見つけたらミサイルが自動発射される。こんなことが実際の戦場で起きているのです。

でも多くの人々にとって、戦争は画面の向こう側の出来事であり、自分のいる場所だけはいつも平和なはずだと思っています。自分の家の裏庭に巨大なミサイルが置かれ、それが他国の軍事衛星から丸見えで、いつでも狙えるターゲットとしてロックオンされていても、それを自分事として感じることは難しいのです。「12式地対艦誘導弾能力向上型」という長射程ミサイルが配備されることになっている熊本県民だけでなく、全国の大多数の人々が同じ立場です。私たちは、既に画面のあちら側から見られる存在になっていることに気づかなければなりません。

熊本市東区の健軍駐屯地は住宅密集地の中にある面積65万㎡の駐屯地です。隣には市民病院があり、近くには小学校、保育園、幼稚園など、子ども達もたくさん暮らす地域です。1998年から「第5地対艦ミサイル連隊」が置かれ、いわゆる“台湾有事”の際の司令部となる「西部方面総監部」、妨害電波を発してドローン攻撃に対応する「西部方面システム通信群」も配置されています。現在、司令部の地下化など、地上が焼け野原になっても戦うための準備が進められており、本当に危険な状況です。

また、熊本県は国会議員が全て自民党という保守王国。木村知事と危機管理防災課の職員は「国の専管事項」と口を揃え、県民より国に従うのが自分たちの勤めだという態度です。危機管理防災課との意見交換会では「お国が決める」や「大臣が仰っている」などの言葉が何度も聞かれました。また、熊本には家族が自衛隊関係の人も多く、軍拡反対の声を挙げ難いと悩む声も少なくありません。だからこそ、「家族を戦争に送るな!」の声をあげようと呼びかけ続けています。

これから政府は、長射程ミサイルを全国6箇所に配備します。12式誘導弾3種、高速滑空弾です。ミサイルの量産体制にも入ります。そして忘れてはならな いのがトマホークの配備です。 「ちょうかい」の改造が急ピッチで進んでいます。このトマホークも、佐世保が先行し、舞鶴・呉・横須賀へ配備が進みます。私たちは既に体力も国力も疲弊しています。これらの流れを見たら「米国が一番日本を疲弊させているのでは?」と考えるのが普通だと思いますが、日本政府は「アメリカは裏切らない」と考えるのです。

現在、南西シフトによる琉球列島のミサイル基地化に、九州の長射程地対艦ミサイル、トマホークの配備。「対中国戦争」の恐ろしい状態ですが、残念ながら国民の危機感は弱すぎると思います。これは単なる「軍拡」ではなく、台湾海峡での有事を始めとする「対中国戦争」を想定した「大軍拡」です。

また、このような急激な「大軍拡」を推し進めることは、台湾海峡をはじめ、東・南シナ海でいつ軍事的衝突が起きてもおかしくない状態を作ってしまいます。 80年代、トマホークを始めとした「中距離弾道ミサイル配備」が、ヨーロッパの激しい軍拡競争を引き起こしたように、この日本の長射程ミサイル、トマホーク配備は、激烈な軍拡競争を引き起こしかねません。 ??今、私たちは、重大な危機にあることを認識すべきです。ぜひ、この長射程地対艦ミサイル、トマホークの配備に反対する声を広げましょう!

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映画「黒川の女たち」の問うもの

監督:松原文枝 製作:テレビ朝日
語り:大竹しのぶ ドキュメンタリー 99分   

今年は戦後80年ということで、マスコミはじめ各方面で45年に終わった戦争の検証が行われた。映画「黒川の女たち」は今も上映がつづいており、映画をテーマにさまざまな話し合い、意見交換が続いている。

日本の敗戦にともなって植民地国家である満州から引き上げる際に黒川開拓団の女性たちによるソ連兵への性接待の衝撃の事実は10年ほど前にテレビで報道された。その当時のテレビ朝日ディレクターの松原文枝と関わったスタッフらの継続した取材により作製された労作だ。日本の戦争責任と、戦後を生き抜いた女性たちの苦闘がつづられる。それは生き抜く厳しさでもあるが、あわせて人間らしい優しさと強さが、人間社会があるべき姿を問うものでもあるように思う。

映画の冒頭は黒川の風景を背景に佐久良太神社が前面に。そして戦前へ、満州への開拓団の募集と準備のなかで、開拓団のなかでは満州がどんなところなのか、家はどんな風に建てればいいか、などの話しが期待を含んでなされていた。

開拓先の満州では、しっかりと建てられた土壁の大きな農民の家があり、そこに住むことになる。回りの農地はトウモロコシなどが豊かに実る広大な畑だ。すでに農業を営んでいた中国人を追い払い、農地も家もそのままそっくり「開拓団」のものとして与えられた。開拓など必要がなかった。農地からは見事な農産物が収穫され、敗戦まで開拓団は日本の寒村とは違って豊かな収穫物との恵まれた農村に暮らした。岐阜県の白川町黒川からも650人余りが黒川開拓団として5年間の開拓団の暮らしを経験した。美しい中国東北地方の短い映像のなかで、日本の中国侵略の実態が描き出される。

日本の敗戦が近くなった1945年8月9日、ソ連は日ソ中立条約を破棄して日本に宣戦布告した。今年のメディアによる戦後80年回顧映像でも紹介されて明らかにあせているが、日本の占領地では、成年男子は徴兵されていて、占領地に残されていたのは女性や子ども、高齢者が占めていた。そこにソ連軍が侵攻し、また当然にも現地の中国人からの襲撃もあった。一方で関東軍は現地の人びとを残して日本への退却を進めていた。満鉄などの政府関連機関と関係者もこれにしたがって逃げのびつつあった。

ソ連軍の侵攻をまえに、黒川開拓団はソ連軍に助けを求めた。15人の未婚女性がソ連軍の「性接待」を提供する代わりに、開拓団はソ連軍に護衛をしてもらうことになった。18歳以上の未婚女性15人がソ連兵の性接待の犠牲を払うこととなった。

ようやく帰国した開拓団だが、15人の女性たちには性接待の事実に差別と偏見が注がれた。犠牲者の一人、佐藤ハルエは黒川を追われて、ひるがおの地で開拓者として暮らした。「満州にいるときよりも帰国してからの方が悲しかった」「私たちがどれほど辛く悲しい思いをしたか、私らの犠牲で帰ってこれたということは覚えておいて欲しい」と語っている。

今から10年ほど前にか、こうした事実がメディアで報道された。15人のうち、佐藤ハルエと安江善子が講演で語ったことがきっかけで広く知られることとなっていった。

黒川では満州からの帰国に関わる「性接待」の事実を検証する動きがでてきた。映画では黒川開拓団の遺族会会長である藤井広之さんの行動にも目をそそいでいる。藤井さんは戦後生まれだが、6人兄弟の上の4人は満州で亡くなった。犠牲者を何回も何回も尋ねて過去にあったことを聞き、次第に女性たちの思いに自らを重ねていく。広之さんの妻である藤井湯美子さんの思いも目をひく。広之さんに同行して、被害者の話をじっくりと聞きながら湯美子さんも一体感を作り上げていったのではないか。

性接待の事実は、ついに佐久良太神社の鳥居の前に碑文が建てられて、女性たちの被害の歴史が記された。

今ではカミングアウトする被害者が少しづつ拡がっている。残念だが、いつも元気で明るい佐藤ハルエさんは昨年1月に99歳で亡くなった。

私の友人には、満州や朝鮮からの引き揚げ者がいる。

多くは乳飲み子などでの引き上げで、親からは事ある毎にその大変な状況を聞かされた人もいる。しかし、開拓団のような人びとと、軍関係者や政府関連者やその裾野にいた人びととは、その困難さにおいて大きな違いが出ることも、この映画は語っているように思う。

また、ソ連軍の対応も驚かされる。仮にも社会主義国の軍隊が、しかも将校相手に「性接待」が交渉の材料にのぼるのか。社会主義国が世界の理想のように言われていた時代だ。「三大規律 八項注意」を掲げていた中国人民解放軍はどうだったのだろうか。

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第196回市民憲法講座 「市民運動のこれからを考える ~政治のデマにどう立ち向かうか~」

菱山 南帆子さん(市民連絡会 事務局長) 

