私と憲法246号(2021年10月25日号)


戦後初めての野党共闘による政権選択選挙

(1)目下、政権選択・総選挙の最中。

立憲野党が4分の3の選挙区で候補を1本化

安倍・菅政権の9年、前回の総選挙から4年の自公両党による政治の評価が問われている。

人びとのいのちと暮らし、営業を重大な危機に陥れた新型コロナ感染症の危機は緩和されつつあるが、第6波の到来が危惧されているさ中であり、自民党総裁選で岸田文雄候補が「民主主義の危機」と述べたことを引くまでもなく、立憲主義が壊され、権力が私物化され、政治の腐敗が進み、日本の民主主義は今までにも増して重大な危機の中にある。加えて日本をとりまく東アジア情勢の政治的・軍事的緊張をはじめ内外に難問が山積している中での総選挙になった。

この総選挙に際して、①立憲野党4党は「市民連合」との間で6章20項目の、日本が当面する切実な政治課題での政策合意を確認し、②政権交代が実現すれば共産党はこの合意の実現のために閣外から協力するとの確認を立憲民主党と合意し、③立憲野党4党は全国の4分の3に及ぶ小選挙区で候補者を1本化し、自公政権与党と対決する政権選択の選挙戦を展開している。このことは現行の小選挙区比例代表並立制という選挙制度の悪弊を物語るものでもあるが、しかしそうした制約の中で実現された戦後政治闘争史上初めての、画期的なことだ。

自民党は菅義偉前首相の政権投げ出しに際して、メディアをジャックして鳴り物入りで総裁選挙を演出した。当選した岸田総裁はこれに続いて、新首相となり党利党略で国会の予算委員会での審議すら拒否して、史上例のない短期間のうちに新政権誕生の「ご祝儀相場」と「政治的争点隠し」をねらい奇襲作戦的に国会解散・総選挙に突入した。

新型コロナ対策の失敗をはじめ、内外の諸課題で行き詰まり、窮地に陥って政権を投げ出した安倍晋三政権に続いて、菅義偉政権もコロナ禍にまともな対応ができず、2代にわたって無責任に政権を投げ出すという異常な事態が生じた。

しかし、自民党の安倍・麻生太郎らの派閥の領袖の後押しで総裁の座を獲た岸田首相は、安倍・菅政権9年の政治的悪弊をそのまま踏襲して総選挙に臨み、内閣と党の表紙を変えただけで世論の支持をかすめ取ろうとしている。

与党が企てる改憲と敵基地攻撃能力保有

先立って行われた自民党総裁選では、岸田をはじめ4人の候補者全員が自民党改憲案4項目の推進をうたい、とりわけ岸田、高市らが突出して日米軍事同盟強化、敵基地攻撃能力保有などを主張し、党内の多数を獲得したことは見逃せない。当選した岸田は総裁選の最中に4人中唯一期限を切って「(憲法改正を)任期中に実現を目指したい。少なくともめどをつけたい」と言明し、「(日本を標的とした弾道ミサイルを相手国領域内で阻止する敵基地攻撃能力の保持についても)「抑止力として用意しておくことは考えられるのではないか」と違憲の発言をした。

岸田は「自衛隊の(9条への)明記は違憲論争に終止符を打つために重要だ。未来に向けて推し進め、国民の憲法を取り戻したい」(9月26日、総裁選4候補オンライン討論会)と9条改憲を推進する立場を鮮明にした。

岸田は日本会議国会議員懇談会、神道政治連盟国会議員懇談会、日本の前途と歴史教育を考える議員の会などの右派組織に属している。

岸田新総裁は当選直後に、昨今の自公連立政権の悪政に対する世論の厳しい批判を考慮して、「国民の声が政治に届かない」「民主主義が危機にある」などと語った。このことは自らが安倍・菅政治の9年に直接責任のある党と政府の要職にあったことなど知らぬふりの無責任な言辞である。しかし、案の定、8日の首相の「所信表明演説」では、安倍・麻生らに配慮して、この問題に一言も触れなかった。

岸田宏池会の危険な変質

岸田は池田勇人・元首相が65年前に創設した自民党の保守本流、「ハト派」と呼ばれてきた派閥である「宏池会」の現会長だ。岸田は前回の総裁選で菅義偉に敗れ、「終わった政治家」などと呼ばれたが、今回の総裁選に再挑戦するにあたり、なりふりかまわず安倍晋三元首相など党内外の右派の支持を獲得しようと、「宏池会」の伝統的な路線を清算する立場をとり、転向した。

総裁選に際して極右組織「国家基本問題研究所」の櫻井よしこは「岸田氏の公約、憲法改正には一刻の猶予もない」「日本国の切羽詰まった現状への責任は……吉田茂元首相を源流とする宏池会の伝統および宏池会所属の政治家群の責任は極めて大きい」(10月4日、産経新聞コラム)と宏池会の伝統からの断絶を迫った。岸田は今回、総裁・首相の座を手に入れるために、この櫻井らの「悪魔の誘い」に乗って、踏み絵を踏んだ。

岸田は総裁選に先立って宏池会の伝統を継承してきた長老の古賀誠・元幹事長と会い、関係を絶縁した。古賀は「憲法九条は世界遺産」(かもがわ出版)という著書まである保守政治家だ。これとの断絶は総裁選で高市早苗を推して3割近くの得票を得た安倍晋三らの要求でもあった。二階自民党前幹事長との絶縁と合わせ、自らの派閥の伝統から変節することで岸田は高市支持派の協力を得て、自民党新総裁の椅子を手に入れた。自民党のハトはカラスになった。

岸田は「新しい資本主義」などというキャッチフレーズを打ち出したが、ここまで安倍ら党内右派に取り込まれた岸田が、安倍・菅政権9年の新自由主義を清算できようはずはない。

こうして今回の総選挙は安倍・菅9年の政治を継承する岸田自公政権か、政権交代を要求する立憲野党と市民による新しい政権かの選択の選挙になった。

(2)台湾海峡と朝鮮半島での火遊びを許さない

米国の対中戦略に深く組み込まれる日本

第2次世界大戦後の米ソの2超大国による世界的規模での覇権争奪の時代は80年代末のソ連の崩壊で米国1国の単独覇権の時代となった。その後、急速に中国が台頭し、米国の影響力も後退する中で、その地位が脅かされるようになった。

