右派と左派の引っ張り合いが激しさを増している。日本は左派の引きが弱い。焦ることなく冷静に情勢を分析しながら足元をしっかり固めながら仲間の横のつながりを広げていくことで耐えしのんでいこう
世界中がデマと陰謀論に振り回され、「信じる者」と「信じない者」の2分化が激しくなってきている。とりわけトランプ大統領が誕生してからというものその勢いは日本も含めて増している。
日本では「財務省解体デモ」なるものが波紋を広げている。このデモの中心となっているのは右翼保守団体が陰謀論者と結託している連中である。先日にはN国の立花氏が参加者に切りつけられるという傷害事件も発生して、より注目を浴びて気味の悪い広がり方を見せている。このデモには「日の丸」が何本も立てられ、スピーチの内容は「日本人の税金で在日外国人が生活保護を受けている。こんなのは許せない。日本人のために税金使え」などいった排外主義丸出しのスピーチが目立つ。そもそも私たちの生活がきついのは財務省の責任なのだろうか。財務省が解体されれば生活が安定し暮らしやすくなるのだろうか。財務省解体デモはエスカレートし、財務省職員の出入り口でデモ参加者が待ち伏せし、職員に罵声を浴びさせるような事態にまで発展している。
ここで思い出すのは、維新の手口だ。本当の権力者に怒りが向かないように身近で分かりやすい敵をどんどん作っていった。一番初めに行ったのは「公務員バッシング」だった。公務員はズルいと。私たちの税金でいい給料もらって、定時に帰ってボーナスも退職金も出る。それなのに窓口では随分と市民には冷たい。うっすらと、なんとなく思っていた公務員へのイメージに維新は火をつけた。「公務員を減らす」という政策に非常に支持が集まったのはそういう背景があったからなのだろう。
とはいえども、給料もらって定時で帰って、ボーナス、退職金を受け取ることの何が悪いのだろうか。当たり前の権利である。しかしその「当たり前の権利」さえも実感することがなかった就職氷河期の多くのロスジェネ世代の人々は維新のこのやり方に熱狂した。公務員を削り保健所や医療関係者を減らせば、(保健所を減らしたことによりコロナ禍で大変なことになった)当然私たちの暮らしはよくなるどころか、さらに自らの首を絞めることに繋がった。
その次に維新が行ったのは生活保護バッシングだった。それも生活が苦しいけれども必死で働いている人たちの心の中で、「働きもせず税金で暮らしやがって許せない」という気持ちを助長させるかのように、維新が生活保護の切り捨てを始めた。その次に始めたのは在日朝鮮人バッシングだった。朝鮮学校に日本の金を出すのはおかしい!という扇動をはじめた。横の分断と排外主義を扇動することによって本当の敵を見えにくくし、歯向かわせないような流れが作られていく。
今回の財務省解体デモも同じ構造ではないだろうか。デマと扇動により民衆が間違った方向へと急激に進む先には、いつの時代も戦争が待ち受けている。SNSが発達し誰もが新聞やニュース、人との対話から情報を得たり考えたりすることが減ってきている今、フェイクと扇動が猛威を振るっている。これに対抗していかなくてはならない。
これらに立ち向かうには、私たちの立場を明確にすることだ。どっちつかずの中途半端な「真ん中主義」では、民衆の怒りの受け皿にならないということを自覚していこう。
かつて社会党の政策を、自民党が次々真似していったような事態に今なっている。私たちの運動のやり方こそが効果的で影響力があると思っているからこそ、市民運動と野党共闘路線を叩き、萎縮させようとしているのだ。左派党派が激しく競り合う状況は全世界でも同じような状況がある。批判と弾圧を恐れず、一致団結して新たな戦前を跳ね返そう。
長射程ミサイルが大分湯布院と熊本健軍に2025年度内に配備されるという報道がされた。深刻な状況である。九州を足場にいよいよ台湾有事の具体化へと動こうとしている。2月22日には、この事態に危機感を持った市民たちが、立場や団体を越えて西日本ネットワークを鹿児島で結成した。現地に300人、オンラインでは200名の市民が集まった。琉球新報でも大きく紙面を割いて報道された。
しかし、東側ではどうだろうか。西日本に比べて危機感がとても薄い。いまこそ私たちは西日本の仲間たちと繋がり、連動した運動を作っていく必要がある。総がかりでは新たな署名をスタートし、全国に提起した。「大軍拡反対署名」だ。この署名は今の時期とても重要な取り組みになる。デマと扇動渦巻く世界の中で街中に出て、リアルな対話運動をすることこそがデマ陰謀論の流れに対抗する手段ではないだろうか。何事もリアルに勝るものはない。
先の総選挙で少数与党にまで追い詰めたのにも関わらず、国会の予算審議のなかで膨大な軍事費に関して触れられることが少なかった。遠慮をしている場合でも、「真ん中政策」だのと言っている場合でもない。軍事費にかける金は生活に充てるべきだということをはっきりと主張しなければ、先述したような財務省解体デモ的なものに民衆はからめとられていってしまう。韓国の民衆運動を見習い、差別と格差拡大の自民党政治を終わらせるために集中しよう。市民は地元の国会議員に国会内でしっかりと闘うように積極的に働きかけていこう。
3月20日に東京・池袋で女性の相談会が開催された。スタート時間前から会場の入り口前には長蛇の列ができ、生活の苦しさの深刻さが垣間見られた。12月に開かれた相談会で「次の相談会(3月)までの間、頂いたチョコレートを大事に食べます」といってお菓子を持ち帰られた方、今回の相談会では食事をしていないお子さんが、こちらが心配になるほどおにぎりやパンを頬張り食べていた。まともな食事にもありつけない。この現状はコロナ禍の時以上に深刻になってきている。
私たちはこういった状況を踏まえ、街頭で道行く市民に共感を呼ぶようなメッセージを訴えていく必要があるのではないだろうか。働いても働いても生活が楽にならない。楽になる希望もない。未来が見えないなかで若者たちが闇バイトに走ってしまう。ネットで過激な動画を出したり、女性を叩くことによって儲けることにより、より世の中が荒み不寛容な社会になっていく。この負の連鎖に楔を打とう。街を歩く人の目が輝くような私たちの社会の未来像をプレゼンテーションしていこう。
社会保障がしっかりすればどれだけ将来への不安が消えるのか。軍事費ではなく、年金や学費など、人に投資すればどんな世の中になるのか。政府への批判とセットで、具体的にどんな社会を目指しているのかを私たち一人一人が語れるように準備をしていこう。
フジテレビの性加害加担事件を思いだしてほしい。あの時フジテレビの労働組合の加入数は少なかったのにも関わらず、短期間で1000人もの組合員が加盟し増えた。労働組合なんて意味がない、デモや集会に意味がないなどと言われながらも、存在することにより、本当に困ったときの労働者の受け皿になることが出来たのだ。私たちの運動も同じだ。意味がないだのダサいだのと言われながらも、結局最後の最後頼りになるのは社会運動のつながりである。ポテトチップスで言えば塩味のようなものだ。コンソメやサワークリームオニオンなどが人気だとしても、必ず店頭から外されないのは塩味だ。地味かもしれない、存在を時には忘れられるかもしれない、しかし、そこに確実に存在することによって世の中のバランスと安心感をもたらしているのだ。
絶対に無くなってはならない存在、いて当たり前、何かあったときの受け皿になれるような存在として私たちは闘い続ける。駅前の鳩に負けないくらいに、新署名を手にし、地域の駅頭や街中に頻繁に立ち、市民運動が日常風景になるほど権利を行使し、このきな臭い流れを止めていこう。
(事務局長 菱山南帆子)
「戦争」も「武力による威嚇」も否定し、「陸海空軍その他の戦力を保持しない」と宣言した日本国憲法のもと、私たちの「戦後」は80年を迎えます。しかし、この国は、アジアの国々・人々への侵略・植民地支配の責任に向き合うことなく、また、自国の戦争被害者に対する責任も放棄したまま、新たな戦争体制づくりを急スピードで行っています。
沖縄・奄美の島々では、新たな自衛隊基地が造られ、攻撃用のミサイルと部隊が配備され、戦争態勢の構築が行われて来ました。その軍事拠点化は、いま、九州を中心に西日本から全国に拡大しています。
莫大な税金を使って、弾薬庫の建設や基地の大拡張が強行されています。全国各地で、自然破壊、住民の分断、人権侵害が行われています。国際法が求める「軍民分離の原則」に反し、住宅地のすぐそばへの軍事施設建設、民間の港湾・空港の軍事利用、公道を軍事車両が走行するまでになっています。そして、沖縄島の住民には「屋内退避」が、宮古・八重山・奄美などの住民には生活を捨てて、リュック一つで、攻撃対象にもなりうる九州や山口への「避難を名目にした疎開」が強要されています。これらは実効性のない計画です。
