私と憲法229号(2020年5月25日号)


「検察庁法改定」案強行阻止の教訓と安倍改憲とのたたかい

安倍政権の危機の到来

5月18日、安倍政権はとうとう検察権力を私物化するための悪法「検察庁法改定案」の今通常国会での強行採決を断念し、秋の臨時国会に先送りすることを決めた。この間、1人の市民が発したツイッター、ハッシュタグ「#検察庁法改正案に抗議します」に呼応した人々が1000万件ちかくにのぼった。各界各層の広範な人びとが抗議の声をあげ、世論が大きく変化してくる中での出来事だった。いま、動揺した安倍政権は同法の撤回・廃案も検討中だ。

つづいて21日、週刊誌「文芸春秋」が暴露した黒川弘務東京高検検事長の「賭けマージャン」報道による辞任が発表され、永田町を震撼させている。いうまでもなく、黒川検事長は「検察庁法改定」の当該の人物であり、法案は黒川検事長のための法案であったといってよい。官邸は早速、黒川氏を「訓告」などという軽微な処分にとどめ、責任を回避しようとしている。

いずれ、真相が明らかになるだろうが、この「文春」情報が世論の一層の爆発を恐れ、安倍政権による法案先送りの判断を招いた可能性が高い。

終盤にさしかかった第201回通常国会は、すでに政府は悪名高い「種苗法」の先送りは決めたものの、スーパーシティ法案や新型コロナ感染症対策のための第2次補正予算を残している。にもかかわらず、ここにきて与党は安倍改憲を是が非でも進めたいとの思いから、憲法審査会での改憲手続法改定案(国民投票法改定案)の審議のための憲法審査会の自由討議の開催を画策している。

各種の世論調査をみても安倍政権の支持率は急落しつつある。安倍政権の政治的危機は深刻になってきた。

新型コロナ感染症と緊急事態宣言体制の問題点

新型コロナウィルスという目に見えないウィルスの危険は、世界的規模で人類に降りかかった未曽有の災禍だ。
この問題で新型インフルエンザ対策特措法にもとづく緊急事態宣言が発令され、政府や東京都など各自治体の長などから、事態の緊急性、危険性を強調して、マスメディアを通じて洪水のように「外出・営業自粛」要請が流される。そして、感染の拡大が収まらないのは、あたかも市民が政府の自粛要請にこたえる努力が足りないからであるかのように宣伝される。

この延長上に「自粛警察」と呼ばれるような社会現象まで発生している。市民が「自粛していないと思われる市民」を摘発し、攻撃する風潮だ。それはあたかも戦前の「憲兵」や「国防婦人会」を彷彿とさせるような相互監視機能をはたしている。

しかし、このコロナウィルスの蔓延の肝心な問題については安倍政権の失政による重大な人災の側面を指摘する必要がある。初期の水際対策の立ち遅れと失敗は安倍政権の政権浮揚のための一大外交イベント化された習近平・中国主席の来日などへの政治的配慮があり、さらに客船ダイヤモンド・プリンセスのゲットー化の失敗による感染の拡大があった。本格的な対策の立ち遅れは東京五輪延期の決定待ちで防御対策が大幅に遅れたことなどさまざまな決定的な判断ミスが重ねられた。窮地に陥った安倍政権が「この問題に与党も野党もない」などと野党に抱きつくことで野党の共同を分断し、緊急事態宣言を発令した。国会の十分な議論を経ないで発令した緊急事態宣言は目標の1か月の期限が切れても、目的は達成されず延長せざるを得なくなり、混乱が続いている。

安倍政権の変転する政策の失敗は、異常に少ないPCR検査数の問題をはじめ、突然発せられた安倍首相による小中高の一斉休校、全戸へのマスク2枚の配布、減収所帯への30万円給付の撤回と世論に押された1人10万円の配布決定などなど、枚挙にいとまがない。

感染の拡大に抗ウィルス薬やワクチンの開発が追い付かず、外出自粛以外に有効な手立てが見つからない現状では、国や知事が感染拡大防止のために人々ができるだけ自宅にとどまることを奨励することに反対はしない。しかし、このことで政治の責任をあいまいにすることは許されない。政府は「コロナ時代」の「新しい生活様式」などと、こまごまと上から目線で説教して、政治の責任を市民に転嫁するのはやめるべきだ。

政府は急場しのぎに超大型補正予算を組んで対処しようとしているが、このままでは日本経済が巨額の国債発行をはじめ未曽有の国家財政の赤字をかかえたまま重大な経済危機に陥ることが明らかだ。倒産は続発し、失業・廃業はかつてない規模で広がるのはまちがいない。

緊急事態宣言の発令によって、憲法が保障する移動の自由、営業の自由などにかかわる基本的人権が制限されている。

憲法25条は、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」としている。

2項が指摘する「公衆衛生」とはまさに現下の新型コロナウィルス禍が含まれ、その解決は国の責任とされている。緊急事態宣言によって、「移動」「営業」などが制限されていることの責任は政府にある。

憲法29条は、「財産権は、これを侵してはならない。財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる」と定めている。

政府や自治体による営業の自粛要請がこの「公共の福祉」にもとづくものであるなら、侵害を受ける「私有財産」の「正当な補償」が必要だ。安倍政権は世論に押されて、ようやく1人10万円の配布などをはじめ、営業活動の支援のための若干の補償措置をとったが、これだけでは極めて不十分だ。「正当な補償」がないままの「自粛」の強要は憲法の精神に合致しない。

改憲をあきらめない安倍政権

許しがたいことには、新型コロナウィルスの問題がこうした重大な事態であるにもかかわらず、このどさくさの中で安倍首相は繰り返しこの危機を利用し、緊急事態宣言を改憲の緊急事態条項の入口に利用しながら改憲推進に言及していることだ。改憲派は人々の危機感に便乗し、全く問題の性質の異なる今回の緊急事態宣言と改憲の緊急事態条項導入を結び付け、改憲の世論を形成しようとしている。

そしていま、会期末に向けて憲法審査会の再開を急ぎ、改定改憲手続法(国民投票法)の成立を企てている。この間、安倍首相が唱え続けてきた「任期中の改憲」実現にとって、残された時間は極めて少ない。

安倍首相が企てる憲法第9条に自衛隊を書き込み、違憲の戦争法を合憲化し、自衛隊が世界的規模で米軍とともに軍事作戦を進めることを可能にする改憲は何の正当性もない暴挙だ。
このコロナの災禍の中で、憲法第9条が一層輝きを増している。

世界最大の軍事大国の米国はその武力をもってしても米国の人びとを守ることができず、世界最大の感染者国で、最大数の死者をだしている。武力がはたして人々の安全保障になったのか。一方、政府の果断な対策で、すでに国内の感染禍が終息の方向に向かいつつある韓国は、先ごろ、緊急災害支援金の財源確保のため、F35戦闘機、イージス艦の戦闘システムの購入費など国防費を財源に充てることを閣議決定した。

安倍政権はいずれの道を選択するというのか。
コロナの災禍は全世界の人々の努力で、遅かれ早かれ沈静化に向かうに違いない。しかし、その後にくる日本社会が「戦争をする国」であることなど断じて許されない。

そのためにも、私たちはいま社会に蔓延する「自粛」の同調圧力に抗し、物言わぬ市民になることを拒否し、憲法の基本的人権を守り、生かして、お互いに創意工夫して闘い、この戦後最悪の安倍政権の悪政に反対し、近い将来必ず政治を変えるために奮闘しなくてはらない。

ポストコロナの社会においても、社会の耐えがたいほどの格差はなくならない。直面する政治的・経済的危機を乗り切ろうとして、安倍政権とその亜流は引き続き改憲をめざし、戦争する国造りの道を進むことは疑いない。こうした道を許さないたたかいはひきつづき重要な課題だ。

ツイッターデモ、世論が変わった

4月のはじめ、音楽家の星野源さんの『うちで踊ろう』の動画に便乗して、安倍首相が自宅でくつろいでいる姿をコラボ動画で発信したことが人々の批判を浴び、大炎上したことがあった。

それから1カ月後、再びインターネットが官邸を揺るがす事件が起きた。5月9日頃、一人の市民による「#検察庁法改正案に抗議します」のツイッター投稿は瞬く間に拡大を続け、数日の間に6~700万件にたっし、1週間後には1000万件に達する勢いで広がった。俳優や歌手、作家などの著名な人々や東京地検特捜部OBなどまでもが次々と発信し始めた。

しかし検察庁法改正案の早期成立をめざしていた安倍政権と与党内では、批判を正面から受け止めず、「およそありえない数字だ」などと、あたかもそのツイッターの動向が意図的に作られた偽造であるかのような疑義まで表明した。ネトウヨなどからは芸能界の人びとが発言することへの口汚い攻撃も繰り返された。安倍晋三首相は5月12日の衆院本会議では「インターネット上の様々な意見に政府としてコメントすることは差し控える」と述べ、これを無視した。