中国は習近平政権の下で「一帯一路」戦略を打ち出し、米国に遅れて来た覇権主義としての独自の影響力構築をめざした。その実行にあたっては米国などに対抗して強大な経済力と軍事力を背景に強引な覇権主義的手法が目立ち、一部の国々からの警戒と反発の動きを招いた。同時期に香港における市民運動の高揚の中で「1国2制度」政策が破綻し、事実上の併呑政策が展開され、台湾をはじめ人々の警戒心を引き起こした。

米国でトランプ政権に代わって登場したバイデン政権は、この中国を戦略的に「唯一の競争相手」として位置づけたうえで、トランプのような米国単独主義ではなく、対中包囲の統一戦線結成、同盟再構築を進めようとしている。米国は対中圧力一辺倒ではなく、「1つの中国」政策を維持しながら、対話と包囲強化の瀬戸際作戦に転じた。

バイデン大統領は日米豪印の戦略対話、QUAD(クアッド)構想推進に続いて、米・英・豪3国による軍事同盟AUKUS(オーカス)を結成した。バイデンはこれらによって両面から中国包囲戦略を進めようとし、中国の反発を招いている。

日本はこの枠組みの中で、先に菅前首相が約束した「日米共同声明」に「台湾海峡」を書き込んだことにみられるような対中国の同盟強化を要求されることになった。

軍事費対GDP比2%超、欧米列強との同盟へ

今回の自民党の「選挙公約」では、中国・朝鮮に対する危機感をあおり、「相手国領域内で弾道ミサイルを撃ち落とす能力の保有など、抑止力向上のための新たな取り組みを進める」として、敵基地攻撃能力の保有の方向を明確にし、防衛費(軍事費)は従来の日本政府がとってきた立場を大きく超え、倍増の「対国内総生産(GDP)比2%以上も念頭に増額を目指す」とした。

1976年の三木武夫内閣が国民総生産(GNP)比1%を「超えない」と閣議決定して以来、日本の歴代内閣はとにもかくにも「防衛費」を対GDP比でほぼ1%以内に収めてきた。この間、安倍・菅政権の下で防衛予算は9年連続で増額されてきたが、それでも前年度GNP比1%の水準を保ってきた。今回の岸田自民党が公約した「軍事費2%以上」は異常な突出であり、日本の安保防衛政策の大転換になるものだ。

4月の菅前首相の訪米の際に打ち出された「日米共同声明」では、台湾を巡る米中関係の緊張などを背景に台湾問題に言及したが、日本政府としては異例のことだ。また声明に日米首脳は「日本の防衛力の強化」を明記した。今回の防衛費2%以上への言及は、この経過を念頭においたものであり、岸田政権が極めて危険な道に踏み出そうとしていることを示している。

「産経新聞」10月20日付は「衆院選公示 国民を守り抜くのは誰か 『台湾危機』への備えを語れ」と題した挑発的な「主張」を掲載し、朝鮮や中国のミサイル性能強化に対抗する、「敵基地攻撃能力保持」と「防衛費2%以上」を支持した。そして「危機感が急速に高まっているのが台湾情勢だ。中国共産党政権は、自由と民主主義を掲げる台湾をのみ込もうとしている」として「台湾は、沖縄の尖閣諸島や先島諸島の目と鼻の先にある。台湾有事が日本有事に直結するのは国際的常識だ。米軍が有事に台湾を守ったり、平時に抑止力を発揮したりするには、日本の全面的な協力が欠かせない。日米やオーストラリア、英仏、インドなどの有志国が協力して対中抑止力を高めることが、台湾や尖閣を含む地域を守るのに有効だ」と強調した。

自民党はこの産経主張と同様の立場から、「防衛費2%以上」というフレーズに象徴されるとてつもない軍事力強化路線を、この朝鮮・中国のミサイル基地攻撃能力保持促進と台湾有事不可避論で正当化している。このもとで台湾有事は戦争法の「存立危機事態にあたる」などとして、米軍が沖縄や日本の本土の基地から出撃することで、「武力攻撃事態」となり、日本が中台紛争に巻き込まれる可能性が語られている。

アの平和を実現するうえで、日本国憲法の平和主義の理念と真っ向から対立する。これはいたずらに中国・朝鮮などへの敵愾心と危機感を煽り立て、軍事力強化を正当化し、米国その他の国々との軍事同盟を構築し、強化しようとするものだ。この道は際限のない軍事力強化と緊張拡大をまねき、東アジアにおける戦争の危機を引き寄せるものだ。

インド太平洋での欧米各国の軍事演習

先の日米共同声明は「自由で開かれたインド太平洋を強化する共通の目的を再確認し、この地域で……両国の協力関係を深化させ、拡大させる」としたが、この地域では日米欧印などの諸国によって、このところとみに軍事的緊張が作り出されている。

自衛隊が参加した米国など各国との軍事合同訓練がひんぱんに繰り返されている。

9月15日から11月下旬まで、2カ月半にわたって、陸上自衛隊では全国の部隊から約10万人が参加する最大級の「陸上自衛隊演習」が始まった。全部隊を対象にした大規模演習は1993年以来約30年ぶりという。尖閣諸島や台湾を巡る有事での、九州・沖縄への部隊投入を念頭に車両約2万両、航空機約120機が参加する。岸信夫防衛相は記者会見で「島しょ部への攻撃をはじめとする事態に対応するには、輸送力が鍵となる」などと大演習の目的を語った。

9月18日~10月1日には海上自衛隊護衛艦「ちょうかい」「いかづち」「きりしま」「やまぎり」は、米国海軍空母「カール・ヴィンソン」ほかの駆逐艦、巡洋艦、補給艦などと沖縄南方で共同訓練を実施した。

10月2日、3日、海上自衛隊護衛艦「いせ」「きりしま」「やまぎり」は「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて連携強化のため、沖縄南西海域で米空母「ロナルド・レーガン」・「カール・ヴィンソン」などや、イギリス海軍「クイーン・エリザベス」など、オランダ海軍フリゲート艦、カナダ海軍フリゲート艦、およびニュージーランド海軍フリゲート艦などと共同訓練をした。日本近海で米英の空母3隻が一堂に会する異例の状況が生まれ、6カ国合同艦隊で、中国を牽制した。

10月3日、自衛隊のヘリ空母「いずも」は四国沖で、岩国基地所属の第242海兵戦闘攻撃中隊のF35Bを使用して発着艦検証作業を実施した。あらたに改造して空母化した「いずも」で、自衛隊機よりさきに米軍機の発着訓練が行われるという異常な事態だ。