さらに政府は、自衛隊司令部の「地下化・強靭化」を全国で進めています。住民の命をないがしろにしたまま、戦争を遂行しようとしています。これは、住民に多大な犠牲を強いた80年前の沖縄戦をこえ、全国を破壊する戦争計画です。
また、米日・NATO諸国などによって、経済的に深い結びつきのある中国を「仮想敵」とする合同軍事演習が日本各地・周辺海空域や南シナ海などで繰り返され、「中国包囲網」の構築が行われています。そして、いよいよ中国に届く敵基地攻撃ミサイルの配備が、琉球弧―日本列島で始まろうとしています。「大軍拡」を超えた臨戦態勢の構築が目前で行われています。私たちは戦争の加害者にも被害者にもなりたくありません。
「知り、つながり、止める。」
平和を創り出すために、本日、私たちは新たな闘いに歩み出します。互いの情報を共有し、知恵を出し合い、つながり、連帯し、市民の共同の力で、「国家による戦争」を止めます。
ここに、「戦争止めよう! 沖縄・西日本ネットワーク」の結成を宣言します。
2025年2月22日
「戦争止めよう! 沖縄・西日本ネットワーク」結成集会 参加者一同
3月16日、政府が他国領域攻撃用の長射程ミサイルを九州に「先行」配備する方向で検討に入ったとの報道(共同通信)があった。政府は「長射程ミサイル」配備について2025年度予算案に計上しており、年度内配備開始を想定している。
陸上自衛隊は、大分県湯布院駐屯地と熊本県健軍駐屯地に「長射程ミサイル」を運用する地対艦ミサイル連体を配備しており、先行配備の可能性が懸念される。25年度内の「長射程ミサイル」配備について国会でのまともな議論もなく、国民に対する説明もないままの配備は到底容認できるものではない。「長射程ミサイル」配備は、軍備正当化の「専守防衛」の言い訳さえも使えないもので、中華人民共和国や朝鮮民主主義人民共和国など近隣諸国に強い懸念をもたらし、緊張を高めるものである。反撃・攻撃を受けるリスク、住民の命や財産を奪われるリスクを高めるもので、決して戦争の「抑止力」になどならない。憲法9条を生かした外交、アジアの平和構築こそが最大の「抑止力」である。
主食のコメすらまともに供給できない国がなすべきことは、まず「人と生活の安全保障」であって、「軍備拡大・戦争準備」などではない。
私たちは、九州であれ、沖縄であれ、日本のどこであれ国民の命や財産を犠牲にする「長射程ミサイル」配備を受け入れることは絶対にできない。他国領域攻撃用長射程ミサイル配備計画に断固抗議し、以下を要求する。
他国領域攻撃用長射程ミサイル配備計画を撤回すること
弾薬庫建設や基地配備、ミサイル運用部隊の配備などについて、各地で住民説明会を開催すること
2025年3月21日
戦争止めよう!沖縄・西日本ネットワーク
福島原発告訴団
福島原発刑事訴訟支援団
東京電力福島第一原発事故の刑事責任を問う東電刑事裁判において、最高裁判所第2小法廷(岡村和美裁判長)は3月5日付で、業務上過失致死傷罪で強制起訴された武黒一郎、武藤栄両被告について、検察官役の指定弁護士の上告を棄却し、1~2審の「無罪」の判決を維持する決定をしました。
最高裁第2小法廷は、三浦守裁判官を除く裁判官3人(岡村和美裁判長、草野耕一裁判官、尾島明裁判官)全員一致として「業務上過失致死罪の成立に必要な予見可能性があったものと認定できず」「発電所の運転停止措置を講じるべき業務上の注意義務が認められない」とし、被告人を無罪とした第1審判決を是認した原判決の判断は「不合理な点があるとはいえない」と最悪の決定をしました。
私たちは、東京電力との深い関係にある草野耕一裁判官が裁判の公正を妨げると考え、事件の回避を求めてきましたが、3月21日の定年退官の直前の判断に強い憤りを禁じえません。一方で、2022年、東電民事裁判の最高裁6.17判決で、少数意見を書いた三浦守裁判官が事件を回避したことにも驚きました。
そもそも、第1審判決は、地震本部期評価に基づいて東電設計が算出した15.7メートルの津波高をもとに、東京電力が常務会で津波対策を承認していながら武藤らによって先送りした事実が公判で明らかになり、予見可能性は十分立証されたにもかかわらず、東京地裁永渕健一裁判長が握り潰した不当判決でした。
この最高裁の決定は、本件の双葉病院から避難の途中で亡くなった被害者とその遺族をはじめ、万余の人々の生活と人生を壊した、日本最大の公害事件である福島第一原発事故の全ての被害者と被災者を踏みにじるものです。
さらに、人災事故を引き起こし、国民の生命と財産を窮地に陥れ、甚大な被害をもたらしながら、原子力発電事業者は何らの責任も問われず免責されるという法的前例をつくり、むしろ、新たな原発事故を準備するものです。
決して許されるものではありません。満腔の怒りをもって抗議するものです。
私たちは、2012年、福島原発告訴団を結成し福島地検に告訴して以来、事件が移送された東京地検における不起訴処分と検察審査会の起訴議決を経て、市民の力で強制起訴を勝ち取り、2016年の福島原発刑事訴訟支援団結成、2017年から東京地裁の37回の公判の中で多くの真実を明らかにしました。2019年東京地裁の不当判決。2021年からの控訴審と23年の控訴審判決、さらに23年から24年にかけての最高裁で上告審と13年にわたる道のりでした。
私たちは、改めて無念の死を遂げた被害者、その遺族、そして被災者の14年の想い、これまでの道のりの中で鬼籍に入られた多くの方々の想いを、決して忘れることはできません。
私たちは、兄弟姉妹関係の東電株主代表訴訟はじめ、全国で裁判を続ける仲間の皆さん、各地に生きる原発事故被災者の皆さんと共に、今も続く過酷な福島原発事故の被害に真摯に向き合い、原子力行政におもねる司法をも変えるためにも、これからもあきらめずに活動を継続して参ります。
♪ズンズン♪ズンズン♪
♪ズンズン♪ズンズン♪
3月9日、夕闇がおり始めた頃、東京・新宿駅東南口にはKポップのようなリズムが通りかかる人たちの胸に響いて、フェミブリッジ東京の行動が始った。黄色の横断幕を広げ、#MeTooの文字に敷石に並べたキャンドルが光っている。女性たちを中心にして集まった人々は、ミモザの花や大きめのサイリウムペンライト、ハートマークなどなどを手にしてパフォーマンスをしている。
長尾詩子さんの司会で始まり、菱山南帆子さんが、女たちの運動はいつも柔軟だ。今年は選択的夫婦別姓の大チャンス、選べる自由こそがすばらしい未来を招く。女性の声で政治を変えようなどと挨拶したあと、すぐに韓国風のコール&レスポンスを開始。
コールは、「平等、平等ジェンダー平等」「家事も育児も介護も女!」「女はみんなへとへとだ!」「睡眠時間は世界最短!」「平等、平等ジェンダー平等」「選択的夫婦別姓実現しよう」「日本の女性は働きすぎだ」「低賃金無償労働」「解体、解体、家父長制」「平等、平等ジェンダー平等」「自分の名前は一つだけ」「生きてた名前で暮らしていたい」「金によるマッチョ社会ノー」「平等、平等ジェンダー平等」・・・などなど、日ごろの女性の思いが次々と言葉になり、スピーチの合間に何回も繰り返された。
リズムに乗ってコールにあわせる声がだんだんと大きくなり広がる。通りがかりの通行人が何事かとチラシを受け取り、手が出てくる。インバウンドの外国人はステップを踏みながら歩く人、中には踊る人まで出てくる。舞台をとりまく輪が、二重、三重、四重と大きくなり、さながらフェスのようだ。上を通る甲州街道の欄干からも見ている顔が次々と増えていく。
この日に向けて新しく準備したプラカードは、「選べるっていいね 選択的夫婦別姓」「性暴力NO! 私は黙らない」「目をそむけないで 基地被害 性暴力 OKINAWA」。
参加者からの発言のトップは、沖縄出身の若い女性。その女性は、昨年末に沖縄の集会にあわせて東京で行われた街頭行動で、沖縄での米兵による女性への性暴力を2度と起こさせないといったが、性暴力は再び起きた。米軍基地を沖縄に押し付けている本土にも責任がある。沖縄の女性は、女性差別と沖縄差別という二重の差別の下にある。沖縄を差別しないで、と話した。
国会議員の発言もつづく。福島みずほさん(社民党党首、参議院議員)は、非正規労働やシングルマザーの年間賃金200万円を変えていこう。自身が別姓で暮らしてきた経験を話し、また、核兵器禁止条約を批准しよう、国連女性の地位委員会の勧告を実現しよう、などと話した。
