私と憲法288号(2025年5月25日号)


広範な人びとと共に情勢を切り拓こう

「パレスチナ解放」「沖縄解放」若者コールが響くナクバアクション

パレスチナ人大虐殺のナクバから77年。5月18日新宿駅前には600人の在日パレスチナ人を多く含む人々が集まり約2時間にわたりイスラエルによる虐殺を止めろと訴えた。今回のナクバの日から77年の抗議アクションはガザの人々の虐殺に抗議することと、沖縄解放運動との連携もテーマの一つとしておこなわれた。ガザで降り注がれている爆弾の数や攻撃の激しさは沖縄戦の激しさとかなり似ていると言われている。戦後、沖縄が日本に「返還」されても米軍基地の70%が沖縄に押し付けられ、日常的に米兵による暴力に怯えて暮らさなくてはならない現状と現在のガザの状況を沖縄と重ね、沖縄の人々とパレスチナ解放運動は繋がっていこうという目的で5・18の新宿アクションを取り組んだ。

コールの中で若者たちが何度も「パレスチナ解放」「沖縄解放」と叫んだ。誰が教えたわけでもない、若者たちのネットワークの中でガザの状況と沖縄は似ている、一体のものとして闘おう。本土の人間は沖縄に関心を持ち責任を感じなくてはならないということを、あっという間に理解し行動に移しているのだ。私たちは長年運動する中で若い人がなかなか市民運動に集まらないと肩を落とすことがよくあるが、この間のパレスチナ解放運動に市民運動が率先して関わり、運動を作り上げていく中でこのように、若者との連携が深まっていると実感する。

そしてその若者たちは外で活動するだけではなく、学内でもガザの悲惨な現状を絵にし、展覧会を開いたり、会社へも「FreePalestine」と刺繍がされたワッペンをカバンにつけて通勤し、運動を日常へと持ちこんでいる。

5月3日に東京・有明防災公園で3万8000人が集まった憲法大集会では、この間のパレスチナ解放運動で合流した仲間が発言したり、デモではコールを担当してくれた。中には初めてシュプレヒコールをする仲間もいて、事前に練習を重ねデモデビューする若者もいた。若者は何も考えていないわけではなく、SNSでのバッシングを恐れて言い出せなかったり、同調圧力のなかで自分の意見を封じ込めてきたのだ。大人の私たちはこの閉じ込められた若者の熱い思い、そして将来への不安が一杯詰まった扉を開け、寄り添い、ともに伴走するような運動を展開していくことが求められていると確信している。

しかし一方でガザへの攻撃は止まらない。5月18日の新宿での行動の当日、イスラエルはさらに激しくガザへの攻撃し、大規模な侵攻が始まった。日本は武器を輸出したり、イスラエル製のドローンを購入したり、公的な年金の積み立てがイスラエルやイスラエルの軍事企業に投資されているなど、ほぼ直接的に金銭面での援助をしており、虐殺に加担している。国内の問題と国外情勢をしっかりと結び付けて運動を組み立て、今よりも幅広い人々を巻き込み運動の輪を広げていこう。

少数与党の国会でつぎつぎ成立する戦争準備法

今国会では、能動的サイバー防御法という名のネット監視法案が通過した。同じ時期に学術会議法人化案という名の学術会議解体法案も通過した。ろくな審議もせず短期間で強行されたのだ。一方35年以上も「議論が必要だ」と言われ待たされ続けてきた選択的夫婦別姓への実現は、今国会ではかなり厳しい状況に追いやられている。年はじめの通常国会開会日にようやく選択的夫婦別姓制度の実現かと胸を躍らせた時間がウソのような展開となっている。

憲法審査会も会長が枝野氏になってから運営の仕方やパワーバランスは大きく良い方に変わった。しかし、衆議院憲法審査会においてはほぼ毎週開催され、改憲へのスピードは緩まったかもしれないが、決してストップがかかったわけではない。ブレーキを半分踏みながら下り坂をズルズルと前に進んでいるような状況だ。衆議院選挙で市民の声によって少数与党へと追いやってもこの現状。市民運動によって世論をもっと盛り上げ、頑張る立憲野党の議員を励まし、共に闘う足場になっていかなければならない。

学術会議解体法案通過により、今後学者文化人が自由に意見を言えず、政権や財界の意に沿うような発信しかできなくなる事態に進まないように、市民の私たちは目を光らせていかなければならない。

学者文化人の口をふさぐことはリアルに戦争への第一歩である。他にも能動的サイバー防御法によって一般市民のネットでの言動も監視され発信しにくくなる。今でさえもSNSで政治的発言をしようものならば命をも脅かされるほどのバッシングにあい、沈黙を余儀なくされている人たちがたくさんいる。膨大かつ超スピードで流れてくる情報の波に飲み込まれて思考停止に陥っている中でネット監視が進んだら、モノはいえない上に思考停止させられ、万が一日本が戦争をしようと行動を起こそうものならばあっという間にSNSの扇動によって人々は戦争加担側に回ってしまうだろう。

思考を止めない、止めさせないために市民運動は引き続き街頭に立つだけではなく、身近な人に積極的に対話を通じて政治の話を日常に持ち込むような努力をしていかなければならない。ネット内でのデマや扇動に対抗するには、結局のところリアルに勝る力はない。対話運動を通じて右翼カルトによる本当の敵を見えにくくするような陰謀論に立ち向かっていこう。

あきらめずに選択的夫婦別姓制度の実現を

選択的夫婦別姓制度に関して、国民民主党や維新の会が日和見的な動向をみせており、見事なまでも保守・カルト軍団にすり寄ったことにより、今国会での実現は遠のき始めている。朝日新聞までもが「選択的別姓結論見送り」と言ったタイトルを一面に打ち出し、まるでこちらのやる気を削ぐような雰囲気づくりだ。

なぜこれほどまでに選択的夫婦別姓が実現できないのか。「選択的」なのだから誰も困ることはない。選択肢が増えることは良いことであるし、世論調査でも圧倒的多数が賛成をしている。にもかかわらず、実現を阻むものは何なのか。それは同姓制度が導入された150年前の日本の状況を見てみると、なんとなくわかることがある。150年前、明治後半、日本は富国強兵へとひた走って行った。日本人が戦争にしっかりと協力するためには「個を重んずる」なんて考えは邪魔でしかなかった。そのため、家父長制を徹底し、家族のなかで父親が一番偉い。父親の言うことは何が何でも聞かなくてはならないというピラミッドを作り上げたのだ。そのためには家族の苗字がバラバラではいけない。同じ苗字、しかも男の苗字にすることにより家父長制を人々の心の奥底までに行きわたらせ、女は男の数歩後ろに控え、男が家族のことも社会のことも決定権と実権を握るような仕組みがつくられ、今もなお根深く続いている。

当時はこのように父親を頂点にすることにより、家族を一つの単位として国が管理しやすくしようとしていた。その裏には天皇を崇拝し絶対的な存在として君臨させ、天皇の「赤子」である民衆は天皇のためならば命さえも捧げよといった教育がいきわたりやすくするために、家族内にも支配関係を築き上げたのだ。つまり、仮に「選択的」であっても夫婦別姓制度が導入されると困る人たちとは、日本の侵略戦争を美化し、今でも日本を戦争ができる国にしたがっている人たちだ。

今回の国会で選択的夫婦別姓に反対している自民党は勿論のこと、だんまりの公明党に日和見主義の国民民主党や日本維新の会などは軍拡を推し進めようとしている。選択的夫婦別姓に反対、もしくは日和った人たちと軍拡推進派は見事なまでに重なっている。

選択的夫婦別姓の実現は経団連が言うような儲け主義の阻害要因になるから必要だという理由だけではなく、もっと深い今後の日本の未来に(次頁下段へ)(前頁から)関わる話でもあるということの理解を広めていかなければならない。結婚しても同じ苗字にしなくてもいいという選択肢は、個人を尊重し、女性を解放する。それらはひた走る軍国主義への歯止めになってしまうことを誰よりも理解し、恐れているのが保守・カルト団体だ。

カルト癒着政治を正していくためにも、たとえ今国会では実現が厳しくとも、決してあきらめず実現を訴えていこう。彼らは私たちが諦め、せめて通称使用の拡大で手を打つことを望んでいる。通称使用の拡大は本質的な問題の解決にはならないということをきっぱりと言い、拒否していこう。

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ヒロシマから 〇〇〇がわたしの安全保障

皆さんと一緒につくる「8.6新聞意見広告」にどうぞご参加ください!

