私と憲法287号(2025年4月25日号)


天下大乱、民衆運動にこそ変革の力

(1)石破政権で、トランプ政権で、「迷走する時代」に

内外の政治が大きく混迷している。
安倍晋三元首相の政権投げ出しをはじめ、それを受け継いだ菅政権に続いて、岸田政権まで自ら退陣した。岸田退陣は直接的には「安倍派の裏金作り」の露呈を契機にしたものだったが、本質的には安倍派の凋落による安倍政治の行き詰まりを示したものだ。10年来の安倍政治の終焉だ。その結果、長年、党内野党(党内少数派)の立場にあった石破茂に政権が転がりこみ、石破内閣が成立した。しかし、政権の安定化をねらって解散の賭けに出て失敗し、国会は与野党逆転、改憲必要条件の改憲派の3分の2議席も失った。こうして長期にわたった国会の「風景が変わった」。

石破は解散にあたって「勝敗ラインは自公過半数」と掲げ、その結果、惨敗したにも関わらず、石破総裁、森山幹事長など主要な役員は居座り、小泉選対委員長だけが辞任を表明し、異例の少数与党となった。こうして石破政権は維新の会か、国民民主などの一部「野党」と結託して、部分連合による政権維持に踏み込む以外になくなった。その結果、3月31日のギリギリになって、新年度予算は参議院で再び修正された上、衆議院に戻され、本会議で同意を得て成立した。衆参両院で修正された予算が成立するのは初めての事態だった。

安倍政治に特徴的だった閣議決定乱発、内閣独裁政治は変わらざるを得なくなり、国会の常任委員会等配分では、27の常任委員会、特別委員会、審査会のうち、与党が15、野党が12となった。予算委員会は立憲・安住氏、法務委員会は立憲・西村氏、環境委員会は立憲・近藤氏、沖縄北方領土は逢坂氏であり、また憲法審査会会長は立憲・枝野氏となり、与党はいくつもの主要な委員会の責任者を野党に譲った。

通常国会での前半の予算審議が終わったが、国民民主党は103万円課題・ガソリン税、維新は教育費、社会保険料を掲げて与党に圧力をかけ、自公は立憲野党の共闘の分断と一部疑似野党」の政権への取りこみをめざし、立憲もまきこんで画策した。結果、維新を取り込み、予算案をどうにか可決させた。

(2)「戦争のできる国」から、「専守防衛破棄・戦争する国」へ

国際的に見れば、米国バイデン政権の退陣に伴って米国の世界一極支配の終焉が決定的になり、世界は本格的な多極化、動乱の時代へと入った。トランプ新大統領は「米国第一主義」(MAGA=米国を再び偉大に)という政治哲学のない低俗な「ディール」を乱発する政治に拘泥し、第2次大戦後、積み上げた世界の秩序を混乱に陥れた。その主眼である中国敵視政策の下で東アジアでも政治的、経済的、軍事的、緊張が高まっている。ウクライナやガザなどでの戦争はつづき、世界的な新興勢力の台頭の下で、米国による「同盟国」・「懸念国」の区別なしの米国第一主義による経済戦争が展開され、混乱に陥っている。

石破訪米に際して「日米関係の新たな黄金時代」(日米共同声明・25年2月)がうたいあげられ、本年度は10兆円にも届きそうな大軍拡予算をはじめ、人びとの生活を破壊する問題山積の予算が一部野党の協力で国会を通過した。日米首脳会談では27年度までに日本の軍事費を対GDP比2%を達成し、以降さらに拡大することを約束させられた。米国防総省のコルビー国防次官補は、上院で「日本はできる限り早期に防衛費を国内総生産(GDP)比で3%以上に引き上げるべきだ」と述べた

3月24日、防衛省は陸海空の3自衛隊を一元的に指揮する常設組織「統合作戦司令部」を東京・市ケ谷に約240人態勢で発足させた。「平時から有事まで切れ目なく、領域横断的な分野で各部隊を指揮し、即応性を高める」「米軍との調整をより緊密に行う役割や、他国のミサイル発射拠点をたたく反撃能力(敵基地攻撃能力)を持つ長距離ミサイルの運用も担う。弾道ミサイル対処や大規模災害などが同時多発的に起こる『複合事態』への対応も受け持つ」という。米国のバイデン前政権は昨年7月、日本側の組織改編の動きに呼応し、在日米軍を『統合軍司令部』に再編して、市ヶ谷から数キロの港区赤坂の米軍麻布の施設に置く、としていた。この米日両「軍」司令部の緊密な共同は、自衛隊が事実上、軍事情報を独占する米軍の指揮下に入ることを意味する。トランプ政権になってもこの方針は引き継がれる。

ひとたび戦争が起これば住民犠牲は避けられない。

3月27日、日本政府は台湾有事などを想定し、6日程度で宮古・八重山諸島の5市町村から住民、観光客合わせて12万人を避難させる計画をまとめ、うち住民約11万人は九州と山口の計8県32市町に振り分ける、という途方もない空想的な構想を発表した。

国民保護法に基づくこの避難計画は、外部からの武力攻撃の発生、「武力攻撃事態」に対応するものだ。

これは、中台間の紛争に米国が軍事介入し、米中間で戦闘が始まった場合「存立危機事態」と認定して自衛隊が武力行使することによって生じる武力攻撃事態対応だ。政府は「専守防衛の基本方針は変わらない」と強調するが、敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有をはじめ、現憲法下ではできないとされていたものが、どんどんできるようになった。

中谷防衛相は東京都内で行われた3月30日のヘグセス国防長官との会談で「日本は『ワンシアター』の考え方を持っている。日米豪、フィリピン、韓国など東アジアを一つのシアターととらえ、連携を深めていきたい」と伝え、ヘグセス氏はこれを歓迎したという。ヘグセス国防長官はその後、石破首相と行った会談で、これを確認した。

4月8日には、サイバー攻撃を未然に防ぐ「能動的サイバー防御」を導入するための法案が衆議院本会議で与野党の賛成多数で可決され、参議院に送られた。これは警察や自衛隊が、新たに設置する独立機関の承認を得て攻撃元のサーバーなどにアクセスし、無害化する措置も講じられるようにするものだ。

今始まったトランプ関税に関する日米会談の中で、在日米軍の経費負担増が要求された。これは第1次トランプ政権と安倍政権の交渉の時に、自動車税引き上げにかわるF35の導入に見られたような米国の武器の爆買いが要求された経過と相似だ。今回の日米会談で日本側特使の赤沢経済再生相はトランプ氏と会って「端的に言って(自身の立場は)格下も格下です」と卑屈な態度で、もらったMEGAの赤帽をかぶって見せた。米国に追従する対中国包囲網の中心軸となる戦争国家形成への動きは極めて速い。

(3)衆議院選挙の総括と関連して

①総選挙で市民は、与野党の逆転を作り出した。全国で与野党逆転をめざして取り組んだ政党、市民の成果だ。「あたらしい政治の過程」が始まった。

市民連合はこの選挙戦においても、市民と野党の共闘で戦うために全国各地でさまざまな取り組みを行い、結果的に、改憲政党(自民、公明、維新、国民民主)による3分の2議席獲得を阻止することにも寄与することができた。ただその一方、全国的に野党共闘が実現した選挙区だけではなく、野党同士が競合した選挙区も生じ、今後の共闘の在り方に課題を残した。

②市民連合は、選挙後も引き続き、戦争へと向かう国のゆくえを正すべく、各地でたゆまぬ活動を展開し、市民の立場から政治に参加し、これを創り、またこれを監視する。きたる参議院選挙に向けても、立憲主義と平和主義にもとづくあらゆる政党や組織、政治家と連携して、「市民と野党の共闘」を引き続き追求する。