松下玲子さん(立憲民主党、衆議院議員)は、今年こそ選択的夫婦別姓を実現しよう。通称使用の不便さを身をもって感じている。女性の社会進出と、男性の家庭進出を進めていこう、と話した。
吉良よし子さん(日本共産党、参議院議員)は、職場のジェンダー差別、就職時のハラスメントなどを止めるのが政治の責任で、そうした声が政治を動かしている。核兵器禁止条約にも女性の声をあげていくことが期待されている、と語った。
依田花蓮さん(れいわ)も発言した。よださんは、DVについての研修会でDV加害者は結婚して相手の女性が姓を変えるとDVが起こるということを聞いた。強制的同姓制度はDV加害者を製造する装置だ。また男性の自殺者数も女性より多く、男性も抑圧されている。みんなが平等に行きたい社会がジェンダー平等社会であり、多様性はパワーだ、と話した。
ここで登場した「井戸端ラッパーズ」がラップを披露。大田区で昨年からラッパーを始めた女性2人組みが全都段階のデビューをした。長めのはっぴを羽織っている2人の1曲目は『ナイナイ』。
そんな社会に未来はナイナイ」
「おっさん社会に未来はナイナイ」
「女性のパワーーに限界ナイナイ」
などと、「ナイナイ」で参加者と声をあわせた。
2曲目は『DE&I・住みたい世界』を披露してダイバーシティ、エクイティ、インクルージョンの生き方で大いにもりあがった。
市民からの発言もつづいた。若井れい子さんはフェミニストの生き方について話した。柚木康子さんは、どんな働き方でも「均等待遇を」と労働組合でたたかってきた。国連の女性差別撤廃委員会に対して外務省が資金を出さないとか、委員の招聘をしないことを決めたというが、これまで資金提供もしてこなかったし委員の訪問予定もない。外務省に在籍した人までこうした外務省の対応を批判していほどなので、引き続き外務省の追及は続けて生きたい。女性差別撤廃条約の選択議定書を1日も早く批准したいなどとスピーチした。
集まった人々は何回もコールをあげ、夕闇迫った中でライトが輝いた。
なお9日の東京の行動に対して、動画の一部を悪意もって切り取って編集しSNS上で炎上し、コールした仲間にたいして殺害予告が相次いでいる。現在フェミブリッジの事務局はこれらに慎重に対処している。
今回で4回目となるフェミブリッジだ。3月8日の国際女性デーには沖縄での行動をかわきりに、札幌、群馬、横浜、横須賀、岡山、福岡、都内の各所など全国17箇所で取り組まれている。若い方たちによってチラシが作られ、インスタグラムで発信が行われている。取り組みは3月末から4月にかけても続いている。
沖縄では地方紙にも紹介され、札幌駅前では観光客から注目された。津山では積雪が残る中の行動で、女子高校生からの反応が良かったなどの反応が寄せられている。
(事務局 土井登美江)
海渡双葉(弁護士、秘密保護法対策弁護団事務局長)
(編集部註)2月22日の講座で海渡双葉さんが講演した内容を編集部の責任で要約したものです。要約の責任はすべて本誌編集部にあります。
能動的サイバー防御ですけれども、端を発しているところが、2022年末に改定した国家安全保障戦略という、安保3文書の一つです。その中で、サイバー脅威に対して対応能力を欧米主要国と同等以上に向上させるというところがあります。これと関わっているところです。
どういうものなのかというのを端的に言うならば、サイバー空間をとくに何か異常時が起こっているわけではない、平時の段階から監視をする。不審な通信とかサーバーを見つけて、重要なインフラを狙ったサイバー攻撃の危険性が高い場合には、未然に、その攻撃者のサーバーに侵入して、マルウェアを送り込むなどして無害化をする。こういうのを、能動的サイバー防御。まあ英語の訳でもACDと言ったりするようですけれども、そういうのも導入するという話になっています。
政府は昨年の6月から、この能動的サイバー防御の制度の導入に向けて、有識者会議を立ち上げて、何回か会議を重ね、最後に有識者会議が提言を出して、政府に提出されたという状況です。それを踏まえて、政府が2月7日に閣議決定をしたのが、今回のこの能動的サイバー防御に関する法案です。正式名称は、結構長くて、「重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律案」と、それに関係する法律を整備する法案という形です。本当に、法案自体は実は出てきたばっかりというところではあります。
大きくはいろいろ含まれているけれども、1つは、民間企業と政府との機能強化を含む官民連携という問題と、政府による民間事業者の通信情報の利用、それに警察と自衛隊に相手サーバーへのアクセス・無害化の権限を持たせるといったあたりが大きく言えるかなと思います。
有識者会議の提言として、ちょうどイメージ図みたいな形で出てきたものです。全体像は確かにこれを見るとわかりやすいかなとは思うので、見て頂きたいのです。まずインターネット空間、これが真ん中に書かれているもので、左側は守る対象、電気とか、水道とか電車みたいなものを表していると思われる、重要インフラ系のものがあります。下の官民連携強化というのが政府です。インターネット空間との間で、政府の所に矢印になっています。この部分が通信情報の利用というもので、ここが一つ大きな問題である、監視というところに関わってきます。そしてさらに右側には、また攻撃サーバーというのがあって、それを政府側が、逆に上向きのオレンジ色の矢印があります。これで攻撃して無害化する。アクセス・無害化をするというイメージになっています。
昨年11月の所信表明演説のときに、石破首相が能動的サイバー防御法案についてもちょっと触れていまして、可能な限り早期に国会に提出するべく検討され、加速すると言っていました。明らかに重要政策の課題の一つだと位置づけた発言を所信表明演説の段階でしていました。さらにこれは前哨戦というか、国民民主党がサイバー安全保障を確保するための、能動的なサイバー防御等に係る体制の整備の推進に関する法律案というのを提案しています。昨年の段階です。これ自体は、何か詳細は含まれてないけれども、能動的サイバー防御の制度を推進していく。そのための整備というところで、与党ではないけれども、国民民主党に先導役という形でやってもらって、メインの今回の政府提案という形をとって進められようとしているところです。
有識者会議の提言が出てから、どんなものが出てくるのかと相当注視していたけれども、やっと2月になって出てきたわけです。有識者会議の段階からかなり怪しいことが書かれていたので、なんかとんでもないもの出てくるのではないかと、秘密保護法対策弁護団でも検討していました。その後、日弁連の各関連する委員会でも、有識者会議のまとめ方からすると危なそうだぞとなっていました。本当につい最近、やっとこの法案
の中身が明らかになったという状況です。
通信情報の利用についてですが、要はサイバー攻撃の実態を把握するために、通信情報を利用して分析をするとしています。「基幹インフラ事業者との協定(同意)に基づく通信情報の取得」というのがあり、また「(同意によらない)通信情報の取得」についてもやると言っている。さらに通信情報を取得して、一応「自動的な方法により、機械的情報の選別を実施」するとしています。これについて独立機関を定めて、取得については事前承認をしてもらい、あと検査するだとか、国会報告をするだとか、こういうような形になっています。
同意によらない通信情報取得という部分ですけれども、どういうものをするのかというと、外外通信です。ちょっと言葉として耳慣れないと思いますが、国外と国外がやっていることです。他の方法では、その実態の把握が著しく困難であるサイバー攻撃に関係するものが、転送されていると疑うに足りる状況がある場合に、承認を受けてそれをストップするというものです。それともう一つが、外内通信、内外通信――、国外から国内もしくは、国内から国外という、そういうものについても取得をするということです。自動的な方法で、機械的情報を選別するというようなことが書いてあります。
もう一つが、協定に基づく取得です。分析をして、さらに取得した通信情報は、厳格な取り扱いをするということが、一応は書かれているけれど、ここが、あとちょっと問題になってくるところかなと思います。
もう一つの問題として、アクセス・無害化のところです。これは大きく分けて2つ主体として考えられていて、警察がやるもの、自衛隊がやるものという形になっています。基本的には警察のところが刑事の手段のものになっていて、一部要件のときに自衛隊が出てくるという立て付けにはなっています。
