私と憲法225号(2020年1月25日号)


今年こそ正念場~改憲発議阻止の行動を全国の草の根で

1月20日、第201通常国会の開会日にあたり、安倍首相は40分ほどの空疎な施政方針演説を行い、その結びでこう述べた。

国のかたちを語るもの。それは憲法です。未来に向かってどのような国を目指すのか。その案を示すのは、私たち国会議員の責任ではないでしょうか。新たな時代を迎えた今こそ、未来を見つめ、歴史的な使命を果たすため、憲法審査会の場で、共に、その責任を果たしていこうではありませんか。
世界の真ん中で輝く日本、希望にあふれ誇りある日本を創り上げる。その大きな夢に向かって、この7年間、全力を尽くしてきました。夢を夢のままで終わらせてはならない。新しい時代の日本を創るため、今日、ここから、皆さん、共に、スタートを切ろうではありませんか。

酷い話だ。
首相は憲法の立憲主義や3権分立などの原則について全くわかっていない。この演説に限らず、安倍晋三首相は年頭から各所で改憲の発言を繰り返している。行政府の長である首相が「自分の手で改憲を実現する」と言い立て、国権の最高機関である国会に設けられた機関である憲法審査会での議論に干渉することが3権分立の原則、立憲主義に反する所業であるばかりか、憲法99条に反する、最高法規の憲法に対する「下克上」の所行だとの各界から繰り返し指摘を受けているが、全く懲りない。

このところ、安倍首相のもとで国家財政の私物化、霞が関など国家機関の私物化が目に余るが、これは安倍首相による憲法の究極の私物化でもある。
自民党は1月7日、憲法改正を訴える2種類のポスターを発表した。同党が改憲に特化したポスターを張り出すのは初めてのことだ。いよいよ必死で改憲に乗り出したようだ。キャッチコピーはともに「憲法改正の主役は、あなたです」。この文言は安倍首相の提案だという。

1月6日の「年頭記者会見」では「憲法改正を私自身の手で成し遂げていくという考えには全く揺らぎはない。しかし、同時に、改憲のスケジュールについては、期限ありきではない。まずは通常国会の憲法審査会の場において、与野党の枠を越えて、活発な議論を通じて、国民投票法の改正はもとより、令和の時代にふさわしい憲法改正原案の策定を加速させたい」とのべた。
自民党総裁の任期がはっきりしている「私自身の手で」というのは、まさに「スケジュールありき」ではないか。

自民党は1月16日、憲法改正の機運醸成に向けた夜間講座を党本部でスタートさせた。この日は安倍晋三首相が党総裁として登壇。1000人以上の参加者を前に「憲法にしっかりと私たちの自衛隊を明記しよう。そして憲法論争に終止符を打とうではないか」と述べ、9条改正の必要性を訴えた。講座名は「日本の近現代史から学ぶ『憲法』」。党中央政治大学院(院長・中谷元・元防衛相)が主催する。来年2月まで、24回にわたって有識者や作家が憲法をテーマに講演する予定。自民党は日本の近代史における憲法問題から何を学ぼうというのか。よもや、「教育勅語にもいいところがある」などという自民党幹部たちの時代錯誤の主張のように、「大日本帝国憲法にも学ぶところがる」などと言うのではあるまい、危惧されるところだ。そして、院長が中谷元という、どちらかといえば党内リベラルよりの人物をあて、改憲挙党態勢ですすめようとしているところも見逃せない。

1月16日、公明山口代表記者会見で「(自民党の)安倍総裁が憲法改正に意欲を示していることは承知している」と説明した。記者団が「総理は『私自身の手で憲法改正を成し遂げたい』と発言している。総理大臣としてめざしているとの意欲に聞こえる」と再質問すると、山口氏は「そういう風に聞こえるはずはない」と反論。語気を強めて「憲法のどこに、総理大臣が発議したり、採決したりということが書いてあるのか。発議権は国会にしかない」と主張し、憲法上行政府の長である首相には、憲法改正の権限がないことを改めて強調した。
これは記者の質問に反論する形をとった、安倍首相に対する不満の表明だ。

安倍首相自身が描いている改憲スケジュールは「任期中」という期限があるために極めてタイトなものだ。
すでに5国会にわたって継続審議になっている改憲手続法(国民投票法)の自民党改定案は、投票の利便性をはかるために先般実行された公選法改正に並べて同法を改定するというもので、野党各党や日本弁護士連合会などが要求する同法の問題点の抜本的改定とはほど遠い。自民党はこの改定をできるだけ早期に成立させ、第9条に「自衛隊」を明記するなどの4項目改憲案を憲法審査会に「提示」し、改憲論議を始めたいと考えている。

そして2021年の通常国会までに改憲原案をまとめ、国会で両議院の総議員の3分の2以上の賛成で採決し、改憲の発議をして、国民投票を実施するというシナリオを描いている。

解散・総選挙

「桜」疑惑、「カジノ」疑惑など権力の私物化と腐敗が相次いで暴露され、さらに自衛隊の中東派兵まで絡んでくる中で、通常国会は冒頭から波高しだ。
憲法調査会以来、与野党が合意してきた運営の在り方の原則、落ち着いた政治環境の下で、党利党略を排して憲法問題が議論されるべきなどという前提が存在しない。この通常国会においても野党が憲法審査会の再開においそれと同調できないのは当然のことだ。与党内でも、公明党や石破茂など自民党の一部に逡巡がみられる。

今年中にも予想される衆議院解散、総選挙はその最大の山場だ。解散の次期には諸説があるが、一般的には「2020五輪」の後と言われる。そこで自民党、あるいは改憲派が改憲を可能にする議席、3分の2を大きく上回るような大勝ができるか、どうか。289の小選挙区での市民と野党の結束したたたかい如何にかかっている。

先の参院選で改憲派は3分の2を割った。回復するには野党を大きく分裂させるしかない。3分の2をぎりぎり上回る程度では国民投票の勝利は確約できないだろう。

世論はいま改憲を求めてはいない。
時事通信の1月の世論調査で安倍政権下での憲法改正の是非を尋ねたところ、「反対」が45.9%に上り、昨年8月の前回調査より4.6ポイント増加した。「賛成」は0.9ポイント減の31.2%だった。

「安倍改憲」に距離を置く層が多いことが示された形だ。先に紹介したように、自民党のキャッチフレーズは「憲法改正の主役は、あなたです」だが、「憲法改正を望んでいるのは安倍晋三だけです」に替えるべきだ。

年頭から、安倍9条改憲NO!の3000万署名運動に代わって「改憲発議反対の緊急署名運動」が呼びかけられ、すでに各地で運動が始まっている。これは改憲反対の課題の歴史的正念場に取り組む世論喚起の運動だ。

呼びかけはこう述べている。

「いま、安倍改憲のスケジュールにとって決定的な山場を迎えました。私たちは安倍首相らによる改憲暴走の動きに痛打を浴びせて、安倍改憲と「戦争する国」の企てを阻止しなくてはなりません。この重大な時期に際し、全国市民アクション実行委員会は、従来取り組んできた署名にかえて、あらためて「安倍9条改憲反対!改憲発議に反対する全国緊急署名」運動への取り組みを呼びかけます」。

新しい署名運動を柱にして、安倍改憲発議反対の世論を全国で作っていこう。その力を背景に立憲野党と市民の共同を強化し、来る総選挙で改憲発議を阻止できる3分の1以上の議席を必ず勝ち取ろう。そのことこそが安倍内閣総辞職、改憲発議を阻止するたたかいの大きな1歩となるに違いない。
(事務局・高田健)

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要望書

河野太郎 防衛大臣 殿
2019年12月19日

改憲問題対策法律家6団体連絡会           
社会文化法律センター:共同代表理事 宮里 邦雄
自由法曹団団長:吉田 健一
青年法律家協会弁護士学者合同部会: 議長 北村  栄
日本国際法律家協会:会長 大熊 政一
日本反核法律家協会:会長 佐々木猛也
日本民主法律家協会:理事長 右崎 正博

要請書

1 要請の趣旨

(1)自衛隊の護衛艦を、オマーン湾、アラビア海北部、イエメン沖のバベルマンデブ海峡に派遣する防衛大臣命令を発令しないこと。
(2)現在、海賊対処任務でジブチに派遣されている自衛隊の哨戒機を、上記海域に派遣する防衛大臣命令を発令しないこと。

2 要請の理由

政府は、防衛省設置法第4条1項18号の「調査・研究」を法的根拠に、自衛隊のヘリコプター搭載可能な護衛艦1隻をオマーン湾、アラビア海北部、イエメン沖のバベルマンデブ海峡に派遣することを閣議決定し、現在、ジブチで海賊対処の任務に当たっているP3C哨戒機2機のうち1機を上記海域に派遣するとしている。
しかし、以下に述べるように、「調査・研究」を法的根拠に自衛隊を海外に派遣することは、憲法9条の平和主義及び民主主義の観点から許されないし、軍事的緊張状態にある中東地域に自衛隊を派遣することは、自衛隊が紛争に巻き込まれ、武力行使の危険を招くものであり、憲法9条の平和主義に反するものである。

(1)法的根拠を防衛省設置法の「調査・研究」に求めることの問題

政府は、今回の自衛隊派遣の目的を情報収集体制の強化だとし、その法的根拠を防衛省設置法第4条1項18号の「調査・研究」としているが、この規定は防衛大臣の判断のみで実施でき、しかも、条文は抽象的で、適用の例示もないことから拡大解釈の危険が指摘されてきたものである。

憲法9条が「戦力」の保持を禁止し、自衛隊の違憲性が指摘される中で制定された自衛隊法は、自衛隊の任務・行動及び権限を第6章と第7章で個別に限定列挙しており、こうした自衛隊の任務・行動については一定の民主的コントロールの下に置いている。これに対して、今回の自衛隊派遣の根拠とする「調査・研究」の規定は、自衛隊の「所掌事務」を定めた組織規程であって、どのような状況で調査・研究を行うかなど、その行動及び権限を何ら具体的に定めていない。そのため、派遣される自衛隊の活動の内容、方法、期間、地理的制約、装備等については、いずれも白紙で防衛大臣に委ねることになり、このことは、閣議決定で派遣を決定したとしても、本質的に変わらない。

