内田 雅敏(弁護士)
沖縄本島を含む琉球列島の軍事化が急ピッチで進められている。対中国包囲網の最先端の与那国島では、戦後生まれの町長が名刺の裏に「荒潮の息吹にぬれて、千古の伝説をはらみ、美と力を兼ね備えた、南海の防壁与那国島(略)厳然とそそり立つ与那国島、おお汝は、黙々として、皇国南海の鎮護に挺身する、沈まざる二十五万噸の航空母艦だ」と(皇)紀元二千六百三年三月、伊波南哲によって創られた「讃・与那国島」を刷り込み、霞が関辺りで配っているらしい。シュエルターの建設に名を借り、町役場の立替を企んでいるようだ。
「鉄の暴風」と形容された艦砲射撃によって、住民もろとも「不沈空母」が文字通りの焦土と化し、民間人約10万人が殺されたのが沖縄戦の教訓ではなかったか。それにしても、戦後生まれの町長が紀元二千六百三年と、堂々印刷しているのには驚く。敗色濃くなった1943(昭和18年)年の頃だ。
米軍と自衛隊の一体化を目指す統合運営訓練も一段と強化されているようだ。2023年11月1日付琉球新報は、「隊員戦死・遺体扱い訓練へ」という見出しで、訓練には遺体処理の訓練もあるようだと報じている。
麻生自民党副総裁の「戦う覚悟」発言にも見られるように、どうしても対中国で一戦やるつもりらしい。米国からトマホーク400発も購入して、一発も撃たないのでは示しがつかないとでも思っているようだ。
喧伝される「台湾有事」について冷静に考えてみよう。
まず、2022年10月25日、第20回党大会における習近平演説「但決不承諾放棄使用武力」(ただし決して武器使用を放棄はしない)である。しかし、その前後で「何としても平和統一を目指す」とし、「武器を使用しなければならないのは外部勢力の干渉や、一部の台湾独立分子を対象としたもので、決して広大なる台湾同胞を対象としたものではない」と述べている。
「決して武器使用を放棄しない」という言葉は、台湾和平統一を提唱し始めた後も、鄧小平、江沢民、胡錦涛、温家宝も繰り返し述べてきた常套句である(遠藤誉『習近平が狙う「米一極から多極化へ」』)
2020年10月29日、中国共産党の「第19回党大会五中全会公報」に「確保二〇二七年実現建軍百年奮闘目標(2027年の建軍百年に向けた奮闘目標を実現しよう)」と書いてあることも原因として挙げられているようだ。その後ろには「要保持香港、澳門長期繁穏定、推進両岸関係和平発展和祖国統一」と書かれている。「両岸」とは、台湾海峡の両岸、即ち大陸と台湾の「祖国統一」という意味であり、建国当初から繰り返し言われてきた。今回、新しいのは「確保二〇二七年実現建軍百年奮闘目標」と呼びかけただけであり、その目標とは「加速国防和軍隊現代化、実現富国和強軍相統一(国防と軍隊の近代化を加速し、富国と強軍の統合を実現する)」。ごく普通のスローガンだ。
この言葉を受けて、2021年3月9日、米インド太平洋軍司令官フィリップ・デービットソンが米上院軍事委員会の公聴会で「今後6年以内(2027年までに)に、中国が台湾を侵攻する可能性がある」と発言した。
高良鉄美(琉球大学名誉教授)
あけましておめでとうござまいす。2024年、辰年に当たり、ご挨拶を申し上げます。辰は龍であり、「権力の象徴」「パワーの源」とされます。今年もしっかりとエネルギーをため、改憲の動きに負けないよう、がんばりましょう。
ところで、龍には別の隠れた意味もあります。「登龍門」という言葉にも表れているように、貧しかったり、身分が低かったり、有利とはいえない環境ながら、苦労して困難を克服し、成功を収めた人などのことを龍にたとえることがあります。この意味では、戦後の瓦礫の中で立ち上がり、国際社会の中で十分な地位を認められなかった日本が、国民の懸命の努力と平和憲法の理念との相乗効果によって困難を克服して、世界3位の経済大国にもなったことについては龍にたとえられてもよいでしょう。
登龍門は、立身出世のための関門や人生の岐路となるような大事な試験(試練)をいう場合もあります。今やロシアのウクライナ軍事侵攻、ガザ地区へのイスラエルの過剰な報復戦争をはじめ、世界で戦争、軍事侵攻、内戦などが勃発し、くすぶり始めている地域も多くあります。国際社会では多くの国が軍事費を増やし、戦力拡大に走っている状況です。このような中で、日本国憲法前文の「平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う」ことの意義が今まさに問われているといえます。日本の国政は、やみくもに軍拡に走っているのが現状です。「名誉ある地位」は、世界の戦争への流れを受け入れることではなく、その流れを止める、あるいは積極的に押し戻すところにあるのです。同じく前文は「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言」しています。政府の動きが戦争に向かっているなら、主権者国民が戦争への流れを止めるしかありません。責任を問われるのは政府ではなく、そのような政府を選び、支持した主権者国民ということになるのです。
龍が握っている宝石のような玉(如意宝珠)がありますが、病を治したり、災いを避けたり、あらゆる願いが叶う玉だと言われています。平和憲法ができてから、国民年金、生活保護、国民皆保険、災害対策などの基本法ができました。いわば、憲法は「宝珠」の役割を果たしてきたわけです。しかし、現状では、主権者国民の年金は実質引き下げられ、医療費負担は上がるなど苦しんでいる中で、政府が軍拡に走って、税を含め国民の負担を重くしていこうとしています。軍事費負担のために主権者国民が苦しむ状況を是正しないでいると、憲法は「宝珠」ではなくなります。平和憲法は主権者が磨かなければ、ただの石になってしまうのです。
昨年末に辺野古新基地建設の設計変更申請に関する沖縄県知事の不承認に対して、国が起こした代執行裁判の判決が福岡高裁那覇支部でありました。米軍基地建設のために莫大な費用をそれこそ海に投げ捨て、環境を汚し、生物多様性を失わせています。代執行裁判で問われたのは、知事の地方自治や環境保護、県民投票の民意などを勘案して行った判断を、政府の独断で取消し、知事の代わりに国交大臣が設計変更の承認を実行するという、戦争放棄と地方自治に関わる問題でした。辺野古新基地建設に関して、沖縄県(民)は10以上の裁判を国との間で行ってきました(現在も進行中)。明治憲法と日本国憲法との形式的な違いは、第2章の憲法9条と第8章(92-95条)の地方自治です。今回、辺野古代執行訴訟で問われているのは、まさにこの2つが交差する問題に地方と地方住民がどう立ち向かうかということなのです。
イスラエルによるパレスチナへのジェノサイド攻撃は世界中から抗議の声が高まっている。すでに2万人を越える死者が発表され、行方不明者を考えると被害の大きさは計り知れない。これに対して日本国内でも抗議と停戦を求める行動が各地で行われている。首都圏でも「パレスチナに平和を市民緊急行動」が組織され、イスラエル大使館前や街頭での連続的行動が行われている。11月10日の渋谷駅周辺では4000人のデモ行進をして沿道から多くの共感を得た。12月10日は国会正門前の抗議行動に1500名が集まって、パレスチナの平和を求める声を国会に示した。12月16日はアメリカ大使館近くで抗議行動が行われ、「アメリカ大統領ジョー・バイデンさま」宛ての要望書を大使館門前で読み上げて届けた。12月22日は外務省前で上川陽子外務大臣に対してイスラエルの蛮行を直ちに止めさせることを求める決議を読み上げた。
2023年12月16日
アメリカ合州国大統領
ジョー・バイデンさま
イスラエル政府と軍によるガザ市民へのジェノサイドを直ちにやめさせ、人道的緊急援助の実施、占領地への入植と領土併合の撤回、中東における公正で永続的な平和を実現するよう求めます
世界中の人びとと私たち日本にいる市民は毎日、イスラエル軍がガザの市街地、住宅、病院、学校、難民キャンプなどを空爆や砲撃などで徹底的に破壊し、多くの民間人を殺傷し続けている行為を目にし、ガザ市民や国連機関、国際協力NGOなどからの悲痛な声を受け取っています。ガザ市民の死者はすでに2万数千人を超え、新生児を含む子どもたちの犠牲はその4分の1を上回っています。あなたは、このような大量殺戮がイスラエル政府には許されると考えているのですか?