まずこの問題を考えるにあたって、サイバー被害の実態は見ていかなければいけないところかと思います。私としては、能動的サイバー防御の話が出てきた頃からニュースで、サイバー攻撃にまつわるニュースが通常より増えているのではないかと邪推しているんです。数年前にこういうことがありました、みたいなのを今更この時点で言っているようなニュースもあったりして、何か非常に解せないところが実はあります。
確かにサイバー攻撃自体は国際的にも問題になっているところで、アメリカで国内の石油パイプライン企業が、マルウェアの被害にあったとか、日本でも、トヨタであるとか、名古屋港のコンテナの関係の所だったり、病院がターゲットにされた例もありました。JAXAも実は攻撃を受けていましたとか、角川書店もとか。確かにいろいろ身代金目的とか、もしくはもうちょっと政治的な意味合いが含まれているかもしれません。そういったサイバー攻撃と、それによる被害という実態自体はあるところではあります。
もちろんサイバー攻撃に対処すること自体は重要であることは、いうまでもありません。有識者の提言でも、この法案の説明のところでもそうです。サイバー攻撃が深刻なんです、悪質化している、高度化していると強調する一方で、なぜその対応として、このACD、能動的サイバー防御なのかというところは、率直に言って、十分に説明されてないのではないか、というところです。
この政府提案の制度は憲法上大きく問題になるところなので、サイバー攻撃大変だよね、だから何とかしなきゃ、という話では済まないというところを前提において、本当にこの制度でないといけないんですか、この制度は憲法上、大丈夫なんですかというところは慎重に検討しなければいけないというところです。
もう一つ重要なのが、検討にあたって通信情報利用という、アクセス・無害化処置です。これは完全に区別して、ちゃんと一つ一つ検討していかなければいけない問題だというところです。何か政府がものすごくぐちゃぐちゃに混ぜて言っているところです。
その観点から、まずかぎかっこの「通信情報の利用」ですけれど、これは通信の監視です。この辺についてまず検討していきたいと思います。これは、まさに憲法21条の通信の秘密との関係で問題になるところです。憲法21条2項「検閲はこれをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない」とはっきり言っているところで、法律上の電気通信事業法の中でも、「通信の秘密は、侵してはならない」。当たり前ですけれど、憲法に基づいて、そうなっているところです。
この問題を考えるにあたって、なんで通信の秘密を保護しなきゃいけないのか、そこからちゃんと解きほぐしていったほうがいいのではないか。日本国憲法が、はっきりと禁止している理由ですね。それは、戦前の歴史的な経過もあるからです。その通信の秘密を、なぜここまでしっかり保護しなければいけないかというところです。この点は、各種裁判で結構、通信の秘密を巡って争われているところなので、裁判所もいろいろ決定を出しているところです。
通信の秘密は、通信自体が社会生活において必要不可欠です。もちろん会って話すというのも一番直接的ではありますけれども、今やもう各種、電話に限らず、メールに限らず、各種様々な問題への意思伝達というのも行われているわけです。それが表現の自由というものをちゃんと保障する実効的なものにするというのがまず一つ大きな意義があるところです。さらにプライバシーの保護も大きなところがある。電気通信の利用者にとっては、自分がやっている通信の秘密が保護されるという信頼のもとに通信を行っている。この信頼は社会的にも保護の必要性が高いものだということですね。これが大前提となる出発点だと思います。
通信の秘密というのは、どの範囲まで保障されているのかというところです。これも各種裁判例で脈々と出ているところです。これも紹介しておきます。通信の概要は、わかりやすく言うと、メールで言うところの、メールの例えばタイトル、本文とか、そういう中身は、もうまさに中心の中身です。でもそれだけではないんですね。通信当事者の住所・氏名・電話番号・発受信場所、通信の日時・時間・回数なども含まれます。これはもう裁判例でもはっきり言われているところです。
なんでかと言ったら、中身まで見えなくても誰と誰が連絡し合っているのかとか、どれぐらい、何時それを発信したのか。どれぐらいの頻度でその人とやっているのかとか、そういうのまで、ずっと監視されているということになっていたら、やっぱり同じ問題が生じてくるわけです。憲法が、この通信の秘密を保障している趣旨であるプライバシーの保護、ひいては個人の思想良心の自由、表現の自由を保証実効あらしめるところにあるということからすると、通信相手が誰なのか、いつどこで発信したのかとか、回数も含めてですね、それを政府が監視しているみたいになったら、それはやっぱり個人の思想であるとか表現の自由は、抑圧されてしまうというところなんです。
この話は最高裁の決定でも、通信に結びつく送信者の氏名住所等は、通信の内容そのものではないけれども通信の秘密に含まれると言っているところです。
有識者会議の方に戻ります。有識者会議で通信情報の利用という制度が必要だと言っている所です。これはちょっと長いですけれど引用します。
まず世界全体で政府や重要インフラを通ってきたサイバー攻撃の脅威が急速に高まりつつある。日本でも実際に攻撃を受けて被害が深刻化している。攻撃元も隠蔽するような形でやるなど、いろいろになっている。どのような攻撃がどこから行われるかを事前に知ることが困難であり、攻撃を受ける側での防御には限界がある、とあります。
アクセス・無害化ですね。攻撃するということは、能動的サイバー防御と言いながら、結局攻撃なんですよ。攻撃をすることが難しいと言っている。だから被害を未然に防止するために通信情報を分析することにより、このボットとかC2サーバーで構成される攻撃用インフラの実態を把握して、防御可能にすることが必須だ。特にアクセス・無害化を行うにあたって、これの十分な量の観測・分析の積み重ねが必要である、みたいな提言をしている。
これって結局、無害化、事前に攻撃したいから、とりあえず先に、何でもかんでも集めますよという話をしている。この話の中に、だから防御を超えて攻撃が必要だという話であるとか、そのために通信の秘密を侵害してでも、この通信情報利用制度が必要であるということは、どこにも具体的にはあんまり書かれていないと思います。結局アクセス・無害化したいから、これもやりますよっていう話だと思います。というところが、この話のミスリードしている問題なのではないかなという所です。
結局、どうするのか。事前に対象を特定せずに、一定量の通信情報を収集して分析する。というようなことを言って、さっきの外外通信、外内通信、内外通信というようなものをやると言う事です
提言の方では、「コミュニケーションの本質的内容に関わる情報は特に分析する必要があるとはいえない。」機械的データを選別し、検索条件等で絞る等の工夫が必要だとか、そういうことを言ってはいるけれども、「通信の秘密であっても、法律により公共の福祉のために必要かつ合理的な制限を受ける。」みたいなことを言っています。ただ、これは結構まやかしっぽいなというふうに、この提言を読んだ瞬間から思っていました。まず、そもそも収集は基本的に全面的にすると言っています。ただ、ここまでは分析する必要があるとまでは言えないみたいな言い方です。だったら、そこの部分はいらないはずです。何かあたかも配慮しています、みたいな感じで言っているけれど、なんかごまかそうとしていませんかというようなのが、有識者会議で経験上も現れているところです。
有識者会議が通信情報として4種類を言っています。1つが電気通信設備等を識別する情報、送信日時、IPアドレスとか、ドメインです。
送信日時は、裁判の令状マター、通信の秘密に含まれるから、ここが当たり前のように入っているところが問題です。
2つ目がコンピュータに一定の動作をするよう指令を与える、コマンドとか、マルウェアとか、その他機械的な情報というところで、通信量とか、ブラウザとかOSの種類とか、そんなのがあげられています。実はここも結構怪しいです。この問題をちょっと頑張って分析してくれた仲間がいたんですけれども、メールアドレス、誰からなのかというところは、多分この3番の、その他の機械的な情報に入ってくるのではないかと思われます。そうなると、誰がというところ、誰から誰へのところは、まさに通信の秘密の内容です。そこの部分が対象になってくるというところです。