10月12日~16日、海上自衛隊護衛艦「こんごう」は米国海軍空母「ロナルド・レーガン」と四国地方から関東地方にかけての海域で合同訓練をした。

10月15日~18日には自衛隊インド太平洋方面派遣部隊の護衛艦「かが」「むらさめ」は米国海軍空母「カール・ヴィンソン」など、英国海軍空母「クイーン・エリザベス」など、およびオーストラリア海軍フリゲート艦などとベンガル湾で日米英豪の共同訓練を実施し、自衛艦隊は帰路インドのポートプレア港に寄港し、インド海軍との連携を誇示した。

東アジアの緊張緩和を目指す市民と野党の政策合意

米軍は継続的に台湾海峡での「航行の自由作戦」を実施するなど軍事的緊張を増大させている。米国第7艦隊所属の駆逐艦などは、今年ほぼ毎月1~2回、台湾海峡を航行している。最近では10月15日、米軍のミサイル駆逐艦とカナダのフリゲート艦が台湾海峡を通過した。これには中国当局が繰り返し抗議している。

このところ中国空軍は10月1日の国慶節以降、連日のように台湾の防空識別圏(ADIZ)の南西部を掠めるように数十機の大編隊を侵入させ、4日までに計140機を超えた。これは付近にいる米英の空母などへの牽制として行われている。

10月14~17日、中国とロシアの海軍艦艇10隻は日本海で合同軍事演習を行った後、津軽海峡を通過(国際法上合法)し、太平洋を南下し、合同演習を行った。

米国の西太平洋での対中挑発とそれへの中国の軍事的対抗は、いたずらにこの地域の緊張を増大させるもので、容認できない。

朝鮮は1月の朝鮮労働党大会での「兵器開発5ヵ年計画」に基づいて、長距離巡航ミサイルなどの発射訓練を、9月だけでも4回実施したと発表した。

一方、安倍・菅政権とそれを引き継ぐ岸田政権は中国と朝鮮の軍事的脅威を煽り立て、ミサイルの危機と台湾海峡の危機を叫び、そのための日米軍事同盟の強化と自衛隊の肥大化、沖縄・辺野古の新基地建設をはじめ、南西諸島における自衛隊基地の強化などを進めることは、東アジアの平和に逆行することであり、それこそ危機を招き寄せかねないものだ。

この道をすすんではならない。必要なことは軍事力バランス論による軍備競争ではなく、対話と協調の外交的努力による緊張の緩和だ。

今回の総選挙に際して、市民連合と4野党が合意した6章20項目の政策合意の第1章は、以下の項目でなっている。

〇憲法に基づく政治の回復

米国との軍事同盟を強化し、いたずらに台湾有事と朝鮮半島の危機を煽り立てる安倍・菅継承の岸田政権ではなく、政権交代を実現したら、私たちはこの政策合意を基本にして政治の変革を実現する。

この合意は憲法違反の米国との集団的自衛権の行使(戦争法)を拒否している。コロナ禍に乗じて緊急事態条項を憲法に挿入するような憲法改悪を許さない。平和憲法第9条を守り、その精神でアジアの近隣諸国との関係を発展させる。核兵器禁止条約の批准をめざし、まず締約国会議へのオブザーバー参加から始める。辺野古の新基地建設は中止する。
これらは安倍継承岸田政権と大きく異なる政策だ。政権交代を実現したら、私たちは、まずはここから始める。
(事務局・高田 健)

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9.19 違憲の安保法制 政権交代で廃止しよう~強行から6年 国会前行動

さる9月19日はあの安保法制(戦争法)の国会での成立からまる6年。総がかり行動実行委員会はあの日以来、毎月19日に全国で行動を展開してきたが、今回の行動は70回目の「19日行動」になった。

この日は14:00~戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会と、全国市民アクションの共催で、オンライン併用で国会正門前で約1000名の市民が参加し、「戦争法強行からまる6年、戦争法廃止、立憲主義の回復、いのちと暮らしを守れ、自公政権退陣、総選挙勝利、9・19行動」が開催された。集会では立憲野党各党代表と、2015年安保をたたかった主要な市民5団体の代表が発言した。

主催者の総がかり行動を代表して菱山南帆子さんが挨拶し、政党からは菅直人・立憲民主党最高顧問、田村智子・日本共産党副委員長、福島みずほ・社民党党首(リモート)が挨拶した。市民団体からは、石川健治さん(立憲デモクラシーの会・東大教授)、高山佳奈子さん(安全保障関連法に反対する学者の会・京大教授)、元山仁士郎さん(元SEALDs、SEALDs琉球)、高岡直子さん(安保関連法に反対するママの会・医師)が発言した。

本誌は当日の菱山、石川、高山、元山、高岡の皆さんの発言を採録する(編集部)。

主催者あいさつ 菱山南帆子さん(総がかり行動委員会)

みなさん!こんにちは。そしてオンラインで参加されているみなさんこんにちは!
9月2日、菅首相は政権の投げ出しを表明しました。昨年8月28日の前安倍首相のなげだしからたった1年です。2代の内閣が立て続けに政権を投げ出すことは異様なことです。これは私たちの闘いがアベスガ政権を追い詰めている表れに他なりません。しかし今、マスコミを賑わせている自民党総裁選はこれまでもそうであったように、ニセ政権交代劇を演じることで人々の不満をかすめ取り、自公政権からの離反を繋ぎとめようとしています。この4人の誰を選んでも最悪な結末しか見えてきません。自民党は誰がやっても同じという事ではないでしょうか。劇場型手法の怒りのかすめ取りを許さず、今こそ本物の政権交代を実現し新しい政治を共に切り拓きましょう。

?「国民のために働くといっていた内閣」は1年間で何をもたらしたでしょうか?予防、検査、隔離、治療、ワクチン、補償を中長期的から戦略的に行うのではなく、後手後手のその場しのぎ的対応や「ワクチン1本足打法」と揶揄されるような神頼みならぬワクチン頼みに終始してきました。オリンピック、パラリンピックを専門家や多くの市民の反対を押し切って開催することで、8月は連日4、5千人の感染爆発を引き起こしました。挙句には、中等症以下は原則自宅療養という名の「自宅放置」で、「いのちの切り捨て」の宣言をするに至り、救急車が来ても受け入れ先がない、更には救急車も来ないという最悪の医療崩壊が現実のものとなりました。そして、その中で多くの人々が自宅で治療を受けることなく亡くなりました。「救える命も救えなかった」ことは政治の失敗であり、アベ・スガ政権の罪は重大です。

