1カ月以上にもわたる自民党総裁選挙劇場をメディアを使って繰り広げた挙句、突如の石破新首相による衆議院解散・総選挙。石破氏は自民党総裁選の時に早期の解散はしないと明言していたのにも関わらず戦後最短の解散を打ち出した。石破政権出発直後にもうすでに嘘をつく、自民党政治がぐらついている大きな証拠ではないだろうか。
ぐずぐずの自民党は見せかけの裏金議員に公認を出さないという見掛け倒しの「見せしめ」をして株をあげようと必死だ。このような見せかけの「処分」に騙されてはならない。全国どこでも、非公認とはいえども、ほぼ公認レベルでの選挙活動をしている。結局、自民党は自民党なのだ。
それに引き換え、私たち野党はどうだろうか。分裂の歴史を繰り返してきている。これだけのチャンスはなかなかない。そのような時にバラバラになっている場合ではないのは火を見るより明らかではないだろうか。総選挙が始まる直前、全国で女性たちのフェミブリッジを中心に「つないだ手を離さない」運動が広がった。
「特定の政党が候補者を下ろすのが当たり前」ではなく、リスペクトと基本的なこの間の共通目標をしっかりと見直そうという声と行動が一気に広がった。実際に、市民連合の政策要望書の提出行動では野党が横並びになることはできなかったが、フェミブリッジが主導して行ったジェンダー平等実現に向けた政策要望書の提出行動には主要野党が並ぶことが出来た。フェミブリッジ結成時の「女性たちの繋がりはありとあらゆるしがらみと圧力を越えられる」という目的はここで大きな役割を果たしたと言える。
その後、選挙戦に突入したわけだが、一本化が上手くいかなかった地域でも、今回の選挙の目的は改憲勢力に3分の2を取らせないということが大きな目的だ。それぞれの地域で1人でも多くの護憲勢力を伸ばすために選挙運動に仲間たちは集中している。
全国的な選挙運動の状況を見ているとやはり市民運動は大きなキーポイントとなっていると感じる。東京杉並区の闘いも衆議院選挙の勝利から、区長、区議会議員と革新的な動きが凄まじい。
一方、東京24区八王子はあの萩生田光一氏の地元で、創価大学も立派な統一教会の支部もあり、カルト金権政治の牙城のような地域でも、鉄壁にアリの一穴を空けるかのような地道な運動を市民と野党共闘で約10年続けてきた。長いトンネルから抜け出そうと、市民も野党も一致団結している。野党間のしがらみや忖度などを強制されることもあるが、長年の地元での地を這うような運動と信頼関係はそう簡単には崩れないということも今回の選挙で学んだ。全国にも共通することだと思うが、地道で継続的な草の根運動ほど強いものはない。市民と野党の共闘は政党に振り回されるものではなく、その時、私たちはバラバラで闘えるのか?
市民が政党を巻き込んで、市民主導で進めるところに希望があるのではないだろうか。
石破政権の支持率は今は低いかもしれない。しかし、自民党が万が一競り勝つようなことがあったら、日本はあっという間に改憲と戦争への道に進むであろう。サンデーモーニングでピースボートの畠山澄子さんがイスラエルによるガザ市民の虐殺について話していた時に「責任」という言葉について触れていた。責任という言葉が英語で「responsibility?」と言います。単語の中に「レスポンス(応答)」という言葉が含まれる。つまり畠山さんは「責任」を取るということは「応答責任」なのだと主張しており、とても心に響いた。ガザ市民の呻吟に応答する、日本の政治による犠牲者の呻吟に応答する、一部の権力者による支配に苦しむ市民の声に政治は答えていかなければならない。それこそが政治の責任(応答責任)だ。そんな政治状況にしてしまった大人の責任を果たさなくてはならない。
選挙で勝つことも重要だが、その後の運動もさらに重要だ。この間の積み重ねが崩れてしまったところもある。そこをどう、私たちは原則に返りながら修復と前進をしていくかが求められている。つないだ手を離してはならない。
全国の仲間の皆さん、仲間を信じて前に進もう。
(事務局長 菱山南帆子)
2024年10月1日
安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合フェミブリッジ全国
フェミブリッジは市民連合の女性たちが中心となって立ち上げた、各地域で市民と野党の共闘を掲げ活動している女性たちをつなぐ全国のネットワークです。
自公政権は憲法を無力化し、法外な軍拡予算を示す一方、市民が物価高騰で困窮する中、福祉予算を削ってきました。また新自由主義政策のもと非正規雇用を大量に生み出し、貧困と格差を拡大させました。そのしわ寄せを最も大きく被っているのが人口の半数以上を占める女性たちです。
日本のジェンダーギャップ指数は世界146カ国中118位という低さです。金権政治やカルト教団との癒着を続ける現政権のもとで、ジェンダー平等の実現はあり得ません。私たちフェミブリッジは、ジェンダー平等推進、女性の人権擁護、性の多様性の尊重のためには政権交代が必要であり、市民と立憲野党の共闘が必須の条件と確信しています。
市民連合は昨年12月7日に、憲法9条と13条をビジョンの中心に据えた共通政策項目を野党連携の土台とするよう要望しました。フェミブリッジは立憲野党連携の「架け橋」となるべくジェンダー共通政策項目を各党に要望します。
1.性差別をなくす法整備とジェンダーの主流化を進める
憲法14条の法の下の平等、性別による差別の禁止はいまだ実現されておらず、法整備の必要がある。選択的夫婦別姓制度、同性婚を法制化し、自己堕胎罪、中絶の配偶者同意要件を廃止する。婚外子差別撤廃に向けて戸籍の嫡出概念を廃止する。性別役割分担を固定化してきた世帯単位の税・社会保障制度を個人単位に構築し直し、家父長制を引継ぐ所得税法56条は廃止する。女性と子どもの安全を脅かす離婚後共同親権は認めない。その他、日本に住む誰もが個人として尊重されるよう、あらゆる差別を禁止する。「ジェンダーの主流化」を進め、すべての政策を性別による影響の観点から調査・評価し、ジェンダー平等を推進する。
3. 男女賃金格差、女性の非正規雇用問題、貧困の解消を。憲法25条に基づき生活を守る
日本のフルタイム労働者の男女賃金格差は男性100に対し女性78.7であり、OECD38カ国中、下から4位である。さらに女性の過半数は非正規雇用であり、非正規雇用者の約7割は女性である。民間年間給与所得では女性は男性の56%に過ぎない。女性の家事労働等の時間は男性の 5.5倍である。女性、特に高齢女性の貧困は深刻である。男女賃金格差の解消、実質賃金の引上げや労働時間の短縮、同一価値労働同一賃金の徹底、ケア労働者の処遇改善、女性に負担が大きい逆進性の強い税制の是正と社会保険料負担の適正化、子ども予算、高齢者福祉の増額など、市民生活を保障し将来世代へと繋げる政策へと転換する。
4.女性差別撤廃条約選択議定書を早期批准する
政府は女性差別撤廃条約を1985年に批准したが、現在においても女性差別的な法制度・慣行が残り、ジェンダー平等の実現にはほど遠い。国連は条約の実効性を強化する選択議定書を1999 年に採択した。世界では条約の締約国189カ国中、115に及ぶ国が選択議定書を批准しているが、日本は未批准であり男女平等後進国のままである。世界基準である女性差別撤廃条約選択議定書を早期に批准する。
5.女性の政治参画・意思決定過程への参画の推進
日本の女性の政治参画の遅れは世界でも最低レベルで、衆議院議員の女性比率は約1割、世界186カ国中165位という低さである。「政治分野における男女共同参画推進法」の実効性を強化する法改正を行い、また党内でのクオータ制の導入等、女性候補・議員の増加に取組む。人口半数の女性の意思が政治に反映されるよう選挙制度の改正を進める。司法、行政、経済、メディア等各分野での女性の登用を飛躍的に促す。
2024年10月7日
各党委員長 様
ウクライナ、パレスチナ・ガザと目を覆うばかりの惨事が続き、平和への道筋がみえず、平和・人道の危機が続いています。また日本においても自公政権は、憲法を空洞化させながら、戦争への道を突き進むと同時に新自由主義政策のもと貧困と格差を拡大させ続けています。また金権腐敗・裏金、「統一教会との癒着」の隠ぺいなど自公政権に対する市民の怒りは拡大しています
そうしたなか、市民連合は立憲主義の回復と安保法制の廃止を求めて、立憲野党と連携しながら、5回の国政選挙を闘ってきました。
市民連合は昨年8月憲法9条と13条を共通の政策ビジョンの中心に据えるべきだとの考えを立憲野党各党に示しました。また12月7日には、「市民の生活を守り、将来世代に繋げる政治への転換を」を提出してきました。
次期衆議院選挙が間近に迫ってきました。今回の選挙は自公政権の暴走を止め、彼らに代わる立憲野党の新たな政権の実現を視野に、立憲野党の連携した奮闘が求められています。
市民連合は、12月7日の要請書を基本に、以下の通り、要請し、ご奮闘されることを要望します。
1 憲法も国民生活も無視する軍拡は許さない
日本国憲法が掲げる平和的生存権の理念に立脚した平和外交と専守防衛の安全保障政策に徹すること
こそ、危険かつ不毛な防衛費増大・軍拡競争とその行き着く果ての戦争を回避し、真の意味で、国民の生命、自由及び幸福追求権を守ることができる。憲法 9 条の改悪や専守防衛を逸脱する集団的自衛権の行使・敵基地攻撃能力の保有を容認せず、辺野古新基地建設等基地の強化ではなく、基地負担を軽減する。非核三原則の遵守など、核兵器廃絶めざして、努力する。
2 物価高、燃料高騰、円安、不公平税制を放置せず、市民の生活を守る経済政策を行う
実質賃金が低迷しつづける中、急激な円安やエネルギー費高騰が多くの人の命と暮らしを脅かす事態になっている。実質賃金引き上げや格差是正、インボイス制度の廃止、逆進性の強い税制の是正と社会保険料負担の適正化、保育や教育のための子ども予算の増額など、市民の生活を保障し将来世代へと繋げる政策へと転換する。当面、現行の健康保険証は維持する。農林水産業の育成を支援し、地域経済の振興を図る。食料自給率の向上をめざす。
3 だれもが個人として尊重されるよう、ジェンダー平等・人権保障を実現する