③今回の総選挙は、自公過半数割れを勝ち取ったが、多くの課題を提起したことも事実だ。市民連合の取り組みの限界と可能性、市民と野党の共闘、野党共闘の課題、SNSに代表される新しい選挙運動、この結果を作り出した市民の期待にどう応えるのか、世界的なポピュリズムの拡大、ファシズムの台頭の可能性とどう対抗するのか、などの諸課題だ。

これらにすぐに答えは見えないが、こうした課題にこたえるべく、多くの仲間たちと連帯して、憲法・立憲主義を基本にした新しい政治を作り出すためにその一翼をになうべく闘い続けなくてはならない。

(4)当面の取り組み

政局は少数の自公与党政権による野党切り崩し攻撃のなかで、個別野党が奮闘しており、石破政権の支持基盤が弱体化し、政権の崩壊の危機が見え隠れしている。解散・総選挙も語られ始めた。

通常国会の主要な焦点は、軍事費拡大、沖縄関連課題、東アジアでの平和確立、イスラエルのガザへのジエノサイド攻撃、ロシアのウクライナへの侵略戦争、憲法改悪、憲法審査会の動き、新自由主義による貧困格差の課題、103万円課題、高額療養費制度、年金改革法案、税制課題、団体企業禁止法案、石破の商品券配布、政治改革課題、政倫審課題、エネルギー基本方針、脱原発課題、ジエンダー関連課題、選択的夫婦別姓課題、少子高齢化、教育費無償化課題、学術会議関連課題等問題が山積みだった。

先の総選挙以前と比べて、国会の議論は活発になったことは間違いないが、しかし政府が市民の生活に関わる諸課題で「財源論」を振りかざして拒絶する一方、膨大な軍事費の削減に関する議論が不活発だったことは禍根を残している。野党に見え隠れする安保容認論がその根源である。しかし2014~15年の戦争法に反対したたたかいは、最低限「専守防衛」論を歯止めにこれとたたかった。あきらかに専守防衛からはみ出したこの巨大な軍事費に国会の論戦で切り込まない野党の真価が問われている。修正案での対抗程度で、サイバー防御法などとも闘えていない。

市民と野党の共同に切実に求められているのはこれらのたたかいだ。

参議院選挙が目前に迫ってきた。東京都議選はその前哨戦だ。

定数は、248で、比例区100、選挙区148(複数区13、1人区32)であり、半数改選、過半数は、124議席、改憲との関係で3分の1は82議席だ。継続議席は自公74(自公維86)、立共社れい沖26で、継続議員の人数を見れば、厳しい選挙戦が予測される。自公に対抗しての立憲野党の奮闘と「野党共闘」が決定的に重要となる。だからこそ32の1人区は可能な限り、野党共闘、候補者の調整、支援が必要だ。すでに何らかの形で協議が進んでいる岩手、新潟・宮城・長野・沖縄など1人区の先進区を拡大することが必要だ。他にも数選挙区で一本化の可能性がある。

この間の野党共闘の経過を見ると、2016年、32全選挙区で一本化、11人の当選、2019年、32全選挙区で一本化で10人の当選、2022年、32のうち11選挙区で一本化し、3人の当選だった。課題は明らかだ。市民と野党の共同の再構築こそ求められている。

 全国の先進的地域に学び、地域での諸課題での共同行動の積み上げのうえに市民と野党の共闘を再構築する以外にない。今始まった『税金はくらしの拡充に、   戦争準備の軍拡は中止して、憲法、平和、いのち、くらしを守る政治への転換を求める請願署名』 (大軍拡反対請願署名) を徹底的に広げよう。世論を強化し、野党に届けよう。私たちは市民と野党の共闘の再構築をあきらめてはならない。ここにこそ未来を切り開いていく可能性がある。
(共同代表 高田 健)

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【声明】尹錫悦罷免、民主主義の勝利だ内乱を終えて社会大改革に進もう

尹錫悦の罷免決定を受けた韓国の1700団体以上の市民団体でつくる尹錫悦即刻退陣・社会大改革非常行動の声明です。 [過去清算共同行動ML]から転送

【声明】尹錫悦罷免、民主主義の勝利だ内乱を終えて社会大改革に進もう

内乱首魁尹錫悦が罷免された。大韓民国を驚愕と恐怖に陥れた「真夜中の非常戒厳」を宣布してから123日ぶりのことだ。 憲法裁判所の全会一致の決定が出たが、すでにかなり前に行われるべき決定だ。 内乱首魁「尹錫悦」の罷免は、主権者市民の勝利であり、数多くの市民の犠牲と民主抗争で築いてきた憲法と民主主義の力を再確認したものだ。
尹錫悦の12.3非常戒厳は、要件も手続きも備えていない明白な不法であり違憲だ。 布告令には違憲的な内容が盛りだくさんで、これを根拠にした国会封鎖も、憲法機関である中央選挙管理委員会を侵奪したこともすべて違憲違法な措置だった。 国憲を乱し、暴動を起こした内乱だった。 さらに、非常戒厳宣言のために戦争を企画し、挑発したことまで確認された。

しかし、主権者の市民たちは軍と警察を動員した国会封鎖を素手で阻止した。 汝矣島に200万市民が集まり国会の弾劾訴追案議決を引き出し、ナム・テリョンと漢南洞闘争を通じて尹錫悦を逮捕した。 尹錫悦が脱獄すると数千万の市民が光化門に集まり、結局尹錫悦を罷免させた。

尹錫悦の罷免は終わりではなく始まりだ。 まず、尹錫悦と内乱一党に対する司法処理が厳重に行われなければならない。 内乱・外患特検の導入を含め、外患容疑や警察、検察の内乱加担の有無に対する捜査も、強力に進められなければならない。 憲政を蹂躙するすべての犯罪者の末路がどうなのかをはっきりと残し、第2、第3の内乱を防がなければならない。

憲法裁の尹錫悦弾劾審判決定を妨害するために、憲法裁の違憲決定にもかかわらず、裁判官任命を拒否した韓悳洙(ハン・ドクス)、崔相穆(チェ・サンモク)に対する法的・政治的責任も問わなければならない。 内乱を庇護し、同調した国民の力に厳重な責任を問い、民主主義を脅かし、暴動と混乱を助長した人々に対する処罰も必要だ。 さらに、4ヵ月間の憲法破壊を容認した憲法裁判所と内乱のリーダーを釈放した検察と裁判所の強力な改革も必要だ。

何よりも重要なことは、尹錫悦と内乱勢力が威嚇した憲政秩序の弱点を補完し、内乱の再発を防ぐことだ。 時代錯誤的な非常戒厳を憲法から削除しなければならない。 憲法裁判所の無力化を防ぐための制度的補完も伴わなければならない。

主権者市民が広場で叫んだのは「尹錫悦罷免」だけではない。 尹錫悦政権が退行させた改革の価値を復元し、人権と民主主義、平和と平等、生命と生態、世話と労働が尊重される持続可能な社会のために社会大改革を完成しなければならない。 他の諸政党も党利党略を離れて協力しなければならない

昨年の冬、広場に集まったパンライトと旗の精神を私たちは忘れないだろう。 内乱の終息と新しい社会のための市民の熱望を私たちははっきりと見て、共に共有した。 いつのまにか春だ。 芽生える新芽の力で、冬の間広場を守った主権者市民の力で社会大改革を完成させよう。 私たちは去年の冬のように疲れたりあきらめたりしない。

内乱首魁罷免、主権者市民が勝利した!
内乱勢力を断罪して内乱を終わらせよう!
主権者市民の力で社会大改革を完成させよう!