?またコロナ禍は「女の不況」といわれるほど女性から仕事を奪い、命さえも奪い続けていますが、これもアベノミクスによる女性の非正規雇用の拡大がもたらしたものに他なりません。菅政権発足時の日本学術会議6人の任命拒否に示される科学、学問、批判的知見の軽視や歴史に学ばない姿勢は、いとも簡単に戦争を始めたり、私たち市民の命をためらいもなく犠牲にすることになるだろうと思います。

最早自民党、公明党にいのちと暮らしと尊厳を守ることを期待できないし、するべきではないことをきっぱりと訴えていこうではありませんか。

6年前の今日。戦争法案が強行採決されました。その悔しさは今でも決して忘れることはできません。しかし、私たちはその悔しさの中から選挙にも勝てる市民と野党の共闘も鍛えて育ててきました。今や当たり前のようになっている野党共闘は6年前まで当たり前ではありませんでした。この間の補選や市長選で勝利を続けているのは、6年にわたる共同の闘いの成果が確実にもたらされたものです。

そして先日の9月8日、差し迫る天下分け目の闘いになる衆議院選挙をみすえて、立憲民主、共産、社民、れいわ新撰組の立憲野党4党と市民連合の間で政策合意を締結しました。私たちはこの画期的な合意をもってさらに力強く一つの塊になろうではありませんか!

このような私たちの画期的な動きに焦り始めた人たちが、デマや誹謗中傷などの卑劣な選挙妨害と野党共闘の分断を狙った動きが出てきています。そんな攻撃の一つ一つに私たちは、この6年間の行動の闘いで築き上げてきた立場や、党派を超えた信頼関係と連帯と団結の力で跳ね返しましょう。今こそ、6年間の蓄積した力を爆発させましょう。

?最後に、アベ・スガ政権は、あの買収男を法務大臣に据え、あの賭け麻雀男を検事総長にしようとし、更に性暴力男の逮捕を揉み消したあの中村氏を警察庁長官にすることで、法治国家を人が支配する独裁に変えようとしてきました。中村の就任を容認すれば性犯罪にお墨付きを与え、性差別撤廃の動きに逆行することになり決して許すことはできません。?「わきまえない女と黙らない女」はどんどん生まれています。その力は必ずや政権交代と新しい政治をダイナミックに切り開いていくと確信しています!。
?共に闘い必ず勝利しましょう!ありがとうございました!

石川健治さん(東京大学教授)(「立憲デモクラシーの会」)

皆さんこんにちは。今日は良く晴れまして、私は雨男なんですけれども。心がけの良い方が大勢おられ、こんなにいい天気になりました。

ただいまご紹介いただきましたけれども、「立憲デモクラシーの会」を代表して、私、出てきてるんですが、本当は「たたききってやる」の山口二郎さんが来るのか、と思っていたんですけれども、ここはやはり憲法の専門家に出てもらいたいという、かなり強い意向がありまして、私がこういう慣れない演台に立つことになりました。

もう既に各党の皆さんが、いろんなことをおっしゃいましたけれども、私の申し上げたいことはですね、立場を超えた前提が崩されたという、繰り返しが私たちが話していることなんですけれども、そのことをここでもう一度強調しておきたいと思います。

「立憲デモクラシーの会」というのは、実は護憲団体ではありませんで、改憲派も入れるという所がポイントでした。それから、理系の先生も入っていただいて、この法律家、政治学者だけではなくて、幅広い人たちに参加をお願いするという形で作ったわけです。これは、なぜかと言いますと、個別の例えば九条解釈については意見が対立していても、その対立した意見を戦わせている、あるいは戦わせるべき土俵そのものが、今壊されようとしていると、その危機感でもって連帯できないかということで、この組織を作りまして現在まで続いている次第です。

発足したのは、2014年の4月でして、つまり2014年7月1日に解釈変更がなされる前にそれを止めようという思いで立ち上がったということなんですが、憲法解釈を人事の力で変えるということを許してしまいました。また理屈の面から言えば、われわれの見解は内閣法制局とも共有されたものでしたので、理屈においてはわれわれのが勝っていたはずだったにも関わらず、数の力で押し切られる形で六年前の今日を迎えたということだったわけです。

 こうやって考えてみますと、やはり、われわれが訴えようとしたこの「前提条件の破壊」というですね、これはそんなに間違えた見立てではなかったんではないかという気がいたします。問題は、九条論論議からコロナ対策へと移りましたけれども、菅政権の断末魔というのは、結局あの時、つまり安保法制につながる一連の動きの中で壊れてしまった統治システムが、このように無残に機能不全に陥るものなのかといことを目の当たりに見せてくれたんだろうと思います。

 そういう意味で、もちろん立場はいろいろあると思いますが、共有すべきいわばゲームのルールと言いましょうか政治の大前提が壊されていると、その部分でわれわれの連帯の輪をもっともっと広げていけないかというふうに念願をしております。

 こうやって立っていますと、私、場違いな感じがするんですけれども、6年前に参議院議員会館の前にやはり同じように立ちまして、その時に申し上げたことを繰り返しておきたいと思います。その時に話したのは、"malgre moi"(マルグレ・モア)というフランス語だったんですね。キザな言い方だと思われるかもしれませんけれども。これはロマン・ロランのいい方なんですけれども、丸山眞男先生が好んで使われた言葉です。「非政治的な人間であっても連帯すべきときがある」。こういうところに本来場違いだなと思われるような私のような者でも、やはり立ち立ち上がらなければいけない時はあるのだということですね。そういう思いを新たにしながら今日を迎えたということを申し上げて、時間になりましたので私の拙い話に代えさせていただきたいと思います。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

高山佳奈子さん(京都大学教授)(「安全保障関連法に反対する学者の会」 )

「学者の会」呼びかけ人で日本学術会議会員の京都大学・高山佳奈子でございます。きょうはお招きいただきましてありがとうございました。皆さん、アベノマスク、 覚えてますでしょうか。アベノマスク、あれいったいなんだったんでしょうか。全ての方がいろいろな思いがあるかと思うんですけれども、 科学的にはかなり問題のある政策を巨額の税金を投じて実施したということは、皆さん認識一致していらっしゃるんじゃないかと思います。戦闘機より高いんですね。凄いお金でした。日本学術会議の年間予算の何十倍ものお金を使ってしまったわけですね。