「許すな!憲法改悪・市民連絡会」で皆さんと共に活動することは大変心強いものです。広島から毎年1回参加する全国交流集会では共通した方向性をみつけて歩き出す勇気が出てくるのです。それは、私たちの毎年掲載している「ストップ改憲!憲法を活かそう! 8.6新聞意見広告」にも参考になり、皆さんの参加・応援にとても励まされています。今年も朝日新聞全国版と中国新聞に掲載する予定です。ご参加を心よりお待ちしています。(8.6新聞意見広告チラシ同封)

〇〇〇がわたしの安全保障

今年のテーマは、「〇〇〇がわたしの安全保障」。・・・わたしの『安全保障』って何だろう・・・と、しばし考え、振込用紙の小さな通信欄に書いてくださいます。その中で多い安全保障は…「日本国憲法」「九条実現」「前文の精神」「戦のない安心」「対話」「自衛隊を武器を持たない災害救助隊に改変すること」… 9条や大軍拡に関するものです。

また、食べ物や環境、暮らし、主義主張にも「安全保障」はあるようです。「食の自給自足」「農林漁業を守ること」「きれいな水、空気、安心して食べられる食べ物」「ガザの子どもにあんパンを届けること」「年金と非核」「原発廃止」「平和教育」「男女同権」「九条実現、一条廃止」「平等」「知性と想像力」「真実の報道」「初孫の笑顔」「声をあげること」「世界市民のつながり」… 私たちにとって、こんなに真剣に考えてくださる皆さんこそ!大きな安全保障かもしれません。

広島のまわりも大軍拡

岩国では、米軍岩国基地に海兵隊にステルス戦闘機F35Bの飛行隊が新たに配備されました。部隊が3隊から4隊に増えれば明らかな強化、近隣諸国との摩擦は大きくなります。住民は更に騒音に悩まされ脅かされます。しかし岩国市は反対も容認とも態度を明らかにしていません。

呉市は、防衛省が呉海自基地横の「日鉄跡地」を複合防衛拠点化整備案の受け入れを表明し、市長は抑止力が住民を守ると理由を述べています。市民は、加害基地呉が大空襲を受けたことはよく知っており、「日鉄跡地問題を考える会」では、敗戦後、呉の人々が熱望した「旧軍港市転換法」の精神を取りもどそうと呼びかけています。広島も軍都廣島・原爆投下の後に「平和都市建設法」が制定されました。加害基地から平和産業都市へ! 戦争を知る人々の願いは同じです。伝え拡げていこうと思います。

5月17日に行ったヒロシマ総がかり講演会で清水雅彦さんが強調されたのは、政策実行のためには国会でマジョリティーになるための努力を惜しまないこと。本気の共闘、「市民」と「野党」そして「労組」をしっかり位置づけること。ヒロシマ総がかり行動は、何とか3者の共闘はできていますが、まだまだ規模が小さく保守的な広島でどう拡げていくのか、それが大きな大きな課題です。

第九条の会ヒロシマにとって「8.6新聞意見広告」の4000人を超える方々の参加は宝物です。今年は、「みんなでつくる新聞意見広告」に〇〇〇をたくさん寄せていただき、5000に近づくことを目指しています。また多くの皆さんの名前が改憲派に国民投票を諦めさせ、憲法改悪ストップ!の一助になることを切に願っています。
第九条の会ヒロシマ 藤井純子

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38000人が結集  第11回2025憲法大集会

池上 仁(会員)

今年の憲法集会も好天に恵まれたが、前日の雨のため有明防災公園の芝生はじっとり水を含んでいる。参加者はレジャーシートを敷いたり携帯椅子を据えたり工夫して席を確保。私は市民連絡会ののぼり旗を掲げてメインステージ近くに陣取る。

小笠原もずくさん・公園でchillさんの元気な歌声で盛り上がったところで開会。司会は山田有浩(戦争をしないさせない八王子アクション)・吉田桜さん(高校生平和大使OB)の若者コンビ。最初に実行委員会を代表して菱山南帆子さんが挨拶…横浜臨港パークで分断と対立を乗り越えた初めての憲法集会が開かれた。この成功が戦争と対峙する2015年安保大闘争の爆発につながった。あれから10年、節目の年だ。ここ有明公園に会場を移し、60000人が集ったこともある。コロナ禍で市民運動が大打撃を受ける中、国会前からのオンライン中継で継続してきた。幾たびもの改憲の危機を乗り越えられたのはこの憲法集会を中心とする運動があったからだと確信する。

刻々と戦争をできる体制づくりが進んでいる、沖縄で繰り返される在日米兵による性暴力事件は戦争と表裏一体のもの。世界的な危機の真っただ中、私たちはいまこそ打って出るべきだ。韓国市民の非常戒厳攻撃に抗する闘いを見ても保守派は国旗と星条旗を掲げた年配者と男性ばかり、改革派は若者と女性が中心の多様な結集、分断を阻止する闘いで女性の連帯とパワーが要だ。総がかり行動は軍拡に反対する新署名を始めた。7月に参院選がある。与野党逆転、改憲勢力を追い詰めるだけでなく、選択的夫婦別姓に反対する議員を落選させよう。これは戦争と一体である家父長制との闘いでもある。今日は集会を大いに楽しんでほしい。未来を切り開く運動は楽しくあるべきだから。

〈スピーチ〉

植野妙実子さん(中央大学名誉教授)…ウクライナの戦争、ガザへの攻撃、トランプの政治があるが私たちはたじろぐことはない。なぜなら私たちには永久平和主義の日本国憲法がある。私たちは一国平和主義に閉じこもるものではない。一度戦争が起これば終わりが見えない、どこに着地するのか。政治・政策はディールで行われるものではない。何が基本か。憲法第13条個人の尊重、一人一人の個人を尊重してこそその上に憲法があり平和がつくられる。トランプは男と女と二つの性しか認めないという。じゃあオリンピックはどうやるのか、いろいろな会議はどうやるのか、どこで男と女を見分けるのか。それぞれの人が固有のありようを抱えている。体も思想も経験も違っているのが当たり前、そういう人たちの共生、その前提が平和だ。平和でなければ何もできない。この憲法を共に護っていこう。

田中熙巳さん(日本原水爆被害者団体協議会代表委員)…13歳で長崎で被爆した。原爆がどういうものか脳裏に焼き付いている。たとえ戦争でも核兵器は絶対に使ってはいけない。いま世界には12000発の核兵器があり、内4000発が即発射体制にある。昨年被団協がノーベル平和賞を受賞するとは全く予想していなかった。これまで3回有力候補になったが実現しなかった。核兵器禁止条約が制定された2017年ICANがノーベル平和賞を受賞した。被団協は苦しい占領下の緘口令に耐え被爆10年後に全国の被爆者が結集して運動を始めた。ノーベル賞各賞のうち平和賞だけはノルウエーが決める、選考委員も。ノルウエーは日本と同じアメリカの同盟国、被団協の運動を評価することはアメリカにたてつくことになる。なぜ昨年受賞したのか、核をちらつかせて隣国を侵すロシア、イスラエルという核をめぐる情勢があるだろう。核保有国インド・パキスタン紛争が伝えられている。私は受賞記念講演最後を次の言葉で締めくくった「戦争も核兵器もない人間社会をつくりあげましょう」と。ぜひ、私たちの努力を継続してほしい。

古賀茂明さん(政治経済評論家・元経済産業省官僚)…世界は変わりつつある、否、もう変わったかも。戦後日本人はアメリカ一辺倒、価値観を共有できる一番大事なお友達は間違いだった。おかしいのはトランプだけではない、アメリカにはおかしな考えが根強くあることに私たちは気づき始めた、じゃあどうするか。市民のつながりで平和をつくる、が憲法の理念、そこに立ち返ることが大事だ、それは中国との関係を問い直すことと表裏一体だ。中国の人と話してください。誰一人日本との戦争なんて望んでいない。日本だけが長距離ミサイルを発射できるように基地をつくり、北京を攻撃できるように射程距離を延ばす、相手が警戒するのは当然だ。世界がアメリカと距離を取り始めた。参院選は大事な岐路の選択になる。私は衆院も解散に追い込んでほしい、躊躇せず内閣不信任案を提出してほしい、そして我々が勝利する、これが日本を変える道だ。そして理想を高く掲げ世界に訴えていこう。

〈政党・会派からの連帯挨拶〉

辻元清美さん(立憲民主党代表代行)
昨年よりも多くの結集と聞く。大変な状況の中で今こそ憲法を変える呑気な議論をするのではなく、暮らしや世界の平和に向けて憲法を実現していくべきだと、皆さんお考えになったからだろう。参院憲法審査会の野党筆頭理事を務めている、衆院では枝野さんが会長だ。衆院調査会では災害時等に衆院議員の任期を延長するとか緊急事態条項が必要だとか議論されている。おかしな憲法論議は許さない。参院では憲法54条の参院緊急集会があるから憲法改正など必要がない、これが自民・公明を含めての意見。選択的夫婦別姓や同性婚は今国会で対応すべきものだ。それで幸せになる人が増えるのだから。ウクライナ、パレスチナで続く戦争に胸を痛める、平和憲法をもつ日本こそが仲介の先頭に立つべきだ。米中関税戦争、戦争になったら大変、日本は間でおろおろするのでなく、仲介すべき。これを甘いという人々にこれまで何ができたというのか。被団協の田中さんには40年前、車を運転してもらってピースボートの一員として広島を案内していただいた。運動なくして平和なし。内閣不信任案は出すときは出す。野党がどれだけ結集できるかがカギだ。

田村智子さん(日本共産党委員長)
自公は国会の中だけの数を頼んで好き勝手に暴走してきた。戦争国家づくりの暴走を止める、この一点で協同していこう。この暴走の根っこには日米軍事同盟と言われたら思考停止になる政治がある。今の大軍拡も第一次トランプ政権から要求されてその道が切り開かれてきた。トランプはガザから住民を強制移住させてアメリカが所有するなどとイスラエルのジェノサイドを応援している。ロシアのウクライナ侵略を容認している。トランプ関税で世界の国々をルールを無視して脅しつける。日本はこんなアメリカと運命共同体でよいのか。日本国憲法は平和を希求する諸国民との連帯で戦争の心配のない世界をつくろうと宣言している。戦争をなくすには隷属、窮乏ここから人民を解放していくことだと呼び掛けているではないか。世界で大国に委ねず連携して平和をつくる動きが進んでいる。アセアンでもそうした外交が行われている。戦争の心配のない東アジアをつくる、そんな外交を進めていこう。憲法のすべての条項が花開く、平和と民主主義が大きく前進する、真に国民が主人公の新しい日本をつくりあげていこう。