(編集部註)8月23日の講座で菱山南帆子さんが講演した内容を編集部の責任で要約したものです。要約の責任はすべて本誌編集部にあります。

身近に迫る新たな戦前

去年の衆議院選挙で少数与党に追い込んだとはいえ、日本の軍拡化、新たな戦前、新たな戦中と言われるような状況は止まりません。西日本、九州、沖縄では、日々軍拡が進んで、九州や京都ではミサイル弾薬庫が出来るということが続いて、熊本なんかも本当に深刻な状況になっています。

Jアラートが鳴る中で何回も避難訓練をする。まさに新しい戦時化訓練、戦時化行動の訓練だと思います。こういったことを繰り返しながら、心の戦争の準備を始めていると私は思っています。沖縄や九州でJアラートが鳴って、頭を抱える訓練をしたって意味がありません。ミサイルが飛んできたら終わりだから、飛んでこないような政治をするのが政治の役割です。にも関わらず、飛んできたらどうするのかということばかりで恐怖を煽っていく。本当に戦争になるのではないか?みたいな、危機感の中、私たちの住む東側と、西とか南の方では、感覚のズレみたいなものがあるのではないか、というような気がしています。

数年前に鹿児島で話をした時に、鹿児島の馬毛島がミサイル基地を容認するとなった。基地を容認することによって、国から市にお金が入りました。そのお金を市が子どもたちの給食費に当てました。そのことでどういうことが起きたのか。学校で給食を食べない子たちが出てきた。先生が何々君、どうして給食を食べないのかと聞くと、お父ちゃんが基地反対派だからと言うんです。多分、親の中で、あそこの家は基地反対派のくせに、基地を受け入れたことでもらったお金で給食を安く食べられている。基地反対派は、食べる資格無いんじゃないか、みたいなことを親が言っているんですね。だから子どもたちの中でも、お前、給食食うな、みたいなことを言われると。そうやって、戦争というのはまずは横の分断から始まるというのがあるんだな、という風にすごく感じています。こういうことが、すでに九州の方では起きているんですね。 Jアラートですすめる住民の分断

私の住んでいる八王子でも、Jアラートの訓練に合わせて町内会では、バケツリレーをやったりしています。バケツリレーって何かと思いますね。その後は、タオル運動というのをやります。白タオル運動。生きていたら安否確認のために、Jアラートの訓練と合わせて玄関やベランダに白いタオルを吊るしてくださいというものです。この話を入間でしたら、入間は黄色タオルだと言います。どっちでもいいけれども、要は、この家はこういう訓練に積極的に参加する家か、参加しない家か、こういう政治地図が出来るわけです。こういった住民の分断が行われている。新たな戦前というのが、着々と私たちの暮らしの中で起きています。

Jアラートを鳴らすのなら、私はオスプレイが飛んでいる時にぜひ鳴らしていただきたいと思います。オスプレイが飛んでいる時の方がずっと落ちる確率が高いわけですけれども、そこでは鳴らさないで宇宙空間を飛んでいる時に騒ぐ。こういったことで、人々に軍拡の心ずもりをさせてきたと思います。でも政府は何も考えちゃいないわけです。本当に私たちのことを考えてミサイルが飛んでこないようにするためには、やっぱり平和外交だということに本当はなるじゃないですか。本当に飛んできた時のことなんて、本当に政府は考えてない。

老後資金のためにSNS使う 新・贅沢は敵

他にもSNSを活用した、新しい「贅沢は敵」みたいなものも広がっています。今の若い人たちのSNSで本当に多いなぁと思うのは、「丁寧な暮らし」とかですね。こういった節約生活を、綺麗な、キラキラした輝くような動画に出しています。こういうのを見ると、こんなに物価が高くて給料が安くて許せないみたいな気持ちが、スーッと引くという。なんか、豆苗を使って、もう1回水につけて育ててみようかな、みたいな気持ちになってきますね。そうやったらもうちょっと心が穏やかになるかもしれない。もうちょっと工夫してみよう。そういう風な節約動画がたくさん出ています。

私ね、これをかなり調べました。遡って、遡って、最初に誰が作ったのかを見た。これ、おそらく電通がやっている。あんな上手な動画、素人が作れるはずがない。こういうプロパガンダ動画みたいなものを作って、市民がそれを真似するわけですね。そうやって、日常生活の不満をかすめとっていく。なんとか自分でやりくりしながら、節約しながらやっていこう。

なんで節約しなきゃいけないのか。海外旅行に行ったり、女子会をして女子旅をしたり。マイホームや自分のマイカーを購入したりする。そのために節約しているんじゃないんですよ。老後の資金のためなんですね。老後、どうせ年金もらえないから。老後の資金を今貯めるために節約している。老後のために生きてるんですよ。こんなかわいそうなことないですよね。こういった、老後の資金を貯めるための節約動画というのはたくさんあふれています。これ、すごく怖いことだと思うんです。

例えば、本当に日本が本格的に戦争に突っ込んでいくとき、最初に、日本は何をしたのかというと、国防婦人会の節約運動だった。今、形を変えて、SNSを使った新しい節約運動が始まっているわけです。この私でさえも、そういう動画を見ると怒りが消えていきます。もうちょっと工夫して生きてみようかなみたいな、そんな気持ちになります。こういったことをずっと見ていると、私たちが、めっちゃ怒って、外で拳を振り上げている姿なんか見ると、何であの人たちは怒っているんだろうかというような気持ちになる。こういう巧妙な怒りのかすめ取りというのが始まっているわけです。ですから日本って、どんどん貧乏になっていくわけですよ。金を使わなくなりますから。

国立科学博物館だって、クラウドファンディングをしています。大阪の民族博物館も、クラウドファンディングをしている。全部、国立です。国立なのに、何でこっちがお金払わなきゃいけないのかという話じゃないですか。日本はもう、そういうところにお金を出せなくなってきているわけですね。

他にも、NHKのど自慢も、2023年までは生演奏でやっていました。今はカラオケです。NHKは、そうしたお金払をえなくなってきている。そういうとこまで来ちゃっています。

あとは、日本は戦争をして金を儲ける。日本製の武器を売りさばいて、人殺しに加担してお金儲けをする。そういった道に行こうというところまで来ていて、本当に危機感を持っていかなければならない。本当に今こそ過去を振り返らないと。あの時も、やっぱりちょっとずつお金がなくなっていて、あれもこれも、みんなが我慢しなければならない。我慢が美徳だと言われてきた。そういう時代に今若い人たちから突入しようとしてきています。こういったことで、若い人たちは怒りを奪われて、新たな戦時下に絡め取られているということを、まず皆さんにお伝えしたいと思っています。

代表の神谷宗幣という人物

参政党の代表の神谷宗幣という人物、一体どういう人なのかを、一度皆さんとおさらいしていきたいと思います。まず、「キリストの幕屋」とか、そういったところと関係性がある「ヤマト・ユダヤ友好協会」の理事をやっていて、さらに、森友学園系列の塚本幼稚園とかありましたね。その森友学園系列の学校の幹事もやっていました。他にも、統一教会の世界日報の記者一覧にも名前が載っていました。幸福の科学ともつながっていますし、ありとあらゆるカルトというカルトとつながっている人物なんですね。

以前は、自民党の地方議員もやっていたことがあった。でも何回か落選をして、彼は一度、議員とかいった政界から足を引いて、株式会社「意識改革」という、名前からして怪しいですけども、会社を立ち上げた。そこで怪しげな水や米や、パワーストーンとかね、そんなものを売っていた。YouTubeチャンネルで、危ない宗教じみたカルト的なものを、YouTubeで広告を出したり、動画なんかを出したりして、それで、信者、とりわけ女性たちの信者を作ってきた。

 振り返ってみると、例えば在特会――桜井誠らが作った日本第一党、幸福の科学の幸福実現党。もっと遡ってみると、オウム真理教が作った真理党。こういった、数々のカルトの政党がありました。皆さんに社会の不安を煽りながら、政界進出を試みたけれども相次いで失敗をしている。そういった状態の中で統一協会も、隠然たる政界工作なんかもしていましたけれども、安倍襲撃事件によって大4>受けて、動揺している。こういった中で、日本第一党や統一協会とも思想的に大きな違いが無い。

その神谷さんの参政党が政界進出に今のところ成功しているのは、何でだろうかということです。考えられるのは、マーケティングの手法ですとか、マルチ商法とか、ゲームネット空間。こういうワードが鍵になってくると思います。

