これから先、過去を振り返れば「2022年は大きな分岐点だった」と間違いなく思い起こされる1年だったのではないだろうか。2月24日にロシアによるウクライナ侵攻。参議院選挙真っ只中の7月8日、安倍元首相の銃撃。そして12月16日における安保3文書改訂の閣議決定。
ロシアによるウクライナ侵攻は長期化するとともに、核兵器が飛び交うような第3次世界大戦に繋がる導火線の様相を一段と濃くしている。世界の秩序は音を立てて軋みはじめ、好戦主義者、軍国主義者、独裁者は色めき立ち、死の商人は手ぐすねを引いている。今、世界は国連などを舞台にして「ロシアにつくのかウクライナにつくのか」を巡り、対立し流動している。対立が激化して「熱い戦争」に転化するのか、それとも膠着して「新な冷戦」体制となるのか。
そんな中、日本の岸田政権はアベ政治の「戦争できる国づくり」を継承し、ロシアの侵攻非難の高まりに便乗して中国の脅威(台湾有事)、朝鮮の脅威(朝鮮有事)を一層声高に叫びたてながら大軍拡を推し進めようとしている。「平和のための抑止力強化」と批判を逸らせようとしているが、そもそも使う気がない武力は抑止にならないわけであり、歯止めのない軍拡は偶発的衝突を必然的にもたらし、必ず戦争を招き寄せることは歴史が教えている。
2015年の戦争法(安保法制)の時、当時の安倍首相は成立しても「何も変わらない」と批判をかわそうとしていたが、12月16日に閣議決定した防衛3文書改訂においてはさすがに「何も変わらない」とは言えないため「安保環境の激変」に対応した「日本の安保政策の大転換」であることを認めざるを得なかった。この防衛3文書の改訂がもたらすものは、平和国家の殻を内側から音を立てて壊しながら生まれてくる軍事大国という怪獣に他ならない。また、その莫大な財源のために社会保障や教育、そして社会的インフラなど命と暮らしに直結する財源が削られ、さらに増税が課せられることは必至だ。まさに「軍栄えて民滅ぶ」「貧国強兵」社会の出現だ。
7月10日の参議院選挙投開票日を2日後に控えた7月8日、奈良県で応援演説中の安倍元首相が統一協会のいわゆる「宗教2世」の男性が放った銃弾を浴びて死亡した。この事件はまるで「パンドラの箱」を開けたように、統一協会と自民党とのズブズブの癒着をさらけ出した。選挙運動員や秘書を提供してもらう見返りに広告塔の役割や、霊感商法など違法活動に対する摘発を妨げたりするなどの相互利用の果てに改憲やジェンダー平等の否定など政治的内容にも一体化していた。「戦争を知っている奴が世の中の中心である限り日本は安全だ。戦争を知らない奴が出てきて日本の中核になったときが怖い」(田中角栄)という予言(?)はまさに的中している。日本会議、神道政治連盟や創価学会、そして統一協会。教義は全く相いれないにも関わらず「反共」で手を結び、そのカルト的組織性や犯罪もためらわない激しさで自公政治を支えてきたのだ。アベ政治を岩盤的に支える支持層を私たちは今、目にしている。統一協会との癒着をとことん追求し、岩盤支持層を切り崩していこう。
今、宗教2世の人々が声を上げ立ち上がり始めている。それは日本の政治風土、精神風土、地殻変動の一つに他ならない。内心の自由や政治分離という非常に大切な人権や民主主義の根幹にかかわる闘いとして注目して連帯していこう。
また、参政党などといった新たなカルト政党が票を伸ばしている。自民党への失望が新たなカルトに流れることに危機感を持つ。人々の不安に付け込む形でマインドコントロールするのがカルトの手法だ。コロナ対策やワクチン、食の安全などといった誰しもが不安を抱えることを入り口に、無党派層を中心に勢力を伸ばそうとする動きに楔を打ち、私たち市民運動こそがそういった市民の呻吟の受け皿になれるよう草の根運動を強めていこう。
12月17、18日に行われた毎日新聞による全国世論調査によれば、内閣支持率は25%。不支持率69%、防衛費を大幅に増やすことは賛成が48%反対41%。同じ設問で男性では賛成が56%反対が38%。女性では賛成が38%、反対が46%だった。さらに同じ設問で、50歳以下は賛成が多く、60代以上では反対が多く、増税や社会保障の削減に対して共に反対が70%と多数であった。
岸田政権は2度の国政選挙(2021.10衆議院選、2022.7衆院選)に「勝利」し、国政選挙のない「黄金の3年間」を謳歌するとばかりに強引に安倍元首相の「国葬」を決定してしまった。法的根拠のない「国葬」を国会の審議も野党の同意もないままに決定したこと、また安倍晋三という政治家を「国葬」にするのかなどの市民怒りが沸騰した。強行してしまえば「やってよかった」となるに決まっているとの甘い見通しは粉々に打ち砕かれ、強行後も国葬反対派は7割に達していたのだ。他よりは良いといった消極的支持も離れて支持率は一気に下がり始めた。
しかし、支持できない内閣だけれどもその打ち出した安保政策の大転換としての軍拡は、支持するが不支持を上回っている。安保法制に対する支持率も2015年からジリジリ上昇しているという統計もある。それは度重なる朝鮮半島のミサイル発射や中国戦艦の沿岸接近などを「脅威」として刻みこまれてきた結果であり、私たちの闘いがこの「脅威論」を突き崩せていない不十分さの反映でもあるだろう。
注目すべきは軍拡政策に対する男女差である。男性は賛成多数。しかし女性は反対多数。賛成ではでは男女で20%もの差がある。安倍政権に対しても女性は一貫として不支持が多かった。この左は歴然としたものであり、そこにジェンダーギャップ指数が横たわっていることも明白だ。男性の方が武力信仰が強く、命と暮らしをより軽んじる傾向がはっきりと見て取れるのではないか。だからこそ、犠牲をいとわない強さを求められ、弱音を吐けない縛りの中で生きている男性に対して、そのような規範や価値観を見直すことを求める関わりが非常に重要であるとことは明らかだ。
そして7割もの人々が、増税や社会保障費の削減に反対しているという壁を岸田政権はどう突破するのか。すでに「国民の命を守るのだから国民の責任で負担すべき」と岸田首相は発言した。これは「国家の安泰なくして生活なし」「欲しがりません勝つまでは」といった明らかな戦前回帰ではないか。
戦争へのシミュレーションはできるのに平和のためのシミュレーションができない岸田首相。大軍拡路線へと大きく踏み出した岸田政権はもう戻ることはできない。現在の支持率同様に大軍拡路線と共に沈んでもらうしかない。
このフレーズは「平和構想提言会議」の提言の冒頭の一部です。防衛3文書改訂のための閣議決定の前日。12月15日に、中野晃一上智大学教授、青井未帆学習院大学教授、ピースボートの川崎哲さん、武器輸出反対ネットワークに杉原浩司さんらが対案として発表しました。今、ミサイルにはミサイルを武力には武力をといった、論陣が息巻いている。多くの市民は不安に駆られ、軍拡に賛成してという流れが生まれてきている。ここに私たちは「平和を準備しよう」「平和を作り出そう」と切り込んでいかなくてはならない。
何よりもまず、不安に駆られる市民に私たちの手には憲法9条がある、その9条を使って緊張を緩和し脅威を取り除くことができるんだということを市民運動の総力を挙げて訴えていこう。この闘いは新しいスタイル、方法論が求められるだろう。試行錯誤しながら「平和の準備」の戦列を整えていこう。
9月の「国葬」反対の闘い。強行を阻止できなかったけれど、反対世論の切り崩しを許さず、弔意で国民統合という政府の目論見は打ち砕いた。そして政権支持率を叩き落した。この闘いは、あの2015年の安保闘争以来の闘い方の集大成のようだった。その中でも、長野県松川村や東京板橋区での取り組みは一つのモデルとなるのではないか。
松川村では手作りの大横断幕を作り、人が集まる唯一のスーパーの前で、そして比較的往来のある国道沿いで街宣やスタンディングを計画的に繰り返し、国葬当日はバスをチャーターし、国会前に駆けつけた。バスをチャーターして駆けつけたのは長野のほかにも、静岡の仲間たちは同様にバスに乗り合わせて国会前に集まった。板橋区では区内のあらゆる市民団体、個人とネットワークを形成し区内全駅での街頭宣伝をやり切った。この闘い方のさらなる発展型として練馬、板橋、豊島と連携を広げ「12・17池袋アクション」という大きな集会デモを実現している。
このような村や町での闘いが世論づくりに絶大な力を発揮したことは言うまでもなく、さらに共有し、拡大していきたい。シール投票も世論づくりには効果的であった。そしてプラカード。実に内容も豊かになり、完成度もすごく高くなっていて、街宣や集会での楽しみとなっている。
作家の井上ひさしさんの言葉をかみしめる。「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをゆかいに、ゆかいなことをまじめにかくこと」
最後に中村哲さんの言葉、「『撃つな』という方が勇気がいって、ぶっ放すことは本当は簡単だと思った」「平和には戦争以上の努力と忍耐が必要なんです」
私たちは、悲壮感と冷笑を漂わせながら国が主導して、SNSを駆使した現代版の軍国教育で若者を取り込もうとする動きに、ありとあらゆる手段を尽くして阻止していこう。悲壮感と冷笑主義に対抗するには、私たちが楽しく誰よりも生き生きと闘いながら暮らすことだ。今年も頑張ろう!
(事務局 菱山南帆子)
岸田政権の安保3文書閣議決定に反対する声は各地で拡がっている。12月・東京の19日行動での“ふやふや”さんの発言を一部割愛して紹介します。
私たち池袋アクションは、岸田内閣の安保3文書、大軍拡閣議決定の翌日、12月17日(土)14時から「とめよう軍拡・もつな敵基地攻撃能力 池袋アクション」という名称で、池袋サンシャインシティの隣の東池袋中央公園を出発し、参加者約200名で集会とデモ行進を行いました。
北区・豊島区・練馬区・板橋区合同の取り組みでしたが、東京北部以外の地域からも多くの方々が参加して頂き、一緒に「税金は、軍事費よりも暮らしにまわせ」「敵基地攻撃能力持つな」「閣議決定でなんでも決めるな」の声を上げました。若者でにぎわう池袋の街で、参加者のプラカードの文面を読み上げたり、手を振ってくれる人もいました。
官邸前や議員会館前の行動とともにTBSのサンデージャポンで放送もされました。中国メディアの取材もありました。
街頭でよく「攻められたらどうするんだ!」と絡んで来る人がいますが、島国の日本を攻めるのに兵器なんかいらないですよ。日本の食料自給率は37%、エネルギー自給率は12%。海上輸送が断たれたらあっという間に私たち飢え死に凍え死にします。輸出入ともに中国が最大の貿易相手国ってことをわかっていいて、抑止力だ反撃能力だという茶番はバレバレなんでやめて下さい!