いつから日本って、こんなにバカになっちゃったんでしょうか。こんなはずではないという思いを持っていらっしゃる方も多いと思います。この壊されている今の日本の政治システムを頑張って再構築していきたいと思います。

私たち学者の使命は、専門知を民主主義のために提供すること、若い人たちを教育すること、そういったことでございます。私は、自民党政権、小泉政権の時あたりから政府の審議会委員の担当を始めまして、そのあと民主党政権の時も、そのあともう一回自民党政権なっても、ずっと専門家として参加してまいりました。しかし、今、この専門知がきちんと民主制の中に生かされる仕組みが壊されていっていると思います。

高山佳奈子さん

かつて、総理大臣だった方が、「私の言っていることは正しい。私は内閣総理大臣だから」という趣旨の発言をしたり、「森羅万象を掌握」してたりですね、そういう発言があったんですけども、私たち人間は神様じゃないんです。学者だって自分の専門のことしかわからないです。だから、いろいろな分野の人たちが、知恵を寄せ集めて、知見を持ち寄って、そして熟議を重ねて今一番いいと考えられる政策を決定していくっていうのが、これが民主主義の本来の在り方です。そのために役割を果たすのが学者だと思っています。

しかし、今、情報が正しく流通しない。隠蔽されている、捏造されている。ワクチンがないのに黙っている、質問に答えない、等々。民主主義のあり方に対しての直接の攻撃と思われるようなことが、まかり通っております。今、自民党の総裁選で皆さんいろんな政策を候補者の方々がおっしゃっているけれども、なんでそれ今までやらなかったんですか、ということですよね。今、それが実行できないような国の仕組みに対する破壊が行われてきたと思っています。

前は総理大臣がわりと短期間で変わっても、それなりに国としてつながっていっていた時期もあったと思うんです。それは専門家集団としての官僚組織が今よりもきちんと機能していたということがあります。しかし、ここ15年ぐらいの間に国家公務員の人数は約半分に削減されて、いま霞ヶ関は超ブラック企業化しております。優秀な人も来なくなっています。こんな中で、過酷な労働を強いられ、良心的な人たちは左遷され首になる。忖度をする人たちだけが一部の人の利権のために上の方にいる。そして、牛耳って恫喝しているっていうような感じになっていて、本来の統治機構のあり方がなくなってしまっているんですね。これを見ていられない、何とかしなければと思うわけです。

私は、学術会議の任命拒否の問題については、ただちに任命をするべく「学者の会」としても、それから学術会議の内部の人間としても、ずっと発信し続けていくつもりです。学術会議というところは、専門の学会の分野を越えて、いろいろな理系・文系、全ての分野の方が集まって、最新の問題に対して政策を提言していくところであります。これが攻撃されているということは、新しい問題に対して日本の国としてどのように対処していくかについてのアイデアを出す場所がなくなってるということです。政府の審議会にも、確かに文理横断的なものがありますけれども、人選がベストでありませんので、良いものは出てこないことも多いですね。ですから、まず専門知を民主制のために役立てることができる仕組みを取り戻すことを心がけて、投票を呼びかけたいと思います。

私、学術会議のお仕事も15年ぐらいやってるんですけど、脳内で勝手に「日本学術会議マイテーマソング」「脳内テーマソング」というのを考えていて、それは、「君の名は希望」という歌です。その中の一節で、「君が拒否していたこの世界は美しい」という文句があります。これ、若い人たちに伝えたいんですね。今こんなに日本の仕組みが壊れているのは、若い方々のせいではありません。私たち上の世代の者のせいなんで、若い方が、ドンドン文句を言っていい。こんな日本は嫌だ、もっと変えていかなきゃ、ということをぶつけて欲しいと思います。そのために、ぜひ投票に足を運んで下さい。そして、壊された行政機構、元に戻すためには、かなりの時間がかかることが予想されて困難な道だけれども、でも一歩を踏み出さない限り何も始まりません。国の仕組みを取り戻すことができませんので、ぜひ皆さん力を合わせて、世代を超えて共闘していきましょう。ありがとうございました。

高岡直子さん(医師)(「安保関連法に反対するママの会」)

みなさんこんにちは。まず始めに、コロナ感染症でお亡くなりなった方々とそのご遺族に心から哀悼の意を表します。私は20年以上、大田区で在宅医として働いて参りました。この夏、まったく思いもよらない訪問診療をすることになりました。酸素飽和度が86%、即救急搬送を要するレベルの呼吸状態で、この値を伝えてこれまで搬送を病院に断られたということはありませんでした。コロナ感染になって、自宅療養を強いられてしまった患者さんに対し、私たちは防護服を着て15分以内という滞在時間に抑えてお薬を渡して、酸素濃縮器を設置してくる。そんなことしかできませんでした。本来なら入院して24時間医療的管理をしなければならない人をおいて、すぐにその次のお宅へ向かわなければいけませんでした。しかし、このような不十分な医療でさえも受けられず、在宅でお亡くなりになられた方が8月だけで250名。早期発見、早期治療を受けられていれば失われなくて済んだかもしれない命です。一体この国はどうしてこんなに情けないことになっているのでしょうか。

総裁選には出馬せずにコロナ対策に専念すると、菅首相はおっしゃいました。この異常事態ですから臨時国会を開いて国民の疑問や不安に答えて、今までのコロナ対策を見直すのは当然のことだと思います。他の多くの国がやっているように、PCR検査を拡大しないのはなぜなのでしょうか。感染者を早期に発見して早期に対応するのが感染症対策の基本の「キ」。いまだに日本だけできていません。病床が足りなくて手遅れになる患者さんがいることが問題となっているこの時期に、税金を使って病床を減らす政策を見直さないのはなぜなんでしょう。保健所をずっと減らしてきた政策のせいで、感染の波が来るたびに保健所業務が追いつかない。これをもう5回も繰り返していますが、それを正さないのはなぜなんでしょう。

第5波で医療崩壊は首都圏だけじゃない、日本全国で同時多発しました。オリンピックとの関係がないとおっしゃるのなら、では何が原因でこのような事態になったのでしょうか。コロナ感染者数は累計167万人、死亡者数は1万7千人を超えて東アジアでトップレベルです。1年後も半数の方が後遺症に苦しむ病気です。社会に及ぼす影響は測りしれません。これ以上感染者を増やさないために第6波をどう抑えるのでしょうか。感染が増えたら緊急事態宣言を出す。それ以外の目新しい対策もなく私たちは実に今年7割の日数を緊急事態宣言下で過ごしてきました。