2025年4月4日
尹錫烈即刻退陣・社会大改革非常行動

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尹錫悦大統領罷免民主化闘争勝利を共に祝して

韓国憲法裁判所は本日4月4日、昨年12月3日に非常戒厳令措置を行い、国会に弾劾訴追されていた尹錫悦大統領に対して、裁判官全員一致で罷免を宣告しました。これは、韓国の解放後の民主化闘争史につらなり、厳寒の冬空の下で真の民主主義をめざす灯かりをともし続けて闘い抜いた韓国市民の新たな革命の勝利として、私たちは心から称えずにおれません。

私たち日韓和解と平和プラットフォーム日本運営委員会は、昨年12月5日に尹錫悦政権退陣民主化闘争連帯声明文を発出し、本年2月5日にはおよそ140に及ぶ賛同団体と共にさらに新たな民主化闘争連帯声明を公表しましました。さらに昨年12月19日には、民主化闘争の最中にある韓国市民運動の代表から、憲法9条を守る運動である「19日総がかり行動」の壇上で、日本市民への支援連帯の呼びかけのメッセージを受けました。それに応えるように、本年2月8日に開催されたソウル光化門広場での10万人集会へ、日本から「19日総がかり行動」共同代表を派遣し、力強い連帯メッセージを届けました。

韓国が、この激動する世界情勢と緊張の高まる東アジアの状況の中で、戦争を決して起こさず、疑心暗鬼と敵意にとらわれた挑発的軍事行動もゆるさない平和の道を行くための確固たる民主主義体制へと、新大統領と共に邁進していくことを、私たちは心から祈念します。そして私たちはこれからも、日本の大軍拡路線に抗いながら韓国民主化闘争に連帯し続けます。

本年は、日本敗戦と朝鮮半島解放の80年であり、また1965年に締結された日韓基本条約締結60年の年であります。今こそ私たちは、第二次世界大戦後の冷戦体制下において植民地主義を清算できずに、植民地支配犠牲者の請求権問題をはじめ朝鮮植民地支配の歴史責任を不問に伏させることとなった日韓条約「65年体制」を否定し克服しなければなりません。そして私たちは、歴史の中で犠牲とされた踏みにじられたいのちと人権を守り、歴史の正義にゆるぎなく立脚した日韓、日朝をはじめとする東アジアの真の和解と共生、反戦・平和の道を切り拓いていくことをめざします。私たちは日韓民主化の真価の到達がそこにおいてこそ試されていることを厳粛に心に刻みます。

2025年4月4日
日韓和解と平和プラットフォーム
日本運営委員会
共同代表:小野文珖、高田健、野平晋作、光延一郎

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第27回 許すな!憲法改悪・市民運動全国交流集会

「戦争する国」の道を止める、へのご参加をお願いします。

石破政権のもとで日本の政治が迷走しています。米国のトランプ政権(2.0)のもとで世界の政治も混迷する時代に入りました。この混乱は大変危険なものであり、世界の平和を乱し、人びとに耐えがたい苦難を与えています。日本ではとりわけ安倍政権以来進んできた社会の軍事化、差別と格差の拡大はまじかに迫った「戦争する国」を実感させます。
私たち全国の市民運動はこの20数年、全国で相互に連携し、協力し合って憲法破壊と「戦争への道」に抵抗し反撃してきました。このなかで「総がかり行動」や「市民連合」「九条の会」などの幅広い平和と人権、民主主義のための共同のたたかいが形成され、それに少なからぬ貢献をしてきたと思います。
すでにお知らせしていますように、今年も下記の次第で「市民運動全国交流集会」を開催します。緊迫する情勢の中、みなさん、超多忙の毎日ですが、ぜひ集会に御結集くださいますようお願いします。


日時:2025年5月31日(土)~6月1日(日)、
会場:東京都内(全水道会館大会議室、ほか)
●31日(土)午後1:30~全国交流集会公開集会 参加費1000円
主催者基調挨拶(菱山南帆子さん)
講演:志葉 玲さん(ジャーナリスト)ウクライナの取材から
講演:猿田佐世さん(新外交イニシアティブ代表)日米同盟によるリスクとこれからの日本
地域報告(1)、地域報告(2)
●31日(土)夕方:全水道会館中会議室18:00~20:30
参加費(翌日午前含む1000円)セミクローズド(事務局に申し込んでください)
事前学習 靖国神社の実態と問題点(内田雅敏さん)、②各地活動交流会(1.5時間、)
●1日(日)セミクローズド(事務局に申し込んでください)
午前:各地報告討論会9:00~11;30
午後:フィールドワーク(靖国遊就館)(案内:内田さん)
14時 大鳥居下に集合(地下鉄九段下駅から)遊就館拝観料1000円 募集定員15人

*ご参加いただける方は(1)31日午後公開集会、(2)31日夜 内田さん学習会と交流集会、(3)1日午前活動交流集会、(4)1日午後フィールドワーク・靖国神社の4コマにわけて御名前と連絡先および出欠をメール、FAXなどで実行委員会にお知らせください
(FAX03-3221-2558 kenpo@galaxy.ocn.ne.jp
(なるべく5月15日までにお願いします)。
*交通手段や宿泊は参加者各自で手配する。

主催:許すな!憲法改悪・市民運動全国交流集会

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第192回市民憲法講座 東アジアでの米中の軍事的緊張の増大と在日米軍基地・自衛隊基地

木元茂夫さん(すべての基地に「NO!」を・ファイト神奈川)

(編集部註)3月22日の講座で木元茂夫さんが講演した内容を編集部の責任で要約したものです。要約の責任はすべて本誌編集部にあります。

強い危惧をもつ戦争を知らない世代の政治

思い返すと、16歳の時から運動を始めて早50年を超えてしまって、今年の1月でとうとう70歳になりました。1970年、当時、国会に靖国神社国営化法案という恐ろしい法律が上程されました。宗教者と市民が頑張り、参議院での保革逆転もあって、5回上提されたのですが、とうとう廃案になりました。それ以降は、そういう法律案が出てくることはなくなりました。あれは、本当に日本の戦後史にとっては非常に大きかったと思うのです。靖国神社があの時点で国営化されてしまえば、戦前の侵略戦争を肯定する歴史観が定着することになったと思うのですが、それはなんとか阻むことができました。

翌1971年は、沖縄返還協定の調印と批准の年でした。日本中が騒然としていた時代で、確か私の記憶では、最後の沖縄返還協定批准の時はデモが18万という人数でした。今から考えると隔世の感があるのですが、今また、本当に中国と戦争をやるのかというような状況が、日増しに色濃くなっています。「本当に、そういう決意と覚悟があるのですか」と石破さんに問いかけたいのですが、かつての大本営発表と違う形で、本当はきちんとやらなければいけないことを、見なければいけないことは見ないで、そういう体制を作りつつある。
戦争を知らない戦後世代の政治家のやっていることは、とても恐ろしいと思います。戦中派の人、敗戦を経験した世代は、軍事に踏み込めばどういうことになるのか、自分の親兄弟、親戚が亡くなった、親しい友人が亡くなった、家が焼かれた、そういう経験をした。そういう経験をした人とそういう経験が全くない人では、やはり、戦争の捉え方が大きく違っていると痛感します。そういう意味では、副総裁の麻生さんが「戦う覚悟だ」とか言っても非常に軽くしか受け止められないのですが、実際の自衛隊の動きは、本当にそういう方向へ行きつつあります。

