私と憲法230号(2020年6月25日号)


土壇場に来た安倍改憲との対決
それでも明文改憲と実質改憲をあきらめない安倍政権

安倍政権の危機

2017年5月3日に提案された安倍首相の新しい改憲案は、以後3年余、国会の両院の憲法審査会で本格的な議論に入れないまま、第201通常国会も終了した。
野党各党が国会会期延長を叫ぶ中で、あたかも逃げるように政府と与党は国会を閉じた。まさにその失政によってしばしば国会論戦で答弁に窮した首相を国会論議から「安倍隠し」さながらのやり方で救出した。

この国会で新型コロナ感染症と安倍改憲は、安倍政権にとって二重の困難な課題だった。このいずれにおいても安倍政権は窮地に立たされた。加えてここ数年来のモリ・カケ・サクラを始めとする安倍政権の腐敗と権力私物化が招いた危機を救い出すために仕組んだ黒川東京高検検事長の定年延長と検察庁法改定は、その本質が広範に露呈され、1000万のツイッターデモを引き起こし、政権は揺さぶられた。安倍政権は同法の強行採決を断念し、同法は国会最終日に継続審議の措置がとられず、廃案となった。次期国会では安倍政権は検察庁法改定案の分離と断念に追い込まれる可能性が濃厚だ。加えて6月15日、河野防衛相はイージスアショアの配備中止を表明した。

この国会での安倍政権のドタバタ騒ぎは異常だった。黒川検事長問題やイージスアショアの方針変更だけでなく、政権最大のイベントのオリンピック開催は延期になり、来年の開催も危ぶまれている。緊急事態宣言もいい加減なものだった。小中高の一斉休校措置も思いつきにすぎず、「新型コロナ給付金」問題も不評の「特定の世帯に30万円」から「1人当たり10万円」に変更した。アベノマスクの不評ぶりは目を覆うばかりだ。特定大企業と癒着したコロナ対策予算の横流しも相次いで暴露されている。河合・元法相夫妻の選挙違反事件も安倍官邸と自民党本部を震撼させた。

国会は閉会となったが、終盤国会の各種のメディアによる世論調査では、軒並み安倍政権の支持率が下落し、中には2割台にまで到達する羽目に陥った。
まさに政権の危機がきた。

それでも、それでも改憲を呼号

第201国会終了日の翌日、18日、安倍首相は記者会見を行った。
この会見の中で安倍首相はコロナウィルス対策に追われた国会を振り返った後、特別に改憲問題にふれ、「任期中の改憲」をめざすことを改めて表明した。そして国会終盤に突如、決定したイージスアショアの配備中止と関連させ、今後の方向として敵基地攻撃能力の保有も含めた新たな安保戦略の論議を開始すると述べた。これは改憲推進と合わせて、その実質化をすすめる極めて危険な戦略論議であり、見逃すことはできない。

安倍首相は「改憲」についてこう述べた。

「自民党は憲法改正に向けて、緊急事態条項を含む4つの項目について、既に改正条文のたたき台をお示ししています。緊急事態への備えとして、我が党の案に様々な御意見があることも承知しています。各党、各会派の皆さんの御意見を伺いながら進化させていきたい。建設的な議論や協議を自民党は歓迎します」。

「(しかし)この通常国会、150日間あったのですが、憲法審査会で実質的な議論が行われたのは、衆議院で1回のみでありました。大変残念なことであります」。

「各種の世論調査でも、議論を行うべきとの声が多数を占めている中にあって、国会議員として、やはりその責任を果たさなければいけない」。

「私も自民党の総裁として、総裁任期の間に憲法改正を成し遂げていきたい。その決意と思いに、いまだ変わりはありません。自民党のルールに従って、任期を務め上げていく、これは当然のことであろうと思います。これを変えようということは全く考えておりません。この任期内にやり遂げなければならないと思っています」。

要するに、安倍首相は党規約を変えた総裁3選で獲得した2021年9月までの任期中に、憲法改正を「やり遂げる」と言明したのだ。

これを再確認するかのように安倍首相は20日夜のインターネット番組で、「(総裁任期は)まだ1年3カ月ある。なんとか(改憲の賛否を問う)国民投票まで行きたい」「民主主義は全員のコンセンサスができればいいが、それは無理だ。そのときは多数決で決めていく」と強行採決も含んだ改憲への意思を表明した。

憲法審査会、動かず

この国会で、衆議院憲法審査会は1回だけ自由討議を行ったが、改憲案の審議には全く入ることができなかった。

安倍改憲案がただちに憲法審査会で改憲論議に入れないわけは、この間、改憲の議論の前提として国会で問題になってきた「改憲手続法(国民投票法)」の改正が終わっていないことにある。現在の改憲手続法で改憲国民投票が絶対に不可能という事は論理上はないが、改憲は国民投票を実施して初めて完成するのであり、法が現実にそぐわないことなどを修正するという法律の整備は前提的課題だ。

この法律の改正案が2016年改正の公職選挙法にあわせた部分改正案として自公与党によって国会に提出されたのが2018年の通常国会だ。野党はこの改正案が極めて不十分だとして、とりわけテレビCMの在り方の規定などの同法が抱える問題を指摘、抜本的再検討を要求した。以来、6回の国会にわたって、この対立は与野党で折り合わず、同時に起きていたモリ・カケ・サクラをはじめ国会の他の対立案件も絡んで議論が進まなかった。

立憲など野党の一部の修正意見には含まれていないが、同法が最低得票率などの規定がないことも重大な欠陥だ。この点は日本弁護士連合会などが指摘しており、憲法審査会が同法の抜本的改正を検討するなら、当然検討課題に含まれるべき問題だろう。

いずれにしても、安倍首相らの改憲案の議論は憲法審査会では全く進んでおらず、自民党は国会会期の延長で憲法審の開催続行ができたにもかかわらず、その可能性すら放棄して、衆院憲法審査会は国会の最終日の17日に改憲手続法の「継続審議」をかろうじて決めただけに終わった。

たとえ、次期臨時国会で改憲手続法の審議促進の与野党合意というハードルを越えたとしても、自民党の改憲案の審議に入るための次期臨時国会以降の運営のめどは立っていない。
衆議院だけではなく、参議院憲法審査会の改憲論議はいっそう遅滞しており、2018年の2月以来、1度も実質審議が行われていない。業を煮やした参院・維新の会は「林芳正・参院憲法審査会会長(自民党)の指導力不足だ」として、八つ当たり的に不信任動議を出したほどで、改憲派の足並の乱れは大きくなっている。

明文改憲と並行して進める敵基地攻撃論など

安倍首相は今回の記者会見で明らかにしたように、国会での明文改憲の動きが思うように進まない中で、敵基地攻撃をも含む新たな安保戦略の検討を開始し、事実上の改憲体制づくりを強引に進めようとしている。これはイージスアショアの配備失敗に代わって、従来の政府がとってきた「専守防衛論」戦略を放棄し、より攻撃的な「国家安全保障戦略」への大転換を国家安全保障会議(NSC)の議論を通じて進める決意の表明だ。

首相は記者会見でこう述べた。

「朝鮮半島では今、緊迫の度が高まっています。弾道ミサイルの脅威から国民の命と平和な暮らしを守り抜いていく。これは政府の最も重い責任であります。我が国の防衛に空白を生むことはあってはなりません」。

「抑止力、対処力を強化するために何をすべきか。日本を守り抜いていくために、我々は何をなすべきか。安全保障戦略のありようについて、この夏、国家安全保障会議で徹底的に議論し、新しい方向性をしっかりと打ち出し、速やかに実行に移していきたい」。

「抑止力とは何か。相手に例えば日本にミサイルを撃ち込もう、しかしそれはやめた方がいいと考えさせる、これが抑止力ですよね。それは果たして何が抑止力なのだということも含めて、その基本について国家安全保障会議において議論をしたい」。