参政党の立ち上げ当初からいた仲間、その方は今、袂を分かっています。その方が神谷氏のことを、「あいつは、政策はまるでダメだけれども、組織作りはうまい」と言います。これはやっぱり株式会社意識改革で培ったものだと思います。彼は極めて転身、変わり身がすごく早い。いろんなところに顔を出して、理事や幹事になって、でもどんどん、ころころ辞めています。ここはダメだな、こっち行こう、変わり身が早い。だから、節操が無いし、思想信条にも、とくにこだわりはないのではないかと思います。ただ、増やすことには、のすごい執着を持っていて、こっちがダメなら、また違うところで増やせばいいと、総合的な判断ができる。こういったところが、彼の中でありますね。

もう一つ、参政党は著名人とか有名人を使って広がりを作っ たわけではありません。地方組織、地方議会、そういったところの積み上げの上に、何だか勢力を築いていっている。ここも一つの大きな特徴で、あなどってはいけないところではないか と思います。ネットを最大に利用しながら、勉強会やパーティー、そういったものを開いて、人材育成をやってきた。神谷さんはゲーム感覚のような感じ、人材育成ゲームみたいな感じで人を増やしていったんじゃないかと思います。

神谷氏の歴史観とか世界観とかそういったものは、非常に浅くてペラペラなものなのは、皆さんもご存知だと思います。けれどもこの反知性主義が渦巻く今の社会では、逆にそれが功を成してしまっている。なんだか、彼のペラペラな世界観を理解してしまって、それで支持する方向につながってしまった。

これ本当に危ない傾向だと思っています。中身がないからすごく単純なんですよ。単純なものは分かりやすいじゃないですか。昔、小泉純一郎さんが「感動したー」とか、そういう単純な言葉を言うのがすごく流行った。もう、あそこから来てるんですよね。こういった単純明快なものが受けるというのは、危機的な状況が始まっているということです。

「たまごっち」みたいに育て上げる

今回の神谷さんみたいに、日本人ファーストとか言っちゃって、それは選挙期間だけですとか、ころころころころ変えるわけです。こういうところに、簡単に騙されてしまう人たちが数多くいることを、まず私たちは、しっかりと認識しなければならないんです。

今回、神谷氏の戦略の優れているとちょっと思ったったところは、やっぱり推しですね。要は応援したい政党が無いなら、俺たちで作ろうぜ、みたいな。政党DIYという言葉は、なかなかいい言葉だなって思ったんです。要は、政党バージョンの「たまごっち」みたいなものなんですね。「たまごっち」って30年前くらいに流行って、今また再ブームしてます。こういった、卵からだんだんいろんなものになってくるけれども、その育成ゲームなわけです。育てるためには、餌をやったり世話をしなきゃいけない。同じように、こういった参政党を育てるためには、党費や献金をいくらでもして、そうやって、自分たちが一緒になって育てあげる。まるで自分の子供かのように、この参政党を支持者たちは思っていると思いますよ。自分たちで作ったと思っているんだと思うんですね。こういう一体感も、まさにカルトの手口というところなんじゃないか、と思います。

草の根運動とリベラル市民運動の観察と研究

先ほど地方から積み上げて、そこの上に勢力があると話しました。彼はやっぱりもともと自民党ですから、自民党にいた時に教わった、どぶ板なんかを完全に活かしています。維新も、元々は自民党の人たちが立ち上げたわけです。やり方は、自民党をもっとえぐくしたような状態の感じですね。神谷さんもやっぱり同じことやっています。さらにですね、今はもう抜けたらしいですけれど、共産党の元幹部の秘書が参政党の中にいたと。だから、この人とこの人は注目しておけ、みたいなことを絶対言っていると思います。ですから私たちの運動、私たちの集会、そういったところに潜り込んで、いいワードだけは取っていく。そういったことを、かなり時間をかけてやっていたのではないかと思います。

神谷氏や他の人たちの演説を聞いていると、あれ、この言葉、私たち結構使っているけどなみたいな。そういうのがすごくありませんでしたか?パクっているんですよ。いいところだけ詰め合わせたような、そういう政党です。だから、経済政策が左派っぽくて、でも根本的なところは右派だというようなところです。なので、ここは本当に、私たちは研究していかなければならないと思います。

正しいか正しくないかなんて関係ない 大事なのは

こういった中にのめり込んでしまう。でたらめなのかもしれない。正しいか、正しくなんかなんかも、どうでもいいと。なんか心動かされたんだ。素晴らしい党なんだと。なんで、そういうふうに言い切ってしまうのかという心理です。なぜ、でたらめに心を動かされてしまうのかということが、ノーベル賞を受賞した心理学者の方が、こう言っていました。システム1、システム2に分かれると。システム1は、この後どうなるかということを考える。システム2は、もういいよ、目先の利益さえあればいいよみたいな。そっちの方が、脳を省エネ状態でできるわけです。

例えば、私すごくラーメンが好きでね、飲み会に行ったり飲んだりした後、必ず夜にラーメンを食べたくなるわけです。分かっているんです。夜食べちゃいけないなんてことは。次の日ね。胃もたれもするし肌荒れもするし、太るし。分かっているんだけども、食べちゃう。食べたいもん、お腹空いてるし、と。そういう風にして、目先のことに、もういいや、明日なんかどうでもいいや、みたいな感じでラーメンを食べてしまう。これ、システム2なわけですね。

SNSと選挙、責任は持ちたくないけれど現状は変えたいご都合主義

参政党もやっぱりそういうことなんですよ。たくさん赤字国債を出したっていいよと、どうなったっていいよと。とにかく減税して、とにかくたくさん金も刷って。外国人だって、どっか行ってもらったらいい、みたいな。今は私たちだけ、日本人だけ、私たちだけを見てくれたらいいよ、みたいなことを言うところに、ふーって行ってしまう。そうだよね、今はとにかく私たち大変だもの。私たちのことだけ考えてくれる人を選びたいよ、となってしまう。

でもしっかり考えたら、日本人ファーストになって、そういったことを言う政党に背いたら、私たちはセカンドですかという話になるわけです。その先を見たら暗黒社会が待っている。そういうふうに先々のことまで考えられない。そこまで脳を使う気力も体力もない。こういったところで、やっぱり参政党は、かなり支持を伸ばしていってしまったと思います。脳の省エネですよ。石丸現象なんか、まさにそうですね。なんとなくいいなと思ったら、延々とその動画が流れてくるから、いいなとなってしまうわけです。そういうふうにして、脳の省エネモードを使って、参政党はSNSを中心に広がってきたのではないかなと思っています。

自由にしていいと言われると困る若者>

神谷氏は「我が闘争」が愛読書だと言っていました。実は私も大学生の時に、「我が闘争」を読みました。当時、立川のルミネで、洋服を売るアパレルのアルバイトをしていました。実際に私は「我が闘争」を読んで、このアパレルでそれを適用してみたんです。そしたらあっという間に、売り上げ関東ナンバーワンになったんです、アルバイトのこの私が。人の心をコントロールするのは、案外、本当にやろうと思うと結構簡単で、だからこそやっちゃいけないことなんですね。

例えば「我が闘争」に書いてある夕方の時間とかを狙うわけです。夕方のOLさん。仕事終わって疲れて来るわけですね。そもそも洋服を買いたいなんていう人は、洋服を買いたい、イコール、もう自分をちょっと変えたいとか。ちょっとなんか生活に変化をもたらせたい。明日の仕事を頑張る。そのために洋服買いたいと思っている人たちです。そういう人たちを騙すのは、ものすごく簡単なんですね。買いたいと思って来ている人たちに、やれ、これがいい、あれがいいと言うわけです。仕事が終わって疲れている。疲れて、ちょっとハイになっているその頭に、やれ、この服がいいだの、これを着たら、あなたは本当にもっとハッピーになるみたいな。そういうことを言うと、これを買ったら自分の人生が良くなるんじゃないか、というような気持ちになるわけですね。

もう一つテクニックがあります。あなたの味方だよというようなね。そういう気持ちにさせるわけです。例えば1回試着室に入ります。試着室からお客様が出てくる。一回否定します。いやー、その洋服はお客様の肌の色には、こちらのお色の方が似合うと思います。そうすると、なんでもお似合いですねって言ってくれるよりも、本当に私のことを思って考えてくれるとなります。そうするとS顧客といってスペシャル顧客になるんですね。何回も、何回も、リピートで私のために来るわけで、私の売り上は、どんどん上がっていくわけですね。私は調子に乗って、ローン20何回払いとかいう人まで作って、本当に心が痛くなって、仕事を辞めたんです。ここで心を痛めないのが、カルトなわけですね。