しかし、しかし、これらの攻撃にあっても、ツイートは拡大し続けた。
それでも同法の改定強行をめざしていた官邸が、今国会での強行採決回避に動いたのは5月16、17日頃に実施されたNHK、朝日新聞、ANNなど各メディアの世論調査が相次いで検察庁法改定と内閣に対する支持率が急落した報道による。このことは、この間の安倍政権による政治の私物化、腐敗への不信と、新型コロナ感染防止対策の失政などへの社会の不満の反映だ。

これらの世論調査はいずれも検察庁法改定に「賛成」が1割台、「反対」がその4倍の6割台になった。

内閣支持率はNHKで支持が37%、不支持率は45%、朝日は支持が33%、不支持が47%、ANNでは支持が32・8%、不支持が48・5%と急速にその差が拡大した。とりわけ朝日の内閣支持率は「危険水域」の2割台まであと一歩に迫った。

おそらくこの時点で、官邸には「文春」の情報が届いたに違いない。もし黒川が辞任に追い込まれれば、法案を強行する官邸が崩壊する。官邸は強行採決回避、法案先延ばしに舵をきらざるを得なくなった。

あきらかになったことはこの間のツイート件数が、実体のないものではなく世論を反映していたということだ。これは早くから市民運動や法曹界の人びとがこの検察庁法改定案の問題についての暴露を続け、闘ってきたことが土台になっている。

しかし、忘れてならないことは、今回の「断念」は今次通常国会での成立の断念にすぎず、安倍政権は継続審議にして秋の臨時国会で採決しようとしていることだ。黒川が辞任しても、この法律によって検察権力は牙を抜かれ、常に官邸の顔色をうかがうことになる。官邸が検察権力を私物化することに変わりはない。世論を反映して、いま政府与党の中にこの法案の撤回の動きがある。たたかいの手を緩めず、立憲野党と連携して、必ず廃案にさせよう。

安倍政権を打倒するたたかいは、黒川検事長問題でみられたようなSNSなどの新しい表現を可能にしたツールを使った巨大な抗議の行動の組織化に習熟する必要がある。合わせて、真に政治を変えるためには、これを全国各地の草の根で人々と対話を重ね行動してきたリアルな市民運動と結合して、この秋からのたたかいに備えなくてはならない。
(事務局 高田健)

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平和といのちと人権を!5・3憲法集会2020

13:00~国会正門前よりネット中継

2020年、東京での5.3憲法集会は、5月3日午後1時から国会正門前でネット中継により行われ全国に配信された。集会は菱山南帆子さん(総がかり行動実行委員会)の司会で進行された。菱山さんは「こうした形で5.3憲法集会を行うとは思っていなかった。しかし長い歴史のある憲法集会を途切れさせるわけにはいかない。しかも安倍首相はコロナを利用して改憲につきすすもうとしている。おかしいという声をあげ、安倍政権を打倒していこう。」と国会前に集った人々やネット中継を見ている仲間に呼びかけた。また集会には立憲民主党、国民民主党、日本共産党、社会民主党の各政党および多くの国会議員から連帯メッセージが寄せられていることを紹介した。国会前に集まった300名近くの人々には3密をつくらず適当な距離をとりながらの参加をお願いし、歩道には2メートル間隔で赤いマジックテープ貼られて参加者の立ち位置の目安も案内された。

集会では高田健さんが主催者挨拶を行い、浅倉むつ子さん、稲正樹さん、堀潤さんがスピーチした。また古今亭菊千代さん、武藤類子さん、青木初子さん、山口二郎さんからのメッセージを紹介され、小田川義和さんが閉会挨拶をおこなった。最後に集会宣言を発表して終了した。この集会は「#0503憲法集会(字幕入り)」で視聴することができる。なお、発言者の内容は事前に寄せられた発言原稿による。

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《開会挨拶》高田 健さん(総がかり行動実行委員会共同代表)

本日、第73回目の憲法施行記念日にあたり、「5・3憲法集会実行委員会」を代表して、開会のご挨拶を申し上げます。
いま、新型コロナウィルスという目に見えない危険が私たちの社会を覆っています。

これはコロナウィルスという人類に降りかかった未曽有の災禍ではありますが、一方で安倍政権による重大な人災の側面を指摘しないわけにはいきません。安倍政権の失政は、外交日程を考慮した初動の立ち遅れ、東京五輪の開催にこだわった情報開示と対策の大幅遅れ、クルーズ船ダイヤモンドプリンセス号のゲットー化の失敗、無謀な小中高の一斉休業要請、配布したアベノマスクの回収などなどなど、枚挙にいとまがありません。

政府は市民に対して繰り返し自粛を要求しますが、それに伴って不可欠な補償などの政策は極めて不十分です。またこの中で社会に一方的な同調圧力が強まり、集会の自由など、憲法の保障する基本的人権の侵害がさまざまに起きていることも見逃せません。

許しがたいことには、こうした重大な事態であるにもかかわらず、安倍首相は改憲推進に言及し、与党は野党の同意抜きで憲法審査会の再始動を強行しようとしました。安倍首相が企てる憲法第9条に自衛隊を書き込み、違憲の戦争法を合憲化し、自衛隊が世界的規模で米軍とともに軍事作戦を進めることを可能にする改憲は何の正当性もない暴挙です。

このコロナの災禍の中で、憲法第9条が一層輝きを増しています。世界最大の軍事大国の米国はその武力をもってしても米国の人びとを守ることができず、世界最大の感染者国で、最大数の死者をだしています。武力がはたして人々の安全保障になったのでしょうか。一方、政府の果断な対策で、すでに国内の感染禍が終息の方向に向かいつつある韓国は、先ごろ、緊急災害支援金の財源確保のため、F35戦闘機、イージス艦の戦闘システムの購入費など国防費を財源に充てることを閣議決定しました。

安倍政権はいずれの道を選択するというのでしょうか。

コロナの災禍は全世界の人々の努力で、遅かれ早かれ沈静化に向かう事でしょう。しかし、その後にくる社会が「戦争をする国」であることなど断じて許されません。そのためにも、私たちはいま社会に蔓延する同調圧力に抗し、物言わぬ市民になることを拒否し、憲法の基本的人権を守り、生かして、お互い創意工夫して闘い、この戦後最悪の安倍政権の悪政に反対し、たたかい、近い将来必ず政治を変えるために奮闘しなくてはなりません。

近い将来、このコロナの災禍が終息していたら、今年の憲法施行記念日の11月3日には必ず大規模な憲法集会を勝ち取り、安倍改憲発議反対ののろしを上げたいと思います。そして遠からず行われる衆議院総選挙において、立憲野党と市民は連携し、全国各地の小選挙区に統一候補を擁立して、安倍政権与党と闘い勝利しましょう。安倍政権を倒して安倍改憲発議を阻止するか、安倍改憲発議を阻止して、安倍政権を打倒すか。

私たちの前にはこの壮大な政治変革の展望があります。ともに頑張りましょう。

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《スピーチ》浅倉むつ子さん(早稲田大学名誉教授・労働法、ジェンダー法)

 今年の憲法集会は、これまでに経験したことのない形で行われています。世界中が大きな困難に直面している現在、このような形であるにせよ、みなさんと「心を一つ」にして連携していられることを、本当に嬉しく思います。ネット配信を企画してくださった主催者の方々の努力に感謝します。

 私たちはいま、たくさんの心配事と不安をかかえています。不安のはけ口なのか、感染した方や医療従事者、外で働く人々に、心ない言葉が投げかけられることもあるようです。このままでは悲惨な事件がおきないか心配です。歴史をふりかえると、大規模災害時には似たようなことが繰り返されてきました。最悪の事態として、関東大震災の折に、朝鮮や中国の人々が虐殺されるという事件が起こりました。残念なことに、日本の為政者は、この歴史的事実から目をそらしてきました。研究者や日弁連の調査などによって、真実の解明と責任の所在が明らかにされているのに、国が責任をとらないために、国民がこれらの経験を学べていないのです。

 一方、私がいま「救い」と感じるのは、3月 18日のドイツのメルケル首相の演説です。メルケルさんは、コロナウィルス対策について、「開かれた民主主義に必要なことは、政治的決断を透明にして、説明すること、行動の根拠を伝達することによって、理解を得られるようにすることです」と述べ、人々が公の生活を制限しなければならない根拠を、論理的に、誠実に説明しました。国民には、「思いやりをもつて理性的に行動し、それによって命を救うことを示さなければなりません」と訴えました。この訴えは、世界の人々の胸をうつ名演説といわれています。

