私と憲法27号(2003年6月発行)


衆議院憲法調査会高松公聴会を傍聴して

改憲反対の声はこんなに多いのに(第九条の会ヒロシマ:藤井純子)

6月9日、瀬戸大橋を渡り四国に入ると讃岐平野は畑が広がり、山に囲まれた広島と違って明る~い感じでした。元気な香川の人たち… こんな土壌だからかもしれません。会場に着くと「けっとばせ!有事法制 香川の会」のアピールがもう既に始まっていました。そして8回目の高松公聴会を、傍聴しました。

今回、公聴会の意見陳述に応募した人は41人。少ないですね。だってホームページでしか知らされていないのですから。テレビ、ラジオ、新聞などでもっと広く知らせてほしいものです。そして選ばれた人6人は15分ずつ意見陳述をし、8人の議員からの質疑も15分ずつ行われました。聞くところによると、九条に関する応募者21人の内、17人が九条改悪反対。にもかかわらず、このテーマで選ばれた3人のうち2人が改憲賛成派という首をかしげるような人選だったようです。「意図的?」としか思えません。意見を聞いてみても、説得力のある力強い憲法改悪反対派に対し、支離滅裂で議論に耐えない改憲派って感じ。「まるで護憲集会のよう… 」という人さえいたくらいです。その中で私が印象的だと思った意見陳述、質疑をいくつか。

第9条、安全保障の観点から、草薙弁護士は「九条は大切。そのため世界各地で地域安全保障協定を結ぶ。また、国際法を実効あるものにしていく。将来、各国は自前の軍隊を持つことをやめ、大国(アメリカ)の利害で動かされない国連軍を創設する。」という意見。それに対し議員から「国連にまかせるような信頼関係ができた時は、国連軍も必要でなくなるのでは?」という質問が出て「武力でダメなんだ」と思う私たちの気持ちを代弁してもらったようで嬉しくなりました。でも「やはり法の支配のために力が必要だ」と繰り返され、丸腰では不安と思う人には説得力のある護憲論になるのかなぁ? もう少し議論が必要だ、と感じました。

基本的人権の観点から、根本博愛四国学院大教授は「憲法九条は安全保障の面だけではなく、表現の自由や批判の自由などを支えている。(樋口陽一さん曰く)九条は究極の人権保障。新しい人権(プライバシー、知る権利、環境権)といっても今の憲法に当然含まれている。そもそも公共の福祉は人権を守るためのものであるはずだと、九条を改正し、公共の福祉で基本的人権に制限を加えようとする人たちをスッキリ論破されました。

教育の観点から、元教員の西原一宇さんは「最近、教育基本法の改正が言われるが、どこが悪くて改正せよというのか? 子どもたちは丁寧な指導をすれば立ち直ることも出来る。迷い、失敗しながら成長するものだ。憲法や教育基本法の理念を実現していない今の教育が落ちこぼれをつくっている。」と指摘。改憲派議員の「最近の登校拒否や少年事件は…」というあやふやな質問に「その二つはまったく違う問題だ。改憲より「子どもの人権」から考えるべきだ。憲法調査会は憲法の実効性をもっと調査しろ!」と力強く発言されました。

地方自治の観点から、行政法の専門家、鹿子嶋仁香川大法学部助教授は、「有事法の首相による代執行は最もあってはならないこと」と指摘され「地方自治をしっかりとしたものにすれば住民にとって危険な有事法を間接的に使わせない防波堤になりうる。憲法9条の平和主義が民主的な社会を支える。」と強調されました。

改憲派大学生の高木健一さんは「平和主義の理念では平和は保てない。九条を改正し違憲の自衛隊をすっきり合憲にしてテロから国を守る。」と言い、議員からの「世界最大の軍隊を持つアメリカでもテロは撲滅できないのに軍隊は必要か?」の質問にも「そうかもしれない…でも守るために軍隊が要る」と議論になりません。

婦の坂上ハツ子さんは、とにかく時代に合わないから改憲…の一点張り。しかも「自分の国を守るため9条2項を改定しよう。」 ただひとつよかったのは「夫婦別姓選択制」は賛成という問題でした。

最後に傍聴者からの発言を聞くのがこのところの恒例になっていますが、発言は全部護憲派でした。4人ともこぞって「憲法の実現こそ重要」「平和憲法こそ世界が生きるための現実的な道だ」と訴えられました。そして「この公聴会を単なるアリバイにしないで!」「市民の声をしっかり聞いて!」「政治家はなまけず憲法を守り、外交をしっかりやってくれ!」と注文をつけ、大きな拍手がわき起こりました。