4つ目が、個人のコミュニケーションの本質的内容に関わるところです。メールで言うところの本文とか、件名とか、添付ファイルの内容・名称とか、そういったものです。有識者会議は、4番は分析の必要があるとまでは言えないみたいな言い方をしていた。そういう立て付けになっています。
問題点として1つあるとすると、この内内通信の流れから言うと、国内間の通信とか、コミュニケーションの本質的内容に関わる情報が、監視禁止になるとは明言していません。そもそも収集については、対象を事前に特定せずに、一定量を全部収集するとうたっているので、基本的にできるだけ多く収集するということです。
ここまでは分析する必要があるとまでは言えないとか、メールの内容を逐一全部見るのは適当とは言えないとか、言っている。あたかもプライバシーまでは侵害しないですよ、みたいな雰囲気で言っていますけれど、必要がないとか適当でないとか言っているだけで、法的に禁止するという発想がないところが、かなり危ういというところですね。
自動選別というところが、私はかなりダウトだなと思っていて、結局、自動選別の前段階は、やっぱり全部取っちゃっている。国内間を通じて、内内通信とか外内通信というのも、ちょっとアウトです。皆さん自分自身でいろいろやるときに、自分がどこのサーバーを、どう経由してなんて、ちゃんと把握されている人は多分少ないかと思うんですね。何らかの形で、国外が関わっていた場合、それは外内通信になったりする。もしくは内外通信になったとすると、この話から漏れてしまう可能性があります。だから結局、出発点と、着地点だけじゃないんですよ。
途中段階で、どこかで関わっていたら、結局、内内通信ではないんだろうというところの上に、とにかく全部一旦は収集して、それを一応自動選別すると言っている。それって警察の中で、それがどうなっているか、という話なんですよね。しかも自動選別された結果として、送信日時であるとか、機械的情報という名も、誰がとか、そういうところは、自動選別の残る情報なので、かなり怪しいのではないかなというところです。
個人のコミュニケーションの本質的内容というのも、理解というところと関わってくると思います。ここの部分ですが最悪、内閣府令で拡大されたら、そういうのはもう誰も見てないですね。内閣府令が、いつどこでどう解説していたか見えていないので、そこによって恣意的に拡大できちゃう可能性があり得るところも、非常に問題だと思っています
その上で、政府は諸外国でもこういうのは行われているものですよと、有識者会議でも言っています。政府の説明文書を見ても、そう書いてあるけれども、この問題も非常に慎重に見る必要があります。
特に見てほしいのが、例えば政府の例として、イギリス、ドイツ、アメリカ、豪州(オーストラリア)が出ています。ドイツを見ると、私生活の中核的領域の分析禁止、自国民等の個人データ分析、原則禁止とかがあります。いくらやるとしても、自国民の監視みたいなことをしてはダメだというのが一応アメリカも、です。米国人の関連情報の分析は必要最小限にしなければいけないとか、国内通信記録は原則破棄とかとかいう話です。
ちなみに言うと、スノーデンが告発したところによれば、自国民はダメと言っていても、実はやっていましたみたいなのがあるので、そういうのも含めて本当に歯止めが、一回できちゃうと危なっかしいものだと思います。すでに諸外国で問題が起きているようなのを、そのままこっちに持ってきていいのかという問題でもあるというところだと思います。
その上で、結構重要かなと思うのが、このドイツの連邦憲法裁判所の決定というのが出ています。去年出ているのを突き止めて、これはすごく重大じゃないかということでした。ドイツの連邦憲法裁判所が、このサイバー脅威のための同じように通信を監視する法律について、違憲だというふうに決定を出した。なんでかというと人権団体が原告になって、結構長く頑張ってたたかっていたみたいです。
連邦憲法裁判所は、①国内間の通信の取り扱いに関する規定に不備がある、②在外外国人の通信における私的生活形成の核心部分に関連した規定の不備がある、③実施記録の消去期限の問題がある、④審査機関の体制の観点から違憲だと決定しました。この問題は国際的にも、結構けんけんがくがく問題になっているところがここからもわかってくると思います。
ドイツでは戦略的内外通信偵察みたいに言うようですけれども、この問題の部分の1つ目が、この法律は国外からか内外か、とにかく国内間の通信のことは書いてありません。
一応、監視対象が国外からの通信みたいなものに限定しているように書いてあるものの、結局取得したデータには国内間でのやり取りに関するデータが含まれる場合がある、むしろ実際には大部分を占めているというように裁判所は書いています。そうやって、同時に取得された国内間の通信データの扱いに関する規定がないというところが、1つ問題だとされます。
もう1つが、この法律はいろいろ考えて作られてはいるみたいで、私的生活形成の核心領域に影響する検索語を用いた監視はダメですというのを書いてあります。そういうのを入れたのか、というところなんです。条文のところで在外外国人は適用しない、となっています。ところが申し立てられて、むしろ実際には大部分を占めていると裁判所は書いています。
そもそもそういう部分の監視はダメと言ったのに、一部漏れているところが問題だというふうにされました。
もう1つは、若干テクニカルな問題かもしれないけれど、偵察になった場合、一応一律翌年末に消去するみたいになっているけれど、この措置が行われた場合、監視対象者に通知されることになっているらしいです。けれど実は、その時点で期間の期限が過ぎていたりして争えなくなるのではないかとか、そういう救済の観点で問題ではないかということです。
あともう1つ、第3者機関が一応あります。この監視による権利侵害の有無がないかを審査する組織が一応あります。けれどもこれは組織として不十分だ。その委員を専任の職としておらず、名誉職みたいになっているし、委員全員に法曹資格を要求していないというところが指摘されています。
ひとつひとつ詳しく見ていきますと、一応ドイツの仕組みだと、対象になるのはドイツ国民とかドイツに所在する者のみが関与する国内通信です。その国内通信が取得できた場合、そのデータ削除に関する具体的な規定が欠けているという話ですね。多分そこが大部分になっているんですけれども。
2つ目のとして指摘されていた部分の関係する条文のところを見ていきます。ドイツの法律だと特定の加入者回線を標的とした傍受につながるような検索用語は、使用してはダメと書いてあります。また、私生活の核心に関わることについても検索してはダメだということが書いてあります。これは、なるほどと思うけれども、わざわざ私生活の核心の保護という条文も設けられていて、そういう情報は収集してもダメです。収集した場合、使用してもダメ。遅滞なく削除しなければいけないというのも盛り込まれています。
さらに進んで他の国に所在する人に対しても、標的にしてはダメですと言ったのが、このドイツの決定です。こういうところ、なかなかなるほどというところです。日本の今回出てきた法案は別にそんな保護規定はないし、検索禁止だってありません。これについて漏れ聞くところによれば、政府側が某議員に説明した内容によればというところですけども、日本だと、別に自国民がどうとか、そういう話じゃないから、これは関係ないみたいなことを説明しているらしいです。でもそれって違うのではないですか。
だからそういう意味で言ったら、日本の方がやっぱり広くなってしまいますね。一箇所でも、つまり自国民かどうかなんてことすらも、あんまり関係無しなんですよ。日本のこの法案からすると、別に特定の加入者を標的とした傍受ができないようになっているというのも全くありません。だから日本のでは、本当にこういった部分がすっぽり抜け落ちているというところが言えると思います。
監視組織が不十分という問題のところが、司法審査にかなり準じなかればいけないという考えがドイツにあるみたいですね。実質的にも手続き的にもそうでなければいけなという話です。補助的な立場で職務を果たすだけでは十分ではないというところ、法曹資格がきちっとなければいけないとか、そういう話ですね。
ただ、今回の法案とか報道で、一部この法案をむしろ推進している側の報道を読む限りでは、プライバシー侵害が起きてないかどうかを監督する機関という話ではなくて、情報漏洩がないかを監視するような位置づけになっているのではないか。
