ブッシュ米大統領は1月28日の一般教書演説で、「イラク武装解除」のための武力攻撃を激しく主張しましたが、フランス、ロシア、中国といった国連安保理常任理事国やドイツ、中東諸国などは、これに対して批判を強め、同調するのはイギリスを含めてわずかの国にしかすぎません。
アメリカの横暴に反対する市民も全世界で行動を起こし、1月18日には32ヵ国以上で100万人以上の人々が「イラク攻撃反対」の声をあげました。日本においても日比谷公園で開催された「WORLD PEACE NOW 1.18」には、約7000名が参加し、日本全国でも約30都市でこの統一行動に参加するアクションが繰り広げられました。この動きは同日のTVや翌日の国内各紙のみならず、全世界で報道されました。
こうした声が全世界に広がりつつあるにもかかわらず、アメリカのイラク総攻撃は日を追って現実のものとなろうとしています。こうした状況をなんとかくい止めようと、ロンドンの「STOP戦争連合」が2・15国際共同行動を呼びかけました。東京でもこの呼びかけに応え行動を起こします。《世界の人々とともに、2・15ピースアクションin東京》です。また喜納昌吉さんたちはこの日、イラクでコンサートを行います。全国の皆さんも一緒に連携して取り組みましょう。
このあと、3月8日も国際共同行動が呼びかけられています。これも準備中です。
■2003年2月15日(土)
■場所:渋谷・宮下公園 6:30~集会 7:15~渋谷一周ピースパレード+パフォーマンス
●呼びかけ団体:戦争反対、有事法案を廃案に! 市民緊急行動/アジアン・スパーク/許すな!憲法改悪・市民連絡会/平和をつくり出す宗教者ネット/憲法を生かす会/アジア太平洋平和フォーラム(APPF)/ピースボート/日本消費者連盟/グローバルピースキャンペーン/グリーンピース・ジャパン/フォーラム平和・人権・環境(1月31日現在)
●協力:WORLD PEACE NOW実行委員会
●問い合わせ先(仮):許すな!憲法改悪・市民連絡会 TEL 03(3221)4668 FAX03(3221)2558
昨年11月1日に提出された衆院憲法調査会の中間報告書は、委員採決によって「賛成多数」となり作成されたものです。本来「広範かつ総合的に調査する」の旨に反する運営方法ですが、地方公聴会の開催や小委員会の設置などでも採決がとられ、「全会一致の慣例」は崩されてきました。さらに、中間報告の公表を決めたのは2002年7月25日の幹事会でしたが、その折り中山会長は「最終報告をまとめる時点で意見が分かれるかもしれないが、その時は多数決で採決せざるをえないだろう」と最終報告を「改憲草案」報告書とする意向を示し、「憲法調査会の次に、憲法改正のための特別委員会を設置しなければならなくなるだろう」としています。その足場づくりとして中間報告提出を強行したようです。
最終報告書を取りまとめる時期について、調査会内には(1)2004年末(2)丸5年が経過する2005年1月18日(3)2005年の憲法記念日(5月3日)―の意見があるが、まだ議論はされていない。(共同2002.09.23)
採決が行われるのは、今回の調査会が「護憲もいる改憲調査会」たるゆえんです。内閣憲法調査会(岸内閣・1957年発足)の時は、当時の社会党も参加を拒否しため、当初から「片肺飛行」のままの報告書でした。同じ「両論併記」でも今回は全くその意味合いは違います。当時とは力関係が違うということもありますが、「護憲」の中身も変わりました。「非武装平和」を党是とする政党が国会内に皆無となったことも、「並べるだけでも賛成と反対とどちらが多いかは一目瞭然」「報告の項目を整理し、条文にすると憲法草案が出来てしまう」(関係者)(共同2002.07.28)という「すぐれもの」の提出を許したともいえましょう。
中間報告提出後の憲法調査会は、「改憲の論議が攻撃的になって」(週刊金曜日442号・高田健)おり、中間報告が国会内での改憲ムードを盛り上げたのは確かです。憲法尊重擁護義務に反する発言もポンポン飛び出しています。
