私と憲法271号(2023年11月25日号)


平和憲法を世界に生かすとき

イスラエルによるガザへの攻撃が激しさを増し、1万人以上の市民が虐殺され、そのうちの40%が子どもという悲惨な数字と、死体やがれきに埋まった市民の動画がリアルタイムに流れてくるなかで、今最も実感することは、武力では平和は作れないということ、そして軍は人を守らないということだ。

10月20日に始まった臨時国会。6月に通常国会が終わってから約4カ月間も国会を開かなかったにも関わらず、憲法審査会だけはきっちり開催している。衆議院憲法審査会では維新の会と国民民主党が一緒になって「いつ改憲をするのだ」と自民党をせっついている。

憲法9条がいかに素晴らしいものか日々身に染みてかみしめている時に、国会の憲法審査会では憲法9条改憲の話を維新の会などが持ち出すなど言語道断だ。今こそ、日本政府は憲法を生かして停戦を呼び掛けるべきではないだろうか。一体何のために政治があるのか。市民の命、暮らしを守る気のない政治家にもう政治は任せられない。改憲を進め、ジェノサイドを容認するような政治家は来たる総選挙で落選させよう。

岸田政権から離れた人を私たちのもとへ

岸田政権の支持率は下落する一方だ。統一協会の解散命令の決断もむなしく、支持率は上がらなかった。かといって立憲野党の支持率が上がっているのかというとそうではない。おなじみの政治家がおなじみの言葉遊びを繰り返すだけの政治に希望を持てず、市民が政治離れしてしまっている。市民の関心が薄れることにより、悪政がまかり通り、そこに何のしがらみもなく、言いたいことを言いたい放題言える、維新や参政党が支持を伸ばし、政治がカオス化している。

私たちのように、様々なしがらみや立場の違いを乗り越えながらゆっくり2歩前進、1歩後退というような、地道な主権者運動は遠回りで魅力的ではないように市民の目に映るのかもしれない。

むしろ、社会の主体的立場に立つよりも、即効性がありそうな政策や言葉を用いる強そうな人にゆだねてしまった方が楽で魅力的なのかもしれない。しかし、そのような「お任せ民主主義」の先に待ち受けているのはファシズム独裁国家だ。声を上げればもっと生きやすくなるということをどう魅力的にアピールするかがこれからの市民運動に求められていることだ。

行動は仲間の広がりを呼ぶ

とうとうなし崩し的になっていった。イスラエル軍は、子どもも、お腹の中にいる赤ん坊も未来のハマスだという理屈で虐殺を続けている。この状況を私たちは沈黙して見ているだけか。そうではない。いま、全世界の各地で市民が立ち上がりイスラエルに即時の停戦を求める大きなうねりになってきている。

東京では10月13日の正午、イスラエルが突如ガザ市民に24時間以内の南部への退避を言い始めたことを機に、市民連絡会はイスラエル大使館前での座り込みを呼びかけた。呼びかけ開始から24時間も経たないうちに緊急で行われた14日のイスラエル大使館前の座り込みに、初日は60名。翌日15日には倍の120名がイスラエル大使館前に集まった。その翌日の16日、総がかりが呼びかける夜の行動には600名が集まった。

そして11月5日の銀座デモは1600人、10日の渋谷・国連大学前から出発したデモでは4000人が集まった。この間のパレスチナ関係のデモでは最大規模の行動となった。デモや座り込みに来る市民の特徴は今までにデモなどに参加したことのない人たちがSNSを見て参加しに来ていることだ。テレビやネットでガザの子どもたちが死んでいく様子を見ているだけでいいのかと居ても立っても居られない気持ちで駆けつける人が多くいた。

座り込み行動の時には自作のプラカードを持った私と同い年の女性が「菱山さんが数分でもいいから一緒に行動しようと呼びかけてくれたから」と言って予定と予定の合間に参加しにイスラエル大使館前まで来ていた。

また、在日パレスチナ人の方たちと座り込み行動を繰り返す中で信頼関係を築くことができ、(携帯の翻訳機能を駆使しながらコミュニケーションをとることもあった)この間の総がかり行動実行委員会が呼びかけた「パレスチナに平和を!緊急行動」に参加し、従来の市民運動家と一緒になってデモをし始めている。

ガザの状況に毎日心が痛み、本当に悲しくてもどかしくてどうしようもない思いを共に抱え、共有し合う行動によって、仲間の輪がグローバルに広がっているのを実感している。また、イスラエル大使館前での座り込みは朴槿恵政権を打倒した韓国のキャンドル集会を真似て、基本オープンマイクにしている。参加市民が自分の言葉で話すことによって主体性が生まれ、主催者と参加者という関係ではなく、みんなで協力し合って座り込み行動をやり遂げているという一体感が大使館前に広がった。

この団結感がさらなる運動の広がりに火をつけている。これこそが憲法9条の実践ではないだろうか。今まで、「対話で平和を」「武力ではなく9条を」と訴えるとすぐに「攻められてきたらどうするのだ」「非現実的なお花畑理論」と言われてきた。しかし、非現実的なのはどちらであろうか。今こそ、イスラエルに停戦を訴える運動を進める中で、日本政府による大軍拡と改憲路線がいかに愚かでお花畑理論であるかということを広めていこう。

全国の市民連絡会の仲間たちが各地で行動を起こしている。ガザの子どもたち、そして全世界の子どもたちが安心して眠りにつける日々を取り戻すために平和憲法を持つ私たちは力を合わせよう。
平和を諦めない闘いを。
(事務局長 菱山南帆子)

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岸田改憲の隘路

高田 健(共同代表)

世界各地での戦争がおさまらない。ロシアによるウクライナ侵略、ミャンマーの軍事政権によるクーデターに続いてパレスチナのガザでイスラエルによる病院襲撃などジェノサイドが起きている。全世界、全国で「パレスチナに平和を」のデモが起きているさなか、日本の国会の憲法審査会は自民党などが真逆な感覚で平和憲法を変えるという議論をしている。

岸田文雄首相は最近、周囲にこうぼやいたという。

「憲法審の連中にもハッパをかけているが、『総理、憲法改正に3年はかかりますよ』とか言っている。『やる前からそんなのでどうする』と伝えた」(産経新聞11月9日「改憲論議阻む窮屈日程 参院側も「周回遅れ」」
首相がかくも改憲に前のめりになっても、首相がたびたび公約した来年9月の任期末までの改憲実現は容易ではない。岸田首相は故安倍首相が2021年改憲を公約して、その実現が不可能になった時、2020年に政権を投げ出したように、政権を放棄せざるをえない隘路にはまりつつある。その理由は以下の5点にある。

第1に、この臨時国会での衆院憲法審査会の実質審議可能な日程は、11月30日、12月7日の残り2回しかない。この臨時国会中に改憲原案がまとめられなければ、来年通常国会での改憲発議は極めて困難だというのはすでに憲法審査会ウオッチャーの間では常識だ。この点に関連して、11月16日の衆院憲法審査会で日本維新の会の岩谷良平委員が次のように発言した。

「総理が約束を果たすため、来年9月までに憲法改正国民投票を行なおうとすれば、国民投票の実施には国会発議後60日から180日間必要であることを踏まえれば、来年の通常国会終盤までには発議しなければなりません。そして憲法改正の発議にはかなりの日数をかけて衆議院及び参議院での審議、採決が必要であると思われますので、遅くともこの臨時国会で憲法改正原案の取りまとめをおこなわなければなりません。……あと2回しかありません。……スケジュールがきびしいということであれば、定例日にこだわらず、今国会で開催日を増やし、集中審議を行うべきだ。……憲法では、3分の2以上の賛成で改正が発議できることになっているわけですから、当然、徹底的な議論は必要ですが、議論が煮詰まれば、最後は決をとって前に進めていく必要がある」と。

岩谷委員は焦って、憲法審査会の開催日を増やせと要求し、最後は採決できめろという。筆者が本誌でたびたび指摘してきたように、維新らのいう毎週開催自体が憲法調査会の発足以来の慣例の破壊だし、加えて開催日を増やして強行採決などは憲法を議論する場の運営として全くふさわしくない。維新は憲法審査会の議論が進まないことに業を煮やしてかくも乱暴なことを口にするようになった。

第2に、本誌268号(8月25日)で書いたことだが、大事な問題なので引用する。
マスコミの報道や国会の憲法審査会の議論では「国民投票期間」は2か月と決まっているかのようにミスリードする傾向がある。
岸田文雄首相が自らの任期中に改憲を実現するなどというものだから、しばしば24年9月の国民投票を想定した日程表が検討される。その場合、憲法改正手続法(国民投票法)が国民投票期間(国会が改憲を発議してから国民投票が実施されるまでの国民投票運動期間)を「60日以後180日以内」(第2条1項)と定めていることから、大方の報道が60日で計算する(例えば7月26日の毎日新聞は総裁任期満了日から逆算しているが、そこでは改憲発議から起算して60日後の投票日とした記事を掲載している。

憲法審査会の維新の会の三木圭恵委員も、自民党に改憲のスケジュールを明らかにせよと迫り、「国民投票の日を9月と設定すれば、少なくとも2か月の広報期間が必要で、7月には憲法改正の発議をしなければならない。各院での審議には、仮に衆議院で2か月、参議院で2か月かかるとすれば、3月には憲法改正原案ができていないといけない。原案を作成するのにも、かなりの日数がかかる。通常国会が始まる1月には憲法改正の原案の作成にとりかからなければならない。ということは秋の臨時国会で、まず、憲法改正原案をどの条項で作成するのかを決めなければならないはずだ。どう考えても、このようにスケジュールを組まなければ不可能だ」などと迫る。

これはおおきな間違いだ。改憲手続法は国民運動期間を60日から180日としているが、下限が60日と設定された理由は、国民投票実施に向けた事務的な準備作業に最低限2か月程度は要するということにもとづくもの。上限の180日は憲法改正の内容によっては半年程度をかけて十分に、慎重に国民に判断する機会を確保したほうがよいという政策判断に基づいているもの。

もともとこの国民投票期間に関する2条1項の規定は短すぎて、有権者に投票に必要な憲法改正の意味を周知徹底できない。投票には「改憲が発議されてから2年ほどは必要だ」(長谷部恭男教授「憲法とは何か」岩波新書)と言われている。

長谷部氏は第1の「(改憲)提案から最終的な改正に至るまで長い時間を要する例は珍しくない」として、フランス革命後の1791年憲法やスペイン憲法などの例をあげ、スウェーデン憲法では、「改正の発議は総選挙をはさんで、2度国会によってなされねばならず、しかも最初の発議がなされて、総選挙が行われるまで少なくとも9か月が経過することが要求されている」と指摘している。それを必要とする意味について長谷部氏は第1に「落ち着いてじっくり改正提案の当否について考える冷却期間を置く」「薄っぺらな情報に乗せられて、安易な投票をする危険を避ける」という意味、第2に「発議する側に熟慮を求めること」、一時的な多数派による固有の利害による改憲を避ける、と説明している。