くしぶち万理さん(れいわ新選組共同代表)
今ある憲法を守れ!話はそれからだ、と言い続けてきた。衆院憲法審査会では緊急事態における国会機能の維持を口実に議論が進められている。憲法54条参院の緊急集会があるではないか。1946年、帝国議会の憲法改正案委員会で金森大臣は答弁している、民主主義政治を徹底させ国民の権利を擁護するためには政府の一存における措置は極力防止すべきである、と。非常という口実で憲法が破壊される恐れなしとは言えない、とも。これが立法者の意志だ。緊急事態の名のもとに政府の権力乱用を許さない。消費税廃止を一貫して主張してきた。選挙を前に野党そして一部与党も消費税減税を言い始めている。あれこれ半端なことを言わずさっぱりと消費税は廃止すべきだ。核を含む日米拡大抑止力が強化されている。私たちが取るべきは北東アジアを核の傘から非核の傘へと新しい安全保障の枠組みをつくることだ。

大椿ゆう子さん(社会民主党副党首)
私にとって憲法は入学祝にもらって一回も開かない百科事典のようなものだった。30代半ばの時、非正規労働者として働いていた私立大学を雇い止め解雇された。仕事はあるのに何で解雇されなきゃならない、伝手をたどって労働組合にたどり着き、そこで初めて、大椿さん、有期雇用はおかしいというあなたの直感は正しい、と言ってもらった。3年9か月闘った。結果戻れなかったが初めて憲法28条労働三権の意義を身をもって実感した。権利が脅かされているなら、この権利をもってとことん闘う私を応援してくれる。憲法はそこにおいてあるものではなく使うものだ。91歳の父は会うたびに「戦争はだけは絶対にしちゃあおえんで。勝っても負けてもどっちにとってもええことはねえんじゃけんよお。」と言う。子どもの父は岡山空襲を遠望して花火だと思った。花火を見たことがなかったのだ。私は彼の言葉を受け止め頑固に平和を訴えていく。

伊波洋一さん(沖縄の風代表)
4月24日に今年1月と3月の米海兵隊員による女性暴行事件が明らかになった。一昨年の米軍人性犯罪は明らかになってから6か月間隠蔽された。1995年の少女誘拐暴行事件をきっかけに在日米軍関係事件・事故の通報基準が日米合同委員会で合意された。米軍関係の事件・事故が地域社会に及ぼす影響を最小限にするために、在日米軍にかかる事件・事故の発生の情報を日本関係当局及び地域社会に正確かつ直ちに提供することが重要とし、直ちに県に通報する手続きができた。日米間で通報し合う日米合意があるのに、米軍犯罪の通報義務を日本が止めている。在日米軍の実態は占領の延長だ。日米地位協定の他国並みの改定を求める。九州・山口に住民を避難させる計画をつくっている。2022年1月7日、日米外務防衛閣僚協議で先島・奄美群島を日米共同作戦計画の攻撃拠点にすることが合意されたからだ。全国で基地の強靭化が図られている。今年度中には長距離ミサイルが配備される。安保3文書を廃棄しよう。

〈市民連合からの連帯挨拶〉

佐藤学さん(東京大学名誉教授)…安全保障関連法反対運動の中から市民連合が生まれて10年。市民連合は各選挙で野党統一候補を擁立し勝利させてきた。安保3文書によって日本は戦争をできる国から戦争をする国へ突進している。大軍拡で世界8位から世界第5位の軍事大国へ。第2次大戦後戦争をしてない国は日本を含めわずか7か国だ。なぜ可能だったのか。アメリカ軍が守ってくれたから?違う。アメリカは幾度も日本を戦争に引きずり込もうとしたが、9条がそれを防いだ。この間、経済が、産業が、社会が、教育が、文化が、生活が破壊されつくしている。経済成長率は世界で172位。大きな反対にもかかわらず日本学術会議法案がたった10日の審議で採決されようとしている。軍事研究に総動員するためだ。私たち研究者も反対に立ち上がっている。

〈リレートーク〉

崎浜空音さん(慶應義塾大学法学部4年)
日本国憲法の「国民」にウチナンチュウは含まれているのか、昨年12月の県民大会で私は発言した。出身地の北谷町は50%以上が米軍基地だ。4.28は沖縄にとって屈辱の日、サンフランシスコ条約で沖縄が日本から切り離され主権が及ばなくなった。27年間ウチナンチュウは憲法下に入っていなかった。復帰後何が変わったというのか。私は沖縄が大変だと訴えたいわけではない。沖縄の犠牲のもとに日本の平和があるのではないかと問いたい。ここ東京で基地をなくそう、地位協定を変えようという世論は高まっているか。こんな状況はもう終わらせたい。憲法14条は法の下の平等を謳っている。私が求めるのは簡単なこと、私たちの権利が守られることだ。沖縄の現状は日本が変わらないと変わらない。

高井ゆと里さん(SRHR市民社会レポートチーム)
昨年国連の女性差別撤廃委員会による日本審査に参加した。女性差別撤廃条約を日本も批准している。昨年委員会が着目したのはSRHR=性と生殖に関する健康と権利だ。13条、14条、24条…ジェンダー平等の灯は憲法が与えている。戸籍の性別変更に精巣や卵巣の除去手術を義務化している性同一性障害特例法に2023年10月25日最高裁は違憲判決を下した。戦後12件目の違憲判決だ。少数派の私たちも憲法は守ってくれていると実感した。政府は委員会が皇室典範に言及したからと言って不当にも委員会にお金を使わせない、専門家を日本に来させないと妨害している。

高橋千絢さん・源島菜月さん(日本国際ボランティアセンター)
30年来ガザと東エルサレムで活動してきている。ガザ現地スタッフからの手紙「戦闘前はそれなりに平穏な生活があったが、今考えているのは一瞬一瞬を生き残ることだけ。自分だけでなく家族も危険にさらされている。食料がない、以前は口にするなど考えられなかったものを口にする、体重は16キロ減った。行き場なく家を追われることを恐れている。緊急に切実に平和を必要としている。人間として生きたい。」

ヨルダン川西岸ジェニンで文化センターを営むパレスチナ人からの手紙「ここでもガザのような破壊が進んでいる。被爆を経験したあなた方はガザが受けた原爆8個分の爆撃を想像できるか。6万人の死者と12万人の負傷者ではまだ足りないというのか。ヨルダン川西岸では4万人が避難を余儀なくされ、難民キャンプでは虐殺・襲撃が続いている。これを止めるために、あなたがたと日本政府が今こそ行動すべきだ。」

最後に実行委員会の小田川義和さんが行動提起を行い、ユキヒロ&『5.3憲法集会みんなで歌う合唱隊』の歌声に送られて続々とデモ行進に出発した。」

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かがやけ憲法!平和といのちと人権を 2025年5.3おおさか総がかり集会に3500名が参加

松岡幹雄(とめよう改憲!おおさかネットワーク) 

今年も晴天に恵まれた憲法記念日。扇町公園で開かれた憲法集会に3500人の市民が参加した。午前中は府内各地でも憲法集会とパレードが取り組まれた。

オープニングは、和太鼓サークル「土魂鼓(どこんこ)」による演奏からスタート。和太鼓と横笛の軽快なリズムと音色が響きわたった。「土魂鼓」は、昨年、結成35周年をむかえた“愛と平和、子どもたちの未来”のために活動しているサークル。

集会の司会は労金労組の小出真理子さんが務めた。

まず、主催者を代表して1000人委員会・大阪の米田彰夫さんが挨拶。
「今年は戦後80年、憲法の役割は大きいと思う。戦後80年、日本は戦争してこなかった。しかし、いま世界はどうか。ロシアがウクライナに侵略し、ガザでは、イスラエルによる虐殺が続いている。国際社会はこれをとめることができていない。日本が平和憲法を世界に発信していくことは重要かと思う。自公政権が昨年選挙で過半数を割り、憲法改正へ賛成派が3分の2を満たさない状況。でも、3分の2近い議員が存在している事を忘れてはならない。一昨日、船田元という自民党の議員がこういっている。『今が少数与党であることを熟議の好機と思う。わが党が3分の2を回復した暁には必ず憲法を改正する』。私たちはこのことを忘れてはならない。今日の毎日新聞の調査では、憲法改正反対の世代間率では18歳から28歳では、43%が反対している。うれしくも思う。若い世代への継承をめざして運動をどんどん広げていこう。」

続けて集会は、メインゲストによるミニ講演。講師は、長崎大学核兵器廃絶研究センターRECNA准教授の中村桂子さん。
中村さんは、「昨年、日本被団協がノーベル平和賞受賞。このニュースに胸を熱くした。しかし、このタイミングでの受賞は、いかに私たちの世界は核を巡って危険なところにいるのかその裏がえしにほかならない。世界は、かつてないほどの逆境にさらされている。核軍拡の時代に入ってしまっている。今の日本において、核兵器廃絶の世論をどう広げていけばいいのか。実際、核兵器があった方が良いという子どもたちの多くは、小学校から被爆者の話を聞く経験を持っている。核は無い方が良いということを心の土台にはしっかり持っている。しかし、『でも、しかし』という言葉がついてくる。核が無くなったら日本は危なくなってしまうのじゃないかと。世界のリーダーもそうだ。『被爆地の気持ちはわかる。でも、だけど、現実はそう簡単ではない。』こういった反応もある。しかし、問い直してみたい。この理想と現実、二項対立の前提そのものが間違っていないか。その前提を問い直す動きが起きている。それが核兵器禁止条約を中心とした今の世界の動きだ。私は、3月に国連で開かれた第3回締約国会議に参加してきた。そこで、この『でも、しかし』の壁、これを打ち破ろうとしている締約国に意思を見てきた。単なる理想ではなく、私たちは、より安全になるための具体的合理的な道なんだと訴えられていた。