今回参政党に投票した人のなかで、今まで選挙に行ったことない人たちが結構多かったりするわけです。でも、自営業の人もかなり多くて、自分たちの給料が増えない。だから取られるものを少しでも減らしたいという人たちがいます。そういった人たちが、今まではなんとなく自分たちでうまいことやって、選挙に行かなくても自分たちでなんとかなってきた。でもそうはいかなくなってきた。やっぱり政治が変わらなければ自分の生活は変わらないのではないかと、やっとそこまで来たわけですね。

さっきの洋服買おうって思った人たちと同じシーンですよ。政治が変えてほしい。けど、今の既存政党じゃなーみたいな人たちを、スーッと取り込んでいったのが参政党です。

参政党の政策なんか見ると全部、3本柱です。3本柱の中にまた細かい3本柱があって、面白いですよ。3本柱のうちの2本はで、共感共感の項目です。3番目がやばい項目です。これが参政党のコアなものだと思いますね。共感、共感、コア。これ、ホップ、ステップ、ジャンプみたいな感じで、人々をいかせるわけです。私も、さっき、売り子をやっていた時に、あなたに似合うのはこちらですよ。ホップステップ、共感、共感、最後買わせる、みたいなにね。段階的に麻痺させて、コアなところに踏み込んでいくような、そういう政策を作っている。これは確かに騙されるなぁ、なんて思っていました。

こういった内容で、参政党は、彼らたちも驚くような勢力拡大を果たしたわけです。だけど果たして彼らは私たちの味方なのか。反グローバリズムで庶民の味方なのかといったら、それはもう絶対違うと思います。彼らは、グローバリズムに立ちはだかるふりをしながら、本気で戦う私たちのようなものを排除するために存在しています。ですから政治はゲームじゃないぞということを、私たちは、しっかりと言っていかなければならないと思っています。

老後のために今を生きるゆとり世代

先ほど話した若い人たちの世代間の話をしていきたいと思います。これからの運動をしていくには避けて通れないところだと思いますね。例えば、私のような、ゆとり世代、そしてZ世代、こういったとこの、あまり語られてこなかったお話をしていきたいと思います。

まずは私のような、ゆとり世代です。私は1989年生まれです。これがどういう年かというと、ソ連が崩壊して、ベルリンの壁が崩壊して、バブルが崩壊して、さらに消費税も導入されて、そういう年でした。天安門事件もあって、世の中が先の見えない景色に突っ込んでいく時でした。私が生まれた時には、すでに国鉄はなくなってJRになっていました。さらにもう一つ、総評が解体した年なんですね。総評が無くなって、労働組合が3つに分裂していく。労働組合も、かなり弾圧をされてどんどん縮小されていく。そういった時代に私たちは生まれています。ですから、はっきり言って、私たちはいい時代は知らない。

なぜ団塊世代の人たちが市民運動に多いのか。なぜ若い人たちが市民運動にあんまり来ないのか。それは、成功体験が有るか、無いかなんですね。団塊世代の人たちは労働組合作ったり、学生運動をしたりして、何か勝ち取ってきたという成功体験がある。だから、暑い中も寒い中も頑張って外に出て、署名活動したりできるわけです。しかし、成功体験もない我々は、なぜあの人たちは、こんな炎天下で署名板をぶら下げてやっているんだろうかというような不思議な気持ちになるわけです。いい時代を知らないから、怒る理由もないわけです。なぜあの人たちはいつも怒っているのかと。もっと言えば私より下の世代なんか、安倍政権しか知らないですから。そりゃ、石破が良く見えちゃいますよ。

石破なんてウルトラ右翼、絶対ダメだとずっと私たちは思ってきた。それがまともに見える。その理由が、NO原稿で喋るとか、自分の言葉で喋るとか、広島長崎でコピー&ペーストしてないとか。こんなの人間として当たり前のことですよ。こういったことが、まともみたいな状態になってしまうぐらいに政治が最悪な状況になっていて、失望。

政治に何の期待も持てない。だから選挙なんか行かない。そういう人たちが低投票率、政治不信をずーっと招いてきた。だから、自民党政治は終わらなかったわけで、こういう中で私たちは生きてきたわけです。

ルト冷笑主義と現実社会からの逃亡

つ特徴的なのは、新興宗教が出てきました。例えば統一教会なんか出てきたのも、オウム真理教も1989年で、こういった時にめがけて出てくる。今までは社会主義、共産主義はたまた資本主義といったところで、熱い議論が交わされていた。それが、世代が変わって私たちの時代は、社会を変えようみたいなのではなくて。自分が悪い、自分を変えなきゃいけない。自己改革になっていきます。そうすると、この人を信じたら、これを買ったら、この水を飲んだら私は変わるのではないかという、消費社会とカルトがくっついていく。こういった中に、私たちは放り込まれていくわけです。こういう中で、怒れとか、団結しようとか、立ち上がれとか言われても、え?みたいな感じになっちゃいます。

9年。これは国旗国歌法が成立した年です。私は小学校4年生10歳の時でした。国旗国歌法が成立した年以降の2000年から、戦う教師は大弾圧を受けていきます。日の丸、君が代を拒否したら飛ばされる。人権教育をしたら飛ばされる。平和教育をしたら飛ばされる。

私たち子供は学校の中でそういった先生の姿を見てきている。そうすると、どういうことを学ぶか。まさにハツカネズミの実験で、ハツカネズミがちょっと動くと微量の電流を流す。何回も繰り返すと、ハツカネズミは動くと痛い思いをすることを学んで、動かなくなる。私たちはまさにそのハツカネズミです。人と違うことを言ったり、政治的な発言をしたり、労働組合に入ったりしたら痛い目を見る。だから自分はレールを外れないようにしよう、人と違うことをしないようにしよう、みんなと同じことをしよう。こうやって自分は人と違うことをしてないか、大丈夫だろうか、レール外れていないか。そういった、自己監視の眼差しを持って生きるようになるわけです。

SNSなんかでも、ちょっと変なこと言ったら、大炎上して、デマや何やら、ものすごく広まる。時には人を死に追いやるような、いじめみたいな状態になります。

芸能活動もそうです。芸能界で芸能人がちょっとでも政治的な発言したら、すぐ干されますね。でも何でデヴィ夫人、出てるんですかという話です、そういうのはいいんですよ。リベラルな話をちょっとしたり、田中優子さんみたいに、有田芳生さんの選挙応援に行ったり蓮舫さんの選挙応援に行ったら、サンデーモーニングに出されない。こんなひどいことを、若い子たちは見ている。完全なる見せしめですよ。政治的な発言したら痛い目合という見せしめが堂々とSNSやテレビでやられている。

>h4>「みんな違ってみんないい」より「みんな一緒がいい」

こういったことになると、自己を監視する眼差しを持ち始めます。自己を監視する眼差しを持ち始めるということは、必ず他者を監視する眼差しも持つということです。自分がはみ出てないかということだけじゃない。あいつは、はみ出てんじゃないかみたいな。こういうところで相互監視の社会が学校の中で始まっていくわけです。

学校教育は、もう右傾化じゃなくて監視社会になってきている。ものすごく生きづらいと思います。今のZ世代の子たちは、もうスマホがある時代で生まれてきています。今学校では、クラスラインというのを作っているらしいです。この前、新潟の高教組の先生から聞いてびっくりしました。クラスの子が全員入るグループラインを作る。私は入らないなんて、絶対言えない。クラスの子たちが話していることに自分たちだけハブられないように、クラス全員が強制加入するようなのを、子どもたちが自主的に作っている。全ての学校で、全部のクラスがやっているわけではないけども、かなりのクラスでやっている。トッポイお兄ちゃんなんかが、おーいちょっとクラスライン作ろうぜ、みたいなことを言って、みんな入る。どういうことが起きるかというと、学校が終わった後、家に帰っても、学校の中にいるような、そういう状態になっているわけです。ものすごく息苦しいわけです。

東京の都立高校なんかが、昔、学生運動で生徒が戦って勝ち得た私服。制服ではなくて私服にしよう。これが逆に、いま私服だと何を着ていけばいいか分からない。人と違うのが怖いから制服に戻してくださいということで、ちょっとずつ制服に戻ってくるところもあります。こうやって自ら権利を手放していく。なぜかといったら、権利で守られた経験がないからです。権利で守られた経験がないから、権利意識がないわけですね。もちろん労働組合も周りになかったから労働者意識もないわけです。労働者だと思っていない。権利意識と労働者意識の迫弱化。こういったものが私たちの市民運動になかなか来ないというところにあるのではないかな、と思っています。