また、自衛隊の海外派遣という重要な問題については、本来、国会の関与とチェックが必要であるが、それも一切ないままで、しかも、臨時国会閉会後のタイミングで閣議決定を行うことは、民主主義の観点から許されない。

(2)自衛隊の海外での武力行使・戦争の現実的危険性

政府が、自衛隊を派遣するオマーン湾を含むホルムズ海峡周辺海域、イエメン沖のバベルマンデブ海峡は、軍事的緊張状態が続いており、米軍を主体とする「有志連合」の艦艇が展開している。しかも、日米ともに「緊密な連携」と「情報共有」を明言していることから、派遣される自衛隊が形式的に「有志連合」に参加しなくても、実質的には近隣に展開する米軍などの他国軍と共同した活動は避けられなくなり、以下のような憲法9条に違反する武力行使・戦争の危険がある。

ア 自衛隊が収集した情報は、米国をはじめ「有志連合」に参加する他国の軍隊とも共有することになるため、緊張の高まるホルムズ海峡周辺海域で、軍事衝突が起こるような事態になれば、憲法9条が禁止する「他国の武力行使との一体化」となる恐れがある。

イ 行動中に、日本の民間船舶に対して外国船舶(国籍不明船)による襲撃があった場合、海上警備行動を発令できるとしているが、その場合、任務遂行のための武器使用や強制的な船舶検査が認められていることから、武力衝突に発展する危険がある。

ウ 2015年に成立した安保法制の下での危険性

  1. 軍事的緊張状態の続くホルムズ海域周辺海域に展開する米軍に対する攻撃があった場合、自衛隊は、米軍の武器等防護を行うことが認められており、自衛隊が米軍と共同で反撃することで、米国の戦争と一体化する恐れがある。
  2. こうした事態が進展し、ホルムズ海峡が封鎖されるような状況になれば、集団的自衛権行使の要件である「存立危機事態」を満たすとして、日本の集団的自衛権行使につながる危険がある。
  3. 政府は、ホルムズ海峡に機雷が敷設されて封鎖された場合、集団的自衛権の行使として機雷掃海ができるとしているが、戦闘中の機雷掃海自体が国際法では戦闘行為とされており、攻撃を誘発する恐れがある。
(3)自衛隊員の生命・身体の危険性

「調査・研究」を根拠に派遣された場合の武器使用権限は、自衛隊法第95条の「武器等防護のための武器使用」となるが、その場合の武器使用は、厳格な4要件で限定されており、危険な船が接近した場合の停船射撃ができないことから、防衛省内からも「法的に丸腰に近い状態」との声が出ており、派遣される自衛隊員の生命・身体を危険に晒すことになる。

3 結論

以上のように、今回行おうとしている自衛隊の中東派遣の閣議決定は、憲法9条の平和主義、民主主義に違反する違憲なものであり、憲法尊重擁護義務(憲法99条)を負う防衛大臣として、違憲の命令を出すことのないよう求めるものである。
以上

*2019年12月27日、日本弁護士連合会は「中東海域への自衛隊派遣に反対する会長声明」を出しています。

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第141回市民憲法講座:臨時国会での憲法論議と、今後の改憲動向

高田健さん(市民連事務局長、総がかり行動共同代表)

(編集部註)12月21日の講座で高田健さんが講演した内容を編集部の責任で要約したものです、要約の責任はすべて本誌編集部にあります。

国際的なつながりの中で生かす日本国憲法

今日は韓国のKBSのクルーのみなさんに来ていただいていて、私はすごく大事なことだと思っています。実は私は今年8月から3回ほど韓国を訪ねています。どうしてそんなに韓国に行くのかという話ですが、日本国憲法というのは実はあまり強調されないですが非常に国際主義的な憲法だと私は思っています。この憲法を活かしたり壊されることから守る運動は国際的なつながりの中で考えていく必要があって、そういうことなしにはこの憲法を本当に活かすことはできないと最近は痛切に思うようになりました。若い頃から私も憲法の問題に関わっていますけれども、当時はあまり国際的なことについて憲法の運動では語られないことが多かった。それは「日本国憲法」というテーマですから、どうしても国内の運動が多かったような気がして、そうじゃない方もいらっしゃったかもしれませんけれども、私の周辺ではそうでした。

でもいま考えると、これはあまり正しいことじゃないなと思っています。やっぱりこの憲法は、アジアの人たちと一緒に考えながら憲法を活かしていくことがすごく大事です。もともとこの憲法は先の15年戦争の結果生まれたわけです。そういう意味では憲法9条も、アジアの人たちに対する日本の国の公約と言われていて、本当にそう思います。

3回の韓国訪問を簡単に紹介します。8月15日、日本は敗戦の日ですが韓国では光復節です。その日は韓国の大統領府の前にある光化門の前に10万の韓国市民が集まって、そこで叫んだことは安倍政権に対する批判です。今日の日韓関係をここまで悪くしてきた安倍政権に対して韓国の市民が非常に怒りを感じている。そこで私も何分間かのスピーチをしたのですけれども、そういう10万の人たちと交流をしました。それから11月に行ったときはYMCAというキリスト教関係の団体の集まりです。アジアのYMCAのみなさんと、アジア9ヶ国から市民を招いてフォーラムを行い、ここでこれからアジアの平和をどうしていこうかという議論をしました。この中の非常に重要なテーマで、安倍さんがいま変えようとしている日本国憲法を変えさせてはならない。アジアの人々の共通した願いとして、この日本の憲法改悪に反対する運動に連帯していこうという決議文を含めて行われました。香港の人も来ている、そういう会合でした。

そして12月の初めの会議は、これはちょっと変わっていました。韓国の地図で東の端の方、日本海-韓国では「東海」といいますけれども、そこに面している江原道(カウォンド)、そこの県庁所在地の春川(チュンチョン)、「冬のソナタ」というと日本の方はよくわかりますよねと韓国の方はいわれますが、実は私はあまりわからない。招請する中心になっていたユンさんという大学の先生が、「ヨン様ではなくてユン様だ」ということを乱発する非常に面白い先生でした。この会議の特徴は、江原道という自治体とその中心の春川市のふたつが主催した集会です。日本ではこういうのはないな、とつくづく思いました。こういう平和フォーラムです。日本からは100人以上の市民が参加してその2つの自治体が主催して、中心は大学の先生の「ユン様」、そういう集会に出ました。重要なテーマとして韓国は38度線がありますね。DMZ-非武装地帯といいますけれども、この非武装地帯はずいぶん長い間そうなっているものだから、珍しい動物や植物がいっぱいいる非常に自然環境としても重要な場所らしいのです。南北が双方、春川市では30万人近い若者たちがお互いに銃口を向けあっているという非常に緊張した状態です。世界の中でも冷戦の残りがいまだにアジアにある、このDMZと日本の平和憲法を世界遺産にしようではないかという、そういう自治体の運動です。私はびっくりしました。韓国の人たちは自分たちのDMZの問題だけではなくて、日本の平和憲法のことも考えながら、こうした運動をしていらっしゃる。そこを2泊3日で歩いてきました。

今年後半の韓国の人々との交流は大変有意義だったけれども、私たちの市民連絡会も総がかり行動実行委員会も、この何年か北東アジアの平和を考える上で韓国の人たちとの連帯を非常に大事にしています。5月3日の大きな憲法集会があったりすると韓国の市民団体を招く、11月3日の憲法集会でも韓国の各市民団体の代表が6人くらいに来て発言していただく。そういうことをこの間やっています。どうして国際的な活動が大事なのかということを日本国憲法の前文から読んでみます。

「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。」。

憲法前文ではこう言っています。いまの安倍さんのことを思い出してください。本当に違いますよね。お隣の韓国の人はよく言うけれども、地球の上の土地は引っ越しできない。日本と韓国はお隣だから、引っ越しすることのできない両国の民衆あるいは政府が仲良くしていく以外にないじゃないかと。私も本当にそう思います。この憲法を考える上で私はこうした国際主義ということも大事な原則のひとつとして頭に置きながら今日もお話しをしてみたいと思います。

改憲をめぐる「新しい段階」のこと

 この前の国会-第200回臨時国会が終わって、実は安倍晋三の改憲についての方針が大きく変わってきていることに気がつきます。安倍晋三は2017年5月3日に、2020年までに憲法を変えると言いました。とりわけ憲法9条を中心とする安倍さんが嫌いな部分を変えるといってきましたが、今回は2021年と1年先延ばしにしました。どう見ても約束していた2020年は間に合いそうもなくなったということで、彼が自民党総裁の任期が終わる2021年9月までに憲法を変えると、臨時国会最終日に言いました。安倍さんは、自民党の総裁の3期目です。もともと自民党の規約では2期だった。それを途中で安倍さんの仲間が3期やれるように規約を変えました。ところがこれでも間に合いそうもなくて、安倍に4期やらせてもいいじゃないかと言い出している。もう3年安倍にやってもらって、なんとしても安倍さんの間に憲法改正をしようとしている。

