私と憲法27号(2003年6月発行)

運動は、有事3法を発動させないための新しい段階に入った

事務局・高田 健

2002年年頭以来、1年半にわたった有事3法案阻止の運動は、法案を批判する世論の高まりの中で、通常国会、臨時国会と継続審議に追い込んできたが、昨秋以来の反北朝鮮キャンペーンの中で世論が逆転し、民主党が雪崩をうって賛成に回り、敗北した。国の進路を大きく変更するだけでなく、憲法違反が指摘される重要法案に国会議員の9割近くが賛成するという異常な状態に、与野党協議を推進した自民党の久間理事すらが「これでいいのか」というほどの状況だ。

だが周知のように、この法案は「プログラム法案」にすぎない。今後、1~2年の間に、政府は米軍支援法、自衛隊協力法、「国民保護」法、国際人道法関連法などをはじめ、50本を超える諸案件を審議していかなくてはならないといわれている。まだ有事法は完成していない。

これとの闘いの過程で、今国会で私たちが十分にはなしとげられなかった市民への訴えを強める必要がある。有事3法を発動させない闘い、この戦争法を骨抜きにし、廃案を勝ち取っていくための新しい運動がただちに組織されなくてはならない。運動は新しい段階に入った。「WORLD PEACE NOW」の仲間たちが言っているようにまさに「挫折禁止」だ。

あわせてこの国会を延長して政府が出してきた「イラク復興支援法」(イラク派兵法)や「テロ特別措置法」延長などに反対する課題が緊急の問題だ。

有事法制を発動させない闘いとは、その最も肝腎の課題が北東アジア、わけても朝鮮半島の平和を実現する課題であり、日朝国交正常化と日朝間の過去清算問題、拉致問題などの解決、そして北東アジア地域の非核地帯化の実現だ。これを実現するなら有事法の口実はなくなってしまう。これは政府がすすめる「戦争の道」に正面から対決する「平和と共生」の道だ。今後、この課題は私たちの反戦運動にとって最大級の課題となるに違いない。ブッシュの軍事力を軸とする世界戦略に一体化し、戦争準備と挑発をつよめる小泉内閣と対決し、この21世紀に北東アジアの非核・平和と共生のための国際的な平和機構の創設を実現する課題を民衆の側からも積極的に提唱し、推進していく必要がある。

同時に有事法制を発動させない闘いは、「国民総動員」を拒否する運動の形成であり、業務従事命令に対してストライキをもって阻止できるような労働組合運動の形成・強化をはじめ、ひとりひとりの市民や、地方自治体、さまざまな諸団体の戦争非協力宣言運動などを通じて、社会の軍事化を足元からくい破っていく闘いの組織化だ。私たちはこれらの運動にただちにとりくんでいく必要がある。

有事3法を成立させた小泉政権は、通常国会を7月下旬まで延長して「イラク復興特別措置法」を成立させようとしている。イラク攻撃の最大の口実とした「大量破壊兵器(WMD)」はいまだに見つかっていない。ブッシュ政権が喧伝したイラクの「核兵器開発の証拠」はIAEAからも偽造だと指摘されたし、米国防情報局は昨年秋の段階ですでに「イラクに化学兵器が存在する証拠はない」と述べていたことも明らかになった。アメリカとイギリスの議会はそれぞれの政府の調査に乗り出した。イラク攻撃は攻撃のための攻撃であったことはすでにあきらかだ。

にもかかわらず、従来から日本に集団的自衛権の行使を強硬に要求してきたR・アーミテージ米国務副長官はこのほど来日して「ブーツ・オン・ザ・グラウンド」と称して1000人規模の自衛隊の部隊のイラク派遣を要求した。小泉内閣はこれに応えて米英軍の占領行政に政府の要員を派遣し、自衛隊を協力させようとしている。軍事占領行政への参加は「自衛のための必要最小限を超える」(1980年の政府答弁書)との従来の憲法解釈をいとも簡単に放棄して、自衛隊を戦場に派遣しようとしているのだ。小泉内閣は「イラクの非戦闘地域への派遣だ」などと説明し、法案の矛盾を取り繕おうとしているが、米中央軍のマキャナン司令官自らが「イラク全土が戦闘地域だ」と言明しているのだ。

すでにイラク国内ではさまざまな人びとが米英軍のイラク占領に反対して闘っている。まさに「イラクの問題はイラクの人民の手に委ねよ」こそが侵してはならない原則だ。自衛隊の派遣は独立を要求するイラクの人々に敵対することとなり、戦闘への参加に道を開くことになる。これは完全にアーミテージの望む「集団的自衛権の行使」の具体化だ。自衛隊員に人を殺させてはならない。自衛隊員も死んではならない。

戦争への道を開く有事3法反対! イラク「復興支援」法反対! 対テロ特別措置法の延長反対! 自衛隊のイラク派兵反対! 朝鮮半島に平和を!
(最近、いくつかのメディアにかいたものに加筆しました)

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