中国を標的にすすむ南西諸島基地強化

沖縄の宮古島に航空自衛隊の宮古島分屯地があります。2つの地上電波測定装置というレーダーです。

確か2004年にできました。2004年以前は、ごくごく普通のレーダー基地だったのですが、2004年以降は、宮古島が中国軍の電波情報を収集する拠点になりました。中国が日本に攻めてくるという小説とか漫画とかが様々にあって、真っ先にやられるのがこれだ、というふうに多くの作家が強調しています。確かにそういう意味合いもありますが、ここで集めた情報は、おそらく東京の横田基地へ転送されて、そこで分析されて使われている。何をどのくらい情報収集しているのかは、私たちには全く知らされない。でも、着実にそういうデータは積み上げられつつあるのが現状だと思います。宮古島には、この後、新しい基地が2つ作られ、先月には、電子戦部隊が新たに配備されて、どんどん基地機能が強化されています。

今日の夜中、1時か2時頃、このニュースを見てびっくりしたのですが、台湾の行政院(内閣)の顧問に元統合幕僚長の岩崎茂という人が就任をしたそうです。戦後史上、もちろん初めてのことです。ただし、給料はなし、非常勤ということで、日本にいて必要な政策アドバイスをすると言っています。この人は、元航空幕僚長ですから、中国軍の飛行状況の監視などについてアドバイスをするのだろうと思います。ここまで踏み込み、こんなことをやることは予想もしていなかった。そこまでやるのかと、この記事を読んで思いました。中国との関係は、これで多分、決定的に悪化をしていくだろうと思います。

戦後、中国革命で国共内戦に敗れて蒋介石が台湾に逃げ込んだ。その時に日本が蒋介石の軍隊の立て直しを図るために「白団」(パイダン)という軍事顧問団を、規模としては数十人ですけれども、派遣をしました。戦争中、シナ派遣軍総司令官で、100万の部隊を指揮していた岡村寧次陸軍大将がいました。さすがに岡村本人が行くわけにはいかなかったので、自分の部下を入れ替わり立ち替わり台湾に派遣して、台湾・蒋介石軍の立て直しの指導をやりました。何を伝えたかといったら、日本軍が中国共産党の軍隊と交戦をした経験を伝えたわけです。最近、その頃の研究が結構進んで、『後期日中戦争』という本を書いた人がいて、八路軍と戦闘をやって、どのくらい日本がボロ負けしていたのかが、日本側の記録でも中国側の記録でも明らかになりました。

これまで、太平洋戦争が始まってから、つまり1941年12月8日以降の中国戦線の戦いについては、あまり解明されていなかったのです。視点は、太平洋の方、他のアジアの国々へ行って、中国との戦争がどうなったかは、全くわからないわけではないのですが、細かいところまで見ていくことは、これまでそんなになかったのです。今、その辺がようやく明らかになりつつあります。

そういうことを振り返れば、中国と戦争をやるのはとんでもないことだと思うのですが、残念ながら、方向はそちらの方へ行っています。

横須賀米軍基地に52年間配備の航空母艦

これは去年の11月22日に横須賀に派遣された原子力空母「ジョージ・ワシントン」が入港してきたときの写真です。1973年に空母「ミッドウェイ」が横須賀に配備されたのが最初でした。早いもので、もう52年経ってしまいました。

2008年から原子力空母の配備が開始されて、この「ジョージ・ワシントン」が2008年から2015年までいました。原子炉の燃料棒の交換をやるためにアメリカに戻りました。私たちの先達が、いろいろ頑張って、原潜寄港反対運動の中で、外務省がアメリカとの間でエードメモワールという覚書を結びました。日本に放射性廃棄物を陸上げしちゃいけません、というようなことが規定をされています。それは60年近く経った今も守られています。だいぶ怪しいところもあるけれども。ですから、燃料棒の交換なんて恐ろしいことを日本でやることはできません。アメリカに持って帰ってやらないといけない。

原子力空母には6000人ぐらい乗組員がいます。艦載機の乗組員、整備士も含めてだいたい2500人ぐらい。ほかに3500人ぐらいが、船の運航に携わる人たちです。その乗組員の若い兵隊は、かなりの比率で船でずっと暮らしています。

「ジョージ・ワシントン」は近代化改修工事をやって、あっちこっちを直した。また来てみたら、マストの形状が変わっていたり、いろいろ変化があったのですが、乗組員は工事をやっている最中も艦内で暮らすことを強制されたのです。ちょっと信じられなかったのですが、溶接作業などで匂いや煙が出る中でも、船の中で暮らさせます。兵器の開発には湯水のごとくお金を使うアメリカ海軍も、兵隊の生活になると途端にケチになる。その結果、2人か3人か、乗組員が自殺をしました。そういうことがあって兵隊という人間をなんだと思っているのかと思うのですが、それでようやく、希望者は艦の外で宿泊をさせるという措置をアメリカ海軍は取りました。

そんなことが起きて、2024年11月22日にまた横須賀へやってきました。

原子力空母は、1年のうち3分の1―4ヶ月は動けません。どうして動けないかというと、原子炉の周辺を含む船体のメンテナンス点検修理に4ヶ月かかるのです。大体11月から12月に作戦航海を終えて日本に帰ってきて、1月からメンテ点検修理に入って4月いっぱいまでかかる。その間は動けません。その間は、別の空母をアメリカ本土から持ってきて、日本の周辺で活動をさせています。

今も、「カール・ヴィンソン」という空母が日本周辺で作戦行動をやっています。5月になると試験航海をやって、また作戦航海に出ていく。そういうサイクルを繰り返しています。

では、どうして、そういう効率の悪い空母を作り続けるのか。

かつての軽油で動いていた空母とどこが違うかというと、大きさはほぼ同じです。違うところは、艦載機用の燃料、それから航空機に搭載する爆弾・ミサイルの搭載量が大雑把にいって、通常軽油で動いていた空母の2倍積むことができます。ということは、2000回空爆をやる能力があったものが、原子力になると倍の4000回ぐらい爆撃ができるということです。そういうところでの攻撃力の強さをアメリカ海軍は選択をしています。

中国の経済・軍事拡大と日本、アメリカ、台湾

そのアメリカ海軍が、今、中国とどう向き合うのかということで、私は、未だに迷っていると思っています。今やGDPで比較すると、中国は日本の4倍の経済規模になりました。世界第2位の経済大国だった日本が中国に追い抜かれたのが2010年。それから15年経って経済規模は開く一方です。グラフの一番下の線、日本のGDPの変化を見ると、ほとんど成長していない。それに対して中国の方がかなり驚異的な伸びを示して、トランプさんが第1次トランプ政権の時に中国との経済的な争いを始めて、その影響もあって21年以降は中国も経済成長率がだいぶ鈍化をしてきました。

それでも日本は、ちょっとこれはひどすぎだと思うのですが、石破さんも、どこかでボソッと言ったのですが、企業は設備投資でなくて内部留保にみんな回してしまった。守りの経営、損失を出さない内向きの経営に終始をした。それから、岸田前総理は「分厚い中間層の再現」と言いましたけれども、相変わらず派遣・非正規の労働者が相当な人数いる。国民全体の所得水準を見れば、かなり低い。世界第2位どころではなく、今38位ぐらいです。個人所得の方で見ると、そういうところまで落ち込んでしまいました。

小泉政権の時に製造業派遣が導入されて、非常に安直なコストダウンの手法を導入した。そこから抜け出さないというのが日本経済の現状かと思います。自民党の人も本当は分かっているんじゃないかと思いますが、公式の日米の文書などでは、「中国が悪い」と言いつのるわけです。安保3文書、国家安全保障戦略などを見ると、「中国は、新しい国際秩序を作ろうとしている」と言い出すようになりました。それは、あながち嘘ではなくて、グローバルサウスを中心とした新たな経済圏が、G7とかなり拮抗しつつあるというところではないかと思います。