私は、安倍首相が、メルケル首相のようなメッセージを発信できる誠実なリーダーでないことを、心から残念に思います。メルケルさんが強調する、「透明性」「思いやり」、「理性」とは、まつたく裏腹な暴挙を重ねてきたのが、安部政権の7年間でした。2012年以来、安部首相は、集団的自衛権容認の閣議決定のために、内閣法制局長官の首をすげかえ、論拠は完全に破綻していたのに、2015年99月19日 の未明に、安保関連法を強行採決しました。しかも、この政権は、戦後に積み上げられてきた法的ルールをことごとく破壊して、自らの意向に従う者だけを重用(ちょうよう)する政治を行ってきました。そのなかで、尊い命が失われる事態も発生しました。森友学園事態の公文書改ざんに巻き込まれた赤本俊夫さんの死を、私たちはけっして忘れてはなりません。そんな政権の下で、私たちは、いま、この新型コロナの危機に対峙することを迫られているのです。

 いま、必要なのは、安部政権とは真逆の政治です。長いスパンで物事を考え、過去のできことにさかのぼることを怖がらず、歴史から目をそらさない政治です。目の前のできごとに惑わされず、可能なかぎり知性と感性を磨き、弱者が生きやすい社会を構築するための努力を重ねる政治です。私は、いま、障害をもつ人々の運動から学んだことを大切に思っています。それは「障害の社会モデル」という考え方です。障害とは、個人の身体的・生理的な機能の欠損から生じるのではなく、社会のあり方と相互作用から生じるのだという考え方です。社会のあり方によって、障害のある人が経験する不利益の度合いは違うのなら、社会を変えることによって、その不利益を軽減することができるのです。この発想を中心にすえると、もっとも弱い人々が生きやすい社会を作ることは、とても大事だということがわかります。障害をもつ人が生きやすい社会は、すべての人が生きやすい社会になるはずです。これは、今後、私たちがめざす社会のあり方を示すものだと思います。

 では、私たちはこの緊急事態にどう対峙すべきなのか。それは、もつとも弱い立場にいる人々が 安全に生きられるようにすること、それが優先課題だと認識すべきです。育児と仕事をかかえこんでいるシングル・マザー、生きるためにケアが必要な高齢者や障害をもつ人たち、医療現場で疲弊している人たち、ヘイト・スピーチにさらされている人たち。そういう人たちが尊厳をもって安全に生きられる社会こそ、私たちがめざすべき「平和な社会」なのではないでしようか。2015年の安保法制をめぐる議論では、「国家の安全保障」、軍事力や武力に依拠する安全保障だけが語られました。しかし本当に私たち求めるのは、平和学やフェミニズム国際関係論が強調する「人間の安全保障」です。「平和とは、国のレベルで戦争がないという状態ばかりではなく、社会における公正・平等・人権と基本的自由の享受を含む状態である」という、1985年のナイロビ将来戦略の「平和の定義」を、いま、私は思い起こします。

 人間の安全保障に集団的自衛権はいりません。必要なのは、平時においてあらゆる暴力を否定する教育を行うこと、戦時性暴力などの戦争行為を反省し防止すること、沖縄の米軍などによる性暴力の現実をみつめてそれらを予防し処罰すること、ヘイト・スピーチを禁止すること、それらのことこそが、本来の安全保障の中身なのです。それができないのは、憲法が悪いのではありません。 ひとえに、透明性、思いやり、理性を無視してきた現政権の責任だといわねばなりません。

本当の平和、本当の安全を求めるとき、日本国憲法は、まさに私たちを導く灯台であるといえるでしょう。差別や憎悪の嵐が世界中を脅かしている現在、このような嵐の夜にこそ、行くべき道を照らす灯台が私たちには必要です。その灯台である憲法9条を改正する必要は、まつたくありません。むしろこの危機的事態においては、日本国憲法を貫く本当の平和主義と反暴力の考え方を

世界に向かつて発信すべきです。日本国憲法は私たちの誇りです。自信をもって憲法を守りぬきましょう。

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《スピーチ》稲 正樹さん(元国際基督教大学教授・憲法学)

私からは、政権与党の新型コロナウィルス対策について、憲法からみた問題点をいくつか述べたいと思います
第1に、憲法に基づく政治とは、国民の生命と暮らしを守り抜くという当たり前のことであり、それが余りにも蔑ろにされております。憲法13条は、「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」と規定しています。新型コロナに対する法と政策の基本は、この国民の「生命権」を確保するものでなければなりません。

 生命権には、国家に対して生命についての侵害排除を求める不作為請求権だけではなくて、国家に対して生命の保護を請求する権利としての側面があります。後者には、憲法25条の健康で文化的な最低限度の生存の保障を国家に要求する権利いわゆる生存権と生命の侵害(の危険)からの保護を国家に要求する権利があります。憲法13条は、単に国家が国民の生命を侵害してはならないという意味だけではなくて、国民がその生命を第三者から侵害されようとした場合には、国家としてはそのような侵害(の危険)から国民を保護する責任を負っている。国民としてはそのような場合に国家の保護を求める権利があることを明らかにしています。

しかしながらいま私たちが目の前にしているのは、PCR検査を受けたくても受けさせてもらえず、「軽症」患者を自宅に放置したまま、死ななくてもよい人々を死に至らせる政治です。医療現場への緊急支援体制に万全を期すことなく、第一線で働いている医療関係者や病院に裸で戦うに等しい犠牲を強いている政治です。都民の血税を使ってテレビ広告に登場しては、ひたすら三密を避けて家に閉じこもる必要性を声高に述べる知事。ろくな休業補償もないままに自粛を強要する政治。水島朝穂さんは「検査なき自粛」と「補償なき自粛」を叫ぶ日本の現状は「法治国家」ではなく「放置国家」だと喝破しています。

 いまこそ、これらの政治を変えて、国民の生命権の確保と保護を第一にする政治に転換しなければなりません。科学者の知見に基づかない、思いつきの政治判断があってはなりません。科学者の判断を優先させるべきです。PCR検査をすれば医療崩壊になるから家でじっとしていろと言い放つ人たちだけを集めた、いい加減な専門家会議ではなくて、国民の命を確保するためにはいま何が必要なのか、どのような体制を構築すべきかを真剣に考える科学者の起用と登場が待たれます。

 学校を閉鎖して家にいることしかできない子どもたち。その子どもたちを横に見ながら働きに出ざるを得ない家庭がたくさんあります。憲法には子どもたちの教育を受ける権利、学習権が規定されています。子どもたちの教育を受ける権利をどのように保障していくのか。政府や自治体はその手立てを一体どれだけ真剣に考えているのでしょうか。休業補償も受けずに真っ先に首を切られていく非正規労働者、経営破綻に直面するや中小の商工業者。憲法29条3項は「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用いることができる」と規定しています。この損失補償の規定や憲法25条の生存権の規定、憲法27条の労働権の規定をテコにして、「自粛と補償はセットだ!」という声を大きくしていきましょう。若尾典子さんは、「おうちにいることができるように政府は具体策を実施しなければいけない。おうちは食べさせてはくれないから、おうちにいるためには休業補償がすぐに必要だ」と言っています。

 第2に、今回の緊急事態の発令によって、表現の自由、報道の自由、集会の自由、移動の自由、財産権といった憲法の基本的人権が制約・侵害されています。コロナの感染防止のためにこれらの基本権は制約されてもやむを得ないのでしょうか。

 感染と拡大の防止のためには、これらの権利や自由の最小限の規制はやむをえません。しかしながら、これらの規制や制約は真に必要な場合にとどめるべきです。必要性・緊急性の要件の充足と比例原則にのっとって行われるべきものだと考えます。コロナ後の世界をいまからあれこれ言うのは早すぎますが、権利や自由の行使を自粛し、制限していれば、私たちのエンパワメントのちからが自然に損なわれてしまします。国民主権と民主主義を支える力量をつけていきたいと考えます。

 最近見た動画において、東大先端研がん・代謝プロジェクトリーダーの児玉龍彦さんという方が、大量検査をしてコロナ感染者を突き止め、感染者に接触した人たちをピンポイントで明らかにすることによって感染拡大を防ぐ、precision medicine(精密医療)の必要性を力説していました。感染の拡大を放置したアメリア、イタリアではなくて、韓国・台湾・香港・シンガポールなどの東アジア諸国の成功例に学ぶべきだという提言です。この提言には大いに共感したのですが、スマホ・アプリによる個人行動の履歴の収集と利用にあたっては、徹底した個人情報保護とプライバシーの確保という観点からの厳しい歯止めがあってしかるべきです。感染の拡大防止と個人情報の両立を可能にする細く・困難な道をどのように切り開いてくべきか。それこそ国会できちんと議論すべきことではないでしょうか。