「火垂るの墓」とZ世代

この前、「火垂の墓」を10年ぶりかで地上波の金曜ロードショーでやりました。本当に久々に「火垂るの墓」をやって、私は良かったと思いました。でもSNSでは「火垂るの墓」についての若い子たちの感想が、我慢して、意地悪なおばさんのところでもいたら良かったとか、自分たちで、その意地悪なおばさんのところを出ていったんでしょ。それはあんたがいけないよ、我慢していれば良かったじゃん、という意見が結構多かった。え、ちょっとそこなのみたいな感じでびっくりしました。そこじゃない、着眼点間違ってるよと。自己責任社会の中でずっと生きてきたから、「火垂るの墓」を見ても、いやいや、あのおばさんのところ我慢していたら、みんな生きられたのに、みたいな。そういう感想を持ってしまう人が、この10年間で増えてしまったということ。これもちょっと深刻に受け止めなきゃいけないわけですね。これやっぱZ世代なんですよ。

Z世代についての話です。石丸現象があってから、私もすごくZ世代のことを調べました。何を考えているのかということを、聞いたり調べたりしてみました。やはり、合理化社会の中で生きてきているので、Z世代の全部とは言いませんけども、かなり頭の中まで合理化になっているんですね。例えば、コスパ、タイパ。コストパフォーマンス、タイムパフォーマンス。こういったものは、ものすごく注視する。コスパが悪い、タイパが悪い、そういうことばっかり言っている。若いんだからちょっとくらい、時間無駄にしたっていいじゃないかと思います。何を生き急いでいるのか、ものすごく合理的なものを求めるわけですね。

人の出会い、恋愛とかもそうです。例えば職場とか、バイト先とか、学校とか、そういったところで、この人いいなと思って付き合って。でも、なんか、ちょっと違うかもしれないと別れる。でもまた1年後、また好きかもしれないなんて、人間そんなものじゃないですか。でも今は違います。マッチングアプリですから、自分の好み、自分の求める年収だなんだ、趣味を全部入力したら、あなたにぴったりな人はこの人ですと出てくるわけです。そうすると、別れるだ、好きだ、告白するだ、そんな時間が全部省けて、とても楽だと。嫌だったらブロックすればいいわけですからと。人選びも、画面をスクロールするような感じなんですね。そういうことなのって思うけれども、そういうことなんです。

動画も、映画も、みんなYouTubeやNetflixとか、そういうもので、1.25倍速とかで見るわけです。そんなので情緒とか分るのかと思うけれど、とにかく結果を早く知ることが大事なんです。他にも、小説なんか読んだりするの?本なんか読んだりするの?と聞くと。本なんか、いちいち読んでいられない、まとめサイトがあるんだと。それを読めば1ヶ月に何冊も読んだことになる。私は愕然としました。私は、私たちの集会やデモに、お願い、1回でいいから来てほしいと、Z世代の子に頼みました。1回だけでもいいから、ちょっと来てほしいと。集会に来てダメなところとか、もっとこうした方がいいとか、そういうことがあったらアドバイス欲しいと。そうしたら、えーやだー、早送りできないからと言われました。そういうことかと思ったら、なるほどと思って変に納得しちゃったんです。

でも人生ってそういうものじゃないじゃないですか。皆さんもね、私の話聞の面白いとこだけ聞くというにはいかないわけですよ。そういうもんなんです、人生っていうのは。でも早送りできないからいやだって言われた時は、もう本当にびっくりしました。

もっと私たちも、拳の上げ方は多様性を持たなければならないと思いました。ですから、私たちの運動に人が少ない、若い子が少ないということに、何も皆さん心配することはないです。大丈夫です。私たちの運動に限ったことではありませんから。私は高円寺で12年間障害者施設で勤めてきました。この高円寺の商店会の青年部会長は、いくつだと思いますか。70歳でした。いないんだよって言ってました。こういうところに集まるのがそもそも嫌なわけですね。横とつながって、なんかやることが、すごく嫌な時代なわけです。だから、私たちの運動に限らないから大丈夫、安心してください。どこかで必ずつながりますから。

昔は、村に一台のテレビ、それがだんだんと一家に一台になってきた。昔は力道山とか、みんなで応援していた。その時は、その時代の歌とかドラマがありました。あの時代の歌というのが、今は無いわけですね。みんな一人一台のスマートフォンになっているので、趣味とか、音楽とか、みんなバラッバラになってきている。だから、その時代はみんなで生きている感じが無いんですね。そういうところに私たちが、団結とか、連帯とか言っても、は?みたいな状態になるわけです。熱い、熱苦しいなぁなんて思われてしまう。距離感って本当に難しいわけですね。こういう若者たちを、どうやって巻き込んでいくかということ。ここをこれから考えていきます。

ロスジェネ世代がはまり易い一発逆転劇という幻想

もう1つ次の世代のロスジェネ世代です。申し訳無いけれど、ロスジェネ世代の男性はミソジニーが多い。女性に対する恨みつらみ、みたいなのがすごくあります。俺たちがこんなに生活が苦しいのは、女たちばっかり優遇しているからだみたいな、こじらせ系がとっても多い。例えばホリエモンさんと、ユーチューバーのヒロユキさんとか、ああいう人たちが、なぜか今でも若者枠にいるんです。もう50過ぎている。こういう人たちがなぜ受けるのかというところです。

ロスジェネ世代は、自分たちの親世代がみんな公務員とかになっていたから、公務員の採用の枠がなく、多くの人たちは非正規雇用です。引きこもりが一番多いのもこの世代です。引きこもりになったり、アルバイトをしたり、フリーターをやったり。中には勝ち組、負け組という、そういう言葉に踊らされて、ブツブツと切れた縦の社会に入っていく。本当に生活が大変、生きていくのが大変な時代の人たちです。本当ならば、その人たちは横と団結して、働かせろ、正規で雇え、と言っていかなければならない。ここに入ってくるのがネット社会です。

ホリエモンさんみたいな人たちが、IT企業で、一発逆転で、六本木ヒルズだぜ、みたいなのに憧れたりする。転職すればするほどスキルが上がったりすると思い、幻想に駆られる。ヒロユキ氏みたいな、ああいうユーチューバーで、掲示板を使った2チャンネルっていうのを作った。2チャンネルという掲示板の中で、匿名で悪口を言ったりする。こういう中で、日々の鬱憤をネットの社会の中で発散させたりする。ヒロユキが、なんであんなに人気なのかというと、ヒロユキ氏も、ホリエモンも、いわゆる勝ち組です。カッコつき負け組の人たちにとっては、ヒロユキ氏みたいなのは、負け組が生き抜いていくライフハックみたいなのを説いている人間です。私たちみたいに、コツコツ努力して勉強して団結して頑張ろうではなくて、ここを押せばピョンと、こっちに飛ぶよ、みたいな楽して得するようなものを説いている。だからみんな飛びついてしまう。

今も転職サイトのCMが、うざいほどテレビで出ますね。それ、まさに労働組合の分断だと思います。指一本でね、電車とかエスカレーターを待つ間に、俺、この会社合わねえなみたいな感じで、ピピピってやって転職する。自分たちに会う会社を探せば、どんどん自分がスキルアップしていくかと言ったら、そういうわけではないすね。

でも、会社からするとすごく都合がいい。指一本で会社に不満を持っているやつが消えてくれるわけです。それに労働者側だって、お前、労働組合とか立ち上げんじゃねえよみたいな、白い目で見られながら、頑張って会社で働かなくても済むと。この転職サイトは、すごく広まって流行っている。こういったシステムを導き出したのも、やっぱりホリエモンだったりするわけです。生き方のコツみたいな抜け道、裏道、そういったものをやれば、人間ちょろく生きられる攻略法みたいなものを、説いちゃっている。

そうなると、私たちのような、署名板ぶら下げたり、毎月1回、国会前に集まってとか、そういうの見ると、なんかもっとうまくできないわけ、みたいな感じに思われると思いますね。そこで、あいつらはバカだみたいな感じという、冷笑主義へとつながっていく。デモやって何の意味があるんだよ、となるわけです。

