私と憲法276号(2024年4月25日号)


未来への分岐点にたつ私たち

非核と平和のために力を尽くそう

憲法審査会が4月4日から再開された。
裏金議員が憲法審査会のメンバーではまともな議論はできないと、開催を受け入れずここまで引き伸ばした立憲民主党の幹事を強く支持したい。今回の憲法審査会でも自由討議を基本とし、具体的な改憲への動きに踏み込まないような作戦を改憲反対派としては続ける方向だ。しかし、改憲派のとりわけ日本維新の会は自民党よりも強行に改憲への具体的な動きを求めている。とりわけ、起草委員会の設置に関しては早急に実現するように自民党を脅し、繰り返し立憲民主党と日本共産党批判を繰り返している。そのあまりにも傍若無人な発言の内容に傍聴席から幾度となく怒りの声が上がった。傍聴席から声が上がるようなことは珍しいことではなく、今までも何度もあった。しかし、本格的に憲法審査会が再開された4月11日の翌週。日本維新の会の発言の中で、傍聴席の「ヤジ」について糾弾してくる場面があった。正直あの程度の「ヤジ」を憲法審査会の中で取り上げるほどのことでもない。それなのにも関わらず、あれほどまでに敵視するのはなぜなのだろうか。指摘することで傍聴者を委縮させようとでも思っているのだろうか。かつて、審査会の討議の中で傍聴席の話題があれほど多く出たことはあっただろうか。遅々と進まぬ改憲に苛立ちを隠しきれない様子が受け取られる。

ただ、日本維新の会による自民党への改憲扇動は油断ならない。今の野党の筆頭幹事は立憲民主党の逢坂誠二氏なので、改憲派の乱暴な要求をくいとめている。改憲案の起草委員会が立ちあがってしまったら、今のような憲法審査会の運営の仕方がガラリと変わってしまう恐れがある。そうさせないために立憲野党への激励の声を市民の中からあげていこう。岸田政権による安保3文書の実現化と合わさった改憲動向を国会内外、力を合わせて歯止めをかけよう。

安倍派による裏金疑惑によって自民党が揺れている。裏金議員を岸田首相は「処分」すると言って「処分」を下したようだが、これは処分になっているのだろうか。何千万もの裏金による脱税疑惑をかけられているのにも関わらず、なぜこんなに処分が軽いのだろうか。仮に民間企業がこの額で脱税をしていたら即刻辞任だ。しかし、自民党は、大甘の処分に留まった。2728万円もの裏金を事務所の引き出しに入れていた萩生田光一氏に関しては「役職停止」。萩生田氏はすでに政調会長を辞任しているので、役職停止を言い渡されても痛くもかゆくもない。その上、自民党東京都連の会長という肩書きは党本部に関するものではないので、会長を続投するという。これではお咎めなしに等しいではないか。

3500万円を謎の書籍代にしていた二階俊博氏は今回の任期をもって政治家を引退するということを理由に処分は無し。裏金問題の黒幕である森喜朗に関しても同様だ。参考人招致もせずに、水面下で岸田首相が電話で森氏に聞き取りをして「関与無し」との結論を出した。こんな茶番、誰が信じるだろうか。そして、自民党総裁である岸田首相は自身を処分の対象外とした。自民党はもはや自浄作用もない、出来ない政党にまで堕落した。このような政党にもう政治を任せていくわけにはいかない。森喜朗氏しかり、二階俊博氏しかり、なぜ自民党内は重鎮に何も言えないのだろうか。自民党内の、権力や金があるものに対してものを言えないこの体質こそが「男社会」「マッチョ政治」そのものではないだろうか。そしてこのマッチョ体質は自民に限らず、日本維新の会も同様である。

2022年の参議院選挙時、東京選挙区の候補者、海老沢由紀氏と全国比例候補者、猪瀬直樹氏の演説中に起きた事件を紹介する。猪瀬氏が演説中、海老沢氏を紹介しようとした時に彼女の名前を間違えた上に、その間違えを誤魔化すかのように彼女の肩をつかんだり、髪の毛をなでたり、挙句の果てには胸を触るというとんでもないセクハラ行為が行われた。(現在も動画で確認することが出来る)しかし、海老沢氏はのちに「仮に(胸に)当たっていたとしても、変に触る意図は全くないことは明白。肩を何度もたたいたのは、名前を間違えてスマンという意味もあったでしょう。それを感じ取っていたから、わたしは不快に思わず、全く覚えていなかったのだと思います。スポーツでチームになって戦うときに円陣を組む。勝った時には抱き合って喜ぶ。肩をたたく行為が、お互いを鼓舞する感覚があることも少なくないのです。」と猪瀬直樹氏を徹底して庇った。本人によるこの発信を読んだ時、こちらがしんどくなってしまった。ここまで「わきまえ」なくてはならないなんて。

参議院選の結果、セクハラをした猪瀬直樹氏は当選、現在も現役の参議院議員としてバッチをつけている。猪瀬氏からセクハラを受けてそれを庇った海老沢氏は落選。維新も自民党と同じく「モノ言えない」「わきまえ」空気が蔓延しているのだ。ちなみにこの時の参議院選挙の応援演説で、日本維新の会代表の馬場氏も女性候補者の名前を間違え「あまりにも可愛くて間違えちゃった」とセクハラ発言をした。日本維新の会にとって女性候補者は所詮飾り的存在としか考えていないから名前もろくに覚えていないのだ。このような政党のもとではもの言える社会も、ジェンダー平等も実現は100%あり得ない。

この間、沖縄に相次いで熊本でもオスプレイの飛行が再開された。墜落の原因も究明されていない中、飛行を再開するなど到底許されるものではない。断固糾弾する。朝鮮からの「弾道ミサイル」が飛ぶたびにJアラートを鳴らして市民を脅し、ミサイル基地建設やミサイル弾薬庫の設置など全土に広まる基地化の正当化を図ろうとしているが、宇宙空間を飛んでいる「ミサイル」よりもオスプレイの方がよほど落ちてくる確率は高いのだから、政府はオスプレイ飛行時にもJアラートを鳴らしたらどうだろうか。岸田政権は住民の命と暮らしを守ることよりも米軍に寄り添い、アメリカと一体化して軍拡にひた走ることの方が何よりも重要なのだ。

先日岸田首相は日米首脳会談のために渡米した。そしてバイデン大統領を前にして、安保3文書に明記された軍事費の国内総生産(GDP)比2%への増額や敵基地攻撃能力の保有、そのための米国製巡航ミサイル・トマホークの購入を挙げた上で、米軍と自衛隊の切れ目のない統合などを表明してきた。岸田首相は憲法破壊と戦争する国へと加速を強めてきており、それを止める私たちの運動がより一層重要になってきている。

また、このことに対して日本維新の会は肯定的だ。裏金疑惑については立憲野党と一緒になって自民党を批判しているが、安保3文書の実現化や戦争する国づくり、改憲に関しては自民党と一緒、むしろ自民党よりも酷いと言っても過言ではない。裏金疑惑のように誰にでもわかりやすく、怒りの共感が得やすいもので人気を取ろうとしているが、命と暮らしの保障や差別撤廃などに関しては自民党と同じ考えの人たちであり、私たちはこの点においてもはっきりと違いを強調していかなくてはならない。現在、衆議院補欠選挙が行われているが、自民党への不信不満の受け皿に維新やその他の自民党補完勢力に仕向けられようとしている。改革を装った「似非革新政党」に市民の怒りを掠め取られないよう、自民でも維新でもない私たちという選択肢を広めていこう。

韓国では4月10日に行われた国会議員選挙にて与党を抑え、革新系野党が大勝した。今後の韓国の動きにも大注目だ。韓国は2017年のキャンドル革命以降、キャンドルを持って集まった1人1人が、「自分の一本のキャンドルの力」に感動し、大きな成功体験と共に労働組合の加入者が増え、映画やドラマなどもいい作品が増えるなど大きく好転した。尹政権になってしまってからも、韓国の仲間たちはあきらめずに地味な運動を進めてきた。今、日本の岸田政権の支持率は下がり続けている。このチャンスを絶対に逃さず、来る総選挙では必ず勝利をし、成功体験を多くの市民に見せていこう。そして、東北アジアの仲間たちと連帯し、非核と平和のために力を尽くしていく路線に切り替えていきたい。これからの未来が大きくかかっている分岐点に今、私たちは立たされている。
(事務局長 菱山南帆子)

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歴史的な大転換を遂げた日米軍事同

4月10日に行われたバイデン大統領と岸田首相の日米首脳会談は、このところの政府の常とう手段通り国会でのまともな議論をへないまま、日米軍事同盟の歴史的大転換、飛躍を約束し、両国が結束して対中国など国際的な覇権争いの正面に立つことを確認した点で、容易ならないものだ。

今回の日米首脳会談は、双方ともに深刻な国内問題を抱えた中で行われた会談で、この窮地に立つ両者が激動する世界情勢のもとで米軍と自衛隊の指揮統制の飛躍的な連携強化など「不滅の日米同盟」をむすび、「国際秩序の維持」のために立ち向かうことを宣言した。米国で岸田首相は「今日のウクライナは明日の東アジアだ」とのべ、「ヨーロッパとアジアの平和は不可分だ」と主張し、日本が米国とともにグローバルな規模での覇権争奪戦に加わり、「日米が先頭にたって国際秩序をリードする」と、内外ともに苦境に立つバイデン大統領に全面的な協力をするというメッセージを送った。

首相の歓迎式典でバイデン大統領は、1960年、アイゼンハワー大統領と岸信介首相が署名した「新日米安全保障条約」にふれ、今回の首脳会談で約束された「米軍と自衛隊の指揮統制の連携強化のための日米合意」は、それ以降最も意義深い進展だと述べ、64年前からの「ゴールは達成された」などと宣言した。

発表された日米共同声明は「台湾海峡の平和と安定を維持する重要性」を訴え、「インド・太平洋での中国による力または威圧による一方的な現状変更の試み」に反対する中国包囲網の形成を軸に、朝鮮の核・ミサイル開発に反対し、また「ロシアのウクライナに対する侵略戦争」を非難しながら、一方、中東では「イスラエルの自衛の権利」を確認した。

今回の岸田訪米に先立ち、4月4日、エマニュエル米駐日大使は「今回の首脳会談は日米同盟の新時代に重要な会談」だと述べ、岸田首相が軍事費の2倍化(GDP比2%)、敵基地攻撃能力の保有とそのためのトマホークミサイルの大量購入、武器輸出の拡大などを推進する「安保3文書」を閣議決定したことをあげ、「(60年安保以降)70年来の政策の隅々に手を入れ、根底から覆した」と称え、「日本は外交面でも防衛面でも完全なパートナーとなりつつある」と、日米同盟の新たな時代の始まりに行われる重要な会談だとした。

これは従来の日米安保体制における日本の役割りが、米国の世界戦略に追随し、それを補完する役割を果たすにとどまってきたことから脱却し、米国に追従しながら米国の世界戦略を共同で担う立場へ飛躍することを誓う極めて危険な宣言になったことを意味している。

岸田首相は、今回の日米首脳会談で、従来、かろうじて日本国憲法が箍(たが)をはめてきた「専守防衛」すらなげすて、「戦争のできる国」から「戦争をする国」「新しい戦前」への本格的飛躍への道を選んだ。こうした日本国憲法平和主義の理念に真っ向から反する今回の日米共同声明の立場は断じて  容認できない。(高田健 共同代表)

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MIC 声明 重要経済安保情報保護法案の廃案を求める~表現の自由のために徹底審議を!