 コロナの押さえ込みに成功した韓国モデルを個人的自由の抑制と国民の健康権の確保という観点からどう考えたらよいのか。まだ答えの出ていない難問ですが、よく考えてみます。日本の現政権は同調圧力と大規模感染の結果実現するであろうという免疫拡大と社会的弱者の犠牲によって、問題を糊塗しようとしています。下層市民の切り捨てで、危機を突破しようとしているのだと思います。

 第3に、自民党は新型コロナ危機の最中の4月3日に「新型コロナウイルス感染症と憲法論議について」という文書を出し、「緊急事態における国会機能の確保」という観点から「憲法審査会開会の必要性」を主張しました。西村経済再生担当相は4月27日に特措法による休業要請に応じない店舗などが相次いだ場合、罰則を伴う強い指示を可能とする法改正を検討すると発言し、同日に安倍首相も、「今の対応や法制で十分に終息が認められないのであれば、当然、新たな対応も考えなければならない」と述べたと報道されています。

 政権与党は不要不急の憲法審査会を開催して、なんとか改憲発議に持ち込むことを虎視眈々と狙っています。「究極の火事場泥棒」としての憲法審査会の開催強行を許してはいけません。コロナ危機の中で行われた直近の共同通信の世論調査では、大規模災害時に内閣の権限を強め、個人の権利を制限できる緊急事態条項を憲法に新設する案について、賛成51%、反対47%という結果がでており、警戒すべきです。2018年3月に自民党が提示した安倍4項目改憲案の中には、国会議員の任期延長を可能にし、内閣に緊急政令の制定権を与える緊急事態条項が入っています。緊急事態条項の憲法規範化がもたらすものは、緊急や必要が法を破ってきた歴史を繰り返すことです。コロナの後にやってくる世界が荒涼とした監視社会と行政独裁国家になってしまうことを私たちは許してはいけません。

 コロナ対策のかげで、政府による辺野古の埋め立て工事の設計変更の沖縄県への申請や政府が検察中枢の人事を意のままにできる検察庁法改正案なども現在進行しています。国は辺野古の埋め立て工事に狂奔することをやめ、ひとまず工事の中止を決断し、コロナウィルスで苦しむ国民の命の救済と生活の補償、医療現場への抜本的な支援のために、国民から拠出された血税を使うべきです。検察幹部を政治に従属させようとする暴挙を許してはいけません。こうした問題にも、国民の命と暮らしを守れと言う声を大きくするとともに取り組んでいきたいと考えます。

引き続き「安倍9条改憲ノー!改憲発議に反対する全国緊急署名」に頑張って取り組んでいきましょう。ご静聴ありがとうございました。権威主義ではなく、立憲主義と平和主義と民主主義のもとにある憲法を実現していきましょう。

《スピーチ》堀 潤さん(ジャーナリスト)

 今、世界が混迷を極めています。紛争やテロ、格差や貧困、環境破壊、イデオロギーの衝突、これらに加え、未知のウィルスとの格闘が続いています。人間の尊厳が脅かされ、社会の分断を感じさせる出来事があちらこちらで勃発しています。先行きの見通せない混沌が不安や不満を増長させていきます。決断力と指導力のある強いリーダーを求める気持ちが、日に日に大きくなっていくのを感じています。私の心の中にもそうした気持ちの小さな種があるのを時々感じます。ですから、これほど自分自身に対して恐れを抱いたことはありません。

 私は、これまで対話を重んじ、慎重に事実を集め、精査し、検証し、広く議論し、そして各々が決断するという民主的なプロセスの必要性を日々の活動を通じて訴えてきました。しかし、目の前の危機を乗り越えたいという一心で、迅速で力強い実行力を政治に求める自分がいることに気がついたからです。不安や恐怖がそうさせるのでしょうか。決定に関わる地道なプロセスが逆にもどかしく感じられてしまう。自分自身の心の変容に恐れを抱いています。ですから、自分自身に問いかけています。今が正念場。今こそ、民主主義の底力が試されているのだと、自らの心を鼓舞しながら日々の取材や発信活動を続けています。

 この10年間、私は紛争や貧困と向き合い人道支援を続ける日本のNGOの取材や、民主主義とは何かを考えさせられる世界各地の街や人を撮影してきました。パレスチナ、シリア難民キャンプ、カンボジア、平壌、香港。そして、今年の年末年始はアフリカ・スーダンにいました。一昨年12月、スーダン市民は声をあげました。30年続くバシル政権の独裁に対して抗議するためです。物価の高騰やインフレによってパンも買えない、病院にもいけない、現金も引き出すことができないなど、市民生活は破綻していました。

 昨年4月に軍がバシル大統領を解任。その後もしばらく混乱が続きましたが、現在は軍による暫定政権から民主政権への移行を目指し交渉が続いています。市民は「アラブの春から我々は学んだ。武器を持ってはいけない」と、徹底的な平和的デモを貫きました。治安維持部隊の暴力によって100人を超える市民が犠牲になり、いくつもの遺体がナイル川に放り込まれる悲劇もありました。スーダン市民は忍耐と信念で革命を成し遂げたのです。なぜ民主主義が必要なのか?とあちらこちらで聞いて回りました。「公正さが必要だからだ」という回答が多く、「なぜ公正さが?」とさらに問うと、「皆が豊かになるためだ」と返ってきました。「民主主義を手に入れた先にまだ貧しさが待っていたら次はどうするつもりか?」と聞くと、「再び革命を起こす」「未来のことはわからない」など答えはまちまちでした。「経済力のある国と連携する」という答えもあったので「例えばどの国と組みたいのか?」と尋ね返すと「中国だ」といいます。「中国は民主主義ではないが良いのか?」とさらに突っ込むと「安定した経済力があるからだ」と。

 民主主義はジレンマを抱えた仕組みです。決定には時間がかかります。しかも、決定したビジョンが成功するとも限りません。それでもわたしは人々がそのプロセスに関わり、自らで選択できる民主主義が最良だと思っていますが、忍耐強くそれを維持できるかどうかは疑問です。強いリーダーシップで国家が主導し、迅速な決定で発展させる中国がモデルスタンダードになってしまう懸念が拭えません。経済合理性が人々の基本的人権に優先されかねない決定であっても、受け入れてしまうのではないかと不安です。

新型コロナと向き合い、疲れ果てた社会の先が心配です。
欲望を自制できるのか。ひょっとしたら「民主主義」という言葉が過去のものになってしまう未来がくるのではと警戒しています。「民主主義消滅」これがわたしの今の最大の関心事です。日本も他人事ではありません。皆さんとその都度考える機会をつくっていきたいと考えています。ぜひ参加を促したいです。

民主主義の対義語は何でしょうか。辞書などを引くと、「独裁」や「専制」、「全体」主義などの文言が並びます。国王や政治指導者など一部の権力者が、私の、そして人々の生きる方向性を決めてしまうあり方です。しかし、私は民主主義の対義語は「沈黙」だと思っています。例え独裁者がいなかったとしても、人々が沈黙して、何も語らなくなってしまえば誰かの大きな声に従って生きなくてはならないからです。

しかし、一個人が声をあげるというのは大変勇気のいることです。意見することによって対立が生まれたり、排除されたり、奇異な目で見られたり、不利益を被ったり。生命と財産を奪われる国や地域もあります。私も怖くなって思わず言葉を飲み込んでしまいそうになることがあります。ですから、周囲に勇気を振り絞って声をあげている人を見つけると、駆け寄って「共に発信しましょう」と連帯の意思を伝えることにしています。黙ってしまったら何も始まりません。自分で考え、自分で決める。という大切な尊厳を自分自身で潰してしまうことになりかねないからです。

取材で聞いた忘れられない言葉があります。4年前、101歳で亡くなったジャーナリスト、むのたけじさん。その直前にインタビューをしました。むのさんは、太平洋戦争中は朝日新聞の記者でした。当時、新聞やラジオは大本営発表と呼ばれる軍が発表する嘘の情報をそのまま国民に伝え続けていました。本当は日本軍が負けているのに、あたかも敵を打ち負かしているような表現で、報道を続けたのです。

 むのさんは日本の敗戦が決まったその日、自ら大本営発表に加担してしまったことを悔いて、朝日新聞を退職。地元の東北に戻って自分で新聞を立ち上げ、以来100歳になるまで、戦争の愚かさを訴え続けました。そんなむのさんに僕は尋ねました。「若い世代に伝えたいことは何ですか?」「誇りを持って生きてください」「むのさんの言う誇りとは、どのような意味ですか?」「簡単じゃないですか。あなたが、あなたらしく生きることですよ。誰にも制限されることなく、あなたが、あなたらしく生きること」。

わたしはむのさんの言葉をしっかりと受け止めたい。わたしが、わたしらしくいられるよう、みなさんと一緒に、決して沈黙することがないよう、繋がり、支え合っていきたいと思います。