被爆者の言葉を思い出してほしい。1956年の被団協の結成宣言には『かつて私たちは自らを救うと共に私たちの大金を投じて人類の危機を救うという決意を誓いあった』と書かれている。原爆投下からわずか11年。被爆者たちは自分たちだけじゃなく世界を救うために立ち上がった。対立と憎しみと暴力の連鎖が続く世界の中で、この被爆者の思いを胸に声を上げていかねばならない。戦争被爆国としてそして平和憲法を持つ国との市民として。」

つづけて市民スピーチ。まず、パレスチナ連帯の運動を続けている関西・ガザ緊急アクションの松尾和子さん。「1947年5月3日に施行された憲法。その前文に『われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する』とある。今、パレスチナ、ガザの人々は、間違いなく恐怖と欠乏のなかにある。そして、このことを誰もが知っているのに、20か月に及ぶ5万2千人以上の虐殺はとめることができていない。この憲法を遵守するなら、虐殺やめろの声を上げるときだ。いま、戦後世界の最も過酷な矛盾の中にあると思えるパレスチナを前にして、この日本社会の空気感は、侵略植民地支配の被害の痛みを思い、知り、侵略した側の人間としてその歴史を克服する『戦後』を生きてきたのだろうかと自問している。実は根底は戦前のままだったのではと危惧をする。そして関西に暮らすわたしたちが見過ごすことができないのは、大阪万博がイスラエルを招致して開かれていること。『命輝く未来社会のデザイン』がテーマの万博に、ジェノサイドを続けるイスラエルを呼ぶとはどういうことか!その命の中にパレスチナ人は入ってないのか。」

つづいて、京都・祝園ミサイル弾薬庫問題を考えるネットワークの志水博子さんがアピール。
「精華町にある祝園分屯地はもともと本州最大規模の施設だった。そこにいわゆる『安保3文書』をうけ、2023年末、祝園を本州の補給拠点とし、陸・海自衛隊共同使用にすべく102億円の予算をかけて増設されることが明らかになった。さらに、2025年度予算197億円とあわせると、実に300億円近い税金をかけて、現在、陸上自衛隊祝園弾薬庫の増設が進んでいる。そこに何が保管されるのか、ミサイル弾薬が収められることは明らか。今回のミサイル弾薬庫増設は、日本も加入している武力紛争時における人道的保護を目的としたジュネーブ条約第58条軍民分離の原則に違反している。現在、全国14か所の弾薬庫新増設が企図されている。増設計画を中止させるために防衛省に対して住民説明会開催を求める署名を取り組んでいる。ぜひ、ご協力を。」

政党紹介に移り、立憲民主党・森山弘行衆議院議員、日本共産党・辰巳孝太郎衆議院議員、社会民主党福島瑞穂参議院議員、れいわ新選組から大石あき子衆議院議員代理の方からそれぞれ連帯の挨拶があり、大きな拍手で確認された。集会は最後に、大阪憲法会議の丹羽徹幹事長が閉会の挨拶・行動提起を行いデモ行進に出発した。

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緊急声明「民主主義を破壊する『日本学術会議法案』の徹底審議と廃案を!―思想信条差別答弁の撤回および坂井担当大臣の辞任を求めます―」

「日本学術会議法案」が、抜本的修正を求める学術会議を無視して、わずか14時間の委員会審議で
衆議院を通過し、参議院での審議が始まろうとしています。
衆議院での審議の過程では、一部の議員が法案審議の場を乱用する形で、学術会議の沿革・歴史に対する根拠なき中傷や会員・元会員に対する一方的個人攻撃を行ない、法案提出責任者である坂井担当大臣がこれを制止するどころか、むしろ便乗・呼応して、「特定のイデオロギーや主張を繰り返す会員は今度の法案では解任できる」と答弁するという重大な事態が生じました。
今回の法案で新たに設けられた会員の「解任」に関する規定や「罰則」規定が、実は思想信条による選別・排除のために用いられ得ることを暴露したものといえます。これはもはや「学問の自由」、あるいは学術会議に関する政府の介入強化という問題の域を超えた、人権や民主主義の根幹に関わる事態と言えます。
このような法案の成立、あるいはそれ以前にこのような答弁が政府により国会でなされること自体が、民主主義にとっての重大な脅威であり、許されません。特定政党・個人への攻撃を行なうことで議場内に恐怖と萎縮を引き起こし、政党間にも分断を持ち込もうとする議員の言動と、これに呼応する坂井大臣の答弁は、ほとんど全体主義やファシズムの到来を予見させるものでさえありました。坂井大臣は答弁を撤回し、辞任すべきであり、その実現のため、国会は党派を超えて立ち上がるべきと考えます。
学術会議を解体し、その独立性・自律性を奪って政府の意のままになる機関にしようとする今回の法案は、学問の自由、ひいては私たちの社会の民主主義の根幹を脅かすものです。私たちは本法案に断固反対し、廃案とするため、以下を求めます。

「日本学術会議法案」を廃案に!

  学問の自由、ひいては平和と民主主義を守るため、すべての政党が自覚を新たにして党派を超えて立ち上がることを求めると共に、研究者、学協会、文化・芸術団体、そしてすべての市民が声を上げることを呼びかけます。
2025年5月20日 日本学術会議「特殊法人化」法案に反対する学者・市民の会

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第193回市民憲法講座 「現場から考える労働基準法改訂」

鴨 桃代(労働組合なのはなユニオン委員長)  

(編集部註)4月26日の講座で鴨桃代さんが講演した内容を編集部の責任で要約したものです。要約の責任はすべて本誌編集部にあります。

労働相談で強い武器である労働基準法の改訂問題

私は、なのはなユニオンという労働組合を1988年に立ち上げて、そこから35年近く労働組合の運動してきています。労働基準法改正についてのお話をしてくださいということで依頼がありました。私は現場しか見ていなくて、しかも目の前の問題をどうするのかにかなり追われている状態で、私が何か問題提起できるのかなっていうところが、不安でした。もう1つは、毎日すごく相談が多いのです。今までは1日、相談も1件というふうに決めていました。ですがこの頃、朝やって夜やってみたいなことが出てきてしまって、もう交渉相手に対して、何を言うのか、という頭になっているんですね。

そういうことで、すごく不安ですけれど、労働基準法の改正というのは、そういう私たち現場にいる者にとっても非常に大事なものであって、それでユニオンという、私のやっているような小さな労働組合は、相談者からの相談を受けて、その問題をどう解決していくのかというのが、基本になっています。相談者から相談を受けたときに、その相談が法律的に違反しているのか、してないのかというのをまず自分の中で判断をする。違反はしてないけれども、労働組合だからいわゆる裁判ではないので、プラスアルファのところを労働組合としては、運動として作っていくことができます。そういう意味では、この問題は、取り組むことができるのではないかとか、そういうことを考えていきます。

ただ一番取り組みやすいというか、企業とか使用者に対してはっきり物が言えるのは、労基法違反ですというのがはっきり言えます。これは労働組合としてはすごく強い武器であるというふうに思います。

課題山積の労働現場で労働組合の役割は?

その労働基準法が何回か改正をされてきました。そういう中で、今回また改正がされるということで、1月8日に労働基準関係法研究会報告書が、50ページもある、こういったものが出されました。今の労働現場の現状は、本当にあらゆることがあります。長時間労働、過労死、過労自殺もそうですけど、ハラスメントも本当に横行していますし、長時間労働も相変わらずあります。そんな中で相談に来る労働者は、多くがメンタルを発症している状況で、労災をどうするのかとか、傷病手当の申請ができるのかできないのかとか、そういうことも、こちら組合としても、かなりこと細かに対応しなくてはならなくなっております。

そんな中で、労働組合全体を見たときに、私も労働組合やっているからあまり言いたくないけれど、運動としては方向性が定まってないなというように思います。今日は連合のメーデーがあったんですね。私も朝、参加しました。来賓が石破総理大臣、それから厚生労働大臣、それから小池都知事ですよ。もう入り口に着いたら、荷物検査が始まっちゃうんですね。荷物検査だけじゃなくて、ボディチェックもやります。“これって何なの!”“誰がここの主人公なの!”というふうに、すごく思います。

私たち全国ユニオンは、そういうものにすぐ反発するので、「この場は誰のためのもの!」という横断幕を張り出しました。“均等待遇を実現してくれ”というようなことも含めて、そういった横断幕を張り出したわけです。労働者のお祭りという意味から言っても、お祭りではなくなっているし、みんなで楽しもうというものもない。ただただ、来賓の方のお話を聞いてそれで終わるというような、そういう集会です。本当にこれが働く者の祭典と言えるのかという風に、すごく思って帰ってきました。当然デモ行進も無いし、「はい終わりました。」で終わりということです。

最低基準が最高基準になっている労基法の現状

今年の春闘において連合会長は、中小も5%近い賃上げをしたと報告をしていましたけれども、でも労働者自身が、私たちが勝ち取ったという実感が持てないじゃないですか。私は本当に大事だと思うのは、どれだけちっちゃい結果であっても、春闘はやっぱり私たちが勝ち取ったぞという結果を、どれだけ労働組合が持つことができるのか、労働組合に結集している労働者が持つことができるのか、そこがすごく大きな次の一歩につながるというふうに思います。そこのところの迫力は、やっぱりないですよね。この間、自民党といろんなお話をされて、そこに一定程度は少し頼って、というようなことも含めてあるならば、やっぱり労働組合は迫力無いなって思います。私は自分も労働組合だから、連合だけを批判するのは嫌だといつも思いますが、でも頑張って欲しいなといつも思ってしまいます。