でも私はこれは一つ、後ろめたい心理があると思います。自分たちだって苦しい、自分たちだって大変なんですよ。でも私たちがキラキラとした目で、デモに行ってシュプレヒコールを上げたりするのを見ると、なぜか、そこに参加できない自分、情けない、勇気がない。そういう気持ちを慰めてくれるのがホリエモンだったり、ひろゆきさんの冷笑主義なわけです。あんなことやったって上手くいきっこない、上手くいってほしくない、みたいなそういう気持ち、いじくれた感情が、冷笑主義を助長させてしまっていると思います。こういったところのライフハックっていうのが今まで続いてきて、なんとなくホリエモンさんとか、ひろゆきさんみたいなのが今まで人気だった。そうして自民党政治が続いている。

アップデートしなきゃ闘えない参政党の排外主義

それが今、バランスがだんだん欠けてきた。なんだか自民党もおかしいんじゃないか。なんか立ち上がらなきゃいけないんじゃないかみたいな感じで、バランスが崩れてきた。冷笑主義みたいな感じで、腕組んで見ていた人たちが、デモに出たりするようになってきたわけです。そのデモっていうのが、私たちのデモではなくて、財務省解体デモとか、反ワクチンのデモとかそういう方に行くようになった。例えば、参政党みたいに反グローバリズムを掲げながらも、その怒りの矛先を、あらぬ方向の財務省解体とかに向けて、本当の敵に向けない。そういうところに組み込まれてしまうわけです。さらには、私たちは一生懸命税金払っている。なのに、福祉を受けられてない、福祉が私たちに来ていない。外国人が福祉にただ乗りしているからだ、許せん、みたいな状態になって、排外主義とかに流れていくデモに行くわけです。

今回、参政党は排外主義だと言っています。けれども今まで桜井誠とかそういった在特会が言ってきた排外主義と、また種類が違います。根本的には同じだけれど、入り口が違う。参政党の新しい排外主義の入り口は、とても私たちが反論しにくいところです。例えば、共感を獲得させるようなことから入ります。

東京駅の構内のそば屋のかけそばは1300円です。超高くないですか。だから私はおにぎりをいつも持って新幹線乗ります。私たちは500円のランチをしているのに、富裕層の在日外国人は5000円のランチを食べていると。金持ちの外国人が、あちこちの日本の土地を買い漁って、マンションを買い漁っていると。日本が金持ちの外国人によって侵略されていると騒ぎ出すわけです。今まで私たちは、強制連行してきた在日外国人、戦争被害者の皆さんと連帯をして、排外主義とは戦ってきました。けれども、あの人たちの敵は在日外国人の富裕層なわけです。富裕層の外国人と私たち左派が、団結していくのかっていうと、そういうわけにはなかなかいかない。そういったところから入っていくと、ちょっと批判できにくいです。

日本が食い荒らされるぞー、そういったところにクルド人の問題なんかも入れるからずるいんですよ。本当に外国人が土地を食い荒らしているのか買い漁っているのか、というところです。これ、ちゃんと調べるところは無いですね。それでも東京の不動産会社なんかで調べたりすると、晴海の一帯のマンションで、マンションを購入している外国人は3%です。そのうち日本に居住実態が無い人たちは、3%のうちの1%です。要はあちこちの土地やマンションを買い漁っているという事実は無いに等しい。ちゃんと調べている不動産があまり無いから、そういうこと言われたら、そりゃそうだとなります。確かに物価高くなっている。有名な観光地は外国人価格で、観光客価格でものすごい高くなっている。東京のホテルね、カプセルホテルで18000円とかですよ。そういう状態で私たちは我慢しているのに、なんなんだあいつらは、みたいな。私たちが反論できにくいような排外主義から入ってきているのが、今回の参政党の特徴です。ここのところも抑えていかないと、何かあった時に反論がしにくいなというふうに思っています。

巧妙に排外主義を私たちに植え付けているのが参政党であす。私たち自身もアップデートしていかないと彼らのスピードに追いついていかない。私たちの運動には早急にアップデートが求められます。アップデートのために私たちにしかできないことを、しっかりと明確に、心に刻む必要があります。参政党にも絶対できない。自民党にも絶対できない。維新にもできない。国民民主党にもできない。これはジェンダー平等の実現と、命と暮らしが守られる政治だと思います。選択的夫婦別姓反対だと明確に言っている参政党。子供を産んでから大学行けというとんでもないことを、側室が必要だというようなとんでもないことを言っている。参政党の人たちには、ジェンダー平等なんて、むしろいらないと思っているわけです。

ジェンダー平等が実現される社会には戦争はない

ジェンダー平等が、私たちは本当に大事だ思っています。本当にこれが実現できたら素晴らしい社会になるということを私たちが訴えていくかをお話します。まず、ジェンダー平等が実現される社会には戦争はない。なぜかといったら、戦争は暴力と差別の塊のようなものです。身近な差別、身近な暴力、それが積み重ねて戦争になっていく。自分の真横にある差別、暴力に、おかしいと声を上げていくことは、戦争に反対していくことと、全く表裏一体のものとして戦っていかなければならないということです。

明治後半からスタートの夫婦同姓制度とその背景

選択的夫婦別姓を一つとっても、やっぱり戦争反対とつながります。選択的夫婦別姓に反対している勢力は、ほとんどが改憲派で、ほとんどが戦争をしたがる人たちばっかりです。夫婦同姓が日本の伝統だとか言っていますけれど、150年そこらの話なわけです。それを伝統と言うのかという話です。

150年前、どういうことがおきたのか。日本が日清、日露戦争と、調子どんどんあげていって、富国強兵を言い始めた時です。富国強兵の社会を作っていくためには、家の中に、きちんとしたピラミッドを作らなければいけない。そこで家父長制を入れて、あんたの家では父親が絶対だ。もっと言えば、天皇の赤子である、私たちは天皇の言うことは絶対だと、天皇のために死にますぐらいの教育をしていくために、名前を一緒にしてもらわないと困るわけです。個人それぞれが輝く社会はいりません。一つの管理単位としての家族であってほしい。だから同姓制度を入れたわけです。

今、戦争ができる国づくりに進もうとしている日本。一方で、夫婦別姓を導入しようとしている私たちの運動は、真逆のところにあります。だから、ものすごく反発され、この前の通常国会の時にバックラッシュにあって、神社本庁まで出てきて保守的な議員を締め付けた。維新は完全に保守票を意識して、旧姓併記とかいう訳が分からない案を出してきた。やっぱり、神社本庁かなんかの圧力があります。彼らにとって、戦争できる国づくりに夫婦別姓は相反するもので、あっては困るものですね。私たちは反戦平和の運動に、やはり選択的夫婦別姓は不可欠なものだということを、一体のものとして戦っていきたいと思っています。

私たちが目指す社会像と対等な関係

日本は戦争の反省をちゃんとしてないですね。一人一人が戦争の反省をしてない。だから、ものすごく暴力に甘い国になってしまったのではないか。戦争の反省をきちんとしていないから、日本のジェンダーギャップ指数はいつまでたっても118位です。先進国で最下位です。これは他人事じゃないんです。これは自民党が悪いわけじゃない。保守のおじさんたちが悪いわけじゃない。私たちの中にもやっぱり差別心は、まだまだあります。私たちの運動は100%ジェンダー平等を実現できているか、私は全国の公演で聞いています。みんな首を振るわけです。できてないと。とりわけ女性がうーんっと言う。やっぱりここですね。まずは私たちから変わらなければならない。

私も口には出さないけれど、たまに“なんだよ、こいつ、男らしくねえな”みたいなことを思ったりすることがあります。たまに心の中で“めそめそしてんじゃねえよ”みたいなことを思うわけです。でも、これ女性に言わないじゃないですか。やっぱり私の中にもまだ男はこうあるべきだ、女はこうあるべきだ、そういうものに囚われている。これを自分の中で反省して、自分の中で一生懸命向き合っていく。自分の中の差別と向き合っていかなきゃいけない。自分の心の中にある差別と向き合うのが一番しんどいですよ。だから、女性差別はなかなか無くならない。私たちの運動もこういうことをやっていかなければいけないんですね。

例えば、地方の講演会なんかで、急に私の楽屋におじさんが入ってきてチラシ持って来ます。いやあ、今日のチラシね、あんたの写真を見て、美人でいい女が来るなと思って来たんだけどさ、写真の方がいいねーって。私は帰れって言いましたが、こういうこと言ったりする。他にも、質問で真っ先に手を挙げてくるおじさんが、あなたの講演は素晴らしい。でもね、あなたじゃなくて、男性に同じ話してもらった方がもっと説得力があると思います。こう言われた時は、初めて、不整脈に心臓ボロボロみたいになって、死ぬかと思いました。周りの女性が立ち上がって拳を振り上げていました。こういうことを未だにたくさん言われます。あなた絶対に東大名誉教授とかだったら言わないでしょうというようなことを、私には言ってくるわけです。なめてるわけですよ。