理由ははっきりしています。自民党から見ると、安倍に替わって誰が憲法改正をやれるか。だから安倍さんが約束する2021年までの改憲がもしできなかったら4選をやる。4選もやられたらたまったものじゃないと思いますが、これはあまり心配していません。これを言っているのは二階さんとか麻生太郎とか「後期高齢者」の類に属するもので、これから自民党の派閥政治の中で彼らの権限がどんどんなくなっていくんですね。自らの党内の権力を維持したいために安倍4選という旗印を掲げているのではないかと私は思います。若い人たちを含めたそれ以外の人たちでこれをいう人は自民党の中にはいません。ですから恐らくありえないと思っています。安倍4選以前に終わらせる以外にないと思います。来年、2021年以内に改憲が終わるということですと、改憲の国民投票は60日から180日の間にやらなければいけないと法律で決まっています。2ヶ月から6ヶ月ですね。日本で最初にやる改憲で、そして9条というもっとも大事な問題の改憲を、この枠の一番少ない2ヶ月でやるというのは常識的にみて考えられません。「安倍さんは常識がないじゃないか」といわれるとそれまでですけれども、あの安倍晋三でもこういった改憲を2ヶ月でやるのはいくらなんでも不可能だ。万が一そうになったときには、たぶん世論全体も、自民党や永田町でも、やっぱり「6ヶ月」という話が出てくると思うんです。

こう考えると、来年中に改憲発議をしないと国民投票に持って行けません。来年の国会は1月20日からだと言われていて、たぶん6月まで。それ以降はオリンピックなどの関連があって延ばせない。だから安倍さんが憲法改正の強行採決をやれるとしたら、その通常国会と秋の臨時国会だと思います、どう考えてもこの2回の国会ですね。ものすごくタイトですよ。たった2回の国会の議論で憲法改正をやるんですか。2015年の戦争法は4国会やっています。憲法は国の最高法規ですから、戦争法より格上です。戦争法は4国会やったのに憲法は2国会で済ますというのは、普通に考えてありえないことです。そういう意味で安倍さんはいますごく追い詰められていると思います。安倍さんはそれでも再来年の9月までにやると言っていますから、来年中に何とかしたいと思っている。来年1年、これが本当に大きな勝負だなと思います。憲法を変えさせないという長いたたかいをやってきましたけれども、いよいよ来年1年、ここで安倍さんの改憲を許すかどうかという、すごく大変な1年になる。そういう年になるので、これに合わせたわたしたち市民の側の運動方針を作らなければいけない。

自民党改憲運動の経過

おさらいみたいな話ですが、ランダムに憲法に関する年表を出しました。1955年というのは、それぞれ分裂していた自由民主党と日本社会党が統一してできた、「55年体制」といわれる年です。ここで自由民主党があらためて発足して党是として憲法を変えるということを決定し、そういう党が誕生しました。そのあと鳩山由紀夫さんのおじいちゃんの鳩山一郎内閣があり、鳩山一郎さんも改憲をやろうとがんばったけれども無理でした。そのあと安倍さんのおじいちゃんの岸信介が安保改定をやる。彼も憲法改正を狙いましたが、安保の問題で大変なたたかいになってしまって改憲どころではなくなった。

1960年に岸内閣が倒れるときに次の内閣が必ず改憲をやると思って譲ったんですが、このとき出てきたのはあの有名な池田勇人さんです。「貧乏人は麦を食え」とか「所得倍増をやる」とか言った。この池田さんは改憲の方針をほとんどとらなかった。安保であれだけの闘争が起きたのでなんとか有権者、市民を懐柔しなければいけないということで、岸さんの期待に反して「低姿勢」で売り出した。いろいろやって自民党改憲の動きは、ほとんどこの間はうまくいきませんでした。この一番大きな問題は、国会で自民党が改憲発議に必要な3分の2を持っていなかったことですね。1955年にできた日本社会党は常に国会の3分の1以上の議席を持っていましたから、憲法96条から見ると3分の1以上を社会党や共産党にとられていたら、憲法改正の発議ができない。そういう意味でずっとこの間憲法改正は具体化しなかった。しかし1994年に突然、それまでもありましたけれども読売新聞憲法改正試案が出ます。中味を見ると、いまの自民党の憲法改正案より結構リベラルです。ただ、自衛力を持つことを非常にはっきりさせた憲法改正試案を4大紙の一角で唱えたということで、大きな転機になりました。

そういう動きがあって2000年に国会に憲法調査会がつくられました。衆参両院につくられ、2000年から国会で憲法調査会での議論が始まって、2006年には第1次安倍政権が成立しましたが、これは2007年に1年も持たないで倒れました。憲法を絶対変える、日本国憲法で一番よくないのは憲法9条だと2006年に宣言して総理大臣になった安倍さんの政権がわずか1年で倒れて、その後2009年に民主党政権が誕生します。

2012年、自民党がまだ野党のときに、読売新聞の試案からみても相当にウルトラ右派的な自民党憲法改正草案が発表されます。野党だったから言いたい放題に言ったこともあって、自民党の本音が出ています。政権党だったらここまで露骨に書いたかなと思います。天皇を元首にする、国防軍を持つ、緊急事態条項は入れるという、ほとんど大日本帝国憲法に逆戻りするかと思うような憲法改正草案を出しました。これはすごく評判が悪いんですよ。いまどき天皇を元首にするだの国防軍にするだの緊急事態条項だの、これは非常に評判が悪くなかなか浸透しない。それで自民党は困った。

安倍さんが総理大臣になったときは、9条はみんな反対するので憲法96条から変えようという話をみなさんはおぼえていらっしゃいますよね。96条の、3分の2の賛成があって初めて改憲の発議ができるという規定を過半数に変えれば改憲が楽だということが、その当時の安倍さんの憲法96条改憲案です。これも、出るとすぐに学者や弁護士からこてんぱんに叩かれました。「裏口入学じゃないか」と。そこで困って、「じゃあ緊急事態条項からやろう」と突然緊急事態条項導入改憲論を同じ頃に言い出すなど、安倍さんの改憲の方針はころころ変わっています。

そういうことをやりながら、2014年から2015年にかけて戦争法を強行します。私たちも一生懸命たたかいましたけれども、この戦争法は最終的に強行採決をされてしまいました。その戦争法のときの衆議院選挙で自民党と公明党が3分の2をとって、2016年7月の参議院選挙で3分の2をとったので、1955年からずっと自民党が望んできた国会の両院で3分の2を取ることがこの時点で実現します。憲法改正の発議をする最低の議員の数がそろった状態になります。

条件がそろったところで、自民党の持っている憲法改正草案が非常に評判が悪いものだから、憲法9条をそのままにして9条の1項2項に「自衛隊」という文言を付け加える。自衛隊の根拠規定を加えるという改憲案はどうだということを2017年に安倍さんはいいます。ちょうど私たちがお台場で5月3日の憲法集会をしていた日ですね。それまでウルトラな改憲案をいっていたのに、突然9条はそのままでいいと言い出した。安倍さんの改憲論は、この当時発表した「9条+自衛隊」という改憲論がいまだに続いています。最初は9条一本でしたけれども、これに教育だの合区だの緊急事態だの、そういうものを加えて4項目の改憲案になっています。

臨時国会で改憲手続き法強行と改憲案提示できず

この臨時国会は非常に重要な特徴がありました。「桜を見る会」とかがあり、あそこまでいってどうして安倍政権は倒れないかと本当に悔しいですよね。歴代の自民党の総理大臣でもこんなことは本当になかった。野党のみなさんも一緒に調査をして追及して必死にたたかったけれども、とうとう今国会では逃げられました。自分で「逃げ切った」と言っていまですから。逃げていたつもり、悪いことをやっていたつもりですね。これは本当に悔しいです。幸いなことにいまも通常国会までこのたたかいは続きますからこれで終わったわけではないです。けれども、ちょっと敗北感はありますよね。でも、ここまで野党のみなさんがすごいたたかいをした結果、多くの人が安倍さんはどう見てもおかしいと思っている。世論調査にも表れています。こういう結果で、安倍さんが臨時国会で一番やりたかった憲法の問題でほとんど進まなかったということですね。これが「桜を見る会」とかそうしたたたかいの反映です。憲法審査会で安倍さんが狙った改憲手続き法、いわゆる国民投票法の採決はできなかったんです。

国民投票法には議論になっている大きな問題があります。憲法を変えるときには、60日間から180日間の国民投票期間があります。この国民投票をどのように運営していくのかということを詳細に決めた法律が改憲手続き法-マスコミがいう国民投票法です。実はこの法律は非常に不公平、不公正のとんでもない法律です。この下でもし国民投票がやられたら、これはもう政権党が勝つに決まっていると言ってもいいような法律です。ずいぶん有名になりましたTVコマーシャルの問題、あのスポット広告をどんどんテレビで流せて、コマーシャルを自由にやってよろしいという、法律です。別に自民党だけでなくみなさんも含めて自由にやってよろしい、これがこの法律の精神ですということが謳い文句ですね。ところがお金がなければ自由にやれないのは決まっているわけですから、誰が自由にやれて誰が自由にやれないかということも最初からわかっています。私たち市民運動がどんなにがんばってテレビコマーシャルを打とうと思ったって、一本何百万もするものを1日何回かずつ、180日近くも打てるかという話がですね。やれるのは財界がバックにある自民党とか組織がバックにある公明党とか、そういうところ以外できない。こういう法律は改めろということが私たちや野党の主張です。私はテレビの有料スポットコマーシャルはない方がいいと思いますが、ちゃんと枠を設けるとかいろいろなことを議論してやらなければいけないけれども、いまの法律はそうなっている。こういうことを含めて国民投票がやられたときに、その枠をはめる法律が大変まずいということで、憲法審査会ではこれを変えましょうかという議論にはようやくなったんです。

自民党と公明党はこの法律のどこを変えようといっているか。選挙は公職選挙法に基づいてやりますが、この公職選挙法が最近変わりました。例えば、投票率を上げるために人がたくさん集まりそうなところに投票所を増やそうという話です。一般的には悪い話ではない。いままでは小学校とかそういうところに投票に行きますね。そこだけではなくて人が集まる駅とかデパートでもやれるように変える。あるいは海外にいる人たちの投票も変えました。これと同じ程度に改憲手続き法も変えようというのが自民党の案です。コマーシャルとか他の問題は入っていない。
それに対して国民投票法を再検討するなら、この法律のおかしいところは全部議論すべきだというのが野党です。とくに立憲とか国民の人達は、テレビコマーシャルの問題は絶対妥協できないと頑強にがんばっています。それは正しいことだと私も思いますけれども、この法律はそれ以外にもいっぱい問題があります。そういう国民投票法について審議しようとすると、いろいろな問題が次々出てきます。安倍さんが勝手に憲法96条に違反して憲法を変えるといったりすると、与党と野党の間で問題になって安倍さんは謝れという話になってきます。結局、この前終わった臨時国会までの5国会で、この法律の問題は議論されませんでした。