北朝鮮のミサイルがーって言いますが、国際宇宙ステーションの高度400キロよりも、はるか彼方の1000キロを超える宇宙空間を飛んでいます。それよりオスプレイなど米軍機や羽田新ルートの低空飛行機の落下の方が危険なんでそっちを止めて下さい!
私たちのおさめた税金をアメリカの軍需産業に流しこまないでください! 軍事研究や軍需産業を推し進め、人の死で経済を回そうとしないで下さい!
毎日新聞・朝日新聞・共同通信の世論調査では、岸田内閣の支持率は過去最低となりました。増税で賄う方針を示したことが支持率低下につながったと新聞は分析しています。防衛費増額の賛否は、かなり拮抗してきています。防衛費を増やしても、やっぱり増税はイヤ、そういう声が増えてきてると思います。
街頭の反応も良いです。私たちの生活そっちのけで増税して、兵器ばかり買うのはおかしいよね、等々工夫して訴えていけば大軍拡反対の流れは作れると私は確信しています。デモや集会、街頭宣伝、スタンディング、など多彩な取り組みで、大軍拡反対の声を広げていきましょう。政党も世論ももっともっと私たちの力で動かしていきましょう。
アジアの平和を構築するために、私たち市民が力を合わせましょう!よろしくお願いします。
ありがとうございました。
内田 雅敏(弁護士 市民連絡会共同代表)
沖縄「復帰」50年、日中国交正常化50年の2022年、前者については、県民の反対を押し切って遮二無二強行される辺野古米軍新基地建設工事で応え、後者には、南西諸島のミサイル防衛網と自衛隊・米軍の合同訓練、そして敵基地攻撃能力(反撃能力)保有と巡航ミサイルトマホーク応えているのが安倍・菅政治の流れを汲む岸田政権である。もちろん、このことは日本側にだけに理由があるわけでなく、「戦狼外交」とも称される中国習近平独裁政権の膨張主義にも大いにある。
それにしても、「鉄の暴風」と称される艦砲射撃等によって丸裸にされ、77年経てようやく緑が戻った辺野古の山々が、再び丸裸にされダンプカーによって運ばれた土砂が海を殺しているのを見るのはつらい。アジアの国々に向けて開かれた万国津梁の島沖縄の軍事要塞化が加速されている。
古来より政治の要諦は「治水」、すなわち民の暮らしを守るところにある。10万人以上、県民4人に1人が亡くなったといわれる77年前の沖縄戦。1945年6月6日、「沖縄県民斯(か)ク戦ヘリ 県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ賜ワランコトヲ」と大本営海軍部宛訣別電報を打って自決した太田實海軍少将(死後中将)の沖縄県民に対する思い、それに対する応えが辺野古米軍新基地建設の強行とミサイル防衛網の設置とは、それを赦しているヤマトンチューとしては言葉がない。
この流れを変えるためにはどうしたらいいか。「キーワード」は、「以民促官」、「易地思之(ヨクチサジ)」と「言必信行必果」「飲水思源」だ。
「以民促官」、民間の活動を通じて官、すなわち国家を動かす。「易地思之」、「易地」とは、場所を替える、「思之」とは考える、すなわち、相手の立場になって考えてみる。
「飲水思源」、水を飲むとき、井戸を掘った人々のことを思う。先人たちの苦労を忘れない。先人たちが作ったものを大切にする。
「言必信行必果」は、「言」は「信」なり、すなわち約束したことは守らなければならない、行ったことは結果を出さなくてはならない。
日中国正常化を果たした1972年の「日中共同声明」、9月25日、北京ではじめて周恩来総理に会った田中角栄首相は、「私は、長い民間交流のレールの上に乗って、今日ようやく此処に来ることができました」と挨拶したという。「長い民間交流のレールに乗って」実にいい言葉だ。まさに「移民促官」だ。レセプションで周恩来総理は、新潟県出身の田中首相には「佐渡おけさ」で、香川県出身の大平正芳外相には「金毘羅舩々」で鹿児島県出身の二階堂進官房長官には「おはら節」を演奏させて歓迎した。
いきさつ、面子など、国同士は色々あったとしても、民衆同士は決して争いを望まない。文化・経済の交流によって互いにパートナーとなる。日中共同声明では以下の4項目が確認された。
※、文書では確認されていないが尖閣諸島の石油問題についても棚上げとする合意があった。
以上4項目の確認及び合意は、その後の「日中平和友好条約」(78年)、「日中共同宣言」(98年)、「〈戦略的互恵関係〉の包括的推進に関するに日中共同声明」(2008年)においても踏襲され、繰り返し確認されている。72年の日中共同声明以降の四つの文書は日中間を律する基本文書であり、先人たちによって作られた「平和資源」である。「飲水思源」、日中友好、不再戦に向けた先人たちの尽力に思いを馳せ、これを活用することこそが外交ではないか。それをすることが米軍基地の重圧に呻吟する沖縄県民に対する政治の責務ではないか。
高田健(共同代表)
2022年は国際的にも国内的にも激動が続いたとしだった。2年半続きのコロナ渦の下で5万数千人が亡くなり、罹患者数の上下波動はおさまりがつかない。2月にはロシアによるウクライナ侵攻が勃発した。参議院選挙の終盤には安倍晋三元首相が銃撃で殺され、参議院選挙では改憲派が3分の2以上の議席をとり、戦後初めて改憲勢力が両院で改憲発議可能な要件をとった。岸田文雄政権の政治的大博打の「安倍国葬」強硬は大失敗し、これを契機に内閣支持率は軒並み急落し、政府危機が進んだ。安倍元首相の遺言ともいうべき敵基地攻撃能力保有や軍事費の対GDP比2%などを含む「安保3文書」は年末に閣議で強行決定された。アベノミクスとセットで進めてきた日銀黒田東彦総裁の大規模金融緩和政策は年末に金利引き上げに追いこまれ、重大な金融不安を招くことになった。
各種世論調査では毎日新聞の12月17、18日調査で支持率が25%、不支持率が69%になった。軍事費の大幅増の政府方針は賛成が48%、反対が41%。敵基地攻撃能力保有(政府は「反撃能力と説明」)は賛成59%、反対は27%、軍事費の財源は増税反対が68%、賛成が23%、同国債発行賛成が33%、反対が52%だった。
他社の調査でもたとえば11月26,27の共同通信の調査では、内閣支持率は33.1%、不支持率は51.5%であり、軍事費増は賛成が39%、反対が53.6%、軍事費のための増税は支持が30%、不支持が64.9%、「反撃能力」保持は賛成が50.3%、反対が42.6%だ。
全体に内閣支持率は30%台、不支持率は50%台で、「敵基地攻撃能力保持」は賛成が反対をうわまわり、財源は増税も、軍事国債も。震災復興財源からの転用も反対がおおい。
閣僚や自民党国会議員の相次ぐ辞職や、内閣・自民党の内輪もめ、安倍派(清話会)の求心力低下を含め、岸田内閣の基盤は大きく揺らぎ、あと2年の総裁任期までどころか、来年にも衆院解散のうわさが乱れ飛ぶなど、まさに政府危機だ。
政権交代の実現にとって、これほど絶好のチャンスは少ない。にもかかわらず野党の支持は高くない。前記共同の調査では立憲は9.2%、共産は3.4%、れいわは2.5%、社民は0.7%で、ゆ党の維新が9.5%、国民が3.2%、参政が1.6%という具合だ。なんと統一協会べったりの自民党は40.1%もある。
立憲は参院選でも野党と市民の共同で動揺し、政策協定もブリッジ協定だった。国葬でもはじめはあいまいで、安保3文書でも動揺を重ねた。女性の執行部を増やしたかと思えば、すぐに減らしてしまった。他の立憲野党も基盤、地力が弱い。市民が見放している岸田政権との対立点が鮮明でない。高齢化などというが、理由にならない。高齢者なりの闘い方はある。先の衆院選、参院選でのカルト集団、統一協会の「死にもの狂い」といわれた行動力はどうだ。要するに悪政への怒りと未来への希望から生まれるエネルギーの問題だ。
野党は「理論に強い」と言われてきた。だがまともな「理論」にしても人々とそれをつなぐベルトがしっかりしていなくては、たんなる愚痴に終わり役に立たない。気合を入れなおさなくてはならないだろう。
市民連合が年末に「2023年安保」を提起した。かつてかのくにの識者は言った。「もともと地上には道はない」。歩き出して、一緒に歩く人が多くなれば、そこに道はできる。
この国はいま日米同盟を極力強化して、中国、朝鮮との戦争に備えつつある。世論も「備えには反対していない」。なんということだ。「廊下の向こうに戦争が立っている」のが見える。5年後には世界第3位になる軍事費を投入し、大量のトマホークミサイルを購入し、「12式地対艦誘導弾」を改良し、南西諸島に高速滑空弾を配備し、極超音速誘導弾を配備するなど中国包囲網を敷いて、中国との戦争を準備する。しかし1972年の日中共同声明以来の日中4文書、2002年の日朝平壌宣言などがある。戦争を止めるのは私たちの世代の責任だ。
みんなの力を集めて、「2023年安保闘争」を巻き起こそう。
高良鉄美(参議院議員 市民連絡会共同代表)