効果が薄くなって感染者を抑えられなくなっている上に経済的な打撃が深刻です。コロナが原因で自殺をしたと思われる方の数は3200名。どうしてもっと補償をしないのでしょうか。どうせ旅行ができないんですからコロナ予算のGO・TOキャンペーンに取っている分を回せばいいんじゃないでしょうか。他の国みたいに軍事費をコロナに回すとかコロナが収まるまで消費税を取らないとかいろいろ方法はあると思うんです。

だいたい私たちはなんのために真面目に税金を払っているんでしょう。政治家の方々は、いま私たち医療従事者よりもずっと多くの人の命を救える立場にいるんですから、仕事をしてください。税金を私たちのいのちを救うために使ってもらいたいんです。

7月からずっと要求されているのに国会を開こうとしていない議員は基本的に現状を肯定しているということですよね。目の前で人がおぼれているのに助けようと船も出さない。そのような冷たい政治家に任せていては、いずれこの国全体がおぼれてしまいます。次の選挙は私たちが私たちの手で私たちのいのちを守る選挙です。きちんと仕事をする政治家、政党を選び取りましょう。投票率は8割を超えたいと思います。みなさんがんばりましょう。ご清聴ありがとうございました。

元山仁士郎さん(元SEALDs(SEALDs琉球)

はいさい。みなさんこんにちは。オンラインでご参加のみなさんも、こんにちは。元SEALDs(SEALDs琉球)、現在一橋大学の大学院法学研究科の博士課程に在籍しております元山仁士郎と申します。先月頃にこのスピーチのご依頼をいただきました。「ああ、2015年9月19日の安保法制、戦争法の成立から今日で6年になるんだ」、そういうような少し感慨深い思いをしておりました。あの日は前日18日から夜通しで抗議を行い、ひとりひとりの思い、スピーチを聞いて朝を迎えました。確かこの国会の正門前の対岸ですけれども、あそこに私は座って朝を迎えたと思います。法律が成立してしまったという悔しい思いありましたけれど、ここから何か変わるのかもしれない、変えられるかもしれないという高揚感も同時に感じていました。

あれから6年、2016年3月29日のこの戦争法、安保法制の施行からは5年半がたちました。安保法制、違憲とされた集団的自衛権の一部行使容認に基づき米軍の防護活動という名の下に米軍に対して自衛隊が守ると、そういう行動が行われていると言われています。当時、安倍首相は安保法案の国会審議において、この防護活動について「国会及び国民に対する説明責任を果たすため、可能な限り最大限の情報を開示し丁寧に説明する考えだ」と情報公開を約束していたにもかかわらず、その時期や場所は米軍の部隊運用に関わるとして情報が明らかにされていないという実態があります。言っていたこととやっていたことがまるで違うのではありませんでしょうか。

他方、私の出身である沖縄、南西諸島、琉球列島は再軍事化の波に飲み込まれています。今日も国会前にお越しですけれども、戦没者の遺骨が辺野古の新基地建設の埋め立てのために使われるかもしれない。辺野古の新基地建設も強行されているわけです。それのみならず奄美大島や宮古島、与那国島への自衛隊配備、石垣島では現在進行形で工事が進められています。再び沖縄戦のようなことが起きるのではないか。すでにかつての沖縄戦への道のりを進んでいるのではないか。自衛隊の弾薬庫の存在や、万が一戦争が起きたときの住民保護計画は明らかにされず、偶発的な衝突、高精度のミサイルなどに狙われる危険性が高いところに住んでいる友人や家族、親戚などがいるものにとっては、より差し迫った不安を感じざるを得ません。違憲ということや安全保障のあり方ということだけではなく、目の前にある具体的な不安を抱えている人々にも目を向け、その地域に住む人々とともに声をあげてほしいと思います。

安保法制、戦争法も基地問題も税金の使い方の問題に尽きます。新型コロナで多くの人々が生活に苦しむ中、また国家の財政予算も厳しくなる中、今年度は約5兆5千億という、防衛省に対して税金を使う、この使いすぎるのは一体どうなのでしょうか。2015年の安保法制の取り組み以降、野党共闘が生まれ市民連合始め市民の方々の頑張りでその動きが継続しています。本当に頭が下がる思いです。しかしながらまだまだ政権を取るには至っていません。この集会も11月に予定されている衆議院議員選挙で政権を取る、少しでも多くの議席を獲得するという目標を掲げています。そのためには「立憲野党頑張れ」と応援しながらも、任せっきりにするのではなく、わたしたちひとりひとりも汗をかいていかないといけないのではないでしょうか。新型コロナ感染症対策も行いながら、無理のない範囲で地道な努力をやっていきませんか。

最後SEALDsやSEALDs琉球のメンバーは大学などで勉強していたり広告、メディア、教育、法曹界などさまざまな分野で今働いています。中には子どもを授かったメンバーもいます。あのときの思いを忘れずに、いまもそれぞれの場所で生活を送りながらSNSを中心に発信、声をあげ続けています。これからも連絡を取り合いながら自分達にできることをやり続けていきます。みなさんもそれぞれの場所でひとりひとりができることをやり続けていきましょう。ありがとうございました。にふぇーでーびたん。

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全3回連続コラム 「女というだけで」第3回

女性たちが安心して発信できるオンライン環境を

事務局 菱山南帆子  

最終回の「女というだけで」はオンラインハラスメントについてです。

第2回目の「女というだけで」で少し触れたネット内での女性への誹謗中傷ですが、選挙が近づくたびに攻撃が激しくなってきています。リアルの場でも女たちは「わきまえ」させられて、声を上げにくい、本音を言いにくいのにもかかわらず、その圧力はネットの仲間にまで浸透しています。SNSで「女性差別反対」と言えば、すぐにアンチフェミニストやネトウヨ(ネット右翼の略)に見つかり「BBA(ばばあ)のくせに」「黙らせてやる」「レイプするぞ」と言われ、SNSで本音も発信できず、人知れず、SNS自体の使用をやめてしまう方が多くいます。

そんなオンライン環境を女性たちが安心して発信していけるような場にしていこう、そして万が一オンラインハラスメントにあった時の対処方法などがわかるようなHPを立ち上げることになりました。その名も、「オンライン・セーフティー・フォー・シスターズ」。