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《メッセージ》憲法記念日にあたり

古今亭菊千代さん(落語家)

大変なことになってしまいました。医療関係、従事者の皆さん、食材やお弁当、薬局、コンビニ、日常生活に必要なものを供給していただいている皆さん、運んでいただいている皆さんに本当に心より感謝いたします。戦争や自然災害や大事故ではなくウィルスという、人類にとって最も怖いものに襲われてしましました。ウイルスの恐ろしさは、見えないこと、そしてすぐに結果が出ること、そして感染すること、人と人とのつながりを絶たなくてはいけないことです。

私は日頃「平和でなくては落語は笑ってもらえない」と提唱し、9条の大切さを訴えてまいりました、人の心が平穏でなければ落語なんて笑ってもらえない、戦争のみならず、9年前の3月11日の東北大震災の時にも身をもって感じたからです。けれども今また、本当に、落語は何て無力なのだろうと感じています。勿論一人で、ご家族で、お部屋で聞いていただいて笑っていただければ嬉しいです。でもやっぱり、演者とお客様、またお客様どうしが同じ空間でお互いの息遣い、マを感じながら楽しむ、笑う、感動する、それが本当の姿です。テレビで見ていただくお客様も、映像の中のお客様がいるから一緒になって楽しめるものだと思います。明けない夜はない、ピンチはチャンス、色々前向きなことを考えるようにしていますが、この事態の終息後、どのようにして今までのように人と人の集まりが可能になるのか、想像もつきません。

けれども、私たちはこの容赦ない事態のおかげで、今までいかに自由だったのか、平和だったのか、そしていかにあらゆることを見逃し、いざとなった時には政治家や官僚たちの良いようにされてしまうのかということも思い知りました。戦争や原発問題は人災です。私たち人間が頑張れば防げる問題です。いざとなった時に私たちの権利を守ってくれるのが憲法です。こういう時だからこそ、憲法の大事さ、そして憲法で定められている人権を確認しあって、その当然の権利を皆が受けているかも確認しあって、助け合っていきましょう。

私も落語家としてできることを模索しながら、夜明けに向けて、精進いたします。まずは元気に焦らず無理せず、まずはご自身を、ご家族をいたわりながら、想像力を働かせ、思いやりを忘れず、平和への願い、ぶれない心をもって乗り切っていきましょう。

最後になぞかけ一つ。コロナとかけまして、オリンピック反対の菊千代とときます。そのココロは、「カンセンしたくない!」

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《メッセージ》5月3日憲法集会に寄せて

武藤類子さん(福島原発告訴団)

本日は皆さまとともに集い、この国の真の平和と人々の幸せについて語り合えることを楽しみにしておりましたが、新型コロナの感染の拡大によっての集会の中止は、必要でありやむなき事ではありますが、とても残念ですね。コロナ感染拡大の状況は、福島原発事故がもたらした状況と重なる部分があり、とても複雑な気持ちです。

世界中がコロナ感染拡大を防ごうと努力を重ねている中で、着々と進められようとしていることがあります。それは、検察官の定年延長、宮古島自衛隊配置、改憲、ギリギリで延期になりましたが、オリンピックの聖火リレーもそうでした。もうひとつ福島原発のALPS処理汚染水処分についてもそうです。今年2月に、経産省「多核種除去設備等処理水の取り扱いに関する小委員会」は、ALPS処理汚染水の処理について、海洋放出、水蒸気放出が現実的であり、海洋放出のほうがより確実という報告書を提出しました。4月6日と4月13日には、経産省主催で「関係者の御意見を伺う場」なるものが開催されました。国会議員や市民団体が開催はコロナ終息後にと、延期を申し入れましたが、緊急事態宣言の中で強行されました。傍聴も出来ませんでした。ネット中継はありましたが、なぜ、このような時期に急いで開催する必要があるのだろうかとたいへん疑問です。

福島原発敷地内にタンク貯留されている、ALPSなどで処理されたいわゆる「処理水」と呼ばれるものは、現在約120万トンあると言われています。そこには860兆ベクレルのトリチウムが含まれていますが、他にもトリチウム以外の放射性物質が処理しきれずに含まれています。東京電力によれば、タンクの貯留水の72パーセントに、ヨウ素129、ルテニウム106、ストロンチウム90など62核種が、排出基準を上回って含まれています。

「関係者の御意見を伺う場」で、福島県漁連の野崎会長は、「われわれは、地元の海を利用して、その海洋に育まれた魚介類を漁獲することを生業としてきた。昨年の漁獲高は震災前の14%。これから増産に向けて舵を切ろうとしている。海洋放出に反対する。」と、表明しました。また、福島県森林組合、福島県農協中央会も明確に環境への放出に反対しました。浪江町議会では、海洋放出反対の決議がなされました。各自治体での説明・公聴会を開いて欲しい、住民の声ももっと聞いて欲しいという声が上がっています。メディアの世論調査では、福島県民の有権者の57パーセントが海洋放出に反対しています。

トリチウムの健康影響については専門家の意見は分かれています。安全だとは言い切れません。環境への放出ではなく、10万トン級の大型タンクへの保管やモルタル固化など、実績のある陸上保管の具合的な提案もあります。東電福島第一原発の敷地内の土捨て場にはタンク建設の場所はあるのです。海は世界に繋がっています。原発事故で計り切れない大量の放射性物質が海へ空中へ放出され、それは今も続いています。どうして、かろうじてタンクに貯めた汚染水をあえて海に流すことが許されるのでしょうか。

先日、主に福島県民からなる市民団体「これ以上海を汚すな!市民会議」が呼びかけた「福島原発事故によるタンク貯蔵汚染水の陸上保管を求める共同声明」は、4月26日現在で国内外337団体が賛同し、内閣総理大臣や経産大臣に送付しました。毎年福島県で大集会を開催している「原発のない福島を!県民大集会」実行委員会は、個人署名を集めています。FoEJapanなどが、国際署名と経産省へのパブリックコメントを書こうというキャンペーンを行っています。急いで海洋放出への道筋を決めてしまおうとしている安倍政権や東電の思惑を、出来うることは何でもやって、何とか止めたいと思います。皆さま、どうぞご協力をお願い致します。

今、私たちは新型コロナウィルスと向き合い、必死の努力を重ねています。人々が集うことや触れ合うことが難しくなっています。それは本当にさびしくて心細いことです。でもバラバラにされないように工夫しましょう。ネットや電話や手紙でつながり続けましょう。同じ時間に空を見上げたり、歌を歌ったり、相手を思い浮かべたりしましょう。「繋がり、助け合う」というこのシンプルなことが、人類が生き延びる鍵だと、原発事故の経験からつくづく思うのです。

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《メッセージ》青木初子さん(一坪反戦地主関東ブロック)

はいさい ぐすーよ ちゅい うがなびら
「平和といのちと人権を」の憲法集会のネット中継をご覧くださっているみなさん、日頃の沖縄のたたかいへのご支援に心から感謝申し上げます。一坪反戦地主関東ブロックの青木初子です。

ご承知のとおり1947年5月3日に憲法が施行されました。そして同じ1947年の9月に、国民の象徴となった天皇が「沖縄は25年ないし50年、あるいはそれ以上にわたってアメリカが統治すれば、アメリカだけでなく日本にとっても利益になる。日本国民は反対しないだろう」というメッセージを占領軍のマッカーサーに伝えました。そして、その天皇メッセージの通り、1952年に発効したサンフランシスコ講和条約で日本は独立し、沖縄は同時に結ばれた日米安保条約で27年間、米軍の統治下におかれました。米軍は「銃とブルドーザー」で、基地を強行建設し、キャラウエイ高等弁務官は「沖縄の自治は神話である」と言ってのける軍事優先の統治でした。

 現在、米軍統治下から放され憲法が適用されて48年、沖縄の民主主義・人権・自己決定権はどうなっているでしょうか。「沖縄の自治神話」は、今もそのまま、当てはまる状況ではないでしょうか。日米安保条約も地位協定も、もっと言えば、この憲法さえ、沖縄の参加がないまま国会で承認されたものです。しかし、圧倒的国民の支持をえている日米安保条約にもとづいて、70%以上の米軍基地は国土0.6%の沖縄におかれています。米軍基地は日本の国内法は適用外=治外法権です。また不平等な地位協定の特権に守られた米兵の事件事故も日本の捜査はおよびません。広大な米軍基地から派生する性暴力や事件・事故・環境汚染等は県民の命や暮らしを不安とともに危険にさらし続けています。日本のみなさんがいらない米軍基地は、沖縄もいらないのです。