衆院憲法調査会の中山太郎会長は、すでに座長としての中立たる立場を捨て、「改憲は世界の常識」とまで豪語するに至り、参院憲法調査会の三代目会長の野沢太三さんも、改憲(自主憲法)をめざす「民間憲法臨調」フォーラムに参加し、祝辞まで述べています。
「民間憲法臨調」(三浦朱門代表世話人)フォーラムには、野沢太三(参議院憲法調査会長)、葉梨信行(自民党憲法調査会長)両議員が来賓祝辞。8日に緊急提言を衆参両院の憲法調査会に提出(http://www5e.biglobe.ne.jp/~kenporin/katudou/seimei03.htm)。「『二十一世紀の日本と憲法』有識者懇談会」(民間憲法臨調)は、「自主憲法」制定に向けた取組みとして、神道政治連盟や日本会議など[友好団体」によって神社本庁に2001年1月に設置された「憲法問題対策室」の事業の一環として2001年11月に発足。フォーラムは「憲法見直しの先導役としての存在がりっぱに定着したといえよう。」と総括。「国会での具体的な改憲論議を後押ししていく方針」(読売2002.11.04)
そして12月12日に、衆院憲法調査会の各会派代表による幹事懇談会が国会内で開かれました。
公明党の赤松正雄氏が、「条文ごとに検討をしていったらどうだろう」と提案。この考え方は与党内では「既定路線」(自民党幹事)。与党が検討するシナリオは、(1)04年夏までに全条文の検討を終え、「第2次中間報告」を策定(2)04年秋以降は最終報告の起草に着手(3)05年初めに改憲の方向性をにじませた最終報告書をまとめる――。
違憲訴訟で問題になった条文を抜き出し集中的に審議することも予定。
自民党は、改憲手続きを定める「憲法改正国民投票法」の早期成立にも期待。公明党が11月2日の党大会で「憲法の精神や9条は変えず必要な条文を加える」と、「加憲」の運動方針を採択。「来年の通常国会には提出できるのではないか」(自民党幹事)。
憲法問題が国民的な議論になっておらず、国会と落差がどんどん広がっていることは重大です。公聴会の陳述人は論文で選考していますが、「ほとんどが護憲論」(事務局担当者)であることは顧みられず、与党内には「傍聴廃止論」さえでてきているのです。
これから改憲といかに向き合うか?
国会内の改憲ムードを背景に、156回国会での衆院憲法調査会は、改憲へ大きく舵を切った運営方針と、審議のスピードアップを打ち出し、委員の中からも「無理だ」と悲鳴が上がるほどハードスケジュールとなりました。
2003.01.22、衆院憲法調査会(会長・中山太郎元外相)は幹事懇談会で、テーマごとに四つの小委員会を設置することを決めた。30日に総会を開き、イラク問題や北朝鮮の核開発疑惑など、外交・安全保障問題と日本の対応について議論する日程も決めた。各党の代表が10分ずつ意見を述べ、その後自由討論を行う。一方、小委員会のテーマは(1)地方自治や首相公選制など「統治機構」(2)基本的人権(3)安全保障と国際協力(4)その他全般の「最高法規」。これまでも四つの小委員会があったが、テーマを変え改組した。また、月2回だった調査会の審議回数を月3回に増やし、うち総会を1回、残り2回は小委員会とすることで合意した。(朝日)=今後の調査会の進め方について(9ページ)参照
昨年11月1日に提出された衆議院中間報告書の「論点整理」でも最も多くのページを割いたのが「安全保障及び国際協力」で3割近くを占め、1.安全保障及び9条解釈のあり方等 2.平和主義及び非核三原則等 3.自衛権及び自衛隊 4.日米安保体制 5.国際協力に分けて記されています。それを受ける形で今国会での衆院憲法調査会の小委員会が改編されたわけです。そして、マスコミは「社会の公器」たるペンを捨てた大手を筆頭に、国会での改憲多数を世論にすり替えています。しかし、9条に関しては国民の多くが評価していることはマスコミも認めるところであり、有権者が9条改憲を選出議員に負託したとは言い難く、「世論の盛り上がりに欠ける」のは至極当然のことです。
第42回衆議院議員選挙小選挙区比例代表 投票率小62.02%、比61.97%(00/6/25)