これは防衛省の資料ですが(次ページ参照)、2016年から2025年まで、与那国島に2016年に駐屯地を開設したのを皮切りに、宮古島、奄美大島、そして2023年に石垣島、次から次へと基地を作っていきました。私は2023年に石垣島に駐屯地が開設されて、これで一段落するだろうと当時は思っていました。ところがそんなところではとどまらなくて、より実践的な電子戦部隊という、妨害電波を出して相手の攻撃を妨害する能力を持った部隊を与那国島に配備して、宮古島に2月に、石垣島には来年配備すると言っています。そういう形で基地の強化が次から次へと進もうとしています。

台湾の民主化運動の動向と日米の対応

まずは、台湾の人たちが大陸とどういう関係を持とうとしているのか、どういうことを考えているのかということを考えたいと思います。

呉叡人さんという民主化運動を推進してきた人がいて、『台湾、あるいは孤立無援の島の思想-民主主義とナショナリズムのディレンマを越えて』で、こういうふうに言っています。

「中国の経済力と軍事力は日増しに強大化し、東アジアの地政学的構造を、1990年代の均衡のとれた多極体制から、不安定でアンバランスな多極体制へと転化しようとしている…

中国が極東の覇権者になるのを防ぐべく、アメリカと日本は軍事同盟を徐々に強化し、そこに台湾を組み込もうとしている。台湾は中国の台頭から逃れるために、日米の同盟に加わるか、もしくはその属国になるのかを模索している」

私は、中国は極東の覇権者になるつもりはないと思っています。

例えば、自民党や防衛省は、中国は南シナ海で岩礁を埋め立てて基地を作って、というようなことを盛んに宣伝します。事実としてそういうことはあります。でも、次から次へと岩礁を埋め立てて、いくつもいつも基地を作っているということではありません。また、その基地を拠点にして民間の船舶の妨害をしたりとか、軍事演習をやったりとか、そういうこともないと思います。

私は、将来、南シナ海の海底資源争奪戦が起きた時に備えて橋頭堡を作ったというところに留まっているのだろうと思っています。それはそれで肯定できることではなくて、問題ですけれども、そういうことがどんどん拡大していっているわけではありません。

それなのに、日本政府は中国は悪の権化みたいなことを言っている。いま世界最大の軍事力を持っているアメリカは、中国の軍事力が太平洋に出てくるのを阻止したい。アメリカは、自分たちは、好き放題、世界中で軍隊を動かしているのに、中国が出てくるのは気に入らない。他の国に強圧をかけなければ、中国軍がどこへ出てこようが勝手だと思うのですが、なんとかこれを封じ込めようとしている、というのが現状だろうと思います。

そういう中で、2013年から2014年にかけて両岸(台湾海峡の両岸)で、つまりは大陸の中国と台湾の間でサービス貿易協定が調印をされて、批准手続きが台湾の立法院(国会)で行われていました。2014年の3月です。

このときに数百人の学生たちが、ひまわりの花を持って議場を占拠しました。日本で言えば、国会の衆議院の本会議場を占拠した。日本ではそんなことは考えられないですね。どうして、そんなことが可能だったのか。当時は国民党の馬英九さんが台湾の総統で、国会議長が王金平さんでした。この王金平さんが馬英九総統と非常に仲が悪くて、学生たちの排除を警察に依頼しなかったという不思議な状況が3週間ほど続き、この間、学生は馬英九と交渉をして結局、批准はされなかった。十数年経った現在も批准されないままの状態が続いています。

中国は、日本のGDPの4倍という規模になりました。もっと経済規模の小さい台湾としては、大陸の経済的な強大化は、「飲み込まれてしまう」という危機感を抱かせました。何とか独自性を維持したいというのが台湾の人たちの思いです。その辺のところをどう捉えていくのかというところが、日本と中国と台湾の関係を考える上で非常に重要だと思っています。

私は、他の国が、特にアメリカが介入しないで、冷静に話し合える環境が何年も続けば、落ち着くべきところに落ち着くだろうと思っています。ところが、大統領の継承順位が2番のペロシ下院議長が台湾に行ってみたり、その後も、ずいぶんいろんな議員さんが行きました。そういうことが繰り返される中で、今度は中国の方が、台湾を包囲する形で非常に大規模な軍事演習をやる。そういうことが繰り返されています。

去年、頼清徳さんが就任をして、1年経ってようやく落ち着いたかなと思いました。ところがこの10日余り、中国の王毅外相が「台湾は中国の台湾省だ」と言ったことをきっかけに、お互いの議論の応酬、ケチの付け合いが残念ながら進んでいるというのが、つい最近の状況だろうとに思います。そこに付け込んで、日本は、自衛隊をこれまで以上に動かして、中国との対立構造にこれまでにも増して踏み込もうとしています。

東シナ海の日米・NATO軍との演習

そこで、この10年を振り返りたいと思います。

2015年の9月に安保関連法が成立をしました。非常に大規模な抗議行動が連日続きました。2016年の3月に安保関連法が施行されました。

2018年に、米国で台湾旅行法という法律ができました。第1次トランプ政権の時です。米国のすべての階級の当局者が台湾に旅行し、台湾当局者と会うことを許可するという法律です。この年の3月には、原子力空母「ロナルド・レーガン」の艦載機のうち固定翼機(戦闘機と電子戦機)が、岩国基地へ移転をしました。ヘリコプターは厚木基地に残りました。

私は、1989年から2020年まで、厚木基地からほんの700メートルぐらいのところの職場で働いていました。その間、湾岸戦争があって、イラク戦争があって、空母艦載機の120dbという猛烈な爆音を毎日毎日聞いて、聞きながら働いていました。それが岩国基地へ行って、120dbの爆音はなくなりましたが、70~100dbぐらいの騒音というのは現在に至るも続いています。

2020年に台湾の総統選があり、民進党の蔡英文さんが、史上最高の得票数817万票で再選されました。なぜ、こういうことが起きたかというと、当時の国民党の候補が、香港で進行していた民主化運動に対する弾圧に明確な批判の姿勢を示さなかった。そのことが大きな原因で、国民党は大きく得票を減らして、蔡英文さんが800万を超える得票を得て総統に再選をされました。この総統選の後、香港では国家安全維持法が施行されて、今に至るも民主化運動に対する弾圧が進んでいます。

その翌年、2021年にAUKUS(オーカス)というアメリカ、イギリス、オーストラリアの軍事同盟が結成をされました。この年、イギリスの空母「クイーン・エリザベス」が日本にやってきました。横須賀に寄港したのですが、横須賀に寄港しただけではなくて、東アジアから東シナ海、南シナ海で自衛隊と確か計11回の合同演習をやりました。カナダ、オランダ、フランスやNATOの国々の軍艦もやってきて、中国に対して非常に圧力をかける軍事演習を2ヶ月にわたって繰り返しました。

これを契機にして、中国軍はそれまでに増して、積極的に東シナ海や南シナ海で軍事行動をやるようになりました。これ以前は、宮古島と沖縄の間の宮古海峡を通過する中国の艦艇は、年に4~5回だったのが、この21年を契機に増えていって、今では年間30回ぐらいになりました。

 ですから、日本政府の言っていることは、NHKの報道でも「海洋進出を強める中国は」と言いますけれども、そういう要素がないとは言いませんが、そういうのを引き出しているのが日米の軍事行動だと、私は思っています。日本とアメリカやNATOの国々の軍隊が、そういう演習を繰り返えせば繰り返すほど、同じようなことを同じ場所で中国海軍がやるということが、現在に至るまで繰り返されています。