2024 年 4 月 12 日
日本マスコミ文化情報労組会議

重要物資の供給網や重要インフラに関して国が保有する情報のうち、流出すると安全保障に 支障を与える恐れがあるものを「重要経済安保情報」に指定し、その重要情報を扱う人の身辺を 調べる「セキュリティー・クリアランス(適性評価)」制度を導入する「重要経済安保情報保護 法案」が 4 月 9 日、衆院を通過しました。

プライバシーや取材・報道の自由、言論・表現・出版の自由に深刻な影響を及ぼす恐れがある同法案は廃案が妥当です。国会での徹底的な審議で同法案の危険性を明らかにするべきです。多くの反対にもかかわらず、10 年前に国会で強行採決された特定秘密保護法は、政府が指定できる特定秘密の分野を外交、防衛、テロ、スパイ活動の四つに限定していますが、今回の経済 安保秘密保護法案は、それをサプライチェーンや基幹インフラ、先端技術の研究開発など幅広く拡大するものです。そして、秘密や重要情報に携わる担当者の家族も、秘密を取り扱う資格を認定する「適性評価」の対象にしています。本人の同意が前提とはいえ、信用情報や病歴、飲酒の程度まで調べ上げることはプライバシー侵害に他なりません。

政府がどういった情報を重要情報として指定するのか、情報の指定件数や、適性評価の対象者 数の見込みなども、これまでの国会審議では明確になっていません。重要情報の定義や範囲もあいまいなままで、恣意的な運用の危険性がぬぐえません。何よりも同法案は、取材・報道の自由、言論・表現・出版の自由に深刻な懸念をもたらします。 政府が指定した重要情報を漏洩した者は懲役 5 年以下の罰則とされ、その漏洩をそそのかした者にも適用されるため、取材で情報を聞き出した記者やジャーナリストも処罰の対象にされる恐れがあります。情報を扱う担当者が罰則を恐れて情報提供に消極的になってしまうと、取材報 道そのものが成り立たなくなり、メディア産業の基盤が失われかねません。

特定秘密保護法では、チェック機能として、政府による秘密指定が妥当かどうかを審査する情報監視審査会が衆参両院に設置されましたが、これまで情報監視審査会によって秘密指定が解除された例はなく、実効性が疑われます。今回の法案では国会での修正協議で、政府・与党が運 用状況を定期的に国会に報告する仕組みが導入されていますが、これではチェック機能として 極めて不十分です。特定秘密保護法に際して国連機関が求めた「政府から独立した監視機関」も 設置されず、国際基準に達しない法案であることが明らかです。

このように問題が山積している法案を、短時間の審議で拙速に採決することは到底許されま せん。メディア・表現行為を仕事としている私たちとして、国民の知る権利、取材・報道の自由、 言論・表現・出 の自由を著しく脅かす恐れが強い同法案を許すわけにはいきません。
以上

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「永遠の戦後」を求めて ~軍事体制への動きを止めるために~

飯島滋明さん(名古屋学院大学教授・戦争をさせない1000人委員会事務局次長)

2月23日に大分で行われた「第26回・市民運動全国交流集会」の記念講演で飯島滋明さんは表記の講演を行った飯島さんは自身で現場に出向き撮影した映像なども交えて、政府が進める全国的軍事基地強化についてのリアルな現実を報告した。講演のごく一部だが以下に紹介する。

日本全土の自衛隊で基地強化・連携を強化

来月3月から陸自の部隊再編で湯布院駐屯地自体が格上げされます。玖珠とか湯布院は、水陸機動団という真っ先に殴り込みに行く部隊がいるんです。

これは、奄美大島で去年9月に行われたオリエントシールドの訓練です。MLRSという多連装ロケットシステムも運び込まれています。敷戸に弾薬庫が8棟できるけれども、奄美大島にも8棟、弾薬庫が作られます。鹿児島の薩摩市にも、どうやら弾薬庫が作られる。九州全体が本当に基地化している。この2枚の写真を紹介します。右側にナッチャン・ワールド・函館と書いてあります。函館の部隊が、奄美大島にいろんな物資を降ろして、MLRS・ロケットシステムも降ろしています。左側の車には第5後方支援隊と書いてあります。第5後方支援隊ですから、第5旅団、帯広の部隊です。北海道の部隊が、オリエントシールドのときも連れてこられています。レゾリュート・ドラゴンのときも帯広の部隊が来ています。実は日本全土の部隊がこうやって、基地化されている現実があります。奄美大島に部隊が運ばれたとき、どっちも大分港に寄って、そこから奄美大島にきています。ですから大分港は実は軍事基地化される。

これが、MLRS、多連装ロケットシステムと呼ばれるもので、私が湯布院駐屯地で撮ってきた写真です。今日の大分合同新聞見ますと、高速滑空弾を準備しようとしているとあります。マッハ5以上で地面を攻撃するミサイルで、外国の領土を攻撃するために使われる。そのための部隊を湯布院に作るということです。もう、大分・湯布院が実は、攻撃基地、あるいは出撃拠点の一歩手前になるということです。こういったものが大分港から実際に奄美大島に運ばれる。奄美大島から、射程距離1000キロのミサイルであれば、中国にも届きます。ただ、大分が大変だね、では済まない、日本全国の話だということです。

岸田文雄首相は、数十年にわたる平和主義を放棄しようとしている。そして、自分の国を軍事大国、に変えようとしていると、アメリカのTIME誌で紹介されています。自民党・公明党が進めてきた戦争する国作りは、こういった内容があることを最初に申し上げたいと思います。

まず、日本が攻撃もされていないのに、外国を先に攻撃する。こういったものが、安保法制で作り上げられ、かつ2022年の安保3文書で、実際その武器を持つことになった。そういった意味で、戦争する国作りを岸田自公政権は進めています。敗戦までの日本の経済体制を見ますと、どんどん政府がいろんな形で経済に介入してくる。戦争する国作りという場合は、外交と防衛だけでなく経済、社会に対してもいろんな形で介入していきます。

南西諸島、九州の自衛隊配備・強化

南西諸島への自衛隊配備、あるいは九州の自衛隊配備・強化の問題についてです。ここに中国があり、台湾があります。台湾から110キロ離れたところに、与那国島があり、そこから大体130キロぐらい離れたところに石垣島、宮古島、沖縄本島、奄美大島があって、馬毛島となっています。2016年までは宮古島と奄美大島には、航空自衛隊の部隊がいましたが、陸上自衛隊の部隊はいなかった。

2016年、与那国島には、陸上自衛隊の部隊が162人置かれます。これは沿岸監視部隊で、あくまで監視する部隊という名目で置かれています。与那国島は Dr. コトーの島で、つい最近までお医者さんがいなかった。市民に対しては、ここで急病人なんかが出たとき、自衛隊がヘリコプターで運びますよ。そういったことを言って自衛隊を配備しました。 その後どんどん自衛隊の配備が、これらの島で進んでいきます。宮古島と奄美大島には陸上自衛隊が置かれ、射程距離200キロのミサイル部隊が置かれます。去年3月には石垣島にも、やはり射程200キロのミサイル部隊が置かれます。

2022年には岸田自公政権のもとで閣議決定で安保3文書が策定され、射程距離1000キロのミサイルを置くことになりました。9月には、与那国島にもミサイル部隊を置くことになり、もう土地取得に向けて動き出しています。石垣島、宮古島、沖縄本島・勝連にもミサイル部隊が置かれます。元々は、射程距離200キロのミサイル部隊しかいなかったけれども、岸田自公政権の言う通りになれば、射程距離1000キロのミサイル部隊が与那国島、石垣島、宮古島、沖縄本島、奄美大島に置かれることになります。

去年、9月にはオリエント・シールド、10月にはレゾリュート・ドラゴンをやりましたが、そこにいろんな物資を運んでいたのが大分の部隊です。ですから大分は、南西防衛拠点の地域の戦闘を支える、場合によっては直接武器なんかを運ぶ、そういった地域になるわけです。

奄美大島の瀬戸内分屯地にスタンドオフミサイル――スタンドは立つ、オフは届かない、相手から届かないところから撃つ――が配備されれば、台湾、あるいは中国沿岸部は射程距離に入ると。奄美大島、沖縄本島、宮古島、石垣島、与那国島、ここに射程距離1000キロのミサイルが置かれれば、中国に対する攻撃は可能になる。そういった国作りがさせられています。これを中国から見たらどう思うかというのは、やはり認識していただくことが必要です。

安保3文書と統合防空ミサイル防衛の4要素

では、日本を守るためなのかと言いますと、実は安保3文書には統合防空ミサイル防衛の一環であるということが書いてあります。統合防空ミサイル防衛・IMDは、4つの要素からなります。

1つ目は、敵の策源地への攻撃、要するに外国の船、ミサイルなんかを攻撃する。

2つ目は、敵のミサイル等を迎撃する積極防衛。日本にミサイルが飛んできます。そのミサイルを日本本土に落ちる前に撃ち落とします。

3番目は、基地の抗堪化による消極防衛。抗堪化とは、攻撃を受けても、戦争ができる能力のことを言います。攻撃をされてしまえば、ある種使えなくなるけれども、攻撃を受けたとしても、戦争ができる能力のことで、 IMD の一つの要素になっています。これは築城基地です。築城基地は、いざとなれば攻撃されるという想定があるので、築城基地にあるF2戦闘機は、1ヶ所に置かずにバラして置いてあります。築城基地と宮崎・新田原基地にはもう抗堪化がされています。

4番目は、高度なネットワークシステムによる一元的な指揮統制システムです。敵がどこにいるかわかることによって攻撃は一気にしやすくなります。

こういった4つの要素が、 IMD、アメリカの軍事戦略である統合防空ミサイル防衛です。今までこの敵基地攻撃、外国領域を攻撃することは、日本政府はできないと言ってきました。けれども、岸田自公政権の安保3文書では、これもやると言い出しています。

敵基地攻撃能力の保有は、この1つ目です。外国領域の攻撃なんかも含むことになっています。これがなぜ日本防衛と関係ないのか。ケビン・メア、「沖縄はゆすりの名人」と言って沖縄総領事をクビになった人間です。彼がこういうことを言っています。

与那国島には、2007年6月、米海軍佐世保基地所属の掃海艦2隻が寄航し、2009年4月には、石垣島に同じ2隻の掃海艦が初めて寄航接岸しました。与那国、石垣両島への米艦寄港は有事を想定して八重山列島の港湾施設の状況を把握するために事前の調査が必要との判断からです。このケビン・メアが、与那国島にあるいは石垣島に、実際に戦艦を派遣してみて、軍事戦略の一環として使えると判断した。これから軍事基地化が始まるわけです。