沖縄が復帰50年を迎えた、その年末に閣議決定されたのは、憲法原理に真っ向から反する、いわゆる安保3文書であった。復帰に向けて、沖縄がスローガンに掲げたのが「平和憲法の下への復帰」であった。1971年11月に琉球政府が作成したいわゆる屋良建議書(復帰措置に関する建議書)では、県民が復帰を願ったのは、日本国の平和憲法の下で基本的人権の保障を願望していたからに外ならない旨の意思表示が強く示されている。この平和憲法への思いが、今も続いていることは言うまでもない。
沖縄が復帰した意味を見出すのは「平和憲法の存在」である。平和憲法の存在というのは、憲法典が在るということを言うのではなく、憲法が力を持ち、有効に国政上機能していることを指す。今般の安保3文書は、憲法の力を限りなく無にしていくもので、国政上も憲法を形骸化させ、機能不全に貶めるものである。
安保3文書には、「敵基地攻撃能力」を言い換えただけの「反撃能力」の保有を明記しておきながら、なぜ「必要最小限度の自衛の措置」といえるのか、「専守防衛」の考え方と変わらないといえるのか、不可解な記述、論理が続く。このような本質的矛盾を内包する政府解釈が、憲法の機能不全を生じさせるということを私たちは何度も見てきた。特に平和憲法の要の一つであり、アイデンティティともいえる憲法9条が「敵基地攻撃能力」の直撃を受けている状態といえる。
憲法の3基本原理から国政を見ることは、憲法の機能不全を改善する処方箋なのかもしれないと思うことがよくある。憲法の3基本原理は、いうまでもなく、平和主義(戦争放棄)、国民主権主義、基本的人権の尊重主義を指すが、国政上の問題を専門的技術的にとらえていく視点ではなく、基本原理のベクトル(方向性を持つ力)としてどうなのかという視点である。例えば、今後5年間で防衛費をGDP2%にする予算措置について、平和主義のベクトルになっているのかを診(み)ると、将来の方向性として縮小(あるいは現状維持)ではなく軍拡競争にしかならないのが明確に示される。この予算措置を国民主権のベクトルから診(み)ると主権者、納税者の声を反映しているとはとても思えない。基本的人権の尊重というベクトルから診(み)ても、防衛費倍増は、国民の命と暮らしを守ると声高にアピールしているのとは逆に、生存権(年金、福祉)や教育を受ける権利、労働者の権利(給与と担税)等、命と暮らしに関わる基本的人権を制約する導火線にしか見えない。
馬毛島から与那国島まで連なる自衛隊ミサイル基地、サイバー基地等の南西シフトについても、屋良建議書に言及しておきたい。50年経った復帰の内実を的中させる表現が随所にある。復帰は米軍基地の現状維持と自衛隊の配備を前提としており、これが「国益の名においてしわ寄せされる沖縄基地の実態であります。」沖縄の「世論では安保が沖縄の安全にとって役立つと言うより、危険だとする評価が圧倒的に高い」とする。憲法的にも然りである。
沖縄県民は歴史的体験から、復帰にあたって、福祉優先の基本原則に立ち、「地方自治権の確立」、反戦平和の理念」貫徹、「基本的人権の確立」、「県民本位の経済開発等を骨組とする新生沖縄の像を描いております」。このことが「健全な国家をつくり出す原動力になると県民は固く信じている」からだとしている。まさに平和憲法の原理そのものではないか!復帰当日発行の憲法手帳(沖縄県憲法普及協議会)にも「憲法の形骸化を直接見せつけられた」沖縄県民が、「反戦平和、県民福祉、…憲法精神を対置して、憲法の命をよみがえらせなければならない。」そうだ、憲法に命を吹き込むのは私たち主権者国民なのだ。
暉峻淑子(埼玉大学名誉教授 市民連絡会共同代表)
2022年、元首相安倍氏の遺した負の遺産はあまりにも大きく、それを健常な民主主義社会に戻していくだけでも、冷静で綿密な政策・実行が必要だった。なのに、岸田首相は誤判断を繰り返して、負の遺産を増やしている。このままでは、国民を守るどころか戦争と言う奈落の底に私たちを引きずり込むのでは、と気が気ではない。戦争を経験している私は、他のことはともかく、国民を戦争に引きずり込む首相だけはご免こうむりたい。いや、断固として反対である。
しなくてもよかった、あるいは、他の方法もあった国葬問題を独断で決めて国論を2分した岸田首相は、その結果、自身に対する国民の信頼を失った。信頼できない首相は、私たちの人生を不安にするから、好き好んで批判したいわけではない。信頼できる政府の下で安心して暮らしたいのが誰もの願いである。それなのに国葬の次に今回は、国の財政上、どう考えても無理な43兆円もの軍事費を、再び独断宣言した。IMFが公表した2021年の数字で見れば、日本はGDP比263%に当たる約1200兆円の財政赤字を抱え(国民一人当たり1000万円超の借金)国際的に第1位の借金王国である(アメリカ132%、フランス113%、イギリス95%、中国71%、ドイツ70%、スエーデン27%など)。NATOが、軍事費に2%を当てているから日本も、などということは比較にもならない。借金大国とは、いざと言う時も、財政支出ができない国のことなのだ。さらに日本が軍事費を増やせば、相手国も増やす。それを借金大国日本が国債で増やし続けて対抗すればどうなるか。正気の沙汰ではない。安倍+黒田ノミクスが、財政上、すでに戦争できない国にしている。
しかも理解できないのは、経済的な互恵貿易や、市民の相互理解と協力、留学生の交換など、平和を醸成する他の項目には一切触れず努力もせずに、軍備だけに借金を重ねるのはなぜなのか。先の15年戦争で、ミサイルではない焼夷弾で、最後は原爆で、天井知らずのインフレで国民は塗炭の苦しみをなめた。その経験は、現在のウクライナ戦争でもいやと言うほどわかっているはずだ。それらの事実を前にしても、なぜ与党支持の人びとは正論に耳を傾けないのだろうか。権力に従ってさえいれば、どうにかなると思っているのだろうか。ずるずると15年戦争に突入したときも、そうだった。私は根拠あっての与党支持は一部の人であって、その他は権力に賛成と言うより、社会のことを本気で考えるのは大変だから、避けたい、と言うのが本音ではないかと思っている。
NHKの世論調査によれば、社会に無関心な人は次のような特徴を持っているという。1.自分のことに精いっぱいで他人のことは考えない。2.自分一人努力しても世の中はよくならないと思っている。3.ボランティア活動に興味がない。4.政治や社会のことなど難しいことを考えるのは面倒である。5。何事も深く考えずその場しのぎで過ごしている。6.他人のことで自分の時間を取られたくない。7.テレビで受け身の情報や娯楽番組に関心があり、自分からインターネットなどで調べてみることはしない。
・・・政府が、教育に介入して、政治や社会のことを考えないようにさせてきた結果が見事に功を奏しているではないか。自己責任論で国民をバラバラにすることにも政府は成功した。そうであれば、私たちはその逆を取り戻そう。人類は個人であると同時に社会人なのである。社会を知り参加することでよりよい人生と社会は創りだされてきた。平和でなくては、個人の幸せもない。私たちはそのことを大集会でも小さな集まりでも、一人一人の対話でも、確かめ合い、語り合っていきたい。言葉だけでなく、芸術でも、スポーツでも、どこでも、である。
2022年12月7日
許すな!憲法改悪・市民連絡会事務局長 菱山南帆子
日本は「過ちは繰り返しませぬ」の誓いを反故にする気なのか。
12月2日、自民党公明党与党は敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有を容認した。戦争準備へと大きく舵を切ろうとしている。
政府は敵基地攻撃能力の保有をある時から「反撃能力」と言い換えた。それは「敵基地攻撃能力」という言葉では市民からの反発があると考えたからではないだろうか。仮想敵の「基地を攻撃する」ということは「やられる前にやってしまおう」といった先制攻撃に他ならない。この本当の意味をマイルドにするために「反撃能力」といった表現にすることは市民に甘い皮で毒を包んで食わせる行為に他ならない。
「攻められてきたらどうするんだ」というお決まりの脅し文句で日本国内だけではなく、世界の人々を戦争に巻き込んではならない。
本来、政治とは戦争を防ぎ、暮らしを守ることが最大の役目ではないだろうか。そのような政治的役割、平和外交を放棄し、市民のために使われるはずの税金を人殺しのための軍事費や、世界への挑発行為につぎ込むことは許されない。憲法9条を持つ国、日本が敵基地攻撃能力の保有を認めることは憲法違反だ。政府は直ちに憲法違反行為をやめ、市民のために平和的外交と貧困格差と物価高で苦しめられている市民に対して政治をすべきだ。
平和憲法を愛し、平和のために運動を続けてきた私たちは、今こそ憲法を生かしていくために声を上げていく。過ちを繰り返さないために私たちは全世界の市民と連帯し、戦争のない国に向けて力を合わしていこう。
12月15日は18時半に国会議員会館前に集まり、大軍拡への抗議の声を上げよう!
財源も実効性も民主的正当性もない。違憲の安保政策の大転換は許されない。
「2023年安保」のたたかいへ!