たしかに、ハマスが10月7日にイスラエルを攻撃し、多くの人質を取ったことは、決して平和をもたらすものではありませんが、この事態の根本的な解決には、グテーレス国連事務総長の演説のような視点と理解が必要です。しかし、ネタニヤフ政権はハマスの攻撃を口実に、ガザ全域の壊滅と市民の無差別殺害によりガザ地域から人びとを排除し、イスラエルによる占領と完全管理下に置くという目標の実現に最大限利用し、国際社会の大多数による「即時停戦」を求める声を無視して軍事作戦を強行し続けています。これはもはや「自衛権の行使」を大きく逸脱し、国際人道法や戦時国際法の原則をも踏みにじる「民族浄化」、「ジェノサイド」にほかなりません。国際社会は協力して、ネタニヤフ政権の蛮行を直ちにやめさせる責任があります。
合州国政府は、イスラエル政府の行為を常に擁護し、軍事的にも資金的にも最大の支援国であることからも、ネタニヤフ政権の蛮行をやめさせる最大の責任を持っています。国際の平和と安全の確保を基本任務とする国連安保理で、合州国政府は常任理事国の特権を用いて「人道的停戦」の決議案に反対を繰り返し、ごく短期間の「休戦」だけを実現させ、ネタニヤフ政権の犯罪行為の継続を事実上容認してきました。あなたの政府のこの姿勢は、世界中の人びとの失望と非難の声を呼び起こしています。「USAは、人命や人権、正義や平和を言葉で唱えるだけで、真剣には実現しようとはしていない。むしろ殺人と破壊の『共犯者』だ」という声です。もし、あなたがこのような政策を続けるなら、イスラエルと同様の領土的野望を抱く他国に対し、「正義や国際法は自分の都合に合わせて解釈し、必要なら無視してもいい」というシグナルにもなるでしょう。
いま私たちは、あなたとあなたの政府に次のことを求めます。
「パレスチナに平和を!緊急行動参加者一同」
2023年12月22日
外務大臣
上川陽子さま
10月7日のハマスのイスラエル奇襲攻撃に対すると称してイスラエル政府と軍がガザで行っている「ハマス殲滅」作戦は、民間の市民に2万人を超える死者、5万人を超える負傷者、8000人もの行方不明者を出し、その中には多くの子どもや女性、高齢者が含まれ、犠牲者は今も増え続けています。その実態は、民間人の保護を命じる国際人道法や、2回の国連総会の決議の精神も踏みにじるもので、世界中で「ジェノサイドだ、即時停戦を」という声が上がり、それが大きな国際世論となっています。
上川外相が主宰されたG7外相会議の共同声明では、イスラエルの自衛の権利は「国際法に従う」ことが前提とされ、「一般市民の保護、および国際法、特に国際人道法の遵守の重要性を強調」していますが、国連事務総長は、イスラエルのガザ侵攻は国際人道法違反と指摘しています。しかも、国際司法裁判所は2004年、非占領地からの脅威に対して占領国は自衛権を行使できないとの意見を出しています。しかし、あなたは「イスラエルに対して一般市民の保護や国際人道法を含む国際法に従った応答を要請してきた」と言うだけで、国際法に違反するとの認識を示していません。これは事実上、イスラエルの行動を容認するシグナルにほかなりません。また、共同声明では戦闘の「人道的休止」を支持しましたが、それは短期間に終わり、ガザの惨状はさらに深刻化しています。双方とくにイスラエル政府には「即時停戦」こそ求めるべきです。
また、G7共同声明では、イスラエルとパレスチナの双方の人びとが「安全で、尊厳があり、平和に暮らすための平等な権利を有する」と明言し、「ガザの悪化する人道危機に対処するための緊急行動をとる必要性を強調」し、「食料、水、医療、燃料及びシェルターを含む一般市民のための妨害されない人道支援並びに人道支援従事者のアクセスを可能としなければならない」と指摘しています。しかし、ネタニヤフ政権は、これらすべてを無視して、住宅をはじめ病院や学校、教会、難民キャンプを含むガザ全域への空爆や砲撃、市民の射殺を続けています。その実情は、ガザ市民からの直接の報告だけでなく、国連の関係諸機関や国際人道支援団体、世界中のジャーナリストからも日々具体的に伝えられています。日本政府として、明確にイスラエル政府に対し、このような非人道的作戦を直ちにやめるよう要求し、ガザの市民と国際支援機関・団体への資金・物資の提供や専門の支援要員の派遣を緊急に行うべきです。
さらに、イスラエルはヨルダン川西岸地域でも、パレスチナ人を襲う入植者を武装化し、抗議するパレスチナ人への武器使用や大量逮捕を行っています。占領地への入植や領土併合は明らかな国際法違反です。これらに対しても日本政府として明確に批判し、パレスチナ住民への暴力を直ちにやめさせ、入植と併合を撤回させるため、具体的な外交的・経済的な制裁措置を含む行動をとるべきです。
私たちは日本政府がイスラエルともパレスチナとも外交関係を有していると承知しています。またご案内の通り「全世界の国民がひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有すると確認する」との憲法前文および平和主義の第9条を持つ国として、米国の顔色をうかがうのではなく、「即時停戦」に積極的イニシアティブを発揮し、以下のような実効的な措置をとることを求めます。人びとの生命と尊厳、中東の公正で永続的な平和の実現のために。
「パレスチナに平和を!緊急行動」参加者一同
高田 健さん(許すな!憲法改悪・市民連絡会共同代表)
(編集部註)11月25日の講座で高田健さんが講演した内容を編集部の責任で要約したものです。要約の責任はすべて本誌編集部にあります。
昨日今日あたりの新聞に出ていたと思いますけれども、多分立憲の野田佳彦さんが言ったんですかね。「今の政治状況は2009年の政治状況に非常よく似ている」。2009年、あの民主党政権が誕生した時です。自民党の支持率や内閣支持率が暴落して、政治を変えたいという世論が圧倒的に大きな声になっていた。あの選挙は投票率が69%ですね。今考えるとちょっと考えられない。今の選挙はよくて40何%、ああいう選挙の中で政権交代が起きて民主党政権が誕生しました。安倍さんは「悪夢の民主党政権」と言いましたけれども、それは安倍さんだから、安倍さんから見て「悪夢」であって、私たちから見るとそのあとの安倍さんの時代というのは「悪夢の安倍政権」だといいたくなります。民主党政権時代、なにか安倍さんの言葉にのってすごく失敗が多かったような印象だけが残されています。必ずしもそうではない。農業問題でも、教育問題でも、いろいろな問題でかなりやれた。あるいは、あの東日本大震災が、果たして自民党政権の下でどの程度抑え込めたのか。菅直人が果たした役割は本当にマイナスなのか。いろいろな検証をするとあの民主党政権時代というのは、すごく大事な時代だったと思うんですけれども、それに似ていると。私はあまり野田さんは好きじゃない方ですけれども、野田さんはそういうことを感じている。
ほとんど岸田政権の支持率が20%台ですね。ということは60%から70%の人たちが「もう岸田さんの政権、自公政権は嫌だ」と思っているわけです。だから2009年と同じく絶好のチャンスなんですよね。問題はこの「いやだ」と思っている人たちを野党がちゃんと引きつけられるかどうか。それによって政治が変わるかどうかですね。この「いやだ」と思っている人たちが、いま行きどころがない。だからあの2009年の時と全く同じ状況ではないんです。2009年のときには野党に対する期待がすごく勢いがあった。だから一気にああいう大逆転が起きた。そこがちょっと違うけれども、しかし政権党に不信を持っているという意味では非常に似ている状況だと私も思っています。