これが決着つかないと、自民党が一番やりたい憲法改正の案を憲法審査会に出して議論するところまで行かないわけです。継続審議案件を先にやるということで、自民党はもうじりじりしています。改憲案を出したいのに審査会に出せないというのが臨時国会でした。逆に言うと、野党のほうはがんばって問題点を明らかにし、「桜を見る会」のようなことを明らかにすることを通じて、自民党がとんでもない改憲案を憲法審査会に出すことを阻止してきた。私たちはいろいろなかたちで野党のみなさんを支援し、ロビーイング、話し合いに行っています。そうした経過で、安倍さんは臨時国会の憲法審査会の中で改憲手続き法の強行ができなかったという大きなデッドロックに乗ってしまったわけです。

この改憲手続き法の問題がもし決着がついたら、そのあとどうなるかということです。自民党は4項目の改憲案を憲法審査会に提示する。この提示もできていない。普通に考えると圧倒的多数ですから、いつでも提示していいようなものですが、できない。それは野党がいろいろなかたちで抵抗しているからです。改憲手続き法も自民党改憲案の提示もできなかったということで、自民党の狙いがまったくうまくいかなかった。そういう意味で安倍さんは、今度の国会はすごく気分が悪いんだと思いますね。

安倍さんの改憲を阻止するためにいくつかの重要な課題があります。憲法9条の文言、条文そのものの改正を止めることが非常に大事なことだと思います。憲法9条は変わっていません。しかしもうひとつ大事なことは、憲法9条が変わらなくてもこの社会の仕組みが憲法を変えたに等しいような方向でどんどん変えられていっているとしたら、それはまた大きな問題です。だから文言が守られているということで安心できないんですね。この社会は、いま憲法9条がどんどん破壊されている状態になっています。ですからこの両方で改憲阻止の戦いをやらなければ、本当にうまくいったとは言えません。その運動は、国会の中で野党のみなさんががんばるだけではだめですね。全国で、草の根で、東京以外全国各地を含めて世論や運動が盛り上がって、それが野党に反映するような運動をやらないと国会内の戦いもうまくいかない。19日の国会前の集会でもどこかの党の代表の方がいっていました。「みなさんにこの間激励され励まされて自民党とたたかってくることができました。みなさんの支援がなければ私たちの戦いはここまでやれません」。やっぱり議員のみなさんも全国のみなさんが支援し、世論が強くなっている中で安倍晋三のやり方に徹底してたたかえる。両面でたたかっていかなければいけない。

安倍政治の腐敗-小選挙区制度で党内支配

ジョン・アクトンの話を出しました。「権力は腐敗する、絶対的権力は絶対に腐敗する」という19世紀の有名な話ですけれども、本当に安倍さんを見ているとそう思います。日本の議会制度ができて以来、首相在任が最長、第1位だという。11月で2886日、桂太郎を超えたと安倍さんは自慢するけれども、どうしてこんな長期政権になってしまったのか。それから長ければいいかという問題と両方ある。政治の中味が問題にされないで、2886日もやったことだけ自慢するとしたら、これは子どもの自慢し合いの類でほとんど意味がない。世論調査を見るとわかります。安倍晋三を指示するという調査結果の50%近くは「他に適当な人がいない」「他よりよさそう」、だいたいそうなんですよね。

自民党の中でも1強多弱の体制になっている。よく政界・国会は1強多弱で、自民党という1強と野党はみんな他弱だとマスコミはからかいますが、実は自民党の中でも1強多弱で、この安倍さんを引きずり下ろそうとする有力な政治家達がほとんどいない。せいぜい石破さんくらいですかね。石破さんになったらいいかどうかというのは、ちょっと首をひねってしまうところがありますが。あの人との憲法についての意見の距離はやっぱり相当に広いです。あの人は結構筋を通すので、まともなことを言うときはある。2017年5月3日の、自民党憲法改正草案を変えて「9条+自衛隊」という方針を出したときに石破さんは言いました。「それはどこで決まったのか。自民党の方針は自由民主党憲法改正草案じゃないか。党で決めたのはこれだ。なぜある日突然総理総裁だからと言って、その方針を棚上げにして9条+自衛隊などと言えるのか」。これは石破さんの方が絶対筋が通っていますよ。こういうことをときどき石破さんは言うものですから、それなりに自民党の人たちから見ると頼もしいんですかね。石破さんくらいが1強多弱といわれる中では対抗馬としている。実際には他に替わりがいないという状態の中で安倍政権が長期的に続いてきた。

私は理由が3つくらいあると思っています。ひとつは選挙制度が小選挙区中心に変わった結果です。もともと2006年から2007年に第1次安倍政権が倒れて、2012年12月の総裁選で自民党から5人総裁候補が出て、争って安倍さんが当選しました。この総裁選のはじめでは、安倍さんは1位ではなくダークホースと言われていた。もしかしたら安倍になるかもしれない。1位、2位は別の人間、そういう感じだったのに、いろいろ合従連衡、組み合わせをやる中で安倍さんが1位になって、最後に当選しちゃった。その結果、トップじゃなかったはずの安倍晋三がそのあと今日まで続いている。

それは小選挙区制という制度が大きく左右しているのは言うまでもないことです。ひとつの選挙区からひとりしか当選しない。昔は中選挙区制があってひとつの選挙区から4、5人当選しますね。ですから、ひとつの党から2~3人くらい候補者が出てもよかった。他の党を打ち負かせばいいので、自民党からひとりである必要はないわけです。だから中選挙区の下では派閥が活発になって、そういう中で何人もの候補者が出られる。トップの人のいうことを聞かなくても2番目の派閥の親分に気に入られれば国会議員に立候補できる。3番目の親分に気に入られれば自分も国会議員に出られる。ところが小選挙区制になると、総裁と幹事長の意向に反したら候補者にしてもらえない。ある程度の人数がいれば派閥をバックにして多少交渉してねじ込むということはありますけれども全体として一人区では総理総裁、幹事長の力が絶大になっている。安倍さんはこれを最大限利用した。安倍さんの言うことを聞かない奴はどんどん候補者から外し、安倍さんの言うことを聞く人をどんどん候補者にしていく中で、自民党内の安倍さんの勢力が強くなっている。この小選挙区制というのは非常に悪い制度だと思います。こういう総理総裁の強権を発する。

メディア支配、官僚支配強めたが政治的実績は無し

もうひとつはメディアの支配ですね。この点は安倍さんが必死にやったと思います。2006年から2007年、1年間で内閣は失敗しましたからその総括があるんですね。やっぱりメディアを手なずけないと長期政権はできないと安倍さんは必死でやった。昔だったら読売のナベツネくらいしかいなかった政治的なマスコミ人、そういう人をこの間どんどん安倍さんはつくってきた。首相の1日という新聞の小さな欄が実は本当に大事な欄で、あれを見ていると何月何日読売新聞の誰、朝日新聞の編集長、毎日新聞の誰とかTBSの誰とか、そういう人と一緒に食事会をやったという話がぽつぽつと載っています。ほとんど1ヶ月に一回くらいやっている。そういう集団で話をするのと個別でやるのと両方あわせてメディアを手なずけている。新聞社はうちの社長が仲の良い安倍さんの悪口はあまり書けないようにだんだんなっていく。そんなだらしないかと言いますけれども、やっぱりそうなっていくんでしょうね。だからみんなヒラメになって上の意向を見ていく。この前は毎日新聞の社長がその会合を蹴飛ばしたなんていうニュースがありましたけれども、毎日新聞さんもこの間何回も出ていたように思います。そうやってメディアにあるまじき、ジャーナリズムにあるまじきものをつくってきたんですね。NHKの人事を変えたことから始まって、これが安倍さんのもうひとつの成功だったと思います。NHKの記者の中にもIさんというとんでもない女性がいて、ほとんど安倍さんの言うことをなんでも誇らしげに報道する。そういう人も社の中にどんどんできていって、そういう人が力を持ってくる。

もうひとつは内閣人事局です。これを通じて霞ヶ関の官僚を支配した。この間の霞ヶ関の官僚はかわいそうなくらい意固地になって安倍さんを擁護するでしょ。あのシュレッダーのことでもいろいろな文書のことでもとにかく「知らない」「ありません」、その繰り返しを頑強に言い張るのは、この内閣人事局なんですね。これを強化することで安倍さんは霞ヶ関を完全に抑えた。もちろん膨大な人数ですから、省の人事をすべて安倍さんがやれるわけはありません。このトップの人事を内閣人事局が握るわけです。これを通じて官僚を支配する。こういうやり方を通じて、残念ながら大して力も能力もありそうもないこの安倍政権が長期に維持されてくるという事態で、悪口を言っていても仕方がない。倒さなければいけないんですけれども。

そういう政権だから実際には実績がありません。昨日今日もロシアと交渉をやっているそうですけれども、まだ全然進まないという話です。去年の今頃で言うと北方領土は返ってきたはずですよね。もともと日本の主張は4島だったのに、2島にわざわざ値切って返ってこない。プーチンさんと27回も会談をやったオレはすごいというけれど、会談やった数がすごいんじゃないんですよ。どういう交渉をしているかなんです。北方領土についてはいろいろな立場がありますので、私からこれ以上踏み込むつもりはないけれども、あれだけ看板にした北方領土は進んでいない。
では2006年に自分だけが拉致問題を解決するといって、横田さんのじいちゃんやばあちゃんを一生懸命手なずけた拉致問題はどうだったか。これも議論したらいい悪いたくさんありますけれども、少なくとも安倍さんは「安倍晋三が拉致問題を解決する」と言ってきた。それから10数年たっても1ミリたりとも進んでいない、日朝平壌宣言というものが小泉さんのときにあって、このときは一定進んで、そのあと日朝関係をどうするかという方針も出したけれども、安倍さんの代になってまったく進まなくなった。私は本当に横田さんはかわいそうだと思うんです。なぜあの人にくっついているのか。たぶん横田さんからみても安倍さん以外にすがる人がいないからと思っているんでしょうね。