この現行改憲手続き法が決まる前には、右派の憲法改正議員連盟は60日から90日を主張し、自公両党案は30日から90日だった。しかし、2006年の第164国会では同法の成立を急ぐ自公両党が、民主党案の「60日から180日」案を丸呑みして、現行法制が決まった。熟議を訴えた長谷部氏の警告は生かされていない。

今問題になっている改憲は緊急事態条項導入とか、自衛隊規定を導入するという日本国憲法の根幹にかかわる問題での改憲だ。まして、日本の有権者は従来、1度も改憲国民投票を経験したことがない。熟議を経て、「十分に、慎重に」判断できるような期間が必要なことはいうまでもない。

であるならば、現行法を前提にしても法が許すぎりぎりの期間、180日が当てられるべきことは当然だ。ということは、2024年3月には両院で改憲が発議されていなければならないということだ。これは前記した維新の会の三木委員の計算から見ても全く間に合わない。「任期中の改憲」の時間不足は明白だ。

第3に、改憲項目の絞り込みができていない。衆院憲法審査会で議論している緊急時に国会議員の任期延長をする緊急事態条項導入改憲論は、参議院は同調していない。憲法54条の参院の緊急集会規定でこと足りるからだ。

第54条

  1. 衆議院が解散されたときは、解散の日から40日以内に、衆議院議員の総選挙を行ひ、その選挙の日から30日以内に、国会を召集しなければならない。
  2. 衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。
    前項但書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであつて、次の国会開会の後10日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失ふ。

改憲派は、これほど明確な規定が憲法上あるにもかかわらず、改憲の口実を設けようとして、緊急時における議員任期の延長を強調する。緊急時にやるべきことは参議院の緊急集会を開催しつつ、できるだけ早く総選挙の実施を可能にする努力だ。議員が勝手に自分の任期を延長するなどということは、独裁政治につながることで許されない。

第4に、与党の間ですら合意が難しく、議論も進んでいない9条改憲などによる自衛隊条項導入改憲を避けて、緊急事態条項新設(なかんずく緊急事態における議員任期の延長のみ)だけの1点突破改憲は、あまりに「ご都合主義」すぎて世論の理解を得にくく、このところのような世論調査の支持率が内閣、与党ともに低迷している中で強行するのはバクチに近いことだ。
16日の衆院憲法審で国民民主の玉木委員は以下のように発言した。

「今のスケジュールや運営では、到底、来年9月までに改憲などできません。本当に任期中に改憲をしたいのであれば、これまで意見の集約が図られてきた緊急事態における議員任期の延長規定の創設に絞って成案作りをすすめるしかないんじゃないでしょうか。……いまからほかのテーマに手を広げても、到底、岸田総理の公約を達成できないとおもいます。例えば、9条の改憲を主張する方もいらっしゃいますが、とても任期中には間に合わないと思います。……わが党は、9条2項を削除するか、仮に残す場合であっても、その9条2項の例外として、自衛権を位置付けるべきと提案しています」と。要するに「緊急事態における議員任期の延長規定の創設に絞って」改憲をやれというのだ。
825億円もの費用をかけて、こんなつまらない問題で国民投票をやるというのは本当にばかばかしい。

第5に、岸田首相の意図がいまひとつ理解できないのは今回の改造内閣人事と関連して、安倍政権時代から衆議院憲法審査会・与党筆頭幹事をつとめ、憲法審査会をとり仕切ってきた新藤義孝氏を総務相(経済再生担当)に任じたことだ。代わりに中谷元・元防衛相を据え、幹事には憲法族と呼ばれる船田元氏を加えた。これは中山太郎初代憲法調査会会長色の強い人事ともいえよう。改憲を強引に荒業で進めようとするなら、この間、野党などとの関係を積み上げてきた改憲強硬派の新藤筆頭幹事の役割りは欠かせないはずだ。9日の朝日新聞によれば「首相は7日には官邸で、衆院憲法審査会で与党筆頭幹事を務める中谷氏と会談し、他党との協調路線で審議が進まなかった経緯を念頭に「(与野党一致の)護送船団方式では結果として全然前に進めない。とにかく動かさないといけない」との強行突破の考えを伝えたという。それほど不安ならどうして中谷氏を憲法審査会の運営を左右する筆頭幹事にしたのか。あまりにちぐはぐで、首相の真意が見えない。

16日の議論でも中谷筆頭幹事の発言は「この審査会において各党が議論して、理解して、納得したうえで発議をしていく必要がございますので、それなりにやはり十分この審査会の中でも議論も必要でありますので、そういう感じでは、私としてはしっかりとした各党の議論ができるように努力していきたいというふうにおもっております」というもので、どこまで本心かはさておき、ここからはなかなか、改憲強行派が思うような、強行採決による発議という絵面はみえてこない。

参院野党は筆頭幹事(会長代理)に衆院時代以来の憲法審のベテラン辻元清美氏をあて、例の「サル発言」以来降格されていた論客・小西洋之氏を幹事に復帰させて、岸田改憲を迎え撃つ態勢をとった。

改憲突撃隊、第2自民党を自称する日本維新の会の馬場伸幸代表は、先の通常国会で「今国会で改憲項目の条文案づくりの具体的作業にやらなければ間に合わない。それなら自民党は改憲政党ではない。『やるやる詐欺』で国民投票をやる気がないと判断させていただく」と対決を辞さない構えだ。首相が自らの権力維持のために、改憲にこだわる自民党最大派閥の清和会(安倍派)や、非与党の維新の会の支持を得るためだけの詐欺的な行為だというわけだ。同様のことを国民民主党の玉木雄一郎委員は「自民党の憲法改正は、保守層をつなぎとめるためのやるやる詐欺になっているのではないか。自民党の憲法改正に本気度が感じられない」といった。

本誌月266号(6月25日号)でも紹介したが自民党の上川陽子幹事長代理(当時)は6月15日の衆院憲法審査会で、岸田文雄首相が目標に掲げる来年9月の党総裁任期満了までの憲法改正をめぐり、時間不足の状況に当惑して「具体的に来年の9月を想定したものではなく、今後の党運営の中で決まっていく」との見解を示した。上川氏は憲法審終了後、記者団に自民の憲法審幹事の共通認識だと説明した。これに対して岸田首相が、10月の衆議院予算委員会で、「目の前の任期中に、憲法を改正できるよう最大限努力する」と述べ、上川発言を否定、来年9月までの任期中に具体的な行動を取ることを示唆した。

にもかかわらず、11月17日の衆院憲法審では他党に追及された中谷筆頭幹事が「首相答弁の『任期中」は再選の可能性もあり必ずしも来年9月を意味してない」との主旨の「私見」を述べ、失笑を買った。これでは岸田首相が繰り返し言明してきた任期中の改憲は無理ということをあらためて認めたことになる。

内閣支持率が続落し、支持は軒並み20%台となり、報道機関によっては不支持が70%近くになっている。伝家の宝刀たる解散総選挙の時期もままならない。このもとで改憲国民投票ができるのか。安倍元首相が2020年に21年改憲を断念して、政権を投げ出したように、岸田政権にその二の舞を踏ませるような情勢は迫っている。安保3文書など改憲・増税に反対するたたかいの山場は目前だ。岸田政権打倒への道が見えてきた。

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菱山南帆子の今日は誰と話そう第3回

ゲスト:南 彰さん(琉球新報記者)

菱山:南さんが朝日新聞を離れるということで大変驚いているのですが、南さんはなぜ新聞記者を目指そうと思ったのですか?前から気になっていて・・・

南:大学の時の話ですが、終戦直後から続くある大型公共事業をめぐって島根県をフィールドワークしていました。汽水域でシジミなどの名産地である宍道湖・中海を干拓・淡水化する事業です。竹下登氏が総理大臣だった時に「環境」を重視した住民運動で一回凍結されたこともあったのですが、事業を続けようという動きがくすぶり、国政選挙でも争点になっていました。その時、メディアの報じ方は、「大型公共事業に賛成か、反対か」。政権側のスローガンに乗っかるように設定されていました。実際に地元で争われていたのは、古くて時代遅れの大型公共事業をやるのか、はたまた、環境産業を興していくような新しい公共事業に切り替えていくのかということが争われていたにもかかわらずです。
地元議論は無視され、東京で言われているようなスローガンを自民党に利用されてしまいました。そのことを通じて、ちゃんとメディアが現場を歩き、スローガンに踊らされずに丁寧に報じていかないと問題が起きる。市民がちゃんとした選択ができないと思いました。そうしたメディアのあり方の問題を訴え、変えていく担い手になりたいという思いから、新聞社を受けたんです。

菱山:それで朝日に入ったのですね。ところで新聞労連にはどうして入られたのですか?

南:新聞労連には朝日から10年に一回委員長を出さなくてはならないので、そこで人選に困っていた、豊秀一さんという尊敬している先輩記者から、ある日飲み会で隣の席になったときに「ちょっと相談がある」と相談されました。「新聞労連の委員長は出世しないけれどよろしく」と言われて(笑)
打診の前年(2017年)から、官邸の記者会見問題が起きていて、その時の労連委員長が心配をしていて相談にも乗ってくれたことがありました。それがきっかけで、メディアのあり方が問われるなか、会社の枠組みを超えたメディアのネットワークっていうものは大事だなと感じていたこともあり、引き受けないといけないかなと思ったのです。

菱山:あの記者会見問題って菅氏の時でしたよね。

南:モリカケと伊藤詩織さんの件が起きて最初望月さんが取材に行った時ですね。

菱山:安倍政治の中でのメディアの変化について、最前線いらっしゃって何か感じられたことはありましたか?

南:そうですね。安倍政権が好きなメディアと嫌いなメディアと分断をしてきました。単独インタビューのなども産経が突出していました。安倍さんが好きなところにはどんどん出て好きな発信をすると。一方で朝日とか敵視していて何かあれば、不都合な報道に対して、「捏造」と言って、意図的に嘘ついているとレッテルを貼ってきたわけですね。

菱山:酷い!

南:権力者がそういうことをするのはよくありがちなのですが、そこにメディアも引っかかってしまって・・・。スシローと言われた田崎史郎さんが有名ですが。官邸側に取り込まれてしまうメディア側が出てきました。田崎さんだけではなく、他にもいたというわけです。官邸の記者会見問題とかで市民に説明責任を果たさせないといけないのだけれども、肝心のメディアの中が割れてしまいました。追及する記者の足を引っ張ったりとか。官邸側の肩を持ったりとか。

菱山:追及する記者の足を引っ張るってどんなことをするんですか?