もう一つ気になっているのは、国際的な動向からいって、いつも日本は人権のところ、とくに女性の人権というところがなかなか改善されていかない。常に言われている、そこのところがなぜここまで改善がされないのかを、私たちはやっぱり考えていかなければいけないというふうにも思っております。

そんな中で、労働基準法は労働者にとって、働くことを守るための本当に大事な大事な基準であると私は思っています。労働基準法は、そもそも最低基準を定めているんだよと言われても、現場の中の実感は、最低基準じゃなくて最高基準になっています。パートの時給なんかも、いつも最低基準、最低賃金すれすれで、それでいいじゃないかというふうに言われます。最低基準を超えているから、問題無いじゃないかと言われる。もっと言うなら、この頃言われるのは、「そんなにお金が欲しいんだったらダブルワークしなさいよ」というのが、交渉の場で出てきてしまう。そんなことでは、やっぱりおかしいですよね。最低基準、ここは絶対守らなきゃいけない基準です。でもその上をどうやって作るのかというところが、私たちがやるべきことであるとは思っています。

労働の質を劣化させてきた労働法制の規制緩和

今はすごく人手不足で、そういうことの現れだと思いますが、労働基準法がもっている実効性を担保するための監督官としての指導だけではなくて、それこそ罰を課すこともできるとか、現場に入って実態を問題提起することもできるとか、そういったところが見えないんですよ。

私たちのところに来る相談は、「労働基準監督署に行きました。労働局にも行きました。だけど、解決できなかった」ということで来るんです。そうすると会社の方は、もう労基署から何らかの指導というか、どうなっていますか、ということを受けているわけです。だから交渉に行くと、もう労基所との話は終わったよ、みたいなことを言われます。そして労基省との話が終わっているのに、なんであなたたち労働組合と話さなきゃいけないのかい、みたいな話になります。これまた労働基準監督署にも、労働基準法を守るという意味で、本当に頑張っていただきたいなというふうに思うところです。

もう一つは、今回は労働基準法改正ということですけれども、これまでずっと労働基準法というか、労働法制の新設とか改正があったわけです。1947年に労基法が制定されて以降、いろんな形で労働法制が作られたり、改正されたりしてきた歴史がずっとずっとあります。簡単にその経緯を書きましたが、労働基準法では特に労働時間のところがどんどん改正されてしまっています。労働法制に関して言うと派遣法も改正が激しい労働法制です。

派遣法は、85年に制定されて以降に改正、改正につぐ改正です。それこそ先ほど私が2009年にこの場でお話をさせて頂いたということですけれども、派遣村の時にいわゆる日雇い派遣、それから派遣切りが大きな問題になったわけですけれど、今はまさに何でも派遣という状態になってきています。今、禁止されているのは、建設業務と医療業務の2つだけになってしまっています。

本当に信じられないことですけれども、教育現場でも派遣の先生が働いている。先生自身が悪いわけではないけれど、派遣という雇用の中での教師というのが、今現場にいます。2009年に派遣法は改正されて、それで派遣労働者の保護が初めて法律の中に入ったわけです。日雇い派遣についても、原則禁止とか、いろんな規制がその中でかけられました。そうであっても派遣という働き方が、今どんどんどんどん広がっているのも、これまた事実です。

派遣の労働者とパートの労働者の間で、現場でいうと派遣の労働者の方が同じ仕事をしていても、結果的に時給が高いんですよ。直接雇用のパートの方が安い。そうすると、直接雇用のパートさんの方から、なんで派遣は高いのに私たちは、というようになっています。同じ非正規労働者、同じ女性労働者どうしが、そこで分断、軋轢がある。そういう現状が生まれているのも事実です。

労働時間については、1日8時間、週48時間が、これは週40時間になりました。労働時間の場合は良い方に改正されたと思います。でもそうではなくて、いわゆる変形労働時間制とか、それから裁量労働とか、みなし労働とか、2007年には、ホワイトカラーエクゼンプションという高度プロフェッショナル制度と呼ばれるようなものまで、そこまで改正が進んできているのも事実なわけです。

こういう中での今回の改正です。法律が規制緩和されてきた。その規制緩和が、やはり労働の質をどんどん劣化させているところにつながっているのではないだろうか、というふうにも私は、思っています。今回の労基法改正に求められているのは、そういった規制緩和にも歯止めをかけていくということが求められているのではないのか。そういう意味では、これからの労働のあり方ということで、やはりディーセントワークとか、それから世界の流れの中で遅れている人権の取り組みをどう取り組んでいくのかとか。そういうところをもっともっと私たちは取り組んで、改正の中に盛り込んで頂きたいと思っていましたけれども、そうでないところも今回の改正の中で見受けられると思っています。

労働現場からの意見がない学者による研究会報告

今回の労働基準関係法の研究会報告ですが、この審議会はいわゆる労働組合というか、労働現場の方が誰も入っていないんですよね。この後、労政審、いわゆる審議会が始まりますので、そこの中で労働者の代表ということでの意見や議論がそこに入ってくるのだろうと思います。労働組合のメンバーが入ってないということで、この研究会報告は、こと細かに、いろんなことをいろんな角度から意見が出されています。意見は出されているけれども、労働現場の実感から言うと、労働現場の実感からちょっとやっぱり違うなということです。そこはやはり研究者の方たちの感度で、この研究会はなされてきたのではないだろうかと思うところです。この研究会の皆さんに問題があり、ということではないけれども、こういう研究会を行うということでいうならば、労働基準法というのは、労働現場に密着した法律ではあるので、やはり労働現場の人を入れて欲しかったというのは思っています。

 報告書の内容と問題点ということです。50ページもあって、私の頭では、とても全部把握しきれたとは言い難いですが。はじめにというところは「研究会の目的・研究の視点」ということで、これまで一律とされてきた最低基準です。労基法というのは最低基準であるということで一律に設定されてきました。そこのところについては、社会や経済の構造変化に応じて、働く人も働き方も個別化してきているので、そういったところに合わせて、抜本的検討を行う時期に来ているということで、この研究会が持たれたということです。

「報告書」の主要内容と問題点・過半数代表を軸とした労使コミュニケーションは課題が多いという指摘

今回の労働基準関係法研究会報告書(以下「報告書」)の内容の中でかなり意識されていたと思うのは、2023年の「新しい時代の働き方に関する研究会」が示す視点ということです。全ての働く人を守る、働く人の多様な希望を支えるということ、この視点に沿って書かれているというふうには思いました。しかしその中身が、働く人を守る、働く人の多様な希望を支えるということに実態的になっているのかというと、そうではないのではないかと思いました。

一番気になっているのは、「現在の過半数代表を軸とした労使コミュニケーションには課題が多い。」という指摘です。そして、「それぞれの規制において適切な水準が担保されることを前提に」として、次に「労使の合意等の一定の手続きの下に個別の企業、事業場、労働者の実情に合わせて法定基準の調整・代替を法所定要件の下で可能とする仕組み」というところです。ここのところに、かなりの報告書の重点が置かれています。

その仕組みを支える基盤ということで、「はじめに」のところでは「実効的な労使コミュニケーションを行える環境の整備が必要」であるというふうに書かれています。これはこの間ではデロゲーションという言葉が使われていますが、「法定基準の調整・代替」という意味でデロゲーションという言葉が使われています。今回この報告書の中には、デロゲーションという言葉そのものは入っていません。入っていないけれども、私が読んだところでは、こういったことがデロゲーションという意味合いを、同じ概念を、デロゲーションという言葉ではなくて、こういう概念で表しているのではないかと思いました。

 労使コミュニケーションというこの集団的合意によって、それから労働者の自己決定であるということで、最低基準の基準法の適用除外というものが拡大できる。その方向に進めていきたいというふうにこの研究会報告書は言っているのかどうか。私は言っているのではないかと思ったところです。ここはちょっと皆さんのご意見も聞いたほうがいいかなと思っております。

労働基準法制に共通する総論的課題として「労働者」の概念と「労働者性」の」判断基準の問題

次に、具体的に労働基準法制に共通する総論的課題というところで、ここから一つ一つの論点と内容に入っていくわけです。労働者性の概念や労働者性の判断基準の問題を検討しています。労働者の働き方が本当に多様化しているということで、労働者であるのか労働者でないのかということも、今、 現実にいろんな働き方の中で指摘されてきているところではあるわけです。

労働基準法の9条は、職業の種類を問わず事業または事務所に使用されるもので、賃金を支払われるもの、これが労働者であるというふうに限定されています。だけど、現状は労働契約で労働者が契約を結んで働くわけですけれども、いわゆる労働契約ではないと言われてしまう請負というような働き方もすごく広がってきていています。2000年の「派遣村」の頃だったと思いますが、やはり偽装請負という言葉がかなり横行したと思います。

私たちの労働組合の、オリエンタルランドでパフォーマーの人が解雇されました。オリエンタルランドのパフォーマーというのは、やはりオリエンタルランドの直接雇用ではなくて、他の会社に雇用されていて、オリエンタルランドに出演のために来ているという、そういう働き方の方たちだったんです。

オリエンタルランドの会社は、団体交渉を申し入れたら、会社側は団体交渉に応じる義務はないというふうに言われました。その義務をめぐって、その後、労働委員会をやったり、それからいわゆる偽装請負であるということを労働局に申し立てをしたりとかいろんなことをやったわけです。今、そういった働き方が、ますます広がってきているわけです。