世界をかけ歩いて地球儀を俯瞰する外交――ものすごいお金を使って。これは最近聞いたら若い人に人気があるそうです。「やってる感」があると言うんですね 。今日はロウハニさんに会ったりしていろいろなことをやっている。けれども、ほとんど成功したものはありません。日本のために原発を各国に売り込むといって一時セールスマンをやっていた。これは約束したところは最後全部チャラにされてしまった。ちっともうまくいっていない。うまくいっているのはトランプさんだけですよね。武器はいっぱい買わされて、今度の日米交渉はとんでもないことになる。だからほとんど「地球儀を俯瞰する外交」、外交の安倍だという安倍さんの政治はうまくいっていない。

アベノミクスはどうか。ほとんどの新聞がアベノミクスをほめるところはなくなりました。よほどの変わり者の経済学者しかいいと言っている人はいない。実際にうまくいっていないで、大変なことになっている。そして今回の予算ではものすごい国債残高。日本は借金大国です。国債を次々発行している。湯水のように発行して株価を上げる。ですからたぶん株を持っている人は喜びます。いま株価が2万何千円かで維持している。アベノミクスで儲かっているのはこの辺だけですよね。そういう意味ではこの間、安倍政治のもとでうまくいっているのはほとんどないけれども、先ほど言った3つの要素を使って長期政権を維持してきている。そういう政権だから今度の臨時国会のように次々に閣僚もでたらめをやる。最近、19日の集会をやっていたら向こうの方にジャーナリスト、テレビカメラがたくさんきていて、うちの方に取材にきたかなと思ったら向こうから全然こっちによってこない、なんだIRのあいつかと思うような話ですよね。そういうような議員が次々出てくるような内閣に今日ではなってしまった。これを何とかして倒さなければいけないとこの間がんばったけれども、まだ道半ばです。

安倍首相が語る歴史観

安倍さんの思想そのものもきちんと批判しないといけないと思います。臨時国会の冒頭に所信表明演説をやりました。いくつかあげると笑っちゃいますが「みんな違ってみんないい」といいましたからね。安倍さんからこれを聞くかと本当に思いましたよ。これだけ画一的に、これだけめちゃくちゃにやっている安倍さんの臨時国会の所信表明演説で金子みすゞを引用してそんなことを言った。

それだけではなくて朝鮮半島との問題でとんでもないことを言いました。これは確認の意味で言っておきたいのですけれども「一千万人もの戦死者を出した悲惨な戦争を経て、どういう世界を創っていくのか。新しい時代に向けた理想、未来を見据えた新しい原則として、日本は『人種平等』を掲げました。世界中に欧米の植民地が広がっていた当時、日本の提案は、各国の強い反対にさらされました。しかし、決して怯むことはなかった。各国の代表団を前に、日本全権代表の牧野伸顕は、毅然として、こう述べました。『困難な現状にあることは認識しているが、決して乗り越えられないものではない。』日本が掲げた大いなる理想は、世紀を超えて、今、国際人権規約をはじめ国際社会の基本原則となっています。」。

安倍さんがこういうことを信じているとしたら、とんでもない人です。何も知識のない愚か者かそれともものすごいワルで、日本の自慢ならゆがめてやるかのどちらかです。恥ずかしいことです。「第1次世界大戦の1千万人の死者」がどうかということは放っておくとして、この1919年にあったパリ講和会議で日本は人種平等を世界に叫んで、その当時は受け入れられなかったけれども日本の全権代表の牧野伸顕が言ったことが今日の国連人権規約を初め国際社会の基本原則なっていると言うんですから、すごいです。1919年はどういう年ですか。韓国併合をやった、朝鮮半島を植民地にしたのはいつですか。1910年です。この時期は植民地支配が続いている状態です。この状態のまま日本の全権代表が世界に人種平等だ、なんだと言っても相手にされないのは当たり前じゃないですか。それをここで「各国の強い反対にさらされて、しかし怯むことはなかった」などと言っている。

確かにこの当時のヨーロッパの帝国主義も悪いですよ。世界で植民地争奪戦をやっていたわけですから。日本はあとから遅れてきた帝国主義としてそれに参入して、一緒になって世界の分割戦をやって朝鮮半島を略奪し、中国やアジア各国で戦争をやったじゃないですか。その日本がこういうことを言える立場はないんですから、この牧野伸顕は間違いです。牧野伸顕は、薩摩の大久保利通の子、そういう力をもって日本の全権代表になっていく。この娘婿は吉田茂、この娘が麻生太郎のなんとか、こういうのばっかりですよね。封建主義ですよね。これが人種平等を言ったというんです。だから牧野伸顕は明らかに誇らしい人ではまったくない。

これを見たら韓国の人たちは本当に怒ると思います。ちょっとこの話をしたら「ああ、あの人種平等を言った演説ね」といって、知っていました。怒っていましたよ。韓国の中にもそうやって広まっていくと思います。こういう歴史観を持っている人が、日本と韓国の友好とかそういうものを本当に築けるわけがないんです。朝鮮半島を植民地化したことになんの反省もない。「何回謝ればいいんだ」なんて居直りはしますけれども謝らなければいけないんです。この程度しかわかっていないんだから、安倍晋三はわかるまで謝らなければいけない。そういうことを今度の所信表明演説でもやるんですね。

また来年1月の施政方針演説を楽しみにしましょうかね。昔小泉さんは米百俵という教育に熱心だった新潟長岡藩の話をして、私の政権も教育を一生懸命やるとか言った。こういう昔の話を出すのが好きなんですよね、総理大臣の演説というのは。ゴーストライターがいて、そいつらがこういうことを書くと何か格好いいよな、受けるかもしれないと思って書くわけです。この前、安倍さんは岩手の原敬のことを引っ張り出しましたよ。いくらなんでもこれはまずいですよ。植民地に対する反省も何もない。こういう安倍さんが世界を俯瞰する外交といい、この日韓会関係、東アジア関係をやっているわけですから、やっぱり絶望的になりますよね。他にも安倍さんの演説というのは突っ込みどころ満載です。嫌だと思わないで多少新聞の一面を時間のあるときにじっと見てください。

参院選後の安倍改憲戦略の変更

参議院選挙の話に移ります。参議院選挙が終わった当初は評価がなかなか難しく、市民の間でもいろいろな評価がありました。夜遅くまで当選が決まらない人がたくさんいましたね。とくに全国の1人区でぎりぎりのたたかいをやっている野党のみなさんもいました。自民党が首相や閣僚や代議士をつぎ込んで重点区として全国の1人区で必死に勝とうとした選挙区が、最終盤でバタバタと野党が勝っていく場面ができました。結果として、自民党、公明党、維新の会の虎の子の3分の2を割ってしまった。

前回、ここでお話ししたときに、今回の参議院選挙の最小限目標は立憲野党が3分の1以上とることだと報告しました。改憲は衆参両院それぞれの3分の2を持っていないとできないわけですから、過半数を取れれば一番いいけれどもそれはちょっと高望みかな、最低3分の1をがんばろうと言いました。今度の参議院選挙ではそれが実現したんです。これは本当に良かったと思います。ただ市民運動の中にも結構心配性な人がいて、3分の1以上とったといってもせいぜい4議席か5議席多かっただけじゃないか。野党の中にも安倍さんから「ちょんちょん」とやられたらころっと変わってしまいそうな人がいっぱいいる。安倍さんにそういうことをやられたら、また3分の2になってしまうかもしれない。あまり喜ぶなよと忠告してくれた人もいました。でも私は率直に喜びました。それはあるかもしれません。でもそれはどうやって防ぐか、どうやって跳ね返していくか、いろいろなやり方がある。まず3分の1以上とったというこの大事なことを確認しないと、いつもあれもこれも心配だといっていたら疲れちゃいますよ。いいことはいいことで喜べばいい。

自民党は過半数を取れなかったんです。あの人達も本当におかしいですよね。自民党と公明党で3分の2を持っていたのに、選挙の直前になって目標は自民党と公明党で過半数をとることだと下げた。これはひどいですね。自民党だけで過半数を持っていたのに、今回の選挙ではそれも失敗した。今回自民党が3分の2を失った。2014年から自民党が3分の2の確保をやってきて、ようやく両院で3分の2が取れたという戦後の政治史の中で本当に珍しい、私たちからすると非常にいやな、そういう時期でした。それをまたまた取り返したという意味で、今回の選挙は大きな成功がありました。自民党はどうするんでしょうね。改憲をやるには衆議院と参議院とで3分の2がなければいけない。2021年までに安倍さんは改憲をやると言ったんですよ。それまで参議院選挙はないんです。次は2022年しかない。2021年に間に合わないですね。安倍さんは2021年にやると啖呵を切っている。

私は方法があるとすれば、衆議院選挙で自民党と公明党が大勝ちすることです。大勝ちをして、それこそ4分の3くらいまでとって、その力をもって野党を脅すことだと思います。世論の全体の流れがこうなっていますよ、あなた方はまだ参議院で改憲に反対するんですか。あなたたちは世論と違う道を歩んでいる。そうではなくて、この総選挙で4分の3もとらせてもらった自民党と一緒に改憲問題を考えようじゃないか。野党の第1党、第2党、第3党それぞれに働きかける以外に手はないと思います。だから野党から相当の部分を、誰さんと誰さんが危ないなんていう小さい話ではなくて、大所をがっさりと持ってくる以外に安倍さんが2021年に改憲をやれる道はないと私は思っています。