ここでは従来からの安保戦略の転換をはかる決意が述べられている。安倍首相は従来、日本政府が「(敵基地攻撃能力は)他に手段がなければ自衛の範囲で、憲法上認められるが、政策上保有しない」とした解釈を支持してきたが、会見では「撃ち込むのはやめたほうがいい」と考えさせる能力を保有するのが抑止力だと語った。まさに敵基地攻撃能力の保有であり、従来の安保防衛戦略からの大転換だ。政府は2013年に制定した現在の国家安保戦略の初改定のための議論を始めるという。

これは明文改憲がなくても、実質的に明文改憲がめざす能力を確保しようとするものであり、実質的な改憲の表明だ。

闘いが安倍改憲を止めて来た

2017年5月に安倍首相が現在の改憲案を発表したときには2020年中に改憲を実現すると公言したが、その後の改憲スケジュールの遅れから期限を1年延ばして「自らの任期中(2021年)」に変更し、1年延ばした。

しかし、前述したように安倍首相が公言している「自らの任期中の改憲」の期限は来年9月に迫っている。この秋の臨時国会と来年の通常国会、この2回で改憲手続法に決着をつけ、自民党4項目改憲案の議論を行い、新しい改憲案を取りまとめて、それを国会で3分の2で議決し、「国民投票」に持ち込むこと(国民投票は改憲発議後2~6カ月の間に実施しなくてはならない)は可能だろうか。

どう考えても、この条件のもとで安倍首相が前述のインターネット番組で述べたような任期中の憲法改正を実現するのは針の穴に象を通すようなものだ。
この神業に属するような困難な改憲を、いまなお「やり遂げる」と言い張る安倍首相のねらいは、世論の支持率が低下する中で、岩盤ともいわれる改憲支持層の支持を維持することにある。この支持が崩れれば一気に内閣の崩壊につながるからだ。自民党の改憲対策本部の議員の中からも不満が出ている。政権を維持するためには安倍首相は「改憲はやる、やる」と言い続けなくてはならないところに追い込まれている。

筆者は従来から各所で、現状を詳細に分析しながら安倍改憲の企てがいかに困難であり、闘いによって安倍改憲を阻止することは十分可能だと断言し続けてきた。それは第1に、市民のたたかいが勝利できる可能性を持っていることを指摘することで、運動を激励したかったからであり、第2に、運動の中に根強くある「狼少年」的な危機アジリに違和感を感じてきたからだ。この立場は一部から「楽観論に過ぎる」との批判も受けた。

しかし、いままさに私たちがこのまま闘いを堅持すれば、安倍晋三首相の最大の野望である改憲を阻止し、この国の前途を東北アジアの平和と共生に資する方向に転換することができる可能性が生まれてきた。必要なことはオオカミ少年になるのではなく、勝利を確信して闘い続けることだ。

動揺を繰り返してきた安倍改憲

本来、安倍改憲にとって、今回の通常国会は天祐の機会だった。危機に際しては、政権にあるものは一般的にいえば世論の支持が得やすくなるものだ。実際、東京都知事の小池百合子はコロナ対策で何の実績もないのに、あたかも大きな働きをしたかのように演じ、支持率を高めることができている。

新型コロナ感染症に関して発令された「緊急事態宣言」は、自民党改憲4項目のうちの「緊急事態条項」改憲を正当化できる呼び水となりうる問題だった。しかし、これで緊急事態条項改憲への世論の支持は一定の効果があったものの、コロナ対策の失敗や検察庁法改定の失敗もあり、内閣支持率の急落を招き、改憲支持の世論も高まらなかった。安倍政権は危機を利用して浮上することができなかった。

安倍首相らは新型コロナ感染症の問題と緊急事態条項改憲を結び付けて議論の促進をはかったが、振り返ると安倍改憲とは実にいい加減なものだということがはっきりする。安倍首相と自民党はいま改憲4項目を提案しているが、何のために、何から改憲するのか、目的と方法が全く場当たり的で、そのときどきの風の吹き方如何で重点が変遷した。

自民党が民主党に敗れて野に下っていた時、2012年4月には復古主義丸出しの「自民党憲法改正草案」を発表した。

これが悪評だとみるや、2013年5月には「96条改憲案」をだし、戦争につながる9条と改憲問題を切り離した。

これも「裏口入学」などと世論の批判を浴びると、2017年5月には、憲法9条には手を付けないで、自衛隊の存在を正当化する条項のみを付加する加憲論を提唱した。

このあまりにもいい加減な改憲論は、自民党内すらまとまらず、他に、教育問題、緊急事態条項、参議院の合区解消などを加えた「4項目改憲案」を2017年衆院選の選挙公約として打ち出した。

しかし、その後も自民党内では異論が続出、し、2019年1月には自民党の幹部の下村博文・元文科相が改憲では教育問題先行もありうるなどという意見を述べる始末だ。
そして、いま改憲のための緊急事態条項を議論しようなどと言う。

これらに対しては、自民党改憲案に反対する野党と市民運動の奮闘で、この期間も自民党改憲案への世論の支持は必ずしも高まらなかった。「9条改憲反対」「改憲は喫緊の課題ではない」「安倍首相の下での改憲には反対」などなど、世論は安倍改憲に対しては厳しかった。

この新型コロナ問題の渦中でも、憲法改悪に反対する市民は全国各地で街頭スタンディングや署名運動を重ねることをはじめ、様々な方法を駆使して、あきらめずに活動した。

あと1年余、まさに安倍改憲は土壇場に来た。遅かれ早かれ、その間に総選挙がある。「水に落ちた犬は打て」という警句がある。

全国の市民運動が安倍政権追及の手をゆるめず、たたかいつづければ、戦後史上最悪の安倍晋三政権を、その改憲策動とともに遠からず打倒することは可能だ。
(事務局 高田健)

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2020年東京都知事選 宇都宮健児さんの「都民一人ひとりの生存権を守る」たたかいに連帯します

前回、2016年の東京都知事選に際して、小池百合子さんは「7つの0(ゼロ)」を掲げ、待機児童、介護離職、残業、満員電車、多摩格差などの解消を公約しました。そしてメディアの無批判な熱狂のなか圧勝を遂げると、その1年余り後には「希望の党」を立ち上げ、国政への再進出に野心を燃やし、都政を放りなげようとさえしました。

「五輪関連予算の適正化」という公約にしても結局はなすすべもなく膨張するに任せ、コロナ禍のなかでも「通常開催」に固執し後手後手の対応を今に至るまで繰り返しています。「ロックダウン」に「東京アラート」とメディア受けを狙った空疎なカタカナ言葉を次々と打ち出して目先を変えれば、4年前の公約などほとんど何も実現せずとも現職圧勝ムードのうちに再選できると目論んでいるかのようです。またもやメディア現象を仕掛けた先には、再度、都知事ポストを足がかりにした国政復帰を射程に入れているのかもしれません。

こうした既視感のある展開に諦めのような空気さえただようなか、宇都宮健児さんが東京都知事選に立候補する決意を表明しました。

「都民一人ひとりの雇用を守る、営業を守る、住まいを守る、生活を守る、命をまもる」と訴える宇都宮さんは、これまで小池都政が推し進めてきた都立・公社病院の独立行政法人化を中止し、都民の命を守る医療体制の充実と自粛・休業要請等に対する補償の徹底などを緊急の課題と位置づけ、学校給食の完全無償化、都営住宅の新規建設、家賃補助制度・公的保証人制度の導入、原発事故避難者に対する住宅支援などの具体的な政策を掲げ、都民の「生存権」を守ることを約束しています。

コロナ禍が惹き起こした医療崩壊の危機、貧困や差別の蔓延に対して、今まさに世界中の市民が、一人ひとりの尊厳と権利、そして生存権をかけたたたかいに立ち上がり、分断を乗り越える連帯の大きな広がりをつくろうと取り組んでいます。私たち市民連合は、宇都宮さんが勇気を奮ってこのグローバルなうねりに呼応し、東京都知事選に立候補されたことを歓迎します。また、自己責任と排除、差別と偽りの小池都政に終止符を打つ宇都宮さんのたたかいに連帯し、精一杯の支援を行います。