司会からも話がありましたけれども、ウクライナにつづいてイスラエルですね。そしてビルマ、ミャンマーでは引き続き戦争が続いている。これは軍事独裁政権が誕生してアウンサン・スー・チーさんなどの民主政権を打倒した結果、いま内戦にならざるを得なくなっている。ひどいですよね。アウンサン・スー・チーさんはたぶん私とそんなに歳は変わらない。ところが彼女に対する判決は懲役30年ですよ。私はどうしたってあと30年も生きようがない。そういうでたらめな判決を下す政権の下で、ビルマの人たちも非常に苦しんでいる。そういうことが世界の各地で起きているんですね。戦争の時代が終わったかなと思い、冷戦が終わってこれからはもう戦争はないだろうと多くの人が思ったのとは逆に、やっぱり戦争の時代が続いている。悲しいことですけれども、私はそう思います。
そしてイスラエルでもウクライナでも、始まった戦争というのはなかなか終わらない。去年の2月にウクライナ戦争が起きたときに、あんな無茶な戦争がそんなに長く続くものかと私は実は思ったんですね。だって国連加盟国の一国に対して、どんな理由があろうと国境に軍隊を終結させて、ある日突然、特別軍事作戦だという名前で、戦争ではないという名前で攻め入ったわけです。かつての日本も同じことをやったわけです。満州事変、支那事変、いろいろなことを、これは戦争ではなくて事変なんだと、そういって実際には戦争をやっていった。そんなことは続くことがないと思ったら、もう間もなく2年になるかもしれない。
パレスティナのこの虐殺も、そう簡単に終わらない。昨日から停戦が始まった。4日間。しかしイスラエルの防衛大臣は、これが終わったらまた今までの作戦を始める。ハマスを全滅させる。そして徹底した「解決」をするといっている。4日間が過ぎたらまたジェノサイドが始まる。1日延ばしたいなら捕虜を10人返せとか、めちゃくちゃな話をしている。そういう大変な時期がいま続いていて、なかなか始まった戦争は簡単に終わらないということを実感しています。しかし今日来ている皆さんだけではなく日本でも世界でも大多数の人に聞くと、多分戦争は嫌だ、ないほうがいいと言う。自民党支持の人は、町で議論すると「俺は自民党だ」という人でも「俺だって戦争は嫌いだ」って偉そうに言いますね。みんな戦争が嫌いなのは当たり前です。何で戦争が起きるのか。これだけの人が戦争が嫌だといっているのになぜ起きるのか。
私の友人に飯島滋明さんという憲法学者さんがいるんですが、飯島さんがある集会でナチスのヘルマン・ゲーリングの言葉を紹介していて、そうだなと思ったのでその言葉を紹介します。ゲーリングはヒトラーの後継者と決まっていた人で、ナチス第2の幹部という人です。「普通の人間は戦争を望まない。しかし国民を戦争に参加させるのは常に簡単なことだ。とても単純だ。国民には攻撃されつつあるといい、平和主義者を愛国心に欠けていると非難し、国を危険にさらしていると主張する以外には何もする必要がないんだ。」とヘルマン・ゲーリングがこう言っていると紹介しています。この国でも誰に聞いてもみんな戦争は嫌だといっている。だけどそれをひっくり返すのは簡単だよ、とこいつは言ったんですよ。簡単かどうか、簡単にさせちゃ絶対いけないけれども、しかし戦争を望んでいる人はそう思っているんですね。「やれる」と。ちょっと麻生さんの顔を思い出してください。あの人はたぶんこういうことを考えている。ヘルマン・ゲーリングのことを学んでいるかどうかはわかりません。けれども、今はみんな戦争反対だなどといっているけれども簡単だよ、日本と中国の戦争に駆り出すのは簡単だよと、彼は思っている。だからああいう図太い顔をして政治をやっている。このことは、恐ろしいことだなと思います。
岸田さんは、今年の通常国会の施政方針演説でも夏の戦没者追悼に関係する行事の演説でも、日本近代の歴史について何度か言っています。近代日本にとって大きな時代の転換点が2回ありました。明治維新とその77年後の大戦の終戦です。かれは敗戦とは言わないんです。そしてくしくもそれから77年がたった今年、我々は再び歴史の分岐点に立っています。こういう彼の歴史観を言う。この歴史観はきちんと検討していかないといけない。彼はこういう歴史観に基づいて政治をやっている。明治維新から敗戦まで77年だった。あの敗戦から今年まで77年だった。そして今から新しい77年が始まると彼は言う。この「77」という数字には別に何の意味もないと思います。要するにそれくらいの幅があったとみていけばいいんです。
この岸田さんが言う明治維新から敗戦までの77年は、どういう日本だったか。琉球に対する薩摩の占領、支配、琉球処分があって、そのあとは台湾に対する日本の侵攻があって、そして日清戦争があって日露戦争があって、第一次世界大戦があってシベリア出兵があった。そして1931年には満州事変があって、1937年には日支事変といわれるあの盧溝橋事件があって、そして今度来る12月8日は対米戦争。この1回目の77年は、ざっと数えただけでも数えきれないほどの戦争です。日本は戦争に次ぐ戦争をやっていた。戦争をやっていない日本というのはほとんどありえないような日本です。しかし彼らの歴史から言うと、あれは事変だったから戦争じゃないというのかもしれない。いろいろな言い方はありますけれども、いま見れば戦争に次ぐ戦争の77年だったんですね。そして岸田さんのいうその次の77年、今年で終わった77年というのはどうだったか。
これは岸田さんが言っていないから私がいいます。戦争をやらなかった、日本が戦争を一度もやらなかった77年だった。前の77年と大違いです。もちろん厳密にいえば、そんなことを言ったって朝鮮戦争やベトナム戦争に加担したじゃないかとか、それはいろいろなことが言えます。しかし1950年に生まれたあの警察予備隊が、そしてその後に保安隊になり自衛隊になった。この事実上の軍隊が、憲法があるから軍隊じゃないと政府はうそをつきますけれども、この軍隊が外国に行って外国の兵隊を殺したことはない77年なんです。そして外国の兵隊から日本の軍隊も一人も戦争では殺されなかった77年。前の77年に比べると、天国と地獄ほどの違いです。大きくとらえると、明治からの77年とそれからの77年では大きな違いがある。そして岸田さんは、わざわざ今年から第3の時代に入るというわけです。その内容は説明しません。なにがいいたいとおもいますか、みなさん。これを考えるのが今日の一つの大きなテーマです。
明治維新からの77年、敗戦からの77年に続いて新しい77年が来る。そういっている岸田さんは何を考えているのか。ヒントは、新しい77年が始まる前、去年12月の臨時国会が終わった時に、岸田さんがたった19人か20人の閣僚で決めた閣議決定の安保3文書にあると思います。新しい77年になるにあたって国会を早々と終わらせて。こんな大事な問題だったら、延長して国会で議論すればいいじゃないですか。それを国会では議論せずに、そして次の1月の通常国会が始まる前の期間に、この安保3文書を決めた。決めただけではなくて米国のバイデンさんに報告に行っているんですね。バイデンさんに「結構、結構」と褒められた。それらを全部やり上げてから今年の通常国会ですよ。その通常国会の冒頭でこの77年の話をした。私は決して無関係ではないと思います。岸田さんの頭の中にはこの安保3文書がある。安保3文書に基づいて新しい日本を、新しい歴史をつくるんだ。私たちは、今そこに引きずりこまれている。
いま岸田さんが企てる新しい77年が進んでいる。安保3文書についてはいろいろな方が言っていますから詳しくは言いません。しかし非常に簡単に言えば、大事だと思うのは2点ですね。敵基地攻撃能力、途中で反撃能力と言い換えた。敵の基地を攻撃するみたいで評判が悪い。だからやられたらやり返す反撃能力だと言い換えた。これに象徴される専守防衛の破壊。これが安保3文書の第1です。第2はそれを支える財政的な支えです。そういう敵基地を攻撃する能力を持てる日本、これをつくるには財政が必要だ。今までGNPの1%とずっと言ってきた。1976年の三木内閣げ決めて以来日本政府の見解だった。だいたい憲法9条を持っていて防衛費があるということ自身が矛盾で、それは大問題です。でもそれは置いておいて、政府がそう言うんだから政府の言葉を借りて言えば、憲法9条の下でもGDP比1%くらいは持っても合憲だというのが三木さん以来の日本政府の伝統だった。それは中曽根さんのような好戦主義者の下でもとりあえず守られてきた。GNP、GDPというのは毎年増えていきますから、その1%といっても防衛費はどんどん増えてきたわけですけれども、ともかくもそうしてきた。