12月16日、岸田内閣は「敵基地攻撃能力」の保有やそのための軍事費大幅増額などを柱とした「安保関連3文書」を閣議決定しました。これは、明白な憲法九条および国際法違反となる先制攻撃の準備に日本が着手する可能性をはらみ、また一貫して「専守防衛」の範囲内で抑制的に安全保障政策を組み立ててきた戦後日本の「平和国家」としてのあり方を根本的に破壊するものであり、市民連合としてもかねてから反対してきたことです。私たちは、これを断じて認めることはできません。
政府発表以外の踏み込んだ報道がほとんどないなか、国会で議論されることもなく、その財源も実効性も全く明らかにされないまま、一見穏やかそうに見える岸田首相の手によって、更なる憲法破壊が「静かに」なされていることの恐ろしさも感じざるを得ません。私たちの力不足もあり、市民の抗議行動がまだまだ不十分であることも痛感しています。「2015年安保」の大きなうねりをつくった市民はいったいどこへ行ってしまったのか、との声も聞かれます。もう、日本の平和主義は終わってしまったのでしょうか。そんなはずはない、と信じる私たちの抗議行動はつづきます。
かつて特定秘密保護法が可決され、多くの人が天を仰いで「日本の民主主義は終わった」と嘆いた時、「終わったなら、また始めればいい」と立ち上がった若者たちがいました。今度は、私たちが平和主義を新たに始めなおす時です。思い起こせば、2014年7月1日、集団的自衛権の行使を容認する閣議決定がなされた時も、まだまだ抗議行動は盛んとは言い難い「静かな」状況でした。そこから2015年の市民の大きな抗議行動の広がりがあり、安保法制が強行採決されてしまった後もなお、今につづくたたかいを支えてきました。
「安保関連3文書」が決定されたと言っても、閣議決定で決めたものは閣議決定で覆すことができます。私たち主権者が大きな声をあげて、予算を組ませなければ、計画を頓挫させられます。まだまだ止められますし、止めねばなりません。今後、財源をめぐる議論がようやく本格化し、生活と経済を直撃する増税や新規国債の発行、社会保障費等へのしわ寄せ、その割には何の実効性もない、高いだけのミサイルの購入など、独裁的に決めた政策転換のコストが遅ればせながらクローズアップされていくに違いありません。そうしたなかで、初めて私たちが今、歴史の重大な転換点にあることに気づく人も少なくないはずです。
「2023年安保」は起きるのでしょうか。それとも日本の平和主義は終わったのでしょうか。答えを出すのは私たちです。
2022年12月16日 安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合
12月16日、政府は「国家安全保障戦略」などの安保3文書を改定する閣議決定を行った。
現行憲法のもとで一貫して「保有できない」としてきた他国攻撃、敵基地攻撃を目的とする武器装備を保有し、国際法にも反する先制攻撃も行い得る内容の閣議決定は断じて認めることはできない。この間、戦争する国づくりに一貫して反対し、憲法の平和条項をないがしろにする政治とたたかい続けてきた共闘組織として、今回の閣議決定の撤回を求め、志を同じくする市民、団体とともにたたかいを強める決意を新たにする。
安保3文書は、安全保障政策の文書である「国家安全保障戦略」、防衛力の整備・運用の指針を示す「国家防衛戦略」、一定期間の防衛力の水準や分野別の事業費などを記した「防衛力整備計画」から構成されている。このうち安保戦略では、中国の軍事動向を「これまでにない最大の戦略的な挑戦」と断定し、「同盟国・同志国と連携して対応すべきもの」とした。軍事ブロックに参加し、中国封じ込めの一翼を担うこと、安全保障政策の大転換が中国を想定していることを明示したものである。また、2027年度の軍事費を対GDP比で2%とするとの軍拡方針も明記している。
国家防衛戦略では、周辺国のミサイル戦力の増強を口実に、ミサイル防衛網の強化に加えた他国攻撃可能なミサイルの保有を中心に、今後10年間の軍事能力強化を7項目で示している。整備計画では、遠方から攻撃する「スタンドオフ防衛能力」の主な事業として米国製巡航ミサイル「トマホーク」の購入を明記し、2027年度までの5年間の軍事費総額を43兆円にするとした。
特定の国との関係を軍事的な敵対関係とすること自体が憲法の理念とは整合せず、日本が東アジアでの軍事的脅威と受けとめられる危惧がある。隣国であり、歴史的にも経済的にも深い関係にある中国を敵視し、対立の最前線に立つと宣言することの無謀さは言うまでもない。
経済が成長せず、少子化も止まらない日本が、巨額の軍事費を聖域化し、抑止力の強化を口実に戦争準備を進めることは、経済のさらなる停滞や富の再配分機能の一層の低下、格差と貧困の深刻化など、くらしへの直接的な悪影響も強く懸念される。とりわけ、コロナ禍と物価高騰によってくらしや生業の困難さが増している時に、「防衛増税」の論議をすすめる政治には怒りを禁じえない。
軍事費総額やGDP比2%目標などの「枠」論議のみが先行し、敵基地攻撃能力保有を既成事実として論議し、装備の必要性や財源論議が後回しにされた政府検討の経緯は、歯止めなき大軍拡への懸念を抱かせるものでもある。軍拡を「国民の責任」に転嫁する政治には、立憲主義と民主主義を尊重する姿勢はうかがえない。抑止力強化の口実で軍備強化、軍拡のみが主張され、戦争を避ける対話や外交の方針に一言も言及しない政府の姿勢は、戦争への道につき進んだ戦前の政治と二重写しになるものだ。
これらの点からしても、「戦争への道を再び歩むな」の声を市民が今こそ大きくし、政治の転換を求める市民の運動をさらに大きくしなければならない、と決意する。日本が戦争に巻き込まれる危険をより高める戦争法(安保法制)の廃止と「安保3文書」の改定閣議決定撤回をめざして闘い抜く決意を重ねて表明する。
2022年12月17日
戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会
高良 鉄美さん(参議院議員・琉球大学名誉教授・市民連絡会共同代表)
(編集部註)11月26日の講座で高良鉄美さんが講演した内容を編集部の責任で要約したものです。要約の責任はすべて本誌編集部にあります。
「台湾有事」といっていますけれど、恐らく台湾の人はそう呼ばないと思います。そうではないと言うと思います。今回のウクライナでの問題が示しているように、たくさんの情報が出てきてわけがわからなくなることがありますので、今日は沖縄の事情も含めてお話しをしたいと思います。
これが与那国島です。最先端で台湾まで100㎞くらいです。これは10日くらい前に、通常の公道を戦車が走っている。与那国ではこんな景色を見たことがありません。自衛隊配備が6年前でしたけれどもこういう状況ではなくて、人員配置だけでした。それが今回の「キーン・ソード23」という日米合同の大演習でこういうふうに一気に与那国に来た。これは想定していなかった。ここまでいきなりやるのか。南西シフトというのは与那国までということです。これは沖縄タイムズの17日で、「与那国の公道 戦闘車走行」という見出しです。与那国は本当にのどかなところなのに、こういうかたちで突然現れてきて、しかも空港から駐屯地までずっと公道を進めていったという経緯です。
「今何時ですか?」ということを考えると、「Bulletin of the Atomic Scientists」という雑誌が毎年出ますが、この「終末時計」というのは「Atomic Scientists」ですから核の学者たち・物理学者が、日本国憲法が施行された1948年にこの雑誌を発行しています。「マンハッタン計画」、これは日本に原爆を落とす計画を作り上げたところです。いろいろな科学者がいて、アメリカでマンハッタン計画ができて、7月に完成をします。核実験も行われる。核実験を行う前に、日本に原爆を落とすことをいろいろな委員会に諮りました。そうしたらマンハッタン計画に参加していた研究者が「これは日本に落とすためにつくったんじゃない」ということで退席した。そういった方々が、もう人類の最後になるから警告しなければならないと、この「時計」が12時になったら「終わり」だということで、毎年この「終末時計」を出します。いまはいったい何分前でしょうか。
誕生したときは「残り7分」でした。冷戦状態が始まったときです。一番近くなっていたのが1952年、53年です。1953年に当時のソ連が核実験をして核戦争の可能性がグンと上がり、これが最接近で「2分前」でした。ところが緊張緩和などで核実験禁止等々あって「12分前」まで後退した。いろいろなことで前進、後退するけれども、1991年に米ソの軍縮条約が調印されたということとソ連の崩壊もあって「17分前」、いままで一番後戻りした時間です。行ったり来たりしているのは、どこかが核実験したり核開発をすると近くなってくる。科学者の本ですから事実をチェックして、オバマ大統領の核廃絶運動――ノーベル賞を受賞しましたが、それで「6分前」になったけれども、また1分進みます。2011年です。福島原発事故です。これで1分進んでいって、「残り5分」になった。これは「原子力平和利用」とかいろいろな言葉もあるのでしょうけれども、人類に与える影響のは同じだということで、針が進んだということになります。
そして2015年のウクライナ危機ですね。これもさらに進んで「3分前」という、当時で2番目に近いことになった。「残り3分」ということです。これは2015年ですからね。今回のウクライナ戦争ではないので、このときにすでに核の危機があったということです。われわれから見ると「突然ロシアが」という感じがしますけれども、そうではない。核兵器の使用の問題というのは、明言こそしなかったけれども2015年の時点で出てきています。これは毎年1月に出されるものですが、今年の1月20日が最新号では、「あと100秒」になっています。「1分40秒」、2分を切ったわけです。最短をさらに進めた。この「1分40秒」「100秒」というのは3年連続なんですよ。雑誌の上では2022年1月号、2021年1月号、2020年1月号、これはいろいろなものが混ざって、世界の不況などの問題があるけれども、この中には核兵器だけではなくて新型コロナ、気候変動等が相当世界の脅威になっている。人間の命が失われるのはこれらが複合的に起こってくるということですね。ですから非常に危険な状態ということで、3年連続で「100秒」です。
注意しなければいけないのは「100秒」が短い状態かというと、これは1月20日号ですからロシアのウクライナ侵攻の時期よりもまだ1か月前です。この科学者たちが来年、あと2か月後にどういうことをいうのかということです。ここは核戦争の問題が出てくるだろうということがだいたいわかると思います。IWJにあったものですけれど、この時点でウクライナの問題が激しい、危ないということを指摘しています。2013年から2015年の間のウクライナ危機というのは、これで終わるのではないだろうということが想定されていますね。いまこういう状況があるということです。
よくウクライナと沖縄を比べますが、ちょっと違うんだということです。ロシア軍が今年1月下旬から2月にかけて集結しました。しかし実際にロシアが攻撃を開始したのは2月24日です。これも最近ではちゃんとわかってきているもので、いろいろな国々、日本でもそうですけれどもウクライナの歴史、ソ連時代からの関係までさかのぼったりするということがありますね。いまのいわゆるドンバス地域、東部はロシア系住民が多いということです。大統領選挙、ロシア派とウクライナ派で大統領選挙をしているわけで、ロシアが力を入れたときにはロシア系の人が大統領になる。最近2回は親欧米が支援する、サポートしたい、そこに入りたいという。いまのゼレンスキーも、ポロシェンコも親欧米の支援ですね。