南:質問のルールを変えたんですよね。
今まで官房長官会見は時間無制限だったのですけれども、それを時間制限つけるようになってしまい、公務があるからここで打ち切りという形に。官房長官って政府のスポークスマンだから会見も公務なので重要なことなので制限なかったのですが。時間制限を設けることとなると、追及する記者を一番最後に回して、そこまで当てなかったり、1問だけ聞いて「公務があるから」と言って帰ってしまったりとか。
さらに質問している最中に司会者が「もっと簡潔にしてください」と言って妨害行為をしてきたり。

菱山:めっちゃ望月記者がされていることですね。

南:一問ずつ、社名と氏名を名乗ってから質問してくださいというルールも設けられてしまいました。

菱山:それは今まで名乗らなくてもよかったのですか?

南:僕が官房長官番をしていた時は野田政権でしたが、最初の一問くらいは名乗っても、次々聞いていくときは相手も分かっているし、名乗らなくてもよかった。今はいちいち名乗らなければならないし、名乗らなければ司会者が「名乗ってください」と止めるという・・・。そうすると、質疑の流れが悪くなるじゃないですか。

菱山:やば!

南:その後、新型コロナウィルスを理由に記者会見の人数制限もやってきました。緊急事態宣言が解除された後も、記者クラブ側が一致して変えさせるってことにはならず、コロナが大変だからと言ったり官邸の肩を持ったり。メディアの中に共犯者が出てきて、問題のある権力を支えてしまっていたというところが、安倍政権であり、菅政権であったんですよね。

菱山:伊藤詩織さんのこともそうですし、この間のこともそうですが、大事なことを全然報道しなくなっちゃったじゃないですか。特にテレビはひどい。安倍政治の流れが来ているんだろうなと。最近だとジャニーズのNGリスト。あれ、国が腐っているから同じようなことしてしまっているんですよね。

南:そうそう!官邸でやっていたことと同じような事をやっているってことですよね。日本の中枢の記者会見でこんなことがまかり通っていると、全国で「そういうことしていいんだ」というような形骸化された記者会見が広まってしまう。だから官邸の記者会見を変えなくてはならないんだと言っていたんですよね。

菱山:上が腐るとこうなるんだなと思いますし、新聞も読みたくなくなっちゃいますよね。若い人たちの新聞離れって深刻だと思うんですよね。ネットで無料で読めるしというけれども。

南:確かにデジタル化ということで、紙の新聞からスマホで読めるということに移っているということに新聞社が技術的なところも含めて対応しきれていないというところはある。でも、最も大切なことは、デジタル社会とは、メディアと市民の関係性が変わることを理解していないことです。これまでのように情報の出口を押さえて、市民に情報を伝えていく「垂直型」の関係性から、メディアと市民がフラットな「水平型」の関係性に変化しています。そのときに、メディアが市民社会の側に立って仕事をしているという姿があまり伝わっていのではないかなと思います。「権力監視」はこれまでも意識してやってきたつもりだけれど、どうしても権力がある、を主語とした情報が多く、暮らしている人たちにとっての情報が少ないんじゃないかなと思うのです。
マスメディアしかないときは、たとえば新聞は習慣のように購読してもらえましたが、これだけ情報があふれ、選べる社会になってきたときに、「自分たちと関係ない存在」と思われてしまっている。

菱山:ネットのニュースって序列がないじゃないですか。何が今一番大事なのか、一面などでわかるのに。

南:公共の情報の言論空間が壊されてしまいましたよね。そこをどう立て直すのか。

菱山:今言論空間がTwitterとかの無責任な匿名の発信で潰されていますよね。

南:あの言論空間の中で菱山さんもよく闘っているなと思いますよ。

菱山:いやいや、私も嫌になりますよ。Twitter(X)やめたいってたまに思いますもの。
メディアの統制など、大変な中で、南さんは今回、朝日新聞を辞められて、琉球新報に行かれるという一大決心をされたというわけなのですが、どうして琉球新報に行こうと決めたのですか?

南:メディアの形が変わっていかなければならないときに、まずはちゃんと地域に根差したジャーナリズムを実践している報道機関が主軸になることが大事だと思いました。全国紙がどんどん地域から撤退をしています。国政の情報は勿論大事ですが、地域それぞれに民主主義があるわけですから、そこの情報が細ってしまうと、草の根の民主主義も揺らいでいくので、そこを立て直したいと思いました。
そして、「自分たちの前には読者がいて、市民の小さな声をきちんと伝えていく」「二度と戦場にさせない」というジャーナリズムの原点ともいうべきことを純粋にやっているところは沖縄の2紙でした。とくに、琉球新報に関してはジェンダーバランスが非常に良くて、編集局長は女性ですし、女性管理職比率も25%くらいで、全国の新聞社のトップクラスです。

菱山:えーすごい!

南:朝日も「ジェンダー平等宣言」を出しているのですが、10%くらいで低迷しているんです。自民党政権の女性議員や閣僚の少なさを言えないって感じです。メディアがもう一度信頼されるためにはジャーナリズムを実践するということと自分たちの足元の組織自体がきちんとしていないといけないと思っています。琉球新報のジェンダーバランスは、これから目指す方向に合致していると思いました。
また、地域メディアの連携にも取り組んできており、そうしたネットワーク型で新たなニュースの生態系を作っていければなと思いました。

菱山:ジェンダーバランスは市民運動も同じで、今変えようと努力をしているところです。
最後の質問です。これから沖縄でどんなことを発信していきたいですか?(次頁下段へ)

南:まず、辺野古の話、県民投票などで示されてきた民意をずっと踏みにじっているので、その理不尽さをきちんと伝え、現状を変えようという輪を広げていく言葉を紡いでいくことが喫緊の課題だと思っています。また、戦後80年が近づくなか、歴史の上書きなどの情報戦が沖縄においても仕掛けられてきているので、それを食い止めていきたいです。
とりわけ、沖縄は市民のボトムアップのようなもので動いてきたところもあるのでそこにしっかりと光を当てていきたいと思っています。権力者の歴史は残りやすいですが、そうではない一人一人の市民が紡いできた歴史を記録し、社会を変える力があることを実感できるような報道がしたいなと思っています。

菱山:すごい!心強いです!一緒に頑張っていきましょう。ありがとうございました!

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第177回市民憲法講座 維新が奪った「命・人権・文化・自治」~大阪の13年を振り返って~

お話二木(ふたき)洋子さん(市民連合高槻・島本、元高槻市議会議員)

(編集部註)10月21日の講座で二木洋子さんが講演した内容を編集部の責任で要約したものです。要約の責任はすべて本誌編集部にあります。

地域の市民運動から地方議会へ

私は研究者とか学者ではありませんから、私なりに体験したことを生々しくお話させていただいて大阪の現状を少しでもご理解いただけたらと思ってまいりました。

私はもう半世紀くらい前からずっと市民運動一筋です。水俣病と出会ってから公害とか環境問題、それから伊方の反原発運動-これも50年くらいになります。それから消費者運動、男女平等を求めてきたジェンダー平等の運動、平和運動など、半世紀くらいずっと市民運動一筋できました。正規雇用が3年くらいしかないので労働組合の活動は全く経験がありません。子育てをしているときの1991年4月に、私の家のすぐ近くに日本たばこの医薬の研究所が来るという話でした。日本たばこは多角経営なんですね。最初は薬の研究だったらいいと思ったけれども、いろいろ聞くうちにこれは問題だと思いました。そこで動物実験、しかも病原体を持ち込んで感染実験をするということです。原発もそうですけれども、安全やというても必ず漏れ出るんですよね。だから病原体を住宅密集地に持ち込んでくるというのはどういうことや、ということでいろいろな反対運動をしたんです。東京で言えば新宿区の国立感染症研究所みたいなものです。あそこもできるときに反対運動をされましたから、何度も学びに寄せてもらったんです。ああいう立地状況の中で日本たばこの医薬研究所ができて、病原体を持ち込んで動物実験するということで、法的に何も止めるものがなかったんです。

地元の皆さんと反対運動をしましたけれども止めることができなくて、そんなことなら議会で言おうといって立候補したのが、1991年4月です。泡沫候補で全く相手にされなかったけれども、周りの友人だとかPTAのお友達だとか、いろいろな市民運動をしている人たちが応援してくださって、そして当選できたんです。開票のときには、体育館である程度の票が出たときにどよめきが起こったくらい、泡沫候補だったんです。本当に素人で入りました。

公約はJT医薬研究所建設反対だけだったけれども、議員になったらそうはいきません。あらゆる予算を全部判断しなければいけない。それで「物差し」は、憲法で保障されている権利を保障していくということで、「地方自治は民主主義の学校だ」ということと、政治家のスタイルとして市川房枝さんに学びました。市川房江さんは、議員の仕事は議会で質問すること、そして自分が議会でしたことをきっちりみなさんに報告する、議会リポートを出すことです。そしていただいた報酬はどのように使ったか皆さんに必ず公開する。そして、休まない。この市川房枝さんの4原則があります。国会は休む人が多かったんでしょうね。わたしはこの「休まない」は「遅刻しない」にして、あらゆる会議に遅刻しないといって臨んできました。もう一つ大事なのは、市川房枝さんは「選挙は政治への入り口だ」、どのような選挙をするかがその政治家の政治スタイルを決めるということです。私は選挙をボランティアの皆さんと一緒に、お金をかけないでやる選挙をしてきました。

2008年に橋下徹氏が知事になったころから、何か大阪の雰囲気が変わってきたんですね。自治体の施策も少しずつ変わり始めました。民主党政権のときもあったけれども、変わりだしたんですね。2015年4月、7期目に立候補しました。ところが58票差で次点でした。私が最初に通った時は議員定数が40だったのが36に減らされて、この選挙のときには34になっていたんです。もう一人、市民派の議員もだめでした。だから議員定数を削減するというのは、少数の声を代表する人を削るということを、身を持って体験しました。4年前は維新の会は高槻からは出ていなかったけれども、みんなの党だった人が1人、あとは無所属の人が2人維新で出てきて、トップも2位3位も大阪維新です。その人がその前の4年間に何をしてきたか。議会で質問なんかほとんどしていません。そんな人が「身を切る改革を」といったら、どっと票が入る。この悔しさと恐ろしさ、ここで何か政治が変えられてしまうという危機感をもって、落ち込むどころか逆にファイトをもって、維新とたたかわなきゃいけないと思いました。私が思ったのは、大事なのは市民運動やと。そこで畑を耕さないと議員を押し出す力にもならないし、議員になっても仕事できないと思って、それで市民運動に戻って今頑張っています。