 翌年の22年の7月に石破茂さんが台湾を訪問しました。蔡英文さんと会談をして、「戦争をしないためにどうするかという努力は、今までの何倍もやっていかなければならない」 と彼は発言しました。そのほんの1週間後に、ペロシ下院議長が台湾を訪問する事態になりました。この時は、中国軍は台湾を包囲する形で大規模な軍事演習をやりました。期間は数日で短かったものの、そういう演習が行われました。

 そして、その年の12月に安保3文書が閣議決定をされました。
国会では何の論議もなしに、閣議決定だけで決められてしまいました。国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画で、5年間で43兆円の防衛費をつぎ込むことが閣議決定で先行的に決められました。

 翌年には、防衛産業強化法や防衛財源確保法といった法律ができて、その後、自民党の麻生太郎副総裁は台湾を訪問して、講演で「抑止力を機能させる覚悟が求められている」、「日本は台湾海峡の平和と安定に責任がある」、「台湾海峡の安定のために(防衛力を)使う明確な意思を相手に伝えて、それが抑止力になる」と言いました。

日本は強大な中国軍に挑むのではなく別の道をよく言うよと思ったのが、次の表です。

中国海軍は、何と23万5千人もいるのです。アメリカ海軍は大きくて36万人です。36万人全部を日本に持ってきているわけではないので、日本にいるのは1万6千人ぐらいです。海上自衛隊4万5千人で、23万5千人の中国海軍を抑止しようというのは無理な話です。できるわけがない。

日本が5年間で43兆円という方針を打ち出したら、中国が毎年7%の伸びで防衛費を増額させていて、今開かれている全国人民代表大会に上程された来年度の国防費は36兆5千億円でした。1年間です。日本は5年で43兆円ですけれども、中国はそれをはるかに上回る国防費をつぎ込み続けています。それでも、力の対決を続けようとしているのは、本当に愚かなことだと思います。

米海軍が認める“中国の造船能力は世界一”

アメリカ海軍が去年9月頃、『米海軍の戦争能力向上のための航海計画』という文章を出しました。

海軍の制服組トップの海軍作戦部長という役職の人が出した文章です。リサ・フランケッティという女性の海軍作戦部長が、安全保障環境というところで、こういうことを言っています。

―――安全保障環境  中華人民共和国の主席は、自国の軍隊に対して2027 年までに戦争に備えるよう指示しました。・・・・マルチドメイン精密戦、グレーゾーン、経済キャンペーン、デュアルユースインフラ(飛行場など)とデュアルユース部隊(中国の海上民兵など)の拡大、核兵器の増大などの運用概念を通じて、中国は複雑なマルチドメインおよびマルチアクシスの脅威を提示している。中国人民解放軍海軍、ロケット軍、航空宇宙軍、空軍、サイバースペース軍は、巨大な産業基盤に支えられ、我々を打ち負かすために特別に設計された統合戦闘エコシステムに融合している。中国の防衛産業基盤は戦時体制下にあり、現在中国人民解放軍の手中にある世界最大の造船能力もその中にある。これに対し、米国の同盟国、パートナー、利益に対する中国の脅威を抑止し、求められれば決定的に勝利するためには、戦闘エコシステムの一部として統合された全領域制海を実現する航海計画に引き続きコミットする必要があると理解している。―――

ここでびっくりしたのは、アメリカ海軍は、中国の造船能力は世界最大だということを素直に認めているのです。ところが、日本の政治家や経済人から、中国の造船能力は世界最大という認識を私は聞いたことがない。負けたくないの一心で、現実に生じている経済格差、技術力の格差を認めないというのは、とても愚かなことだと思います。

軍事的に勝てもしない相手に、GDPで4分の1規模のものが戦を挑もうなんていうのは、とんでもない愚かなことで、別の道を探るのが当然のことではないかと思うのですが、アメリカに引きずられて、そういう道を歩きつつあります。

安保法制後に拡大する制服組の権限

この3月に自衛隊の統合作戦司令部が発足をします。陸海空だけでなく、宇宙、電磁波、サイバー領域まで含んだ部隊を一元的に指揮する統合作戦司令部が発足しようとしています。これに合わせて、在日米軍の方も統合作戦司令部を発足させるのではないかと思われていたのですが、当面延期という事態になっているのが、ここ最近の出来事です。どうしてそうなったのか、これからどうなっていくのかは、見てみないと分かりません。

安保法制が施行されてこの10年間で非常に大きく変化したのは、自衛隊の訓練が非常に拡大したということです。かつては、共同訓練をやっていなかったインドネシア、マレーシア、ベトナム、そういった国々とも訓練をやるようになりました。内容も非常に多岐にわたる訓練をやるようになりました。一番けっさくだなと思ったのは、フランス軍との共同訓練が、アジアにあるフランスの今も植民地である場所(*海外領土)で、そこに駐屯しているフランス軍との共同訓練をやるようになりました。何でそれが日本の安全保障に寄与するのかと思うのです。

かつては自衛隊の訓練というのは、最終決定権は内局の背広組の人たちが持っていました。制服組が上げてくる訓練を内局の背広組が非常に厳しくチェックをしていました。ところが、これも今から10年ぐらい前に、制服組の権限を非常に拡大する決定がなされました。1年1年の変化はそんなに大きくなかったのですが、10年経ってみたら、とんでもないところまで来てしまいました。

安保法制後に実戦化する自衛隊と各国の共同訓練

2024年、去年は日米間の共同訓練から始まりました。統合幕僚監部の発表です。

―――令和6年1月17日 統合幕僚監部
自衛隊は、米軍及び韓国軍と共に、下記のとおり日米韓共同訓練を実施しました。本訓練は、我が国を取り巻く安全保障環境がより一層厳しさを増す中、地域の安全保障上の課題に対応するための3か国協力を力強く推進するものであり、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜くという日米韓3か国のコミットメントを示すものです。 ―――

1月14日から17日まで、海上自衛隊は、ヘリ空母「ひゅうが」とイージス艦「こんごう」を。米海軍は、この時期横須賀にいる原子力空母は動けないので「カール・ヴィンソン」をサンディエゴから持ってきて訓練をしました。韓国海軍はイージス艦「セジョン・デワン」と汎用駆逐艦「ワン・ゴン」の2隻の船を参加させました。

訓練の項目が、ちょっとびっくりしたのですが、弾道ミサイル情報共有訓練、海上阻止訓練、対潜戦訓練、LINKRX、クロスデッキとあります。

LINKRXは、Linkexpressリンクエクスプレスの略です。軍艦どうしはリンクシステムという非常に大容量のデータをやり取りするシステムを持っています。大容量のデータとは、弾道ミサイルの航跡とかそういうものです。莫大な容量になるのですが、それをかなり短い時間でお互いに情報交換するシステムをイージス艦は持っています。クロスデッキとは、お互いに、自衛隊のヘリコプターが「カール・ヴィンソン」甲板に着艦したりする訓練です。海上阻止訓練は、北朝鮮による核兵器など大量破壊兵器の海上輸送を阻止することを想定した訓練だそうです。かなり危ない訓練をやるようになっています。

発表の「その他」では、「本訓練実施中の1月15日、米海軍空母『カール・ヴィンソン』 の艦上にて、海上自衛隊の第3護衛隊群司令(第3護衛隊群とは舞鶴にいる海上自衛隊の部隊)が、米海軍・韓国海軍のパートナーとともに、目下の地域の安全保障上の課題等について意見交換を実施しました 」と。

安保法制施行以前だったら、意見交換などありえなかった。訓練の現場で制服組同士が意見交換をするなんてことはありえなかったわけです。訓練の打ち合わせならともかく。そういうことを今や堂々と書いて、それがまかり通るという状況になっています。去年は日米間の共同訓練で、今年は日米仏の共同訓練をフィリピン東方海空域でやりました。