これも最近よく聞くと思いますが、2015年2月に「ミンスク合意」があります。外国部隊の撤退ほか、ウクライナ政府と親ロ派武装勢力との直接対話、自治権等特別地位の付与などがあったわけですが、仲介に入ったのは隣国に近いフランスとドイツです。ロシアとウクライナに仲介に入ったということで、この仲介で合意したんですね。ロシアがウクライナに侵攻してきたので、ウクライナの言い分とロシアの言い分があって、クリミア半島はいまロシアになっていますけれども、当時はどうするかとなっていて、このミンスク合意でクリミア半島はロシアに行ったわけです。それはもちろん問題が残っているわけです。残っているけれどもそれで合意した。そしてロシア系住民が多いドンバス地域には自治を認めようということで合意をした。そしてNATOには行かないということですね。そのへんもちょっとファジーでしたけれども、すくなくともそういったロシア系のところについてはある程度の自治を認めるということが合意された。
2022年2月14日、ロシア軍が入ってくる10日前にドイツのシュルツ首相がゼレンスキー大統領に会っている。そしてロシア系住民に自治を認めたらどうかということを言っている。言っているけれども、やっぱり中立的なんですね。そしてフランスもこの合意をきちんと守ってくれよということを言っていた。ところがロシアが入ってきます。このミンスク合意はドンバス地域では実際は守られていなかった、虐殺のようなことがあったということがあった。
これが今日のテーマかもしれませんが、9条の外交とはどうなんだ、こういうことをやったかということですよね。ロシアやウクライナがこういう状況にあるときに、日本が入って仲介することができるのか、あるいは話を聞くことができるのか。それがまったくできないですね。ところがこのときはドイツやフランスが入っていっているんですね。またこのシュルツさんは中国に今年行って、中国に間に入ってくれないかということを言っているわけです。ところが日本はそれが言えない。中国にも、もちろんロシアも相手にしないわけです。そこは本当にひとつひとつ築いていく外交をつくるということが重要だと思います。
いまのウクライナの状況ですけれども、昔も平和だったかというとクエスチョンマークをつけています。有事のようになっていたのかというと、もうたぶん平時ではなくてすでに有事だったんだと思いますね。キエフ(キーウ)など首都の地域はそう見えなかったかもしれない。ウクライナ人がほとんどですからね。しかし東部に関しては平和じゃなかったと思いますね。そこのロシア系住民にとっては自分達がいつまた殺戮されるのか、攻撃を受けるのかということで、平和というのはウクライナの東側にはなかっただろうと思います。「平時」と呼んでいたかもしれないけれども、戦争状態に近い、もちろんロシア系の住民も抵抗するので内戦の状況にあった。それが今度は、内戦でもあるんでしょうけれども、ロシアが入ってきたということがあって「有事」ということになっている。
沖縄はいまどうですかというと、こういう状態はもちろんないわけです。ドンバス地域とウクライナ、あるいは住民の中での対立の問題がありますけれども、そうではないということです。しかも「台湾有事」と言うけれども「沖縄有事」ではないです。「台湾有事」と呼んでいるけれども、この「台湾有事」はウクライナのような状況があるのか、そこもしっかり見なければいけないと思います。言葉でいろいろ言っているところもあるかと思いますけれども、台湾の政治の中で独立というようなことが出てきますけれども、経済面から見たらカップヌードル、インスタントラーメンの大企業は台湾の企業ですね。それから半導体も世界的にも台湾が半分以上握っています。中国、とくに中国の若い人と話をすると「いまの生活がいいんだ」「いまの生活をなぜ壊すのか」と、中国の、大陸の若者がそう言っているわけです。そこも含めていまの沖縄の状況は、勝手に「有事」をつくり出しているということですよ。与那国は自衛隊が来る前は、中国のミサイルがきたということもありますけれども、町議会議員の選挙のときには誰もそんなことはまったく言わない、そういう状況でした。
そして「キーン・ソード」ですね。11月19日までありました。これが実施されたことで、それまでなかった平和の状況にこのキーン・ソードを勝手に持って来ちゃったわけです。ウクライナにロシアが入る前には、国境付近に10万人のロシア軍が集結していました。これは何なんだろう。国境付近に「キーン・ソード」では3万6千人が来るわけです。こんな状態を何でつくり出したのだろうと思います。演習だと言っていますが、ロシアも演習と言っていました。今回はイギリス、カナダ、オーストラリアが一部入っていたということで、中国からすると、ちょっと目をぱちくりするようなことが中国のまわりに起こっているということですね。
キーン・ソードは16回目です。3万6千人という人員だけではなくて艦艇、航空機、これも30隻と270機で、情報のやりとりも含めて今回はかなり実践的にやっている。いま日本では宇宙、サイバー、電磁波といっています。これは日本が編み出したことではなくて10年前からアメリカが言っていることです。私の授業に四軍調整官、在沖米軍のトップの方がきていました。討論しながら学生に聞かせるということをやっていたんですが、そのときもう宇宙とかサイバーとか電磁波の話をしています。それを最新のように日本はようやくやっていますが、これも数年前からもちろん入っていました。結局アメリカの作戦の典型なんですよ。日本がこれを編み出したわけじゃない。だいぶ遅れているかもしれませんが、いろいろな作戦に使えるようなものを、今回共同運用できるように確認したわけです。
F35もそうですけれども、「HIMARS=ハイマース」という高機動ロケット砲システム、基地を積んだトラックというんでしょうか、それがハイマースです。南西諸島は、馬毛島はまだ建設されていませんが、それ以外はすぐにでも使えるような状況になっている。馬毛島は地形が平たくて種子島のすぐ西側にあります。そして奄美大島、徳之島、沖縄本島、与論島もこの間にあります。喜界島もそこに組み込まれている。沖縄本島にもミサイル基地をつくっている。沖縄本島はすでにあるということではなくて自衛隊の方にミサイル基地をつくっている。そして宮古島、石垣島、与那国島というかたちで、これが南西シフトです。
こういう動きをしていると、それこそ「キーン・ソード」(鋭い剣)がここにあるということが、中国からするとなぜこういうことをするのかという思いが強いと思いますね。というのは、中国は昔は相当大きな国で、万里の長城みたいにやらないと危ないということがあったわけです。それ以降、中国はアヘン戦争も含めてあの時代に相当叩かれているので恐れているということがあります。中国のテレビではいまでも旧日本軍が攻めてきたことがドラマになったり、あるいは1日中古いフィルムを流したりしています。ただ日本人の俳優というか、日本人役の俳優が中国で非常に人気があって、「男らしい」という表現はおかしいですけれども、「言うことを聞かないんだ」「こうと決めたら動かないんだ」というイメージで当時の日本の兵士を描いています。だからとても「怖い」ということがテレビの中で、そういう役で出てきます。それで南西シフトが「専守防衛ですか」ということなんですよ。さきほどの構図を見ていると、これは「専守防衛」ではなく攻撃的なシフトです。防御中心なのか攻撃的なのかということがありますけれども、南西シフトというのは明らかに攻撃ですね。
実は、ミサイル計画というのは復帰前に沖縄にありました。1950年代です。いわゆる北朝鮮――朝鮮民主主義人民共和国が1948年に建国されましたし、1949年には中華人民共和国の建国があって、アメリカは沖縄の方からミサイル計画を考えたんですね。復帰して沖縄県ということになって、そこに基地があるということで対中意識、中国に対する意識を日本にくすぐると日本は「そうだね」という感じで、政府はアメリカの仕組みの中でアメリカの言うとおりに配備していくことになります。そういうシステムをアメリカは考えていたということですね。
これは私が撮った馬毛島の写真です。もうすでに企業が買っていて、そこから先が調査できないような状況です。空港の滑走路がそのままあるような状況に整備をしている。これから本格的に入ってくる。この辺に市有地があって学校跡がいま売られ、もう同意されたということです。ここにはマゲシカという日本の中で特有の鹿がいます。それから奄美の基地もすっかりできあがっていて、これはアマミノクロウサギですが、天然記念物とか希少な植物、動物がいるところに基地をつくるんですね。イリオモテヤマネコをどうするのか。ジュゴンは逃げてしまった。いったいどうするんだろうと思います。
これは先週のキーン・ソードのときの奄美大島の港です。名瀬港という、普通は観光船が入るところです。いまは観光船が入っていないので、これだけの軍用車両が入ってくる状況です。徳之島も、沖縄と奄美の間くらいにあって非常に海のきれいなところです。いろいろなかたちで上陸作戦やらなにやらが行われた。宮古島は地下ダムが基地建設ときにずいぶん問題になりました。これはミサイル・弾薬搬入反対集会のときの写真で、これが私で隣が伊波さんです。これもいまは弾薬庫までいっていて、いろいろなものが入るときには「保管庫」といったりしています。石垣島もほぼ完成に近くなってしまいましたけれども、ここにも天然記念物のカンムリワシがいます。林道のようなところを通ると本当によく見えます。「キーン・ソード23」について、沖縄県は与那国空港の使用の要請があったので、問題がなければ許可するということで許可をしたということです。それで先ほどのように空港が使われ、そこから駐屯地にいったということです。近くに中学校があったと思いますが、そういう道を行っている。
これは外交防衛委員会で1週間くらい前にあったことです。立憲民主党の質問で「キーン・ソードをやっていて共同作戦といっているけれども、どうやって意思疎通しているんですか?英語ですか?」と言ったら、「どっちだったっけ」と。後ろから人が寄ってきて「どっち?どっち?」って、こんな答弁をするんですね。「ちょっとこれは調べてみます」と答えました。調べないとわからないのかと。「じゃあ、アメリカの司令官は日本語を使っているんだね」、日本は独立した指揮系統を持っていて、別々の行動で独自にやっていますというんですけれども、「本当?」ということなんですね。結局いつも米軍の指令の下にあるということを「別々に」といっている。しかもここは「決意」といったのかどうか明らかではないけれども、「米国は日本防衛のために揺るがない思い」というか、そんな言い方だったようです。本当にそうなのかということですね。