政治の場、働く場、学ぶ場、家庭における男女平等の実現をめざし、選択的夫婦別姓制度や同性婚制度などを整備し、日本の将来世代にふさわしい、伸びやかで活力のある社会や経済へと転換する。日本に住む誰もが個人として尊重されるよう、あらゆる差別を禁止する。
4 将来世代へと繋げるために、気候変動対策を強化し、エネルギー転換を推進する
市民の生活を脅かす異常気象が頻発する現実を直視し、将来世代や未来の人々、生きものに対する責任を果たすために、国際協調に基づく気候危機と環境保全の対策を加速し、温暖化対策の強化へのリーダーシップを発揮する。原発にも化石燃料にも頼らないエネルギーへの転換を進め、脱炭素社会を早期に実現し、経済や安全保障上のリスクを軽減する。
5 権力の私物化を止め、立憲主義に基づく公正で開かれた政治を行う
「自公一強体制」の下での権力の腐敗・私物化に歯止めをかけ、みんなのための政治を取り戻す。金権腐敗・裏金の実態、統一教会との癒着の実態を明らかにし、厳正に対処する。また同一選挙区からの世襲立候補や親族間の政治資金のやり取りを制限する。解散権の乱用は許されない。財政民主主義の原則をないがしろにする予備費の膨張と流用は認められない。
安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合
去る10月11日、ノルウェーのノーベル委員会は、日本被団協(日本原水爆被害者団体協議会)に今年の平和賞の授与を発表した。近年、ウクライナ戦争やガザでのジェノサイドをはじめとする深刻な平和問題が噴出する中で、迫りくる核戦争の脅威に焦点を当てたノーベル委員会の確かな判断に心より敬意を表したい。
一方、日本では、アメリカとの核共有や「中国、ロシア、北朝鮮の核連合に対する抑止力」としてのアジア版NATOを持論とする石破茂氏が新首相に選出された。新政権では、岸田前政権の大軍拡路線、および憲法改正の方針も継承されている。朝鮮半島や台湾海峡における緊張は一向に収束せず、東アジアにおいても、今後さらに安全保障問題をめぐる数々の争点が浮上するだろう。私たち市民連合は、2015年以降、安保法制の廃止と立憲主義の回復を求めて、立憲野党と連携しつつこれまで5回の国政選挙を闘ってきた。しかし、今回の与野党の代表選挙や、国会解散までの戦後最短の国会審議においては、この現在危機に瀕している平和と立憲主義を守るための議論が十分になされることはなかった。
もちろん、この度の国政選択選挙では、第一に、歴代自民党政権がつくりあげてきた、まさに民主政治の根幹をゆるがす「裏金政治」の問題に明確な審判を下さなければならない。自民党代表選の際に石破氏が喧伝した、地域創生や日米地位協定の改訂、そして「政治資金をチェックする第三者機関の立ち上げ」といった政治改革の公約も、党役員や内閣の人事、そして裏金議員の衆院選公認などの「手のひら返し」にも見られたように、岸田前政権の「新しい資本主義」と同様、掛け声だけに終わるだろう。歴史が証明するように、自民党はけっして自民党そのものを変えることはできない。それゆえ、今回の総選挙では、政権が発する選挙用のスローガンに有権者が惑わされることなく、裏金政治や統一教会問題といった歴代政権の腐敗を根底から正し、民主政治をまずは最低限のスタートラインにもどすことが求められている。
しかしまたそれに加え、今回の選挙では、日本社会の将来を決する他の重要な争点についても議論が共有されなければならない。市民連合は今回も、去る10月7日と8日に、政策合意書(「市民の生活を守り、将来世代に繋げる政治への転換を」)を、各立憲野党(立憲民主党・共産党・社会民主党・沖縄の風)と確認した。「憲法も国民生活も無視する軍拡は許さない」と訴える第1項には、集団的自衛権や敵基地攻撃能力の保有、そして辺野古新基地建設等基地の強化を認めず、非核三原則の遵守と核兵器廃絶めざした努力が謳われている。また第2項には、インフレ高進の中、生活の劣化状況に関して逆進性の強い税制の是正などの市民生活を守る経済政策、第3項には、選択的夫婦別姓制度や同性婚制度など、誰もが個人として尊重されるジェンダー平等と人権保障、そして第4項には、気候変動対策の強化と、原発にも化石燃料にも頼らないエネルギーへの転換が謳われている。いずれも、自公政権が進めてきた政治の方向性とは真っ向から対峙する内容であり、できる限りこれらすべての争点が選挙期間中に活発に議論されることを望む。
特に、戦争の根源にジェンダー不平等の問題があるという共通認識から、私たち市民連合は、「女性の声で政治を変えよう」という、フェミブリッジ(フェミニストの架け橋)の呼びかけを重視し、選挙期間中にも行動を共にする。政権の腐敗を正し、立憲政治を回復する絶好の機会であるにもかかわらず、今回は残念ながら、野党共闘の構築は十分になされなかった。しかし、市民連合による先の包括的な政策合意、そして組織や立場を横断して手をつなごうとするフェミブリッジの挑戦は、これまで市民と野党の共闘のために力を尽くしてきた全国の仲間へのエールである。まさにそれぞれの地域でさまざまな形で奮闘する全国の市民の力によって、私たちは、立憲主義の回復と政権交代の旗を掲げ、政策合意した統一候補や政党会派の候補者の勝利をめざす。そしてできうる限りの有権者の参加を促し、低落する投票率を改善すべく、広範な「選挙に行こう」運動に取り組む。
私たち市民は、あくまでも自らが政治のゆくえを決める主権者として、最後まで民主政治や立憲政治の原点を見失わず、また選挙そのものだけでなく、「選挙後」も見据えながら、未来に向けて協働し続ける。そして何よりも、この度の選挙によって試される候補者や政党が、そのような市民の声を身に帯びることなしに、長きにわたって存続しえないことを、証明したいと思う。
2024年10月15日
安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合
山本みはぎ 不戦へのネットワーク
昨年6月に、軍需産業の設備の増強に税金を投入し、武器輸出の促進や国有化も視野に入れた軍需産業強化法が立憲民主党も賛成して成立した。また、外務省は、「同志国」に武器を無償で供与する「政府安全保障能力強化支援」(OSA)を創設し、ODA(政府開発援助)の非軍事原則から逸脱し、軍事化に大きく舵を切り、武器の開発、取引が促進された。
2023年12月には、前年12月に閣議決定された国家安全保障戦略や与党ワーキングチームで合意された政府への提言を踏まえ、防衛装備移転三原則(閣議決定)・運用指針(国家安全保障会議決定)の見直しが行われ、これまで曲がりなりにも禁止されていた殺傷武器の輸出に大きく舵を切った。
見直しの内容は、(1)海外企業から技術導入し、国内で製造する「ライセンス生産」された装備品のアメリカ以外への輸出の解禁、(2)安全保障で協力関係にある国に対して戦闘機のエンジンなど部品の輸出の解禁、(3)輸出可能な5類型(救難、輸送、警戒、監視、掃海)に殺傷武器の搭載が可能に、(4)被侵略国への装備品の輸出解禁、⑤国際共同開発の武器の部品や技術の輸出解禁(完成品は継続審議)というものだ。ライセンス生産品は、「F15戦闘機」、「CH47輸送ヘリコプター」、地上配備型の迎撃ミサイル「PAC3」など、8か国79品目になり、これによってPAC3をライセンスもとであるアメリカへの輸出を決めた。
武器輸出に関しては、例外的に緩和されてはきたが、それでも憲法の平和主義を具現化する手段として、殺傷能力のある武器輸出は禁止されてきた。しかし、一連の武器輸出の緩和手続きは、自民・公明の与党で構成するわずか12名のワーキングチームで、しかも密室での協議が進み、国会審議を経ることなく、77%にものぼる輸出反対(共同通信調査)の民意も無視して進められた。
2024年3月には、先送りされていたイタリア(レオナルド)・イギリス(BAEシステムズ)と共同開発する次期戦闘機の輸出解禁を閣議決定し、国家安全保障会議(NSC)で武器輸出ルールを定めた「防衛装備移転三原則」の運用指針を改定して輸出に踏み切った。公明党から歯止めとして、①輸出対象を次期戦闘機に限定②輸出先は、国連憲章の目的に適合する使用を義務付けた協定の締結相手に限る③現に戦闘が行われている国を除外などが示されたが、指針には、「個別のプロジェクトごとに運用指針に明記していく」と記され、輸出対象となる武器は今後増える可能性もある。小野寺安全保障調査会会長は「新しい案件は次々に追記していけば良いだけで何の制約もない」とあからさまに明言している。締約国に関しても防衛省は複数の国と交渉をしているとしており拡大することが予想され、「歯止め策」は何の歯止めにもならず、実質的に武器輸出の全面解禁に踏み切ったと言っても過言ではない。
軍需産業支援法で、100億円以上の予算を付け防衛装備庁が進める「安全保障技術研究推進制度」によって学問分野でも軍事研究に取り込もうとしている。日本はアメリカのように軍産学複合体で「戦争をする国」に変質しつつある。このことは明文改憲を待たず、憲法の空洞化を進め、軍拡競争に拍車をかけ、周辺諸国との緊張を高め、ことになる。
「死の商人」として肥え太る三菱重工
岸田政権が閣議決定した、安保3文書の改定で「敵基地攻撃能力の保有」「軍事費のGDP2%」を受けて、軍需産業の需要が大幅に伸びている。2023年度の受注額で、三菱重工、川崎重工、NEC、三菱電機、富士通など軒並み、前年比3倍以上の金額になっている。
とりわけ、愛知県の小牧市にある、国内最大の軍需企業である三菱重工は、軍事費の倍増を受けて軍事部門は急拡大をしている。5000億円前後で推移していた業績は、2023年度の受注高は前年比3倍以上の1兆8731億円、売上高は1兆円規模に膨れあがっている。人員は現行の6000人から3割増加させるとしており、約1兆円規模の予算を投じて取り組んで頓挫した「小型ジェット旅客機「三菱スペースジェット(MSJ)」に携わった技術者も転籍をしているという。このことは、民需から軍需へと簡単に転換できるという証だ。因みに、この計画には愛知県も用地取得や研究開発援助など県費100億円余りを投資している。まわりまわって、県費が軍需に使われているということになる。