横浜では「ウーバーイーツ」の方たちが労働組合を作って訴え、労災認定をされました。それでそういった、いわゆる「誤分類」という言葉で書かれていました。

誤分類の問題は、いわゆる労働者か労働者ではないのかという規定です。だけど相談に来るケースから言うと、圧倒的に自分は請負で働いていますという方たちは、圧倒的に労働者ではないか。労働者ではないかと言っているのは、いわゆる業務指針を会社から受けている。それから労働時間を会社から管理されている請負会社ですね。それから業務で使用する服、業務で使用する物も全部会社から与えられたものである。そういったことです。だけど、これは請負だよということで団体交渉の対象にならないとか、怪我をしても労災は対象外だよ、という風に扱われてしまっている方たちが増えてきていまです。

今はそれだけではなくて、場所にとらわれない働き方ということで、テレワークとかがあります。それから「スキマバイト」。今「スキマバイト」という言い方だけではなくて、いろんな言い方をしていると思いますが、私たちは「スキマバイト」と言っているんです。そういった働き方がすごく広がっているわけです。

 資料にスキマバイトの図を入れてあります。これも皆さんは新聞、報道等でご存知の働き方だと思います。うちの組合員も何人か、このスキマバイトで働いています。その中で、女性の方ですけれど、何が問題なのかというと、彼女の場合はアプリでいわゆる仕事をマッチングして、その仕事先に行きます。アプリで大体仕事の紹介や具体的な内容が、まず提示されています。例えばスーパーの惣菜を扱うところで、業務で包丁等は使わないと書いてあるそうです。ところが実際行ったら、女なんだから包丁なんか使えるのは当たり前じゃないかと言って、包丁を使わされる。それから、肉のミンチの機械、ああいうのをすぐやれと言われる。それについて、もうその場で断りきれないということです。そういう問題があります。

それから不安に思っているのは、行った先に仕事があるのか無いのかわからない。行った時に仕事があってよかった。仕事が無いとなった時に、その時間、自分が業務に就く予定になっていた時間は、労働をしなかった時間として、そこに対する補償が何もない。

それから突然休む。具合が悪くなりましたということで、今日は仕事に行けませんというと、次の仕事の紹介がなくなってくる。そいうような働き方になってしまっています。2008年の頃に問題になった、日雇い派遣という働き方がありました。日雇いの派遣とある意味同じですけれど、日雇い派遣は派遣会社が一応は責任を持つ、雇用に対して責任を持つ立場にあったということが、ある意味明確でした。ところが、今回のスキマバイトは、どこが責任を持つのかというところが、明確にはなっていないということです。

労働社性の判断は働く側か事業者側に置くのか

 もう1つ、スキマバイトはどんどんいくつもいくつもでやっていくと、労働時間が結果的には1日8時間とか週40時間を超えてしまう。そういうスキマバイトで働いてしまっている人たちも出てきてしまっているわけです。

だけど、その労働時間は、どうやってカウントするのかという話を厚生労働省と全国ユニオンは、この問題で交渉を始めました。まだ厚労省の方も実態がなかなかつかめないということで、明確な方向性が示されていないという現状です。私たちは今の段階では求人の企業ではなくて、いわゆるアプリの事業者に対して、雇用責任を持つということだけでも最低限はまずやるべきではないですか、ということで、この間交渉をしております。

本当にそういった働き方がどんどん出てきてしまって、一つ一つの労働者であるかないのかという問題に、労働者が抱えた問題に行く前の、労働者であるかないのかというところ、そこでの交渉をしなければいけないというのが現実であって、そういう意味で、今回のこの研究会報告の中では、労働者性の判断において、立証責任を働く側に置くのか、事業者側に置くのかというところを問題提起されています。この問題提起は、本当にきちっとして頂きたいところと思いました。

それと、家事使用人のことが出ています。何10年も前ですけれど、家政婦協会で働いている方から、本当に24時間くらいの働き方になっていて、残業代を欲しいということでした。労働基準監督署に行ったけれども適用除外だ、というふうに言われたという相談を受けたことがありました。本当に家事使用人と言われる方たちです。もう現状では、「お手伝いさん」という感覚で働いている訳ではなくなっている。それにも関わらず、ここのところが適用除外になっているということです。

家事使用人だけではなくて、技能実習生とか、シルバー人材センターで働いている方とか、家内労働者が、いわゆる現行法の適用除外になっている。この研究会そのものが、いわゆる社会的な経済的な構造の変化に伴ってというわけで、そこをまずは目指しているわけです。そういう意味では、この適用除外となっている今の状態というのが、本当にそういう意味で、このまま置いておいていいのかというところは、もっと突っ込んでいくべき内容ではないかと思います。

それで、変化に伴う検討課題は本当にすごくたくさんあったので、私の方でレジュメの中で項目しか入れてないものもありまして、「事業場概念」は省略しました。

労使コミュニケーションの格差だからこそ必要とされる労働組合

労使コミュニケーションについては、この中でしっかりと書かれています。この労使コミュニケーションということで、集団的コミュニケーションという意味で言うと、いわゆる団体交渉を通じて労働条件や労使関係ルールを設定する。これは「労働組合が行うこと」というのはその通りだなと、今までの労使の関係だなという風に思います。けれども、その次が私はおかしい問題じゃないかなと思います。

これは先程来言っている、「法律で定められた規制の原則的な水準について、労使の合意等の一定の手続きの下に、個別の企業、事業場、労働者の実情に合わせて法所定要件の下で法定基準を調整・代替を可能とする仕組み。」というのがあります。それから、そういったことをモニタリングとか、労働規範をきちんとやっていきましょうとか。

そういうのが、集団的コミュニケーションではないか、という中において、「労使コミュニケーションの実情」ということで、この研究会の中で問題としているのは、労働組合の活性化が労働組合法における労働組合の規定というのは、個人では本当に圧倒的に弱い労働者がやはり団結して、それを背景として、労働者の交渉力を使用者と対等の立場に置くっていうのが、それが労働組合法における労働組合の規定であるということです。「労働者と使用者との間の交渉力の格差」っていうのがあるからこそ、労働組合が必要であるということで、労働組合法があるということで思っております。

そうだということだと思うんですが、そうであったとしても、いずれにしても労使「労働者と使用者との間の交渉力の格差」は、今もって変わらないものであって、だからこそ、私たちは労働組合は必要であるし、もっともっと強くならなければいけないというふうに思うわけです。

「過半数代表者」ではない少数者組合にも支援を

この研究会で労働組合を活性化していくという対象としている労働組合は、過半数を超えている労働組合として取り上げられています。そういった労働組合が無いということで言われているのが、過半数代表者です。過半数を超えている労働組合に対しては、労働組合が弱くなっているような現状においては、そこをもっと活性化しなければいけないということで、支援をしようということは出されています。

その支援の内容が、活動時間を確保するとか、使用者から情報提供を受けるとか、意見集約のための労働者へのアクセスのための従業員名簿を提供したりとかをあげています。それから意見集約を行うためのいわゆる企業内のネットなどを使用することを労働組合に協力するとか、そういったことです。そういうことで支援はしましょうというのは出されています。それは過半数を超えた労働組合に対してということです。ただ、こうした支援の内容は別に否定すべきものではないけれども、これをやると労働組合は本当に活性化するのかな、というのは非常にハテナが出るということです。

そもそも過半数の労働組合が無いところの職場、そこについては過半数代表者というところをすごく注視しています。

私のような少数派組合からすると、過半数組合ではありません。うちのユニオンは支部と言われているものが、いくつかありますけれども、その中で過半数を超えている組合は2つしかありません。他はもう本当に少数派組合ですよね。

その典型がオリエンタルランドで、2万人いる従業員のうちの非正規労働者1万9000人かな? 1万9000人のうち、うちの組合は10人ほどです。圧倒的な少数組合であるのは事実です。そうであってもいろんな春闘も交渉をしています。それから現場で働いている人たちが、はっきりとうちを選択してくるのはどういう時なのか、というと、自分の問題です。

自分が雇用契約を更新されない。それから賃金が減額をされた。それからパワハラを受けた。こういう問題です。こういう問題のときに、相談に来るオリエンタルランドで働いている方たちがはっきり言うのは、オリエンタルランドの中にある会社内の労働組合は、こういう問題については扱ってくれません。であるので、「なのはな」さんに相談に来ました。はっきり分けているんですよ。そういう意味では、労働組合をもっともっと強くしなければいけない。

支援しなければいけないことから言うならば、過半数の労働組合だけではなくて、私たちのような少数派組合であったとしても、職場の中で本当に労働者が働いていく上で、大事な労働組合として、支援する対象に挙げていきたいと思います。

少数組合または組合がない場合の過半数代表者

この過半数代表者について、現状として例えば過半数代表の選出が、事業上において適正に行われていない場合があるとか、それから過半数代表者の役割を果たすこと自体が、労働者にとって負担である。そういうことで、小さなところでは結局、会社のほうが過半数代表者をほとんど選んでいる。大企業はちょっと分からないけれど、私どものような小さな労働組合に来る会社は、ほとんどが働いている労働者は、誰が過半数代表なのか全然知らないんですよ。会社が選んでいる。たまたまうちが過半数代表を取った組合なんかだと、やはり36協定とか、それから春闘のときの協定とか、そういったものは一応、我が組合の支部長が代表になって、そこにサインをします。けれども圧倒的多くは、誰が選ばれているのかは全然知らない、というのが事実なわけです。