砂川事件の伊達判決というのがありました。そのときに伊達裁判長が言った判決の中味が、いま当たるんですよ。「日本が巻き込まれるよ」と言っている。米軍の作戦行動が日本の外で行われる場合どうするのかということも含めて、その判決に書かれている。だから憲法違反だということですね。本当に日本防衛のためにいるんですか?石垣島、宮古島、与那国島を含めてこの南西諸島を防衛するというんですよ。なぜ防衛するの?「攻撃されたときに」と。いや攻撃されたからじゃなくて攻撃するから、反撃されたからでしょと。日本がやらないということはないし、アメリカがやらないということはなくて、逆に先にやるんでしょということですよね。向こうからかかってくることはないんですよ。そうすると、この「日本の防衛のために揺るがない決意を持っている」ということと、南西諸島の人たちを守るというけれども、何で防衛をするのかと。これも沖縄の感覚と全然違う状況です。こういった演習がどんどんどんどん、韓国あるいは東シナ海で行われている状況になると、「これは防衛ですか?」というのも非常にわかりにくいですね。いまの演習を見ると、どう見ても尖閣を防衛するような話ではないですね。尖閣とはまったく無関係になっている。こういうことも含めて、いま宇宙、サイバー、電磁波が遅れているから国民の暮らしに関係なく当然必要でしょう、防衛予算2倍は当たり前じゃないですかと防衛族はいいます。とんでもない話ですね。
これがハイマースです。ハイマースのシステムで、作戦はこのオペレーションです。EABO(Expeditionary Advanced Based Operations)という遠征前進基地ということで、行ってはいなくなる、消えているようなかたちで行われます。このやり方はアメリカではずっと前からつくられています。中国の場合はどうしたらいいのかということで、ずっと沖縄の島々でやることになっている。どこに行くのかわからないようなかたちで撃っては隠れて、撃っては隠れて、隠れている間にまた飛んでいくというそういう仕組みをやるということで、いまの演習ではこれもやっています。飛行機で運ぶ。そして降ろす。行っては降ろし、オスプレイで吸い上げていって降ろしていく、船で行って降ろしていく。行っては降ろすということで島々の間をどんどん行く作戦になっています。わからないように、ハイマースでこっちから撃ったら、そこにはもういないという状況になります。
いま国会でも非常に問題があるのが国家安保戦略です。いわゆる安保3文書の大きなものが、国家安全保障戦略があってそして防衛大綱、そして中期防があります。お金が直接見えてくるのは中期防です。どんなモノを買うのかということがはっきりしますので。これがいま10兆円といわれています。サイバーなどの新しいものを入れていくという想定をしているので、サイバー部隊5千人という、かなり人を入れてくるということです。今度の日本の予算でこれだけ入れてくる。そして電磁波も含めた、計器を狂わせるようなかたちでいくということですね。
いまの国会の動向ですけれども、とにかく「敵基地攻撃論」というのはずっと前からいっていました。無理矢理有事の方向に引っ張っていく言論が非常に目立ちます。ロシアのウクライナ侵略に反対する参議院の抗議決議がありました。この抗議決議は、衆議院は通ってきました。参議院でも通るわけです。けれども、「全員が当然だ」というようなことだったわけです。けれども私は、議長の真ん前に座っています。参議院は、コロナの関係で席がひとつずつ空くようにして開かれています。国会の開会式も参議院で行われます。参議院は議場が広く、そこに248名います。以前は賛成・反対のボタンがあって、押さなければ棄権です。だからみんな座ったままできました。誰が反対したかわからないけれども数が表示される。でもコロナで席が移動したものだからボタンがない席ができて、ボタンをなしにしようということになり、賛成は起立してくださいとなった。反対は座ったままでいいんです。では棄権はどうすればいいんですか。以前は座ったままでよかった。今、棄権は退場です。結局私は最前列から出て行ったんです。賛成できない、会派としては反対だったようですけれども、私は棄権ということで出ました。けれども、途中で罵声があって「お前は何で出るんだよ」とか「非国民」と言われているようなものもあって、そういう状況でした。
文書を見ると「抗議決議」というタイトルはいいにしても、この中味ですよ。「ロシアのウクライナ侵略に対する抗議決議」なのに、後半部分は台湾有事を想定して日本がまたやらなければならんというような文章が書いてある。これではおかしいのではないのか、防衛費を上げることの根拠になるのではないかということで、わたしは棄権したわけです。棄権の方がかえって目立ってしまい、散々いろいろなことを言われました。メールもいろいろきました。
そして今度は4月に入って、衆議院で沖縄復帰50年決議がありました。ところがそれには地位協定の改定が入っていないのでほぼ全員賛成です。参議院では出てきたけれども、地位協定を変えろということで委員会では与野党で合意しました。「抜本的」という言葉を抜くのでこれを入れようと。これが通っていったのに、政府が入ってきて、政府の方針と違う、これを抜けと。結局抜いてしまったので、それはおかしいだろう、参議院の考えじゃないの、政府の考えなのか。参議院の決議だよと。復帰50年でこういうことをやっていいの、ということでかなり抵抗したら決議できなかった。結局、沖縄復帰50年の決議は参議院ではできていません。衆議院だけなんです。
国会の状況も非常におかしい。地位協定を変えることについて主権国家が何もできないのか。昨日も全国の米軍基地周辺で相次いで検出されている有機フッ素化合物PFAS(ピーファス)、これも調べもしない。自分の国にある基地ですよね。入るのに「入っていいですか」と、なぜこんなことを聞くのか。「入っていいですか」と聞くのはいいのかもしれないけれども、「NO」といわれたら「はい、わかりました」となります。基地の中のものが流れてきますよ。米軍基地のフェンスって何でも止められるわけじゃないんですよ。空気だってなんだって流れてくる。結局この地位協定の改定が全然入らないということで主権国家として問題だということです。参議院も、なんで官邸が言うと参議院の意志が消えるのかということで、とにかく国民がどうするのかを考えなければいけない。いま米軍基地から流れているPFASの問題が東京、神奈川で大変な問題になっている。これは発がん性が疑われていて血中濃度が問題で、すでに年配の人は相当あるんでしょうけれどもこれから年配になっていく人たちはどんどんどんどん上がってくるという状況になるんですね。
ウクライナの決議をしてロシアを非難するということはそれはそれで非難決議かもしれないけれども、それだけで何になるのか。非難したら終わり、それでOKですか。そうじゃないでしょう。止めようとしていますかということです。ドイツやフランスは間に入りました。中国でさえ間に入っていいですよということを言っている。ところが9条がある日本がどうして言わないのか。間に入ろうとしないのか。難民の受け入れという言い方はしていますけれども、止めるということに一番ふさわしいのはやっぱり日本じゃないか。核戦争になったらどうなるのかということを一番知っているわけですよ。新聞にも私が棄権したということが載って、余計に変なメールが送られてきました。フェイズブックなどにもめちゃくちゃ書かれました。「仲介」でも「調停」でも「仲裁」でも「和解」でもいいけれども、とにかく努力がないということですね。政府答弁を聞いていても与党の防衛論を聞いても、とにかく「防衛にがんばろう」というと変ですけれども、自衛隊の活躍の場というか、そういう部分を大きくしようという、そういう議論ばっかりです。野党もそういう意見をいうんです。
私はいま外交防衛委員会に入っています。伊波さんと2人で入っていますので質問時間が維新と同じくらいあります。共産党よりも多いです。小さな2人だけの会派ですけれどもね。衆議院の方は外交と、防衛いわゆる安全保障委員会とふたつあるので、一度に同じようなことは聞けないですが、ウクライナの問題や沖縄の問題は外交と防衛が完全に交差するので、外交防衛委員会は外交も防衛もということで活発な議論をしています。敵基地攻撃能力論や反撃能力がどうのこうのといっている前に、もうミサイルはどんどん買う、そして距離の長いものを買う、これはアメリカが言っていることをそのまま買うということです。
1000㎞というとどれくらいの距離かというと、福岡と北京が900キロ以内です。「どこに届くの?」ということです。これを1000発用意する。沖縄から見ると逆に中国の北京は遠いんです。上海はもっと近い。こういうミサイル基地の建設をしていくと中国にとって大変な脅威ということになりますね。防衛費の2倍というのは、いま予算審議をしていますけれども、これを当たり前のようにいっています。5年間で48兆円ということですから、1年10兆円平均ですね。国民が負担するのが当然だということが報道に出ていますけれども、もう何も議論はいらないよというくらい当然倍額が必要だという言い方です。「国民の安心安全を守るためにやっているから、2倍は当然ですよね」と。国民の安心安全のために2倍にしたほうがいいのかどうかというのは、わからないです。本当に安心安全というのであれば恐らく中国と同じような軍事力あるいは軍事設備をやって、これで安心するんだったら10倍でも足りないくらいです。でもやっぱり国家予算としては難しい。
国民のいまの暮らしを考えると暮らしそのものが安心安全じゃない。仕事ができないことがいっぱいある。物価もそうでしょうし、不況の問題、円安、コロナの問題ですね。沖縄では離島ですから、物価が高くなってガソリンは200円を超えます。農業をする人は大変な状況です。農作業をするためのトラクターの燃料そして肥料が1.5倍というのはまだいい方で、2.5倍のものもある。そうすると沖縄は牛肉も有名ですけれども、これもちょっと危ないということで辞めざるを得ないような状況になっている。ですから「台湾有事」よりも、暮らしの方が安心じゃないんです。そこで本当に防衛費は2倍必要なのかということはわからない。防衛協力の話も出ています。新聞に載っていましたが、防衛協力に民間船を使う。民間船で疎開をするための移動のものかなと思ったらそうではなく、民間船を使って自衛隊の弾薬や装備を運ぶというんです。ここにくるんですかと。でも、島外への脱出というのは何ヶ月経っても石垣でもできないですね。予算の問題というのは、私は絶対反対と決めていますけれども、こんなものに使われたらどうしようもないんじゃないのか。国が潰れていきますね。
日本にとって本当にどうなのかということです。いま下地島空港というのがあるんですがコロナ前までは海外からチャーターで観光客がいっぱい来ていた。ところが外交防衛委員会で自民党の佐藤正久議員は「変な覚書」といっている。「空いているのに」と。いまは確かにコロナで海外から来ていないから空いています。「変な覚書を沖縄でやった」というわけです。「変な覚書」じゃないですよ。どんな思いで復帰をしたのかということですね。「軍事利用をしない」ということが、1971年の復帰のときのこの覚書の中味です。「下地島空港は軍事利用しない」。これは当時の運輸省、運輸大臣と屋良朝苗琉球政府主席との間で行われた。これがずっと2013年までは「軍事利用をしないことを踏襲します」と答弁している。それが今回、私が聞いたときに答えていないんですよ。「踏襲するんですよね?」と聞いたら「理解をしていただくために丁寧に説明します」。「いやいや踏襲するかどうか聞いているんですよ」と。そうしたら何か気まずそうな顔をしていました。こういうことです。