2020年6月13日
安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合

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今年も8・6がやってくる

藤井純子(第九条の会ヒロシマ)

広島では6月になると、この1年で亡くなった被爆者が名簿に追記される。昨年、ケロイドに苦しんだ叔母が亡くなり、悲しみを新たにしている。そして「ノーモア ヒロシマ ナガサキ」と共に「軍都廣島を繰り返してはならない」という思いが強くする。8月6日の朝、「ストップ!改憲8.6新聞意見広告」カラー版と「市民による平和宣言」を原爆ドーム周辺で配布してきたが、今年はかなり縮小して行うことになるだろう。だからこそ意見広告を多くの人に見てもらう意味は大きいのではないかと思い、懸命に取りくんでいる。

8.6新聞意見広告は、無数の個人が名前を寄せ合い声をあげること。9条改憲反対、命・人権を大切に、核のない戦争のない社会を… 様々なメッセージを載せて紙面を作っていく。一人でも多くの人に届け、世論を高める一助とできたらと思う。皆さまのご支援を心より願っている。

ツイッターデモと8.6新聞意見広告

ツイッターデモ 「#検察庁法改正案に抗議します」が大きく広がり、賭け麻雀もあって、政府は検察庁法改正案を先送りし、廃案となりそうだ。著名な人の声が取り上げられたが、一般ユーザーのフォロワー数も多く、併せて力になったと思われる。ツイッターは、家で、仕事場で、自分の意見表明ができる。そしてその声が政治に届いた。その後も「#国会を閉じるな」など…と続き、通常国会は閉じられても委員会が1週間に一度続けられる。これも成果だ。政治に自分の声が届いた成功体験によって、声を上げ続けようとする人も少なくないだろう。

8.6新聞意見広告は、「ストップ!改憲」を強く願う人々が紙面上でつながっていく。新聞一面に人々の名前が掲載されて、こんなに多くの人が!と心にとめてもらいたい。新聞は、リアルな場に大勢が集まるインパクトはないし、ネットのような拡散力もないが、紙面として残ることが強みだ。少なからず感想や意見が寄せられる。「3000万人署名」を載せればそこを切り取って、署名を集めて送ってくださった。半年たって署名が送られてきたのには感激した。通常の活動では出会えなかった人々と繋がれる喜びは大きい。名前が掲載された人も、署名を送ってくれた人も、改憲をストップさせたい仲間だと思うと、何とも心強い。

8.6新聞意見広告もツイッターデモも、人々が大きく集まれないコロナ時は効果的な市民運動かもしれない。そしてどちらも国会前や、広島では原爆ドームなどで行われるリアルな行動があってこそ力強く拡がっていく。

コロナ苦境をプラスに変えて

戦争させない・9条壊すな!ヒロシマ総がかり行動実行委員会は、全国各地と同様に、5・3憲法集会はコロナ自粛で断念した。その代わり、県内各地の活動や、コロナで大変な医療人、映画、労働現場など現場の苦しみを「憲法スピーチ」に収録しYouTubeで配信した。https://youtu.be/fo2FzQLdGbA (今も視聴可能)

今後もWeb会議や、YouTube配信も続けていくだろう。日ごろ参加が難しい遠方の人も参加でき、顔を見て話合いが進む。また、Web会議であれば、(例えば、高田健さんにお願いして?)国会状況などミニ学習会ができるといいな、などと勝手な意見も出ている。これらが実現出来たら、コロナ以前に戻るのではなく、ずっとダイナミックなネットワークとなっていくぞとワクワクする。

いろんなことで従来のやり方にこだわる必要もないのではと気づかされる。防衛大臣が、イージス・アショア計画の中止を決断した。政府は、代わりの高額な兵器を購入するなどと言わず、思い切って日米安保、地位協定などを見直し、辺野古新基地建設、米国製兵器の爆買いなど「不要・不急」をやめるべきだ。コロナ危機から学ぶことは多い。

今、広島では河井案里参議院議員と河井克行衆議院議員(広島3区)の買収容疑の逮捕で報道は一色だ。離党をしたが議員辞職はしない。昨年の参院選、広島県選挙区2人枠を自民が独占しようという名目で、案里に自民党本部から1億5千万円の資金が投入された。そのお金かどうかは捜査次第だが、地方議員約100人に約2600万円、また河井ルールで「うぐいす」日当を倍の3万円の配布した。安倍首相は相変わらず「責任を痛感する」に終わらず、河井たちは勿論、自民党も、安倍首相もはっきりした形で責任をとるべきだ。彼らの歴史認識もひどいもので悪罪はお金にとどまらない。参院選では、共産党を除く野党協力で森本(国民)がトップ当選したが、早くなるかもしれない次なる選挙には、野党共闘を働きかけて統一候補を実現させたい。

8.6ヒロシマ平和へのつどい

8.6を前に、広島では様々な集会や行動の準備が始まっているが、広島市はコロナ危機に乗じて平和記念式典を縮小し、慰霊のセレモニーにしようとしている。米トランプ政権は軍縮条約破棄し、小型核兵器の開発を進めている。式典は、被爆者や市民が世界に向けて、あらゆる核・戦争のない社会を実現するためにノーモア ヒロシマ・ナガサキを誓う場であり、「靖国化」は許されない。

私たち市民は8月5日、「被爆・敗戦75年 今、問われる民主主義」をテーマに8.6ヒロシマ平和へのつどい」をしっかりコロナ対策をして行う。40年以上続けてきたこの集会に可能であればご参加頂ければと思っている。

◆8月5日(水)18:00~20:00
広島市民交流プラザ5F
第1部 「被曝・敗戦75年 ヒロシマから」西岡由紀夫さん/「2020年 朝鮮半島をとりまく情勢」尹康彦さん
第2部 記念講演「危機の時代とナショナリズムにつまづく民主主義」講 師 :小倉利丸さん(批評家・元富山大学教員・現代資本主義論)

◆8月6日の行動
7:45 グラウンドゼロのつどい(原爆ドーム前)
8:15 追悼のダイイン(原爆ドーム前)
8:30 「8.6広島デモ」出発(原爆ドーム前~中国電力本社前)
9:15 脱原発座り込み行動(中国電力本社前)

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コロナ禍での障害者福祉作業所の現状

菱山南帆子(事務局)

誰もが予想していなかった「コロナウィルス」という目に見えないものによって私たちは命を守るために暮らしが大きく変わってしまった。
思い返せば、2011年の東日本大震災での福島第一原発の爆発。東京杉並区にある私が勤める施設は近所の中学校の畑を間借りして栽培していたミントから放射能が検出され、その畑は二度と使えなくなってしまったことがあった。自家製のミントティーを販売していた我が施設の収入は減った。

しかし、今回はわけが違う。集団生活・人を絶対に必要とする福祉にとってこのコロナ対策の大前提である「集まらない」ということを実践するのは困難だった。集まらないだけではなく、マスクの着用・換気・清潔。どれも障害者福祉施設で取り入れるには、支援と書類作成で毎日追われている職員にとっては大変で、利用者されている仲間にとっても苦痛そのものである。

まず、「コロナウィルス」がどう自分たちに悪影響を及ぼすのか説明し、マスク着用の重要性を理解してもらわなければならない。なぜマスクをしなくてはならないのか理解できなければ、食事以外にマスクを外すことを厳しく禁じられることは拷問でしかない。私たち職員は(内心、マスクなんてもうどうでもいいと思いながらも)もう何か月も毎日毎日マスク着用を叫んでいる。

今や出回るようになったマスクだが、3月、4月はマスク不足も深刻だった。そんな時には市民運動の仲間がマスクを施設に何箱も寄付をしてくれて涙が出るほど嬉しかった。非常時こその市民運動仲間同士の助け合いに心が熱くなった。添えられた現場職員への励ましのメッセージを読んだ同僚たちは徐々に政治に関心を持ち始めていった。だからこそ、宣言が解除された後にポストに舞い込んでいたアベノマスクに(30人近くいるのに2枚!)同僚たちは激怒した。