そこについて、かなりこと細かに、そういった状況を改善するためにということで、選出方法の選出の手続か、この研究会報告の中では色々書かれています。

 それから過半数代表者の、その労働者が役割を適切に果たすために教育を受けさせることが、研修の機会を作らなければいけないとか、行政がそういった過半数代表者の相談を受ける形が望ましいのではないかとかの記述があります。あと過半数代表者の人数とか、何年間やるのかとか、そういったものが、かなりこと細かに、この研究科報告の中には問題提起をされています。

支援をしていくという方向性そのものは決して悪いということではないとは思うんですけれども、その過半数代表者を支援するということが、先ほども言ったような、いわゆるデロゲーションと言われるような、そういったところに向かっていくとするならば、ちょっと要注意で、私たちは、この過半数代表のところを見ていく必要は、あるのではないかなっていうふうに思いました。

そういう意味で私は、やはり労働組合がない職場の中で、いわゆる労使、労働使用者と、過半数代表者との間で、法律が定められた規制、いわゆるデロゲーションが行われていく、というようなことだとしたら、やっぱり、これは問題であるので、そこの方向性については、きちんと問題ありということを言うべきではないかというふうに思います。

そして、過半数代表者というところを過半数を取っている労働組合のみを代表とするのではなくて、そこに労働組合、少数であっても存在しているとするならば、そういった労働組合のものを過半数代表者にするということも、そういうことも視野に入れていくことがあっていいのではないかなというふうに思いました。

労働時間法制の具体的課題と危険性

長時間労働のところで、労働時間法制の具体的課題についてです。この労働時間のところは、私の言い方だとかなり規制緩和になります。どんどん変えられてきちゃっているのが現実だと思っています。

この中に上限規制のところでは、いわゆる高度プロフェッショナル制度とか、裁量労働制とか、そういった働き方がどんどん出てきていますし、高度プロフェッショナル制度そのものについては、この提案がされたときにかなり反対があったと思います。そもそも高度な知識やスキルを持つ労働者を対象に、労働基準法は基本的には適用外だよ、というふうにされるわけです。それで対象労働者は高度な専門知識を持っているとか、業務の内容や責任とか、見込まれる給与が1075万円以上であるとか、そういったものが入っています。また対象業務が、金融商品の開発とかコンサルタントとか、一定程度こういう形で限定をされています。こういったものに関連するということでのデータ入力とか、そういうものは対象外だということです。ここでは、かなり高度な知識やスキルを持つ業務だと言っているという風には思いますね。

 だけどこの制度について言われているのはメリットということで、生産性の向上が期待できる。なぜかといったら、労働時間ではなくて成果で測るものだから、ということです。働く側も、効率的な労働を心がけるようになるとか、従業員で仕事をする人、しない人、それから仕事が遅くて残業になってしまう人、残業にならない人みたいな。そういったところの不公平感が、この制度によって軽減できるとか、ワークライフバランスを実現しやすいということで言われているわけです。

でも現場の実感でいうと、この高度プロフェッショナル制度というのは、一方では、長時間労働のリスクというのは持っています。それから評価基準の設定というのは非常に難しいわけで、そういう意味では、この高度プロフェッショナル制度が、有給休暇を除いてすべて労基法の対象外です。他のものは全部対象外であるというこの働き方を、これ以降も広げていくことについては、かなり危険性があるのではないかと思います。

裁量労働制もそうですね。まさに実労働時間に関係なくて、労使協定で定めた、「みなし労働時間」分だけ労働したとみなせる制度ということです。実労働に関係なくということになってくるわけです。労使協定でというところが、職場の力関係によって「みなし労働時間」というのが設定してくるわけです。そういったことも含めて、高度プロフェッショナル制度も裁量労働制も、どちらも対象業務を限定したりとか、使用者に課せられた措置は、それはそれであるわけです。けれども、こういった働き方が現場に行った時に、この通りに運用されるのかどうかというのは、それこそ現場の労使関係の力関係によって定まってしまいます。ということからすると、こういった働き方を広げていく方向性については、かなり危険ではないか、と私なんかは思うところです。

固定残業制度、現場展開での労働時間変更の危険性

資料の2で固定残業制度というのを、表を入れてあります。固定残業制度というのは、残業時間をあらかじめ設定した残業時間に応じて、定額の残業代を払うという制度ではあるわけです。

これはある有名な、皆さんもご存知の駅前のお蕎麦屋さんの固定残業制度です。これを見ると、固定残業時間のところで、係長112時間、店長88時間、店長心得70時間、店長候補が50時間ということです。本当にいわゆる過労死時間を、係長とか店長そして店長心得は働いているということです。これは裁判を起こしたことによって、すぐに会社が変えたのが、60時間、59時間、59時間という固定残業時間に変えました。

基本給を上げて、固定残業時間を下げるということは、固定残業に対する定額残業手当が下がるということです。低くなるということですから、その分をこの会社は基本給を上げることで補って、変更前と変更後を、総額、支払われる額は同じにしたということです。

こういう固定残業制度で、この会社は固定残業時間で働いた分を超える場合も当然あるわけです。そういった場合の残業代は払われていないんですよ。パート、それからバイトの残業時間も30分単位で測られていたのが、それを1分単位にということです。この変更後の段階で、すべて労働時間については、パート、バイトの残業時間・労働時間は1分単位で測る。それから固定残業時間を超えた分は支払う、というように、当たり前の形に変えさせることはできたわけです。しかし、こういった働き方が、どんどん増えてきてしまっているということです。

やはり労働者の方としては、これをもう少しシンプルにする。1日8時間、週40時間で、それを超えたら残業だよというようにする。こういう分かりやすい労働時間制度を、どうやって維持していくのかということは、もっともっと私たちの方は考えなければいけないというふうに思うところです。

働き方に合わせてとか、社会とか経済の動きに合わせてみたいな働き方で、労働時間が、制度が勝手に変更されていくというあり方は、やはりかなり問題があるというふうに思います。今回のこの改正の中で、労働時間のあり方がそういう形で、さらに変えられていく。さらにというのは、こういった変え方が、いわゆる現場展開でできていく。言葉で言ったらデロゲーションという言葉になってしまうのですけれど、そういった形でできていくとしたら、それは、かなり危険性が高いと思います。

テレワーク等の働き方や法定労働時間の特例措置

いわゆるテレワークとか在宅勤務とか、そういう働き方もどんどん出てきていて、その働き方が仕事と家庭生活が両立できるような働き方であるというような、そういう提唱もあるわけです。でも実際のテレワークは、使用者の直接的な指揮命令とか、労働時間を測っていく測り方とか、そういったところが、すごく難しいということです。

私たちのところで問題になっているのは、全部在宅勤務の人たちがいて、いろんな会社との仕事の業務のやり取りは全部、いわゆるネットにZOOMとか、そういう会議で行われていて、そこの中でいろんな議論を交わすわけです。本人の労働者の方は、その仕事自体を良くしたいということで提案をしていくわけですが、そういった会議の場ではなかなかスムーズな議論にならない。そこで言っている言葉自体を全部取り上げられて、参加している労働者から、あの人は怖いっていうような話をされてしまう。そういう問題が出てきています。これは柔軟な働き方なのかもしれないですけども、そこにきちんと規制をかけていくようなところも作っていかないと、このままでは、いい働き方だということで言えることではないのではないかと思います。

法定労働時間についても課題です。法定労働時間、週44時間の特例措置は、これは、撤廃に向けてということです。これは速やかに取り組むべきだと思っています。

いわゆる10人未満の商業とか、それから映画の出演者の人たちとか、接客業の人たちとか、そうした人たちを対象としている特例措置です。これは、この研究報告の中でも、もう役割を終えているというふうに言っているところなので、速やかに撤廃をすべきではないかと思います。

それから、実労働時間規制が適用されない労働者ということで、管理監督者ということが挙げられています。健康福祉確保措置を検討し取り組むべきだということです。それは当然そうだろうなというふうに思います。

労働からの解放、休憩時間などの確保について

使用者が労働者に対し労働から解放される時間をどれだけ確保しはければならないか。いわゆるインターバルという制度についてです。

さっき言ったおそば屋さんなんかでも、早番が7時から3時まで、中番が3時から夜の11時まで、それから遅番は11時から次の朝の7時までというシフトになります。人手が足りないと、早番をやって遅番をやるとか、遅番明けでそのまま中番に入っていくとか、そういう方たちが、かなりいます。結果的に、もう疲れ切っちゃってメンタルを発症したり、といういう結果になってきています。この努力義務である勤務間インターバル制度というのは、もっときっちりと勤務間のインターバル制度を義務とするべきだというふうに思いました。

それから、休憩時間のところです。休憩は、労働から解放されるということと、労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は、少なくとも1時間、労働時間の途中に与える。一斉に与える決まりです。

この休憩時間をめぐって、すごくいろんな相談があります。

今大きな問題は、24時間勤務のような場合に、夜の時間が会社は休憩時間だと言うんですよ。だけど本人たちは、休んでいいという場所に電話があって、いつ呼び出されるかわからないというような状態がある。これは待機であって労働からの解放時間ではないという、そこの争いが結構たくさんあります。

この争いはなかなか難しくて、私たちは労働時間休憩を取れていないという立証をしなければいけないんですよ。休憩時間をとれていないという立証は、労働側がやるのは結構難しいです。この裁判をやったケースで言うと、裁判所も半々ぐらいで判断をしています。取れている。取れていない。こちらが主張した労働時間に対して半々で判断をしているというところがありますが、その問題の相談が増えています。
それから、ここに6時間未満の勤務の場合の休憩の付与というのがあります。