やがて安保3文書ができてくることになりますけれども、これもアメリカが求めているような日本の安全保障という言い方になってきて、全部いろいろなものを買い求めていくということになると思います。F35も新しいものにかわるということですね。これは2015年くらいのガイドラインで「矛と盾」といっていました。いま日本はどうなっているかというと、前はアメリカが「矛」で日本が「盾」といっていた。敵が来るようだったらアメリカが行って日本は日本の防衛をするという状況だった。けれども、いまはわからないんです。日本が「矛」になるのかもしれない。もしかしたら「矛」と「矛」になるかもしれない。その辺を日本はどうするのかということが全然はっきりしていないんですね。日本の周りの国々からたくさんミサイルが飛んでくる準備がされていると認識している。そうかもしれないですよ。「矛」がいっぱいあるわけですから。安全保障をどんどんどんどんやるとそれだけ安全じゃなくなってくるというジレンマがある。本当にアメリカの要請で動いてきたというのが先ほど紹介した砂川事件の東京地裁の判決ですね。これは非常に言い得ていると思います。
これも沖縄では大きな問題になりました。下地島空港が使われていないからもったいないじゃないかというんですね。「変な覚書」といった。それは失礼な話じゃないの、どんな思いだったか覚えていないの、沖縄の人にそんなこといっちゃいけないんじゃないのということで「変な覚書というような発言は、私は極めて不見識だと言わざるを得ません。改めて屋良覚書は遵守されねばならない」ということを次の質問でいったわけです。これは9条の意識がすごく活かされていて、これから建設していく下地島空港は平和利用するということで、ここは自衛隊が使わないようにということをしっかり言っている。いま自衛隊は使っています。離島の急患などを運ぶためです。あるいは不発弾の処理のために自衛隊がいるわけです。これは沖縄では評価が高いけれども、いまのような南西シフトの中での役割ではちょっと問題があります。
憲法9条の原意、もともとの意味は何か。いまは「専守防衛」でいっぱいいっぱいになっています。「専守防衛」さえとにかく守ってくれれば、というところにわれわれは追いやられています。追いやられているんですよ。もともとは専守防衛もだめだったわけです。それは1791年のフランス憲法で、自衛戦争はするけれども「侵略戦争はしない」といっています。これが18世紀の考え方です。いま21世紀に入っていますけれども、第1次大戦、第2次大戦を経験してきたところが、人類はこことまだ変わらないのですかということです。国連憲章の前文には一度ならず二度も人類は大変な戦争を起こしてしまった。起こしてしまった反省をどうするかというと、その戦争の惨害、戦争の惨禍はどうするのかというと、国連憲章には「将来の世代」と書いています。将来の世代を守るために戦争の問題をきちんと止めて、武力を使わないということを原則にするということが書いてある。
日本国憲法の中で「政府の行為によって再び戦争の惨禍がないようにする」ということがあります。「再び戦争の惨禍がないように」という憲法ができてから75年が経つけれども、そのときに生まれていない人、75歳よりも若い世代はこの憲法でずっと守られる世代ということになります。いま私たちは守られる世代です。体験者はそれを知っているからこの戦争の惨禍があるということがとても問題になるよ、影響は大きいよということをしきりに訴えていて、実は国連憲章もそうなんですね。前の世代の人に「2度もありましたよね、そして将来の世代を守るためにこの憲章をつくりますよ」といっている。
専守防衛というのは、今でこそ大事な状況なのでこれを訴えることは非常に大事なんですけれども、本来から言うと理論的にはグレーです。特に戦争被爆国というのは唯一日本ということです。そこの憲法だからこそ意味がある。そこにあったのは核兵器の使用問題です。核兵器が使用されていく戦争、核戦争になるから戦争放棄という規定があって、これは絶対ダメだということですね。イギリスとオーストラリアは日本国憲法ができたときに、「素晴らしい、日本は素晴らしい憲法をつくった。だけど守り切れれば本当に素晴らしい。守りきれないのだろう?」と言っている。いま守りきれないところにきているんですね。変えようといっているわけですから。そういう状況にあります。
憲法前文の指針は、伊達判決で「自衛権はある」とはいっています。けれども「自衛戦争ができる」とは書いていない。そこにはいろいろな平和外交をして戦争を止めていくということ、そして国連で、安保理事会で決議をして初めて日本の防衛問題などはそこに上げてくる。そのときに国連軍や有志軍でもいいけれども、国連の安保理決議があった場合には、ということが伊達判決がいっていることです。なぜそれをいっているかというと、吉田茂さんが1948年、1949年くらいにマッカーサーから「憲法を変えますか」といわれた。「いや変える必要はない」と。「特に9条はどうだ」といったら、「みんな自衛、自衛といって侵略戦争もそうやって始まった。だから変えない」と言ったわけです。そのあとまたご本人の考えが変わったかどうかわかりませんが、少なくとも9条の真意はそうだったということです。この伊達判決に書いてあるのもまさにそういうことです。駐留する米軍が日本を巻き込むと言っている。いま専守防衛というのはまだ道半ばで、いま専守防衛で必死にがんばっているわけです、専守防衛の線で止めなきゃいけないと。でも敵基地攻撃論というのがこれだけ盛んになって来ると、先制攻撃のようなかたちになってしまうので専守防衛で止めないといけないわけです。
その次に来るのは、日本が外交の信頼と経済発展モデルを見せることです。これを以前は経済大国になった日本というものを見せてきた。日本は要するに外交で非常に信頼されていた。中東からももちろん、アジアの国々もそうでしょう。そしてヨーロッパ、中米、南米。そして経済発展というのも実際見せているわけです。9条があって軍事費、これはいろいろな誤解があったかもしれませんが少なくともいまのような防衛費じゃない。その中で経済発展をしていった。急激な、それこそ戦後20年も経たないうちに東京オリンピックが来るというのは大変な日本の発展だったわけです。このモデルが世界に出てくるというのは、なぜ日本はそこまで発展したんだろうということで防衛論のモデルだったわけです。そういう部分も考えてみないといけないだろう。
いま考えると戦争と欠乏の問題があるよと。いまのウクライナを見たらウクライナだけの問題ではなくなってしまう。経済の問題です。そこにロシアも当然関わっている。そうすると世界経済に大きな影響を与えてきている。これまでの経済が生産国あるいは輸出国、輸入国全部影響を受けてかたちが違ってきているということですね。沖縄の場合は、当時はとにかく戦争になったら食糧がつくれない。結局飢餓になる。沖縄戦も飢餓で亡くなった人がかなりいます。2年分の備蓄、最低でも1年分ということで本土から持っていった。ところが戦争でそれが焼けた。焼けたどころか、隠していた場所がわからなくなるくらい地形が変わってしまった。沖縄戦は地上戦が3か月ですけれども、そのときにもうものがないんですよ。食べられないという状況です。飢餓があって、これは「恐怖と欠乏」という言い方がありますけれども、言い得ていると思います。これも戦争と欠乏あるいは経済という問題について、本当に直結しているというのはいまのウクライナの状況でわかったと思います。いま本当に憲法9条は、灯火のような状態にありますけれども、その9条観というのは非常に強かったということです。
伊達判決を見たときの当時の日本の状況は、「ああ、そうだよ、それだよ」ということをみんなしきりに言ったと思いますね。ところがアメリカが介入してきて、最高裁まで影響を受けさせて最高裁の判決が出たということです。この経済負担が非常に少ないようにした。GDP比1%ということでやってきて、そこで発展をしていった 。だから経済は、9条の経済というのは非常に大きいと思います。アメリカの場合には軍需産業がないと生きていけない。日本はどうするのか。外交防衛委員会の委員の中に、日本の企業は軍需産業をしないから発展しないだろうという人がいます。そうじゃないでしょうと。戦争を起こさないと発展しないということになりますからね。
日米安保においても格差をどんどんつくってしまいアメリカが儲ける、というものですね。軍事費がどんどん増大して米軍の思いやり予算も出して、日本は経済発展してきたかというと、それがどんどん下がっていくわけです。米軍への思いやり予算は、名前も変えて日米同盟を堂々と強靱化する予算ですといっている。アメリカの兵器の購入は、オスプレイにしても、アメリカ空軍はもうオスプレイは使わないといっている。本当にオスプレイというのはバランスが悪く、事故率が非常に高いということで空軍は使用しない。アメリカ空軍が使用しないのになぜ日本が使うんですかね。しかも今回EABOで沖縄の島々を飛んで輸送することに活躍できる場を見いだしたみたいです。オスプレイというのは風が問題で、バランスが取れなくなる。昔アフリカで銃で落ち落とされたということがありましたけれども、銃がなくても撃ち落とされる。自分で落ちていくわけですからね。オスプレイというのはそれほど大きな戦力じゃないけれども1機百何十億円ですよ。国民の経済をどうするんですかということです。オスプレイを修理するのに2か月か3か月もかけている。誰が修理しているか。アメリカから来て修理している。アメリカの企業の人が入って修理をして、その滞在費も生活費も、それこそ日本の国民の税金から出すわけです。こんなことして大丈夫ですかという問題ですね。
9条の問題とか周りの影響について、「厳しい日本の安全保障を考えると」という使い古しの文句を毎回国会でいっています。それを米国がいっている。とにかく9条を変えろ、変えろということを、アメリカは憲法ができてしばらくからずっといっている。9条が邪魔をしているというんです。日本側の答弁は、日本国民には災害があるので災害のための費用が必要だから軍事費はかけられません。何よりも戦争・防衛のときに必要な若い人たちが、銃を持たないという教育を受けているというんですね。いまのアメリカが聞いたらびっくりするかもしれませんけれども、当たり前のことじゃないですか。とにかく9条が邪魔だというのはアメリカの利益の問題です。そういうものを日本では国民感情として入れないということが強いからだめです、簡単には防衛予算を増やすことができない、という理由にしていた。国民の9条観が強かったんですね。それをいま出すことはいいことだと思うんです。
実際には、中国と日本の関係について、政治的な関係は非常に悪いけれども、輸入など経済的な結びつきは日中とも非常に大きい。アメリカよりもずっと大きいわけです。日本にとって中国がいま一番の貿易相手で、どちらが重要なのかということですね。日本の企業が2万社くらい中国にいるといわれています。中国では戦争の頃のビデオが流れたりしていますけれども、最近のビジネスでは中国でむしろそれを育てる、引き継ぐ感じで行われている。