あのイージス・アショアの議論ではどうか。ある国が、弾道ミサイルを打つかもしれない。山口県と秋田県にイージス・アショアを配備すれば、日本全土がカバーでき日本を守れる。イージス・アショアに関して、アメリカのシンクタンクの見解です。

論文のタイトルは「太平洋の盾  巨大なイージス駆逐艦としての日本」。要するに日本を盾にすると言っている。今回配備されるイージス・アショアのレーダーは、米国本土を脅かすミサイルを、遥か前方で追跡できる能力を持っており、それによって、アメリカの国土防衛に必要な高額の太平洋レーダーを建設するためのコストを削減してくれる。当時のお金で1150億円の大幅な節約ができると。節約するのはアメリカですけれども、1150億円を出すのは日本です。日本の防衛に役立つと言って導入しようとした。その後、イージス・アショアのブースターが基地内に落とせないことがわかったという口実で、今度は敵基地攻撃能力の方に議論が進んでいます。

その敵基地攻撃能力ですけれども、琉球新報の2019年10月3日付の記事には、アメリカが沖縄に中距離弾を2年以内に配備する計画があると紹介しています。アメリカは中国対策として、日本に中距離ミサイルを置くことを言い出した。その後、去年の1月23日、読売新聞が、日本への中距離ミサイル配備をアメリカが見送り、と報じています。日本が、長距離のミサイルを保有すれば、中国の中距離ミサイルに対する抑止力が強化されるため不要と判断したと。

こういった形で、敵基地攻撃能力というのは、別に日本を守るためではなく、アメリカの軍事戦略を肩代わりするものだということです。この計画は北海道と沖縄に置くという話でした。そういった意味で、この日本全土がこういったことになることです。

基地の抗堪化と医療構想体制

安保3文書は、本格的に戦争を想定しています。2013年の防衛政策3文書では医療のことは一切触れられていません。2018年の防衛政策3文書では医療のことを言い出し、今回の安保3文書ではそこを具体的に言い出し、防衛力整備計画では次のように言っています。有事において、危険を顧みず任務を遂行する隊員の生命身体を救うため、第1線から後方先までのシームレスな切れ目のない医療構想体制を確立することが重要だと。

緊急外科手術に関しては、新たに統合の教育課程を新設し、計画的な要員の育成を図る。緊急手術できる医者を増やす計画です。実際に戦争になることを想定して、緊急外科手術ができる人を増やそうと想定していることがわかります。

さらに、南西地域における医療体制の評価にあたっては、自衛隊那覇病院の機能 および抗堪性、同病院の病床の増加、診療科の増設、地下等の機能強化を図る。自衛隊病院が空爆を受けるという想定です。自衛隊員の身体的情報を電子化し、各隊員の医療情報を速やかに検索、閲覧できる体制を整える。こういうことも安保3文書では言っいています。また、戦傷医療における死亡の多くは爆傷、銃創による失血死である。これらを防ぐためには、輸血に使用する血液製剤の確保が極めて重要であることから、自衛隊において、引き続き血液製剤を自立的に確保、備蓄する体制の構築について検討する。あるいは血液製剤とならんで酸素濃縮装置についても整備をするとも言っています。

2013年の防衛政策3文書には、こんな医療のことは一言も書いてありませんでした。2018年、安倍自公政権のもとで作られた防衛政策3文書では、これに近いことは言われていますけれども、こんなに具体的ではありません。岸田自公政権下、2022年の安保3文書では、ベッド数を増やし、自衛隊の那覇病院は空爆を受けるかもしれないので地下化をする。そういうことを言い出しています。

琉球新報、沖縄タイムズの2月20日付の記事では、防衛省が、血液型がA型、 B、O型だろうが何でも対応できる血液製剤を作る研究を始めたという記事があります。戦争をして血液が必要だといったことが、もう動き出しています。

琉球石灰岩、これは普通の岩より固いので、それを爆破してどうやって陣地を作るか。そういった訓練が去年の3月に行われたという報道がありました。日出生台で、福岡の部隊がやりました。去年10月29日の琉球新報の記事では、隊員が戦死して遺体をどう取り扱うかという訓練までも自衛隊がやりだしたことを報じています。去年4月、宮古島でヘリコプターに司令官が乗っていて墜落した事故がありました。第8師団の司令官は、あそこで戦闘があるかもしれない。自分がかかわるかもしれないと、それを見に行き落ちたわけです。九州は実は無関係ではないんですね。

すすむ外国での武力行使シュミレーション

実際に外国での武力行使を明言する政治家たちが出てきています。今年、1月8日の産経新聞の記事です。「我々は潜水艦などを使って台湾海峡で戦うことになる。しかるべき準備をしておかないとならないと」。それに対して中国大使館は、「 日本の政治家が再び台湾問題で勝手なことを言い、中国の内政に干渉した」と反発しています。法的な話では台湾は中国の一部です。日本政府は違う立場をとるんですか。そうであれば台湾問題に口出すのは内政干渉です。

潜水艦や艦船などを使って台湾海峡で戦うことになる。今年2月の自衛隊の準機関紙である「朝曇」には、どうやって外国領域を攻撃するかというシミュレーションを書いてあります。潜水艦からスタンドオフミサイルを撃つ、あるいは船からもスタンドオフミサイルを撃つと言っています。ですから、麻生さんが、潜水艦などを使って台湾海峡で戦う。これはもう潜水艦などからスタンドオフミサイルを撃つということを麻生さんが言ってるんですよ。

私は2月にミサイル部隊が増えることを聞いて、日出生台を2日間かけて見てきました。大分から築城はいざとなれば本当に近い距離です。築城に関しては、抗堪化がもうされている。分散パットというのが作られて、1ヶ所が攻撃されても大丈夫なように戦闘機がいろいろなところに分散されています。築城はいざとなれば攻撃されるという想定です。築城にはアメリカ軍の弾薬庫もあり、アメリカ軍兵が居住する建物もあります。築城は、いざとなれば爆撃される想定があります。分散パットがあるってこと自体がそういう想定です。その時に使う候補が、大分空港です。

では、なぜ青森の大湊とともに、大分に最初に弾薬庫が作られることになったのか。有事の際には,弾薬やミサイルを南西諸島を初め、九州内外の前線に運ばないとならない。大分港に近い大分分屯地、敷戸弾薬庫、この地が輸送に適しているという分析がされています。最終的にこれが9棟まで増える。大分には水陸機動団がいますので、真っ先に部隊が出されるところです。今700人ぐらいの部隊ですけれども、1190人まで増えるそうです。湯布院なんかも増強され、湯布院の部隊は、沖縄の勝連分屯地も支配下におくので、沖縄の戦いも支配することになります。

反対する市民への規制、監視の強化

琉球新報の2019年7月7日の記事には、情報保全隊が沖縄本島、宮古島、与那国島に配備されるということが紹介されています。与那国島は1400人しかいないところです。そこに情報保全隊を配備して、市民を監視しようとしている。情報保全隊が大きな問題になったのが2007年です。実は山形大学には、大学に入って調べている。学生がどういう動きをしているか、22人しかいない集会に入り込んで、誰がなにを発言しているのかを全部メモっている。

安保法制が反対されていた時に、うちの大学に法務省の役人が名刺持って来たんですよ。どれぐらい学生が反対しているかを教えてくれということでした。 名古屋大学の学生には、なんでチラシを取っていたのか理由を聞いたそうです。

反対する市民をどうするのか。この土地等監視および利用規制法というもので規制します。この法の本質は、土地だけでなく市民を監視することです。規制もします。例えば自衛隊基地、アメリカ空軍基地、そういった重要施設の1キロ範囲を、注視区域として指定する。とりわけ重要なものは特別注視区域と指定する。その特別注視区域あるいは注視区域の中で、その基地の機能を阻害する「恐れ」とあります。実際機能を阻害しなくても、機能を阻害する恐れがある場合、内閣総理大臣が止めろという勧告をする。それでも従わない場合には禁止命令を出します。禁止命令に従わない場合には、2年以下の懲役、200万円以下の罰金です。あるいはメディアでは紹介されていないけれど、または両方科されますよ。これが土地等監視および利用規制法の内容です。これが2021年4月8日付の「朝雲」で、何と紹介されているか。「有効な監視への第一歩」です。ですからこれはまさに監視です。

アメリカ占領時、沖縄にあった1300発の核は

私は沖縄から昨日来たので、沖縄の事例を紹介します。沖縄は1972年まで、アメリカ軍に占領されました。そのとき沖縄には1300発の核があった。今、イギリスは240発、フランスは290発です。いかに沖縄に核があったかいうとこがわかるかと思います。実は恩納村にこのミサイル、核を発射するミサイルの跡が残っています。これは創価学会の道場になっていまして、普通に入ることができます。去年、私は高良鉄美参議院議員と一緒に行ってきました。

恩納村のミサイル基地は、1mくらいの壁の厚さがあって、当然攻撃されるという想定ですから、そのときは隠れていることになっていました。けれども地域の住民に核があることは知らせなかったんですよ。当然知らなければ防ぎようがない。アメリカ軍は自分たちだけ助かって、恩納村の周辺の市民を助けることは全然考えていなかったことがわかります。

もっとびっくりしたことがありまた。 万が一アメリカがどこかと戦争になる。沖縄を占領されそうになったとき、その核弾頭基地を核兵器で爆破して撤退する予定だったそうです。これは、アメリカの空軍も、アメリカの海兵隊もそうです。要するに、万が一沖縄が占領されて核兵器が残っていれば敵に核が渡る。その場合は、核兵器で核の基地を爆破してアメリカが撤退する。これはNHKの調査でもわかっています。

アメリカ軍の言い分ですと、沖縄市民に被害は出ません。本当ですかね。こういうことを平気でやる。軍事的には、敵に武器を渡さない。だから爆破して逃げる。そんなことをされたら沖縄どうなるのか。そういったことからも、アメリカ軍が日本を守るなんて考えるのは、こっちの方がよっぽどお花畑のだってことは言う必要があると思います。

与那国があって、石垣、宮古島、沖縄島、奄美大島、いざとなればここから中国を攻撃する。これは日本の防衛というよりも、アメリカの軍事戦略の一端、むしろアメリカの軍事戦略の代わりに日本が戦う。こういったことをさせられるのが、南西諸島の自衛隊配備です。ベトナム戦争のとき、アメリカは自国兵士の犠牲を少なくするために、オーストラリア、フィリピン、あるいは韓国に対して一緒に戦えということを言ってきたわけです。フィリピンみたいに、あんまりアメリカと一緒に戦うなというふうに指導者が言っている国は良かったけれども、朝鮮戦争で助けてもらった恩を返すなんて考えた韓国みたいに、まともに戦ってしまった国は、犠牲が多かったわけです。

日本の場合は、佐藤栄作氏――彼なんか褒められた人間じゃないけれども、日本の憲法があるから海外に自衛隊を出すことを断った。だから戦争に加担してなかったとは言えません。トイレットペーパーからミサイルまでと言われるぐらい支援をした。実はアメリカはそうやって、自国の兵士の犠牲を少なくするために外国に戦わせてきた。