呼びかけメンバーの石川優実さん、伊是名夏子さん、山田亜紀子さん、そして私の4人で記者会見を行いました。この記者会見では、主に私たちに対して日常的に行われているオンラインハラスメントを可視化するという目的もありました。意外とネットでの嫌がらせに遭っているという事を知られてないことがあり、これを機に、実態を広め、知ってもらいたかったのです。記者会見では実際の誹謗中傷のツイート画像を資料に添付しました。

よく、「そんな匿名の誹謗中傷なんか放っておけばいい」と言われるのですが、2ちゃんねるなどのいわゆるネット掲示板とは違い、見たくなくてもSNSを開くと目に入ってしまうのが厄介なところでもあるのです。気にしないようにしていても毎日毎日、「死ね」と言われたり、根も葉もないデマを真実かのように言われ続けるのはかなりつらいものがあります。

こういった誹謗中傷の多くは在日外国人、障がい者、女性に向けられます。私たちのツイッターにはひどい言葉が連なるのに、賛同を表明してくれた作家の平野啓一郎さんのツイートにぶら下がるコメントは、比較的平和だったことに顕著に表れているなと感じました。(やまゆり園事件も被告は、SNSで差別を先導するような政治家たちばかりをフォローしていました。)

私たちが口をそろえて一番つらいというものは、「デマ」を流されることです。「嘘も100回言えば真になる」との言葉通り、大量のデマを流されると信じてしまう人が出てきてしまうのです。それが一番つらいのです。例えば以前、立憲民主党の辻元清美さんとお話ししたとき、辻元さんがもう何十年も一緒に活動してきた支援者の方が、ある日2人きりの時に「清美ちゃん、私だけには信用して本当のこと教えてほしいの。清美ちゃんは在日なの?」と聞かれたことがあったと言っていました。在日外国人だったらなんだっていうんだという話なのですが、デマが流され、身近な人でさえもそれに飲み込まれてしまう。これがとても恐ろしいのです。

石川優実さんは「集めたカンパでブランドバックを買ってる」とネットで拡散されました。これも根も葉もないデマです。私は石川さんと何度もプライベートで会ったり食事をしていますが、ブランド品のバックを持っているところなんて一回も見たことありませんし、仮に石川さんがブランドバックを持っていたとしても自分のお金で買う事の何が悪いんだと思います。そのことを石川さんがネットで否定すると、今度は「じゃあ収支報告を公開しろ」と尋常ではない数のコメントが付き、「交通費の内訳や駅名もしっかりだせ」と執拗に迫られています。あり得ないことなのですが、結果は「石川優実は収支報告をせずカンパは用途不明だ。」というデマが拡散されるのです。

電動車いすを使用して暮らしている伊是名夏子さんは、「健常者は障がい者の奴隷じゃない」「車いすテロリスト」「あなたが移動するだけで周りに迷惑かかるから旅行するな」「心まで障がい者」など、目を覆うような差別コメントが連なり、伊是名さんは現在ツイッターの使用をやめています。

私はマイクを消毒するためのスプレーを持って街宣をしていたら、その写真に対して「スプレー缶を持っていて怖い」「催涙スプレーかも」「スプレーは放火にも使える」と言われました。デマだと否定すると「でもスプレー缶を持っていたのは本当じゃないか」「嘘つき」「スプレー缶を持っていたのに持ってないと嘘をついている」と拡散されているのです。最後のほうだけが拡散されるので全く流れを知らない人が見たら、私は「スプレー缶を持っている証拠写真もあるのに持っていないと嘘をついた人」という印象がついてしまうという、地団太を踏みたくなるようなデマロジックがあふれています。

このロジック、実は自民党や維新にも当てはまるのです。特に安倍元首相は国会の中で「日教組!」「共産党!」とヤジを飛ばしていました。まるで悪口のように。「共産党は暴力集団」「日教組は暴力集団」そういった洗脳がネットでは溢れています。また、安倍氏はことあるごとに「あの悪夢の民主党政権時代」と繰り返しました。長期に亘る安倍政権により、安倍政権以外の時代を知らない若者にとってはこの言葉はとても効果的で、「そっか、民主党政権の時は最悪だったんだ」といった印象がついてしまうのです。最近は、維新の足立康史氏が選択的夫婦別姓に関する集会に参加した報告に、「維新以外の野党の皆さんは政権交代するまでは夫婦別姓が実現してほしくないという事が分かった」とSNSに書き込んでいました。

フェイクニュースに溢れている現代。私たちは「ネットのことなんて気にするな」ではなく、リアルもオンライン上でも闘いの輪を広げていかなくてはなりません。もともとは民衆のためのツールであったSNSが(エジプト革命が起きたのも出回り始めたばかりのツイッターの力が大きかった)いつの間にやら権力や差別者たちに奪われていました。

私たちがオンライン上の環境を奪い返すことは、これからの社会を変える大きなキーポイントだと思います。リアルでもオンラインでも声を上げる女性を孤立させず、若年層への運動の広がりを獲得していくためにも、デジタル系が極端に苦手な私たちの今後の大きな課題です。

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声明:総選挙を目前にひかえて

岸田文雄自公連立政権が10月4日、発足した。
岸田新首相はただちに10月14日衆院解散、19日総選挙公示、31日投開票という政治日程を発表した。このような短期間の日程設定は極めて異例なことだ。人びとのいのちと暮らし、営業を重大な危機に陥れている新型コロナ感染症の第6波の到来が危惧されているさ中、かつ東アジア情勢の緊張をはじめ内外に難問が山積している。にもかかわらず国会の予算委員会での審議すら拒否して、党利党略で解散・総選挙の日程を決めたことは許しがたい暴挙である。

新型コロナ対策をはじめ、内外の諸課題で行き詰まり、窮地に陥って政権を投げ出した安倍政権に続いて、菅政権もコロナ禍にまともな対応はできず、2代にわたる無責任な政権投げ出しという異常な事態が生じた。しかし、安倍・麻生らの領袖の後押しによって総裁の座を獲た岸田首相は、安倍・菅政権9年の政治的路線をそのまま踏襲し、内閣と党の表紙を変えただけで世論の支持をかすめ取ろうと、いわゆる「ご祝儀相場」が続くうちの短期決戦で、解散に打って出ようとしている。