日本の普通の人の目から見たら、アメリカって日本を警戒していないのではないかと思っていたんですけれども、ハワイのアメリカ人はパールハーバーがあるので日本といまこんな関係にあるのは奇跡だといっていました。ところがいま認識はそうではないです。太平洋戦争終了後の日本に対するアメリカの姿勢はそんなに大変なのかという状況でした。日本が再軍備したらということで、そこを警戒しているわけです。だから外からおさえるためには沖縄がありますという瓶のふた論がありました。国連憲章を見てみると敵国条項というのがありますね。第53条です。そこには、かつての敵国が再軍備したら問題になるからと書いています。その敵国というのは結局連合軍と戦っていた国で、名前は書いてありませんけれども日本、ドイツ、イタリアです。それくらい再軍備に対して警戒していた。ドイツは2度そういうことがありました。日本に対する警戒も非常に強かった。でもその後の努力もありますので、いま敵国条項は残っているけれども、日本を入れないという問題じゃないということで実質はもうないのと一緒です。
9条の外交ということですが、9条というのは、憲法9条で日本を守っているわけではないんです。平和憲法というのは、9条があるから平和憲法ではないんですよ。9条を中心に、9条から影響を受ける仕組み全体が平和憲法なんですね。よく日本国憲法の三原則、三原理といいます。国民主権、基本的人権の尊重、平和主義といったりします。三原理というとき、国民主権というのは国民が選挙権を行使していろいろやるだけを国民主権といっているのかというと、そうではないんですね。この憲法の仕組みが国民主権の仕組みになっているということです。だから「臣民」といった時代の国民ではないということが、憲法全体にあるわけです。
地方自治をやるにしても、主権者としてその地方の住民が決めることですよということです。最高裁判所の裁判官さえNOだと言える。そう書けるわけですから。そういう仕組みが国民主権の仕組みです。これは何も15条の選挙権のところに書いてあるわけではないんです。最高裁判所の仕組みの中に書いてある。主権者の意思を表すところが国会だということで第4章にそう書いてあります。この憲法の3原理というのは憲法全体にそれこそDNA状態で入っていて、憲法の性質を決めているわけです。染色体ですからこの性質が入っているということがすべての情報に関係しています。そうすると国会がどういう法律をつくるのか。9条の性質を持った法律をつくっていくということですね。だから戦争法と言われている安保関連法は憲法違反というのは当然です。9条ももちろんそうだけれども憲法そのもの、仕組みとしての憲法の性質を変えてしまうものを入れてしまったということなんですね。
いま自民党がいっている教育を受ける権利、憲法解釈の中味でよさそうなことを書いているのに教育の無償化があります。教育の無償化というのは、子どもの教育の中にこの3原理を入れなければいけないわけです。人権教育を入れなければいけないし、国民主権教育を入れなければいけないし、平和教育を入れなければいけない。それが憲法の性質だから、教育はその3つを入れるということです。憲法というのが国の基本構造ということですから、そこに性質としてDNAが入っているものはすべてに活かさなければいけない、そういう仕組みを私たちがつくっていかなければいけないんですね。
外交も、国民の意向を活かした外交をしなければいけないんです。国民主権の外交です。いま国民がどういう状況にあるのかということを考えると、軍需一辺倒のアメリカを相手にしている。そことタッグを組むなんていうことは国民にとって本当にいいんですかと。「矛」と「矛」になってしまったら、日本の国土からしたら、この状況で国民の命と暮らしを守ると平気で言っていますけれども、そうならないでしょうということですね。それを憲法の性質として考えると、9条の外交というのも憲法の平和外交という意味をきちんと捉えないといけない。
中国の軍事費の問題はあり、私たちは中国を見るとどうなんだろうと思いますね。「兵員」は中国の人口からすると200万人いますが、中国の人口はアメリカの4倍近くで、人口比からすると倍はないんですよ。ロシアは確かに多いだろうと思います。人口的に言うとちょうど日本と同じくらいかちょっと日本より少ない。中国の省ひとつで日本の人口と同じくらいのところが4つくらいあります。私は山東省に行って山東大学で話をしましたけれども、あまりにも人が多い。済南というところで、どのくらいの人口ですかと聞いたら800万人くらいかなと。他に青島があって1000万人くらいいるなと。山東省全体はどのくらいの人口ですかというと「1億人くらいかな」ということです。ひとつの省が1億人くらいというのがぼこぼこあるんですね。そうなると、この中国の人口からしても、ちょうど日本は11分の1くらいですかね。15億人と1億2千万人ですから。兵員はこうだとしても軍事予算はどうか。もちろんアメリカが突出している。そして中国、ロシアですね。そして日本があります。予算的にはひとり当たりの軍事予算負担は日本の方が多いです。
集団的自衛権を国連憲章に入れたのはアメリカです。それまでは自衛権というひとつの言葉でした。個別的自衛権のことでしたので、アメリカが国連憲章に集団的自衛権という言葉を入れさせた。第1次世界大戦のときには集団的自衛権という言葉はありません。しかし第1次世界大戦は「A軍事同盟」対「B軍事同盟」でやったわけです。オーストリアとドイツの軍事同盟と、英国とフランスとロシアの軍事同盟が対立していった。だからオーストリアの皇太子が暗殺されたというだけが、世界大戦につながったわけです。「だけが」というと変だけれども、「懲らしめる」「懲らしめる」「懲らしめる」ということがどんどんどんどん広がっていった。第1世界大戦では、「同盟だから」とどんどん国が入っていきました。これが集団的自衛権の考え方にそっくりなんですよ。同盟国だから戦争しないといけない。いまNATOは、もし本当にどこか1ヶ国が戦争に入ったら戦争をするわけです。ポーランドに間違って撃ってしまったのはウクライナだったようですけれども、ああいうふうにNATOのどこかにロシアのものが入っていったらヨーロッパ全部が入るから、これはもう大変なことになる。国連の中ではこういう集団的自衛権の考え方がいまあるわけです。だからEUはほぼNATO軍になります。
アメリカはここに入り込んでいますけれども、国益だといっているのは政治的な判断でいっているだけで、本当に国民の利益なのかという問題ですね。勝手に「国益、国益」とよくいうけれども、「国益」だからといって結果として何が起こるのか。友好関係が破綻する、経済が破綻する、国民生活も破綻する、信頼が国際的に破綻する、そして未来まで破綻する。こういう状況になるわけです。そうすると何を持ってくるかというと、いまこそ憲法の意味ですね、国民が認める国の政治の基本的方針が国是のことですから、これをどう発信していくかという問題です。これは、かつては発信しなくても日本の憲法のあり方というのは、日本の貿易や国際環境の中で全然軍事を見せなかったわけです。日本には武器がないと思っていたと中東の人が「不思議な国だ」といったということがありました。こういうことをきちんと経済発信を含めて必要だということですね。すべての部分で、地方自治まで入れて「9条の礎」というのをしっかり当てはめないといけないということです。
このような中で軍事力上位25ヶ国を見ると、日本は少なくともベスト10にはいつも入っている。2022年の軍事力では5位です。これはもちろん海上保安庁は入っていない。そして人口は11位、駆逐艦の数は36隻で世界3位です。海洋国家ということもあるんでしょうけれども。軍事費は7位です。年間4.7兆円。2倍にしたら何位になるかといういうことです。
軍事力上位25ヶ国ですけれども、アメリカやロシア、中国、インド、フランス、イギリス、日本。ここは常連です。トルコが上がってきています。そしてドイツもイタリアもある。韓国も最近もっと上がってきています。下位の方になると、これから進んでくる国々というか、発展していく国ですけれども、台湾は19位。イランなどが上がっていき、オーストラリアはかなり低い。北朝鮮は23位、サウジアラビアがいま上がってきています。別のかたちで見ると、軍事力で国の格を測るのではないということがあるのは、スイスはいつも30位にも入っていないわけです。
だけど格からいうと、スイスは国際的に一番信頼があるから国連の機関が置かれているわけです。中立ということもあるのでしょうけれども。そうすると徹底した中立関係になるんですが、中立の意味というのは私がアメリカに行ったとき湾岸戦争がありました。そのときに中東にロシア製の(当時はソ連です)兵器がスイスの空を通っていった。これを許したことが残念でたまらないと、スイスの国民が言いました。これでスイスは終わりだ、何で上を通すのか、中立国の名前に恥じるだろう、もうがっくりだよと。それくらい徹底しているんです。自分たちが攻撃したわけではないけれども自分たちの上を飛ばした、飛ばして戦争に協力をしたわけですね。とにかく自分たちのプライドを傷つけ、自分たちのモットーを傷つけたということをしきりに残念にいうということはとても重要だと思いました。さすがにスイスだと思います。
GDP比からいうといくらになるのか。一番高いのは中国ではないんです。サウジアラビアですね。そしてアメリカ、ロシア。中国は下から3番目です。GDP比、国民総生産の比でいうと1.75%ですね。日本は1%。これが2%になるとまた変わってくる。これは2020年のものなので、いまウクライナ危機などいろいろな問題があって上げてくるところが多いです。そういう中で上げないという議論をどんどんしていったら国際的にはどういうような写り方をするのかというと、私は信頼を強く持つのじゃないかと思います。
国家安全保障戦略(NSS)で安保3文書はこういうかたちで数字を決めたあと、最後にこの5年間の防衛費の総額をどうするかという装備の数量を明示していくのが中期防ですね。でも、もう防衛費とか装備が先にできているような感じです。国家安全保障戦略-防衛大綱-中期防という順序のはずです。去年岸田総理が今年中にといっているので、今度の年末にいろいろやると思います。NSSというのもアメリカの決め方です。アメリカの軍事費の決め方はこうなんですよ。日本の憲法はアメリカの憲法とはまったく仕組みが違い、DNAもまったく違うし、仕組み自体も違って、憲法全体が平和主義のものです。
だからそこで考えられているのは何かというというときに、国民の命と暮らしとどっちが中心だ。そのためにこのDNAがあって、戦争していろいろなものが破綻したり国際関係が崩れていったり、そういうことがないように。さらに国民の命と暮らしの中で、憲法で大事にしていくものが残っていかないといけないということです。国民の命と暮らしというときには国民が決めるということです。いまはどこで決まっているのかがわからない。さらに人権の問題ですね。ウクライナでも非常に人権問題が中味にあるということもよく言われていますけれども、日本の中でも多いと思います。人権の保障、尊重というものもしっかりあることが信頼に入ってくるんだろうと思います。
アメリカの方針が全部、安保関連にでているという。どんどんどんアメリカの思いで国家安全保障戦略などが書いてある。「積極的平和主義」の意味まで全部変えてしまったということも記憶に新しいと思います。今日の資料のひとつは、沖縄が戦場にならないようにということで憲法理念を書いたものです。歴史をよく見るということはとても大事だと思います。大事なものがあとで出てくるということがよくありますけれども、いまのうちにあとで出てくるかもしれないものを想定するような捉え方も非常に重要かと思います。