(有権者が最も考慮した問題は、景気・物価と福祉・介護)
第18回参議院議員選挙 投票率58.84%(98/7/12)
(有権者が考慮した争点:景気・物価が第1位、福祉が第2位、税金が第3位、金融不安が第4位)(財)明るい選挙推進協会資料より
それでも、自由民主党が九条責めにこだわるのは、党是であるとともに、世界第2位の軍事大国となったこの国で、憲法条文の中で最も改憲の条件整備が整ったのが九条であるという現実が背景にあります。
この最たる最近の例といえるのが、国の最高権力者の判断により決定(2002/12/4)されたイージス艦による出兵です。これは石破茂防衛庁長官が同日、小泉純一郎首相に派遣の方針を伝え、了承したものです。
これに先立ち、石破長官は、02年11月7日、ペース米統合参謀本部副議長と会談し、テロ対策特別措置法に基づいてインド洋に派遣している海上自衛隊の派遣期限(11月19日まで)を延長する方針を伝え、イージス艦の派遣を検討する意向を示しました。政府は19日の閣議で、テロ対策特別措置法に基づく基本計画の一部を変更し、インド洋で対米支援活動などをしている自衛隊の派遣期間を2003年5月19日まで半年間延長することを決定。午後に国会に報告。
この国のシビリアンコントロールが完全崩壊した瞬間です。「世界の歴史を見ても、政治が軍事に優先し、国会が軍事を有効に統制し得たという例はあまりない」(参議院内閣委員会1973)という鉄則はいまだ不変であることを証明しました。有事法は、国民の権利を政府に白紙委任し、あらゆる権限を負託するものですが、テロ特措法によって有事法制の先取りがなされました。
憲法調査会を国会に設置したこと自体、政治的圧力となるもので、市民の憲法を論じる自由を奪います。加えて憲法調査会における改憲の論点が九条となれば、前文及び9条の不戦・非武装によって保障される権利である、個人の尊重、主権在民の原則すべてが葬り去られることになります。これはすでに現実のものとなっています。一例を挙げれば、いわゆる「良心的改憲論」は封殺され、天皇制に関する憲法論議などは自己規制を強いられています。憲法学者さえそれは例外ではありません。
憲法調査会が憲法九条を柱とする改憲調査会となったことが明白となった今、本来自由であるべき憲法論議の保障の確保と主権を獲得しうる唯一の手段は、「非武装平和」の堅持を共有し、改憲策動に対抗することです。(本文は、加賀谷いそみさんの作成した資料と論評を編集部が自らの責任で要約し、再構成したものです。加賀谷さんに御礼申しあげます。)
〇中期的計画の下での「テーマ別調査」の実施
日本国憲法103箇条全体をいくつかのテーマごとにくくった上で、当該テーマごとに、「日本国憲法の運用実態と課題」について調査を行う。なお、1年~1年半(秋の臨時会、あるいは来年の常会=参議院の通常選挙前まで)で全体をカバーすることを念頭に置く。
〇調査会(総会)と小委員会の組み合わせ
(1)開会回数(月3回)
月2回(午前・午後で4コマ)の小委員会での調査を踏まえて、月1回の調査会(総会)を開催し、そこで当該テーマについて、全体討議(自由討議) を行う。これによって、調査のより一層の充実を図る。
(2)4つの小委員会
小委員会の構成については、(1)これまでの政治機構小委員会を「統治機構のあり方に関する調査小委員会」に改組し、これに地方自治小委員会を吸収する一方、(2)前文・天皇制・改正手続・最高法規など、これまでの4つの小委員会の調査事項に含まれていなかった各条章をカバーする「最高法規としての憲法のあり方に関する調査小委員会」を新設する。これによって、(3)「基本的人権の保障に関する調査小委員会」、(4)「安全保障及び国際協力等に関する調査小委員会」(国際社会小を改称)と併せて、4つの小委員会でもって、日本国憲法の全体をカバーすることとする(名称は、いずれも仮称)。
〇地方公聴会
これまでどおり、常会中に、2箇所で地方公聴会を開催する。開催の実施要領については、これまでの反省も踏まえて、幹事会で再検討する。
〇委員間の自由討議の活性化