ちょうど2015年9月ですよね、安保法制の強行採決があったのが。私も東京に何度も来ました。そして2016年の参議院選挙で野党統一候補が一人区で勝ったりした。衆議院選挙も近いということで、私が住んでいる高槻は大阪10区といって辻元清美さんの地元です。なんとしても衆議院議員を落とすことはできへん、ということで「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合高槻・島本」を13人で呼びかけ人になって結成しました。それから7年くらい、毎月会を開きながら活動を続けてきています。

維新が4割はとるという大阪の政治状況

大阪の北部を北摂といいますが、大阪10区で、私も辻元さんもここです。11区は平野博文さんという衆議院議員で立憲の方がいらっしゃいました。2021年の総選挙のとき、維新の立候補者数15で、19の小選挙区があるけれども、当選者は維新が15、公明が4で、辻元清美さんと平野博文さんという立憲の候補者を私たちは落としてしまいました。その時の維新の「風」はすさまじいことを肌で感じました。恐ろしいくらい。辻元さんを落とすために、金曜日に維新が総攻撃でやってきまして、高槻の街を支配したという感じです。4か所で街頭演説をしたけれども、どこもすごい人で本当につらい思いをしたんです。公明党が4人ですけれども、なんで公明党の人が4人も大阪で通るのかというと、自公政権だから公明が立つところには自民は出さない。そして大阪市議会で過半数をとるために、維新は公明党に協力をしてもらわなあかんから維新は出さない。だから公明党の4人というのは、大阪の3区、5区、6区、16区というところで、そこには自民も維新も候補者を立てないんですね。それで公明党は4人通していく。公明党の衆議院議員の中でも大阪選出の4人というのは割合が多いと思うけれども、そういう構造だったんです。

今度の統一地方選挙で大阪市議会は維新が過半数になりましたから、もう公明党の力はいらんわということで、この4つのところにも維新が立てます。大阪は次に総選挙があれば、19の選挙区のうち19を維新がとるつもりで動いているという厳しい状況です。比例もあります。近畿で選ばれるのは28人で、大阪から議員になっているのは惜敗率で共産党が1人・宮本岳志さんが入った。それから、れいわの大石あきこさんが5区で、立憲のお1人は16区・堺で森山浩行さんがとっているだけです。立憲野党は、大阪は3人しか議員がいないという状況です。大阪の2021年の総選挙のときの投票率と維新の得票率を書きました。比例区では43%、4割は維新がとる。2022年、去年の参議院選挙で大阪選挙区は4人ですが、立憲と共産が割れていたので、維新2、自民1、公明1になって、立憲野党はとれていません。維新の得票率は38.8%で約4割、だから4割は必ず手堅くとるという岩盤の支持層があるんです。

去年の参議院選挙で各政党がどれくらいとったかということで、全国では維新は14.8%ですけれども大阪では38.8%、やっぱり強いでしょ。悲しいですけれども。大阪では2016年34.9%、2019年35.1%と増やしています。それに比べて私たちが応援する立憲野党です。大阪は立憲よりも共産党の方が票が多かったんですが、共産党は11.4%、9.6%、7.1%と減らしてきています。それから立憲も9.3%あったのがこの間は6.6%しか取れない。ここが東京の状況とは全く違うくらい立憲野党が票を取れないところなんです。これは立憲野党が何もしていないのではなくて、こうなるように維新が動いてきたからです。

今年の春の統一地方選挙の結果は、維新は大阪府議が55人です。でも不祥事がいっぱい続いてもう3人やめているので、今は52人になっている。大阪市議は46人です。堺市は政令指定都市ですけれども18市町村議181、合計300と書いていますが、出入りがありますから現在は299です。それから首長、市町村長ですが、知事も含めて22、約半分の首長を維新がとっている状況です。府議会と市議会の票ですが、定数は大阪府議会の79人中52人が維新で、こんな悲しい状況で戦っているんです。過半数以上、7割ですよ。立憲が2人、共産党が前は2人いたのが1人になりました。これは定数削減で、からくりがあって少数派が通らないようにしているからです。1人区が多いということもあります。

大阪市議会も81人の定数でしたけれども、この前まで過半数に届かなかったから公明党に「よろしく」とやっていたのが、もう46人取れたので「はい、公明党さようなら」って冷たく切って、今度衆議院で候補者を立てるという状況です。大阪市議会も立憲の候補者ゼロです。共産党も何とか2人が通ってくださったというくらいです。東京では考えられへん状況になってしまっています。そして立憲の2と1のところは参議院、定数3です。高槻、島本、枚方、吹田、定数3だから立憲と共産が手を組めばなんとか通れたというので、私のところの高槻、島本も立憲の野々上愛さんという方が出て共産党の方が出されなかったので通れたというかたちです。力を合わせないと府議の1人も出せない。これ、つらいですよ、本当に。

大阪府議選の問題・身を切る改革=定数削減

何でこんなことになるかということです。ちなみに都道府県の人口別に順番に並べると、東京都が一番多く、次が神奈川、大阪が3番目です。議員定数は、東京都議会127、神奈川県議会105、愛知県102、大阪79というのはすごく少ないでしょ。しかも選挙区数は多い。定数が少ないのに選挙区数が多いということは、1人区が多いということです。1人区が36で選挙区の68%を占めます。だから小選挙区になったら、死票が多くなって、少数派とかの民意を反映しないじゃないですか。こういう選挙のからくりがあって、議員はどんどん出られなくなっています。「維新が府議会で多数をとってから、『身を切る改革』として、議員定数削減を続けている結果だ。」と書きましたが、昔は100あって、高槻なんかも定数5だった。その時は社民党の方も出てはった。それが4になって、いま3になって、という感じです。「身を切る改革」として、とにかくまず議員定数削減です。みなさんあまり議員定数のことは重大に思ってはらへんと思うんですけれども、とっても大事なことやということをここで分かっていただきたいと思うんです。

ちなみに大阪府東大阪市が49万人で、そこから府議を出すのはわずか4人です。兵庫県尼崎市は46万人の人口で県議会に7人出しています。いかに「民の声」が切られているか。それが「身を切る改革」、議員定数削減で起こっていることがわかっていただけるかと思います。高槻は今34万の人口ですけれども、東京都内の中野区とよく似てるんかな?高槻は34人の市会議員、中野は42人いらっしゃる。中野区の面積を調べたら15平方キロやったかな、狭かったです。高槻は105平方キロあります。山もいっぱいあるから。だから1週間の選挙期間で私なんか全部は回れないです。それくらい広いところを34人にした。みんなだいたい40人、大阪はみんな30人台、枚方なんか32人ですからね。大変ですよ。本当に私らみたいな市民派だとか少数の人たちは、選挙に出ても通らないということになっています。

維新が狙うのは第1会派です。今回も選挙のときに「維新を第1会派へ」というポスターがうわーって出る。高槻も8人で第1会派を許してしまいました。吹田も枚方も。豊中は9人で第1会派にならなかったけれども後で無所属の人を入れて、維新・無所属議員団で12人になって第1会派になっています。第1会派になると発言権があるので。悔しいですけれどもこういう状況です。

大阪維新の会とは

では具体的に維新の会はどんな会かということで、日本維新の会と大阪維新の会の関係を見てみます。日本維新の会は2012年にできて紆余曲折があるからそれは省きまして、大阪維新の会の代表は吉村知事です。副代表が馬場さんで、幹事長が横山ひでゆきという大阪市長です。首長は22です。府議、市議、堺市議、市町村議、衆議院議員、参議院議員という順番でホームページに書いてあります。日本維新の会の代表は馬場さんです。共同代表が吉村さんで、幹事長が藤田文武さんという大阪12区から出る衆議院議員です。衆議院議員が40人、そのうち大阪が15人、兵庫が9人ですから圧倒的で関西が地盤の党です。参議院議員が19人。これで政党助成金が33億円だったかな、もらっていて、調べればもっと出てくると思うんです。大阪10区なんかにも日本維新の会の支部をつくって、そこに政党助成金が出たり、政党助成金を大阪にいっぱいもらって活動しています。

日本維新の会は、去年の参議院選挙のときに「維新八策」というのを出しました。これは8項目あるけれども、ひとつが政治改革・国会改革、ここが「身を切る改革」です。だから国会議員の定数削減をしようと、きっと言うと思います。それから統治機構の改革。地方分権とか地方の自立とか言うてますけれども、大阪でやっていることは全く逆です。外交、経済、成長戦略、それから「新しい国のかたち」、これがすごいんですね。未来への投資ということで、教育・子育てへの徹底投資で、これがいま大阪でやられていることです。そして危機管理と憲法改正です。憲法改正は、教育の無償化、統治機構の改革、憲法裁判所、自衛隊明記と緊急事態条項です。教育の無償化については次の総選挙の時の政策に入れようとしていたみたいですけれども、財源の調整がつかないということで政策に入れない可能性があります。大阪維新の会は日本維新の会とちょっと違って、憲法改正とかは言いません。ローカルのことだけを取り上げる政党です。

歴史ですが、最初は大阪維新の会ではないんですね。橋下徹さんが「行列のできる法律相談所」というテレビですごい人気があった時に、「2万%出ることないですよ」とうそを言いながら2008年1月に府知事選挙に出ました。その時は自民推薦、公明支持で通りました。通るや否やすぐに自分で「大阪維新プログラム」、財政再建のプログラムを出してきたわけです。ここから大阪府政がものすごく変わり始めて、府内自治体にもいろいろな影響を与えるようになりました。翌年4月に橋下さんのそのプログラムの中身をめぐって、自民党の会派の中でもめ事が起きたわけです。それで自民党の中で「自民党・維新の会」という6名の会派が別にできました。その1年後に、今度は「大阪維新の会・大阪府議会議員団」ということで、22名で自民党から完全に分かれて会派ができました。そのあとに「大阪維新の会」が政治団体に登録して、ここで中心になったのが松井一郎です。9月に44名が自民党を離党して大阪維新の会ができました。ですから大阪維新の会のメンバーは、自民党から分かれて大阪維新の会になっていると理解していただいたらいいと思います。抜けられたから、だから自民党も弱体化しているんです。

とにかく大事なのは選挙。地方議会の議員を増やすことと、首長選挙に力を入れ始めました。2011年11月に、今度は橋下さんが大阪市長に行くということで、橋下大阪市長と松井大阪府知事になります。そして念願の大阪都構想をやるんですけれども住民投票で負けて、責任をとって橋下さんは大阪市長を辞めます。そのあと松井大阪府知事、吉村大阪市長になって、2回目の大阪都構想の住民投票に敗北します。いまは吉村府知事、横山市長になって、この4月に松井さんは大阪市長も辞めました。これは「逃げるが勝ち」といったら悪いけれども、そうだと思います。2012年9月に日本維新の会はできていますが、これもいろいろあったので省略しておきます。