野党の分断と、憲法96条の意味するもの

憲法96条は先ほどから言っている3分の2の規定です。日本の代議制民主主義の中で、すべての法律は過半数で成立します。ところが憲法だけ3分の2なんですね。おかしいじゃないかとよく右翼が言います。憲法だって過半数にすればいいと。他の法律はみんな過半数なのに憲法だけどうして3分の2なのか。これには重要な意味が含まれています。もし憲法が過半数で変えられるとなったら、その時の政権党が願うことがそのまま改憲になっていくわけです。多数で政府になるわけですから。憲法は、政府が変えたいと思ってもおいそれと変えてはいけないというのが、96条の思想です。有権者の大多数、市民の大多数が憲法を変えようと言ったときに、初めて憲法は変えられるんです。

私もそう思います。いまの憲法で気にくわないところはそれなりに結構あります。第1章なんかは本当に変だなと思うし、それ以外にもあります。しかし有権者、市民の大多数がこれはもう耐えられない、これを変えないとだめだとなったときに、そういう問題に手を付けるのが日本国憲法の精神からしてあります。憲法は変えていいということになっていますから、私は絶対改憲反対とは思いません。しかしいま日本国憲法のどこかがおかしいからといって、「おかしい、おかしい」と言い出すと、「一番おかしい」9条を変えたいと言っている安倍さんの味方をすることになる。だから安倍さんの改憲をまず封じて、最低限この日本国憲法を実践してもらう。日本国憲法通りやったとしてもこの社会はすごくいい社会になりますよ。最低限やってもらって、さあこれからこの国をどうしようかとみんなで議論するときに、「ここのところはどうだ」と市民的な議論をして改憲ということになるなら、私はありうることだと思います。96条の考え方というのは、有権者の大多数が改憲賛成と言うときに初めて変えていいという思想です。

だから与党だけではだめだ。最低限野党第1党、第2党、こういうところが安倍さんと一緒に改憲をやるとなったときに初めて憲法は変えられるということが、憲法96条の思想だと思います。だから安倍さんは、いま変えようとしたらそこに踏み込むしかない。どうやって野党を獲得するのかを、あと1年必死にやると思います。私たち市民運動の側からすればよもや野党のみなさん、安倍さんの方に引きずられないでしょうね。そして来年やろうとしている安倍改憲には、野党は徹底して抵抗してくださいよ。この間ずっと抵抗してきたように、というのが私たちの基本的な立場です。ですから野党をしっかり応援して野党としっかりスクラムを組んで、安倍さんの改憲の方に行かないような運動をこれからつくれるかどうかということが非常に大事なたたかいにこれからなると思います。

野党のみなさんひとつひとつ、私たち市民運動から見ればいろいろな政党それぞれ意見が違いますから、あの党のここのところはどうだろうなと思うところはないわけないですよ。ときどきは危ないなと思うところだって、申し訳ないないけれどもあることもあります。しかしそういうことを言っていても始まらないので、安倍改憲に反対するかどうかというところでしっかり大きな枠をつくって、その枠でがんばってもらう。いろいろな政党がそこをしっかりしてくれることが私は当面大事だと思います。

これは言っていいと思いますけれども、国民民主党だって危ないといえば危ないですね。先日、市民何人かで国民民主党の憲法の責任者で奥野総一郎さんという人に会いに行きました。こちらが憲法で行くことは知っているわけです。国対関係の重要な会議をやっているときに、わざわざ短時間きてくれたのですけれども「わかっている、わかっている、安倍改憲に反対することを党内で決めてきたから。安倍改憲には絶対妥協しないよ」と、来るなりまくし立てるんですね。こちらの言いたいことはわかっているからと。最低限こういう状態をつくっておくことですよ。奥野総一郎さんとか国民民主党の憲法関係の大事な人たちと市民がしっかり団結していく。立憲とも共産とも社民ともそういう関係をつくっていく。れいわの山本さんにもやってくれるようにする。そういうことを来年、一生懸命やることを通じて、安倍さんが2回の国会でやりたいと思っていることを失敗させること。これが当面すごく大事なことであって、わたしは今できると思っています。

安保法制だって4国会かかったのに、たった2国会でこんな重大な問題をやれるのかという戦いを私たちがやったら、世論の多くは「そうだ、そうだ」となると思います。「もっとじっくり議論しろ」、「何を急いでいるんだ。強行採決は絶対許さない」というと思います。野党がみんな反対したら強行採決しかないんですから、安倍さんは強行採決でやるしかない。憲法まで強行採決でやるのか、という状態を来年1年でどうしても作り上げたいと思います。これはやれると思います。市民が本当に全国でがんばって、次の総選挙などでも自民党に3分の2をとらせないという戦い、それから署名や街頭宣言など、やらなければいけないことをなんでもやりたい。

実質的な改憲-専守防衛の破壊を止める

 もうひとつ大事なことは、明文改憲、憲法の条文そのものを変えられなかったことで安心はできないんです。この国は明らかに変わっている。9条を壊している方向にどんどんどんどん変わっていますね。いまこの瞬間でもそういう方向に変わっているといってもいいと思います。これを止めるかどうか、もうひとつ市民運動の大変重要な戦いです。国会で何でもかんでもすべての問題で議論し尽くすなんて思ったら、それは無理です。市民運動は全国でいろいろなたたかいをやって、いま進んでいる改憲状況、9条破壊状況を指摘してたたかっていく必要があります。その最大の問題が憲法9条に関係する、いわゆる専守防衛の破壊という問題です。

専守防衛に賛成かどうかというのは、いろいろな議論があっていいと思います。私は専守防衛論者ではありません。憲法9条は非武装平和だといまでも思っています。しかし歴代の自民党政府は、憲法9条を読むように読めば専守防衛というのもあり得る。そして政党や市民運動の中には専守防衛だけは必要ではないかという、そういう声がいっぱいあります。私のような非武装論者も専守防衛論者も一緒になって安保法制に反対する、憲法改悪に反対する運動を仲間としてやってきたんですね。今日も街宣をやった仲間たちが、攻めてこられたらどうするんだ、「熊が襲ってきたらお前等どうするんだ」ということを言われたらしいです。その専守防衛、これは歴代の自民党政府が「攻められたら守るのは当然だから自衛隊を持つ権利がある。自衛隊は憲法違反じゃない」という最大の論拠でした。しかし、安倍政権のもとでこの専守防衛すら壊されていることは大問題です。ですから私は野党のみなさんと当面どこで一致するか。最低限この前の2014年、2015年の安保法制の前のところまでとりあえず政治を持っていく、自民党政治を変えて安保法制の前まで持っていく政権をつくって下さい。専守防衛です。とりあえずそれでいいですよ。

専守防衛の政府見解は、「性能上専ら相手国国土の壊滅的な破壊のためにのみ用いられる、いわゆる攻撃的兵器を保有することは、直ちに自衛のための必要最小限度の範囲を超えることとなるため、いかなる場合にも許されません。」。防衛省のホームページにはこう書いてあります。「たとえば、大陸間弾道ミサイル(ICBM:Intercontinental Ballistic Missile)、長距離戦略爆撃機、攻撃型空母の保有は許されないと考えています。」。これは専守防衛の武器についての考え方です。航空母艦は持ってはいけないと歴代の自民党、防衛省はずっといってきました。いらないですよ、守るだけだったら。航空母艦は戦闘機をいっぱい乗せて外国の近くまでいって、そこから飛行機を飛ばして爆撃したり戦闘したりして航空母艦に帰ってくる。ですから戦略的な兵器です。海を隔てた遠くまで行く戦略爆撃機、B52といわれたような戦略爆撃機です。大量の爆弾を積んで敵国の上空まで行ってぼこぼこ落とすような、まったく専守防衛じゃない。大陸間弾道ミサイル、宇宙空間に飛ばしてミサイルを落として相手の国を攻撃する、守り専門ではなくて攻撃する、そういう武器は持たないというのが日本の立場だった。ミサイルの訓練もいっぱいやっていますし、飛行機にも空中給油とか、いっぱい問題はありまして、もう防衛省がいう枠は突破している。

問題はこの航空母艦です。「いずも」という護衛艦と「かが」という護衛艦です。このふたつの護衛艦は事実上の航空母艦として、甲板に垂直離着陸機を14機から15機くらい積んで外国の公海に行って、そこから飛行機を飛ばして戦闘をして戻ってくる。甲板の上の短いコースを走って離陸して、戦ったあとは垂直に降りて止まる。こういう能力を持った航空母艦が、日本ではもうすでに2隻つくられようとしています。このために垂直離着陸機・F35Bなどは147機もアメリカから買う予定ですね。トランプさんは日本がたくさん買ってくれるからほくほくです。ところがこれはまだ日本に来ていなくて、航空母艦が完成しても使うものがない。空母を一番先に使うのはアメリカ軍です。アメリカ軍が航空母艦を使うために、いま改造している。アメリカ軍に使わせるために航空母艦を持つなんてとんでもない話ですよね。これが安倍さんの下で何となく当たり前のように進んでいることは大変なことで、文字通り専守防衛なんていうのはなくなっている。「攻められたら守る」という論理もいろいろ問題があるけれども、攻められない前に攻めてしまうというのがいまの安倍さんです。敵基地攻撃論が公然と自衛隊の用語になっています。向こうから攻めてきそうだから、敵基地をあらかじめ攻撃する。ミサイルを撃ってきそうだから撃ってこないうちにこちらから叩いてしまえという論議です。どこが専守防衛ですか。