県営名古屋空港に隣接する、名古屋航空宇宙システム製作所(三菱重工小牧南工場)では、アメリカのロッキードマーチンと共同開発したF2戦闘機、ボーイング社が開発したF15戦闘機やF4戦闘機などの生産をしている。
今回、輸出が決まったイタリア・イギリスと共同開発するF2の後継機は、2020年10月に三菱重工を開発主体に契約を結び機体を三菱が担当し、三菱電機が電子機器、IHIがエンジンを担当するなど複数の企業が関係している。2022年、イギリスとイタリアで進行していた戦闘機「ユーロファイター」の後継機の「次期戦闘機テンペスト」開発計画と統合し、3カ国の共同開発を発表した。2023年12月、日英伊政府はGCAPの管理等行う国際機関として、GIGO(グローバル戦闘航空プログラム政府間機関)設立の条約に署名、2030年には初号機を製造し、2035年には配備を開始するとしている。
イギリスの、ユーロファイターはサウジアラビアに輸出され、2015年からのイエメン内戦へ軍事介入し無差別空爆によって多数の民間人を殺傷している。この経験からも、共同開発された戦闘機が、輸出されれば他国の戦争や紛争で使用され多くの人たちを殺すことになる。
また、三菱重工小牧南工場では、アメリカのロッキードマーチン社製のステルス戦闘機F35Aの組み立てが行われている。2017年6月には初号機が完成した。147機の導入を決め、このうち空軍使用のA型と、短距離離陸や垂直着陸が可能なB型があり、F35Bは、海上自衛隊の空母「いずも」を改修して搭載するとし、航空自衛隊三沢基地や宮崎の新田原基地、石川県の小松基地などに配備が予定されている。度重なる事故もおこし、購入費も当初の96億円から235億円と2.5倍になるというでたらめな契約でアメリカからの爆買いの象徴的なものだ。また、南工場は、2020年7月からはアジア太平洋地域での、F-35のリージョナル・デポ(機体整備拠点)として運用を開始し、アジアで最大のF-35生産・整備拠点となっている。
名古屋誘導推進システム製作所(三菱北工場)は、アメリカのロッキードマーチン社が開発した、地対空誘導弾システムペトリオット(PAC3)のライセンス生産などミサイルの製造を行っている。2020年に閣議で「新たなミサイル防衛システムの整備等及びスタンド・オフ防衛能力の強化」を決定し、2022年の安保3文書で、敵基地攻撃能力が可能な12式地対艦誘導弾能力向上型(地上発射型・艦艇発射型・航空機発射型)や、射程が2000キロ~3000キロにも及ぶ島嶼防衛用高速滑空弾、極超音速誘導弾などの開発・試作を進めている。
今年7月13日の読売新聞によれば、「射程1000キロを超える改良型地対艦ミサイル(12式地対艦ミサイル)と、開発中の島嶼防衛用高速滑空弾を2026年度にも陸上自衛隊西部方面隊の「第2特科団」の自衛隊ミサイル基地に三菱重工小牧北工場で作ら
れたミサイルが配備されることになる。
また、前述のようにライセンス生産をされたPAC3のアメリカへの輸出も決め、6月28日に行われた、日米の「2プラス2」で、契約金額約30億円で売却契約を締結した。
4月に訪米した岸田首相は、アメリカの議会で「アメリカと共にある」と演説し日米同盟の一体化を一層進めると宣言した。今年4月に自衛隊の陸海空部隊を一元的に指揮する「統合作戦司令部」新設のために自衛隊法が改正されたのに合わせ、「統合軍司令部」として在日米軍の再編を行うとしている。
このほか、①ミサイルの共同生産②米軍艦船・航空機の日本での補修・整備③サプライチェーン(供給網)の強化のために「日米防衛産業協力・取得・維持整備定期協議(DICAS)」を決定し、6月には「日米防衛産業協力・取得・維持整備定期協議(DICAS=ダイキャス)」の初会合が開かれた。共同生産のミサイル、米航空機の整備補修は三菱重工が深く関係すると思われる。
防衛省は、2025年度の軍事費8兆5389億円の概算要求を決定した。金額を示さない「事項要求」も追加されることから総額はさらに膨らむことになる。「12式地対艦誘導弾能力向上型」の艦艇発射型の取得に170億円、「極超音速誘導弾」の生産・量産準備に2569億円、攻撃型ドローンに30億円(パレスチナにジェノサイドを継続中のイスラエルの軍需産業からも!)などなど、戦争準備に向けて、数え上げればきりがないほどの事態が進んでいる。自衛隊が戦闘を継続する能力(継戦能力)を重視し、武器弾薬の補給態勢の確保を急いでいる。軍需産業支援法で、企業の事業撤退や原材料の調達困難などで防衛品などの生産が難しくなる事態を防ぐため、企業に対して、機械の更新や原材料の国産化に必要な費用として税金を投入して支援をする仕組みだ。防衛装備庁のHPを見ると、全国各地で企業説明会が頻繁に開かれている。
軍拡は、日本の経済をアメリカのような軍産学複合体に変えていくことになるだろう。そうならないために、武器を作るな、取引もするな、死の商人国家になるな!と足元での軍事化に反対の運動を継続していくこと、そして各地・全国でこの流れを止めるために日々努力をしている人たちとつながることだと思う。
パレスチナをはじめとする中東の惨事は、先の15年戦争での武力の行使で数千万人に及ぶ東アジア各地の人々の尊厳を奪った日本の加害を彷彿させる。沖縄・広島・長崎をはじめとする全土で多くの命と生活も壊された。その反省のもと、日本国憲法は武力による威嚇や武力の行使を放棄し、今日に至る。
陸上自衛隊は9月から11月下旬にかけ、総人員の3分の2にあたる10万人を動員し、九州の演習場を南西諸島に見立てた「陸自大演習」を行っている。これは、10月23日~11月1日に行われる日米共同統合演習「キーン・ソード25」(自衛隊3万1千名、米軍1万2千名、日米艦艇約40隻、航空機約370機参加)に引き継がれるという。
このような演習は、「武力による威嚇」に他ならない。このような行為こそが東アジア、特に日本・米国・中国などにおける軍事的緊張を高める。南西諸島住民の避難計画やシェルター建設は、いくら軍備を増強したところで、それが「抑止力」にはならないことを政府自らが暴露しているようなものだ。
次々とルールや原則を無視した内政を続ける政府ではあるが、私たちは、前文や第9条を謳う日本国憲法というルール、日中平和友好条約というルールに則った外交をこそ望む。
民間の施設や人員を使っての軍事訓練は、ジュネーブ条約の軍民分離原則に反し、市民を戦争に巻き込むことにつながる。何が何でも絶対に戦争はしてはならない。私たちは戦争につながるすべてのことに反対する。戦争の被害者にも加害者にもなることを拒む。
陸上自衛隊「陸自大演習」ならびに日米共同統合演習「キーン・ソード25」の中止を求める。
2024年10月21日
憲法・教育基本法改悪に反対する市民連絡会おおいた
共同代表 梶原得三郎・宮崎優子
高田 健さん(許すな!憲法改悪・市民連絡会共同代表)
(編集部註)10月4日の講座で高田健さんが講演した内容を編集部の責任で要約したものです。要約の責任はすべて本誌編集部にあります。
今回、両党の党首選はすでに分かっていて、結果についてはある程度分析をしなければいけないという話でしたが、解散総選挙がこんなに近づくというのは想定していなくて、資料的にはまだこなれていない面もあります。あとの質疑応答の中で一緒に勉強できたらいいというふうに思っています。ぜひいろんな意見をお聞かせいただきたいと思っています。
昨日の所信表明演説、皆さん聞かれたか、あるいは今朝の新聞で読まれたと思いますけれども、近年にないバカバカしい所信表明演説ですね。最初のところはルールを守るって話でしょ。ルールを破って、それを本当に反省してルールを守るということで始まるのならいいです。けれども自民党が予定している候補者、その調査とかでいえば、アンケートを取って自分で言わせて、それで終わりです。ほとんどルールを守るなんて話じゃない。小学校の学級会のレベルでの所信表明演説で、本当にバカバカしいと思いながら聞いていました。そして、石破という人は、予想していたよりも骨がないというのか腰が弱いというのか、とにかく彼が普段言っていることと昨日言っていることは相当に違いますね。そういう意味で石破は信念を持った人のように見えるけれども、実際に昨日の所信表明を聞いていると、石破の信念だと思われていたようなものがコロコロひっくり返されている、あるいは触れられない、ひどい所信表明演説だったと思います。
冒頭に前から用意したレジュメですので、時代全体の今の大きな動きについて、これは市民連合で議論しているような時代認識について5~6行ほど書いておきました。いずれにしても日本だけではなくて世界全体が大きく動き出していて、これはやっぱり一つの歴史的な転換点に差し掛かっているのではないか。そういうことを非常に感じる今の時代ですね。どこでも選挙をやられている。今年は選挙イヤーって言われるぐらい、世界人口の3分の2ぐらいのところで選挙がやられるような時期ですけれども、この選挙の中で本当に危険な動きも顕著に出てきている。とりわけファシズムの動きですね。ヨーロッパとかあるいはその他のところでの選挙で出てきているファシズムの動き、これは相当に注意深く見ておく必要がある。日本と関係ないのではなくて、日本も実はこの動きにある意味で連動しているのではないか。
フランスでファッショが出てきたということを見るとフランスはひどいと思うけれど、日本もそれと関係ないことではなくて、今日のテーマではありませんけれども、この前の東京都知事選挙なんかを見ると、明らかにヨーロッパとかその他の世界各地でやられている選挙と共通するファシズムの登場の時代というのを非常に感じます。石丸、あの動きは、やっぱり新しいファシズムではないかと私は思っています。今度の石破という人間もまた、石丸とは全く違ったタイプの人間ですけれども、これもファシズムの部類で、そういう時代が今来たんだなということを感じています。私の若い時代には、こういうことが日本の社会の中で出てくるとは夢にも思わなかったけれども、そういう時代になった、という認識を持っています。