「沖縄に寄り添ってできることは全部やる」とうそぶく安倍総理のもとで、辺野古の新基地反対の民意は踏みにじられ続けています。新型コロナウイルスの感染拡大防止の緊急事態宣言がだされ、沖縄県も独自の緊急宣言を出して、必死に取り組みはじめた矢先、さらには普天間基地から発がん物質を含む泡消火剤がドラム缶719本分が大量流出し、市中や西海岸を汚染し、その原因究明があきらかにされない状況のなかで、4月21日、防衛省は90mの軟弱地盤改良工事の設計変更申請を県に提出しました。90mに及ぶ軟弱地盤の改良工事は世界でも例がなく、工事に必要な作業船もないと言われています。また、専門家からは「このまま工事を進めれば、崩壊する危険性がある」と指摘されています。玉城デニー知事は、絶対容認しないと思いますが、河野防衛大臣は「普天間基地の一日も早い返還は国も県も同じなので、適切な判断を頂けるものと思います」と発言。これほど沖縄を馬鹿にしきった発言があるでしょうか。昨年12月に工期12年、工費は9300億円と大幅に修正し、世界一危険な普天間基地の返還は2020年から2030年半ば以降にずれ込み、「一日も早い危険性除去」は明らかに破たんしているのです。

これまでも沖縄県民は、県民投票や国政選挙で何度も辺野古新基地建設反対の民意を示してきました。が、政府は非暴力・不服従で反対している市民を弾圧し、法を捻じ曲げ違法な辺野古新基地建設を強行してきました。基地は、非常時には標的にされ、平時には性暴力を含むさまざまな基地被害を伴っています。「これ以上の基地はいらない」「辺野古新基地建設反対」という叫びも踏みにじられる沖縄は、他県と平等に扱われているでしょうか。さらに宮古・石垣の南西諸島には自衛隊基地が強行建設されて、沖縄は、まさに今、軍事要塞化されつつあります。

戦争に反対し、憲法改悪に反対しているみなさん、戦争につながる基地建設に反対し、引き続き辺野古の新基地建設阻止へむけてのご支援を心からお願いし、挨拶に変えます。「命こそ宝」をめざして、共にがんばっていきましょう! まんじゅい ちばらなやーさい!

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《メッセージ》山口二郎さん(安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合)

新型コロナウィルスが猛威を振るう中、憲法集会に市民が集まれないことは残念です。市民連合を代表して、ネットを通して憲法擁護の理念を共有する皆さんにメッセージを送りたいと思います。国民の生命、生活が脅かされている現実から、安倍晋三政権は目を背け、十分な対策を行っていません。与党の一部からは、これを機に憲法改正によって緊急事態条項を入れるべきだという声も上がっています。これこそ恥知らずの所業です。統治能力を持たない安倍政権に緊急事態対応の大権を与えることは、立憲主義と民主主義の破壊でしかありません。生活と仕事の危機において、政治の力が必要だということに、みんなが気づかされています。私たちの力で民主的な政府を作ることは、私たち自身の命を守ることにつながります。日本国憲法の基本理念は、このコロナ危機においても、一層輝きを増しています。憲法の理想を追求し、日本の政治を変えていかなければならないことを皆さんとともに確認したいと思います。これからの政治の行方は展望できない状態ですが、1年余りの内には必ず衆議院総選挙が行われます。そこに向けて、市民と野党の協力を強化し、国民の生命と生活を第一に考えるまっとうな政権を作り出すために、共に頑張りましょう。

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《閉会のことば》小田川義和さん(総がかり行動実行委員会共同代表)

 国会前からの5.3憲法集会ネット中継のおわりに、総がかり行動実行委員会の共同代表の一人、憲法共同センターの小田川から、行動の提起をかねて、申し上げます。
まずは、最後までご覧いただいた全国各地の皆さん、本当にありがとうございました。

コロナ感染の広がりのもとで、大規模な集会は持てませんでした。しかし、なかなか集会におこしいただけない方々にも、私たちの取り組みをご覧いただけた。災い転じての思いです。
私たちはこの数年、5月3日と11月3日に大規模な集会を開催し、憲法違反の集団的自衛権行使を容認の閣議決定の撤回、戦争法、安保法制の廃止を、と求め続けてきました。毎月19日に、同様の趣旨と時々の憲法の課題をテーマに、国会周辺で行動してきました。その行動をいつ再開できるのか、緊急事態宣言の延長という状況下では、明確に申し上げられません。再開は、ホームページなどでお知らせしますので、いましばらくお待ちください。

私たちは、どのような状況にあっても、安倍政権に9条改憲を断念させるまで、たたかいを止めることはありません。ネットでの取り組み、街頭でのスタンディング、ミニ集会など、可能な取り組みを、国会周辺で、全国各地でつづけます。引き続きのご協力を、心からお願いします。

 感染対策でも、暮らしや生業の応援でも、安倍政権には一貫性がなく、あまりも遅く、あまりにも規模が小さい、他国と比べても見劣りする、そう受けとめていらっしゃる方少なくないと思います。モリカケ、桜見る会などが明らかにした忖度政治では、コロナ危機には対処できません。安倍政権の退陣はその点でも、市民的な要求です。安倍政権への批判は、今だからこそ声を大きくしましょう。
コロナ・ウィルスへの不安などが、差別と偏見という心のウィルスを増殖し、社会に広げ、権力者がそれを利用し始めている、そのことへの恐れを少なくない皆さんがお持ちになっていらっしゃるのではないでしょうか。

 心のウィルスとのたたかいにも、力を寄せあいましょう。
フランスのマクロン大統領などが、コロナ・パンドミックの後の世界は、今とは異なる世界、経済的な利益よりも人が優先され、格差の是正や環境問題への取り組みを重視する世界だと、述べ始めています。構想される世界は、個人の尊厳の最重視を宣言する13条や、健康で文化的な暮らしの保障を政府の義務と規定する25条を持つ憲法、平和のうちに暮らす平和的生存権の理念を明記する日本の憲法をいかすことと、方向を同じくするのではありませんか。政府の一存で市民の人権を制約できる緊急事態条項の憲法明記を今言い出すことも、膨大な軍事費をつぎ込んで他国攻撃の武器を爆買いし続ける根拠ともなる自衛隊の憲法明記も、危機に便乗した火事場泥棒に外なりせん。私たちはこれまで以上に強く拒否すべきです。
その強い思いで、既に開始している改憲発議NOの緊急署名を手紙やSNSも活用して、広げてください。

今国会で提出の目標で取り組みを進めて下さい。草の根からの皆さんの取り組みが、コロナ禍の国会での憲法審査会の再稼働も、改憲論議も阻止し、安倍政権での改憲反対が過半数を置こえる世論をさらに強固していくことになります。

署名を軸に、草の根からの取り組みを粘り強く継続しましょう。
そのことを重ねて申し上げて、5.3集会での行動提起、締めの挨拶に変えます。

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《閉会のことば》小田川義和さん(総がかり行動実行委員会共同代表)

国会前からの5.3憲法集会ネット中継のおわりに、総がかり行動実行委員会の共同代表の一人、憲法共同センターの小田川から、行動の提起をかねて、申し上げます。
まずは、最後までご覧いただいた全国各地の皆さん、本当にありがとうございました。

コロナ感染の広がりのもとで、大規模な集会は持てませんでした。しかし、なかなか集会におこしいただけない方々にも、私たちの取り組みをご覧いただけた。災い転じての思いです。

私たちはこの数年、5月3日と11月3日に大規模な集会を開催し、憲法違反の集団的自衛権行使を容認の閣議決定の撤回、戦争法、安保法制の廃止を、と求め続けてきました。毎月19日に、同様の趣旨と時々の憲法の課題をテーマに、国会周辺で行動してきました。その行動をいつ再開できるのか、緊急事態宣言の延長という状況下では、明確に申し上げられません。再開は、ホームページなどでお知らせしますので、いましばらくお待ちください。

私たちは、どのような状況にあっても、安倍政権に9条改憲を断念させるまで、たたかいを止めることはありません。ネットでの取り組み、街頭でのスタンディング、ミニ集会など、可能な取り組みを、国会周辺で、全国各地でつづけます。引き続きのご協力を、心からお願いします。

 感染対策でも、暮らしや生業の応援でも、安倍政権には一貫性がなく、あまりも遅く、あまりにも規模が小さい、他国と比べても見劣りする、そう受けとめていらっしゃる方少なくないと思います。モリカケ、桜見る会などが明らかにした忖度政治では、コロナ危機には対処できません。安倍政権の退陣はその点でも、市民的な要求です。安倍政権への批判は、今だからこそ声を大きくしましょう。

コロナ・ウィルスへの不安などが、差別と偏見という心のウィルスを増殖し、社会に広げ、権力者がそれを利用し始めている、そのことへの恐れを少なくない皆さんがお持ちになっていらっしゃるのではないでしょうか。