ここは短時間労働の場合ですね。休憩の付与によって、拘束時間が長くなることは望まれない場合が多いからということで、休憩の規制の必要はないと考えられる。この研究会報告ではそうなっています。

オリエンタルランドでキャストの方たちの労働時間は6時間です。6時間働いて、上がる直前にだいたい会社の方が、残業をやってくださいと言ってくるケースが多い。その時に働いている人の方で、6時間だから1回休ませてくださいという。

お昼ご飯も食べないで6時間ぶっ通しで働いているので「残業はやります。だけど、一旦休憩を入れてください」と会社に言うと、会社の方は、だったらあなたは残業をやらなくていいですと言われます。働く側は、賃金が安いからやれる残業は少しでもやりたいと思っているので、残業をやりたいわけです。けれども、そういう形で拒否されてしまいます、というケースがかなりあったので、会社と交渉をしました。

会社と交渉して結果がどうしたのかというと、会社も6時間プラス残業をそのまま継続させるというのは、労基法違反であるというのを認めました。それで、間に休憩を取りたいという人については、休憩を取らせる。ただ早く帰りたい、6時間はたらいて残業をやるけども、私は休憩なんかいらないから早く帰りたいという人もいます。そこの調整が、なかなか難しいです。そこについては本人がそういう希望であるならばということで、交渉の中では、そこで結論を出したわけです。なかなか難しいところもありました。ただ、休憩については、本当に休憩時間に休憩なのか休憩でないのかっていうのが、これは待機時間であるっていう、そういう相談が増えております。
休日も、確保のところで同じような話になってしまうと思います。

36協定に休日労働の条項を設けた場合も含めて、精神障害の労災認定基準にもなっているということで、2週間以上の連続勤務を防ぐという観点から、13日を超える連続勤務をさせてはならない旨の規定を設けるべきだというふうに、この報告の中に入っていました。これは速やかに取り組むべき内容だろうと思ったところです。

つながらない権利

つながらない権利というのがあって、このつながらない権利とは何なのかなと思いました。これは、いわゆる労働契約とか労働時間ではない時間に、会社の方から勤務時間外に電話がかかってきたりとか、業務指示があったりとか、そういうことが増えているということを指しています。この件についても、この中で検討していかなければいけないと書いてあります。

このつながらない権利ということでも、今2つほど相談が来ています。ただ本当に夜中の2時3時にLINEで、「仕事をしたのか」と来るんですよ。すぐ答えないとダメだという風になっていて、答えるというような、そういう実態です。

私も「うーん」と思っているのは、その方の月収が1ヶ月120万円なんです。99万円が基本給で、約20万円が固定、残業手当ということになっていて、120万なんですよ。これは、会社がそもそも24時間働けということだよなぁと。そういう意味での120万を提示してあるという風に思ってしまうところが、ちょっと私の中にもあります。良くないことではあるけれども、でもそうであったとしても、労働時間があるわけです。そんな夜中の2時3時に毎晩、LINEをよこすということ自体は、これは問題だろうと、切り分けて交渉はするんですけれど。

このつながらない権利は言葉で書かれたものというのは、結構多いのではないかと思います。私が言っている1ヶ月120万円というのは外資系の企業です。外資系の企業は本当にもう、結果を出したか出さないかというのが、すごく厳しく競争にさらされているところです。大体うちの組合に連絡をよこすのは、いわゆるグループごとに業務を割り当てられている直属の上司です。その方から来るわけですけれども、そういうものが実態的には増えてきているのも事実だと思います。

120万円だけではなくて、本当に安い安い賃金の労働者に対しても、労働時間を超えていっぱいいっぱいいろんな命令や指示が来ているというのも事実です。それは心の中で、つながらない権利ということで、こういう問題が増えているということで、私たちもこの問題に対してきちっと見ていかなければいけないだろうなと思いました。

年次有給休暇制度と取得時の賃金の算定方法

年休制度については、年休が取られていないということで、いわゆる5日間の時季指定権が付与されて、年休5日間が施行されています。これによって年休の全体的な取得率は上がったという結果があると書かれています。ただ私たちの方にくる問題で言うならば、この5日間というのが大体会社が決めている5日間です。それで、例えば正月休みとか盆休みとかを休んでいたのが、いつの間にか、それが5日間のものに切り替わっているケースが多いのですよ。それで、いわゆる年休という形で言ったら、年5日間が取得義務になりましたので、それでいいのかもしれません。

だけど、いわゆる正月休暇とか盆休みとかいう、そういう休暇という概念から言ったら、別に増えているわけではない。全体的には減っているのではないかという風な現実がすごく多くなっているということです。ですから、この5日間についてこれで良かった、良かったっていうのは、違うのではないかというふうに私は思っております。

 あとはいわゆる有給休暇の賃金の算定方法のところです。これについて3つのやり方があるということです。「労働基準法第12条の平均賃金」、それから2つ目が「所定労働時間労働をした場合に支払われる通常の賃金」、それから3つ目が「当該事業所の労働者の過半数代表との労使協定により、健康保険法上の標準報酬月額の30分の1に相当する額」、こういうふうになっているわけです。

この3つのうちの一番低いのは、計算したところ「健康保険法の・・・」というのが、これが額的に一番低いです。一番高いのは、いわゆる通常の賃金です。

正社員は通常の賃金で支払われていて、パートの方は平均賃金で支払われています。これおかしいじゃないですか、という交渉をずっとやってるんですよ。通常の賃金と平均賃金だと、2万円ぐらい違ってくると思います。私たちは、おかしいって言っているわけです。今回の研究会報告の中でも、いわゆる通常の賃金で支払われるべきではないかという提起はされていますので、ぜひここは実現していきたいところだと思います。

時間外労働・休日労働の割増賃金規制の課題

割増賃金の規制のところについては、いわゆるスキマバイトのような場合、それから今本当に賃上げを要求すると、そんなにお金が欲しかったらダブルワークすればいいじゃないかという企業が増えています。以前は、ダブルワークは就業規則でダメ、禁止されていました。ところが、今どんどんやりなさいみたいな形になってきていて、企業が賃金に対する責任を放棄しているのではないか。その分、本人が働けという形で、本人の自己責任の方が大きくなっているように思っています。

そのダブルワークの時に、本当にスキマバイトなのか、その典型で、どうやって残業代を支払うのですかという問題です。今の労働基準法では、労働時間を通算して残業代を支払うことになってはいるんです。だけど、A企業、B企業、C企業で働いた時に、最後のところに責任が行きます。そうしたらC企業は、なんで自分のところだけ残業代を払わなければいけないんだ、という話に当然のごとくなってしまいます。

この辺を具体的にどういうふうにしていったらいいのかというところを、今回のこの研究会報告の中でも全然明らかにしていません。問題提起は若干しているけれど、具体的なものが出ていないんです。

職場の重要課題に触れず使用者側強化の危険性

 全体を通して、いろんな問題がこの報告書の中には書かれています。今の具体的な現状もいろんな角度で書かれています。いくつかは検討しなければ、すぐやらなければいけないということで、方向性としてきちんと出しているものもあります。それはそれで否定することでは全然ありません。ありませんけれども、私はやはりこの研究会が、現場の実態のところから掘り下げがもう少しされていない。現場の実感を持たない方たちが、この問題についてどうしたらいいか、こうしたらいいかということの研究会がされたっていうのは、どうしてもあるんじゃないかと思います。

例えば有給休暇ひとつ取ってみても、5日間こうやってやれば取れるよ。ルールを、労基法をこうすればこうなるよ、というだけでは現場は動かない。そういうところも含めてどうしていくのかという方向性が、深められていないと思います。だから出されてきている方向性の内容が、どうも現実的ではないというのが感じられます。

それからこの労働基準法は、最低基準であって強行法規であるということから言ったら、労基所の現場の監督官をもっともっと支援していくというか、増やすとか、そういったことを研究会としても取り組みを出すべきではないかなと思いました。

労働者が、まずどこに相談に行くのかと言ったら、まずはやはり行政に行きます。その後に労働組合なんですよ。労働組合というと、やっぱり何やかんやいっても怖いし、なんかすごく一定のイメージがあるんですよ。だから労働組合につながっていくのは、本当に最後になってしまう。多くの本当に労働者が大変な状況を抱えているという実態はあるわけです。だから、そういう意味では、やはり監督官を強化していくところを、もっと具体的に研究会の中でも示すべきではないかと思います。そのことによって、最低基準をもっと最高基準にしていくというところを作っていくことが可能になると私は思います。

 それからこの研究会報告の中では、私たちから言うと重要な問題と思われるところは、ほとんど触れられていない。私たちから言うと、やはり非正規の格差是正のところとか。それからこれは使用者の裁量権なのでと、今ほとんど言われてしまう配置転換の問題。それからいわゆる男女の賃金格差とか間接差別とか、ハラスメントの対策もそうです。そういったところには、この研究会報告は触れられていない。そこはもう一歩踏み込んでもらいたいな、と思いました。

最後に、この研究会報告を私自身は全部久しぶりに真面目に読んでみました。それで思ったんですが、現場として全部否定するつもりはないです。だけど先ほどらい言っているところの、労使の合意等の一定の手続きのもとにというところは、これはすごく危惧するところです。こういったものが、もし方向性で入ってくるとしたら、ますます労働組合もいらなくなってしまいます。それから労働組合がいらなくなる前に、使用者との力関係の中で、使用者側の扱い方の方が強くなっていくのは、目に見えているところです。この中にデロゲーションという言葉が入ってはいないけれども、私たちはこの報告書の持っている最大の問題として、そこに注視すべきじゃないかというふうに私は思いました。

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