サイバー攻撃をする時の事前または事後的に承認する、といったあたり。こういったあたりを主な任務としている機関であって、そういう意味でもドイツの話と全然、違うのかな。
さらに言うと、日本のこの法案での機関は、一応委員長と委員、全部で5人でやるみたいです。2人は非常勤でいいと、はっきり書いてあります。だから実質3人しかいない。どういう人を選ぶかというところに、裁判官であった者などとか一応法律的な素養がある人、それが1号。2号がサイバー攻撃の専門家と書いてあります。これ別に2号側でたくさん取って、1号の方は名誉職みたいな感じで、非常勤かなんかで入れることも十分考えられます。そういう意味でいくと、もう地方機関からはほど遠くなるのではないかなと思います。
ちなみに、ドイツの連邦憲法裁判所の決定は、違憲だとしつつ、早く改正しなさいと言いました。即座に停止とまでは踏み切らなかったところはありますが、26年12月末までにちゃんと改正してください、ちゃんとこの部分を手当てして改正しなさい、としたみたいです。
この通信情報利用自体は、かなり大問題だと思っているので基本、反対ですけれども、少なくともこのドイツの決定を踏まえた制度設計をちゃんと考えなかればいけないというところです。そもそも収集も分析も禁止するというところをきちっと盛り込むであるとか、誤って収集した場合は監督の下で早期に削除するというところです。監視機関も設置すればいいというわけじゃなくて、ちゃんとしなければいけない。その意味では、実は要件もしっかりしないと、何を監督するかといういうところです。もともとの法律のところので、要件がザルだったら、監督、司法にも何もならないので、秘密保護法とも関わるところで、そういったところも重要かなと思います。
そもそも令状不要で司法審査が及ばないという、この設計自体がどうなっているのかという話です。要はすでにある通信傍受の盗聴法ですね。盗聴法は裁判官が犯罪の疑いがあるということで。令状を出して具体的にこういう部分については傍受していいとなります。令状を出して、そこを警察が傍受しているのが盗聴法ですよね。これだって通信の秘密との関係で言ったらかなりぎりぎりです。当時反対運動がありましたけれど、令状があっても、それ大丈夫なのかっていうところじゃないですか。
この能動的サイバー防御は、前提となる犯罪事実がない段階からやっているので、だから令状なしでやるという話なんですね。正直、盗聴法からもう何歩も先に行っている。司法審査というのがそもそも全く及ばない設計です。警察が、いかようにでもネットを監視できるという状態になっているということです。乱用される危険性が極めて高いところかな、というふうに思います。
その関係で、ぜひご紹介したいのが大垣警察の市民監視事件です。ここにいらっしゃる方は、すでに知っている方も多いかなと思いますけれど。
これは、岐阜県の大垣警察が、当時、風力発電の計画が現地であって、その学習会を開いていた市民4人の個人情報を収集して、あろうことか、その電力会社に提供した。これスクープで、あとで分かったことなんです。
具体的に言うと、中部電力の子会社であるシーテックという会社です。風車はクリーンなイメージはありますけれど、それでも健康被害であるとか環境被害はあり得るわけですね。だからどういうものなのかちゃんと勉強しようとしていた。それに対して、かなりこと細かに色々調べ上げ、その人たちが関わっていた運動、脱原発の運動であるとか、かつてやっていた運動に携わっていたとか、あれこれ調べ上げて業者に提供して意見交換していたことみたいです。
この件が明るみに出て、市民4人が国賠訴訟をやっていました。去年の9月に名古屋高裁が、この警察による個人情報の収集、保管、外部への提供すべてを違法ですよ、と言って、損害賠償と個人情報の抹消を命じた。しかもこれは結局、被告側が上告しなかったので確定したと聞いています。これはすごく重要な判決だったかな、というふうに思います。
これで重要なのが、地裁は、収集を違法にしなかった。高裁では、収集目的自体が違法としたことは、けっこう重大です。裁判所は生きていた、司法はまだ生きていたみたいなところなんです。公権力が個人情報を広く収集して分析するようになったら、私人の側からすると、自ら情報発信すること自体を躊躇する可能性があります。発信する内容も、発信するとしても、公権力が収集するということを前提として、忖度してしまう可能性があります。それはやっぱり表現の自由、内心の自由の制約にも関わってくるということです。
大垣警察は、原告だったこの方たちの自然保護運動とか希少動物の保護運動とか、そういう活動を妨害して、結局その相手方の当事者を援助する目的でやっていたでしょう。その目的において、これらは違法だと。警察法2条2項、本当は不偏不党かつ公正中立を旨とし、となっているのに、それに反している。少なくとも明らかに社会的相当性を欠いたものだとはっきり言った。これは、本当にこの通りだと思います。それを裁判所がきちっと言い切ったところが、すごく重要な意義があると思います。
この判決は原告の方たちのホームページアップロードされているので、興味がある方はダウンロードして読むと本当に読み応えのある判決です。
もう1つ、単純個人情報も、プライバシーを侵害するもので、それも収集もダメだと言いました。今までの裁判例でも何度も言われてきたことではあります。当たり前かもしれないけど、重要なことだと思います。思想信条に関わるものとか、健康など秘匿性の高いものは当然です。要保護性が低いとされるいわゆる単純個人情報と言われるものについても、みだりにこれを取得したり保有したり利用しているとなったら、それは、人格権としてのプライバシーを侵害しているということを言いました。単純な個人情報で、健康みたいなセンシティブなものとまでは言えないものであっても、警察がそういうものを収集、保有しているということは、それだけで意味はないから、他のものといろいろ結びつけてやっていくという話になるわけでしょ、ということを言っているところです。
ここも、被告の県が言ったのは「市民運動」という単語を「大衆運動」と言い換えた上で、大衆運動においては、SNSによる呼びかけに呼応して、短時間で主催者等の予想をはるかに超える参会者が集まり、大規模かつ無秩序な「大衆運動」が展開される危険性を秘めている等、と主張したらしいです。今回の風力発電の反対も、そういう活動へ発展したりする恐れがあったから、この情報収集活動に必要性が認められると主張したそうです。
これに対してこの判決は「このような主張によれば、昨今の市民(大衆)運動は、全てこれに当てはまることになりかねないのであって、結局は市民運動全てを危険視して、その情報を収集し、これを監視する必要があるということになってしまうのである」と、そして「このように市民運動や、その萌芽の段階にあるものを際限なく危険視して、情報収集し監視を続けるということが、憲法21条1項による集会・結社・表現の自由等の保障に反することは明らかである。一審被告県の主張は失当というほかない。」
もう、そうだよねっていうところなんですよ。
さらに追い打ちをかけるように、「結局その企業とか公共団体が行う事業に反対する場合、その事業が不当なもので、反対することが正当なものであればあるほど、一時的な炎上等に留まらず、着実に市民運動に発展し拡大していく可能性が高くなる。そうすると、被告県の主張によれば、反対運動が正当なものであればあるほど、捜査機関の情報収集及び監視の対象になってしまう。少なくとも大垣警察及び岐阜県警に関する限り、実際にもそうである可能性が高い。」よく言い切ってくれたって感じで、本当にその通りというしかないんです。
この裁判を闘った皆さんに拍手を送りたいんですけれど、これによって明らかとなったのは、警察の市民監視の実態だと思います。いかに普遍不当、公正中立を旨としと書いてあったのからほど遠い、市民運動というものを敵視したのかということです。実際、裁判所でそういう主張をしたということが、もうびっくりです。こういうのが、申し訳ないけれど警察の実態と言わざるをえない中で、そこに令状なきネット監視の権限を与えたらどうなるんですかという話ですよ。ドイツみたいな、特定の人を標的にしたのがダメみたいな規定もない。メールアドレス突き止めた、この人が誰と連絡を取り合っているかとか、絶対調べるに決まっているじゃないですか。