また、換気をすることだって障害者施設は一苦労。ただでさえ、家の近くに施設があるというだけで白い目で見られ、嫌がられ、「うるさい」「こっちを見ていた」などと通報されることはよくあることだ。近所の苦情対策だけではなく飛び降りてしまう方もいるのでそんな点からも窓はなかなか開けられない。

そんな経験したことのないウィルス対策の中での職場に不安を募らせている中、更に不安が襲い掛かってきた。安倍政権になってから福祉へのお金が削られ続けているのは有名だが、制度も次々と福祉に金を使わない方向で変えられてしまった。そのためにこういった非常時に私たちは大変な思いをすることになった。

コロナ禍により心疾患や重複した持病を持っている方たちが施設に通所することを相次いで自粛された。施設に通所する1日あたりの利用者さんの数で給付金が出るシステムになっているので一人でも少なければそれだけ施設に入るお金は少なくなる(利用者さんを車で迎えに行ってまで施設に来てもらうところもあるくらい)。つまり自粛された方たちの人数×給付金の分だけ施設に入ってこなくなる。外でパンや小物を販売することもできなくなり、収入は激減。それに伴い職員への給料が4割カットされるかもしれない事態になってしまった。

これまで沈黙していた職場の仲間たちの不満はとうとう爆発(低賃金なのに重労働・コロナ禍で保育園が休園になり預けられない日は仕事を休まざるをえない同僚は有給対応など)。分断された横のつながりは再生し、立ち上がり始めた。休日にも私のところへは給料の不安や制度の質問、安倍政治への怒りのLINEが届きまくった。団交という言葉も出てきた。奪われ続けた権利意識と労働者意識が確実に取り戻され始めた!

今現時点で「緊急事態宣言」も「東京アラート」も解除され、自粛していた利用者さんも全員通所できるようになったが、元の生活に戻ることはできない。

様々な事情で家族と住めない方たちが暮らすグループホームで発熱者が出るたびに、そこに住む利用者は近くのビジネスホテルに滞在を余儀なくされたり、障がい者差別に加え、コロナ差別で「マスクをしていない」「大きな声をバス内で出していた」「店の商品を触っていた」など些細なことで通報されたり、小突かれたり(!)と二重の差別を施設に通う仲間たちは味わっている。

また、コロナにかかってしまい軽症の方や、家族がコロナになってしまった方のケアは医療関係者ではなく、各福祉施設の職員が持ち回りで行うことになっている。私もいつ自分の番がやってくるのかわからない。自らもコロナ感染のリスクが非常に高い職場で私たちは今日も働いている。政府は施設に補償と、やむを得ず自粛で休まれていた利用者さんへの工賃保障を今すぐに行うべきだ。また、無症状で心疾患を持たれている利用者さんにうつさないためにも、施設に携わる全職員と利用者へのPCR検査を実施してほしいと私たちは何度も訴えている。

政府は早々に国会を逃げるように閉じてしまい、現場は完全に置き去り状態だ。安倍政権は逃げずに自身の不正に向き合い、退陣すべきだ。「自民党最悪だ!」福祉現場からはそんな怒りの声が上がっている。それは福祉現場に限らず様々な職種の方たちも同じだ。現に不支持率がそれを表している。
コロナ対策としてまずは安倍政権を打倒しよう。

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《雑感》 #検察庁法改正案に抗議します

Qsan(かみね)(事務局)     

6月17日第201回通常国会が終わりました。
野党は新型コロナウイルス感染症の第2波に備えるため、会期を年末まで延長すべきだとして事実上の通年国会を求めましたが、森友・加計・桜を見る会や河井問題などの追及を恐れた安倍政権は逃げるように国会を閉会しました。

今国会ほどツイッターが大きな話題となった国会はなかったと思います。
コロナ問題で緊急事態宣言が出され自宅生活を余儀なくされていた時に、星野源さんが「うちで踊ろう」と音源と映像を投稿し多くのユーザー・芸能人がコラボ動画を配信して盛り上がっているときに、広々とした自宅リビングのソファーでコーヒーカップ片手に愛犬を抱いてまったりとしている安倍首相の動画が投稿されると、それに対して「緊急事態宣言が出されているときに最高責任者が自宅でくつろいでいるとは・・・」と批判の投稿が集中しました。

また黒川東京高検検事長の定年を延長するという閣議決定を皮切りに「検察庁法改正案」が大きな話題となっていた5月初めに、一人の市民がツイッターに投稿した「#検察庁法改正案に反対します」というハッシュタグが瞬く間に拡散され、短期間でツイート数が500万を越えついには1000万を越えるまでになるという大きなうねりが作り出されました。

東京新聞は「ツイッターデモ 政治・社会動かす?」と報じ、一般市民のみならずこれまで政治的な発言をためらっていた芸能人なども積極的に発言する状況が生み出され、安倍政権は今国会閉会に合わせてついに「検察庁法改正案」の廃案を決めました。

まさに「ツイッターデモ」があの安倍政権を追い込むという前代未聞の現象を生み出したのです。

さてここからは私個人の想像・妄想・思い付きです。
それは1000万の「#検察庁法改正案に反対します」が安倍晋三にとってどれほどの重みのあるものだったのかということです。
1000万という「数字」は確かに大きな数字ですが、「ツイッターなどは少数が繰り返し投稿すれば数は増えていくものだ」と考えればさほどのものには感じないでしょう。事実「実際の投稿者数は10分の1程度」だという分析もされています(鳥海東大准教授)

しかし、これまで何が何でも強行採決で法案を通してきた安倍政権が「検察庁法改正案」を廃案にせざるを得なかったということは、安倍政権(とりもなおさず安倍晋三本人)にとって1000万という「数字」が単なる数字ではなくかなり重みのあるものだったということを示しているのではないでしょうか。

「数字」を実態を伴う重みに変えたものは何なのか?
それはこれまで安倍政権の政治に反対して行われてきた市民レベルでの抗議行動の積み重ねだろうと私は思います。
毎日毎日どこかの駅頭で少人数でプラカードを掲げて行われている行動や時にはたった一人でも立ち続ける「ぼっちスタンディング」。
これらの行動は一人ひとりの顔が見える(もちろんプライバシー保護のために投稿画像では顔は隠されていますが)実態のある行動です。

さらに首相官邸前や国会正門前・議員会館前で続けられている「19日行動」など「総がかり行動実」主催の行動。そして何よりも大きいのは毎年5月3日に行われている「5.3憲法集会」でしょう。]

2015年の横浜臨港パークに3万人以上の市民が集まって始まった「5.3憲法集会」は、2016年の「有明防災公園」には5万人以上、昨年は6万5千人を超える市民が集まりました。

今年は残念ながらコロナの影響で国会正門前からの動画配信で行われましたが、それでも正門前には600人の市民が集まりました。

安倍晋三の祖父岸信介を退陣に追い込んだのは、1960年の安保闘争で国会に集まった33万人の民衆でした。
1000万の「数字」を目にしたとき安倍晋三の脳裏に2015年8月30日国会周辺に12万人が集まり、広い国会正門前(並木通り)を埋め尽くした市民の姿が浮かんだのではないでしょうか。

1000万の1%で10万人、1割集まれば100万人になります。そう思った時単なる「数字」が実態を伴った市民の姿をして安倍の野望を打ち砕いたのでしょう。

安倍政権はいよいよレイムダックに入ったといわれています。これで安倍政権も終わりだと思いたいですが、いやいやこれまでも何度も何度もしぶとく生き続けてきたのが安倍政権です。油断はできません。

でももうこれ以上生き返らせるわけにはいきません。そのためにはこちらも何度でも繰り返して、毎日どこかの駅頭で、どこかの街中で一人でも数人でも立ち続け「私たちはここにいる」という姿を安倍に見せつけてやりましょう。
安倍政権を打倒し憲法が活かされる政治が実現するまで、まだまだ諦めるわけにはいきません。