それを突然岸田さんはこの安保3文書の中で2%としたわけです。これは皆さん新聞で読んだと思います。ところが案外見落としている部分がある。正式に言うと「2%以上」と書いてある。2%以上の防衛費を持てる。「以上」はどこまで行くかわからないんですよ。しかし新聞はみんな「2%、2%」。アナウンサーも省略していうときは「2%と決めた」という。
これはとりあえず置いておいて、2%はご存じのように世界で第3位の軍事費大国になります。アメリカ、中国そして日本。ドイツもフランスもイタリアもそういう国々をみんな追い抜いて、軍事費を2%もつ日本にすることを岸田さんはこの5年の間にやるということに決定している。この2%でもって軍事大国になるというのが安保3文書のもう一つの大きな特徴です。だから当然、増税と出てくる。だから「増税メガネ」といわれるわけですよ。
すごく評判が悪くて「減税メガネ」といってもらいたいから、「減税、減税」「経済、経済」って一生懸命言いますけれども、そこはもうみんな知っているんですよ。そんなことは岸田さんに言われなくても、どうせこのあと増税をやるんだろう。軍事費増税をやるんだろう。だから支持率が20%台なんですよ。だからこの政権は危ないんですよ。野田さんが言わなくても、今の状況は本当に2009年に似ている。本当を言えば、我々にとってこの政治状況は絶好のチャンスなんです。もっともっとわたしたちが勇気100倍して政治を変えるために闘える、そういう時期なんです。
いままで自民党は専守防衛なら合憲だといってきた。安保3文書は専守防衛を壊す。私は専守防衛という考え方の中に、歴代の自民党政権には憲法についてのそれなりのリスペクトがあったと思います。憲法を変えようとしてきた連中が、それまで防衛費1%といってきたのはそれなりにリスペクトがある。ずっと歴代の自民党の首相たちは、憲法を変えて戦争のできる国にしたいと思ってきたんです。憲法を変える、改憲する、何のためか、それは戦争ができる国にしたいからだ。そういう考えがあったんです。安倍さんからこれが転倒する。先に戦争できる国にしちゃう。それに合わせて憲法を変える。これはもう憲法に対するリスペクトも何も、立憲主義も何もないじゃないですか。前は少しは立憲主義のかけらはあったかもしれない。今そのかけらまでなくなった。今の憲法は非常に都合が悪い。これがあるとせっかく安保3文書で戦争ができる国にしたのに、ちょっとさかのぼれば2015年のあの安保法制によって戦争ができる、集団的自衛権が行使できる、そういう国にしたのに、憲法がいまだにあれこれあれこれ邪魔するからいろいろと弁解をしなきゃいけない。
評論家の一部には「日本国憲法は死んだ」という人とがいます。しかしそれは間違いだし死んでいないですよ。死んだら変えようとする必要がないんです。こんなに必死になって憲法審査会を開いて、憲法を一生懸命変えようとするのは生きているからなんです。それは満身創痍、傷だらけです。しかしこの生きている憲法が邪魔だからこそ、岸田さんは憲法を変えようとして憲法審査会をやっている。あんまり簡単に「憲法は死んだ」なんていいなさんな。本当にそう思います。だからこの憲法、もっと生かして、もっと力を発揮できるような憲法にすることができたら、本当にいま戦争をやりたい人たちは嫌になる。そういう憲法になるんじゃないかと私は思うんです。
自分たちで決めておいて、自分たちが基準にしてきた専守防衛を、自民党は投げ捨てた。専守防衛その中で絶対やってはいけないことと、ずっと歴代の首相たちが国会の中で説明してきた、大陸間弾道弾は持っちゃいけない、戦略爆撃機は持っちゃいけない、それから攻撃型空母、航空母艦は持っちゃいけない。武器で言えばこの3つに象徴されるような武器を持たないことが専守防衛だと説明してきたんです。これはみんな敵を攻める、そういう武器ですから。今はどうですか。この3つ、すでにみんな持ったじゃないですか。航空母艦も持っている。大陸間弾道弾あるいは島嶼防衛用の高速滑空弾、そういうものも持つんですね。低空飛行して、滑空して相手を攻撃していく。そしてスタンド・オフミサイルといって、自分から相手に届くけれども相手から自分には届かない、そういう距離でのミサイル。それをつくることによって、こちらはやられないで相手をやる。すごく都合にいいミサイルですけれども、そういうものを持つようになった。専守防衛ではこういうものは持たないといってきた。いつの間にか日本は三拍子そろって持つようになってしまった。とんでもない国になってきたんです。
ただ、専守防衛を壊した岸田さんたちの考え方の中には、日本がそういう武器を持てば相手は攻めてこられないという論理があります。「抑止力論」といわれます。強い武器を持つことが抑止力になる、戦争を防ぐと彼は説明するんですよね。本当にそうか。岸田さんが言っているようになりますか?そんなことはありません。こっちが持てばあっちも研究する。あっちが強くなればこっちはもっと強いのを持とうと思う。ますますお互いに武器をさらに精鋭化し強力化し、その連続じゃないですか。これを「安全保障のジレンマ」と説明する人がいます。本当にジレンマですよ。岸田さんはそうやることが日本の防衛に役立つといっていますけれども、それは役立つどころか逆に日本を一層危険にさらします。
沖縄の人たちはおととい大きな集会をやりました。東京でも国会正門前で大きな集会をやった。島々の人たちの代表が東京まで来て訴えていました。「ガザの事態は他人事じゃない。南西諸島に住む私たちにとっては他人事じゃないんだ」と。最近も沖縄でJアラートが鳴った。朝鮮の人工衛星が飛んだといって。日本政府だけはいまだに人工衛星だといわないで、何か物体が宇宙の周りをぐるぐる回っていると説明している。アメリカも中国も他も人工衛星と言っているのに、認めたくないんですよね。朝鮮が軍事用のミサイルを発射したからとんでもないと言いたい。Jアラートで日本に落ちてくるかもしれないといいたい。そんなことまでやるけれども、Jアラートなんて本当に現代においては考えもつかないような、ばかばかしいことを大人がやっている。頑丈なビルに逃げろと言ったって、うちの島にはそんなものはないよといっている人がいました。そういうことをやりながら、日本政府は軍事力を整えていこうとしている。この軍事力を整えていけば、行きつく先は戦争だというのはいうまでもないと思います。
大事なことは抑止力論ではなくて「平和のために大事なことは安心供与だ」。実は憲法9条というのは、安心供与の典型的な条文なんです。どういうことか。相手の国に、日本は攻めることはないよ、日本からあんたの国に戦争を仕掛けることはないよ。少なくともこっちからはやらないよ。それを憲法で保障しているのが9条じゃないですか。これは相手の国にとってはほっとしますよ。明治から1945年まで戦争に次ぐ戦争をやってきたあの日本。アジアの人たちはやっぱり疑っていますよ。平和憲法を持ったというけれども本当かいな。疑っているんですよ。一方ではよかったと思いながら、そう思っている。このアジアの人たちに対して、私たちはこの憲法9条を守っていく、そういう国になるんだと、繰り返し宣言していくことが安心供与なんです。私はこれが日本の平和と安全を考えるときには一番大事なことだと思います。それが憲法に書いてあるわけですから。
ところが岸田さんは、そういう安心供与ではなくて安保3文書をつくった。その中に外交問題に対する記述というのはほとんどない。外交問題は安心供与が最も大事な、日本の平和と安全を保障することだとしたら、それを全面的に書くのが本来の安保防衛文書じゃないですか。そうじゃないところが岸田さんのたいへんなところです。だから現実には戦争をする国、戦争のできる国をどんどん作りながら、これをもっともっとスピードを上げてつくらせるために邪魔になる憲法を変えようということで、今一生懸命やっているわけです。