だから市民運動とか頑張ると、市民が標的になる可能性が高い。通信の秘密は無いも同然でしょ、というところです。情報の4類型のうち4番目が外れていると言っても、結局、収集自体はしているわけです。法的な厳格な歯止めがない限りは、本当に危ういと言わざるを得ないと思います。
忘れてはいけないのが目的外利用の問題です。法案を読み返してみて、おっと思ったのが法案の23条のところです。よく見るとなんか怪しげな規定があるところで、内閣総理大臣が、選別後通信情報を特定被害防止目的以外の目的のために自ら利用し、又は提供することができるという、目的外利用を許容する条項があります。その中の最初の1号が当事者協定で、協定当事者の同意を得て、自ら利用し又は提供する場合というのが、しれっと含まれています。
どういうことかと言ったら、通信している本人には関係ないんですよ。事業者が政府と協定を結んで、それでいいとしていたら、この法案の目的であるサイバー攻撃からいうと、この話と関係ないことで重要電子計算機に対する被害を防止するというのが一応この目的ですけれど、それ以外に簡単に利用できてしまいます。
一応、原則に目的外利用はダメみたいにしていたと思ったら、結局この23条4項で原則例外と、完全に逆転する。なので、基本的には目的外利用がほぼほぼ解禁になってしまいます。あたかもサイバー攻撃のために、サイバー攻撃防止の目的とか言っているけれど、全然違うことに使われていく可能性が十分あります。これは本当にしれっと23条に書いているけれど、かなり大問題だなというところかなと思っています。
つぎに、輪をかけて問題なのがアクセス・無害化です。これはもう完全に先制攻撃なんですね。これは憲法9条との関係で問題になるところです。
本来、アクセス・無害化として言っているのは、そもそも不正アクセス禁止法で禁止されている行為です。これをサーバーに侵入して破壊するということを、警察とか自衛隊がやるから、いいでしょうと言っているようなものですという話です。立て付けからすると、基本的には海外のサーバーの可能性が一応高いわけです。それを無害化するとなると、逆向きに考えてみれば日本にあるサーバーを、X国の警察が不正アクセスで無害化してきたらどうなりますか。それは主権侵害だというところです。これは完全に国際問題に発展していくことが懸念されます。
実は有識者会議の提言でも、主権侵害になり得ることを認めています。ただ、どのような行為が他国の主権侵害に当たるかをあらかじめ確定するのは困難だとか言っていて、話を逃げています。いや、いや、むしろなるでしょうというところです。
ちなみにこの問題を考えるにあたって、これまでのサイバー攻撃への対処例、主な例を一応先に理解しておいた方がいいと思います。政府資料の図からの引用ですけれど。まずは、どういうものがあるのか。手口に関していろいろ外国機関とも連携しつつ分析をして、攻撃者が分かったら、それを公表して抑止する、というもの。あと任意のテイクダウンです。実際のサーバーを管理している人に、ここがどう考えても攻撃しているから、ここの部分について、不正な機能の部分だけ停止してください、みたいなのをお願いする。任意のテイクダウンというのがあったりします。
左下は、一つ鍵が外れているという図です。実はバックドアがありました、みたいな例です。どこかから侵入路があることが分かった場合に、それを注意喚起して、皆さん対策に気をつけてくださいみたいな場合です。そのやり方、危ないですよ、みたいな話です。右下もよく見かけますけれど、攻撃手口を公表するということですね。こういうのがあります。例えばメールで、このURLをクリックしろ、みたいなとかで、それは絶対ダメですよみたいな例です。そういうのを、広く一般に手口を公表するといったあたりですね。
提言が説く無害化制度が必要な理由は、アウトでは有識者提言が、なんで無害化が必要だということを言っているのか。結局サイバー攻撃が、巧妙化・高度化している。高度な侵入が行われるし、侵入後も高度な潜伏能力があって検知を回避している。しかも被害が瞬時かつ広範に及ぶ恐れがあるとかですね。今まではさっきの任意のテイクダウンとか、パブリックアトリビューションとかですね。
攻撃手口の公表等いろいろ積極的に行ってきたところであるが、上記のような状況のほか、外国においても、アクセス無害化の取り組みが行われていることなどを踏まえれば、これまでの取り組みに加え、武力攻撃自体に至らない状況下において、重大なサイバー攻撃に対する被害の未然防止・拡大防止を目的とした、攻撃者サーバーへのアクセス・無害化を行う権限を政府に付与することが必要不可欠である、みたいな話になっています。
今見てきたところでわかると思いますが、「サイバー攻撃が、巧妙化、高度化しています、外国に例があります」しか言っていないですね。結局これは、はっきり言ってそれしか言っていないですよ。しかも、外国で実施されている制度の内容とか実施状況、効果、弊害などは、隠密にやられていてよくわからないみたいな話になっています。そんなアバウトな形でやるのか、というところです。
まさに、海外の例があるというのを一つ理由にしているけれど、資料の中で無害化措置に関する海外の例は、具体的な説明はほとんどなく、秘密裏に行われていて、資料がない。主体、手続き、過誤が起きた場合の対応など、全くよくわからないです。ですから、さっきの通信情報の利用も私は反対です。けれど、ギリギリ、先ほどのドイツの決定の判断枠組みとか、全部きちっとやって、なんとかというところであったとしても、無害化措置の方は本当に大丈夫ですか、というところです。こっちはもう完全にアウトだというところだと思います。
しかもこの無害化というのは、サイバー攻撃を行っているサーバー国は、日本とは緊張関係を抱えている国のサイバーが用いられている例が多い、みたいなことを言っていて、主権侵害になり得るというところです。実はタリン・マニュアルというのがあります。このサイバー攻撃はダメだというのが書いてあって、そういった国際法の要請からも反しているところです。はっきり言って、サイバー上の問題という話で終わらないで、一歩間違えれば熱い戦争になってしまう可能性まであるような話です。
この問題に関して昨年の7月頃の東京新聞でも、サイバー空間での無害化という名の先制攻撃が武力に当たるかどうか、憲法9条の違反にならないのか、制度としてどう許されるのかいったあたりが指摘されていました。本当にそこを考えなければいけない大問題ということです。私は、このサイバー版・敵基地攻撃能力という風に言っています。敵基地攻撃能力、途中から反撃能力とか言っていましたけれど、結局ミサイルが飛んできそうなところも攻撃してしまうという、完全な先制攻撃です。要はこれをサーバー上でやるということですよ。相手国からすると、日本の警察とか自衛隊がサイバー攻撃を仕掛けてきたという風にしか解釈されかねない話ですね。
しかも、兆候の情報が間違っていたら、違う場所にミサイルが落ちたりしたというのとパラレルですけれど、もう完全なる先制攻撃なわけです。そういう意味でも、まさに敵基地攻撃能力と同じ問題を抱えていると思います。そもそも、その考え方自体が敵基地攻撃能力ですよね。もう未然にやっちゃおうみたいな話なので。
タリン・マニュアルとはなにか。私も、能動的サイバー防御の勉強を始めて、なるほどこういうのがあるのかというところでたどり着いたんです。これは、かつて大規模なサイバー攻撃を受けたエストニアの首都であるタリンに、NATOのサイバー防衛センターが設立されているそうです。そこで、サイバー攻撃に関する国際法のルールを作った方がいいのではないかということで、できたということです。サイバー戦についても、有事の場合のタリン・マニュアル1.0というのが先ずできて、さらに平時のサイバー活動と国際法等関係についてタリン・マニュアルの2.0ができている。今回で言うと、2.0がちょっと重要になってくるという話です。
実は、有識者会議でも、一旦、タリン・マニュアルが出てきます。議論が出てきて、昨年の7月に教授を招いて、アクセス・無害化措置と国際法の関係という報告がなされています。このタリン・マニュアルについては資料公開されています。154の規則を文章化したもので、学者とか実務家が作成した民間団体の成果物であるが、西側諸国をはじめとする多くの国家の共通認識とほぼ一致したものであるという説明がされています。154も結構いろんなところで反映しています。有識者会議で一旦やられているのにも関わらず、提言の中では、ほぼ反映されていない。そこは解せないというか、とりあえず聞きました、みたいな感じになっているなではないかというところです。