それだけではなくて私が11月3日の産経新聞を見てびっくりしました。産経新聞の「主張」欄で「MDや、ミサイル発射基地を叩(たた)く敵基地攻撃能力だけでは十分でない。有事に日本を攻撃しようとする侵略国の独裁者の居場所や重要軍事基地を叩く『敵地攻撃力』を保有することが、抑止力の確保につながる。だが、9条に由来する「専守防衛」が妨げている。」というんです。ここまで新聞がいうようになった。「やられそうだからからやっちゃえ」ではなく、「あの国はとんでもない国だからあらかじめあの国の指導者とかそういう人をやっつけちゃえ」というのが産経新聞です。これはもう1945年以前の日本とどこがどう違いますか。こんなことで日本の軍事力を強化しようとしていて、今度の予算で5兆何千億円です。5年間で27兆円などといっている。膨大な軍事力を使って事実上9条が壊されている日本にするために安倍さんが力を入れていることについての運動は、わたし自身の反省でもありますけれども、もっともっとやらなければいけないと思います。やっぱり街頭宣伝とかいろいろな場で日本が大変なところまできている、これでいいんですかと問わなければならない。熊が出てきたら守るとか泥棒に入られないようにカギを閉めておきましょうなんて話ではないですよ。日本から攻めていくという話を公然とするようになってきたのがこの国です。

私は憲法9条を守るということを必死にやってきて、これはすごく大事なことです。しかしあわせてこれを壊す社会の実態を暴露してたたかっていかなければいけない。秘密法とか一連の悪法も全部これとの関係で社会を軍事化していく、そうした動きに安倍さんの代になって急速に進んでいるという大きな問題があります。専守防衛というのは事実上壊されて、自衛隊・防衛省がいう専守防衛は有名無実になっているということを、もっともっとはっきりさせていく必要があるのではないかと思います。

政治を変える以外にない

 これから安倍さんは、参議院で3分の2がないからできるだけ早く総選挙をやって大勝ちすることを狙うと思います。首相というのは有利です。自分がもっとも有利だと思う情勢の中で解散をやればいいわけです。野党にとって不利だと思う時期を選んで解散する。しかしそれも来年中だと思います。1月20日に国会が始まって3月までに予算を上げなければいけませんから、3月以降4月などの解散というのはひとつあり得ます。しかしなかなかタイトです。そのあと都知事選があったり、2020オリンピックがあったりして、そのあと解散を狙う。野党の準備があまりできていなかったら安倍さんは解散に打って出てくる可能性があります。オリンピックで国中に日の丸が当たり前のように振られて、そんなにスポーツが好きではない人も含めて「ニッポン、ニッポン」と騒ぐ。そして「日本に生まれてよかった」なんていう感想を若い子にマスコミがいわせる。そういう大騒ぎをしたあと、「これをやってくれたのは安倍さんだ、何もしなかった安倍さんだったけれどもオリンピックだけはやったじゃないか」という話の解散をやられると、これは決して容易じゃないですよね。相当がんばってやらないと勝てるものじゃない。一番いいチャンスを選んであの人はやれるわけですから。

このたたかいがたぶん来年の秋にあると思います。衆議院は289も1人区があって、ここで私たちが1人区で野党の候補者を一本化する。2017年の時は結局一本化できなかった。あの小池さんに、野党統一の話を進めている最中にバタバタ引っかき回されたので、とうとういくつかの選挙区は野党が複数立ったりして負けました。こんどこそ全部で一本化して自公とガチンコ勝負をやって、最低限目標として3分の1以上をとる。そうすると参議院と衆議院で憲法96条が適用できなくなる。そういう状態をもし私たちがやることができれば、改憲は阻止できると思います。

「なんだ、安倍さんの政治を変えないのか」と叱られそうです。でも衆議院で最小限目標の3分の1をとったら、安倍政権が倒れる可能性は十分あると思います。だって安倍さんを支えている日本会議とか極右改憲派の人たちは、安倍晋三だから改憲できると思って支えて、一生懸命働いているわけです。櫻井よしこさんなどは、この前の国会の終わりにわざわざ団体の決議文を持ってきて、改憲手続き法をこの国会で絶対やれと。できなかったけれども、そういうことを安倍さんのために必死に働いているこの右翼の連中が、衆議院でもできないとなったら安倍さんから離れていきますよ。それこそ今度は石破さんの出番かもしれない。だから私は3分の1以上をとることで、安倍政権の交代は可能だといまでも思っています。「でもまた出てくるのは自民党じゃないの」といわれる。3分の1だったらその通りでしょうね。石破さんが出てくるのか岸田さんが出てくるのかはわかりません。こんなことをいったら叱られますかね、安倍さんよりはいいんじゃないか。ほとんど変わりないにしても、そしてそこに期待はできないにしても、安倍政権をとりあえず倒すことはすごく大事なことだと思います。いまやっていることにストップをかけること。そして新しい政権のもとで再度総選挙をやってこれをひっくり返せばいいじゃないですか。安倍さんの政権と自民党では変わらないじゃないかというたたかいをやっていけばいい。そしてこの国の政治を変えるということに行けばいいんだと私は思います。

市民と野党の共同の形成

政治を変えるということが遠い話だとずっと思ってきました。私は若い頃から政治が変わればいいなと思ってきたのに、この前の鳩山さんのときくらいで後はほとんど変わりがない。まあ細川さんのときもありましたけれどもなかなか変わらない。いよいよこの自民党の政治を変えるときがきています。それを2020年と2021年の戦いの中で実現したい。そういうことをやることを通じて憲法改悪を止めていきたいと思います。これは本当にできるかもしれません。2017年の総選挙で負けたのは野党が一本化していなかったからです。今度本当に一本化するために市民連合と野党の話し合いをきちんとやって、あらかじめそういう態勢をとっていく。不意打ちを食らわないようにとっていくことです。

11月に野党5会派の幹事長と私たち市民連合が会議をやりました。今度の総選挙に向かって、そういう態勢をとろうと合意をしました。1時間程度の話し合いですからそんなに深い話まではできないけれども、やろうということを決めました。そのあとも政党同士の話し合いがどんどん進んでいます。参議院選挙が終わった後、いくつかのところで県知事選がありました。埼玉、岩手、高知、主なところはこの3つです。これは非常に特徴があります。埼玉と岩手は野党統一候補が知事になった。これで高知も勝つとすごいと思っていたけれども、残念ながら負けてしまいました。しかし高知は素晴らしいたたかいでした。統一候補の候補者が共産党員だったんです。各野党がこの共産党員の候補者を、枝野さんとか玉木さんなど含めて現地に入って、有権者にわれわれの候補者だと訴えました。前代未聞です。こんなことはこれまでなかった。共産党の候補者を野党各党が担いで、県知事選で自民党と一騎打ちをやった。結果は負けたけれども、かなりいいたたかいでした。得票率は37~38%ですかね。

昔は野党共闘というと、「野党共闘ができました(共産党を除く)」、新聞記事はいつもこれだった。共産党だけ入れない野党共闘が相場でした。2016年の参議院選挙以前のことです。いつも共産党だけ外して、共産党とやると票が減る、共産党は多くの支持は得ていない、そういう野党関係だったのが、今日では高知のような事態になった。ならば、みんな共産党の候補者にしろというのではないですよ。でも共産党なしには勝てないと私は思います。私は共産党員でも何でもないけれども、率直にいってそう思います。共産党は各選挙区に1万票、2万票、3万票という固定票を持っています。この票が野党にしっかり来るかどうかで決定的な違いがある。自民党と公明党だって、公明党がいなかったら勝てないですよ。同じことです。

ですから高知でやったようなことまでやれとはいいませんけれども、野党がしっかり団結して289の選挙区でやったら相当な勝負ができると思っています。そういうことをいまから全力を挙げて準備する。そのためには何が大事か。私は政策だと思います。安倍さんに替わってどういう政治をやるのか。それは安保法制の問題も憲法の問題も消費税の問題も、いろいろな問題があると思います。そういう重要な政策のひとつひとつで野党が共同して安倍さんと違った、こういう政治がやりたいということを掲げたときに私は勝てる可能性が出てくると思います。ここに希望があるかな、野党はいつもばらばらで喧嘩しているみたいだけれども今回は一緒になってたたかっている。どうも本気だ。ここなら政治が変わるかもしれないな。そういう状態を総選挙までの間に市民と野党の間でつくり出せるかどうか、というのが非常に重要な課題だと思います。それをどうしてもやり抜きたい。

希望ある政策で力強い野党を示し投票率を上げる

 この前の選挙、投票率は48.80%だった。若い人のかなりの部分が選挙に行かなかった。年配者もかなり行かなかった。史上2番目の低さです。なぜ投票率がこうなのか。投票率はこの間ずっと下がってきたわけではありません。毎回選挙で投票率が下がっていくものだから、投票率が下がる悪い傾向だな、日本の民主主義はどうなるかな、と心配されている方があると思います。違うんです。ぴょこんと上がった時期がある、それからまた下がっている。このぴょこんと上がって69%までいったときは、あの民主党政権が生まれたときです。もしかしたら政治が変わるかもしれないと多くの人が思った。民主党の政策の検討がどこまでされたかはわかりません。しかし自民党の政治に替わって野党が政権を取ることができるかもしれない。そうなら日曜日に一票を書きに行ってみようかなと思う人が増えた。もうこれ以上自民党の政治は嫌だ、別の党に一回とらせてみようと多くの人が思ったんです。野党も結構いいことを言っているじゃないかと。だから69%まで跳ね上がったんです。

私たちはこの前の選挙の時も、みんなで投票に行こうと一生懸命訴えました。けれどもなかなか私たちの力の限界があって、多くの人のところに、なぜ選挙に行かなければいけないかということを伝えきれなかった。それはこれからも引き続きやらなければいけない。同時にもうひとつ大事なことは、政治が変わるかもしれない、こういう政策を野党が掲げていてこれは私たちにとっていい政治だ、そう思えるような状態を私たちが作り出せるかどうかです。