感染者や休業中・失業中の人々に寄り添った補正予算を

新型コロナウィルスの猛威は五大陸すべてに拡がっており、6月20日付のロイター通信によれば、世界中の罹患者は860万人、死者は45万人を超えている。

当初、政府は事態を深刻に受け止めないばかりか、五輪が中止に追い込まれるのを避けたいという思惑等もあってか、初動体制は大きく立ち遅れた。

初動体制の遅れに対する批判をかわし指導力を誇示しようとしてか、イベントの「自粛」や学校の一斉休校等が唐突に発表されたり、緊急事態宣言が発令されたりした。しかし、マスクの全戸配布や給付金を巡る混乱も含め、政府の対応は一貫性を欠いたまま迷走を続けている感は否めない。しかも、休業補償もないまま営業の「自粛」を求め、「自粛警察」とも呼ばれる社会現象すら引き起こしている等の問題は、既に本誌でも指摘されてきたところである。

こうした人類未曽有の災禍というべき事態に対応するには、医療・公衆衛生、くらしと経済、雇用などの各分野にわたる迅速で効果的な政策と、それを財政面から裏打ちする大型の補正予算が必要不可欠である。政府も2回にわたって総額58兆円規模の補正予算を組んだ。しかし、その内容は、とても生活者の立場にたったものとは言い難い。

まず、58兆円という規模は、当初予算総額102兆円の約6割、公債費と地方交付税を除いた一般歳出60兆円にほぼ匹敵する。それだけの規模でありながら、これで十分かと問われると、個人への所得補償も事業主への休業補償も全く不十分である。その一方で、「官民を挙げた経済活動の回復(1次補正・2兆円)」とか「経済構造の強靭化(1次補正・1兆円)」など、緊急性に首を傾げざるを得ないものも含まれている。

 また2次補正に10兆円もの予備費を計上したことも、財政民主主義を逸脱している。もちろん、予算はあくまでも「予定」や「見込み」であって、編成時には想定しえなかった事態が発生することは排除できない。そのため、予め使途未定のまま一定の金額を確保しておくことも必要ではあるものの、原則は主権者の代表である議会の議決を受けることが主権在民・財政民主主義の要請である。このため、財政の実務者の間では予備費は「長(総理や知事)限りの補正予算」と呼ばれ、乱用を戒めている。そして、予備費の使用にあたっては憲法第87条や財政法第36条により議会への事後報告が義務付けられている。ちなみに、地方予算の場合は地方自治法第217条により議会が否決した費目への使用は明示的に禁止されている。

そう考えると、今後10兆円規模での財政出動が求められる事態が生じたならば、速やかに臨時国会を開いて第3次補正予算を審議に供するべきであり、それを省略して予備費で済ませるのは「白紙委任状」との誹りは免れない。6月5日付の東京新聞の社説が「財政民主主義を脅かす」と批判したのも当然である。
また、持続化給付金等を巡る不透明・不自然な資金の流れも看過できない問題だ。

もう一つの問題は、今回の大型補正の財源がほぼ赤字公債によって賄われているということである(1次補正・23兆円、2次補正・23兆円)。これにより、当初予算で25兆円だった赤字公債は71兆円に膨らんだ。ちなみに、2019年度の赤字公債は当初予算が26兆円、補正後で28兆円である。いくら緊急の想定外の財政出動とはいえ、予算編成の手法としては余りにも安直過ぎる。

韓国ではコロナ対策支援金を捻出するために兵器購入費を削減しているが、日本では自衛艦の空母への改造費やオスプレイの配備費、辺野古新基地建設費は全く手つかずのままだ。仮に「専守防衛」の範囲で安保・自衛隊を容認する立場に立ったとしても、海外での軍事行動を想定した空母やオスプレイは無用の長物であるし、軟弱地盤にいくら杭を打っても際限のない辺野古新基地建設費は財政効率上からも容認できない。唯一、断念に追い込まれた陸上イージスにしても、国会閉会にあたっての6月18日の総理会見では、それに替わる抑止力は必要だとして敵基地攻撃能力論に言及すらしていることも指摘しておかなければならない。

改憲派からはコロナ対策に便乗した緊急事態条項導入論も叫ばれているが、緊急事態宣言と緊急事態条項は字面こそ似ていても全く別物であるし、緊急事態条項を持つドイツ等における今回の外出禁止等の措置の根拠法令は、憲法上の緊急事態条項ではなく、日本でいえば感染症予防法にあたる法令である。

最近では、改憲派の主張は緊急事態条項や自衛隊追記論等に絞られた感もあるが、かつては憲法に財政規律条項がないから赤字公債の発行残高がGDP2年分にのぼっていると主張していた。しかし、赤字公債は財政法第4条によって明文で禁止されており、単年度あるいは数年間の特例法で「例外的に」認められているに過ぎない。今回のほぼ全額を赤字公債に依存した補正予算との整合性を彼らはどう説明するのだろうか。

立憲野党は、パート・アルバイト・派遣を含む全ての労働者に対する減収の補填、失業手当の割り増しや支給期間の延長、生活保護の手続の迅速な対応等を内容とする「新型コロナウイルス休業者・離職者支援法案」を共同提出した。法案は6月9日の衆院厚生労働委員会で趣旨説明をしたのみで審議未了・廃案となったが、今後、経済の縮小による影響がリーマン・ショックを超えると懸念される中、生活者に寄り添った支援の取り組みは喫緊の課題である。

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介護保険制度のスタートから20年を振り返って(パート2)~社会保障としての「海保保険制度」を問う

中尾こずえ(事務局)

翻弄され続けた20年。そして、8年に渡る安倍政権下で何が起こっているのか?

「いま、安倍内閣は全世代型社会保障と共生型サービスを進めています。2016年には【我が事・丸ごと】の地域共生社会を打ち出し、ニッポン一億総活躍プランも実施しています。これは高齢者福祉も、児童福祉も、障害者福祉もすべて社会保険でやろうというアイデアです。働く人の保険料で児童福祉・障害者(身体・知的・精神障害者)福祉も高齢者福祉もまかなう社会保険に変える。ですが社会保険になると、保険料を払っていな人は利用できません。また、サービスが必要な人は利用すればするだけ負担が増えます。これをゆるしてはいけない。国が何をしようとしているのか、しっかり見ていかなくてはなりません。」(はっとり まりこ・服部メヂカル研究所所長)岩波ブックレット「介護保険が危ない!」上野千鶴子・樋口恵子(編集)
最終報告は今春4月の予定だったが、コロナ渦拡大に伴い「全世代型社会保障検討会議」(議長・安倍晋三首相)は年末に先送りにした。

介護保険法117条11項では「市町村は、市町村介護保険事業計画を定め、または変更しようとするときは、あらかじめ、被保険者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする」と記され、更には「公募その他の適切な方法による被保険者を代表する地域住民の参加に配慮する」と記されている。私は、地方自治が息づくような明るい兆しを感じたのだったのだが……。

保険料は年齢にかかわらず困窮度に応じて困っている人には給付を、余裕のある人には負担を求めるという社会保障制度を望む。憲法25条の実現に近づく事を願う。

介護保険法の改定の推移

2005年 第1回改定――軽度者切り捨ての始り
要支援1・2と要介護1の介護サービスが予防サービスに移行。この改定で創設されたのが地域包括支援センターであり、小規模特定施設と小規模特別養護老人ホームの新設。訪問介護、デイサービス、ショートステイの3つを提供する小規模多機能型サービスが創られる。これは都道府県から市区町村への介護保険の責任移行の始まりとなる。また、老人病院の削減の方針も出され2012年までに介護保険の療養型病床は廃止される事になった。

2006年4月 第2回報酬制度の改定――軽度者切り捨ての第2弾
要介護3・4・5のケアプランの単価を上げ、ケアプラン1・2と分離した。さらに要支援1・2と要介護1の福祉用具の利用に制限が導入された。