どのようなサイバー攻撃が主権侵害となり得るのかというところは、結構、国によっても、またその時代によっても、見解が異なっているみたいです。仲間が調べてくれたものによると、例えばブラジルはもう完全に主権侵害という風に言っています。フランスも、フランスのサーバーシステムに対する全てのサイバー攻撃、またはサイバー手段を用いた方法による、フランスの領域における効果発生は主権侵害を構成する、というふうにはっきり言っています。だから、むしろ主権侵害と考えるのが普通ではないかと思います。それを前提に考えていかなければいけないというところです。
タリン・マニュアル2.0の中で「規則4 国家は他国の主権を侵害するサイバー行動を行ってはならない。」当たり前すぎるけれど、このように書いてあるわけです。
対抗措置みたいな権限はあるけれども、基本的には、本体的には対抗措置を取る国家は、外交上または領事上の不可侵に関する義務を理解しなければいけないとかがあります。
規則26がかなり重要です。「規則26、国家は根本的な利益に対する重大で差し迫った危険を示す行為への反応として、そうすることが当該利益を守る唯一の手段である場合には、緊急避難を理由として行動することができる。」という条項があります。
これですね、結構高い要件が当然ながら出ると思います。だって、主権侵害になってしまう問題なのでね。これ緊急避難なんですよ。「重大かつ急迫した危険」がなければいけないし、そのサイバー行動が「唯一の手段」でなければいけないと言っているわけです。しかも、この「重大かつ急迫した危険」は、「危険を回避する最後の好機-攻撃の計画が高い確度で判明」しなければいけないとかです。
かなりですね、ここの部分は、他の書籍でも、何度も確認されているところではあります。
法案はタリン・マニュアルを踏まえた要件とはなっていないでは、国会の法案どうなっているか。例えば、警察官職務執行法を改正する部分が法案の中に含まれています。そこに書いてあるのは、「そのまま放置すれば人の生命、身体又は財産に対する重大な危害が発生するおそれがあるため緊急の必要があるとき」という形です。
自衛隊の方は、「本邦外にある者による、特に高度に組織的かつ計画的な行為と認められるものが行われた場合において、当該特定不正行為により特定の重大支障が生ずるおそれが多いと認められ、かつ、当該特定重大支障を防止するために自衛隊が有する特別の技術又は情報が必要不可欠であること等により自衛隊が対処を行う特別な必要があると認めるとき」とあります。
自衛隊の方は長々していますけれど、結局自衛隊がやる必要があるかどうかみたいな話です。さっき見たような、本当に唯一の手段、もう他に何もできないというような話でもないわけです。タリン・マニュアルを踏まえた要件とも到底言えないというところですね。
では憲法と整合するサイバーテロの対策のあり方とは何だろう。これは、なかなか難しい論点ではあるけれども、確かにこの問題も避けては通れないと思います。まず、その無害化措置とネット監視は、それぞれ別の問題を抱えた別次元の問題です。これを政府は、混ぜてごちゃごちゃっと必要だ、みたいに言っていますけれど、そういう話ではありません。
まず無害化措置の方は、憲法9条にも反する先制攻撃にもなり得るし、タリン・マニュアルにも反しています。本当に国際法違反でしょうという話になってきます。一部の任意のテイクダウンとか、その攻撃者の公表とか、先ほども挙げてきたような一つ一つの防御を十分にしていかなければならないし、これからもしていかなければいけない。それを一足飛びに先制攻撃しますというのは、本当に、一足飛びすぎる話です。いわゆる集団的自衛権の話もパラレルになってくるな、と思っています。何かしなければいけない話が、いきなり劇薬を今から出すみたいな話で、それでいいんですかということだと思います。
ちなみに、なるほどねと思ったのが、ヤフーのオーサー記事で書かれている教授がいました。それは、確かに能動的サイバー防御はアメリカとかイギリスなどで政策にはなっているというところだけれども、リスクの割に、あまり有効ではないのではないかという指摘がありました。
プライバシー侵害の懸念もさることながら、そもそもメタデータの収集で分かることは限られている。宛先だけで小包みの中身が分からないのと同じです。また、偽情報につられて偶発的に本物の戦争が起こることもあり得る。アメリカのCIAからの流出資料が明らかにしたように、情報機関がゼロデイ脆弱性を秘匿することで、サイバー紛争がエスカレーションするという可能性も否定できない。
問題って、偽情報の可能性も十分あり得るから、そうなったら本当に目も当てられないのではないかという気がしています。
有識者会議の提言のところを見ていくと、そういう予期しない事態みたいなのが考えられます。例えば違っていたといういう場合で、無害化したけれど、実は違っていたとか。他にも、ここの部分が間違っているだけだから、ここを動かなくする、無害化する予定だったとか、サーバー全体をダウンさせたとかね。そういうことも正直起こるわけで、いろんなのを巻き込むかもしれない。
ミサイルも似ていますけれど、別にそこだけに着弾するわけではなくて、誤爆するのと似たような問題だと思います。そういう問題については検討していく必要があるくらいな感じで終わっていて、この法案でも特に何も手当てされてもいないという問題もあります。だから言われている有効性自体も、実はかなり疑義があるというところも重大だという風に思います。
つい2月19日に、日弁連も能動的サイバー防御法案に関して会長声明を出しました。慎重審議を求めるという内容です。特に通信情報利用とアクセス・無害化措置についてというところです。ちなみに日弁連としてはかなり早い声明です。だって、2月7日に国会に出てきたばっかりです。日弁連はかなり大きな組織なので、どうやって会長声明を作って出していくかというプロセスからすると、もうものすごく早いです。でも、やはりそういう意味でも、通信の秘密、そして憲法9条との関係からも、この件について慎重審議が求められるという内容で出ています。これは日弁連のサイト行ってもらえば中身は読めると思うので、ぜひ興味ある方、見てもらえればと思います。
何度も口すっぱく言うようですけれども、この通信情報の利用(ネット監視)問題とアクセス・無害化は、ちゃんと分けてきちっと議論をする必要があります。どっちも問題だけれども、問題の所在がまず違うので、分けてそれぞれ緻密に議論することが必要だというというは、完全な出発点だと思います。
そのうち前者のネット監視問題です。この部分については相当に作り込まないと、基本的に通信の秘密の侵害として許されないです。もしそれが許されるとしたら、恣意的な運用ができないように、かなりがんじがらめに作らない限りはダメだと思います。だって、実際アメリカで起こったわけじゃないですか。自国民を監視してはダメだというのも、完全に破られたわけです。結局、今回みたいなのを作った場合、あとは、警察の中で勝手にやられていくということになりかねません。だから、それが許されないような、よほど綿密な制度設計にしない限りは、もう信用ならないというところです。
その中で一つ参考になるのが、ドイツ連邦憲法裁判所の決定というふうに思います。そういった問題が解消されていかない限りは、やはり違憲なものと言わざるを得ないと思います。
後者のアクセス・無害化です。ここはそもそも立法事実としても、かなり問題だと思います。他国に例がありますので、そんなことで、いいわけはないでしょうというところです。他国に例があると言っても、アメリカとかイギリスにありましたけれど、軍隊として戦争一歩手前みたいなところでやるみたいな話です。そういう情報があるという話と、こんな風に警察が一存で、しかも要件もタリン・マニュアルに即してないような形で警察がやりますというので、全然話が違うと思いますい。
諸外国の例で一部わかっているのによると。それこそ国防大臣が許可して、外務大臣も同意してなければダメだとか。大臣レベル、大臣が責任を持ちます、首を掛けてやります、みたいなレベルの話だったりします。それなのに、警察がこれ無害化しましょう、はい、ということでやっていいのかというころですよ。本当に主権侵害になり得る重大なリスクがある。タリン・マニュアルに即してないものになってない可能性が高いというか、なっていない。この部分は潔く、ちゃんと削除してほしい。
ここはもう絶対反対というところでやっていくしかないんじゃないかな、というふうに思っています。