レジュメに沿って立憲民主党の党首選の結果と特徴から始めていきたいと思います。結論は皆さん十分ご存知のように、野田さんが枝野さんを破って党首になって、その野田さんを中心に執行部の体制が取られました。野田さんは選挙が終わってから、激突したけどももう「ノーサイド」だよと、お互いに喧嘩はしたけども選挙が終わったら団結してやろう、というふうに呼びかけたけれども、私は冗談でノーサイドではなくてノダサイドだ、と言っているんですね。全くこの選挙が終わった中でノーサイドの挙党体制が作られたかというと、そうではなくて、相当に野田さんの体制の政党になった。今回はそこがなかなか我々の厳しいところではないかなというふうに思います。
執行部体制には何人か注目する人がいます。野田さんはそうですが、代表代行の長妻さんや辻元さん。これはサンクチュアリというリベラル派に関係しているところですから、この人たちは野田さんとは考えは一定の開きがある人だと思います。大串さんもずっと選対をやっていて、私も何度も選挙のことでお話ししたことがありますが、なかなか話の分かる人、これはどっち派とは言えないけれども、そういう人だったと思います。参議院会長の水岡さん、これもリベラル派の人だと思います。その他、菊田さんとかいろいろいるわけですけれど、この前までサンクチュアリに入っていた幹事長の小川さんは、サンクチュアリを抜けて野田さんのところに行って、今度は代表と幹事長という体制を作った。
ちょっとびっくりするところは政調会長の重徳さんと国対委員長の笠さんのところですね。これはどちらもみんなで靖国神社にお参りする国会議員の会のメンバーです。あの会は何10人いましたかね。60人か70人かいて、ほとんどは自民党で、野党から入っている人はほんとに少ない。当たり前ですよね、みんなで靖国神社にお参りしましょうなどという議員連盟ですから。重徳さん、笠さんはそれに入っているんですね。笠さんは日本会議にも入っていると思います。日本会議というとんでもない団体。説明するまでもないですけどれも入っているはずです。それから、重徳さんは維新の出ですよね。維新から出て立憲民主党に入ってきた人です。だからこの2人が3役の中の政調会長や国対委員長を取ったというのはなかなか大変だなという。私はメンバーを見ていても、えーっと思うことがあります。
ご存知のように「影の内閣」というのがあるんですね。前はなかったけれども、野党が政権を取るなら、次に取った時にどういう内閣の布陣にするのか、影の内閣を持つべきだとヨーロッパで流行っているわけですけれども、日本の立憲民主党も影の内閣を同時に組織した。首相は野田さんで、官房長官は今言った重徳さんですね。今度頑張った吉田さんは、ジェンダーとか共生、孤独孤立の担当ということで入っています。それから、環境大臣の近藤さんはサンクチュアリ、リベラル派の責任者の方ですね。安全保障、この間、武器輸出の問題とか含めて前政権の下で日本の安保防衛体制が急激に右傾化してきたわけですけれども、それらの時になかなか立憲民主党が戦えなかった。それは安保防衛部門が、私から言わせればかなり右派的な人たちがほとんど入っていて、その人たちがリードしていくことによって、岸田政権が進める軍事強化、そういう路線になかなか反対しにくかった。多分それを意識して今回は安全保障のところに福山哲郎さんを押し込んだと思います。福山さんならもう少し抵抗するんじゃないか、という判断だろうと思います。それから憲法調査会の会長は前回同様、逢坂誠二さんです。逢坂さんはこの間一生懸命頑張って、結局岸田の任期中の改憲を頓挫させた。その中心的な人物で非常に頑張った人です。などなど一個一個見ていくと面白いことがいっぱいありますが、なかなか時間的な余裕もなくて検討しきれていません。
野田執行部はメディアに言わせると、穏健保守路線だと言われる。「穏健保守」って何だろう。もうマスコミ用語で、わけの分からない用語ですね。保守というのは、人によっては最も穏健だという人もいるし、それに穏健というのをくっつけて穏健保守と言って分かるのかな。いずれにしても今まであった体制よりもさらに、ある程度右に行ったというのはもう間違いない。その表現が穏健保守ということだと思います。野田さんたちが今どういう主張しているかというと、今回、岸田政権が退陣するきっかけになった金権政治の腐敗、政治と金、自民党の裏金、政治、裏金と政治の問題などを終わらせて、さらに自民党に特徴的な世襲政治を制限していく、そういう主張をしています。そして立憲民主党の立場は、問題の集団的自衛権に関しては違憲だと考えている。だから安保法制の違憲部分は廃止をする、というのが野田さんたちの基本的な立場です。ただし、安保防衛政策は即は変えられないのである程度時間がかかりますという主張を野田さんはしています。
原発に関しても、改めて私も今回見てきましたけども、立憲民主党の綱領を読むと原発ゼロという言葉まで含めて入っていますが、一連の野田さんの発言の中では原発ゼロという言葉は使っていません。使いたくないんですね。多分、原発ゼロは過激すぎると思うのではないですかね。だから、それを封印して「原発に依存しない社会を目指す」と言います。依存しない社会を目指すのなら、ゼロって言ってしまえばいいと思うけれど、その辺を微妙に言わないことによって一部の勢力からの支持なりを得たい。そういうことを野田さんは考えていると思います。
今度の選挙では、野田さんの目標は自民公明の、この与党を過半数割れに追い込むことだ。与党を過半数割れに追い込んで、そして野党で多数を取る。その場合の野党という中には、維新の会も、それから国民民主党も当然ながら入っているわけです。それら全部ひっくるめて自民党、公明党よりも多数を取りたい。そういう選挙を今回はやりたい、というのが野田さんの目標だと思います。そういう意味で、とくに小選挙区においては野党勢力の最大化を図ると言っています。野党勢力の最大化を図るためにも乱立しては勝てないので、誠意ある対話を各野党としながら連携して力を合わせて自民党、公明党を過半数割れに追い込みたい。そういう主張です。日本共産党とは主義主張、立場、理想が全く違うので、同じ政権は担えないと言っています。こういう大まかな政策を持って、野田さんは今度の選挙に臨もうとして、党首討論とかそういうのに臨んでいくと思います。
党内のリベラル派からは、ノダサイドになっているという実情から見て、こういうやり方はないんじゃないかと、あまりにも一方的すぎる、片方の陣営で固めすぎるという批判が結構出ています。会議で中座する人も出るような状態でしたから、そういう意味では相当厳しい対立も立憲民主党の中には生じたというふうに思います。立憲民主党が大体そういう態度、これはもう皆さん新聞ニュースなどでご存知の通りです。
日本共産党ですけれども、これは3中総、第3回中央委員会総会というのが9月30日に行われて、ここで田村委員長が新聞でいうと3ページかそれ以上ぐらいの長い報告をしています。そこでされた報告に行く前に小池書記局長、ナンバー2の方ですがこの方が9月22日に言っていることをここで引用しておきました。ちょっと読んでみたいと思います。
「集団的自衛権行使容認の閣議決定を撤回し、安保法制を直ちに廃止することを最重要の緊急課題としてこの一点で力をあわせよう―このことこそ、野党共闘の原点であり、一丁目一番地。立憲民主党の代表選で、安保法制は違憲だと認めながら、『すぐに変えるのは現実的ではない』『政権をとって180度政策転換したら、国際社会から相手にされない』などの発言が相次いでいます。安全保障政策の違いを超えて、安保法制廃止を緊急課題としてこの一点で協力する。この原点を踏まえた共闘だからこそ、お互いに信頼し協力してきたのです。『すぐには廃止できない』ということになれば、共闘の基盤が失われる。特に21年の総選挙で一本化した59の選挙区で勝利。立憲民主党はこれまでも『日米同盟を基軸とする』としつつ、安保法制の『違憲部分は廃止』するとしてきましたが、今回の代表選では、日米同盟重視の立場がより鮮明になってきた。安保法制をすぐに廃止できないのも、こうした立場が根底にある。加えて、『原発ゼロ』も言わない、消費税については指一本触れないという状況です」。ここまでが立憲民主党に対する評価です。「維新は最悪の自民党補完勢力です。改憲をあおり立て、新自由主義の旗を振る突撃隊です。国民民主党との関係が一番近いと言う候補者がいますが、同党も改憲を声高に主張し、自民党の提出法案にほとんど賛成しており、この党も自民党の補完勢力です」。これが小池さんが9月の末に説明をした文章です。
それから9月30日、その長時間かけた3中総での田村委員長の報告はこの部分に関する結論で言うと、「立憲民主党が市民と野党の共闘が積み重ねてきた到達点、両党間の合意を規定しているもとで、今度の総選挙で両党間の共闘の条件は基本的には損なわれた。ということを率直に表明しなければなりません」。こういうふうに言っています。断言しちゃったなって思いましたけれど、こういう状態で立憲民主党が変わったから、共産党はこれからは一緒にやれませんよというふうに、3中総で宣言しました。中央委員会の決定ですから、これは全党に当然影響するわけで、全党が基本的にはこれに従うということになりました。立憲民主党の代表選挙が終わって、共産党の3中総でこういう方針が出たというのは、この間の一つの大きな変化です。
もう一つ自民党の方をさっと見ておきます。この石破新内閣は、これも石破さんが高市さんを破って石破さん中心の政権ができました。実は私はハラハラしてあの時見ていたんですね。自民党の党首選をこんなに一生懸命見るなんていう経験は、何10年来本当に無かった。見ていました。で見ているうちに雰囲気で、高市負けないかな、負けた方がいいな。どっちかっというといつの間にか、言ったら笑っちゃいますけど、石破が勝った方がいいみたいな気分になるんですね。怖いものですね。お前そんなことかって、皆さんに叱られるかもしれませんけれども、やっぱり見ていてそう思うんですよ。で、高市さんが落ちた時には、なんとなくホッとしてるんですね。私の気分が、よく考えてみたら変なものだなぁと思います。私も何を考えているんだろうって、自分で笑いながら見ていました。まあ、そういうことで高市さんが落ちました。あれ、ひどいですよね。岸田は高市さんを「タリバン」と言っていたんだって。自分らの仲間の間では「タリバン」が高市のニックネームだったというから、あの2人の関係も相当なものですよね。そういう「タリバン」が負けて石破さんが当選をした。