人の心の中に平和のとりでを築かなければならない

ラオスのモン族について国防総省の壁にはこういうことが書かれています。

モンの兵士の10%が死んだ。彼らがいなかったら、27万人のアメリカ兵が死ぬことになっただろう。公式見解では大体5万5000人のアメリ(次頁下段へ)

(前頁から)カ兵が死んでいる。ラオスのモン族が戦ってくれたから、27万人死ななくて済んだという内容です。ベトナム戦争に行ったアメリカ兵は、 PTSD にかかり精神的に病んで自殺者が50万人。元々アメリカは離婚率の高いところですけれども、子供などへの DV が多くて、9割近くのアメリカ兵が離婚しています。戦争というのは、生きているからいいという話ではないという証拠だろうと思います。ただ、本来だったら27万人死ぬ。それが5万人で済んだということを言っています。

南西諸島あるいは九州、大分の自衛隊配備強化も同じことです。アメリカの軍事戦略の一環で、アメリカ兵の代わりに日本が戦わされる。湯布院、敷戸弾薬庫なんかにスタンドオフミサイルが山のように積まれれば、当然攻撃対象になります。それを認めてしまっていいのかどうかというのが私達に問われています。

よく韓国とか中国に、いつまで戦後責任を言ってるのか、くどいくどいと言われるかもしれません。けれど私はポーランドに行っても思いました。やはりドイツに何をされたかは忘れてないんですよ。ワルシャワに行きますと、いろいろなところに、ナチスにこんなことされた、あんなことされたというのがあります。

2年前の9月には、ポーランドは183兆円の賠償をドイツに求めています。ポーランドだけではなくて、ギリシャでもそういう議論が出ていまして、35兆円という金額まであがっています。ウクライナの国民だって、20年後30年後やそれ以降も、自分の母親父親を殺されたということを、忘れることはないと思います。戦争はやっぱそういったことを後世の世代にもたらします。ユネスコに「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」という言葉あります。戦争をしてはいけないという心を持つことが、一番戦争抑止に繋がることを認識することが必要だと思います。

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第181回市民憲法講座 自民党の統一教会リークが続く背景、政界汚染の現在地

鈴木エイトさん(ジャーナリスト、作家)

(編集部註)3月23日の講座で鈴木エイトさんが講演した内容を編集部の責任で要約したものです。要約の責任はすべて編集部にあります。

正体隠し勧誘、マインドコントロールの実態

おかげさまで、昨年いろいろ賞をいただいたり、ノミネートしていただきました。私が一番中心となって取り組んでいるのは統一教会の問題です。統一教会は、正体と目的を隠した偽装勧誘、霊感商法、合同結婚式、数多社会問題を起こしてきた「宗教団体」です。宗教団体ではあるけれども、いろいろな関連政治団体や関連企業などを持つ一大コングロマリットになります。日本への進出は1959年。信者数は日本で公称60万人と言われていますが、実際は約10万人程度です。信者は韓国語で家族を意味する「食口(シック)」と呼ばれています。勝共連合を使った政治工作は1968年から行っています。ほかにもいろいろな関連団体があります。これが教祖夫妻、「真のお父様」と信者が呼んでいます。文鮮明が2012年に亡くなった後は、後継候補だった息子たちをどんどん追放する形で、韓鶴子による独裁体制となっています。

この教団が一番問題になってきた霊感商法は、70年代から日本だけが経済的負担を強いられる構造、そして販売マニュアルがありました。壺、印鑑、多宝塔などを売りつける悪質商法ですね。こういう教団による組織的な不法行為、これがなかなか取り締まりを受けてこなかった理由は何かというと、日本への進出初期から続く有力な政治家の後ろ盾です。

私がカルト問題に関わるきっかけは2002年、東京のJR渋谷駅の改札口で偽装勧誘の現場に遭遇したのが最初です。「手相の勉強をしています」とか「意識調査アンケートに協力してください」という形で、捉まっている人がいる現場を目の当たりにしました。前の日に日本テレビの報道特集番組でこのことをやっていました。前日にテレビで観たのと全く同じ情景を見たので、後先考えずに割って入って、「カルト宗教の統一教会の勧誘ですよ」と止めさせたのが最初になります。信者が嘘を吐いているので、嘘を吐いている人を論破することが楽しく、渋谷に限らず新宿、池袋、東京駅とかを回って、勧誘現場をどんどん阻止して回る活動をしていました。

特徴的なのがこの写真です。黒い袖のアンケート用紙を持っている女性が勧誘員です。スカートの女性が勧誘を受けている女性で、脇にいるスマートフォンを持っている女性も仲間です。この勧誘対象者が、ビデオセンターという偽装教化施設にうまく連れて行きそうだとなると、いろいろなブロックサインを出します。髪の毛を触ったり、足を組み替えるとか、そういうサインが出ると、偶然を装って2対1の状況を作って合流してくる。これが「協助のサイン」と言われていて、「協助のサイン」を今出るか出るかと見ている。2人目の勧誘員がさらに後ろで張り込みをして、自分が割って入るという形です。そんな勧誘をずっとしていました。統一教会の勧誘は2対1の状況を作ります。一人が相手をしている間に、もう一人がビデオセンターの「アベル」と呼ばれる上司に指示を仰ぐ。

勧誘阻止活動を継続していく中で、最初は勧誘を受けた被害者が次の被害者を生産していくカルト問題特有の構造。こういうことに気づいて信者とのコミュニケーションを取るようになって、真面目にカルト問題に取り組むようになったんですね。伝道時間の休憩時間には教祖に祈りを捧げる信者たちもいます。ノルマを達成できないと終電ギリギリまでやります。夢遊病者のように眠りながら歩いているような信者を目の当たりにしてきました。信者も被害者だということです。使っていた手口は、人生最大の転換期」ということです。信者が持っている名刺を見ると、運勢鑑定士であるとか、そういう開運アドバイザーを標榜しています。

これが声かけマニュアルです。「お顔の相いですね」「アンケートお願いします」と3回言ってみるとか、「正」という字が声をかけた人数です。30とか180いくつとか、一番この中で多いのは218ですね。218人に声をかけてやっと立ち止まってくれたのに、そこに僕が割って入るので非常に嫌われていました。近年はカルチャーセンターの卒業生を標榜しています。教団名が小さく入っていますが、OB・OG会ということで、自分がそこで学んで素晴らしかったから、その教えを伝えたいといって、勧誘目的を隠して勧誘します。どういう勧誘をしているかちょっとだけ映像を見てもらいます。

マインドコントロールの実態

連れて行くのはこういうビデオセンター、偽装教化施設になります。信者の生産拠点ですね。これが伝道活動、勧誘活動だということを隠します。右のほうに「Welcome」と書いてあるので、いつも「歓迎されているな」と思いながら入ります左が2000年代に主力商品だった水晶、「風水の四神」を形どったもので一体150万円、600万円まで相手の経済状況に合わせて売りつけていた。これが2000年代です。この映像が荒川区で、こちらが愛知県名古屋のものです。やはり「Welcome」とあって、清掃活動とかをさせます。社会貢献活動をしていると標榜して信者を教化していき、非常にサロン的な雰囲気で入りやすい。毎日、仕事終わり、学校、大学終わりなんかに通わせます。パンフレットを見ても、どこにも統一教会とは書いていません。ビデオセンターによっては、「毎週水曜日にカレーが出る」とか、週3回、4回、5回来るといろいろなプレゼントがもらえるとか。担当者が決められ、その人と密な人間関係を築き、毎回ちょっとしたお菓子をあげたり手紙を渡したりして人間関係を作る。おかしいな、怪しいなと思っても、なかなかやめるきっかけを作らず、だんだん教義をすり込んでいく。

どうやって刷り込んでいくかというと、ビデオブースで刷り込みしていきます。最初は社会問題を煽るような映像を見せていって、だんだん宗教的な教義を入れていく。「この世にはメシアが遣わされているんですよ」みたいなことで、文鮮明のことを刷り込んでいきます。僕は、こういうところでビデオを観ている子に対して、許可を得て中に入れたときは施設の正体を知らせて救出する活動を続けていました。当然、中に入れてもらえないときがほとんどです。そういうときは、この施設が入っている建物の入り口に張り込みをして、出てくる受講生らしき人に声をかけて施設の正体を知らせて救出し、講代数十万円を取り返すということを協力してやってきました。2デイ合宿、4デイ合宿などを経て、2ヶ月ペースでビデオセンターの受講生の思考の枠組みを変容させて信者にしていく。2ヶ月で信者が誕生していくような流れになります。

エステとか整体とか「風水講演会」、これも統一一教会がやっていたもので、こういうものに誘い込んでいきます。偽装ボランティア活動、清掃活動もあります。これは横浜のケースで、青年信者グループが地域のお年寄りと連携して清掃活動をやって、信者司法書士が青年後見人制度のレクチャーを地域のお年寄りにしていたようなケースがありました。正体を隠して震災のボランティアなどもしていました。老人ホーム訪問に関しては、デイサービスのお年寄りなどとの接点が生まれるということで、そういうところから被害が生まれるのではないかと非常に警戒していました。それからCARP(カープ)原理研究会、大学にいろいろあるけれども、こういう青年組織を使った勧誘活動・信者拡大運動をしています。近年はSDGsを使った手口が非常に多いです。

コロナ禍では、オンラインサミット、例えば「CALLEGE SUMMIT for Peace(カレッジサミットフォーピース)」。こういうものをCARP生が始めているけれども、統一教会とは知らずに参加してしまうような大学の先生とか学長なんかがかなりいました。この時期に多いのは、「摂理」という団体で、X(旧ツイッター)をやっています。例えばハッシュタグで「春から何々大生」とか大学生になる人を狙って、最初は「いいね」をして、メッセージをやりとりするようにして、宗教勧誘、カルト勧誘であることを伏せたまま人間関係を作っていく。そして誘い込んでいくことを、これは統一教会に限らず「摂理」などもやっていました。よく大学に「怪しい勧誘に注意」という看板があります。でもカルトの勧誘って、実は怪しくないんですね。大学で偶然を装ってフレンドリーに話しかけてきたりするので、「怪しい勧誘」にだけ注意していてはカルトの勧誘は防げない。日本脱カルト協会で、僕はDVDを監修して啓発をしています。つまり自由な意思決定を侵害する手口です。信仰しない自由というものを侵害している。人間関係をまず構築していくので、誰もが被害に遭う可能性がある。被害者が信者となって次の被害者をリクルートしていく。連鎖していくカルト被害ですね。

カルトの問題は「善意で悪事を成す」

カルトの問題は「善意で悪事を成す」んですね。「目の前の人を救いたい」、「社会の人を救いたい」、「そのためには嘘をついてもいいんだ」という。悪意で悪事をなす普通の犯罪って、僕はあまり興味を持っていなくて、善意が実は悪意になっているカルト問題の特有の構造、こういう被害の連鎖を止めるために偽装勧誘の阻止活動をやったりしました。ビデオセンターから受講生を救出するとどうなるか。そんな活動をしていると「要注意人物」として全国に「指名手配」されてしまいました。