海上自衛隊は護衛艦「かが」と書いてありますが、「かが」は空母への改装工事をほぼ終えていて、今年の3月にF-35Bという艦載機が宮崎県の新田原基地(にゅうたばるきち)に配備される予定だったのですが、ソフトウェアが未完成ということで来年度中に延期をされています。

護衛艦の「あきづき」が参加して、アメリカ海軍はまたも「カール・ヴィンソン」がやってきました。フランス海軍は、「シャルル・ド・ゴール」というこれも原子力空母を派遣してきました。数年前までは、「シャルル・ド・ゴール」は、核兵器を常時搭載している空母だと言われていたのですが、今はそういう態勢にはしていないみたいです。今一つ不確実なところはあるのですが。

日米間でやってみたり、日米仏でやってみたり、今回もフランスの軍艦が、この訓練の後、横須賀へ来るのではないかなと思っていたのですが、それはありませんでした。

重なる東シナ海での訓練が中国の反発を呼ぶ

こういう訓練をやると、中国の情報収集艦が出てきます。そういうことが繰り返されています。

去年の9月25日と今年の2月の上旬、海上自衛隊の艦艇が台湾海峡を通過してしまいました。海上自衛隊始まって以来の出来事でした。

中国の国防部はこう言っています。

―――中国は、国際法に従ってすべての国が享受している航行権を尊重しますが、台湾海峡で問題を引き起こし、中国の主権と安全を侵害し、「台湾独立」分離主義勢力に誤った信号を送る国には断固として反対します。

関連する海空域における中国軍の活動は、国際法と国際慣行に合致しており、正当で、合理的で、非難の余地がないことを強調する。われわれは、中国の正常な運動と訓練活動に対する日本の根拠のない非難に断固として反対する。 ―――

海上自衛隊は、今のところまだ2回ですが、アメリカ海軍は年に8回から10回ぐらいが通っています。そういうことを繰り返しています。海軍の軍艦だけではなくて、アメリカの沿岸警備隊の船も台湾海峡を何度も通過しています。対潜哨戒機という、上空から潜水艦を追いかけるB-8A対潜哨戒機も台湾海峡を何度も通過しています。

着々と確実にすすめる日米軍の一体化

先ほど、宮古、石垣、与那国、奄美と自衛隊の基地が次々に作られていったという話をしましたが、去年3月に横須賀に配備をされているイージス艦「ラファエル・ペラルタ」が石垣港に入港しようとしました。

ところが、喫水という海面から船の底までの高さがイージス艦は9.8メートルもあって、それに安全率をかけると、10.5メートルぐらいの水深がないと入港できないのです。石垣市は、水深が足らないので入港はダメですと断りました。「それで引き下がるかな」と思ったのですが、「入港できなくてもいい。沖合に停泊するのは我々は得意だ」と言って、沖合に泊めて(写真)、そこから小型ボートを使って乗組員を上陸させました。石垣島の人々は、乗組員を乗せたバスが市の中心部に向かうのをストップさせる行動をとりました。

去年はイージス艦だったのですが、今年はドック型揚陸艦という海兵隊員を800人ぐらい積める揚陸艦を石垣島に派遣をしました。とどまるところを知りません。

これは、最近、佐世保に配備された強襲揚陸艦「トリポリ」が、F35Bという垂直離着陸ができる艦載機を14機搭載して3年前、横須賀にやってきたときの写真です。

強襲揚陸というのは、相手国の軍隊が陣を張っている海岸に自分の国の軍隊を上陸させることを言いますが、当然やれば相当な死傷者が出るので、第2次大戦後は一回もやったことはありません。朝鮮戦争でやった仁川上陸作戦も、相手が布陣にする前に上陸させたという話なので。強襲揚陸ではなくて奇襲揚陸です。船の名称は強襲揚陸艦という名前を使い続けていますが、実質的には海兵隊員とその使う車両、武器を搭載して上陸させる船です。

アメリカ海軍のホームページ「NAVY.MIL」(ネイビーミル)で発見してびっくりしたのですが、この「トリポリ」に航空自衛隊の隊員が2人乗艦をしていました。 防衛省はこういうことは発表しないですね。

写真の2人には、階級章があって、三等空佐(航空自衛隊の少佐)ということになります。

何のために乗っているかというと、今、空母化の工事を行っている「かが」と「いずも」の2隻の船にF-35Bを搭載するので、それに備えて、アメリカ海軍の強襲揚陸艦がF-35Bをどういうふうに運用しているのか、それを実際に船に乗って学ぶために上艦をさせているのです。

準備は着々という感じです。発表はしないのですがこういうことが次々に進んでいます。

この写真は、改装中の空母「かが」です。船尾に大きなテントが張られています。

これは、日本の「ジャパン マリンユナイテッド」呉事業所で2年前に撮られた映像です。大規模な改修工事が終わって、アメリカへ派遣され、F-35Bの発着艦訓練もやりました。

次の写真は、去年の11月、私の家の近所にある、同じく「ジャパン マリンユナイテッド」横浜事業所磯子工場で改装工事を始めた「いずも」です。
2番艦の「かが」の方が、工事では先行した状態になります。3年かかると言われています。

今は、艦首の形状が台形状です。先の部分がちょっと狭くなっています。これで全速航行すると、海上から乱気流が出てしまうので、四角な形に形状を変更するというのが一番の大工事です。3年というと「中国の戦争に備える」と言っている2027年に間に合わないのではないの?と思うのですが・・。間に合わない方がいいと思いますけれども。

鹿児島県馬毛島の空母離発着訓練基地建設

もっと決定的な要因がありまして、この空母に離発着艦する訓練をやるための施設を鹿児島県の馬毛島に作る工事が進んでいます。当初の予定は2024年中に滑走路完成、2025年から米軍の空母艦載機のFCLP(陸上の滑走路を空母の飛行甲板に見立てた離発着訓練)を行うと防衛省は言っていました。ところが、お粗末極まりないのですが、実際に馬毛島で土を掘り返してみたら、滑走路の予定地の土は粘土質で滑走路には適さない、ということが判明したのです。

2月18日に防衛省と交渉をやり、「そんなの、事前にボーリング調査をやって、ちゃんと確認すべきことなのではないのですか」と言ったら、「ボーリング調査はもちろんやりましたけど、網羅的には調査していません。」との答でした。馬毛島の工事完了は2030年までと、3年間延長をしました。でも、滑走路は、長さが2450m、幅が42mくらいあります。本当にその土を全部入れ替えなければいけない状態になったら、どのくらい時間と費用がかかるのか。すでに1兆円以上の予算がつぎ込まれています。本当にできるのか?軟弱地盤で無理やりやっている辺野古の工事の2番目になってしまうのではないかと思います。

地元の人たちは、絶滅危惧種である「マゲシカ」が島で生活し続けるように、ちゃんとアセスメントを残せと要求したので、そのためにあちこち土を掘り返して、最新の映像を見せてもらって愕然としました。10メートル以上の深さで土を掘り返していて、島の自然は全く変わってしまうと思いました。

「訓練をやる馬毛島の設備は、まだ着工していません」と言っていました。「これまでの予算では6億円計上していますが、まだ着工するに至っていません」ということでした。

それに加えて、「かが」「いずも」の艦載機となるF35Bの日本への納入も遅れています。

防衛省と交渉をやってびっくりしたのですが、JSM、JASSM戦闘機に搭載する射程距離が300キロ~500キロのミサイルが、2021年ぐらいに最初に予算申請しているのに、まだ一つも納入されていないそうです。交渉に参加していた福島瑞穂議員が怒って、「そんなことをまかり通らせていいのか。契約破棄するのが当然じゃないのか」と迫ったのですが、防衛省は、のらりくらりでした。