岸田さんは、もともとは自民党の宏池会の会長です。自民党の宏池会というのは池田首相以来、日本の自民党の中では保守リベラルといわれた派閥です。自民党の中では特異な派閥だった。
この派閥の会長を引き受けた岸田さんは、自分が総理大臣になるには第4派閥の宏池会だけでは足りないので、第1派閥、第2派閥、第3派閥の支持を得て、首相になりたいために保守リベラルだった宏池会の主義主張というのを簡単に捨ててしまったんですね。これは自民党にとっても不幸だと思いますよ。今まで自民党というのは幅の広い政党といわれて、リベラルから中曽根さんのような派まであったわけですね。いまはみんな安倍派みたいになってしまった。麻生さんの派にしても、みんなそうなってしまった。岸田さんが率先して、です。総裁選挙をやるときに彼が公約をしたわけです。自民党の改憲4項目は私が実現する。それも自分の任期中に。総裁任期は3年です。この3年の間に実現をすると確約して首相になった。来年で任期が来る。だから岸田さんは河野さんなんかより圧倒的な多数で支持を得て首相になれた。自分が権力者になりたいために自分の派閥の伝統的なイデオロギーまで売る。本当に悲しい人間だと思いますね。こういう人に政治をやらせるわけにはいけないんです。ピンチになってきたときに、繰り返し任期中に改憲をやりますと繰り返し言うんですよ。そして党内から支持を得て、何とかこんなに支持率が悪いのに首相でいたいと思うんですね。
宏池会の伝統はどこに行ったんだ。宏池会の前の会長だった古賀さんは憲法9条を守っていくという単行本まで出している人ですよ。そういう派閥の古賀さんから会長を引き継いだ岸田さんが、ころっと転向してしまった。そしていま、この安保3文書も勝手に首相が前に進めようとしている。いつの間にか「ハト」が「タカ」になったといわれますけれども、タカ派になったことだけは間違いないと思います。そして自民党の言う改憲4項目を、自分の任期中にやる、やるとずっと言ってきた。とうとう日にちが過ぎて、もう来年の9月が任期になったんですよ。あと1年もなくなった。
それで野党――野党というんじゃないですね、維新の会、国民民主党-、国会で聞いていると、この人たちが攻撃の急先鋒です。「岸田さん、間に合わないじゃないか」、「あと何か月しかないじゃないか」、すごく鋭い攻撃をします。実際に憲法を変えるとしたら改憲手続法、いわゆる国民投票法によって計算をすると、これこれこれこれの手続きがあって日にちがこれだけかかる。ずっと計算しても来年の9月にはどうみても間に合わない。「あんたはやるやる詐欺か」とまで言うんです。私も随分前から、少なくとも維新が言う前から、岸田さんはこのままいって改憲には間に合わないといってきました。あと1年もないのに。間に合わないんです。
自民党の人たちは心配になって、この前まで憲法審査会にいて今は外務大臣の上川さん、上川さんは会議で「任期中というけれども、そのあとも当選すれば、総裁になればまた任期だ。だから必ずしも来年の9月じゃないんですよね」という意味のことを言って、岸田さんにメッセージを送りました。去年です。そうしたら岸田さんは、「そんなことはない。今の任期である」と、わざわざ記者会見で言った。それでまた1~2か月前の憲法審査会で、維新と国民民主党がもう時間が足りなくなった、どうするんだと迫った。そうしたら、今度は自民党の憲法審査会の代表になった中谷元さんという人が、上川さんと同じことを言いました。自分の考え、私見であるがと言って、来年9月を終わっても総裁をやっているかもしれないから、「任期中」とは、べつに来年の9月と決まったことではないと。議事録にもきちんと載っています。そうしたらまた即、岸田さんはこれをひっくり返すんですね。意地で言っているのか何で言っているのかわかりませんが、あの人の頭の中がどういう構造をしているのかわかりません。とにかく、せっかく上川さん、中谷元さんが助け舟を出したのに「そんなことはない、来年の9月だ」というんです。
任期中の改憲というのはどんな計算しても間に合わない。ご存じのように安倍さんが言っていたことですね。安倍さんの当時の任期は2021年だった。おととしだった。ところが2020年になってもこのままでは改憲ができそうもないと安倍さんは見たんですね。間に合わないと。そして世の中はコロナ。コロナに対する対策も「アベノマスク」程度しかできなかった。何もできない。自分が政治生命を賭けた任期中の改憲にも、もうあと1年しかなくなった。だめだ。だから彼は政権を放り出したんです。岸田さんは、この安倍さんよりも見通しが悪いじゃないですか。安倍さんは1年前に投げ出した。今は1年ないんです。それでも投げ出さない。何だろうこの人はと、私は見ていて思いますね。
ついこの前まで何を考えているんだろうという中に、一つのヒントを見つけていたんです。それは維新です。総選挙をやって維新がもし野党第1党になったら、あるかもしれないと思いました。国会の会議というのは、例えば憲法審査会などは、どういう議題で今日はどう進めるか。これからどうやっていこうかと憲法審査会の相談をするときに、幹事懇談会というのがあります。この幹事懇談会で運営を決めます。この幹事懇談会に、どういう議題を図ってどういう案を出すかというのは与党第1党の筆頭幹事と野党の第1党の筆頭幹事が話し合って決めるんです。この両者が2人で相談したことは、幹事懇談会でほとんど通ります。みんな自分のグループですから。それでずっと運営してくる。野党第1党というのは、野党ってそんなに力がなくどうしようもないように見えますけれども、一応民主的な格好をつけて国会を運営する上では、野党第1党というのはものすごく大事です。立憲民主党も人によっては本当にだらしのない、腰の定まっていないとか、いろいろ批判があるかもしれません。しかしこの間の憲法審査会ではできるだけ抵抗してきた。本当に抵抗したとも思えないところもなくはないけれども、しかし結構抵抗してきたのは、立憲がやっぱり野党第1党として邪魔でしょうがなかったんです。これがもし維新に代わったら、こんないいことはないんですよ。
だって維新自身が「改憲突撃隊」というし、第2自民党というんですから。第2自民党と第1党が相談をして、改憲をしたい人と「改憲突撃隊」が相談をしたら、どんなことができちゃうかわからないですよ。しっちゃかめっちゃかな乱暴なことだってできるかもしれない。なんと言っても多数を持っていますから、あまり格好をつける必要はないということになれば、やれるんです。だから私はこれは非常に怖い。維新を野党第1党にさせるなと、「週刊金曜日」に書いたことがあります。維新を野党第1党にしたら大変だ。幸か不幸か選挙は先にずれましたから、ずれた部分だけ岸田さんにはまた日にちがなくなった。来年の1月に冒頭に解散するかな。あるいは4月に解散するかな。そこら辺に解散して万が一維新の会が野党第1党になったって、もう間に合いませんよ。維新の会は、一時の飛ぶ鳥を落とす勢いを失って、支持率が結構下がり始めている。数をそろえるためにあれだけ猫でも杓子でもみんな集めて候補者にするから、ろくでもないことをやるやつがいっぱい出てくるのは避けられないですよ。看板にしていた大阪万博だってもうお手上げ。いくつもの国が引き上げるといっている。大阪万博の会場で、日本の見本市を適当にやるくらいしか後は残っていない。これを看板にしてきた維新の会は、これからもなかなか大変だというところですね。
いろいろな角度から見て、岸田さんの立場に立って考えてやっても、方法がなかなか見つからない。今年は後2回しか衆議院の憲法審査会をやる時間しかありません。来週やる議題ももう決まっている。そうするともう1回しかない。改憲の原案をつくるなんて、およそできないです。間違いなくできないです。どうするんだって、本当に岸田さんに聞きたくなるんですね。多分突っ張るところまで突っ張って最後に「いやーできなかった」って投げ出すという手もなくはないです。そういうのを見ている自民党の幹部も結構いそうです。だんだん岸田さんから離れだした。特に保守派の連中が岸田さんから離れだしている現状です。改憲、加憲といいますけれども、岸田さんにとっては安保3文書のような日本をつくるという目的にとっては、本当に改憲は必要です。