霊感商法をちょっと真面目に言うと、先祖因縁などを取り除くといって信者、被害者に高価なものを購入させる悪質商法です。壺とか印鑑とか弥勒菩薩がありますが、「天地正教」という仏教系の団体が取り込んで弥勒菩薩なんかも売りつけています。「善霊堂」というものは、この現世ですっからかんになって何億円献金しても霊界に行くと家があるということで、数百万献金するとこの「善霊堂」がもらえるというものです。大規模な摘発が2009年に行われ、それ以降は家計図や祈願書を使う手口に移行していきました。この家計図セミナーなどを全国で開いて、場所とか名前が違うけれども全部同じイラストを使っています。組織性がうかがえます。

2013年くらいの主力商品だったのは「天福函」という経典集です。430万円献金した人にこの経典集を授けていました。それに収まらず1千3百万、3千万、1億円献金した人には「真のご父母様」のサインとか写真を付けるという形です。別に信者はそれが欲しいわけではないけれども、「〇〇摂理」という形で不安をあおって献金をさせられるような収奪をされてきました。その金額は年間数百億円が韓国の教祖一族に送金されました。被害累計額は集計によると1千3百億円くらいですが、実際は10倍、1兆円を超えているといわれています。全国弁連と別に統一教会の弁連が結成され、そこによると昨年度の集計は45億円という集計がされています。

我々はこういう団体を「破壊的カルト」と呼んでいます。通常の悪質商法だと、例えば金銭的被害だけで済むところを、その人の人生や家族などを破壊されてしまうところから「破壊的カルト」と呼んでいます。これは宗教の問題であるのではなくてカルトの問題です。カルトの必要最低条件が何かというと人権侵害があるかどうか、自由な意思決定が侵害されるかです。合同結婚式は婚姻の自由がない、2世問題は信教の自由がない。合同結婚式について、昨年も韓国の取材に行ってきました。日本から多くの2世信者がカップルとして参加をしていました。これは教義の核となるもので92年の桜田淳子などが参加したものが有名で、性の管理などをして2世問題の原因の一つになっています。渡韓した女性信者はまだ大勢いると言われています。冠木結心(かぶらぎ・けいこ)さんは「信仰2世」という形で、自分が生まれてから親が入信した方で、2度合同結婚式を受けさせられて非常に苦労された方です。命からがら韓国から逃げ返ってきた方です。2世問題に関しては、幼少期からは偏った教義の突き込みによる弊害などに悩んでいる方が大勢いらっしゃる。よく宗教2世と言われますけれども、僕はその言葉が好きではなくてあまり使いません。これはカルトの2世の問題です。既存の宗教団体の中にもカルト化するところが局所的にはあるので、これは親子問題ではなくて団体を挟んだ問題です。

政治家対策を再強化した「新世事件」

教団転換期、2009年に「新世事件」が起こります。全国で教団系の会社が摘発を受け、2月に渋谷の印鑑販売会社が摘発を受けました。その時に渋谷教会や南東京教区事務所-これは教団の日本本部のすぐ目の前です。警視庁公安部は教団本部のガサ入れに入ろうとしていたけれども、それが有力な政治家の口利きによって、寸前でストップをかけられました。

この時の一連の摘発を、当時の韓国人総会長・日本のトップが反省をしたそうです。霊感商法の反省をしたのではなくて、政治家の対策を怠ったから摘発を受けたということで、ここから政治家への対策が再強化されていきます。この時期に教団が出したコンプライアンス宣言、法令遵守宣言は、教団が組織ぐるみで行っていた偽装勧誘や霊感商法を、信者個人の活動として信者に責任を押し付ける非常に欺瞞的なものでした。そもそも法令遵守を通達しなければいけない団体が、公益法人になること自体がおかしいんです。教団の内部資料を見ても信仰の証となる文書を残すとか、献金が任意に出されたものとして契約書を残すとか、訴訟対策をしています。

これは2013年に出されたもので、借入金は本来返すものなんですよ、ということを謳っています。信者になりたての資産家などの土地を担保に、銀行からお金を借りさせます。そのお金を「貸してください」という形で、最初は教団が借りる。それをなし崩しに献金に替えていくんですね。信者にしてみれば借金だけ残る。担保、土地家屋を取られて路頭に迷うケースが多々あります。借金、借入金は、返済が来たり、あるいは相手から要求があったら返済しなければいけないと、あえてここで謳わなければいけないということは、そういうことをやっていたということです。これは高齢信者のシミュレーションですけれども、念書をとるとか、喜んで学んでいる記録を映像で残すとか、そんなことが書いてあります。こういうエンドレス高額献金、「先祖解怨」という手口に移行していく。日本人信者から収奪する手口には変わりません。世界中の統一教会の組織、統一グループの資金源は、日本から収奪したお金です。それで建てられたのが韓国の豪華施設ですね。

安倍、菅など国政政治家と統一教会の関与を追及

次は国政に関わる政治家の追及を始めます。第2次安倍政権発足直後、勝共連合の新しい会長の発足パーティーに、いろいろな国会議員が参加をしていました。安倍晋三首相の肝煎り候補者だった北村経夫さんという候補者への組織票を、安倍さんが統一教会に依頼したことが教団の内部ファックスから判明しました。北村さんは安倍さんの祖父の岸信介の恩人にあたる、天照皇大神宮教、「踊る宗教」ともいわれる山口県田布施市の新興宗教の教祖のお孫さんです。岸信介の恩人にあたる人です。祖父の恩人の孫に対して当時の安倍首相が教団に組織票を依頼した。国会で教団を追及する運動が起こるという情報があって、「それから守ってもらうためにも、当選させることができるかどうか、組織の死活問題です」と強調しています。

これは安倍さんの個人的な動きなかというと、実はそうではなく、当時の安倍内閣の菅官房長官も関与していました。北村経夫は、参院選の選挙運動期間中に支援者を返して、こっそり一人で統一教会2カ所で礼拝に参加して講演していた。そのことを北村さんの支援者、地元の不動産会社の社長さんが知って怒ったんですね。北朝鮮ともつながっているような統一教会に協力するとは何事だということで、北村経夫の選対部長を問い詰めたところ、その選対部長が「菅官房長官の仕切りだ」と答えたというんです。つまり当時の政権ツートップが反社会的な団体と裏取引をしていたということになります。北村さんは教団票の上乗せによって初当選を果たしました。実態をちゃんと報じるべき事案でした。いろんなところに企画を持ち込んだけれども、唯一興味を示してくれたのが「週刊朝日」でした。以降、「週刊朝日」に年に数本記事を書かせてもらうようになりました。

安倍さんと統一教会の関係はいつからなのか。報道ベースでいうと2005年と2006年に統一教会の関連団体のイベントに安倍さんが祝電を送っています。この時は複数のメディアが報道しています。この時期までは、統一教会のイベントに政治家が祝電を送ったり関連団体の年会費数万円を支払った。その程度でちゃんとメディアが報じていた。政治家はその弁明に追われて、ある意味でメディアと政治家の間で緊張関係があった。ただ、これ以降はそういう報道がほぼなくなりました。

ただ、安倍さんがこの時、統一教会とかなり昵懇の関係にあったのかというと、実はそうではない。2006年に安倍さんに選挙の相談に行った方がいて、その人が安倍さんの事件のあとに私に連絡をくれました。当時出馬を狙って安倍さんに相談に行ったら、「君はどこか仲良くしている宗教団体はないのか」と聞かれた。「統一教会と仲良くしています」って言ったら、安倍さんは「僕はあの教団嫌い」って言っています。自分の祖父や父親は仲良くしていたけれど、安倍さんは一定の距離を置いていた。ただ思想的な共鳴関係にはありました。

同時期のジェンダー平等などの動き、男女共同参画の見直し、2005年の内部文書に、「安倍晋三官房長官と山谷えり子政務官でチェックできるように省庁に働きかける」とあります。つまり、反ジェンダーの運動における共鳴関係にあったんじゃないか。同時期に自民党の「過激な性教育」などジェンダーフリーに反対するプロジェクトチームがありました。座長は安倍晋三、山谷えり子が事務局長、シンポジウムの司会が萩生田光一で、自民党本部で開かれていた。非常に思想的な、反ジェンダー運動の中での共鳴関係にあった。その共鳴関係が8年後に組織票の依頼をするまでに変わったのはなぜか。そこにはまだまだ解明されていないピースがあると思っています。

第2次安倍政権後最初の衆院選。この時には、萩生田光一さんが統一教会のイベントに参加をしています。翌年、統一教会の名称変更がなされました。これは97年から文鮮明は全世界の教団組織に指示をしていました。日本では文化庁が申請を受け取ったら認可せざるをえないので、認可の申請の段階でストップをかけていた。弁護士団体も陳情していました。にもかかわらず下村博文が文化庁に圧力をかけて認めさせたという情報が、この時流れました。そのことを僕は「週刊朝日」に書きました。別の媒体にも書いています。教団としては長年の悲願がようやく実ったということで、大喜びで、名称変更の記念式典式を幕張メッセで開いています。多くの国会議員が参加していました。教団がやったのは、記念のショートムービーを3本作って、渋谷の松濤本部前の大型モニターに外に向けて上映していた。その中の1本が、公開3日でお蔵入りになっています。

2世信者をつかった全国一斉遊説も1年で休止

僕は、いわゆる2世問題に関しては、現役の2世信者たちを最初の本で取り上げました。2世信者を使った政治工作ですね。2016年1月、突如国際勝共連合大学生遊説隊、「UNITE」(ユナイト)という団体が全国一斉遊説を始めました。これは、SEALDsが注目されていた時期、選挙権年齢が18歳に引き下げられる最初の選挙を迎えていた時です。そして野党統一候補一本化に共産党が初めて同意した時期です。それまで共産党は全選挙区に候補者を立てて野党共倒れを引き起こし、結局自民党を利するような存在になっていましたが、野党統一候補一本化に同意して、共産党が脅威になっていた。自民党にとって脅威になっていた時期に、なぜか突然、保守派の大学生グループが日本各地でデモを始めた。

UNITEの演説内容は4つ [安保法案賛成]「憲法改正支持」「共産党反対」「安倍政権支持」です。これは勝共連合って名前がついているけれども、彼らの主張は保守派の大学生という自主的な活動、国を憂う大学生が声を挙げて、全国に派生していった。勝共連合の下部組織ではなく学生による自主独立組織だということを盛んに主張していました。ある疑念が浮かんだんですね。2016年5月30日、渋谷で大規模なデモが行われたその日に、テレビ東京が「改憲を支持する大学生がデモを行った」ということを短く報じた。それを引用する形で平井卓也さん、自民党のネットメディア局長など歴任されていた、国会でワニの映像を見ていた人です。この人が「このようなデモはあまり報道されませんが、学生はSEALDsというイメージは間違いです」とFacebookに投稿しています。このUNITEの結成や活動には政権の意向が働いているんじゃないかということで調べたところ、UNITEの遊説現場は勝共連合の遊説隊長が仕切っていて、UNITEのメンバーはほぼ全員2世信者。全国各地でUNITEの研修が行われていて、遊説現場には教団幹部たちの姿が見られた。