心のウィルスとのたたかいにも、力を寄せあいましょう。
フランスのマクロン大統領などが、コロナ・パンドミックの後の世界は、今とは異なる世界、経済的な利益よりも人が優先され、格差の是正や環境問題への取り組みを重視する世界だと、述べ始めています。構想される世界は、個人の尊厳の最重視を宣言する13条や、健康で文化的な暮らしの保障を政府の義務と規定する25条を持つ憲法、平和のうちに暮らす平和的生存権の理念を明記する日本の憲法をいかすことと、方向を同じくするのではありませんか。政府の一存で市民の人権を制約できる緊急事態条項の憲法明記を今言い出すことも、膨大な軍事費をつぎ込んで他国攻撃の武器を爆買いし続ける根拠ともなる自衛隊の憲法明記も、危機に便乗した火事場泥棒に外なりせん。私たちはこれまで以上に強く拒否すべきです。
その強い思いで、既に開始している改憲発議NOの緊急署名を手紙やSNSも活用して、広げてください。

今国会で提出の目標で取り組みを進めて下さい。草の根からの皆さんの取り組みが、コロナ禍の国会での憲法審査会の再稼働も、改憲論議も阻止し、安倍政権での改憲反対が過半数を置こえる世論をさらに強固していくことになります。

署名を軸に、草の根からの取り組みを粘り強く継続しましょう。
そのことを重ねて申し上げて、5.3集会での行動提起、締めの挨拶に変えます。

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許すな!安倍改憲発議2020平和といのちと人権を!

5・3憲法集会in国会正門前

宣言

いま、新型コロナという目に見えないウィルスが私たちの社会を覆っています。
4月7日、安倍政権によって7都府県に、次いで16日、全都道府県に「緊急事態宣言」が発令されました。しかし、いまなお新型コロナウィルスの感染拡大は止んでおりません。ひとびとはそれぞれの場でかけがえのない「いのちの確保」に力をつくしています。

本日、5月3日は73年目の日本国憲法施行記念日です。
日本の市民運動は長年にわたって、この日に記念集会を開催し、憲法を守り生かす決意を固めあってきました。とりわけ2015年からは文字通りの「総がかり行動」として、大規模な集会が開催され、反戦・平和・改憲反対の市民運動の支柱となってきました。

私たちはこの新型コロナウィルス感染の拡大の中で、今回、東京臨海防災公園で予定した大集会の中止を決断しました。しかし、私たちは、この運動の伝統を受け継ぎ、本日、国会正門前からのインターネットによる中継の実施によって全国の市民の皆さんに私たちの思いを発信します。

2017年5月3日、安倍首相は憲法9条の条文は残して、新たに自衛隊の根拠規定を書き込むという新しい改憲案を提案しました。これは2015年に強行した「戦争法」による集団的自衛権の行使を合憲化し、日本が米軍とともに世界のいたるところで戦争ができる国となることをめざすものです。

以来、全国の市民運動は立憲野党と連携し、安倍首相の改憲の企てに反対し、3年にわたって、改憲発議を阻止してきました。安倍首相は自らの任期の2021年9月までに改憲を実現しようと画策しています。しかし安倍首相に残された期限は極めてタイトです。追い詰められているのは安倍首相の側にほかなりません。

安倍首相と与党改憲派は緊急事態宣言発令の最中に、まったく筋違いの緊急事態条項改憲の必要性まで広言し、自民党の改憲4項目を正当化しながら、憲法審査会の始動を狙っています。これは許しがたい火事場泥棒的な仕業です。

この未曽有のコロナ危機に際して、強権的で独善的な安倍政権の施策は失策を繰り返し、有効な対処ができていません。にもかかわらず、政府や一部メディアからは、過剰な同調圧力が繰り返されています。

私たちはこうした危険な安倍政権の下であるからこそ、緊急事態宣言のさ中でも平和・人権・民主主義という憲法の基本原理を守り、生かす課題を大切にします。いまこそ日本国憲法の真価が問われています。

すべての市民それぞれが可能なかぎり知恵を絞って行動し、「物言わぬ市民」になることを拒否しましょう。そして、このコロナ禍が終息していたら、今年の11月3日の憲法公布記念日にはより大規模な憲法集会を必ず実現しましょう。全国の市民は連帯し、安倍改憲発議を阻止しましょう。権力私物化、改憲暴走の安倍政権を倒し、政治を変えましょう。ここにこそ、私たちの希望があります。

以上、私たちは2020年の憲法記念日にあたり、国会議事堂の正門前から、宣言します。

2020年5月3日
2020平和といのちと人権を!5.3憲法集会実行委員会

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[図書紹介]改憲阻止闘争現場からの最新レポート「対決!安倍改憲」

高田健著(梨の木舎)

池上 仁(会員)

 多くの方がご存知のように、当会事務局長高田健さんは、2000年1月の憲法調査会(その後憲法調査特別委員会、憲法審査会と委員会名が変わる)発足以来、その審議をほぼ欠かさず傍聴し、折々にその内容と問題点を私たちに届ける斥候の役割を果たしてきた。並行して奥付の著者履歴にあるように一貫して9条改憲反対運動の最先頭で奮闘してきた。その高田さんの最新刊だ。

冒頭書きおろしの「安倍独裁改憲=ショック・ドクトリンとのたたかい」はコンパクトな最新の現状分析である。折しも国会で焦点化している黒川検事長の任期延長問題、桜を見る会疑惑、さらには自死に追い込まれた近畿財務局・赤木俊夫さんの遺書公開で再燃した森友疑惑に加えて新型コロナウイルス対応の決定的遅れ(というか無策)により安倍政権は窮地に追い込まれている。野党の分断に成功し「改正新型インフルエンザ等対策特別措置法」を成立させたが、私権を制限する「緊急事態宣言」は大きな危険を孕んでいる。改憲派は自民党の改憲4項目にある緊急事態条項導入論につなげようとしている。

検察の私物化を図る黒川検事長の定年延長問題には先例がある。2013年、内閣法制局長人事で法制局勤務経験の全くない小松一郎を任命し、2015年戦争法強行成立の布石とした。また、2014年には「国家公務員法等の一部を改正する法律」を成立させ、国家公務員の幹部職員人事を官邸が一元管理する内閣人事局の体制が作られた。官僚に「忖度」を迫る体制ができたのだ。NHK人事への介入も行われた。経営委員に超右翼的な人物を据え、そこで会長に選ばれた籾井勝人は露骨に安倍追従の姿勢を見せ、機構改革を行い、NHKの政治ニュースは政府広報に堕した。日銀総裁や最高裁判事任命でもこの手法は使われている。安倍に抱き込まれた大手メディア幹部はジャーナリズムの魂を売り渡した感がある。

しかし、こうした安倍独裁政権が生まれた要因の最大のものは小選挙区制である。1選挙区1人しか立候補できない下では党の「公認」権を握る総裁の権限は決定的だ。党の人事や政治資金の権限と相俟って総主流派体制を作り上げ、党規約を変えて総裁3選を手に入れた。

にもかかわらず「安倍長期政権は壮大な空洞」である。アベノミクス、地球儀を俯瞰する外交、靖国参拝、拉致問題解決、北方領土返還、日米貿易交渉等々何一つ前進はなかった。「日本会議」等の安倍支持勢力の苛立ちをなだめるためにも改憲のリップサービスを繰り返さざるを得ない。2017年の安倍改憲案の提案時には「2020年までに」、2019年参院選後は「任期中(2021年)の改憲実現」と次第に追い込まれていく。しかし、安倍政権に対する怒りが噴出している現状があり、またスケジュール的にもこれは極めて困難だ。

そして安倍の前には2014年の集団的自衛権に関する政府見解の憲法解釈の変更に端を発し、巨大なうねりとなった戦争法反対の闘いの過程で質量ともに大きく成長した市民運動の壁が立ち塞がる。国会周辺のみならず全国で繰り返し繰り返し展開された集会・デモ、署名運動、創意を凝らしたスタンディング・宣伝・・・。それは地域での党派を超えた共同闘争を促し、国会内で奮闘する野党を励まし、さらには選挙における立憲野党統一候補擁立の努力となり、2019年参院選では改憲派が3分の2を取ることを阻止した。改憲派は次の衆院選で3分の2を大きく上回る議席を確保することによって一部野党を揺さぶり分裂させて取り込む以外に手立てはない。

来るべき衆院選のカギは289の小選挙区で野党が魅力ある共通政策を勝ち取り、統一候補を立てて自公改憲勢力を打ち負かすことができるかどうかだ。「改憲を阻止して安倍政権を倒すか、安倍政権を倒して改憲を阻止するか。情勢の大変化を示す潮目が見えてきた」と締めくくる。