では一般的な有権者、市民から見てそんなに改憲が必要なんですか。「改憲が必要だ」と一生懸命に思っている人が、この国の中でどれだけいるんでしょうか。岸田さんの政治に何をやってもらいたいか。2個以上選択自由にしてアンケート調査をやっても、「改憲」といった人は4%ですよ。アンケート調査で1個だけ選んで「改憲」と入れた人が4%いたんではないんです。複数回答でいい、「経済」と「外交」と「改憲」といってもいい。そういう世論調査をやっても「改憲」というのは4%しかいないんですよ。もっと今の政治にやってもらいたいことはいっぱいあるんです。そういう状態の中で、さあ岸田さん、本当に突っ走るんですか。私が冒頭に言ったように、やっぱりこの国は攻撃されつつある、危ないよ、ということで逃げるくらいしかもう手は考えられない。もしかしたらあの人の頭の中にはそういうことしかないと思うんです。ずっとこの20年以上調査をしてきても、憲法一般を変えるかどうかという世論調査は別として、9条を変えますかということに対しては変えない方がいいということがいつもデータをとっても多いんですよね。そして憲法を変えてもらいたいという人はたった4%。こういう中で改憲に本当に踏み切るんですか、そういう問題があります。
ただ新聞はいろいろなことを書くので私は本当にまずいなと思っていて、これはマスメディアのミスリードだと私がいっている問題があります。来年9月と任期が迫っているから逆算して考えるんですよ。これは維新も考えるし国民民主も考えるだけではなくて、マスメディアもみんな計算します。本当にできるかな、岸田さんはと。そういう計算の中で非常に危ないのは改憲手続法-国民投票法といわれている法律があります。これは、できるときにみんなで反対運動をやった法律です。この改憲手続法の中に、国会が改憲を発議したら、国会が3分の2の多数で改憲案をつくったら、それから60日から180日のあいだ告知期間をおかなきゃいけない。国民に広く知らせ、考えてもらう時間をおかなかればいけない。不思議な法律ですよね。憲法の法律で60日から180日、こんなでたらめな期間を定めた法律があるんです。ところがマスメディアがいつも言うのは、計算するときこの60日で計算するんです。これでやると9月に間に合うかもしれない。
憲法学の長谷部恭男さん、いま早稲田にいます。あの人がずいぶん前に出した本の中で、国民投票運動期間というのは最低2年が必要だと言っています。岩波新書で書いている。私らも似たようなことを、1998年ころからずっと言ってきています。最低限それくらいなかったら、憲法9条を変えるか変えないかを多くの有権者が考えて投票できない。国民投票というのはだいたいどういうことをやるかというと、投票所に行って〇×をつけるような裁判官の審査みたいなものなのか。そうではなく、いろいろな面倒くさいことがあるんですよ。そういうやり方をみんなが理解して、なおかつ投票所に足を運んで投票するには、日本は一度も国民投票なんてやったことはないわけですから、2か月やそこらで済む問題じゃないんですよ。ところがマスコミは間に合うかどうかという話になると、必ず2か月というんです。おかしいんですよ。
何でこういう2か月から半年というあいまいな基準をつくったかというと、理由があります。憲法を変えるにもいろいろある。本当に部分的な大した問題じゃないこと、誰にでもわかりやすいこと、ここのところは直しておこうね、なんていう問題があるとしたら、これでやるなら事務方の人が国民投票の準備を必死でやる。国民投票の準備をするのは、これは大変だと思いますよ。国民投票を1回やるのに700億円、800億円、900億円くらいかけて国民投票をやるけれども、それをやるために最低事務方の努力は2か月必要だろうという数字です。公務員さんたちが国民投票の準備をする。そのためには2か月は必要だろうということで、法律をつくった時に2か月といったんです。もうひとつの180日というのは何か。憲法の根幹にかかわるような問題で改憲を提起するときは、やっぱり日にちがいるよね。そうだ、そうだということで、あの人たちは2か月から6か月という奇妙な法律をつくった。私たちはずっと反対だったんですよ、そんなに簡単にやってもらっちゃ困るということで。でも多数決で採決されて、いま生きている法律はそれです。マスメディアは本当にとんでもないことに2か月でいつも計算する。だから何かできそうな雰囲気になるんです。
今から2か月、国会で強行採決をやって、さあ改憲案をつくった。そこから2か月、これで改憲どうですかという2か月で国民投票をやる。こういうことになると3~4か月か5か月もあればできる。だからまだ来年になってもできる。そういうことを書くメディアがあるんです。私は本当にとんでもないと思う。百歩譲ってそうだとしても、それ以外に憲法の改正、改悪のためにはやらなければいけないことがたくさんある。国会で大変な議論をしなきゃいけない。憲法の改憲原案をつくるといっても、どういうふうに変えるのか、言葉はどういうふうにするのか、これをどういうふうに説明するのか、議論しなきゃいけないことがたくさんある。
そして憲法問題はこれまでの2000年にできた憲法調査会以来の伝統で、国の予算とかそういう大変重要な、国会の一番大事な仕事は予算案をつくることですから何をさておいてもこれをやる。このときには憲法審査会、調査会は開かない。この間そういってきたんです。この20何年間の大半はそうです。安倍さん以降、岸田さんになってからちょっとその原則を崩しているところはあるけれども、この前の国会でもう一回それをひっくり返した。予算案審議をやっているときにはやっぱり憲法審査会は開くべきじゃないという立憲民主党の主張が通って、そこに戻った。来年1月から3月まで、この期間は国会で予算を議論する時期です。本来ここで憲法審査会を開いている暇はないんです。だから日にちがありそうに見えても、まず2~3か月はだめになる。そうこうしているうちに連休になる。ゴールデンウィークは憲法の議論はしない。国会はお休みになる。なんのかんのいって、どう計算しても2か月の最短でいっても来年の9月には間に合わない。
だからマスメディアは、何でそういう当たり前の、誰が考えてもわかることなのに平気でそういうことを書くのか。
メディアの退廃というのは本当に思ったよりひどいです。嘆いていてもしょうがないですね。すごく大事ないい記事を書いて頑張ってくれている記者がいます。そういう記者たちが一生懸命になって、この腐った新聞社の中でもたたかって、もう一回何とかできないかと努力している。それはできるだけやってもらいたいと思うんですね。しかし岸田さんのこんなでたらめな、2か月から6か月の話ひとつみてもおかしい。こういうことについて、もっとメディアはたたかうべきだ。この声を私たちがしょうがないよとあきらめて言わなかったら、ますますだめになります。
麻生さんは台湾に行って、「戦争をやる覚悟をしろ」と言ったんですね。あの人は現場でやらないから、人に覚悟しろなんてよく言えたものだと思うけれども、あの人が台湾に行ったらこのくらいのことを言うというのは誰でもわかっていることですよ。岸田さんだってわかっていたんですよ。麻生太郎がいま台湾に行ったら何を言うか。中国を挑発して、日本は戦争をやる覚悟をしている。そういうことくらい言うのはわかっている。だから麻生さんは言っていましたよ、これは岸田さんの了解を得て言っていると。ということは岸田さんがそういう考えなんですよ。いまの岸田さんというのは、繰り返しますが宏池会の会長だったのに安倍さんより悪い。安倍さんより好戦的だ。安倍さんより戦争の準備をする。いつのまにあんたはそうなったんだ。そんなに権力がほしいのか、やっぱり言わなきゃいけないですよ。それで自分で誇りに思っている。歴史的なことやる。今までの人ができなかったことやるんだ、そういうことをやりたいのが、新しい77年の岸田さんの今の覚悟なんでしょうか。