そんな中、ついに正体が判明します。全国一斉の最初の遊説、6月12日の前の日のメールを入手しました。「エイトが来るかもしれない」。重要なのは、UNITEと勝共連合についての関係です。「外的には2つの看板を背負っている活動です」と書いてあります。なぜ実体は1つである団体が外に2つの看板を背負う必要があるのか。それを欲していたのは誰なのか。安倍政権じゃないかということで、この正体について「週刊朝日」に寄稿をしました。この団体が配っていたのがこういうチラシです。「女子高生にもわかる憲法改正」、なぜここに「女子」をつける必要があるのか、女性蔑視の団体だということがわかりますよね。ミソジニーやマチズモにあふれている。

政界を内部統制に利用、すすむ政界の汚染

同時期に教団がやっていたのは、世界中で国会議員連合を作る動きです。右の写真は2016年11月17日に衆議院議員会館国際会議室で開かれたもので、当時の現役閣僚5人、国会議員60人、代理出席の秘書を含めると100人以上が参加をしています。このキックオフ大会が7月にネパールで行われていて、そこに参加したのが山際大志郎と山本朋広です。その時の山本朋広のSNS、Facebookをチェックすると、「どこに行かされるやら」と書いている。つまり自分の意思で行っていない。じゃあ誰の指示なのか、ということになります。翌年総会が韓国に行われて、そこに山本朋広とか、当時民進党だった鈴木克昌、のちに国家公安委員長や国務大臣になる武田良太なども参加しています。この時に韓国から「国家復帰」指令を受けています。「国家復帰」とは、その国の宗教を統一教会にすることです。これは日本国憲法で厳格に禁じられているので、その国を司るような政治家を取り込んでしまう主管すると言っています。そういう指示を、国会議員が受けたことになります。

その年の5月、北米会長一行が日本ツアーをして、自民党本部で当時の高村副総裁などと会談をしています。国際局長の田中和徳とも会談しています。田中和徳は、その前の年に彼の地元の川崎で世界日報を配布している。この時の成果を北米会長が韓鶴子に報告し、菅官房長官から首相官邸に招待してもらったってことを報告しています。首相官邸ツートップが、反社会的教団の幹部を首相官邸に招待していたことになります。政界汚染が止まらない中、有明1万人集会で皆さんよくご存知の「マザームーン発言」が出ました。その夜の祝勝会には統一教会票で議員になった人も参加しています。

政界汚染はどんどん進んでいきます。統一教会幹部が自民党の国会議員団、武田良太とか山本朋広とかいっぱいいますけど、アメリカの外遊に連れていっている。当然、全国弁連も黙っていなくて、院内集会を開いて全国会議員事務所に対して関係を持たないように申し入れをしています。にもかかわらず、直後のイベントに多くの国会議員が参加しています。その院内集会を取材したメディア関係者は、実は僕を含めて2人しかいませんでした。多くのメディアは全く興味を持っていなかった。その後韓国で行われた集会では、日本のメディアが「真のお母様をほめちぎっています」みたいな大嘘の報告をしたり、どんどん多くの教団のイベントにいろいろな国会議員が参加しています。

これは岡山です。この写真は逢沢一郎さん。ピースロードですね。日韓トンネル実現のためのイベントでも、平井卓也さんとかいろいろな人が参加しています。2018年9月には幕張メッセで大規模な青年イベントがありました。その時に僕と藤倉善郎さんでどんな国会議員が参加しているのかということで潜入しようとしました。幕張メッセは細かい会場に分かれていて、隣でアイドルイベントも行われていたので、「アイドルオタク」風の変装をして忍び込んだところ速攻でバレまして、こういう暗幕を張られて手で妨害をされました。参加していたのが神田憲次司さんですね。

翌月、国際勝共連合の50周年式典が行われました。キャピトルホテル東急。国会議員会館のすぐ裏です。そこの裏口から駐車場を経由して、出入りする政治家を1階ロビーで張り込んで「激写」をしていました。教団に、信者で僕専門の係員がいて、それがマンツーマンでついて、妨害されました。「週刊朝日」の記事を書くのが終わってしまい、扶桑社系のウェブメディアで連載を開始しました。「安倍政権と問題教団の歪な共存関係」というタイトルで、家庭教育支援法をめぐる勝共連合の動きも書きました。家庭教育支援法や青少年健全育成法を制定してください、みたいな陳情や請願を勝共連合が地方議会にダミー団体などを使って出していた。一方で自民党の川崎市議団も全く同じ文面で出しています。そういったいろいろな連動性がありました。

全自治体で家庭教育支援条例が制定されたのは熊本県です。「熊本モデル」として勝共連合の青津和代部長が講演などをしています。板橋区では、下村博文の国政報告会での青津和代さんとのツーショットの写真などもあります。2010年に有田芳生さんを落選させようという運動中にも青津さんの名前が出ています。ここにも安倍晋三さんや山谷えり子さんの名前が、ジェンダーや青少年問題にとってはなくてはならない存在だということで出ています。家庭教育支援法の実現をめぐる講演をいろいろ全国でやっていまして、「同性愛は病気だ」みたいなことを平気でひどいことを書いている。2015年の渋谷区のパートナー条例制定の時には、いろいろなダミー団体を作って反対運動、署名活動を展開していました。非常に伝統的家庭観と親和性があるんですね。これは沖縄の事例ですが、性教育に反対するチラシと、辺野古の埋め立てに賛成するチラシ。このフォントが全く一緒です。市民運動を潰す裏にも統一教会が暗躍しています。

統一教会のダブルスタンダード

同時期に教団の「反日思想」が見えます。日本人幹部の研修会で蜜月を築いていた安倍政権、安倍晋三に対して何を言っていたかというと、「屈服と教育の対象」だと宣言して「安倍晋三を教育しろ、屈服させろ」ということを日本人幹部に指示をしています。北村経夫さんの2度目の参院選です。相変わらず教団の支援を受けているのかなと思って大宮の演説会を見に行ったところ、統一教会信者が大量動員されていました。それに留まらず、会場自体を仕切っていたのが統一教会の関係者だった。この人物と次に会ったのが同じ年の10月でした。実は政治家が一番欲しているのは無償でいくらでも協力してくれる、選挙運動に邁進してくれる人物、運動員なんですね。そういう青年信者を選挙運動員として政治家へ斡旋する会合があるという情報を得て京王プラザホテルに行ったところ、「平和大使と地方議員の集い」というものが開かれていました。これには国会議員も参加していた。

ここにいたのが、北村経夫さんの演説会場を仕切っていた教団関係者でした。この人から僕は何を言われたかというと、「あの隠し撮り野郎か、そういえば私にそっくりな知り合いがこう言っていました。あの隠し撮り野郎、今度会ったらぶっ殺す」と教団関係者から殺人予告をされたんです。「じゃあ、あなたが僕のことを殺すんですか」と聞いたら、「いや。私にそっくりな知り合いが」って言い張るので本当に違う人だろうかと思って写真を比べたところ、ネクタイも一緒、スマホのケースも一緒、顎の形も一緒ということで、間違いなく同一人物だということになります。

この時の参院選で何が起こったかというと、僕は萩生田光一さんを秋葉原で直撃しています。この時の音声は一昨年、いろいろなメディアで報じられました。萩生田さんは結構ずるくて去年いろいろ報道された中では、市議会議員時代から教団施設出入りしていたんじゃないかとか、生稲晃子さんを参院選を前に連れて行った時も、世界平和女性連合と教団名が似ていたのでうすうす感じていたけれども、あえて指摘しなかったとおっしゃった。この時は、僕が勝共連合は最近ロビー活動に来ていますか?と言ったら「いや。世界平和女性連合は地元で会合に出ていますけどね」という答えです。「勝共連合は議員会館に来ていますか?」と聞いたら、「いや。最近壺も売っていないしね」とか言って、僕は勝共連合の話を振っているのに、世界平和女性連合と統一教会の話で返してきたんですね。萩生田さんは、うすうすどころではなく、それが同じ団体だということをよくご存じだったということをこの時つかんでいます。

一方、菅原一秀さん。僕は練馬在住で、菅原さんはUNITEのイベントに出たり選挙運動員をあっせんする会合に出ていたというのは、実は菅原さんの情報だったんです。そんなことから地元で追及していましたが、菅原さんに徹底取材妨害をされるようになりました。菅原さんは第4次安倍再改造内閣で経産大臣に抜擢をされました。この時に「これは安倍カルト内閣」だということで、統一教会関係議員が大量抜擢されているということを「日刊ゲンダイ」などにコメントを寄せました。弁護士団体もさすがに2度目の申し入れをしましたが、無視する政治家がほとんどで直後の4万人集会にも参加しています。さらに地方議員が合同結婚式を挙げたり、2世信者たちが「無条件ダンス」を韓鶴子に泣きながら踊るというような状況がありました。

僕は疑惑の政治家への直撃取材を長年やっているけれども、逃げられたり無視されるんですね。選挙運動期間中なら逃げないだろうと思って、山本朋広が防衛副大臣の時代に大船駅前で直撃しました。僕が「マザームーン」の話を出した瞬間に、態度を豹変させて警察を呼ばれ、選挙自由妨害で逮捕寸前という事態になりました。菅原一秀さんについては居留守を使われました。なので事務所に直接訪ねていったところ、中でお待ちくださいと言われてソファーで座って待っていたら、警察を呼ばれた上に建造物侵入罪で刑事告訴をされました。これは2019年6月19日でしたが、8月に3時間くらいの事情聴取を終えて、練馬警察から出てきたところで謝罪、お辞儀をしてそのまま菅原一秀の練馬事務所に行って緊急謝罪会見を開きました。何に謝ったかというと、僕はこの前の衆院選で彼に投票たんです。投票してしまった責任を、東京9区の有権者を代表して「こんな人物を国会議員にしてしまったことをお詫びします」という非常に分かりづらい謝罪をした。

その中で教団がちょっと慌てたのが教団のダブルスタンダード、教団が2世信者たちを大量動員して韓国に派遣して、元徴用工であるとか元「従軍慰安婦」の方のところに行って謝罪をさせたんですね。さらに日本大使館前にある少女像の横で、安倍政権に謝罪を迫る会見まで開いている。日本ではUNITEを使って安倍政権を支持する活動をさせておきながら、一方韓国では安倍政権を批判する活動を信者にさせている。これはダブルスタンダードじゃないか、ということで記事を書いたところ、統一教会からもあわてふためいて東京地裁に記事削除の仮処分申請を2度申し立てしてきました。統一教会のダブルスタンダードが顕著なのは、なぜ保守派の政治家たちが「反日思想」を持つ団体と関係を続けてきたのかということです。もともと日本と韓国が反共の同志という関係だったんですね。そのあと東西冷戦を背景に進んできたということで、これはまた後で説明します。