公聴会後の報告会は、多くの参加者で会場があふれました。護憲派議員や公述人の参加があり、陳述にもれた人がどんどん発言をされました。私も、広島県内の86自治体に有事法への意見書を国に出す要請をし、23自治体から出たことを話す機会を得ました。「自治体も捨てたもんじゃないね」と鹿子嶋助教授。自分たちもやってみようと言われた人がありました。自治体の平和力を市民が喚起することもできるのではないでしょうか。

憲法を改悪するなというまっとうな意見が多くても、改憲派が支離滅裂でも記録として残り改憲へ、軍事化へと進んでいくのかと暗い気持ちになりそう。でもへこたれるわけにはいきません。「憲法が実現されているかを調査しろ」と強い意見が出ました。有事法の中身の審議の中で、民主党が「基本的人権の尊重」を入れたことを最大限使い「憲法を活かせ」と声を大にすることもできます。自治体の平和力もあります。アジアの声もあります。

次の地方公聴会は広島かというのがもっぱらの空気のようです。秋か、来春か… アジアの人たち、全国の皆さんとつながって、改憲派が「これでは改憲はまずいよ」というくらい、アイディアをいっぱい出しあって平和主義を貫いていきたいと思っています。その時はどうぞ応援して下さい。

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あきらめないで
これからもねばりづよく(香川県議会議員:渡辺智子)

衆議院憲法調査会の高松公聴会が開かれました。意見陳述人に応募したけど、ボツになり、傍聴をしました(後で聞けば、9条に関する意見陳述応募者21人のうち、17人が9条改憲反対だったのに、このテーマに関して選ばれた3人のうち2人は改憲賛成派というアンバランスな結果でした)。

改憲派はどんな理論武装で来るのだろう、聴くだけなんてさぞかしフラストレーションがたまるだろうな、と心配していましたが、説得力のある力強い護憲の理論が提示され、改憲派と思われる議員の質問も鋭さを欠いていて、ある人いわく、まるで護憲集会のよう。

改憲派は、「アメリカの軍事力でもテロは防げなかった」と言いながら、「テロがあるから軍事力が必要」というような矛盾もあらわで、憲法が現実に合っていないから変えねばならない、という逆立ちした論理。説得力は全くありませんでした。

興味深かったのは、護憲派の弁護士さんの、欧州のように世界の各地域で地域安全保障協定を結び、各国は独自の軍隊を持つことを止めて国連軍を創設する、そして、遠い将来、国連軍もなくなることを望む、という意見。もちろん、この場合、大国の利害で動かされるような国連軍、ましてや湾岸戦争のときのような「多国籍軍」などであってはならないのは当然のことでしょう。

「軍」と名のつくものには、すべてNO!と言いたいところですが、この点について、社民党の議員が「各国が自前の軍隊をやめて、国連軍を創設するような信頼関係ができたときは、現実には、すでに国連軍が必要でない状態になっているのだろう」とコメントされたのが印象的でした。

国連、国際刑事裁判所などの国際機関を民主的に機能させ、そこでさまざまな問題を解決できるようにすることが重要だ、という考え方の延長線上に、この国連軍による法の支配という考え方もでてくるのでしょう。多くの人に説得力をもつであろう護憲論として興味深いものでした。非暴力の理念と、それを実現する途中経過としての「国連軍」という考え方について、もう少し頭を整理してしっかり考えてみなければ、と思いました。

この公聴会では、憲法9条は安全保障の面だけではなく、表現の自由や批判の自由などを下支えするものであり、平和主義と人権は密接に結びついているという意見、さらに、行政法の専門家からは「有事法制と地方自治の間には強い緊張関係がある。地方自治という観点からは、首相による代執行は最もあってはならないこと」という指摘があり、憲法9条の平和主義が民主的な社会を支えるものであることが改めて強調されました。

4時間に及ぶ公聴会の最後に、傍聴者に発言の機会が与えられるのですが、幸い私も、4人のうちの一人として発言できました。意見陳述者の「古い国益観(アメリカに従っておかないと損をする)に左右されるのではなく、人類益を考えるとき」という発言に刺激され、アメリカ追従の危険性をイラク戦争の問題点を通して訴え、平和憲法こそ世界が生き残るための現実的な道だということを訴えました。そして、最後に、一番言いたかった「この公聴会を単なるアリバイにしないで!市民の声をしっかり聞いて、きちんと議論して欲しい」ということも訴えました。

夕方の報告集会にも会場に入りきれないほどの人が参加。有事法制の成立などでがっくりきていた私に、あきらめるもんか!これからもねばり強く活動を続けるぞ!!という決意を新たにさせる1日になりました。

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