そこで副総裁に菅さんですね。菅さんが副総裁じゃなくて、彼が黒幕だったという風にマスコミ雀は言っています。その菅が副総裁で、幹事長が森山で、面白いことに福田達夫が幹事長代行になった。この自民党の役員の中で安倍派はほとんどゼロになりました。唯一、この福田達夫を入れた。このことで安倍派を引き込んだということでしょうか。
話題になったのは村上誠一郎ですね。国葬の時に安倍を「国賊」と呼んだ村上誠一郎。彼は1年間の党役職停止処分を受けた。安倍派から見れば仇敵です。自分らの最高のリーダーを「国賊」と呼んだ国会議員ですから許し難い人間ですが、これが総務大臣にするっと入った。これはものすごく憎まれる人事だったと思います。それから牧原秀樹、私はあまり知らなかったけれど、ひどいやつですよ。牧原は、ネットでいろんな「左翼」がいるけれども、あいつらはみんな工作員、外国の工作員だ。誹謗中傷する奴らは全員逮捕すべきだ、なんてことを言っている奴が法務大臣ですよ。これに裁判とか法律関係を任せていたらとんでもないことになりそうだというような人が入っています。
もう一つ、この石破内閣の特徴は防衛関係、国防族、安保族がかなりずらっと入っている。石破はこの内閣を国防族でかなり固めています。岩屋毅外務大臣、中谷元防衛大臣、小野寺五典元防衛大臣、この間、自民党の安保防衛政策はほとんど小野寺がリーダーになって作ってきた。この小野寺が政調会長です。赤沢亮正が防災準備室の担当になって、それから立憲からどんどん右転向していった長島昭久というのが安保担当の首相補佐官になった。こういうようなことを見ても分かるように、今度の石破内閣の体制はかなり安保防衛政策に人事を配置した。そういう布陣になりました。これを作った時は、石破はやってやる。自分のやりたいことをこの内閣でやるんだというふうに思っていたんだと思いますね。安保、防衛政策などのベテランを配置して、安倍派を極力排除して唯一、福田だけかっこで入れた。そういう形で反安倍派の執行部を作った。それが今回の石破内閣の特徴だと思います。
普通で言うとこういうことはやらないんですよね。高市も、自分が幹事長になるなら受けるというような意向だったみたいですね。総務会長では嫌だと。実は安倍晋三さんも1回目、石破さんなんかと闘争をやった時にすぐの内閣には、石破を幹事長にしている。自民党はそういうところはなかなか上手で、一番戦ったやつをナンバー2につけて、そしてしばらくの時期を過ぎると外すというやり方をずっとやるんですね。今回も高市を幹事長にしておいてその後は外す、普通だったらそうやるんです。けれど、かなり感情的になった内閣の構成だなと、これを見ていて思いました。逆に言うと、この内閣は基盤が弱い、片肺内閣になりかねない。自民党の一部に依拠して一部を敵に回す。そういう内閣、多分挙党一致だとみんな表向きは言って、昨日も麻生もそういうことを言ったみたいです。しかし、内心はらわたが煮えくり返っているやつが自民党の中にいっぱいいる。そういう内閣を作ってしまったのではないかと思います。
大体、役員で記念写真撮ろうとしたら麻生はさっさと帰っちゃう。俺は撮らないよ、と。まあそのくらいあの人たちの間で一見仲良さそうに見えながら、相当な矛盾、対立が作られた内閣だったと思います。石破首相はそういう内閣の下でこれからの政治をやらなきゃいけない。だから、簡単に石破さんの思うような政策がやれない。そういう可能性がある。それが昨日の所信表明演説などを見ると、もう出ているなというのが非常にわかります。今まで石破の持論だと言われたいろんなこと、例えばアジア版NATOなどという政策が姿を消してしまうわけですね。いつの間にかもう、これは岸田さんが言ってもおかしくないのではないかと思われるような所信表明演説になる。やっぱり党内の反対派にいろいろとケアをしながら、強固な基盤がない内閣で、どこまで自分の思う通りの政策がやれるかというところでは非常に厳しいところがある。石破派は党内で派として一番弱小です。グループは別にして、そういう弱小勢力を基盤にした政治をこれから石破がやっていかなければいけないということで、なかなか厳しいところがあるのではないか。
マスコミで言われているのは森山ですね。森山の影響力が非常に強いと書きますけども、そうかなと私は思います。森山さんのとこというのは、派閥のないグループを作っていて、この前、散している。森山さんは党内で自分の同志と言えるような、固な派閥的なメンバーがほとんどいない人です。ただこの人は、世間的に言うと人間ができているのかどうなのか、いろんな人との付き合いがうまいんですね。麻生みたいにけんかばかりしているのと違って、どことでも仲良くする。これが森山の一番の財産なものだから、それを財産にして今回の幹事長という仕事をやっていこうということだろうと思います。
実はそういう石破体制の弱さというのが既に出ている。顕著に出ているのが安保防衛問題です。大変話題になった。いろんな新聞で書いています。アメリカの保守系のシンクタンクのハドソン研究所というところに、石破茂は総裁になる直前に頼まれて投稿をして、彼の考え方を書いたのが評判になっています。この毎日新聞の記事ですが、ちょっと読んでみます。――米国の保守系シンクタンク「ハドソン研究所」は27日、近く次期首相に選出される自民党の石破茂総裁の外交政策に関する寄稿文を公表した。石破氏は「日米安全保障条約を『普通の国』同士の条約に改定する条件は整った」と述べ、相互に防衛義務を負う安保条約への改定に意欲を見せた――。今は普通の国同士じゃないんですね。従属的な関係だ。石破もそう認識しているわけです。私もそう思うわけですけど、それを普通の国同士の条約に改定する条件は整ったというふうにその文章で言いました。――また改定に必要だとみられる憲法改正の実現を改めて掲げ、「日米同盟を米英同盟並みに引き上げることが私の使命だ」と強調した――。こう言ってしまったんです。これはすごいことですよ。米英同盟、アメリカとイギリスの同盟というのは攻守同盟であって、もちろん共に戦うし、共に守るという、そういう世界で最も強固な軍事同盟の一つだと思います。日米安保をそれ並みに引き上げる、と石破は言いました。そのためには――石破氏は持論の「アジア版NATO(北大西洋条約機構)」創設に合わせて、米国の核兵器の共有やアジア地域への持ち込みを検討する必要があるとの見解も披露した――。
アジア版NATOを作るということ自身が大変なことですが、これはもう憲法を変えなければ今の日本国憲法の下では絶対できようがないのですが、同時に核の問題について触れて、単なる核の傘ということではなくて、核のシェア、核の共有ということに踏み込んでいる。そしてアジアにアメリカの核をもっと持ち込んでもらおう、今も持ち込んでいると思いますけれども、もっと公然と積極的に持ち込むような必要があるという見解も披露したということなんです。――石破氏は「日米安保条約は、時代とともに進化せねばならない。日米が『対等なパートナー』となることが可能となり、米国と肩をならべて自由主義陣営の共同防衛ができる状況となった――との見解を示した。
さらに現状の日米安保条約は――米国は日本『防衛』の義務を負い、日本は米国に『基地提供』の義務を負う仕組みになっている――。今はそうですね。アメリカは日本の防衛の義務があって、日本はそのためにアメリカに自由に基地を提供する、そういう仕組みになっているわけですけれども、これは「非対称双務条約」だというわけです。当然です。アメリカの方が偉くて、日本はその属国という、そういう安保条約ですから、これは「非対称」、対等ではない、そういう条約だと。それを改める時期が熟したと強調して、日米安保条約改正後は、自衛隊もグアムに駐留させる。アメリカが日本にいるだけではなくて、在グアム自衛隊も作らなきゃいけない。アメリカに自衛隊を置くにあたっては、当然その自衛隊の権利とかそういうものをきちんと協定を結ばなきゃいけないので、今、在日米軍が日本との条約で持っているように日米地位協定を改定すると、この文章の中で説明しています。
石破は日米地位協定の改定ということを言っている。私たちも言いますから、聞いていると何かいいことを言っているように聞こえます。日米地位協定は極めて不平等で、これがあるためにアメリカは勝手に日本の女性を凌辱してそのまま基地に逃げ込んだり、好き勝手なことをやっている。こういう日米地位協定を直せと私たちは言っているけれども、石場も言うんですね。一見同じことを言っているようですけれど、本当のところを言うと、ここに書いてあるようなのが石破の本音だと思います。不平等でとんでもない今の日米安保体制の下での地位協定の改定という意図から来ているのではなくて、在グアムの自衛隊とかそういうふうにして、日米軍事同盟、軍事一体化を進めていくために、地位協定を変えると言っている。
そして、アジアにNATOのような集団的自衛体制が存在せず、相互防衛の義務がないために戦争が発生しやすいと、これは彼の分析ですね。だからアジア版NATOの創設が必要だ。そしてハドソン研究所の文章の中で言っているのは、アジア版NATOに入れるパートナーは、アメリカ、カナダ、オーストラリア、フィリピン、インド、フランス、イギリス、韓国と、勝手に並べています。これらを全部並べてこれらでアジア版NATOを作るというのが石破の構想です。お笑いなんですけれど、インドは早速コメント出して拒否しました。うちの国はそういう外国と軍事同盟条約作ったり、そういうことをしない国になっていると、早速断られている。これらの具体的な名前を挙げて、日米同盟を中核として安保協力を格上げしていけば、将来的にアジア版NATOに発展させることが可能だと、この論文で主張しました。
さらに中国、ロシア、北朝鮮の核連合に対抗する抑止力としてアメリカの核の持ち込み、あるいは核の共有、そういうものも進めなければいけないという、従来はなかなか自民党が直接は触れることができなかったとんでもない安保防衛核政策について、今回ハドソン研究所の文書では石破は言っています。