なぜ安倍晋三元首相は狙われたのか

2020年、韓国の大規模集会です。ここにトランプ、文在寅、金正恩などからメッセージが届いています。右の写真、千鶴平和賞、5千万円のお金を受け取っている。真ん中の男性は潘基文元国連事務総長です。日本の国会議員、元国会議員なんかも参加をしています。そして世界平和連合による別の議員連合が結成されています。ここで取り交わされたのが推薦確認書です。結局、地方議員から国会議員に育て上げる戦略ですね。後援会を結成したり運動員を派遣したり、党員の補充までしてあげる。実際に2018年に滋賀県の小鍵隆史さんという参議院議員は、世界平和連合から後援組織を立ち上げてもらったことをツイッターに書いています。一方カルトの政界浸食が進む中、個人的には、ハーバー・ビジネス・オンラインが配信停止になって、僕の記事を書く場がなくなった。汚れた関係性が社会に問えないまま進行していき、政界汚染が進んでいきました。

その中で起こったのが2021年9月、安倍晋三が統一教会のイベントへのビデオメッセージで韓鶴子総裁を礼賛した。ものすごい衝撃でした。安倍さんと統一教会の関係は当然わかっていましたけれども、こういう証拠が残る形でこういうものが拡散しても、自分の政治生命、自民党の選挙には何の影響もない、と安倍さんが高をくくったたことに衝撃を受けたんですね。一方、いろんな2世、元2世の話を聞くと、この映像を見たときの衝撃と絶望です。これも言語化ができないぐらいの怒りだったと言っています。山上徹也被告もこの映像を見て絶望を覚えたということだと思います。ただ安倍さんの政治家としての判断、実は正しかった。このことを報じたのは、「やや日刊カルト新聞」を除くと、4媒体(しんぶん赤旗」「フライデー」「週刊ポスト」「実話BUNKA超タブー」)だけでした。大手の主要新聞、テレビ局は一切無視した。さらに全国弁連からの公開質問状も受け取り拒否をしています。開き直っていたということです。

その年の衆院選。山際大志郎、この人は地元を含め秘書を入れて統一教会信者がいっぱいいるという情報を得ていたので、出陣式を取材に行って確認をしてきました。その年に行われたのが勝共連合の憲法改正イベントです。ここでも2世信者たちが「共産主義の脅威に打ち勝つ」とか、勝共青年歌という昭和の歌を歌わされている。目も当てられないような状況が続いていました。ここのイベントで流されていたのは東西冷戦後の生き残り戦略です。東西冷戦下において、保守派の政治家に反共団体、「勝共」ということで近づいていったけれども、東西冷戦によって「反共組織」自体の存在価値がなくなっていた。そこで何をしたかというと、ジェンダーフリーであるとか、同性婚、男女共同参画。こういうものも全て共産主義だということで、「文化共産主義」という名前を勝手に付けて、反共産主義、反ジェンダーだと保守派の政治家を取り込んでいった。教団の内部資料を見ても、安倍晋三を取り込むとか、そういうものが書いてある。これは統一教会だけかというと実はそうではなくて、宗教右派による策動、日本会議であるとか、神社本庁、そういうところも連動してやっている。ただ性の問題、セックスの問題が絡んでくると、統一教会がどんどん口を出してくる。実際、日本会議系の高橋史朗や八木秀次なんかも統一教会系のイベントに出ている。人的交流があるんですよね。

メディアの監視機能が働かなかった空白の30年

いろいろ状況が打開できないまま過ぎ去っていく中で起こったのが、安倍晋三元首相銃撃事件でした。僕は第1報を聞いたときは、これはもう暴力団関係であるとか政治的なイデオロギーとか、そういうところで狙われたのかと思いました。もしこのまま安倍さんが亡くなってしまったら、自分が追及してきたことは無に介してしまうと思いました。ある意味空虚感があった。ただ報道の中で「ある団体への恨み」と報道が出た瞬間に、これはもう統一教会に間違いない。これは明らかに自分を巻き込んだ大騒動になるということで、覚悟を決めました。この問題を追ってきたのは自分一人だっていうことは自分で分かっていたので、必ず自分が渦中になってしまうとこの時に覚悟を決めました。

本当にこの時から実際に人生変わりました。唯一これを追ってきた立場として、何をすべきかを考えました。改めて可視化されたのが教団の悪質性です。金銭被害、家庭崩壊、2世問題、政治家との関係。結局一般メディアが応じない中で体制保護を受け続けてきた。メディアの監視機能が働いていなかったということです。メディア報道は、2006年以前はしっかり報道していたのに、それ以降報道しなくなったのはなぜか。これはどちらかというと自主規制だった。面倒くさい問題を扱うと、面倒くさいクレームが来るということで生まれたのが、空白の30年、20年、結局権力の監視機能が働いてこなかったということです。

事件直後のメディア報道を見ると参院選中ってこともあったのか、教団名が出なかった。唯一出したのが「現代ビジネス」と「スマートフラッシュ」です。ネットメディアで、投票日の前の日と当日にようやく教団名が出ています。大手メディアが教団名を出したのは、参院選翌日、教団が会見を開いてからです。教団は当初から政治家の情報を小出しにしたり、メディアにいろんな働きかけをしてコントロールをしてきています。我々「やや日刊カルト新聞」は、独自の追及方法を続けてきています。教団の会見の時も教団は一部のメディアを排除し、フリー記者を一切入れなかった。そういう形でメディア選別をしてきました。

その時に我々は会場側と交渉をして、教団の会見が終わった後に同じ場所で緊急会見を開き、「さっきまで教団関係者が会場で言っていた話は全部嘘ですよ」ということを言いました。いろいろなメディアに報じてくれました。僕がずっとやってきたのはメディアへのデータ提供ですね。自分で情報を抱え込むのではなくて、オープンソース的に照会があったメディアにどんどん情報を渡しました。その意図は多くのメディアに追及してほしい、自分一人で抱え込むものではない。一人では埋めきれないピースがあったら、そこをいろいろなメディアが協力して「チームジャパン」的にやってほしいということがありました。メディア関係者には、この問題を見過ごしてきたという反省があったと思います。

進んでいない政界とカルト団体の関係解明

一昨年、被害者救済法ができて厚労省が宗教的虐待のQ&Aを出し、一定の進展が見られる中、政界とカルト団体の関係についてはなかなか進んでいません。教団の内部資料を見ると、政治活動を直接行っている政治家に相当コミットしていることがわかっています。関連のある政治家への追及も、自民党の一昨年8月9月の自主点検で終わっている。統一地方選でも争点になったとは言えず、多くの関係議員が当選しています。山本朋広さんを派遣していた大物政治家、これを追及すべきだと思います。安倍さんが亡くなったあとも教団に利用されている。全てを安倍さんに押し付けるような大物政治家の発言などもあります。死後も利用されています。

萩生田さん、1年前の弁明ですけれども、市議会議員時代から統一教会の地区教会に通っていたのは自分じゃないという「人違い説」をいっています。「多分、市議会議員でそっくりな議員がいて、みんな勘違いしているといっている。自民党が幕引きを図っていく中でビデオの追求もストップして、そのためには幕引きを図りたい側をいかに追及するべきかだと思います。

自民党が一昨年、点検をやりました。最初に「党として組織的関係がないことは既に確認済みであります。」とある。最初から足枷をしています。さらに8項目。一番重いものでも、「選挙協力」です。本来の調査であれば、誰の指示で統一協会の集会に参加したのか、秘書を使っているか、と聞くべきことは何も聞いていない。足枷をした上に枠を決めている非常に不十分な調査で、ずさんなものです。兵庫県警捜査1課の赤報隊事件の資料に、自民党本部職員に10名前後の勝共連合メンバーがいるということがあります。

2世信者たちのSNSを見ると、衆議院議員の秘書をしている「食口」の青年信者がいます。秘書を募集している国会議員がいます。その人は「UC」ではない。「UC」というのは「Unification Church,」、統一教会のことです。あえて「統一教会の信者ではない国会議員の人が募集しています」ということを何回もいろいろな局面で言う。わざわざここでそれを謳っているということは、逆に統一教会信者の国会議員もいるんじゃないか、ということになります。実際、元日本統一教会の会長の息子と安倍晋三さんは、自民党本部で記念写真を撮っている。この息子は文鮮明の孫と結婚しています。

茂木幹事長に質問書を送付したけども、片通りの回答しか返ってこなかった。それから、政治家に統一教会のお金が渡っているんじゃないかと、いろいろなVIPを紹介する女性信者チームの存在なんかが内部資料にあります。実際アメリカの報道ではトランプに3億、マイク・ペンスに6千万支払われているという情報がある。他には日本でも鳩山由紀夫さんの首相時代に教団イベントの出席を依頼して断ったところ、「いくらでも出す」と答えたそうです。岸さんがずるいのは「未来へ向かって関係を断つことが大事だ」。これは過去の検証をしないということです。過去の検証をしないと、関係を断つことは不可能です。これは現在進行形の問題で、長年に渡り継続してきた問題です。自民党執行部は解明を望んでいないと僕は見ています。

統一地方選も、陣営に信者関係者がいたり教団信者がどんどん当選しました。伝道数も安倍さんの事件の、前の水準に戻ったことが教団の内部資料から判明しています。昨年6月に報じられたのは韓鶴子の「反日発言」です。日本は韓国にひどいことをした、賠償しなきゃいけない。さらに「日本の政治家は何をしているんだ。岸田をここに呼んで教育を受けさせなさい」と言っています。韓国の統一教会は、完全に韓鶴子教になっています。「「独生女(どくせんにょ)」宣言」といいますが、完全に韓鶴子教になっています。

解散命令請求の行方、財産保全の方法と教団の抵抗

事件からちょうど1年後、私は現地で取材をしてきました。献花に来ている人から「帰れ」と言われたり、別に党派性なく活動していることをなかなか理解してもらえていないと思いました。教団がアピールする中で、ようやく文化庁、文科省が出したのが解散命令請求です。これはいろいろ質問権行使をし、教団が不誠実な回答を続ける中で、会への通知がなされました。会見では、国への敵意をあらわにするようなことも見られています。10月13日、盛山文科大臣が会見で話した内容は、素晴らしかった。我々カルト問題に取り組む側が長年訴えてきたこと、自由な意思決定に制限が加えられてきたこと、自由な意思決定の侵害ですね。そして本人だけではなく、親族の被害までちゃんと踏み込んで言及してくれた。文化庁の事務方が作ったものではあるけれども、盛山さんは本当にいいことを言ってくれたとこのときは思いました。

解散命令請求は確定までに数年かかると言われています。財産を海外などに散逸させたり、不動産の所有者を変えてしまうのではないかということで、財産保全の法整備が必要だと言われています。解散命令請求を、宗教法人法81条で出されたのは3団体だけです。大日山法華経寺は、債権回収機構が申し立てたもので、実態がないということで申し立てた事例です。統一教会に関しては1年から1年半くらいで解散命令請求を確定するのではないかと僕は見ています。教団側は会見を開いて敵意をあらわにしています。財産保全をしないようにして下さいということを国会議員にFAXを送りつけたり、教団側の会長が会見をして、謝罪はするけれどもお詫びではないとか、供託金の申し入れをしたり、非常に欺瞞性が現れたと思います。結局、国会で審議されて特例法ができたけれども、被害者が望んでいた財産保全ではなくて、法テラスの強化であるとか、被害者が個々に訴訟を起こさなくてはいけないようなものになってしまいました。一歩前進ですが、ちょっと残念な結果になりました。特措法では実現しなかったということになります。