6割、7割の人が岸田さんに見切りをつけている。こういうときにこの人々を、私たちと一緒に戦争反対、憲法を変えちゃいけないと巻き込めるのか。アジアの各国と仲良くしろ、いろいろな意見の違いがあったって、相手の国も私たちの国も引越しをするわけにはいかない。お前らのところと口を利かないよと言っているわけにはいかないんだから、道は仲良くする以外にはない、平和共存以外にないんです。どうやって仲良くするかということを考える以外には私たちにはない。7割、8割の人が岸田さんはもうだめだと見くびっているときに、なぜそれが野党の方に来ないのか。私は野党に大きな責任があると思います。一時期よりは少しは野党の支持率も上がってきている。だから全く駄目だとは言いませんけれども、今の野党の状態では、やっぱりみんな政治から離れるしかない。政治家なんてそんなもんだと言うしかない。多くの人の気分はそうだと思うんですね。
若者から見ても、岸田さんの支持率はすごく低いですね。みんな若者は政治に関心がないといいますけれども、そんなことはないんですね。岸田さんは悪いというのは、若者が一番多いですよ。でもそういう人から見て「じゃあこっちがいいかな」と思う、2009年のときに「じゃあ民主党がいいかな」と思わせた、ああいう民主党すらないんです。これは作らなきゃいけない。本当はできそうだった。2021年の選挙で、野党と市民が共同して新しい政治をつくる。これは結構魅力的だったんですよ。一つの野党では勝てないから野党は団子になって共通の政策を掲げて、そして今の自公政権を倒そう。その時は国民民主党も入っていた。
2021年の選挙、もしかしたらってあの当時言われた。共産党が閣外協力をするような形で政権交代が起きるかもしれないといわれた。これは大変だということになったんですね。戦後はじめてのことだ。こんなことを許すわけにはいかない。自民党右派の右派バネがものすごくききました。言葉は何ですか、「立憲共産党」。うまいものだなと感心してはいけないけれども、そう思いましたよ。なんだか電通が作ったという話があります。さもありなんと思います。この言葉一つで日本が共産主義国になる。当の共産党はそういっていないのに、共産党は、自分らは今日本に社会主義とか共産主義を実現しようなんて思っていない。今の悪政でほかの政党と一致する課題だけで、そこを変えたいと繰り返し言っているのに、「立憲共産党」なんですよね。見事なキャンペーンだった。そして連合が、共産党と一緒になるような政党は応援しないぞと脅しにかかる。そういう中でせっかく作ってきた市民と野党の共闘は残念ながら壊されました。
もっとしっかり作っておけばよかったんでしょうけれども、市民と野党の共闘というのはやっぱりガラス細工のようなところがあるんですよ。はらはらしながら話し合いをしたり、まとめたりしている。結構気を使いますよ。これを言ったらあっちの党が怒るんじゃないかなとか、こういうのはあっちの党のためには言えないなとか、いろいろなことではらはらしながら野党との話し合いをしているんですよね。だらしないと言われればごめんなさいというしかないけれども、現状はそうなんです。でも市民と野党の共闘は作った方がいい、政治を変えるというのは作った方がいい。
あの「悪夢の民主党政権」のときだって、農業政策がずいぶん変わったでしょう。教育政策も随分変わったし、原発政策も変わった。もう少し時間を与えれば、もっと今の野党はいい仕事をすると思うんです。共通するところだけで、意見が違うところは留保しておいたらいい。それはできると私は思います。もう1回、壊された市民と野党の共闘を再建できるかどうかというのが、この1年以上の市民連合にとっても大きな課題でした。全国にもたくさんの市民連合があるし、全国でいろいろな人々がいろいろな形で個人も含めて声を上げている。政治を変えよう、何とかしようと声を上げている。
そういう声はやっぱり反映するんですよ。だって街角に一人で立って戦争反対だといい、安保3文書に反対だといい、ガザを攻撃するなと立っている。そういう市民がいっぱいできてきたんですね。余談ですが、私が若い時こういうエピソードがありました。通勤のときに、ゼッケンってあるでしょ、前と後ろに文字を書いて肩からぶら下げる。あのゼッケンに「ベトナム戦争反対」って書いて、家からずっと会社までつけて通勤している人がいるというのがすごく話題になった。私も偉い人がいるな、俺もできないかな、なんて思いながらその記事を見ていました。ということは、そういう人がほとんどいなかったということですよ。いまは全国にやたらいるじゃないですか。みんな一人でも、言わなくちゃいけないことは言う。通勤でゼッケンつけている人と同じですよね。駅の前に立って、繁華街に立ってみんなに訴えている。私はこういう力がすごく大事だ、こういう力に依拠してもう一回、市民と野党の共闘を作り上げないといけない、再建しなければいけない。これが今度の選挙までに間に合うかどうか。そのことが私は非常に大事だと思います。
今日の最後のページに資料を持ってきました。来週くらいに野党各党に渡す文書です。これで野党の皆さん一緒にやれませんか、こういう方向は共通の問題として、そのほかいろいろ意見の違いがあってもいいですよ。でもせめてこの5項目くらいで一緒にやれませんかと提案しようと思っている文書です。これはなかなか難しいんですよ。みんな政党それぞれ綱領があって政策があって、政策が違うからこそ政党がある。それが皆さんに支持を訴える。その中で共通の政策をつくるというのは、政党の皆さんにとっては私たちが考えるより相当に大変なんですね。うちの特徴がなくなっちゃう。いま何とかこれでやりたい。これで野党のいくつかがきちんと合意できたら、候補者を一本化してもらいたい。
私は何回か前の選挙では全国の選挙区で候補者が一本化できたらいいなと思って、その努力をしていた時期があります。今はあきらめました。でも頑張れば勝てそうなところで一本化する。過去の得票を計算すれば、それはわかるんです。頑張れば勝てそうなところで一本化する。ちょっと頑張っても自公にこの選挙区は追いつかないな。そういうところでは自由に自分の党の宣伝をやって、比例区の選挙をやってほしい。そう今は思っています。前はみんな一緒になれと言ったけれども、今はそういいません。そういうところは独自候補を立てろ、どんどん支持者に訴えろ、言いたい事ほかの党に遠慮しないでどんどんやったほうがいい。
有力な選挙区と各党が頑張る比例区とで合わせて、どんなに最低でも改憲を阻止する。3分の1取ろうというそういう方針に市民連合は転換しています。共通政策で一本化するところはまじめにやっていく、別のところでは自分たちの候補者を立てる。そういう選挙をやったら、もう一回力強く人々の前に映る状況が作れるんじゃないか。少なくとも今のあの岸田さんの政党よりはいい。そういう状態を、これなら変わるかもしれないと思う状態をつくれると私は思うんです。壊された、市民と野党の共闘を再建するための最後の段階に来ています。再建できるかなと今は思っています。その政策がこれです。
これを一つ一つ見ると不満がいっぱいあると思うんです。例えば今日、千葉で講演した時、消費税をなくすと書いていない、減税するとも書いていない、どうしてか、と言われました。それからもっと前、市民連合の仲間内で検討しているときは、この案に農漁民の問題が入っていない。都会の頭で考えてはだめだ。私の県は3分の2が農山漁村だ。人口は少ないかもしれないけれども、この人たちに訴える政策がなければ私の県はたたかえない。そんな議論もやりました。これは入れました。いろいろな議論をしてきてようやく作り上げたのが、とりあえずこれです。まだ完成分ではないから、公にしてもらっては困ると言いながら皆さんにお示ししています。そういう前提で見てください。