強まり広がる日本と韓国市民運動の連帯

2019年12月に韓国で開催された「北東アジアの平和共存に向けた日韓平和フォーラム」で高田さんが行った報告「日韓市民の連帯運動の前進のために―安倍政権と日本の市民運動」が収録されている。2015年、高田さんは画期的な戦争法制反対の闘いと20年以上に及ぶ改憲阻止の闘いを称えて「第3回李泳禧賞」を受賞した。軍事独裁政権を批判し抜いた言論人を記念する栄誉ある賞だ。徴用工補償問題に端を発したホワイト国認定の除外、韓国のGISOMIAの破棄通告と破棄の一時凍結、「平和の少女像」をめぐるあいちトリエンナーレ「表現の不自由展・その後」のテロ予告にまでエスカレートした妨害による中止(結果的には中断)、文化庁による交付決定済みの助成金の取消し(その後減額の上交付に変更)等の流れで日本では嫌韓・反韓言説が猖獗を極める中開催されたフォーラムの意義はこの上なく大きい。

はじめに総がかり行動について説明する。「日本の平和運動は様々な理由で50年以上にわたり分岐・対立してきた」実行委員会を構成する3団体が対立を乗り越え共同して5年余り活動を継続していることは画期的なこと。共同を生み出したのは安倍政権の下で急速に進む改憲の動きと「戦争する国」への変化に対する危機感の共有である。その意味では安倍政権がこの運動を生み出したともいえる。

(以下前項の安倍独裁改憲との闘いの経過と課題を示した上で)2019年7月に各界77人の声明「韓国は『敵』なのか」が出され8404名の賛同を得るなどしたが、「政府やマスコミが嫌朝、嫌韓を煽る中で日本社会の中での日朝・日韓市民の連帯を目指す運動の力は、この情勢に影響を与えるほどには大きくない」と率直に語りながら、市民連合が参院選に際し13項目の政策合意の中で「東アジアにおける平和の創出と非核化の推進のために努力し、日朝平壌宣言に基づき北朝鮮との国交正常化、拉致問題解決、核・ミサイル開発阻止に向けた対話を再開すること」を挙げた、これが野党各党の共通理解にならなければならない、とする。総がかり行動実行委員会などの大きな集会に韓国市民運動の代表が招かれキャンドル革命のキャンドルが掲げられるなど、日常的な日韓の市民運動の連帯が形成されるようになっている。当面、両国政府が対立を深める中、日韓の市民の連帯、民衆連帯が新しい歴史を作る原動力となる。
日本での「韓国は『敵』なのか」声明に呼応して10月に韓国の各界105名が「安倍政権の対朝鮮半島政策を批判し、転換を求める声明」を出された。声明の基調に大いに賛同し感謝するが、一点明仁天皇・徳仁天皇への評価について感じる違和感について敢えて言っておきたい。明仁前天皇の「平和主義」を称賛する声は日本にも少なからずあるが、これは疑問だ。彼の即位以来の言動は裕仁天皇時代の戦争責任を不問に付しそのまま継承されている。また「天皇の公的行為(象徴的行為)」が拡大され「象徴天皇制」が強化されている。安倍が天皇制を最大限に政治利用している。文喜相国会議長が「天皇の謝罪」を要求し、日本政府の抗議を受けて撤回・謝罪したことも天皇評価のコインの裏表だろう。私たちは時の政権に政治利用されている天皇の権威にすがって政治変革を図る道は取らない。

これまでの護憲運動が「一国主義的な運動」に偏りがちだったことは否めない。アジアの平和なくして日本の平和はない。憲法前文に明記された国際主義の精神を改めて受け止め、東アジアの市民と連帯して東北アジアの非核平和・共生を実現するため奮闘する。

生々しい現場実況中継

2章・3章は高田さんが「週刊金曜日」に隔週連載中の「STOP!9条改憲」2017年10月から2020年3月までの分を収録している。政局の動き・世論の動向をにらみながら執拗にあの手この手で改憲発議を狙う安倍政権とこれを撥ね返す立憲野党・市民運動とのせめぎ合い、目まぐるしくも緊張感ある展開が活写されている。

コロナ後・ポスト安倍を見据えて

ラジオの「高橋源一郎の『飛ぶ教室』」がイタリアの作家パオロ・ジョルダーノの「コロナ時代の僕ら」を紹介していた。「“元”に戻るとしてあの“元”でいいのか」という言葉が印象的だった。いつ終息するのか先が見えないコロナ禍だが、コロナ終息後の社会は単に復旧するだけではいけない、「元に戻したくないもののリストを作ろう」と呼びかけているという。3.11で同様の思いに駆られたことを思い出す。
内田樹は、立憲デモクラシーを守るために安倍が意図的に貶めてきた国会の威信(それが行政府への権限集中、選挙での低投票率につながる)を取り戻すことが必須、そのために①政党の得票数と議席数が相関する選挙制度、②憲法違反の7条解散を廃し、解散条件を憲法69条に定める通り、衆院で不信任決議案が可決されるかまたは信任決議案が否決された場合に限定すること、を提言している(「生きづらさについて考える」-毎日新聞出版-)。これもまた元に戻さないために必要なことのひとつだろう。

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>検察庁法改正案を束ね法案から分離し撤回すること等を求める法律家団体の緊急声明

2020年5月20日

改憲問題対策法律家6団体連絡会
社会文化法律センター共同代表理事 宮里 邦雄
自由法曹団 団長 吉田 健一
青年法律家協会弁護士学者合同部会 議長 北村  栄
日本国際法律家協会 会長 大熊 政一
日本反核法律家協会 会長 佐々木猛也
日本民主法律家協会 理事長 右崎 正博

1.はじめに
政府・与党は、検察庁法の一部改正を含む国家公務員法等の一部を改正する法律案の今国会の成立を見送るとしている。検察庁法改正案に対する国民の強い批判を受けての措置であることは明白であり、このことは国民の運動の大きな成果である。

しかしながら、政府・与党は検察庁法改正案の成立をあきらめたわけではなく、単に秋の臨時国会まで先送りしたに過ぎない。
私たちは、あらためて、政府・与党に対し、
第1に、国家公務員法等の一部を改正する法律案(束ね法案)から、「検察庁法の一部改正」案(第4条関係)を分離すること。
第2に、同法案の勤務延長(定年延長)、役職定年延長に関する特例部分
をすべて削除するか、同法案全体を撤回すること。
第3に、黒川弘務東京高検検事長の定年延長を決めた閣議決定を撤回すること。
を強く求めるものである。

2.検察官の独立を奪い法の支配を崩壊させる改正法案
そもそも、検察庁法で定められている検察官の定年に関して、国家公務員法の定年延長規定が適用されないことは、その立法当初から揺るぎない解釈であり、その運用は厳格に行われてきた。にもかかわらず、今回、国家公務員法と同様に政府の裁量による検察官の定年延長規定を検察庁法に盛り込んだうえ、これを国家公務員全体の定年延長を定める国家公務員法改正と一括法案として提出したこと自体に重大な問題がある。

このような検察庁法改正は、政治権力が検察官の人事に介入し、政権にとって意に沿わない検察の動きを封じ込め,政権関係者の違法を摘発し刑事責任を追及する道を閉ざす事態を招くものである。それは、検察官の独立性及び公平・中立性を損い、さらに検察組織に対する国民の信頼を大きく揺がすものである。政府の裁量による検察官の定年延長規定を盛り込んだ検察庁法改正案は、少なくとも特例部分を削除するか、廃案以外にないのであって、これを国家公務員法等改正案と一体のまま継続審議とすることは、断じて許されるものではない。

したがって、直ちに、国家公務員法等改正案から検察庁法改正案を分離して審議することを強く求める。そのうえで、検察官の独立を奪う特例規定をすべて削除するか、法案自体を撤回(廃案)とすべきである。

3.黒川弘務東京高検検事長の定年延長の閣議決定の撤回を求める

また、安倍政権は、本年1月31日、黒川弘務東京高検検事長の勤務を本年8月7日まで延長する閣議決定を行った。この閣議決定は、検察庁法22条、同法32条の2に違反し、国家公務員法81条の3は検察官には適用されないとする一貫した立法者意思や政府解釈にも反するもので、明確に違法である。法秩序の回復のために、閣議決定を直ちに撤回し、黒川弘務氏は速やかに退官すべきである。

4.以上のとおり、検察庁法改正案の問題は、今国会の審議見送りで許される問題ではない。政府・与党は国民各界の批判を真摯に受け止め、国家公務員法等の一部を改正する法律案から検察庁改正案を分離した上で、同法案の特例部分を削除するか、法案自体を撤回こと、並びに、黒川弘務検事長の定年延長を決めた閣議決定を撤回することを、引き続き強く求めるものである。
以上

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