大阪維新の会の基本的立場は「自治体経営」

大阪維新の会の綱領で、これは維新の会のホームページに結成のときから出ていて変わっていません。大阪維新の会はローカルパーティーで、設立目的は「『広域自治体が大都市圏域の成長を支え、基礎自治体がその果実を住民のために配分する』新たな地域経営モデルを実現することである。」。私は今まで自治体議員で、「自治体経営」という言葉は全くなじみませんでした。「自治体運営」とは言われましたけれども「経営?」、「儲け生み出して何かやるん?」という感じですけれども、自治体の「経営」なんですね。だからコストを重視して儲からへんもんは全部切っていくという、はっきりいったらそういうことになるわけです。

次に「福祉、医療、教育、安心・安全等に係る住民サービスの向上こそが地方政府の存在理由であるが、そのためには、圏域の競争力の強化と成長が不可欠なのである。」。ここに全面投球するのが大阪維新の会です。綱領は3つ柱が書いてあるけれども、「政策マニフェストに賛同する人々を結集し、関係する議会に会派を設立する。」。それから「首長選挙に候補者を擁立する。」「『ONE大阪』に向けての様々な運動を展開する。」ということで、市民を増やすとかそういうのは関係ないんです。とにかく議会をとるということがあの人たちの一番の考えです。

政策マニフェストでは、「住民の生活基盤・安心に関わる事務は基礎自治体が、また、産業基盤 競争・成長に関わる事務は広域自治体がサービスの提供主体になるという役割分担により、『強い広域自治体』と『優しい基礎自治体』で大阪府域を再編する。」ということで、府の権限を強くして大阪市の政令指定都市の権限をみんな大阪府に持ってくるというのが都構想です。こんなんがもし実現したら、順番に周辺の自治体も全部変えられていって、高槻市も今の自治がなくなって大阪府に決められたことをやらなあかんようになるとか、そんな感じだと思ってもらったらいいと思います。

大阪維新の会の目指すものですが、「大阪の改革を前に進め、『世界に誇れる大阪』を創る!」、こんなことがスローガンなんですよ。本当に悲しいですけれども。「『大阪府庁』『大阪市役所』の2重行政2重投資ではなく、広域的事務と基礎自治体事務を分ける大阪都構想に」と書いています。それから2回の住民投票で否決されたが、それでも広域一元化条例で、府市一体化を進めており、民営化やパークマネジメント、民間活力導入などで経営効率をあげ、その結果ビッグプロジェクト誘致に成功した。「大阪・関西万博、G20サミット、IR、大阪全体が『ワン大阪』で府内自治体で行政改革を進める」。IRはカジノですね。これが向こうの看板の政策です。

大阪維新の会の政治により大阪府民が奪われたもの

ではこういう「目指すもの」でいろいろなことをされてきた結果、私たち大阪府民が何を奪われたかということを具体的お話したいと思います。私は研究者でもないですから自分が体験した事をベースに話させていただきたいと思います。

橋下氏が知事になってすぐに打ち出した大阪維新財政再建プログラム、これは柱が5つありました。(1)民間との役割分担、民間にできることは民間に。(2)市町村との役割分担・身近なサービスは地元で。これはすごくいいように思いません?とんでもないですよ。例えばパスポート。東京の皆さんはパスポートをどこに行って取られますか。都庁ですよね。大阪はそれがみんな市町村に来ています。高槻市も駅前の市民が使う一番いい場所にパスポートセンターがある。だから大阪府はこういうものは最小限にして、全部地元に振る。それって人の効率といい、お金といい、市町村にとっては場所の確保にしても負担になることです。それが「身近なサービスで、地元で」ということでよくなっちゃうんですね。(3)団体との関係の見直し。出資法人や補助団体の自律性を尊重するということで、大阪市が出資している法人も削減されたし、補助金をもらっている団体も補助金を打ち切られたところはたくさんあります。④持続可能な施策構築、「負担能力、受益者負担」とあります。これは使用料などが上がるとか、今まで無料のところにお金がいるとか、そういうかたちです。⑤施策効果の検証と説明責任。いかにもええことを言っているみたいですけれども、結局は打ち切るためのやり方です。事務事業、人件費、歳入の確保、出資法人、公の施設、主要プロジェクトとかありますけれども、人件費などもすごく削減されています。出資法人も減ったし、公の施設も民間業者に売ってしまうというかたちで歳入の確保を図る。それは何に使っているかというと、今のところ全然府民は恩恵を被っていません。

民間との役割分担は、公務員の削減ということです。これには2つ問題があって、1つは公務員の制度改革で、機構改革と人数の削減です。2012年3月に職員基本条例、教育行政基本条例、府立学校条例という条例ができます。これは橋下知事のときには維新の議員提案でやろうとしたけれども、組合とのいろいろな紆余曲折がありました。松井知事が2012年に提案したんですけれども、中身は幹部職員の公募制、任期制です。こんなん東京であります?例えば教育長を公募する、学校の校長を公募する。それが大阪ではまかり通っています。大阪市は区長も公募でした。いかにも公募でいいみたいに思うけれども、現場に行ったら役所のやることはやっぱり民間企業と違うんですよ。だからトラブルがいっぱい起こって、問題がいっぱい起こっています。

「成果主義・人事評価の徹底」というけれども、東京でも成果主義ははやってはるんですか。自分で目標を立ててそれを到達していくという。そんなんあります?それをいち早く入れたものですから、職場でのチームワークがなくなり、職員は全部自分だけのためにやる、職場風景ががらりと変わります。

それから「条例による懲戒・分限処分の基準と公開」はあるかもしれないけれども、給与水準を下げました。これはたぶんものすごく大きな影響があって、今も公務員の採用試験をしても大阪府も大阪市も給与が低いから公務員が集まりません。先生もそうです。今どこも人手不足といわれていますけれども、例えば教員の採用試験なんかも大阪府とか大阪市だけを受けるんじゃなくて、みんな併願しますね。それで通ったところに、近いとか、給与がいいとか労働環境がええところに行ってはると思うんです。大阪に通っても、他を通ってたらほかに行くとか、そんなかたちで本当に人が集まらなくなっています。だから給与水準の切り下げというのはものすごい問題だと思います。

公務員の削減とそれによる労働組合の弱体化

公務員を減らしていきましたね、どんどん切っていった。そうすることによって組合員数も減っていき、労働組合が弱体化していく。ここに「維新政治の内幕」という小西禎一さんと塩田潤さん、福田耕さんが書かれた本がこの6月に出ています。小西さんはもともと府の職員で、橋下知事のときに総務部長で財政再建プログラムをやった人です。だから大阪維新の会からは評価された人ですが、途中ですごくぶつかって辞められたんです。2019年には自民党と公明党と連合とに推薦をもらって知事選に出られて、私たちは自主的に応援しましたが負けました。副知事もされています。いま大阪府の正規職員は、2007年に橋下知事になる前は1万368人だったのが、2020年度には7276人と減っている。公務員組合、自治労とか、教職員組合ですけれども、そういうところが2009年には156組合あったのが2021年は144組合に減っていて、人数も2万人減っています。府庁だけじゃなくて、大阪府の自治体の公務員削減ですから、それぞれの組合も組織率が低く、少なくなっている。

教育にかかわるところも2009年度の277組合から2021年度は201組合に減って、ここも18000人くらい減っているということで、組合員数がものすごく減っています。組合員数減少というのは大阪だけでの現象ではありませんから、小西さんは組合員数の削減率を京都と大阪と比較しています。府庁で働く人ですが、京都が33%に対して大阪は37%、それから教職員組合の組合員数も、京都は36%で大阪は44%も減っています。いかに公務員の削減と基本条例で、ずたずたになって組合が弱ってきたか。それが選挙にも大きな影響を与えていることがわかっていただけると思います。「身を切る改革」で公務員削減あるいは議員削減をすればいいというのではなくて、今まである意味で戦後リベラルなところを担ってきた組合をつぶすことであり、それが輪をかけて私たちリベラルの派が少なくなってきていることにつながっている。組合のみなさまも本当に大変だなと思っています。

公務員削でコロナによる死者数は全国一位

「命」のことです。公務員削減で命が奪われました。公務員削減で保健師さんの数も少ないんです。人口10万人あたりで大阪は27.7人、これは2020年の厚生労働省のデータでは全国で2番目に低い。都道府県の10万人当たりの平均44.1人いてはるけれども、大阪は少ない。大阪府はコロナによる人口100万人当たりの死者数が全国1位です。なんでやろと思いはるでしょ。医療も問題ですけれども、やっぱり感染報告があった時に、初動で動かなあかん保健師がいないことがものすごく大きかった。札幌医科大学が計算してくれてはるものでみると、1番目が大阪です。2番目が北海道、3番目に多いのが高知県です。保健師がいないことが致命的やった。「いや、私らの責任違う」って吉村さんは言うてはります。けれども小松康則さんという大阪府職労執行委員長の方が、保健師さんの叫びみたいなものを毎日毎日アップしてくださっていたので、私たち勉強会をしたんです。

その時に小松さんが出してくれはった表があります。2000年のときには大阪府内に61保健所がありました。大阪市は24区全部に保健所がありました。地域保健法という法律が変わって保健所の持ち方が変わりました。確かにどこも減っていますが、2020年の段階で府内の保健所が61から18に減っています。しかも公務員削減ですからそれぞれの保健所の保健師さんが少ない。それが大阪のコロナ感染の時に初動が動けなかった。大阪市なんかはこの人口で1か所ですよ。私はこの時に横浜市だとかいろいろな政令指定都市の保健所がいくつあるのか調べました。途中で感染者数を国に報告せなあきませんよね。それが7000人くらい報告できていなかったとかね、そういうことがありました。やっぱり公務員削減というのは、人件費は少なくなったというけれども同時に失うもんもすごく多いというのが、これが象徴的なことだったと思ってこれを挙げました。

そのときに恥ずかしいことをやっています。まず市長ですけれども、コロナの感染者が増えて病院で対応できないから、防護服が足りんからみんな雨合羽を寄付してくださいって呼びかけたんですよ。思いつきなんで、現場の人と相談していないんです。松井さんはこういうことをやるんです。大阪市役所に送ってきはった雨合羽が1階の玄関のところに積み上げてあったんですね。これは積み上がり過ぎて消防法違反で、引き取り手がないんです。病院では使いようがない。希望者はとりに来てくださいとか、いろいろ配布したらしいけれども、結局は全部さばききれなくて処分したみたいです。こんなことをコロナの最中にやっているのが松井さんです。