先立って鳴り物入りで繰り広げられた自民党総裁選では、岸田氏をはじめ4人の候補者が自民党改憲案4項目の推進をうたい、なかでも岸田、高市氏らが突出して日米軍事同盟強化、敵基地攻撃能力保有などを主張したことは見逃せない。

当選した岸田氏は昨今の自公連立政権の悪政に対する世論の厳しい批判を考慮して、「国民の声が政治に届かない」「民主主義が危機にある」などと語った。自らが安倍・菅政治の9年に直接責任のある党と政府の要職にあったことなど知らぬふりの無責任な言辞である。

安倍・菅継承岸田政権のもとでは日本とアジアの平和、人々のいのちと暮らしが危うくされ、人間の尊厳がいっそう壊されていくことは明らかだ。

いまこそ政治の転換が求められている。

9月8日に「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」(市民連合)と立憲野党4党(立憲民主党、日本共産党、社会民主党、れいわ新選組)の間で6課題20項目の「政策合意」が調印され、全国各地の小選挙区で自公与党に対抗する立憲野党の候補者の1本化への努力が急速にすすみつつある。くわえて、9月30日には立憲民主党と共産党の間で閣外からの協力が合意されるなど、野党間で新政権に向けた協議が進んでいる。

いよいよ積年の自公政権という悪政に終止符を打ち、政治を転換する好機がきた。

来る総選挙では、すべての人びとに「安倍・菅9年の悪政を継承する岸田政権を許すのか」、それとも「平和と、いのちとくらし、人間の尊厳を守る政治を実現するか」、この2つの道の選択を問い、闘わなくてはならない。これは歴史的偉業である。

立憲野党と市民は共同し、小選挙区での候補者の1本化を誠心誠意、全力をあげて、可能な限りすすめ、自公与党の候補者に勝利しよう。

積年の自公の悪政からの転換を望む市民は、主権者としての責任を果たし、その想いを広げ、選挙に行って投票しよう。

いまこそ政治を変えよう。力を合わせて政権交代を実現しよう。

2021年10月7日
憲法9条を壊すな!実行委員会

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図書紹介「靖国神社と聖戦史観-A級戦犯こそ靖国にふさわしい」

内田雅敏著
藤田印刷エクセレントブックス
新書版:309頁
定価:900円+税

土井とみえ(事務局) 

7~8年前に東京で開催された憲法の全国交流集会で靖国神社を見学するフィールドワークがあった。案内をしてくれたのが著者の内田雅敏さんで、内田さんの案内は掲示物や解説文の注目箇所の指摘、展示物をどの角度から見るかなど厳密だ。指示通りにすると漫然と見学するのとは全く違う靖国神社を発見するという体験をした。本書の「はじめに」でも、英軍ラグビーチームが靖国神社を訪問した経緯を書いている。国内の反応の鈍さに比べて、靖国神社は各国から厳しい目があることがわかる。

第1部「靖国神社とは」では、明治初年からの同神社の沿革を掘り起し、靖国神社が、日本の近・現代史のすべての戦争は正しい戦争=聖戦史観にたっていると断定している。さらに戦前は、「天皇の参拝によって戦死を誇らしげなものに変え、後に続け!と戦死者の予備軍を作り出すための宗教的軍事施設、すなわち戦争神社」だったとしている。戦後も、靖国神社は戦前と同じ地位を占めるために腐心する。国がこれを助けた。戦後の復員事業は旧厚生省の所管事業として膨大なものであったことが想像される。しかし、その事業を担当したのは、陸軍大佐らの旧軍人たちであったという。しかもこれは敗戦直後に東条英機が命じたことを著者は指摘している。この旧軍人たちによってすべての戦死者の名前が「祭神名票」として靖国神社に自動的に送られ続けたことで、祭神が戦後も保持できた。これを著者は、死んでからも再度の『召集』、となったと指摘する。その通りだと思う。

靖国神社は、間違った戦争での死者を「護国の英霊」として顕彰することはできないので聖戦史観を放棄できないとし、このことにより南京大虐殺も「従軍慰安婦」もなかったことになる。遊就館の展示の説明については詳しい。東条英機をはじめ中将や将校などが命(みこと)として祭られている展示内容の紹介には多くのページが割かれている。

第2部は「歴代日本政府の歴史認識と真逆な靖国神社の『聖戦史観』」だ。この章では戦後の歴代内閣の歴史認識を詳しく検討している。中曽根首相による靖国参拝を前に藤波官房長官は、憲法学の芦部信義、宗教学の梅原猛など15名の有識者による「閣僚の靖国神社参拝に関する懇談会」を設けて準備した詳しい経緯は初めて知った。戦後50年の節目に閣議決定を経て出された村山首相談話は、植民地支配と侵略によってアジアの人々に対し「多大な損害と苦痛」を与えたことに対し「痛切な反省と心からのお詫び」をのべている。これは社会党の村山党首が首班のために突出した見解というものではないと指摘し、その後の内閣でも村山談話の精神は引き継がれていると判断している。一方、靖国参拝を強行した安倍首相の歴史認識は靖国神社の「聖戦史観」と重なり、戦後70年談話でも靖国史観が透けて見えることを検証している。

しかし歴史認識を維持した内閣の下でも、中曽根内閣での藤尾正行文部大臣は「日韓併合は合意の上」発言で更迭された。その後も日本の戦後史は歴史問題についての妄言と謝罪の歴史だったとも指摘している。A級戦犯の靖国合祀をすすめた人物が元最高裁判所長官だったということも指摘している。A級戦犯分祀論については、戦争犯罪人であるA級戦犯こそ靖国にふさわしいのだと説いている。納得だ。

最後の第3章は「靖国問題の解消にむけて」。ここでは「遺族の死者への想い」についての論考が、読者の想いにも様々に重なるのではないか。戦中を生きた知識人や戦地に送られた戦争の経験者、年齢や経験の違う人々の戦死者への向き合い方を次々検討する。さまざまな立場の人々を、よくここまで紹介でというほど実に豊富に示される。全国紙、地方紙の新聞記事、書籍などから丹念に拾い出しているだけに説得力があり、また様々な立場について考えさせられる。

そして、死者たちの声に耳を傾け、靖国からA級戦犯を分祀するのではなく、すべての戦死者を追悼する施設として国立の追悼施設の建設を提案している。
本書の各所で著者がこのテーマに強い関心を持って長期にわたり向き合っているか、力を注いできたかが想像でき、思わず唸り声をあげてしまう。

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