たしかに消費税のことは書いていないんですね。税金のことはどう書いてあるかというと、物価高、燃料高騰、円高、不公平税制を放置せず市民の生活を守る経済政策を行う、という中でインボイス制度の廃止とか逆進性の強い税制の是正と、社会保障、保険料負担の適正化と書いてある。税金の問題で各党の合意点をつくろうとすると、これがいまのところ精いっぱいなんですね。立憲民主党は、いい加減に考えて消費税ゼロというのは同意していないわけじゃないんです。あの人たちの理論があり、あの人たちの路線があり、あの人たちの確信があって、いま消費税ゼロとは言わないんですね。例えば共産党や社民党、れいわは、消費税をなくせと言っている。これもその党なりの理論があって路線があって消費税をなくせと言っているんですね。それらと共闘するときにどういう風にしていくか。精一杯の合意点がこれなんです。
批判するのは簡単です。ところが立憲民主党から言わせると自分たちの考え方もわかってくれと言いたいんですね。あまり同情する必要もないと思っているけれども、しかしちゃんと路線がある。北欧型の福祉国家をつくりたいという、その理想があるんですよ。現実に高い消費税も含めて福祉国家をつくっている国々もないわけではない。そういうことを目指している勢力と、そうではなく消費税こそ悪の根源だというところまで含めて一緒にやって、なんとしても束ねて、自公政権、維新を倒していきたい。そうするときにどういう点だったら一致できるだろうか、という話になるんですね。税制をきちんとただしたい。今の税制はだめだということはどの党も一緒です。だからその議論をした結果、逆進性の強い、貧しいものに結局多めになっていく、金持ちが優遇されていく。そういうこの国の税制はやめようというところはみんな一致するわけです。それでいろいろ議論した結果、とりあえずこういうことで合意できるなら一緒に頑張っていこうかとなっています。そして野党が共闘して自公と戦っていこうか、そういうふうになるわけですね。
例えば4番目に、私たちが最初に案の案の案を作っているような段階では気候変動について書いたことがあります。これも文句を言われました。危機感が薄い。気候変動なんてたやすいものだはなく、いまは気候危機じゃないか。そのことをはっきり打ち出せ。野党各党にも気候危機ととらえてもらうように打ち出そうじゃないか。市民連合もいろいろな議論をして、野党各党の皆さんにも相談をしてだいたいて、そこらは一致するようになってきました。本当にこの気候問題は大変です。このまま放っておいたら地球が滅びるというのが、嘘じゃないような時代に入ってきている。だから政策にも明確にそのことを書いていくとか、いろいろ全国の市民連合の皆さんと議論をして、必ずしも十分じゃないけれども提示した。こういうものまで野党のいくつかがしっかりと連携できたら、岸田さんから離れようとしている人たちにとっても、これならいいかなと思ってくれるのではないか。そういうものをつくりたいと思っていて、仲間たちと一緒に議論しています。
いま、岸田政権を倒すことを急がなければいけないという課題は切実になっています。パレスチナのハニンさんというガザ出身の彼女の叫びを聞きました。最初は我慢して我慢して、一生懸命演説しているけれども、やっぱり泣いちゃうんですよ。自分の友達が、知り合いが、次々と殺されていく。そういう報告が入ってくる。私の前で何度も彼女の涙を見ました。パレスチナのことも何とかしなきゃいけないです。毎日でも駆け歩きたいと本当に思います。イスラエル大使館は、いまだに私たちの抗議文書ひとつ受け取らない。ポストも置かない。もちろん守衛も出てこない。そしてビルとビルの奥まったところに大使館をつくって、そこに旗を立てる。だから私たちはこの間、抗議文をもって行ってそこで読み上げて、そのあとその柵の中に投げ入れるんですよ。ひどい話ですよね。
大使館というのはその国の政府と話し合うだけじゃなくてその国の民衆とも話し合って、あの国の人はこういうことを考えているということを本国に報告するのが大使館の責任じゃないですか。そんなこともやらない。だから昨日は、悔しいから抗議文を段ボールに貼ってブーメランで向こうに飛ばした。ある人は紙飛行機をつくって抗議文を向こうに投げ入れました。しばらくたって大使館の前が抗議文だらけになった。ところが突然、全部掃除されちゃいました。誰かが受け取り証明の郵便をやりました。ところがそれも受取拒否で、1か月くらいたって戻ってくるんだそうです。こういう国を相手にして私たちは今戦っている。でもハニンさんの友達が言っていました。我々の抗議のときにあいつら見ている。必ずこれは報告される。
全世界が動いていて何十万も立ち上がっているところもある。日本は遅ればせながらようやく盛り上がってきた。
この前は渋谷で4000人とか、何日か前は新宿で1600人とか、いろいろな行動が盛り上がってきた。今日は新宿の南口で赤い涙という運動をやっていましたよね。赤い涙を大きな紙に一人一人が書き込んで、それをたくさん並べて抗議行動をやっています。こういう抗議行動一つ一つは無力に見えるかもしれませんけれども、それが今回の、少なくともとりあえずの停戦というところ、休戦というところを引き出したこともまた一方の事実だと思います。休戦は次の戦闘再開の準備でもありますから決して喜べません。しかしイスラエルも、それに圧力をかけたアメリカも世界の声を見ています。何日か前の読売新聞が、国際人道法違反だ、これは何とかしなきゃいけない。あの読売新聞が社説に書いている。これは世界と日本のいろいろな人たちの世論の盛り上がりの中で、新聞社がそう書かざるを得なかったと思うんです。新聞社がそう書いたということは、また政府に圧力になっていく。その繰り返しを私たちはいま積み上げるときかなと思っています。
ですからイスラエル大使館の前に座り込んで何になる、などというな。それ以外にできることがあったら言ってくれ。役に立つことなら本当にやりたい。いま考えつくのは世論に訴え、それをアメリカやイスラエルに伝えていくこと。そのために役立つと思えることだったら、できるだけお互いにやる。めちゃくちゃ無理しているんですよね、みんな。毎日毎日のように来ている人もいる。初めて来たという人もいっぱいいるんですよ。でも毎日来て、その運動を支えている人もいっぱいいる。そういう人たちがいま大事なこのパレスチナの問題でも戦おうとしている。
沖縄で、おととい1万の人がたち上がって琉球弧を、南西諸島を戦場にするな、日本を戦場にするなという大集会をやった。国会の正門前で2000人が集まって、この沖縄の集会に呼応した。全国でもそういう戦争の準備をするなという声も盛り上がっている。昨日は首相官邸前で福島の反原発の運動に連帯する抗議行動もありました。いろいろな課題でいろいろな人たちが今頑張っている。自分がやっている行動だけが偉いっていうな、と私は思います。岸田政権が悪いことをやっているからいっぱい問題があって、いろいろなことをしなきゃ聞けない。自分が呼び掛けた行動にあいつが来ないからおかしいなんて、こんなことを言っている暇はないんです。みんなそれぞれ努力をして全体として岸田政権に批判を突き付けていく。そういうことをやりたいですね。それぞれお互いに力を発揮して、今こんなチャンスなんだから本当に市民と野党の連合をつくって、これを再建して岸田政権を、自公政権を倒す。そういう運動をやろう。
残念ながら自公政権打倒と叫んでいるだけでは倒れないんです。デモだけ一生懸命やっている市民もいます。しかし私たちは2015年の運動を通じて、デモだけでは政治は変わらないということもつかんだんです。デモをやる、あわせて政治を変える。政治プロパーの運動もやる。市民連合の結成はそういう運動が全部あつまって岸田政権を倒す。そういうことだと思います。だから、市民連合が一番いいんだといっては絶対にいけないと思います。国会前に集まることが一番いいんだといってもいけないと思うんです。そういう力をみんな集めて、今チャンスじゃないですか。そういうことをやりたいなと思っています。