吉村知事もひどいんですよ。ツイッターで「大変や、大変や大阪は」って言われるから、「予防薬ができれば、コロナとの戦いを一気に形勢逆転できる。」ってワクチンに賭けたんですね。「大阪の力を結集させ、治験、実用化に乗り出す。大阪府市、大学、病院機構。早ければ7月治験、9月実用化、年内量産。最前線の医療関係者から治験。大阪医学は、コロナに打ち勝つ力があることを証明する。」ってツイッターで言ったんです。私は医薬研究所のことがあったから、薬の研究ってどれだけお金と時間がかかるかということを知っていました。「こんなことできるわけないやろ」と思っていたんです。案の定、吉村知事が後押ししたワクチンが、75億円くらい国から補助金もらってやったけれどもうまくいかなくて、2022年9月9日に新聞が開発中止になったと報道しました。吉村知事の言い訳は「いやー、想像で発信したわけではないんですけどね」です。このワクチン発言でどれだけみんな「吉村さん、やってくれる」と思ったことか。テレビでは「吉村さん、頑張ってる」といって盛り上げたんですよ。でも何もならなかった。税金の無駄遣い。こんなことを大阪のトップはやるんです。

閉館させられた大阪人権博物館

次は「人権」です。大阪には人権博物館「リバティおおさか」という人権に関する総合博物館がありました。すごく立派な博物館で私も何度か行きました。これは大阪府、大阪市それから部落解放同盟の大阪府連などがお金を出し合ってつくった財団の運営でした。部落問題だけじゃなくてアイヌの問題、沖縄、水俣病の問題だとかグローバルな人種の問題だとか、総合的に人権の問題を勉強できる場所で、大阪の子どもたちの平和学習にすごく貴重な場でした。が橋下さんが知事になってから補助金出せへんと言い出して、いろいろ交渉があったけれども2015年、この時は橋下市長ですけれども「出ていってくれ」と。

賃料相当額分は損害賠償請求するということで裁判をして、2020年6月に和解でした。会館を明け渡して、賃料相当額も免除になりました。「大阪人権歴史資料館」という看板は丸木位里さんが書いてくださったものです。ここにあった所蔵品は大阪市の空いている施設に保管されていましたが、財団も新たな場所を見つけることができなくて、今年の3月、新しい館をつくるのはあきらめました。所蔵品は大阪公立大学学術資料として受け入れる方針で、協議中ということになっています。

大阪公立大学というのは、大阪市立大学と大阪府立大学が、これも反対がいっぱいあったのに一緒にされてしまいました。多分これから公立大学も中身が変わっていくと思いますが、そこでこれらの貴重な資料がどこまで生かされるか、私も本当に不安です。これが大阪維新の会の人権に対する考え方の象徴的なことだなと思って挙げました。東京新聞の『本音のコラム』でそのことを前川喜平さんが書いてくださっていたので、あとで読んでいただければと思います。最後の文、つらいですよ。「大阪人が世界に誇るべき人権の拠点が、大阪市によってつぶされた。大阪市の皆さん、本当にこれでいいのですか?」っていわれて「うーん」ってうならざるを得ないんですけれどもつらいことでした。

大阪府の人権・文化予算の削減

今度は「文化」、大阪府が人権と文化予算をどんなふうに削減したのかということです。大阪民主新報の2015年10月25日号に、宮原たけしさんという共産党の府議の方が当時のことをまとめてくださっていた記事がありました。宮原さんは高槻・島本から定数4人のときに共産党から出てくださった方で、いつもいろいろ発信してくださっていましたが、今は府議ではありません。「センチュリー音響楽団補助金廃止」と書いてあります。大阪府は文化財団みたいなものをつくって、センチュリー音響楽団を補助して応援していました。その4億円の補助金を打ち切った。音楽、クラシックに対して配慮がない。ついでに言うと文楽です。大阪といえば文楽ですけれども、文楽への補助金も打ち切っています。本当に悲しいですよ。

青少年会館は、年間50万人くらい利用してはるのが森ノ宮にありました。ここも廃止して長谷工に売りました。80億円で売る予定が32億円っていう安い値段で売られて、長谷工は494戸のマンションをつくってぼろ儲けかな?わからないけれども、そういうことをしています。また、大阪には国際児童文学館がありました。そこは児童文学の貴重な資料があった大事な場所でしたが、それも閉館させて府立中央図書館、前は中之島にあったのが東大阪市に移転していますが、そこの一角に移しました。そういう児童文学とか子ども文庫、家庭文庫とかいろいろな子どもの読書活動にかかわる方々は、ここの資料を生かすために専門職の配置を求める要望書を今もずっと出されています。公務員の削減というのはこういう専門職もどんどん切っていきますから、資料があったとしても、それが生きた資料になってこないということです。

「ピースおおさか」というのは大阪城のところにある平和資料館です。ここも補助金削減と展示内容を大阪空襲中心に改悪しました。これも元の展示に戻せという運動が続いています。南京大虐殺とかそういう加害の歴史、それから「侵略」という文言は一切使うなということで展示内容がガラっと変わって、今は大阪大空襲しかありません。大阪大空襲だけを見たら戦争の被害者みたいです。違うんです。やっぱり憲法9条があるのは、日本が侵略し加害をした。そこを知らないで、大阪空襲の被害だけを訴えていって平和にはつながらないと思うんです。こういうところにも大阪維新の会の歴史観が出てくると思います。

男女共同参画事業も、いろいろな相談事業がみんな打ち切られています。ドーンセンター(ドーンは「夜明け」の意味)、これは東京都の男女共同参画センター、ウィメンズプラザ、そういうのがドーンセンターです。そこもいろいろな機能が縮小されています。青少年会館を廃止した代わりに青少年センターを入れるというかたちで、縮小されています。すごいでしょう?これは一気に来るんですよ。

文化予算のあまりにもお粗末なのがつい最近メディアに出ました。これは東京でも出ましたか?恥ずかしいです。美術品105作品、2.2億円が咲洲庁舎の倉庫に入れてはったんです。大阪にはごみの埋め立て地があって、その一つの咲洲庁舎という府庁があるんです。そこに民間業者を入れる。歳入を増やすためにできるだけビルに民間を入れるから、そこの倉庫に置き場所がなくなって、地下駐車場に美術品が放置してある。もう悲しいですよね。横の写真は10月16日の毎日新聞です。大阪にはモノレールがあって、その公園東口駅のところにこういう展示物が無造作さに置いてあって、ひび割れとか剥離などがあるという。地下駐車場とは別にこういう扱いをされている。私もモノレールに乗った時に見ていて、「こんな雑な扱いをして、作品をおつくりになった方はどんな気持ちでいてはるんやろな」と思いました。つくられた方々はみなさん怒っておられます。でもこれが維新の会の文化に対する扱いがよくわかる象徴的なものです。

「大阪都構想」という統治機構

今度は統治機構の話で、大阪都構想というものです。大阪都構想というと何か大阪も東京都になるみたいに思うかもしれませんがちょっと違うんです。大阪市をなくして特別区に再編してやっていくというもので、東京のみなさんには特別区の問題はなかなかわかっていただけないかもわからないですが、私もここに書いてある本で勉強してわかったんです。例えばごみ処理場とか水道とかそういうものは東京都が主体ですよね。区がやっているんじゃない。一般市は、高槻もそうですが、水道も下水もごみもみんな市がやるんです。大阪市は広いけれどもごみ処理場もちゃんと配置してやっている。水道事業も大阪市は水道料金も前までは安く、上手にやってきはったんです。

特別区にするというのは、そういうこと自体も大変なことになるけれども、何よりも問題なのは、大阪市の事業所税とか法人にかかわる税金は全部市に入るんです。特別区はないでしょ。これが難しい。高槻なんかは高槻にある企業の法人に関する、法人の住民税とか事業所税とか、そういうのは高槻市に入って運営します。東京の場合は23区にはそういうお金が入らなくて全部東京都に入っている。東京都が23区に、調整をして区に渡してはるんです。だから大阪市が政令指定都市を辞めて特別区になるというのは、いったん大阪府に全部法人関係の税金を入れて、大阪府が調整して区に渡すんです。わかります?ここの説明が難しい。大阪市の人たちは今の大阪市でいいんです。何も問題ないんです。

維新が政令指定都市をやめて東京のような区にするというのは、大阪市民にとっては迷惑この上ない。住民サービスが下がることになる。例えば24の区役所があって、それぞれ住民票を取りに行くのは身近なところの24の区に行くわけです。ところがこれを特別区にして、24の特別区じゃないんですよ、合併していくから最終的には4つの案が出ています。4つの区になったら、24区から大体6区分くらい一緒になったら、そこの人はみんな区役所に行くのに不便になるじゃないですか。そんなかたちで個別に見ていったらいっぱい問題が出てくるのね。大阪市の指令指定都市を廃止して特別区にする、その特別区も少数にしちゃうから、それで反対運動が起きたんですね。

都構想というのは「大都市地域における特別区の設置に関する法律」でこういうことができることになっています。住民投票にかけなければいけないので、大阪市の住民投票にかけました。維新と公明は推進だけれども、自民、共産、立憲、市民の人達は反対です。2度住民投票にかけました。2015年5月と2020年11月で、大阪市民は否決しました。2度目の場合は大阪市民交流会というのができて私たちも応援に行きました。その時の写真を入れてあります。大阪市民だけじゃなく、私は東淀川区に行きました。いろいろな種類のチラシをつくって配って、そしてこの写真は投票日です。選挙の投票日は運動できませんが、住民投票のときには運動できるんです。1回目の時はあらゆる投票所に全部維新が1日立ったということで、負けておれんといって私は東淀川区に豊中の人と高槻でみんな入って1日立ちました。

やっぱり迷っている人もいてるので、どんなに市民サービスが悪くなるかというのを説明すると「なるほどなー」っていって、帰りしなに「あんたの言うとおりに入れてきたで」とかいうてくれはるので、決して無駄じゃなくて応援に行くのも大事だなと。この時は自民党の方も共産党の方も来れられてました。みなさんやっぱり地域を回りたいということで、「お願いします」というて探すと「まかせてちょうだい」ってがんばる。これは長長谷川義史さんという絵本作家が「大阪市がなくなってほんまにええんか よーく考えてや!」って大阪弁でポスターをつくっていろいろ工夫して頑張りました。

負けてもあきらめへんのが大阪維新の会。負けた翌年の2021年3月に府市一元化条例を出してきて副首都という――法律でも副首都なんて言葉はないんですよ。定義があいまいな副首都。大阪を副首都にしますということにして、大阪市と大阪府と府市一元化を進めていく条例をつくって、いま副首都推進本部会議を設置していろいろ進めています。この条例を議決するときに大阪市役所を取り巻きに行って「大阪市をつぶす『府市一元化条例』に反対です!公明党は、維新にこびず反対を!」ということでやったわけです。