――日米安保条約改定やアジア版NATO創設には日本が憲法改正する必要があるとの見方が一般的だ。集団的自衛権を全面的に認めるような憲法改正は日本の戦後の外交安全保障政策を覆すだけに、与野党や世論の支持が得られるかどうかは不透明だ。さらに米中対立が続く中、中国との対立を決定的にするような国際機構に参加する国がどれだけあるかも疑問されている――。
そうですよ。ASEANというのは中立を前提にしてASEAN条約を成り立たせているわけですから、こういう一方の軍事同盟にいま挙げたような名前の国々で、嫌だという国々がもっと出てくる可能性が十分ある。「ハドソン研究所の関係者によると、自民党総裁選の候補に9月中旬に日本の外交政策に関する考えを質問し、27日の総裁選前に石破氏から回答を得たという」と言っています。これは本当に大変なことで、私は石破政権の命取りになる可能性が非常にあると思います。アメリカの虎の尾を踏む可能性がある。アメリカは絶対に踏まれたくないしっぽを、石破がこのままでいくと踏んでしまう。噛みつかれる可能性がありますね。
同じようなことが戦後の日本の歴代の政治の中でありました。アメリカのしっぽを踏んだために噛みつかれて退陣した内閣、あるいは方針を変えた内閣がいくつもあります。一つは田中角栄です。中曽根は最初虎の尾を踏んで、その後アメリカに叱られたのでごめんなさいと方針転換をして虎に従いました。それから安倍政権の初期がそうだった。最初の頃のアメリカは、安倍政権がとんでもないナショナリストではないか、危ないというふうに初期のアメリカ政権は思って、随分、安倍政権に冷たく、あるいは批判もしました。安倍さんの場合も、中曽根さんと似ていて、方針転換をしてアメリカに屈服して尻尾を巻きました。ダメだったのは鳩山由紀夫ですよね。これは沖縄問題を含めて首を取られるようなことになりました。今回のハドソン研究所に出した論文のようなことを石破がもしも本当にやるというなら、私はこの内閣はアメリカに首を取られる、あるいは日米の対立が相当に激化する。そういう時代が来かねないと思います。
昨日の演説を聞いていると、これもまた中曽根さんと安倍さんと同じように尻尾を巻くのかなとは思っていますけれど、それだったらなんで岸田から石破にわざわざ変わったのか。石破なりにやりたいことがあり、彼なりの政治に対する野望があって総理大臣になったわけです。安倍晋三は、政治家になったときから憲法9条を変えたいと言っていた。あの人を褒めるわけではないけれどもこれは動揺しなかった。ところが岸田さんというのはそれがない。何のために総理大臣になったかわからない。よく言われました。総理大臣になりたいためになったのが岸田だと言われました。多分、石破さんがこういうことを繰り返していけば岸田と同じだと言われると思います。弱小派閥の石破がすごく苦労して、必死になって高市を蹴落として総理大臣になりましたけれども、どうしてそうまでして総理大臣になったのって、石場さんに聞いてあげなきゃいけない。自分のやりたいことがこのままだと消えちゃいませんかっていう。これがハドソン研究所に出した石破の論文に関する問題です。
もう一回言いますが、これについては所信表明演説には全く出ていません。NATOももちろん核の問題も全く出ていない。実はハドソン研究所の論文が知られてから、産経新聞と読売新聞は社説で既に叩いています。やめた方がいい。新聞はこれから総理大臣になろうとする人の論文についてここまで言うのかと思うようなことを言っています。産経の2日の社説では、「アジア版NATOの具体化には憲法問題があり、各国との交渉に大きなエネルギーも要する。この構想は取り下げた方が良い」。新聞が言うことかって思うぐらいのすごく露骨な言い方をして、石破に迫っていますね。読売もほぼ同様です。日本の四大紙と言われる主要メディアの中で、読売と産経が、こういう形で公然と石破がやろうとしている政策を批判した。これ言われてしまったら昨日は言えませんよ。これでも言ったら、読売、産経と戦争で、これから毎日論争しなきゃいけない。そこまでやる度胸は石破にはなかったということだろうと思います。なんだ、案外だなって思いましたね。ものすごく偉そうな格好をしていますけれども、へなへなするところがあるものだなと思いました。もちろん、これから何らかの機会をつかまえてこれを言わないということはない。言いたいのだと思いますけれども、とりあえず昨日の施政方針演説ではこれがひっくり返ったというのが一つの大事件だと思います。そして、5つのルールを守るとか、わけのわからない学級会のような政策を言いました。石破政権が新しく誕生して、私たちが言っておかなきゃいけない、見ておいた方がいい問題は以上のことです。
私は今、日本が「戦争する国」になろうとしているというふうに、言葉としては言っています。この前までは「戦争できる国」と言いました。戦争のできる国という言葉を、今は使っていません。明らかに段階が変わったと思っています。安倍さんの段階で、2015年安保を通して日本が集団的自衛権の一部行使ができるようになって「戦争できる国」になりました。2022年の安保3文書で「戦争する国」に入り、そして今年の日米2プラス2防衛外務大臣同士の会談の中で、日本は文字通り「戦争する国」、「戦争国家化」そういう体制を取っていこうとする国になったと見ています。そのことについて話をします。
自民党は、55年体制で結党時から改憲が党是だったと言うけれど、これは若干問題があって、必ずしも自民党の党是が改憲ではないという問題もあるんですが、これは端折っておきたいと思います。一応自民党がずっと改憲を言ってきた。戦後の自民党の保守本流勢力は改憲を言ってきましたが、この自民党の改憲論というのは、安倍政権以降の新自由主義の下での改憲論と大きな違いがあることを見ておく必要があると思っています。従来の歴代自民党政府は、曲がりなりにも専守防衛とか、軍事予算はGNP1%以内だとか、そういうことをいわゆる国是化することで、憲法との決定的な対立破綻を回避してきました。憲法と合わないのではないか、憲法違反ではないかと野党に批判されるときに、「いや、GNP1%までは憲法違反じゃないんだ」という、変な理屈をこねたわけです。
それから、専守防衛は憲法違反ではない。今の日本国憲法は、専守防衛は否定してないという、これもみょうちきりん憲法論を展開してくるのが戦後の保守本流の改憲論でした。もちろんこの時期にも、軍事予算をどんどん増やして自衛隊を強化してきたんですが、それはいつも改憲を、最終的には9条を変えて軍事大国になるという路線だった。彼らが改憲、改憲という時の目標は、その改憲を通じて軍事大国になる。今のままの憲法ではなかなか軍事大国にはなれない、というのが戦後の保守勢力の認識だった。
ところが、現在進行している日米同盟や欧米各国との軍事協力体制と自衛隊の軍備拡張の実態は、憲法の状態を彼らが弁解してきた、これまでなら違憲ではないという実態を大幅に覆い隠しようもなく乗り越えた。日本の軍事同盟や軍事力強化の実態が、どんなに弁解しても今の憲法とつじつまを合わせるのは非常に困難になった。誰から見ても日本の現状は憲法違反ではないか。そういうことで、安倍晋三以降、日本の政権は積極的にそういう角度から改憲を画策してきた。軍事大国の実態を作った上で、憲法違反の実態を作った上で、憲法をそれに合わせて変えようとする。そういう意味では立憲主義の転倒です。曲がりなりにも立憲主義、憲法に基づいて政治をやる。そういう立場ではなくて、都合が悪いなら憲法を変えよう、そういう立憲主義の転倒をやってきたのは、安倍から岸田に至って今日の石破が考えているような改憲論の特徴ではないかと思います。
2015年の9月の安保法制は、これを受け継いだ岸田政権が2022年12月に安保3文書というのを出しました。それから今年4月の岸田訪米と、その後7月に2プラス2という日米の外務・防衛の閣僚協議をやって、専守防衛から戦争のできる国、そして戦争する国へとどんどん分水嶺を越えつつあるのが現状だと思います。2015年安保は、2014年に閣議決定によって専守防衛を捨てて戦争のできる国、集団的自衛権に関する憲法解釈を変えて米国とともに海外で戦争をすることを可能にした。しかし何でも十分にできるということではなくて、非常に制約があったのが2015年安保だったと思います。
2022年の12月には、国会が終わった後、すぐに決めたんですね。すごくひどいんです。国会に出さない。閣議決定で安保3文書を決定します。つい1週間か10日前まで国会やっていたんですから、本来その国会に安保3文書を出すのが当たり前です。「こういうのをやろうと思うんだが、どうだ」という、野党との論争をやらなきゃいけない。けれどもやらずに閣議決定で安保3文書を作った。この安保3文書。これは有名な敵基地攻撃能力を持ちます。それから軍事費をGNP比、それまでは1%以内と言われていたけれども倍増する。2%以上にするという大軍拡の路線を出したのが2022年12月の国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画など安保3文書だった。これ自身が立憲主義に全く違反しているわけです。
2024年だと、もっとひどいんです。日米首脳会談がやられて岸田さんがアメリカに行って、こんなことまで言っていいのかと思うほど日本の軍事体制を飛躍させる。そういう発言をして、アメリカの両院の議員が総立ちで、スタンディングオベーションをやって岸田を褒めたという。そういう事件がありました。それを引き継いで7月29日に2プラス2をやりました。日本の外務大臣と防衛大臣、アメリカの国務大臣と国防大臣が2人ずつの会議をやって、大変なことを決めました。これが日本の戦争国家への重要な一歩だと思います。自衛隊とアメリカ軍の部隊連携を円滑にするための指揮統制の向上に向けて、両国で作業部会を設置して協議することを決めました。そして、自衛隊が統合作戦司令部を来年春までに作ることとします。今、陸海空の自衛隊は、それぞれに一応司令部があることになっていますが、これら全部を合わせた日本の自衛隊、いわゆる「日本軍」として統合作戦司令部を持つ。大本営を持つということです。