こういうことがね本当たくさんあるわけですね。なんで美人って言っちゃいけないんだよ、みたいな話になるわけです。褒めてるじゃんと。美人とかそういうこと言っちゃいけませんよ。それ差別ですよって言うと。なんだよ褒めてんのに、何も言えねえじゃねえかと言っている。なぜ人の容姿をとやかく言っちゃいけないのかということです。

皆さんは、そのお顔を選んで生まれましたか。選べませんよね。たまたま、そのお顔で生まれたわけです。みんなそうなんです。選べないものを、その人の物差しであんたは美人で、あんたはブスだと言ってはいけないわけです。だけど、例えば私の服とか、私の髪型とか、そういった私の持ち物に対して、今日は菱山さん、いい服、着てるね、とか。これはいいんです。私が選んできたものだから、それを褒めてもいいんです。選びようがないものに対しては言ってはいけない。差別になる、と。こういったことも初歩的なことですけれども、ちゃんと言っていかなければならない。運動内からジェンダー平等を実現していくのはとても大事なわけです。

命と暮らしが守られる社会のために

命と暮らしが守られる社会は、私たちにしかできません。自民党がこの社会をぶっ壊してきたわけです。そんな自民党が、とても命と暮らしを守るとは思えません。コロナ禍で始まった、女性による女性のための相談会は、もう何回もやっています。夜回りをしたり、生活保護の申請についていったりします。女性の生活保護の申請同行をすると窓口で、かなりの回数で、誰か頼れる男性はいないのかと聞かれます。これを男性に聞きますか?男性が生活保護の申請に来た時に、誰か頼れる女性はいないのかと聞かないですよ。だから女性は一人で生活保護の申請に行くのが不安で、一緒についてきてくれとなります。コロナ禍の本当に大変な中で、活動してきました。今こそ、憲法25条が生かされなければいけない時に何をやっているんだ。憲法を変えている場合じゃないだろうということです。

その裏で参政党は何をしていたか。コロナは人為的に作られたものだ。コロナワクチンは、一部の企業が儲かるために作られたものだ。そういったことを言って騒ぎ立てた。このコロナ不況とか、新しい生活様式になったがために、非正規雇用の女性たちや、子どもたちを直撃して、大変困っていることに目を向けようともしなかった。アベノミクスの反労働者性や反人間性の目をそらすために、ひと役買ったんじゃないかと思います。参政党は、私たちの味方みたいな感じで言うけれど、本当に味方なのかということです。私たちの味方なのは、この私たちです。憲法を守り生かしていく私たちだということをこれからちゃんと分析して言っていかないといけないと思います。

「手取りを増やす」が響いたわけ

国民民主党は手取りを増やすと言っていました。維新もまねして社会保険税を下げると言った。その裏で何が行われるかというと、医療サービスを削ることです。参政党も、毎年1回の健康診断は医療業界が儲かるためのものだから、やらない方がいいといっている。毎年の健康診断で、小さなガンが見つかったりして、たくさんの命が助かっています。そういった医療を削って、年寄りはどんどん死んでいけばいいというような感覚なわけです。そういう状態の中で、手取りを増やすと言っている。こんなひどい話はありません。本当に手取りを増やすなら、軍事費を暮らしに回しなさいで、話はおしまいですよ。こういったことも、バンバン言っていったほうがいいです。本当に手取りを増やすなら、まず、軍事費を削ったら、どれだけ私たちの生活が楽になるのかということを言っていかなければいけない。

この前、都内の夜間の保育園を回ってきました。24時間保育園を回って、相談会があるというチラシを置いてきました。日曜日の夜間保育園は、歌舞伎町なんかは赤ちゃんがすごく多かった。この5年ほど夜間保育園を回っているけれど、過去最多でした。完全に乳飲み子の赤ちゃんが、歌舞伎町の24時間保育園に預けられている。狭いスペースに、私の目視で子供が15人くらい転がっていて私より若い保育士1人ですよ。前後に、グデングデンな赤ん坊を抱えている。多分短大出たばっかりじゃないかという保育士がやっていて、これは大変だという状況です。でも、子供を産んでも、お母さんたちがすぐに働きに出ないといけない状況になっていて、もうみんな全方位にかわいそうな状況になっています。

例えば京都で、確か今年の4月から始まった制度があります。妊娠をして申請したら、お母さんとお腹にいる赤ちゃんに10万円給付される制度が始まった。大阪は、妊娠したら5万円、出産したら5万円の、謎の分割払いです。東京は出産しなければもらえないので、ひどいですよ。要は出産奨励金で10万円。しかもギフト券です。これで小池百合子さんは勝ちました。出産したら10万円、私があげますみたいな感じになっていました。東京はひどいと思って産まないと、そういったものももらえない。

そういう制度も、常日頃ネットを見てないと分からないわけで、ネットを見ている人は、お得な情報が入ってくる。でも、そういったところから取りこぼされた人たちは、そういったお金も貰えずにいる。今の社会って、知っている人が得する世の中なんです。コロナ禍の時もそうでした。給付金とかも、自分たちで調べて手続きしてくださいね。分からんない人たちは、貰いはぐれです。

能登の震災もそうです。能登の復興支援の被害届けも、全部お年寄りがやらないといけない。無理だからと、みんな諦めている。自分は90歳で、あと何年生きられるか分からないから、家を新しくしたってしょうがない。このボロ屋でいいや、となっている。知っている人が得する世の中はおかしい。例えば、ドイツなんかコロナ禍では、何も手続きしなくても、バンバン自分たちの通帳にお金が入ってきたりしています。こういう国があることを、私たちは言っていかなければならないと思います。

この「手取りを増やす」は耳障りのいい言葉で、つられてしまいがちです。けれども、本当に私たちが豊かな生活というのは、一体どういうものなのかということを、私たち自身が今一度考え直すことが必要ではないでしょうか。

日本は右傾化していると思う?

日本は右傾化していると言われてますけれど、本当に右傾化しているのでしょうか。私は、日本はもともと、そして今もリベラルな国だと思います。なぜならば、一定程度の左派政党がある。今回、共産党なんかはかなり票を減らしましたけども、それでも共産党みたいな政党がある国って、日本とフランスぐらいしかないですよ。社民党とか、れっきと左派政党が残っている国というのはすごく珍しいです。だいたい中立保守みたいな状態で、完全に振り切っちゃっているところはなかなか無いですね。

そう考えると、日本は、かなりリベラルな国だと思っています。だから、ものすごい反共叩きになる。共産党が横にいるだけで、票が落ちるみたいな嘘をすごく言います。「市民と野党の共闘」だって、共産党が横に並ぶと票が落ちる。そんな訳はないでしょう。そういうことを、みんながデマを言うことによって、本当にそうかもしれないと、共産党を、まるで薬病神かのように扱う選挙区が、たくさん出てきている。

これは違うと思います。日本がもう完全右傾化した、ヤバイ国だったら、去年流行った朝ドラの「虎に翼」は、あんな流行らなかったと思います。なぜあれだけ流行ったかといえば、やっぱり日本はまだリベラルな感覚がすごく根強く残っているからだと思います。だからこそ、右派は私たちを叩くわけです。物言う女たちは、死んでくれと思って叩きまくる。消えてほしいと思っている。なぜかというと、一定程度力があるからなんですね。だから、叩かれている人にも問題があるよではなくて、なぜ叩かれるのかということを考える。影響力があるから、絶対守っていかなければならないと思います。

もう一つですね。例えばアイスランドなんかは、10年前まで社民党はほんと潰れかけみたいな状態だった。この10年間で社民党は息を吹き返して、今のアイスランドの首相は36歳の社民党の人です。私も36で、私みたいなのが首相をやっている。アイスランドはすごいですよね。世界の先を行くアイスランドって言われていて、アイスランドで起きることは結構めぐりめぐって、世界で起きたりします。