指定宗教法人に指定はされたのですが、本来は一番重い特別指定宗教法人、被害者が直接財産目録を閲覧できるようなものが制定されてしかるべきだったと思います。そのほか国はちゃんと動きを見せていて、支援強化、相談体制の整備などについての関係閣僚会議が開かれました。

多発するスラップ訴訟と教団の狙い

一昨年7月以降の教団側の抵抗について見てもらおうと思います。メディアに対して著作権侵害を訴えたり、嘆願書を出したり、地方議会、地方自治体を提訴したり、これは今も続いています。政治家の情報をリークしてけん制をするとか、スラップ訴訟を多発しています。

私に対しても、長年ネガティブキャンペーンを行っています。これは2017年のもので、鈴木エイトはフェイクニュースを書く人間だ、こういうライターを使わないようにしてくださいということを、いろんな雑誌社などに送りつけられました。一昨年出たものですが「ハゲタカジャーナリスト鈴木エイト」という怪文書が出されました。僕の悪口を書く変なメディアがあって、これは「0801対策」、「エイト対策」らしいです。だったら8だけでいい気がします。僕が教団のイベントに来たらこういう感じで対応しましょう、みたいなマニュアルがあります。教団サイドからのネガキャンは、私以外でも全国弁連の紀藤正樹弁護士とか、元2世の小川さゆりさんなどの教団にとって都合の悪い人物が標的になっています。

勝共連合はこういうチラシを作って弁護士団体の悪口を言ったり、僕に対する個人攻撃をしたり、関連団体が弁護士を訴えたりしています。僕に対しても今2件のスラップ訴訟を起こされていまして、もう1件やると言われて、「エイト3部作」と言っているらしいです。僕はそういうものにも決して屈せず正面からたたかいを挑んでいます。僕を訴えた原告側の会見に、自分でわざわざ取材に行ったんです。そこでいろんな言質を取ったり、これは茶番なんだということを、多くの世間に知ってほしい。いろいろな裁判でお金がかかって大変なので、訴訟支援サイトを作って裁判の情報とか、スラップ訴訟を含めてお知らせをしています。カンパなんかも受け付けていますので、ぜひご覧いただけるとありがたいです。

教団がスラップ訴訟をいろんな地方自治体とかテレビのコメンテーターとか、僕が講演する大学とか日本ペンクラブなんかに、クレームを入れています。今年、早稲田大学と北海道大学で講義をやることになっていますが、恐らく公表した瞬間に一斉にクレームがいくであろうと思います。教団がこういうスラップ訴訟を起こす狙いは、言論封殺、メディアの萎縮、個人へのダメージですね。これまではそういうものが功を奏した教団の成功体験があると思います。解散命令請求の審理が進む中で、先日は最初の審問が行われました。その取材にも行きましたが、教団は解散命令を回避しようといろんな画策をしています。

いろいろな法整備も進んだけれど、オウム真理教の事件のあとにちゃんとした省庁連絡会議と研究会ができて、統括報告書が作られていました。これは宗教の問題ではなくてカルト問題であって、脱会者をいかに社会的に支援するかとか、ちゃんとしたことがいっぱい書かれています。後世に活かさるべきこの報告書は、実は全く活かされないまま国立公文書館にしまいこまれていました。少なくとも安倍晋三という政治家が亡くなるような大事件に発展した今回の事件・事例は、ちゃんとした調査報告が必要じゃないか。アメリカでコリアゲート事件が起きて、フレーザー委員会が作られてフレーザー報告書が作られました。そこに準ずるような形で、カルトと政治家を規制するようなものにつながる、調査報告が必要です。その先には、フランスの反セクト法のような形で、反カルト法の制定の議論をしてほしいと思っています。

山上被告の裁判はいつから?僕は事件に向き合う

今後の報道のタイミングとしては当然、政治家の接点、山上徹也の公判があります。山上の公判は、裁判員裁判になります。動機面については彼の成育歴などが情状酌量になる面、それから例えば教団への恨みがなぜ政治家に向いたのかとか、計画性が過重要件、罪が重くなる方に傾く可能性があります。一方で彼の動機面を正しく伝えることによって、そういう事情であれば政治家を狙ったのは理解できる、ということで情状減刑になる可能性もあります。どっちに転ぶかわからない、前代未聞の裁判になります。

彼と僕は事件の9日前にやり取りをしていました。この2冊目の本に書いたけれども、彼が聞きたかったのは、参院選当日7月10日に教団のイベントにどんなゲストが来るか、といったことです。僕が衝撃を覚えたのは、彼が僕の記事をずっと読んでいたことです。つまり、彼が動機面、安倍晋三という政治家を狙った動機を形付けてきたもの、それを裏付けてきたものは僕の記事だった、ということなんですね。僕の記事が問われる事態になって、ある程度取材者として事件に第3者的に関わって取材をしてきた僕の立場が、犯人の動機に関わる記事を書いてきた人間ということで、一気に傍観者から当事者性を帯びてくるようになってきたことです。そういう意味では自分の立ち位置をどうするか。それからこの事件に発展した自分の記事が元になっているということであれば、僕はその責任をちゃんと取ろうと思っています。

「責任は感じるものではなく取るものだ」と海堂尊さんの本にあって、これを座右の銘にしています。彼の公判での僕の責任の取り方というのは、彼の動機面を裁判員に的確に示すことだと思っています。これは決して彼の減刑を求めるということではなくて、彼の動機面を正しく正確に裁判員に伝えた上で量刑の判断をしてほしいということです。僕は意見書を出すなり陳情書を出すなり、どういうかたちになるか分かりませんけれども、証人尋問もあるかもしれない。僕の責任の取り方というのは、裁判に向き合っていくことだと思っています。このことを本に書いたところ、統一教会系の世界日報に「鈴木エイト氏 自著で被告への影響を自慢」と書かれました。結構うがった見方をするものだなと。

僕は事件現場の定点観測をずっと続けています。事件当時と現在は相当変わっています。事件当日、その時の山上の視点、安倍さんの最後の視点、山上徹也の足跡、山上の生家があった東大阪市の場所、そのあと移り住んだ奈良市内の跡地であるとか、祖父の家の場所、母親が自己破産した後に一家が移転した団地などです。現地に行ってみると、階段のステップがこんなに剥がれています。ある程度裕福な家だったのに自己破産した後、これを毎日家族が見ていたんじゃないか。山上の足跡の中で、家の標札が剥がされている。山上が事件当時住んでいたマンション、彼が借りていたガレージ、試し打ちをした統一教会の地区教会。彼は自分のベランダからこういう光景を見ていたのかな、ということを追体験しようと思いました。

事件直前の経緯を振り返ると、前日は岡山で銃撃をするつもりで行ったけれども、直前に島根在住のルポライターに手紙を投函しています。ただ厳重な警備体制だったので銃撃を断念し、その手紙を回収しようとしたけれども、できなかったんですね。隣の県なので次の日には手紙が届いてします。ルポライター、米本和広です。それを見て警察に通報したら、自分の犯行計画がわかってしまう。タイムリミットが迫っていたんですね。その後、彼が帰りの新幹線で見たのが、翌日の安倍さんの演説現場が長野から、自分が育った場所に変更になった。非常に運命的なものを感じたんじゃないかと思います。そういう偶然と、彼から見た必然が相俟って悲劇が起こったと思います。

SNSの誹謗中傷や政治カルト、経済カルトなど

カルト的な構造による社会問題は、まだまだあります。宗教カルトだけではなく、政治カルト、経済カルト、それからマルチ、「環境」って団体があるけども、環境の問題が出てくるんですよ。これは実はかなりカルト的なマルチ団体があります。政治セクト「POSSE」、労働者問題とかいいこともいろいろやっていますけど、リクルートのやり方であるとかでかなり問題のある団体だととらえています。それから陰謀論とか「反ワクチン」とかいろいろあります。

今後ちゃんと問いたいのは、被害者を前面に立てる行動の是非です。コンテンツ消費に入っていないか。矢面に立たせてしまったリスク、出てしまったリスクです。被害者に被害中傷が飛ぶ。そういうメディアの報道姿勢を問うていきたいと思っています。勇気ある告発者をいかに保護していくか。これはジャニーズ問題も一緒ですね。差別問題も同時に取り組むべきだと思います。メディアの矜持を見せる時だ、メディアの役割をちゃんと果たしているか、国民の知る権利、有権者の投票行動のために必要な情報を提供できているか。社会的弱者、声すら上げられない被害者の可視化、これが必要だと思っています。

カルト問題イコール人権問題だと思います。再発防止のために事件の徹底検証です。他にも顕在していかない社会問題もあるのではないか。社会的弱者、被害者の存在、それを汲むのは政治家やメディアの役割です。一方で非常に気になっているのが「犯人の思う壺論」なんですね。去年起こった佐々木容疑者による岸田首相への爆破物投げ込み事件です。いろいろな政治家が犯人の動機を報じるべきではないであるとか、NPOの方たちがちゃんとした反論をしているけれども、非常に変な論争になってしまった。犯人の動機を報じるなというのはどういうことなのか。これはメディアの調査報道を否定するものです。

テロ行為の模倣犯のもとになるといいます。でも、これはリテラシーの問題で、メディアが何を報じるか、メディアの役割が何かということです。国民の知る権利、事実の報道、権力者がこういう都合の悪いことを牽制しようとしているのではないか、そのチェックが必要だと思います。「犯人の思う壺」論は、そもそも論理破綻しています。要人警護の問題、それから犯人の動機面の問題、社会問題、法律ができることなどの問題ですね。個別に論じるべき事項がごちゃ混ぜになってしまっている。こいうことをちゃんと分けてやるべきだと思っています。

統一教会からターゲットにされた岸田政権

自民党の裏金疑惑については、相当数の信者秘書が派遣されている中で、秘書に責任を押し付けるようなところがあって、政治家の政治生命を秘書が握っているような状況が生まれてしまう。そこに統一教会信者がいたらどうなるのか。派閥のパーティー券を統一教会関係者が購入していたという茂木さんのような話があります。リークが続く背景に関しては、今後もいろいろ大きな動きが続くと見ています。岸田派だけで10人ぐらい、自民党だけで100人ぐらい協定確認書を交わしているという話です。

その中で安倍派の話は出てこない。教団側のリークというよりは、個々の信者、地区の代表者のリーク。それは純粋な憤りからのリークです。散々協力してきたのに、盛山文科大臣は手のひら返しをした。これまで教団側はそういう動きを抑えてきたけれども、それを黙認しています。でも安倍派の情報は黙認しないとか、方向性をつけている中で、実はもっと他にも大物議員の名前が出てくるはずが、なぜか出てこない。その議員は統一教会と通じていて、解散命令請求が出ないように動いていたという話もあって、その人物の名前が出てこないということは、まだ教団にとっては使い道があるということになります。

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