2008年 第2回・介護保険法改定
コムスン事件(No.228号にて記載)を受けて改定される。

  1. 法令順守、業務管理体制の担当者等の届出。
  2. 事業所などへの多地理検査、改善命令。
  3. 事業廃止などは一か月前までなどが主な内容。

2015年 14年の医療・介護の法律改定を受け、第5回介護報酬改定はマイナス2・27%となり実質市場最大のマイナスとなった。

  1. 利用者負担増(65歳以上に、所得により2割負担-介護保険給付を740億円削減。住民税非課税であっても預貯金による制限)
  2. サービス利用者の削減(要支援の訪問介護とデイサービスは市区町村の総合事業に移行・特養ホームの入所は要介護3以上へ。在宅困難者で要介護2以下の人の行き場はどうなる?)
  3. 保険者機能の市区町村移行
  4. 地域包括支援センターの機能強化、集合住宅減産

など抜本的な改悪が行われた。

2016年には「ニッポン1億総活躍プラン」が閣議決定された。

2017年 第5回目の改定
1、3割負担の導入(15年に2割負担が導入されたばかりなのに所得に応じて3割が18年8月から実施)
要介護認定率や地域支援事業で出来高交付金を出すなど競争強化が進んだ。極め付きは市区町村の成果に合わせて現金を出すというものだ。市区町村競争システムの導入である。

2018年 介護保険法改定に合わせて6回目の介護報酬改定が行われた。
在宅介護の3大サービスの柱ともいえる福祉用具、訪問介護、デイサービスの報酬が切り下げられた。

2019年 10月の消費税10%アップにより介護報酬7回目の改定では0・39%引き上げられ、介護職の処遇は僅かながら改善加算。利用者は負担増。

2019年には15年に続き、更なる「改悪」案が浮上
要介護度1・2のデイサービス利用と生活援助を市区町村の生活支援総合事業に移す案が出てきた。今のところ、たくさんの反対の声や署名など運動の成果もあり先送りになった。通ってしまえば自治体事情で介護格差はいよいよ深まるばかりだ。また、ケアプラン作成を自己負担にする案も出た。が、これも先送りとなった。だが、もし現政権が続けば今後必ず有料化する方針と思われる。

身体介助も生活援助も一緒! トータルケアが大切

2018年4月1日、厚労省老人保健福祉局老人福祉計画第10号(老計10号)が変更された。これは、訪問介護におけるサービス行為ごとの区分の変更。訪問介護士のどういう行為が生活援助で、どういうことが身体介護か、の指針となるものだ。身体ばかりが8項目新設された。一方、生活援助には増加なしだ。その理由は「重度化防止」だ。たとえば、「利用者と一緒に声かけや見守りしながら掃除・整理整頓を行う」。「一緒に」の文言には「自立支援」という意味が含まれている。これらは明らかに要介護1・2の生活援助はずしを意図したものといえる。サービス実施記録はケア項目に「自立計画支援」と並んで「重度予防のための見守り的援助」が増えた。「改定」の度に事務を担う職員は大変だ。

制度開設以来社会保障審議会の一部から「生活援助はずし」論が繰り返されていたようだ。「制度に甘えている」、「介護保険は社会保険であって社会福祉ではない」、「国の金で飯食っていいのか」等々の言葉が投げかけられていた。身体介護の方が平均して利用料は高い。(私の職場の時給は同一だが)

この何年もの間、介護の現場からは「生活援助を受ける事ができ、自分も親もホッ!としている。安心な暮らしができます。」と、遠距離から老親の介護に通う身内さんたちから届く言葉は共通している。

1時間のケア中、身体は身体だけ、生活は生活だけなどとキッチリ分ける事は不可能だ。例えば洗濯と調理で訪問しているとき「トイレに行きたい」と訴えられたら、移動介助しますよね。当然。「介護メニューに無いから出来ません」などはあり得ない。現場の状況によって様々な介護が発生するのは当然の事だ。みんな生身のからだなのだから。

コロナ渦のなかのでの介護現場

○一人暮らしだと1日中、誰とも話ができない。ベランダの外の風景は一変している。K子さんは軽い認知症の83歳。住まいは団地の7階。いつもだったら小学校の校庭から子どもたちの声が聞こえて和みになっていた。「聞こえなくて寂しい」と言う。私は、安否確認、体温・血圧・脈拍などのバイタルチェックと服薬介助などを行う。使用時間は僅か20分、この20分がとても大事。溜まっている話を一生懸命聞く。いつも10分オーバーだ。

○電動車いすで透析通院するOさんの迎え介助のある日、高熱(38、8度)を出していた。当然、看護師さんたちは防護服で対応していた。着替え介助は医療用手袋とマスクをもらって行う。帰途は介護タクシーの窓を全開にして帰宅。それから2時間ほど電話掛け。事業所、なかなか繋がらない保健所窓口、病院等々。支持を仰ぎ、繋げて終了。結果は経過観察となった。現在、お変わりなく暮らしている。

○施設暮らしのYさん(女性、83歳)は訪問の都度「怖い! 怖い!」と言う。4畳の個室で寝ながらテレビのコロナ渦ニュースを一日中見ていると「脅かし」のように感じるかも。「怖い」と思うに違いない。認知症なので一層かもしれない。Yさんはデイサービスに通っていたがコロナの影響で閉鎖になり、新しい所が見つかるまで暫く外出が出来なかった。その間は部屋中ゴミだらけになる。訪問時「何もしないで」と言うけれど掃除・洗濯・片付け・デイサービス通所の準備等々、終ると「ありがとうございました。」の言葉。「サッパリしたよ」という。

人は誰も生きてきたそれぞれの歴史を持っている。価値観も十人十色。介護は皆一律に出来る事は有り得ない。「生活の質」・「介護の質」の問題は人権問題、尊厳の問題につながる。私たちヘルパーがサポートしてきたのは誰もが人間らしく、自分らしく生きる事の獲得のためだ。

中期防衛力整備計画2019~23年度予算総額は(1機116億円するF35戦闘機100機分も含め)27兆円。介護と子ども・子育てなどを含む福祉関連予算が27.2兆円。人殺しと人の命を守ることに同額の税金が使われて良い訳が無い。まず、政権交代だ。

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資料 安倍内閣総理大臣記者会見

2020年6月18日 首相官邸ホームページ

本誌巻頭の文章で引用しております安倍首相の記者会見です。紙面の都合で冒頭発言の部分と、そのごの産経新聞の記者による憲法問題に関する部分のみ、資料として採録します(本誌編集部)。

【安倍総理冒頭発言】

 まず冒頭、本日、我が党所属であった現職国会議員が逮捕されたことについては、大変遺憾であります。かつて法務大臣に任命した者として、その責任を痛感しております。国民の皆様に深くお詫(わ)び申し上げます。

 この機に、国民の皆様の厳しいまなざしをしっかりと受け止め、我々国会議員は、改めて自ら襟を正さなければならないと考えております。
150日間にわたる通常国会は、昨日、閉会いたしました。国会が始まった直後、中国で新型コロナウイルスが爆発的に拡大し、武漢の町が閉鎖されました。現地で不安な時を過ごす日本人とその家族の皆さんに安全に帰国していただかなければならない。そのオペレーションから全ては始まりました。

1月末には中国湖北省からの外国人の入国を拒否する措置を決定しました。その後も、世界的な感染の広がりに応じ、入国拒否の対象を順次、111か国・地域まで拡大し、水際対策を強化してきました。2月にはダイヤモンド・プリンセス号への対応、3月にかけて大規模イベントの自粛、学校の一斉休校、こうした取組を進める中で、我が国は中国からの第一波の流行を抑え込むことができました。

しかし、欧米経由の第二波の流行が拡大し、医療現場が大変逼迫(ひっぱく)した中で、4月に緊急事態宣言を発出いたしました。国民の皆様の多大なる御協力を得て、先月25日、これを全面的に解除することができました。そして、今、感染予防と両立しながら社会経済活動を回復させていく。コロナの時代の新たな日常に向かって、一歩一歩、私たちは確実に前進しています。