アイスランドで起きているようなことが、日本でも起きてほしいと私は思っていて。そのためには何が必要なのかといったら、やっぱり福祉を立て直すことです。そして、労働組合を立て直すことです。アイスランドでなぜ社民党が吹き上がったかというと、労働組合と福祉を立て直したわけです。労働組合の重鎮をみんな女性にした。その女性たちが、一軒一軒個別訪問をして、ライフワークバランスの話をします。週34時間働けば十分生きていける、本当ですよと、10年間かけてそれやったんです。そうすると、週5日働かなくても、週34時間働いていれば、充分国が回っていけるという研究結果が出たわけです。そんなに働かなくてもいいなら、自分の人生を謳歌しながら働く。すごくいいじゃないかということで、労働組合が増えたわけですね。

国がやる福祉国家との自助共助の福祉社会の違い

参政党が、反グローバリズムみたいなことを打ち出しています。でもグローバリズムの弊害を批判しながらも、国際資本の飽くなき利潤の追求は擁護している。こういったところなんかもきちんと見抜いて、本当の豊かさとは何なのか。これは昔、社会党が言っていた福祉国家みたいなものを、今もう一度戻すべきなんじゃないかなと思います。

さっきのように、知らない人は損する世の中というのは、無いようにする。もともと社会党が言っていた福祉国家というのは、国が福祉をやりますという意味です。それを大平さんの自民党になってから、福祉社会に変えた。福祉社会になると、これは自助共助になるわけです。とりわけ家の中の家庭長である女がやれという、統一教会の丸出しみたいなことを言うわけです。こうやって、福祉国家から福祉社会になっていく。福祉社会には金がかかる。だから消費税を導入する。だから増税する。

福祉のため、福祉のためと言って、私たちから金を絞り取ってきた。今は福祉を削って軍事費に行っているじゃないですか。もう一回、私たちは本当に最強福祉国家を立て直そうよ、と大きな声で言っていく。これは新しい仲間を獲得する旗印になるんじゃないかと思っています。

私たちの集会とか街頭宣伝、ちょっと暗すぎなんですね。批判ばっかり言っている。批判も大事です。が、プラスこういう社会にしたいということは、抜けている。批判一辺倒で終わっている。そうすると、どういう社会にしたいか、全然見えてこないわけですね。こういう社会にしたいという具体的な例を、私たちは上げていかないといけない。私は最近の街頭宣伝で、例えばデンマークの福祉の例とかを出します。デンマークでは、介護士とか介護に携わる人はみんな公務員です。国がみんなでやるんですね。しかも箱型じゃなくて、自宅に通う訪問介護を主にしている。生まれ育った慣れ親しんだ家、ここで死にたいと思っている人は尊重する。生まれてから生きるまで、どんな選択をしても安心して死ねる。年を取ることに不安を持たないで生きていける。そういう社会だから、デンマークは幸福の国だと言われているという話をすると、本当に足を止める人が多いんですよ。

だから日本もいいところは真似していきましょうよ、みたいな話をすると、全然足の止め方が違いますから。やっぱね、少し私たちも景気のいいことを言わなきゃいけないと思います。実現するか、しないか、これはこれからの運動にかかっていますけれど。私も少々景気のいいことを言って、太っ腹な政治を見せないといけないと思うんです。そうしないと通り過ぎていく人たちは目が輝かない。

どんな社会にしたいか具体的に言える?

一人一人マニフェストを持たなければいけないと思います。何も政治家や政党だけが、マニフェストを持てばいいのではなく、私たち一人一人が、こういう社会にしたいと具体的に言えるようにならないといけないと思います。そういうことをしない限り、どういう社会にしたいのかというのは漠然としていて見えてこない。若い人たちはいい時代を知らないから、具体的に言ってくれないとわからないんですよ。例えばこういう社会になるよ、貯金をしなくても生きていける社会になるよ、みたいな。そういった話をどんどんしていってもらいたいと思っています。

参政党にどうして行ってしまったのかと思うと、私たちの運動、労働組合の運動は、ちょっと高級なものになりすぎてしまったのではないかというのが、私の中で凄く反省点としてあります。自分たちの運動をかき乱されたくないから、来てもらう人をこっちで寄りすぐったりする。この人、思想的に大丈夫かな、みたいに。そういうところが、運動を高級なものにしてしまったんではないか。もっとハードル低く、みんながそうだなと思ってもらえるようなことを、私たちの側から発信していく。そういう気安く入れる運動体を、作っていくことが大事だと思います。これを「共感獲得運動」と名付けてやっていきたいと思います。

この前の参議院選挙の時、東京選挙区で、参政党のさやと吉良よし子さんの、票の出方を見ても一目瞭然でした。吉良さんには多くの女性票が入った。さやさんには多くの男性票が入った。私も、周りの共産党員でもない女性に何で入れるの、と聞いたら、吉良さんは国会議員をやりながら、2度も出産して子育していると。だいたい、女性は出産を機にキャリア分断されます。だけど、吉良さんはやっていて、女性の希望だと言うんです。ロールモデル。

一方で、さやさんは、私をお母さんにしてくださいと言って、みんなドン引きみたいな感じでした。でも、 さやさんの場合は自分が結婚していることを隠して、それで、さやという名前でやっていた。ですから、さやが当選して本名が出て、既婚者だということが分かったら、急にツイッターで、俺の1票を返せ、みたいなのが出てきた。そういう、下心満載のおじさん票をかっさらった、さや。一方で、吉良さんを見ていた人たちの票。どっちの方が根強いかという話です。私たちこういうところを考えて、私たち一人一人がロールモデルになっていかなければならない。これからの社会の理想のロールモデルに私たちがなっていかなければならない。

私は保育士ですけども、保育園で保育士の資格を取るときに、子どもたちに憧れられる大人になりなさいと言われました。こんな大人になりたいな、こんな人になりたいなと思われるような人間に、私たち自身がならなければいけない。だから、しかめっ面してチラシなんて撒いていたら、この人の人生つまんなそうだな、みたいに思われてしまう。私たちの後ろから、楽しそうな未来が透けて見えるような、そういう運動をやっていかなければならないと思います。

そういうためには、まずは楽しく生きることも凄く大事だと思います。楽しく運動やって、楽しく生きること。楽しくできることは、一番の社会運動だと思います。なんかこう悲壮感漂わせて、軍国主義的な、そんな運動に未来は無いと思います。みんなが、みんなのペースで出来るような、様々な拳の上げ方が許される。多様性、寛容性のある運動を作っていくために、私たち自身にも、自分に寛容で、自分たちが楽しく生きていくことが、社会運動になっていくと思います。

市民の声こそが未来を創る大きな役割

参政党が、理想と希望を取り戻すと言っている。これはもう、この前の小池百合子さんの希望の党に継ぐ、希望と、理想の搾取だと思います。こっちも取り返さないといけない。軍国主義にひた走るような社会から私たちは転換して、軍事費に費やす金は、私たちのこれからの社会に費やす。そういう転換を図っていく。そこに熱量を注ぐことが、本当の理想と希望の炎を燃やすことです。私たちは諦めずに、参政党を支持している人たちを批判するのではなく、そういった人たちが立ち上がらなきゃと思っている段階まで来ている。これはラッキーな状況だくらいに考えて、よーし、取り返すぞくらいの気合を持って、皆さんと頑張りたいと思います。振り切っていきましょう。

今、極中主義みたいなのが出てきています。「極中主義」って私が作った言葉なので、みなさん知らないと思います。何でも真ん中がいいみたいなことです。ランチコースとかもAコース、Bコース、Cコースだと、だいたいBコースの値段に合わせて仕入れる。世論調査も、賛成、反対、どちらでもないだと、絶対、どちらでもないじゃないですか。分からない、言いたくない、ということですよ。どちらかになって、どういう目で見られるかが怖いと思っている。真ん中と言っている人たちの方がいいような気がしてしまう。

でも真ん中なんてないんですよ。私たちこそ真ん中です、といういう全体主義があるので、そこに行かないように、私たちは振り切っていかなければいけないと思います。あっちに気遣い、こっちに気遣いをやっていると、本当に自分たちが、何者なんだ、みたいな状態になります。振り切って、こういう社会にしたい、どう思う?みたいな。そういったことをやっていくのが、私たちの力です。  私たちの運動が盛り上がれば、絶対それに政党はついてきます。政党を励ましていく。市民と野党の共闘を今まで頑張ってきた立憲野党のみんなを励ますためにも、まずは、私たちの市民運動が、もう一度力をしっかりと持ち直すことが大事です。今回、私たちの運動に結集するはずの市民が、かなり多く参政党に行ってしまったことを心から悔しく思い、そして取り戻そうという熱い情熱を持って頑張りたいと思います。

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