これに合わせて、アメリカ軍も日本の在日米軍とかインド・太平洋軍を再編してアメリカ軍の統合軍司令部を新設するという方針を、この2プラ2で決めました。日本も統合する、アメリカも統合する。この両者が協力して、戦争をやる横田基地の中に両方置かれるのではないかという話もあります。すぐ隣に両方の統合司令部を置いて、いつでも打ち合わせをして、いつでも戦争の体制を作れる。そういうことを決めたのが、今度の2プラス2だと思います。アメリカ軍がそういう再編をやって、アメリカが軍事情報を独占するもとで、一方で迎撃ミサイルなども共同生産をするとか、サイバーセキュリティに関する協力を強化する。核の傘を含む米国の戦略で日本への攻撃を思いとどまらせるとか、拡大抑止と言われますけれども、そういうことを一層この統合司令部の中で、司令部の統合と協力の中で強化をしようと言っています。
抑止力論というのが実は大変大きな問題で、これが間違いで、この抑止力論によって、軍事力を強化するという方向を一層取ろうとしています。敵基地攻撃能力を持つことによって相手がミサイルの発射基地を直接叩く、そういう能力を持つことによって、相手がミサイルを発射してくるのを抑止することができる。ミサイルの問題で抑止論を言えば、そういうことですが、そういう方針を日本の政府は取っています。
日本の好戦勢力がこの間様々な形で戦争の雰囲気を煽っていることを改めて確認をしておきたいと思います。軍事的に言えば、南西諸島だけではなく全土にミサイルやオスプレイなどの配備を進めることを通じて、例えば麻生が言った「台湾有事は日本有事」、そういうことに対応していこうという体制が日本で作られています。戦争をやるには当然ながらミサイルを一発撃って終わりではないので、いわゆる継戦能力―戦争を継続する能力がないと戦争にならないわけです。そういうことで最近、全国各地の市民運動の仲間たちが監視・反対運動を強化していますけれども、全土にミサイル基地を置く動きが急速に進んでいます。大分の敷戸弾薬庫などがそういう一つの例ですけれども、一箇所のミサイル基地ではなくて、戦争をやるためにはたくさんのミサイル基地を、それもバラバラ分散して置かなければいけないと考えていて、そういう動きが強まっています。昨日の石破首相の演説の中でも言われていますけれども、「今日のウクライナは明日の東アジアかもしれない」。こういうことが飛び交い、当たり前のように言われている。昔、こんなことを言ったら、「なんだ、それは」ということで大論争になったはずですが、そういうことは最近は当たり前のことになっている。
日本とアメリカと韓国、あるいはその他イギリスやヨーロッパの国まで含めた軍事演習が、日本周辺あるいは西太平洋の周辺で頻繁にやられています。この前は自衛隊の護衛艦が台湾海峡を初めて航行した。自衛隊の護衛艦が台湾海峡を航行するというのは大変な挑発で、1972年の日中国交回復の宣言とかそういうものを持ち出すまでもありません。日本の軍事力が中国と台湾の間を通行すること自体が、大変な中国に対する挑発であることは言うまでもありません。同時に、朝鮮や中国をはじめとする側の軍事演習も頻繁にやられていて、この東アジアでは軍事演習がやられてないときはないと言った方がいいほど頻繁に軍事演習がやられ、緊張が激化している状態になっていると思います。
岸田首相は、明らかに憲法違反の日本の軍事力の状態を、何とか憲法を変えようということで挑戦をしてきた。自民党が野党の時に日本国憲法改正草案というのを作りました。これは野党の時に作った憲法改正草案ですので、相当に率直に自民党の考えていることを出しました。2012年に作った自民党の憲法改正草案、これは事実上棚上げになっているけれど、廃止はされていません。この中身を見ると大変なことで、天皇は元首と書いてあります。9条に関して言うと、国防軍を作るというふうに書いてありますし、個人の尊重とかそういうものも全く否定されていく。様々な問題がここに書いてありますので、自民党の憲法改正草案というのはどんな反動的なものかというのを一覧表で見ておいていただきたいと思います。
この自民党の憲法改正草案というのは、ここまで言うかと思われるほど反動的な憲法改正草案だったために評判が悪かった。そこで自民党はこのまま押し切るわけにはいかない。当時野党だったから無責任に、というかあんまりいろいろなことを配慮しないで率直に思うところを言えたという意味では本音の草案なわけです。この本音を丸々出した形で改憲をやるのは無理だということで、安倍首相は改憲論者ですが、自民党改憲4項目というふうにこの改憲草案を変えました。この自民党憲法改正草案の一部だけを取り出して、これから改憲を始めようという提起をしました。しかしながら、この4項目では必ずしもまとまりませんでした。例えば憲法9条を変えるという場合に、2項を変えようと主張するのが、例えば国民民主党の玉木などです。自民党の右派もそういう主張をするわけですが、それはなかなか通らない。公明党はそれに賛成しない。そういう意味で、改憲派の中で4項目の改憲案ではまとまらないで、いろんな議論がありました。
この間で言うと、4項目のうちのごく一部の、緊急事態条項のうちのごく一部、総選挙ができないような緊急事態が起きた時に国会議員の任期を延長しようという改憲案だけに絞った。これだけだったら国会内の改憲派全体も賛成するだろう。実際賛成したわけですけれども、そういう改憲案を出して、9条とか自衛隊とかそういうものは後回しにされるような形で、憲法審査会では議論がされてきました。ただし、これで何とかやろうと思ったけれども、例えばここに櫻井よしこの文章を引用しておきました。「(問題は)9条への自衛隊明記に触れず、緊急事態条項創設1本で改正しようとする考えだ。……憲法改正の大目的は……国家が国民を守る力としての正当な国軍を有するという当たり前のことを明記することだ。……戦後約80年、初の憲法改正で有事の際には国会議員の任期を延長するというちっぽけな柱しか立てられないのでは死ぬほど恥ずかしい(6月3日・産経新聞)」と櫻井よしこは言いました。こんなちっぽけな柱で改憲を議論するなどというのは許されないということを櫻井たちは批判していた。自民党のかなりの部分もそう思ったし、多分石破もそう思っていたと思います。
そういうことで、実は自民党の中でもなかなかこの改憲4項目というのはまとまらず、自民党以外の国民民主党とか公明党という勢力とでもなかなかまとまらない。とくに、自民党の参議院と衆議院の間で対立が起きてしまって、憲法審査会がにっちもさっちもいかなくなった。もう1回自民党の憲法改正実現本部というところでワーキングチームを作って何とかまとめようとして、一応それまであった参議院と衆議院の自民党の対立というのを抑えました。9条に自衛隊を明記するということと、緊急事態の時に政府が政令を制定する権利というのを導入する。この2つの構想をワーキングチームがまとめることで、自民党の参議院と衆議院の対立をとりあえず抑えました。しかし、自民党の方がこれで収まったといって、じゃあ、公明党が収まるのかとかいろんな問題が出てくる。とりあえずはこれでワーキングチームで収めたところで今は終わっていますけれども、これから始まる憲法審査会では、またいろんな議論が議論されていかなければいけないところに来ていると思います。
今後の問題との関係で選挙との関連についてお話をしておきたいと思います。10月27日が投開票、10月15日が公示ということに決まりました。もう間もなくです。そして総選挙があるだけではなくて、来年の夏には参議院選挙があります。これに向かって、立憲民主の新しい方針というか、立憲民主の新しい体制と、それに対して共産党の3中総での批判などが起きたことによって、従来の立憲野党と市民の共闘に大きなひびが入りました。私も市民連合の一員としてこの共闘に参加して、そして立憲野党が並んで、それと市民連合で政策について共同で調印するということを、この間何度かやってきました。けれども、もうやれないというふうに田村さんが言ってしまっていますから、各党の党首なり幹事長なりが並んで我々と向かい合ってこの政策で一緒にやりましょうという文書の調印式のようなことは、もうほぼ不可能になりました。もう日にちがないから無理ですね。共産党はやらないと言っていますし、立憲民主党は、共産党と政権は一緒にしないと言っています。そこは微妙なズレがあるけれども、このやり方は無理になりました。
今可能なこと、私たちが考えていることは、市民の側からの政策提案を、各党の党首に会って、各党の党首から、それは賛成であるというふうに言わせる、言質を取る。そういうことを当面やろうと思っているというか、そうやらざるを得ない。もう日程も事実上入れています。社民党、沖縄の風、立憲民主党、共産党ですかね。それらと来週早々にでも会って、私たちの政策要望を党首に渡して、これでできるだけやっていこうという要求をしようと思っています。かなり苦しいところです。
こういう状態になったものですから、野党の側は、なるべく候補がかち合わないように、当選しそうなところでは複数の候補が立たないようにするというやり方で、この間やってきたところがかなり難しくなりました。各野党が乱立する状態になっています。立憲民主党も200何十か立てると思いますし、共産党も200何十か立てると思います。これはもうかち合うところがたくさん出てくる。そういう状態が出てきています。多分、100から150ぐらい立憲民主党と共産党の競合区が出てくると思います。
私たちとしてはこういう事態になる前に、1年以上、2年近くにわたって積み上げてきて、ここでは統一候補を出そうというふうに話し合ってきた選挙区、都道府県というのがいくつもあります。例えば宮城県とか長野県とか新潟県とかあるいは東京の一部とか、いろんなところで候補を一本化して何としても自公の候補を叩き落とそうと、そういう協力をこの間いろいろ準備をしてきました。まあ、その大半が何とか継続、その話し合いの線で継続してくれれば一番いいなということ、今願っているわけです。けれども、噂では既に約束したところでも他の党が候補を立てるという話もあって、それはやらないでくれって本当に思うけれどもわかりません。まあ来週早々に会ってみて、そういうお願いも含めて各党に我々の要求を突きつけようと思っています。けれども、どういうふうになるかわからない。まして、当選しそうもない、自公が圧倒的に強いところでは、もう共産党と立憲はそれぞれ候補を立てて絶対当選しないという、そういう選挙区がたくさん出てきます。間違ったら、頑張れば当選できるかな、というところはどうしてくれるんだと言いたくなるけれど。残念ながら、今の事態はそういう事態になっていて、なかなか厳しいです。