この通常国会を振り返るとき、正にコロナ対応の150日間であったと思います。この間、与党のみならず、野党の皆様にも御協力いただき、緊急事態宣言を可能とする特別措置法を速やかに成立させていただきました。与野党協議の場も設置をし、定期的な意見交換も行いながら、2度にわたる補正予算も早期成立に御協力いただきました。事業規模230兆円、GDP(国内総生産)の4割に上る、世界最大の対策によって雇用と暮らし、そして、日本経済を守り抜いていく。御協力を頂いた与野党全ての皆様に心から改めて感謝申し上げます。

150日前、全く未知の部分ばかりであったこのウイルスについても、少しずつその特徴が見えてきました。感染性が高いのは、熱や咳(せき)などの症状が出る1日から2日前。その時点では無症状であっても他の人にうつすリスクが高いということが分かってきました。この知見を踏まえ、医師が必要と判断した方に加え、5月末から濃厚接触者についても、症状がなくとも、全員をPCR検査の対象としました。

緊急事態宣言の解除後、北九州で一時、感染者が増加した際には、この新たな方針の下、濃厚接触者全員を対象に徹底的な検査を実施し、現在、新規の感染者は大きく減少しています。東京では、これまで集団感染が確認された夜の街で検査を強化しています。そのため、陽性確認者が増加していますが、こうした検査強化は、二次感染を防止する上で有効であると考えています。

リスクの高い人だけを特定し、積極的に検査を行い、陽性者を速やかに発見する、いわゆるクラスター対策は、社会経済活動と両立する形で感染の拡大を防止する、極めて有効、効果的な手段であると考えます。

経済活動の回復に向けて取り組んでいる世界の中で、今、我が国のクラスター対策に注目が集まっています。密閉、密集、密接、3つの密を避けることによって、日々の仕事や暮らしを続けながら感染を予防できる。これも、クラスター対策を進める中で得られた知見であり、3つのCとして、今、世界中で認識されるに至っています。

そして、明日からは接触確認アプリを導入し、このクラスター対策をもう一段強化していきます。陽性者と濃厚接触した可能性がある場合、このアプリを用いることによって、皆さんのスマートフォンに自動的に通知が送られます。そして、速やかな検査につながるシステムとなっています。個人情報は全く取得しない、安心して使えるアプリですので、どうか多くの皆さんにこのアプリをダウンロードしていただきたいと思います。

さきの会見でも申し上げたとおり、オックスフォード大学の研究によれば、人口の6割近くにアプリが普及し、濃厚接触者を早期の隔離につなげることができれば、ロックダウンを避けることが可能となります。繰り返し申し上げてきましたが、私たちはしっかりと発想を変えなければなりません。社会経済活動を犠牲とするこれまでのやり方は長続きしません。できる限り制限的でない手法で、感染リスクをコントロールしながら、しっかりと経済を回していく。私たちの仕事や暮らしを守ることに、もっと軸足を置いた取組が必要です。

だからこそ、我が国が誇るクラスター対策にこれからも磨きをかけていく。様々な専門家の皆さんの協力を得て、最新の知見、最新の技術を常に取り入れながら、絶えず進化させていく考えです。

そして、その大前提となるのは、十二分な検査能力です。既に唾液によるPCR検査も始まっています。抗原検査の更なる活用も進め、国内の検査体制を一層強化していきます。

そうした取組の上に、明日、社会経済活動のレベルをもう一段、引き上げます。明日からは、都道府県をまたぐ移動も全て自由となります。各地への観光旅行にも、人との間隔をとることに留意しながら、出掛けていただきたいと考えています。プロ野球も、明日、開幕します。Jリーグも、リモートマッチに向けた準備が進んでいます。コンサートなどのイベントも、1,000人規模で開催していただくことが可能となります。ガイドラインを参考に、感染予防策を講じながら、社会経済活動を本格化していただきたいと考えています。正に、新たな日常をつくり上げていく。

海外との人の流れも、もちろん細心の注意を払いながらではありますが、少しずつ取り戻していく必要があります。グローバル化がこれほどまでに深化した世界にあって、現在の鎖国状態を続けることは、経済社会に甚大な影響をもたらします。とりわけ、島国の貿易立国、日本にとっては、致命的であります。感染状況が落ち着いている国を対象として、ビジネス上の必要な往来から段階的に再開していく。そのための協議を開始する方針を、先ほど対策本部で決定いたしました。

その前提は、出国前に検査による陰性確認を求めることであり、加えて、入国時にもPCR検査を実施する。十分な検査によって安心を確保した上で、行動制限を緩和し、ビジネス活動を認める考え方です。各国においても人の往来の回復に向けた動きが出てくる中で、日本として積極的に各国と議論をリードしていく考えです。そのためにも、とにかく検査能力の拡充が必要です。経済界とも協力しながら、海外渡航者のための新たなPCRセンターの設置なども検討していきます。

今回の感染症によって失われた日常を、段階的に、そして、確実に取り戻していく考えであります。しかし、それは単なる復旧で終わってはならない。私たちは、今回の感染症を乗り越えた後の新しい日本の姿、新しい、正にポストコロナの未来についてもしっかりと描いていかなければなりません。

この感染症の克服に向け、現在、治療薬やワクチンの開発を加速していますが、別の未知のウイルスが、明日、発生するかもしれない。次なるパンデミックの脅威は、空想ではなく、現実の課題です。私たちは、すぐにでも感染症に強い国づくりに着手しなければなりません。

今般、テレワークが一気に普及しました。様々な打合せも、今や対面ではなくウェブ会議が基本となっています。物理的な距離はもはや制約にならず、どこにオフィスがあっても、どこに住んでいてもいい。こうした新たな潮流を決して逆戻りさせることなく、加速していく必要があります。

同時に、3つの密を避けることが強く求められる中において、地方における暮らしの豊かさに改めて注目が集まっています。足元で、20代の若者の地方への転職希望者が大幅に増加しているという調査もあります。集中から分散へ、日本列島の姿、国土の在り方を、今回の感染症は、根本から変えていく、その大きなきっかけであると考えています。

コロナの時代、その先の未来を見据えながら、新たな社会像、国家像を大胆に構想していく未来投資会議を拡大し、幅広いメンバーの皆さんに御参加いただいて、来月から議論を開始します。

新たな目標をつくり上げるに当たって、様々な障害を一つ一つ取り除いていく考えです。そして、ポストコロナの新しい日本の建設に着手すべきは今、今やるしかないと考えています。

パンデミックの脅威は、かねてから指摘されてきたことです。しかし、我が国の備えは十分であったとは言えません。テレワークなどの重要性も長年指摘されながら、全く進んでこなかった。そのことは事実であります。治に居て乱を忘れず。今回の感染症の危機によって示された、最大の教訓ではないでしょうか。

自民党は憲法改正に向けて、緊急事態条項を含む4つの項目について、既に改正条文のたたき台をお示ししています。緊急事態への備えとして、我が党の案に様々な御意見があることも承知しています。各党、各会派の皆さんの御意見を伺いながら進化させていきたい。建設的な議論や協議を自民党は歓迎します。

しかし、国会の憲法審査会における条文案をめぐる議論は、残念ながら今国会においても全く進みませんでした。今、目の前にある課題を決して先送りすることなく解決していく。これは私たち政治家の責任です。

今週、イージス・アショアについて、配備のプロセスを停止する決定をいたしました。地元の皆様に御説明していた前提が違っていた以上、このまま進めるわけにはいかない。そう判断いたしました。

他方、我が国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増している。その現状には全く変わりはありません。朝鮮半島では今、緊迫の度が高まっています。弾道ミサイルの脅威から国民の命と平和な暮らしを守り抜いていく。これは政府の最も重い責任であります。我が国の防衛に空白を生むことはあってはなりません。平和は人から与えられるものではなく、我々自身の手で勝ち取るものであります。安全保障政策の根幹は、我が国自身の努力にほかなりません。抑止力、対処力を強化するために何をすべきか。日本を守り抜いていくために、我々は何をなすべきか。安全保障戦略のありようについて、この夏、国家安全保障会議で徹底的に議論し、新しい方向性をしっかりと打ち出し、速やかに実行に移していきたい。そう考えています。
私からは以上であります。