委員間の自由討議を、より一層活性化させるため、次のような議事の進め方を行う。
(1)「チャンピオン方式(仮称)」の採用
テーマによっては、参考人を招致することなく、委員の中からあらかじめ「代表選手(チャンピオン)」を2名程度指名しておいて、各々、調査テーマに関してまとまった「基調報告」を開陳してもらう。その後、これに対する批判・反論・再反論といった形で、委員間の自由討議を進めていく。
(2)自由討議の進め方
自由討議を行うに当たっては、第155回臨時会の最後の調査会(12/12)において試行したように、各会派の持ち時間制度にとらわれることなく、会長及び小委員長の、柔軟かつ公正な議事整理権に委ねて、議論を活性化させるよう努める。
〇参考人招致の工夫
参考人を招致する場合においても、テーマによっては、例えば、立場の異なる参考人を2人同時に招致するなど、論点を明確にするための工夫を行う。
〇テーマごとの論点整理メモの作成時の検討
参考人のレジュメ等とは別に、調査対象となる条文に関する「条文ごとの論点整理メモ」(事務局等において作成)を資料として付記するなどして、「テーマ別調査」にふさわしい綿密な議論に資することを検討する。
〇調査会(総会)の進め方と調査テーマ(案)
□科学技術の進歩と憲法のあり方
→生命倫理と「人間の尊厳」(19条、23条等)、IT化の中でのプライバシー権、情報アクセス権等(13条、21条等)、環境権と環境保護の責務(13条、26条)、新たな科学技術(イージス艦等)と安全保障体制の再検討(9条等)など、広範な問題にわたる。
〇初回(1/30(木))の調査会(総会)の進め方
・4つの小委員会の設置議決/幹事の辞任・補欠選任等
・常会冒頭の会長挨拶
・自由討議
→ 初回の調査であり、2回目以降のように各小委員会での議論を踏まえた調査とはならないので、時事的な政策課題であると同時に重要な憲法問題として、「現在の国際情勢と国際協力について(特に、イラク・北朝鮮問題をめぐる憲法的諸問題)」をテーマとする。
→ 進め方は、各会派一巡(大会派順・各10分以内)の発言の後は、12/12の調査会と同様に、会長の議事整理に委ねた自由討議(1回6分以内)とする。
・全体で3時間程度を目途とする(午前9時から正午頃まで)
次に掲げるのは、「日本国憲法の運用実態と課題」について広範かつ総合的な調査を行うため、4つの小委員会に日本国憲法103箇条を割り振りながら、それらを(調査期間を考慮してそれぞれ6~8テーマ程度に)グルーピングする形で、考えられるテーマを抽出したものである。
<最高法規小>
□前文
□天皇の地位・皇位継承(1条~2条)
□天皇の権限・国事行為等(3条~7条)
□改正手続(96条)
□最高法規と憲法尊重擁護義務(97条・98条1項・99条)
□明治憲法と日本国憲法(100条~103条関連として)
<安保国際小>
□戦争の放棄(9条1項)
□戦力の放棄・交戦権の否認(9条2項)
□安全保障全般(9条改正の是非等)
□憲法と条約(二国間条約・多国間条約)との関係(98条1項・2項)
□ODA・FTA等を含めた国際協力(国際協調主義)全般(98条2項)
□非常事態と憲法・その1(テロ等への対処)
□非常事態と憲法・その2(自然災害等への対処)
<基本的人権小>
□国民の要件(定住外国人の人権を含む)(10条)
□基本的人権と公共の福祉(新しい人権を含む)(11条~13条/30条)
□平等権(法の下の平等・男女共同参画など)(14条・24条)
□市民権・政治的自由(15条~21条/23条)
□経済的・社会的・文化的自由(22条/25~29条)
□刑事手続上の権利(被害者の人権等を含む)(31条~40条)
□特に、家族と女性(24条)
□特に、教育(26条)
<統治機構小>
□国会(41条~64条)
□内閣(66条~75条)
□国会と内閣の関係([国民主権と政治の基本構想]全般として)
□司法制度(76~82条)及び憲法裁判所の是非
□人権擁護委員会その他の準司法機関の是非
□財政(会計監査院その他の行政監視機関を含む)(8条/83条~91条)
□地方自治(92条~95条)