看板政策のIR・カジノの対して直接請求で対抗

次は看板政策のIR・カジノです。いっぱいしゃべりたいことはあるけれど、IRというのは会議場だとかホテルだとか遊技場とか、カジノも含めた統合型リゾート施設のことをIRというんですね。それを大阪湾、大阪市が、ごみを埋め立てた夢州というところに呼んで来ようということで、最初は松井知事が「税金は1円も使いません」といって始めていました。

ところが経過はいっぱいあるけれども、2021年12月、こんなふうな整備計画をしますという事業書を、東京のカジノをやっているMGMとオリックスが発表しました。この時に、初めて地盤が緩いから700億ちょっとやったと思うんですけれども、大阪市が負担しますと出てきたんですね。約束違反です。府民の意見募集で、私も出したけれども「反対、反対」って出したんです。けれども結局議会で多数をとっていますから、府議会・市議会で整備計画案は同意議決されて、申請して今年の4月に認定されました。その途中で、それなら住民投票で決めてほしいということで住民投票を求める会が発足して、2か月で15万人集めれば住民投票条例を請求できるので、20万人を目指して頑張りました。

この直接請求は、条例は議員だけではなくそこに住んでいる住民も請求できるという、直接請求というものです。府全体で21万人集まった。私は高槻の方を集めました。これは高槻選挙管理委員会がこの人たちは本当に高槻に住んでいるかどうか審査しますから、そこに行った時の写真です。1万なんぼだったか集めました。各選管が全部チェックしたら、有効19万7千ということでした。7月に吉村知事に住民投票の条例案を提出しました。でも議会は臨時議会を開き、否決しています。自民党はこの条例案に外国籍の方も投票できるというのが入っていたので、それは認められないと修正案を出しはったけれども、それも否決されました。この時にも残念な思いをしています。このとき府議会には立憲の方2人、共産党の方2人いらした。代表質問ができるためには2人では認められなくて、本会議で意見を言えていないんです。だから府議会の議事録の中では、住民投票に賛成する議員の声は何も残らない。本当に私たちと一緒に一生懸命頑張ってくださった方がいらっしゃるけれども、残念です。

カジノの誘致の問題点です。「1円たりとも出さへん」といっていたのに、軟弱地盤のために液状化対策に700億円以上を市が負担する。これは万博にもつながってくるんです。それから事業者に大阪市の土地を貸すことになっていますが、貸すためのもとの鑑定額は4社のうち3社が一緒で、しかも安いということで、談合疑惑で裁判になっています。2023年9月に事業者と実施協定を結んでいますが、この実施協定の中身も違約金なしで事業者は解約できる、撤退できるというような不公平な項目があったり、協定そのものがまだ公開されてません。

アクセスも非常に不十分で、はたして「これだけ来ます」というてはる人がたどり着けるのかどうか、それ問題です。それからギャンブル依存症の問題に取り組んでいる人の話を聞きましたが、コロナでオンラインギャンブルがものすごく進んでいるんですね。公営ギャンブル、競馬とか競輪、ボートレース、もうびっくりするくらい現場に来ずにオンラインで、私も言われてこれをみましたけれども、すごく簡単にできるんですよ。お金もすぐに、コロナ禍で銀行とつながっていて借りられるから、大変なことになっています。そんなときに、あんなところに来てもらうんやといっても、多分想定したほどお客さんは来ないと思うのでどうなるんかと思います。もし事業者が違約金なしで「もうやっぱり、やめますわ」ってやめはったら、これまで液状化対策とかで使ったお金は部無駄になるわけじゃないですか。だからこれは、「どぶに捨てたも同じ」です。許せないです。

夢州は大阪市のごみの埋め立て地です。ごみといってもいろいろあります。有害な特定管理廃棄物、それから大阪湾は川からいっぱい土砂が流れてきていて、船を入れるためにしょっちゅう浚渫せなあかんですね。そういう浚渫土砂だとか、それから大阪市のごみの焼却場も入っていて、ゆるゆるなんです。ここがカジノの予定地で、これが万博の今問題になっている予定地です。ここだけはコンテナヤードで大きな貨物船がきて、ここにコンテナが入っていている。アクセスは、一本ある市営地下鉄で不便なところなんですよ。ここで万博やるの?って恐ろしいでしょ。

夢州は最初万博の誘致の候補地に挙がっていなかった。とにかくここは軟弱地盤やっていうので、普通の工法では建てない。いまの関西国際空港も、海の上に建てたけど毎年沈んでいるから、しょっちゅう工事して支えているんですよ。私もIR・カジノ誘致の資料を見ました。万博もですが計画段階でここの特徴である地質の特性みたいなものは一切書いてない。だからみんな普通の地盤や思って進めたんやと思うけれども、いざ建築しようと思ったら、これがやっぱりネックになっているんです。このままのコンテナヤードと廃棄物がまだまだ埋められたから、ここのままにしといた方が無駄な税金も使わなかったと思うんです。突然ここにカジノを持ってくるということで、こんなことになりました。ここに「『カジノに反対する大阪連絡会』HPより」と書いておきました。9団体で構成されていて専門家の方々も入って、いろいろな面から問題提起しています。私もこの会の資料で勉強させていただいています。

軟弱地盤が一番困りものの大阪・関西万博の問題点

万博の問題です。この写真覚えてはりますか?「いのち輝く未来社会のデザイン」ってコンセプトで2025年4 月13日(日)~10月13日(月)まで184日間、夢洲でやります。今すごくテレビでも万博に問題があって、ビデオも流れていますね。なんかいいように見えるでしょ。でも会場の広さは159ha、1970年の大阪万博のときは330haでした。その半分以下の面積のところにいろいろなものを詰め込むので、はっきり言ってなんかしょぼいです。これがイメージ図で、問題になっている海外のパビリオンはこのブルーのところです。ここが全然進んでいないから、空き地になるかもしれないということが今言われています。

問題点をちょっとだけ書きました。「万博の華」といわれている海外パビリオンの建設が遅れているというんですけれども、一番の問題は、東京オリンピックで新国立競技場ができるときに、森山さんという建築家の方がいろいろな問題点を出してくれています。あの方は万博賛成だけれども出しています。わずか半年間の建物だけれども、地盤が緩いから杭を50m 入れなあかん。終わった後はそれを全部抜かなあかんし、半年後には更地にしていかなあかん。杭を50m打つのも大変だけれども抜くのが技術的に大変で、その抜いたものはまた廃棄物になる。それにもお金がかかるから、みんな海外パビリオンはためらうんやというてはりました。この地盤の問題を抜きにして計画したことが、そもそもの間違いです。決して物価高騰とか人が足りないということじゃなく、ここの地盤がいかんかった。それと「約50か国がパビリオン」って言っていますけれども、正確な数字がわからないんです。これもおかしいでしょ。発表されていません。

今問題になっている会場建設費は1250億円⇒1850億円⇒2350億円と膨らんでいて、ここにきて、これをどこが負担するかもめています。1970年の万博のときには黒字になってお金が余った。それを国と大阪府とかが相談して国際交流のために使いましょうと、190億円くらいの資金の運用をもとにいろいろな国際交流に補助金を出していました。その基金を崩してこの万博に使うって、ひどいでしょ。そういうことを吉村知事はつぶやいています。それから、アクセス不十分で来客がそんなに会場に来られない。地盤も緩いですから、工事期間中も万博期間中も南海トラフの地震が起きたり大きな台風が来たら、大変な被害が出て孤立しちゃうんですよ。だからとてもじゃないけれども、たくさんの方が一気に来るような施設をつくるところとしては不適地です。

お金はこの会場費だけじゃありません。ほかにも関連道路の整備だとか中をいろいろ整備するとかで、関連費全部で1兆円といわれています。多分今度の国会で出てくるかもしれませんが、それも膨らむ可能性があります。こういうのを税金を使ってやっていいのか。本当に大阪だけじゃなくて皆さんにも考えていただきたいと思います。

安倍政権下、万博とIRのセットで進む夢州開発

いま「大阪万博中止でええやん」というチラシを配っているんです。都構想に反対したりしてずっとやってきたグループで「どないする大阪の未来ネット」のチラシです。ここも5つ理由を挙げています。何で万博中止かという最初のところに「松井一郎知事の思いで夢州に決まった」って書いてはるんです。思いつきで決まったみたいに書いてあります。2つ目が、会場建設費が膨れ上がっている問題。3つ目が「建設工事の労働者は残業し放題」と書いています。東京オリンピックのときにも大変な負担がかかったみたいですけれども、来年4月から残業規制が建設業界にもかかってきますね。それを万博に関しては外してくれという要請を万博協会は政府にしたようです。とんでもないですよね。何が「いのち輝く」やと思うんです。それから「公金投入する」って書いてあります。それで「松井一郎知事の思いつき」っていう資料を今朝作りました。橋下さんが2008年に出て、2011年の大会でカジノのことについて、夢州を開発し、IRを呼んで来ようというのは橋下さんの時にできています。IR立地コンセプト素案ですね。

松井知事と橋下市長が入れ替わって、橋下さんが知事を辞めて大阪市長になり、松井さんが知事になるというのは、表向きは都構想実現のためとなっていたけれども、私はたぶん夢州の開発も絡んでいるのと違うかなと思います。夢州は大阪市やからね。この時は、大阪市は平松といって維新と違う方が市長だったので動かなかったからです。そして夢州の開発はずっと動いています。堺屋太一さんっていてはりましたね。あの方は1970年大阪万博のプロデューサーで一番の責任者です。この方が「あそこでもう一度万博を」ということを2014年のころには言うてはるんです。堺屋太一さんは大阪維新の生みの親というか、橋下さんの後ろにいた人です。そのこともあってか、2007年4月、国際博覧会大阪誘致構想検討会というのがその中でできました。その時の候補地は6か所で吹田の万博記念公園は入ったけれど、夢州は入っていません。ここは一応専門家も入って検討会をして、答申を出してはります。2015年9月にミラノ博がありました。イタリアに行って見てきていまね。

2015年5月の住民投票で負けて「都構想だめ」って言われたから、2015年11月、橋下さんは責任をとって辞めています。それで横山市長になりました。この年の12月に橋下さんの慰労会も兼ねて安倍さん、菅さん、橋下さん、松井さんで忘年会をしています。その時のことが、この5月に、松井さんが政治家を辞めてから出してはる「政治家の喧嘩力」っていう本の中に書いてあります。それを読むと、忘年会で松井さんは万博の意義とかIRのことを説いたんですって。そしたら安倍さんが「菅さん、ちょっとまとめてよ」って言って、大阪万博が動き出したと書いてある。忘年会で動き出した。それまでは夢州のことは何もないんです。