【質疑応答】

(内閣広報官)
それでは、これから皆様からの御質問を頂きます。最初は幹事社から2社、頂きますので、指名を受けられた方、近くのスタンドマイクにお進みいただきまして、所属とお名前を明らかにされた上で、質問をお願いいたします。
それでは、どちらの幹事社の方が。はい、どうぞ。

(記者)
フジテレビの鹿嶋(かしま)です。よろしくお願いします。
まず総理、冒頭、言及がありました河井夫妻が逮捕されたことについて、責任を痛感していると述べられましたが、総理、総裁として具体的にどういった責任を痛感されているのかということと自民党から振り込まれた1億5,000万円の一部が買収資金に使われたことはないということでいいのか、お伺いします。
そして、東京五輪についてですが、IOC(国際オリンピック委員会)などが開催方式の簡素化を検討している中で、総理が述べてきた完全な形での実施ということに関して、考え方は変わりはないでしょうか。併せて、総理は治療薬やワクチンの開発も重要だということをおっしゃっていますけれども、これは五輪開催の前提になるのでしょうか。
最後に、与野党の中に首相がこの秋に内閣改造をした上で衆議院の解散に踏み切るのではないかという観測が一部ありますけれども、現下のコロナ感染状況に照らして、総選挙の実施は可能と考えますでしょうか。お願いします。

(安倍総理)
幾つか御質問を頂きましたが、まず最初の質問についてでありますが、冒頭、申し上げたように、我が党所属であった現職の国会議員が逮捕されたことは、大変遺憾であります。正に、国民の皆様の厳しいまなざしをしっかりと受け止め、我々全ての国会議員が改めて自ら襟を正さなければならないと考えておりますし、選挙は民主主義の基本でありますから、そこに疑いの目が注がれることはあってはならないと考えております。自民党総裁として、自民党においてより一層、襟を正し、そして、国民に対する説明責任も果たしていかなければならないと、こう考えています。

それ以上につきましては、個別の事件に関すること、捜査中の個別の事件に関することでありまして、詳細なコメントは控えたいと思いますが、自民党の政治資金につきましては、昨日、二階幹事長より、党本部では公認会計士が厳格な基準に照らして、事後的に各支部の支出をチェックしているところであり、巷間(こうかん)言われているような使途に使うことができないことは当然でありますという説明を行われたというふうに承知をしております。

そして、東京オリンピック・パラリンピックについてでありますが、東京大会については、先日、IOC理事会において、安全・安心な環境を提供することを最優先に、延期に伴う費用と負担を最小化し、競技と選手に重点を置きつつ、効率化、合理化を進め、簡素な大会を目指すとの方針が示されたと承知をしております。正に、オリンピックの、ある意味では原点に戻った大会にしていこうということだと私は思って、理解しています。

開催に伴い、その意味において、費用を最小化し、効率化、合理化を進めていくということは、どのような場合にあっても当然のことであろうと、こう思いますが、これは本年3月、私とバッハ会長との間で、世界のアスリートの皆さんが最高のコンディションでプレーでき、観客の皆さんにとっても安全で安心な大会とする。すなわち完全な形で実施するために1年程度、延期するという意に沿ったものであり、現在もその方針には変わりはございません。
そして、感染症の世界的な制圧に向けて、治療薬や、あるいはワクチンが果たす役割は大変大きいと理解しています。東京大会を円滑に実施するためにも、我が国、また、世界の英知を結集してその開発に取り組んでいきたいと思っています。

そして、選挙についてでありますが、一般論として申し上げますと、正に国民の、また住民の代表を決める民主主義の根幹を成すものが選挙でありますが、決められたルールの下で次の代表を選ぶというのが民主主義の大原則であります。正に本日から、例えば東京都知事選挙がスタートしますが、正にこの新たな日常の下での選挙ということになります。今回の感染症の下でも、各地の地方選挙や衆議院の補欠選挙などが感染防止策を徹底しながら実施をされました。

もちろん、選挙をどうするかということについては、昨日、通常国会が終わったばかりでもあり、今現在、新型コロナウイルス感染症対策に全力を尽くしている中にあって、頭の片隅にもありませんが、様々な課題に真正面から取り組んでいく中で、国民の信を問うべき時が来れば躊躇(ちゅうちょ)なく解散する、解散を断行する考えに変わりはありません。
また、人事についても、これはまだ先の話なのだろうと。今のスタッフで、メンバーで、まずは目の前にある感染症拡大、経済の回復、暮らしを守り抜いていく。全力を尽くしていきたいと考えています。

(内閣広報官)
それでは、幹事社、もう1社。

(記者)
産経新聞の小川です。
憲法改正について伺います。今国会でも、国民投票法改正案は成立が見送られ、6国会連続で継続審議となりました。総理は3年前の5月、2020年の新憲法施行を目指すと表明して以降、例えば今年1月の施政方針演説でも、改憲議論を前進させることは国会議員の責任だとして、国会での憲法審査会での議論を呼び掛けたほか、新型コロナウイルスの感染拡大後も改憲への意欲を示してこられましたが、今、総理も冒頭で言及がありましたように、実際には、改憲議論は一向に進んでいない状況です。

更に言えば、第2次安倍政権が発足してから7年半ぐらいたっておりますが、改憲議論についてはほとんど前進していないのが現状です。率直に、この今の現状について、総理はどのように受け止めていますでしょうか。

また、今年中の新憲法施行は非常に厳しい情勢でありますけれども、来年9月末までの自民党総裁としての任期中に改憲を目指す考え、これは変わりがないでしょうか。
また、今後の改憲議論を進めるために、これまでとは違うアプローチを取られる考えはありますでしょうか。憲法改正への道筋をつけるために、党総裁任期を延長する、または連続4選を目指す可能性があるかどうか、改めて教えてください。

(安倍総理)
この通常国会、150日間あったのですが、憲法審査会で実質的な議論が行われたのは、衆議院で1回のみでありました。大変残念なことであります。もちろん、この新型コロナウイルス感染症が拡大する中にありますから、政府としては、この感染症対策を最優先する、当然のことであります。国会においても、この感染症対策について、どういう対策を採るべきか、あるいは政府がどういう対策を採っているかということについて議論をしていく。その議論を最優先するのは当然のことでありますが、しかし、国会では様々な委員会があります。そのことも議論しながら、憲法審査会のメンバーは、当然議論はできるのだろうと私は思います。それは、我々が、行政府が答弁する委員会ではなくて、国会議員同士が議論をする、正に国会議員の力量が示されている場ではないのでしょうか。お互いに知見をぶつけ合う。憲法についてどう考えているのか。反対なのか、賛成なのか。どういう考えを持っているのか。それを正に国民の皆さんは、私は見たいのだろうと、聞きたいのだろうと思います。

各種の世論調査でも、議論を行うべきとの声が多数を占めている中にあって、国会議員として、やはりその責任を果たさなければいけない。そのことを多くの皆さんに改めて認識をしていただきたいと思います。

また、維新の皆さんは既に彼らの考え方を示していますが、それ以外の野党の皆さんからも、議論を行うべきという声も出てきているわけでありまして、国民的なこの機運が高まる中で、応えていこうという、そうした雰囲気もだんだん醸成されつつあると思っています。

この7年間の間に、我が党においては、党として方針を決めました4項目について、これは党として、この案を正に党の案として、項目として、お示しをしていこうということが決まった。これは、私は大きな一歩、具体的な大きな一歩だったと思います。

ただ、国会の場でそれが進んでいない。でも、これは国会みんなの、私は、責任なのだろうと、こう思います。

その意味において、反対なら反対という議論をすればいいではないですか。なぜ、議論すらしないのかと思うのは、私は当然のことではないのかなと思います。

私も自民党の総裁として、総裁任期の間に憲法改正を成し遂げていきたい。その決意と思いに、いまだ変わりはありません。自民党のルールに従って、任期を務め上げていく、これは当然のことであろうと思います。これを変えようということは全く考えておりません。この任期内にやり遂げなければならないと思っています。
(以下略)

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