JSMとJASSMは、ノルウェーのミサイルメーカーが作っているミサイルですが、それがいまだに納入されていない。

それから、SM-3BLOCKIIAという日米共同開発の弾道ミサイルを迎撃するミサイルが、これも2023年に発注したものが、いまだに入ってきていません。

そういうことを防衛省の職員から聞くと、「あんたら、何の仕事をやってるんだ」と思います。「安全保障の脅威だ。朝鮮民主主義人民共和国がこれだけミサイルを撃っているから対抗しなくてはいけない」と言って、日米共同開発をやりました。ところが、頼んだ物は入ってこない。そういう事態が、そのままにされている状況があります。

奄美、湯布院、習志野、日本各地の基地の現実

ビデオを見て、現実の基地の様子を見ていただきたいと思います。

【動画上映】(ナレーション)特定港湾に指定された 奄美大島の名瀬港。23年9月のオリエントシールド演習では、ここから米軍の高機動ロケット砲システム(ハイマース)が陸揚げされ、奄美駐屯地まで運びました。

(国会前行動2023年11月でのスピーチ)
「みなさん、止めようではありませんか。今の奄美、徳之島は、戦争の厳しさを間近に感じています。」

これは、民間空港の奄美空港に駐機する普天間基地所属オスプレイ2機が、不時着した時の映像です。

(23年前タイトル)
23年前。
(ナレーション)
抗議行動をした私たちを待っていたのは

信じられない光景でした。

アメリカ海軍イージス駆逐艦「カーティス・ウィルバー」に星条旗と旭日旗、そして手製の「ご武運をお祈りします」の横断幕を掲げていました。「きりしま」には、当時私たちが知らなかった極秘任務が与えられていました。インド洋に浮かぶディエゴ・ガルシア島。ずらりと並ぶ爆撃機。イラクへの出撃拠点となりました。「きりしま」はその防空任務を担いました。

(当時「ピースリンク・広島・呉。岩国」の湯浅一郎さんのアピール)
「アメリカの戦争に協力するために『きりしま』が横須賀から出て行くことをやめていただきたい。

もし、自分の本意でなく、インド洋に行かなければならないとするならば、それを強制される謂れはないと思います。

私たちは、呉の町でも補給艦『とわだ』の乗組員が、1年間のうち、3ヶ月しか自分の住んでいる町に暮らすことができず、残りの9ヶ月間はインド洋で生活をしていることに対する自衛隊員自身の不満や、とりわけ家族のみなさんの不満を直接的、間接的に知っています。

おそらく横須賀でも同じような状態が慢性化しているものと想像します。自衛官が、旧日本軍と同じように、人権を無視され、戦争の道具として使い捨てにされる、そういう時代がやってくることをなんとしてもくい止めたい。そういう思いでいます。」

(6年前、東京・晴海埠頭)
2019年10月、日本政府・防衛省の招待で海上自衛隊の観艦式に中国海軍のイージス艦がやってきました。

第4次安倍内閣でしたが、現在よりは遥かに冷静でした。観艦式に招待して交流を持とうという姿勢があったのです。

中国海軍の若者、陸上自衛隊の若者。中国と戦争するということは中国と日本の若者が、住民を巻き込んで殺し合いをするということです。そんなことは絶対に避けなければなりません。

(2025年1月12日、習志野演習場 第一空挺団「降下訓練始め」)

<「ミサイルも弾薬庫もいらない!平和をめざすつどいin 大分 2024」12月1日 大分市若草公園>
(ナレーション)海も、空も、そして丘も、戦争のためにあるのではありません。

(湯布院 浦田龍次さん)
敷戸弾薬庫に長距離ミサイルルが配備される。それを運用する部隊が湯布院駐屯地で来年3月にスタートする。沖縄のたくさん作られている島々のミサイルの基地、自衛隊の基地に指令を出してそこから全ての部隊が動く。

そういう司令塔的な位置づけになるなんてことを全くこの問題を受けるまで、まさかそんな街に自分たちの街がなるということは全く想像もしていませんでした。

湯布院の人たちも、この問題に気づいていない、よく分かっていない人が多いです。ミサイルが来るという話は、新聞とかで見ている人がいますが、なんとなく、『自衛隊がきて安心できる状況になるのかな』くらいにしか思っていない人が多いと思います。

しかし、今度の今ミサイルは、1000㎞を超える射程距離があって、中国などに直接打ち込むことができる、いわゆる敵基地攻撃ミサイルと呼ばれるものが配備されようとしているわけです。そういったことを湯布院の人たちは、ほとんどの人が知らないです。実感として持っていません。僕らも今後ともっと知らせなきゃ、ということでチラシを配布しています。

そうすると、『これは防衛のためのものでなかったのか』『攻撃のためのものなのか』『知らなかった』という人たちがたくさんいるのです。」

(ナレーション)25年2月、アメリカ海軍は佐世保に強襲揚陸艦「トリポリ」を配備すると決定しました。「いずも」も「かが」も近い将来、この姿になります。自衛隊のF-35Bは新田原基地に配備されます。

湯布院、石垣、与那国でリアルにすすむ共同訓練

沖縄に次から次へと作られた基地が、今度は九州に新しい司令部が作られつつあります。3月、今月中に湯布院駐屯地に第8地対艦ミサイル連隊が作られようとしています。そんなものを作って、中国と睨み合って、そういうことの中に日本の未来があるとは思えない。みんな、アメリカの言いなりで、本当に2027年に台湾に侵攻するなんていう話を私は信じられないです。

ところが、アメリカがそう言うと、それに合わせて自衛隊は動いていきます。

今から4年前、2021年までは、沖縄より西へ、つまり宮古や石垣で日米共同訓練をやるということはありませんでした。そこは、自衛隊は自制していたのです。「そこから西へ行けば、中国と緊張が増す」というのが、アメリカの圧力で、石垣島に3年連続で、アメリカ海軍の対機雷戦艦艇という機雷掃海をやる船が入って、去年、イージス艦が入って、今年揚陸艦が入って、もうちょっと信じられないくらい石垣島が拠点にされようとしています。

もっと台湾に近い与那国島では、海兵隊員が人数は少ないのですが、乗り込んでやった訓練が何かというと止血訓練です。血を止める訓練。アメリカの海兵隊員が与那国で戦闘をやって負傷することまで想定しているのか、とびっくりしました。そういう訓練が進んでいます。

今こそ問われる人権尊重、対話外交

こういう軍事的な緊張を増せば増すほど人々の人権は踏みにじられていく。

中国が香港の民主化運動を強烈に弾圧してしまった。台湾の人たちは反発をした。徴兵制が部分的に復活をしたり、これまでの数十年間、台湾の人たちが撤廃させてきた軍事的な要素が少しずつ復活しつつあるというのは、非常に嫌なことだと思います。

軍事ではなくて、人々の人権を尊重するようなお互いの交流を、対話と外交で物事を解決していく。そのことが今本当に問われていると思います。いくつもの要因が複雑に絡まり合って、何か一つだけ動けば解決するというような単純な構造ではありませんけれども、まずは、私は日米の側が軍事的な演習をやめることだと思っています。そこから物事を始めるべきではないかと。そのことなくしてアメリカのように次から次へと演習をやって規模をどんどん拡大させていって、そうすれば解決するというやり方で解決した事例が今まであったでしょうか。

緊張が激化して、戦争になってしまった。ウクライナ戦争は確かにロシアの侵略ですが、そこに行くまで緊張を激化させたのは、バイデン政権の政策だろうと思います。そういうやり方を東アジアでさせることを許してはならないと思います。そうするために、私たちが頑張らなきゃいけないということを最後に訴えて終わりたいと思います。

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