翌年、ここで大阪府が2025年万博基本構想検討会議を立ち上げて、そこで6か所以外に夢州も挙がっています。ここで入ってきた。そして議論の中で夢州に決まっていくわけです。だからこのチラシにも書いてあるけれども、ここで大きく夢州万博が動いただろうということで、私はこれを読んでショックを受けました。忘年会でやるのかと。IR推進法はここでも出ているけれども、この間やっぱり自民党の中でも、国会の中でも動く中でIR推進法ができた。安倍さんの時ですね。3か所とかいうけれども、万博とIRがセットになって夢州の開発が進められていったと。万博とIRとうまいこと場所を分けてあるでしょ。万博を口実に、たぶん税金をいっぱい使ってアクセスなどを整備する。それは半年間で終わり。あとはそれをつかってIRで金儲けをしようと。そういう絵が描かれていたんじゃないんかなと私は推測しています。

大阪府民・市民サービスの低下と維新議員の不祥事

では、どんなに市民サービスが下がっていったかということです。岸本聡子さんが「自治体の職員や施設はコストではなく財産だ」と記者クラブで言われたと、つい最近の赤旗の記事にありました。本当にそうだと思うんです。自治体というのは、コストですべてを見てしまったのでは福祉は実現できません。私たちが大阪維新の会とたたかうときに、そこを基本的認識にもってやっていかないかんのかなと思います。それから維新の不祥事の事例でいうと維新の議員はこんなことをするんですよ。大阪市議が校野市議選に応援に行ったときに、公営ポスターの他の党の画像を加工して自分のところだけ残して、自分のSNSにアップしている。これも批判を食らいました。それから伏見枚方市長も維新ですけれども、祝勝会をやってお詫びをしています。選挙に勝っても公職選挙法でそんなのやったらあかんのですよね。それで議会が問責決議を上げています。

高槻の池下卓という衆議院議員、辻元さんに勝った人です。この人は高槻市議2人を公設秘書に雇っておいて隠していたとか。また池下さんは最近、政治資金収支報告書にも不記載ということがあった。もう本当に毎日毎日出てくるたびに怒っています。

メディアの問題もあります。ジャニーズの問題もあるけれども、同じことが大阪では吉本新喜劇との癒着があるんじゃないかと思っています。テレビのワイドショーとかに吉本の人がしょっちゅう出てくるけれども、その中で維新をほめるんですね。「吉村さん、ようやってる」とか「松井さん、ええやんか」とか大阪弁でね。それが刷り込みに入ってくる。読売新聞と大阪府とは包括協定を結んでいて、教育、人材育成、情報発信などで連携・協働しています。メディアってやっぱり監視機能が大事だと思うけれども、その機能もなくなりつつあるという感じです。

もう一つ大阪府の特別顧問、特別参与制というのがあります。こんなん東京にはあります?少人数ですけれども。ここに専門家の意見を聞くということで、特別に上山信一さん他、それから大阪万博関係について意見を聞くのは森下竜一さんが入っています。それから和泉洋人さんは、まちづくりについてはすごくアドバイスをしてはります。上山さんという方は、もともと運輸省にいらっしゃって、運輸省を辞めてマッキンゼーのアメリカにいってはって、公共政策とか行政評価、行政経営のプロフェッショナルで有名な方です。この方が、2008年に橋下さんに乞われて大阪府の特別顧問に就任されました。2011年の選挙のときには、大阪維新の会の政策特別顧問です。この方が、大阪府のいろいろな政策にアドバイスをなさっている。森下さんは吉村知事のワクチンに関係しています。この方もいま特別顧問に入っていて、万博の大阪パビリオンの総合プロデューサーに入ってはる人です。

副首都推進関係と特別顧問の関係ということで、担当課が上山さんに意見を聞いて、その結果をまた反映させるというんです。2022年度は30回特別顧問の意見を聞いていますが、そのうち16回は上山さんです。2008年からずっと橋下さんから乞われてきていますから長いんですよね。意見を聞くだけじゃなくて、副首都推進本部会議にも時々出てはります。市役所で出てきた証拠品で「結論 特別顧問の以後意見を踏まえ、引き続き検討を進める」って、何かすごく偉いさんな気がしません?副首都推進本部の6月2日の第9回会議に関係職員以外に上山さんも出ておられて、大阪の改革評価~15年の改革をふり返る~」というすごいペーパーができるんです。あくまでも政策のアドバイスをするだけの上山さんが、こんなかたちで特別顧問で名前を連ねているのはすごく違和感を感じます。

他の有識者の意見はペーパーだけで出ています。15年間の、橋下さん以来の府市のいろいろな取り組みを評価するんだったら、専門家が集まってお互いが議論してまとめていくべきだと思いますが、専門家の議論はペーパーだけで上山さんがやるという、このやり方も独断的だなって私は思っています。

いろいろな資料が出てきますが、人口10万人当たりの職員数の比較です。赤いのが大阪府、47都道府県の中で最低になりました。これが「いい評価」なんです。何か悲しくなります。「都市の経営における自治体が果たすべき取組」ということでインフラ整備もあるけれども、「現役世代への重点投資」です。だから維新の言うてはることを聞いていたら、私ら高齢者は対象じゃないんですね。「現役世代」なんですよ。それが教育無償化ということにつながってきます。維新のホームページに、「教育無償化で、大阪を元気に。」と、いかにも維新が全部無償化を進めているみたいですけれど、国の補助金も入っています。私は教育総体の問題というのは、無償化だけの話で決めるものではないと思うんですね。35人学級はどうやとか、給食費も無償化しているというけれども、私は「安全な給食を」ということをやってきました。センター方式と自校方式やったら自校方式とかね。そういうものも含めて考えていかないといけないのに、とにかく無償化してますって、お金ばっかり宣伝して現役世代を引っ張っていく。いま教育関係者の方が維新の教育無償化のことについてはいろいろ勉強会をして、批判を出すとおっしゃっていましたので学ばせてもらおうと思います。

大阪維新の会の選挙・現役世代を重点に

大阪維新の会の選挙はどうですかと聞かれたので、ちょっとだけ言っておきますけれども、元気いいです。チラシを配るときに私は一番すごいなと思います。それから徹底してどぶ板やってはりますし、名簿は確実に持っています。ターゲットが絞られて、現役世代重点です。私のひがみかもわかりませんけれども、駅前を通っても私なんかに「どうぞ」って言われるより無視されることが多いなって思うんです。最近産経新聞に出ていたのは、「候補者は1日600本電話、300回握手、10辻立ちをせよ」というノルマがあるとか言われています。大阪の場合は、在版メディアで維新の議員の方が出てくるのが多いからイメージ作りがあるんですけれども、すごく上手です。駅でもどこに立てば人通りが多いかとか、どこに立てばみんなに声が聞こえるかとか、マイクの性能も含めてプロが指導しているみたいな感じで、私らではとても太刀打ちできないくらいの上手さがあります。だから辻元さんが負けた時の選挙もあらゆるところから若い人がでてきて、大学のサークルみたいなノリで駅前でやるわけです。もう高齢者は太刀打ちできないムードを醸し出す。これが維新の選挙です。

大阪維新の会と憲法

憲法で大事なのは。私は地方自治、第8章だと思います。みなさん9条とか基本的人権が出てくる15条とか25条はよくご存じだと思いますが、憲法には第8章に地方自治があって4つの文章が載っているんですね。〔地方自治の本旨の確保〕「第九十二条地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。」とあって、ここで議会を設置するということがあります。地方自治の本旨というのは、一つは住民自治と団体自治のことです。住民自治というのは地域の住民が地方政治に参画して地域のことを自ら決定することです。団体自治というのは、地方自治体の自律権を保障して、国から指示されるのではなくて団体で決めていくという、この2つが憲法ではうたわれている。その前にいろいろ書かれている人権保障とか民主主義を実現するために92条があって、それに基づいて地方自治法がつくられています。

地方自治法の第1条の2には「地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとする。」、これをやるのが地方公共団体です。けれども維新は違いますよね。おこぼれは皆さんにまわすけれども、経済は成長やっていうのがメインですから、ここがもう根本的に違います。これは総務省のホームページに書いてあるけれども、「議会は、地方公共団体の意思を決定する機能及び執行機関を監視する機能を担うものとして、同じく住民から直接選挙された長(執行機関)と相互にけん制し合うことにより、 地方自治の適正な運営を期することとされている」。執行機関と議会はけん制しあわないかんのですよ。でも維新の「身を切る改革」の議員定数削減で、少数者の意見は反映されなくなり、多様性が失われ、かつ、この人たちは「首長と第1会派をとる」っていうんですよ。それでは憲法や自治法が議会に求める役割「相互にけん制」する機能を果たせないですよね。そういうものを弱めていくというのは、ますます維新「独裁」を加速化させていっていると私は今思っています。

議員定数は民主主義の重要なファクター

大阪維新の会は憲法の事は書いていませんけれども、日本維新の会はちゃんと書いています。ここに歴史観のことを入れました。2013年5月に橋下大阪市長が「慰安婦制度は必要だった」といったので抗議に行ったときにNHKニュースで放映したときの写真で、出ているのは私です。2014年4月に大阪国際平和センター(ピースおおさか)の展示が変えられました。それから吉村大阪市長が2018年10月に、サンフランシスコで「慰安婦」の平和の像・少女像が建てられたらことで姉妹都市を解消するといって、解消してしまいました。ですから歴史観も私たちと180度違います。

最後に、大阪維新の会は憲法も立憲主義も尊重しません。「身を切る改革」で、議員定数削減を行い、少数の意見や多様性を切り捨て、憲法にうたう「地方自治」、つまり「主権在民」「基本的人権の尊重」を地域で具体化していく仕組みを壊します。議員定数は、民主主義の重要なファクターになっていることを、私は市民のみなさんにわかっていただきたいなと思うんです。これは私が議員をしているときにも議員定数削減といっても周りの人たちはぴんと来ないんですが、本当に大事なことだということをわかってもらいたいんです。

さらに自治体を「経営」対象とし、コスト優先で施策を切っていきます。自治体の職員も施設も、コスト・効率で評価するのではなく、多くの要素をあわせもった「財産」としてみるべきではありませんか。これはまさに杉並区長さんと同じ思いです。「住民の福祉の増進を図ることを基本とした自治体」を取り戻すべく、大阪では、本当にさまざまな団体・個人が力を合わせてがんばっています。目の前のまずは万博・カジノを中止させて莫大な公金を無駄遣いにさせたくないんです。そして主権在民、基本的人権の尊重、地方自治、平和を大切にする「大阪」にしたいのです。全国のみなさんにも大阪維新に支配されつつあるこの現状をご理解いただき、力を貸して下さいということで今日は終わらせていただきたいと思います。

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