もちろん他の政党、社民党とかれいわさんとかそういうところとの関係もなかなか厳しい状態になっています。れいわさんは、もともと野党共闘はやらないという立場をここ1年ぐらい一貫して取ってきましたから、私たちとの話し合いもほとんどやれない。たまに、櫛渕さんが自分の責任において私たちの話に共同代表の人ですから出てきてくれるということはありましたけど、太郎さんは絶対出てこないですね、この間の話し合いでは。そういう意味ではれいわとの選挙協力というのは、この間作ることができないで苦労しているところです。なんとか立憲、共産、社民、沖縄の風、その辺では協力を作ろう。それと市民の共闘を作ろうというふうにして、この間やってきたんですが、今非常に厳しいことになっています。
これだけ自民党の安倍派がメロメロになって、そして統一協会問題でこんなに暴露されてきて、いわば自民党がかつてないほどの危機になった時に、それに対抗してやるべき野党の側が、こんな状態で本当どうするんだ。私は実は腹を立てているけれども、本当に残念だと思うんです。それぞれ政党ですから理屈はあろうと思います。ただ最近、石破さんが書いた本の中で、石破に笑われているんですよ。「立憲共産党」と言われて立憲民主党はびくついているけども、もともと立憲と共産党は、自衛隊を廃止するかどうかで意見が違う。天皇制についても意見が違う。意見が違うのは当たり前だとだけど、自民党を倒すために一緒にやって何が悪いと言ったらいいでしょうって。石破さんの新しい本ですよ。彼にそんなことまで言わせているかって思います。私は本当に腹が立つ。
もともと違うのは当たり前ですよ。そんなことで一致しろ、と我々も言った覚えもない。今のこの悪政、安保法制とか戦争政策とか憲法改悪とか。こういう目前の問題で、ここで野党は協力してやろう。その後共産主義の政権を目指すのか、その後自由主義の政権を目指すのか。それはもうそれぞれの政党の勝手でしょ。それはまたその時に有権者が選択すればいいことじゃないですか。今は一番大事な、この一致するところでやるべきだ。言葉遣いは悪いですが石破さんの言う通りなんですよ。まったくバカバカしい。本当にそう思います。
実は政党同士では、意見が違うのは私は当たり前だと思っています。安保法制についてすぐに廃止しないと言った。だからいっしょにやらないと。安保法制反対は一丁目一番地だと、小池さんも田村さんもそう言います。まあ、大体この意見に賛成ですけれども、厳密に私の意見を言わせてもらうと、そうとばかりも言えないな、と共産党さんに異論を申し上げたい点もあります。それは、去年の12月7日に各党の幹事長にOKをもらった文書です。各党の幹事長は、去年の12月7日の時点ではこの文書でOKしている。共産党も立憲民主党、社民党も。よく読んでみてください。安保法制についてすごく微妙な書き方している。我々も苦労しているんです。立憲がこういう意見だ。共産党がこういう意見だというのは知っています。まとめるためにどうするか工夫するわけです。まとめなきゃいけない、喧嘩していては始まらないから。だからそこはすごく工夫して、こういう文章を作り上げた。
作ったらみんなよいと言ったわけです。では、これでやってくれというのは正直、私の言いたいところです。日本共産党の皆さんにも本当に申し訳ないけれどもこれでやって下さい。
これは微妙な書き方をしているんですよ。「市民連合は、立憲主義の回復と安保法制の廃止を求めて立憲野党と連携しながら5回の国政選挙を闘ってきました」と前文で書いて1、2、3、4、5、の中には、この安保法制の廃止云々のことに関しては触れていません。その具体的な中身をこの1で軍事力の強化とか触れているけれど。だからそこは微妙に工夫しながら、何とか自民党、公明党を倒すということで、野党が一致できないか、ということでやってきた。工夫した文書だから、今でも何日か後に田村さんに会えましたら、それは私も言おうと思うけど、話が違うじゃないかと怒るかもしれませんけれど、やっぱり言わざるを得ない。そうしなかったら、市民は政党が決めたことを何でも「はいそうですかって」聞くだけになっちゃうじゃないですか。協力とか協定とかいうのはなくなっちゃうじゃないですか。やっぱり私たちにも言わせてくれ、という風に言おうと思うんです。
それから、もちろん野田さんにはもっと言いたい。我々はこういう団体で、この立憲主義の回復と安保法制の廃止を求める団体で、これで皆さんとずっと一緒にやってきた。前文にわざわざ書いているのに、このことで賛成だけど、今すぐには難しいとかわけのわからないことを言わないでくれと。こんなことを言ったら話を壊すのは当たり前じゃないか、党首ならもっと注意して言ってくれと言いたいですけど、どこまで頑張れるかです。
私は政党の皆さんは政党の皆さんの論理があって、中央委員会なり、常任執行委員会が決めたらそれに政党の皆さんが従って頑張るというのは当たり前だから、頑張ってくださいと思います。けれども、せめて一緒にやれるところに関しては、これ以上新しい人を立てて混乱させるようなことをやめてくれという風に今言うしかないと思います。例えば東京でいうとまだ10個くらいぶつからないで残っている。東京のここでぶつけないで、立憲党と共産党がこれ以上東京は立てるのをやめて何とか協力してやってくれないか。それは多分、一生懸命政治を変えようと思っている市民の共通の願いだと思う。そして多分、本当は共産党と立憲で頑張っている党員の皆さんの共通の願いだと思うんですね。そういうことを、もう本当に日にちがなくなって大変ですけれども、やろうというふうに思っています。
だって、憲法を今変えようなんてことは世論調査やったって、全然みんな望んでないじゃないですか。7項目アンケートをとって、この中でどれが一番大事ですかと選んでもらう項目の中で、憲法を変えるというのは一番最後です。3%くらいしかいない。それなのにこんなところで石破政権を許すわけにはいかない。やっぱり、野党が結束をして、できるだけ結束をして、もう全部下ろせ、なんていうのはほとんど無理ですから、これ以上私も言うつもりはありませんけれども、可能な限りの協力をやって、なんとしてもせめて自民党と公明党が過半数を取ったという状態だけはやめさせたい。微妙な言い方をしていますけれども、多分その時の計算は、維新は野党に計算上は入っています。しかし政治上はこの人たちは仲間ではなくて、第2自民党です。ただ政治は選挙ですから、自民党と公明党の過半数割れというのは非常に大きなことですから、
それを何とかとりあえず実現したい。そして次の戦いに備えていくような、そういうことをやる必要があるのではないか。いい加減、自分たちだけが正しい。そういうのはやめてくれないかと申し訳ないけれど思います。党がどんなに苦労しているか分からないで、そんな生意気なことをと言うなと言われるかもしれませんけれども、私は本当にそう思います。そうしなかったら石破が一番喜ぶわけで、戦争を進めたい勢力が一番喜ぶ。
女性たちは明日ですか、明後日ですか。資料で入っているジェンダー問題で、これは各党の代表をみんな呼んで並べて、ジェンダー問題の統一要求を出します。「ジェンダー平等を実現し、差別と暴力を根絶する政治への転換を」という文書を市民連合の女性たち、フェミブリッという人たちが作り、そういう会合もやります。ここでは「つないだ手を離さない」というのが、この女性たちのスローガンになっている。今離れそうになっているんです。せっかくつないできた手を、指と指が触っている程度になっているかもしれない。女性たちがジェンダー問題では一致できるでしょう。いろんな難しい問題があっても、できるんですよね。これに反対する今の立憲野党っていないと思います。そうやって、女性たちも今、努力をしようとしています。
最後に資料につけました。「九条の会」が今朝声明を出しました。全国に何千という組織を持った「九条の会」。発足して20年も過ぎますから年齢は高くなりましたけれども、全国の「九条の会」が今、決起を呼びかけています。最後の方で言っているところを読んでいただきたいと思います。「9条の会はじめ市民の運動、そして2015 年の安保法制に反対する大運動のなかから立ち上がった『市民と野党の共闘』が、安倍、菅、岸田の3政権が相次いで公約とした改憲を挫折させた原動力でした。この力に確信を持ちましょう。しかし、石破新政権が『戦争する国』づくり改憲を掲げて登場した現在、私たちは、改憲を許すのか、これを阻んで『戦争する国』づくりにストップをかけるかの正念場に立っています。 全国の9条の会の皆さん!改憲に反対する市民の皆さん! 今こそともに行動に立ち上がって、地域で、街頭で、あらゆる生活の場で、集会・署名・デモ・スタンディングなどの取り組みを抜本的に強化し、改憲反対の世論をおこし、石破政権による『戦争する国』づくり改憲の策動を打ち破る大運動を展開しましょう。来るべき総選挙では、市民の頑張りと市民と野党の共闘の力で、改憲 NO!の議員を一人でも多く当選させるため、頑張りましょう」。と「九条の会」も呼びかけました。
だから力を合わせてとにかく自民党、公明党を一人でも多く叩き落とし、頑張ってこういうことをやろうではないかというふうに九条の会も呼びかけた。私は重要な声明を出したと思っています。同じような思いでいる人が全国にたくさんいると思いますね。何とか「戦争する国」という道に反対するために、今度の選挙がもうだめだ、もう終わりだというふうに諦めることなしに、今からできることをお互いに力を合わせてやりたい。そして今度の選挙で政権転覆ができないとしても、そこで精一杯戦ったことを来年7月の参議院選挙、これはもう各県1人ですから絶対1人にしないとダメですから、そういう運動を今から積み重ねて何とか成功させたいというふうに思っています。