安倍さんはあの民主党政権のことを「悪夢の時代」といっている。安倍さんにとって「悪夢」だったんです。安倍さんにとってあれは2度とあってはいけない。確かにわれわれから見てもポカはいっぱいありましたよね、あの政権は。でも経験したんだから、今度はもうちょっとうまくやると思いますよ。あの頃は市民連合もなかった、市民と野党が相談する場もなかった。そういうものをやりながら新しい政権に向かって私たちがサポートしながらやっていけば、「悪夢の民主党政権」なんて言わせませんよ。原発だって頭にきているんです。彼等がつくってきた原発じゃないか。菅さんはそれなりがんばった。菅直人が、ここが下手、あそこが下手と言うことはできます。でも安倍晋三にあれ以上のことができたか。そういうことですよね。だから、みんなから見て今度の野党共闘は可能性がありそうだと思える状態をつくることがいまから一番大事なことです。前回の選挙で野党がばらばらに立ったと言いながら、野党全体の票数と自公の票数はそんなに違いがありません。ですからいま言ったようなことをやれば289の多くのところでひっくり返すことは十分可能だと思います。最後にひとつだけ報告しておきます。いままで3000万署名という憲法改悪の反対する署名を2年間やってきました。来年からもう一回、新規まき直しで「憲法改悪の発議阻止」の署名をやろうと思っています。3000万署名を目標にして1000万しかできなかったんですよね。これはいろいろな私たちの弱点もありました。総括すべきところもいろいろありまして、いまホームページなどで順次そういうところも明らかにしながら、今後の運動をもっとうまく進めるようにやっていく最中です。安倍さんの新しい状況の中で新しい時代に合わせた、状況に合わせた憲法改悪に反対する署名をやっていきたいと思っています。もう郵便物が届いている方もいるかもしれません。とにかく全国で来年1年この安倍改憲を阻止する署名を全力を挙げてやる、集会もやるデモもやる。いろいろなこと、可能なあらゆることをやって、野党を応援して今度の総選挙で安倍政権を倒すたたかいをやりたいと思っています。

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ケン・ローチ〉とブレイディみかこ〉と

池上 仁(会員) 

追い詰められた家族の悲哀

年末にケン・ローチ監督の「家族を想うとき」を観た。不安定な仕事を転々としたあげく、賃労働以上に過酷な個人請負宅配ドライバーの仕事に就く父親、パートで介護の仕事をする妻、高校生の息子、小学生の娘の一家の物語。個人請負とは言い条、リスクはすべて負い、週6日トイレに行く暇もない14時間労働。夫の独立のために車を手放さざるを得なかった母親はバスで時間に追われながら担当の要介護者の家を回る。時には糞尿まみれになる大変な仕事だが、規定以上の時間には報酬はなく、相手の尊厳を大事に介護したいという思いも果たせない。息子は絵画のゲリラ的街頭パフォーマンスを仲間とやっているが、ある日ペンキを万引きしてしまう。学校の呼び出しに父親は仕事のために行かれず、停学処分を受ける。怒りを爆発させる父親と、「あんたの今の状況はあんたが選んだのだろう、自己責任じゃないか」と言い放つ息子。劣悪な労働のしわ寄せが家族間の軋轢を生み、心を痛めた娘はおねしょをしてしまう・・・

ある日、父親は仕事中に強盗に襲われ重傷を負う。診察を待つ病院に運送会社から壊された携帯機器と荷物の賠償を求める電話がかかる。思わず汚い言葉で会社を罵り、そのことにまた深く落ち込む妻。家出をしていた息子が戻り父親とお互いに投げつけた罵詈雑言を謝罪しあう。いっとき取り戻された家族の絆。しかし、父親は家族が引き留めるのを振り切って不自由な体で仕事に向かう、稼ぐために・・・監督の眼の寂しみと温かみが伝わってくる佳作だ。

悪化するばかりの労働者の状況

前作「わたしは、ダニエル・ブレイク」は2016年、カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した。病気を患い福祉の窓口に翻弄されながらも、シングルマザーの一家に温かい援助の手を差し伸べる老大工が主人公の物語。「老いて地位の高い者には媚びないが、隣人には手を貸す。施しは要らない。私はダニエル・ブレイク。人間だ。犬ではない。当たり前の権利を要求する。敬意ある態度というものを。私はダニエル・ブレイク。1人の市民だ。それ以上でもそれ以下でもない」という感動的な科白が印象的だった。二つの作品を比べると、確実に労働者にとって状況は悪化していると痛感する。「家族を想うとき」の父親からは、ダニエル・ブレイクの毅然とした誇りはもはや失われ、えげつないまでの搾取の犠牲者としての結末しか用意されていないのだから。そして言うまでもないことだが、この日本の状況も全くこれと重ね合わせられるところまで来ている。
ケン・ローチ監督の作品では1995年の「大地と自由」も忘れられない。冒頭、行軍するスペイン内戦国際義勇軍兵士が高らかに歌う「ワルシャワ労働歌」に胸が熱くなった。学生時代に幾たびとなく歌ったものだから。国境を越えて一気に映画の世界に入り込んだように思った。

ブレイディみかこが書き留めたケン・ローチ

ケン・ローチ監督について、ブレイディみかこが「ザ・レフト UK左翼セレブ列伝」((株)Pヴァイン)の冒頭に取り上げている。1936年生まれ、父親は工場労働者、祖父は炭鉱労働者のワーキング・クラスの家庭に育つが、名門グラマー・スクールに合格し奨学金を受ける。オックスフォード大学へも奨学金で通った。卒業後俳優の道を目指したが限界を感じ監督業に転身。BBCに入社してテレビドラマでブレイクスルー、「史上最も大きな影響力を与えた番組」と評価される、社会派監督としての出発点だ。「ポリティクスと映画は切り離せない。どんなストーリーを選んだのか、というチョイスの裏側には必ず作り手の思想やスタンスがあるからだ。ポリティカルな理念やその衝突、そしてリアルな人々の暮らしをリプリゼントすること、それは映像ドラマの重要な役割だ」というケン・ローチの言葉を、ブレイディは「徹頭徹尾ブレがなく、あまりにもご立派というか、一貫しすぎて隙がない-略-その何げに堅苦しくて融通がきかなそうな感じ」「この人には華がない」と言って当時都知事選に出馬した宇都宮健児さん(私も応援した)を引き合いに出しているのが何だか面白い。

「華がない」という印象はブレイディ自身がレフト・ユニティの集会で目撃した光景からきている。レフト・ユニティとはケン・ローチが2013年に立ち上げた「『いまどきアホか』という批判を浴びせられることは必至の極左政党(というか極社会主義政党)」だ。右翼政党のUKIP(英国独立党)が支持層を広げているために保守党はより右翼的な路線を採らずにいられない、ならば労働党にとってのUKIPのような存在になろう、との思いで発足させた。そのレフト・ユニティの集会・・・「ケン・ローチは特別な席でふんぞり返っているのではなく、他の支部の代表と同じ場所に並んでちんまりと座っている(とても痩せていて、静かな佇まいの人だ)。『ロンドン・カムデン支部のケン・ローチです』他の党員たちと全く同じやり方で彼は自分を紹介し、淡々と支部の状況や見解を述べる」議論が紛糾すると「彼は淡々として静かな口調で言う『不必要な辛辣さが出てきていますね。みなさん、息をつきましょう』」

「『左派にはミクロのように細分化している陣営を一つにまとめる団体が必要だ』ケン・ローチは言う。その野望があるからこそ彼は自ら政党を設立し、著名なパトロンとしてではなく、地べたの一党員として活動を始めたのだろう」「本来ならば質素なコミュニティー・センターのホールで、公立校の生徒が座るような固い椅子に座って身を縮めているような人ではない筈」「平等に割り当てられた党員の発言時間を超えそうだからと言って、司会者に『ケン、あと30秒』などと言われて急かされるような立場の人ではない筈」であるにもかかわらず。ケン・ローチに「華」はないかもしれないが、ブレイディは彼に「一人の老人のパンク魂」を見出している。

ブレイディみかこの貴重なレポート

ケン・ローチ監督の作品から私たちはイギリス社会の一側面を生々しい手触りで知ることができる。ブレイディみかこの著作もまた、なかなかその実情を知ることのできない(一般に他国についてそうだが)イギリスを知るために貴重だ。
「子どもたちの階級闘争」(みすず書房)は保育士としてイギリスの最底辺の託児所で働いた著者の現場レポート。緊縮財政政策の下で切り捨てられていく底辺の人々、移民とのまた移民同士の軋轢、そのしわ寄せを一身に受ける子供たちの荒廃・・・想像を絶するような世界だ。「こみあげる嫌悪感の連続で、そのくせほんの時折だったとはいえ、こんなにきれいなものは見たことがないと思う瞬間に出くわした」そう、思わず涙がにじんでくる場面がいくつもあった。どんよりした曇り空にかかったおぼろげな虹を見て、手の不自由な女の子が著者に寄り添いながら「ビューティホ」と感嘆の声を挙げる場面とか・・・きれいごとなのではない。著者が「アナキズムと呼ばれる尊厳」と表現するもの「それは地べたの泥水をじくじく吸い、太陽の光など浴びることがなくとも、もっとも劣悪な土壌の中でも、不敵にぼってりと咲き続ける薔薇」を垣間見せてくれる。

「ぼくはイェローでホワイトで、ちょっとブルー」(新潮社)はイギリスに在住する著者の一人息子の中学生活レポート。複雑な人種間の問題、広がる階級間格差、「子どもたちの階級闘争」と同じ状況(日本も既にそうなのかもしれない)に揉みに揉まれながら、しっかり成長していく男の子の姿が眩しいくらい。そしてそれを見守る著者とアイルランド人の連れ合いのスタンスも好もしい。なんと「子どもたちの階級闘争」に登場した恐るべき幼児リアーナが、裕福な里親に保護されて今は名門私立学校の生徒として再登場する。イギリスの里親制度についてよく分っていないが、こういう流動性を可能にするものなのだろう。何かにつけ日本と引き比べてしまうが、イギリスの場合は粗暴なまでに剥き出しだが、その分問題の所在がクッキリしているな、と思う。日本の場合は隠蔽されている分陰にこもっているような気がする。

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種子島通信29

2020年1月  和田 伸  

かつて何度か転載させてもらいましたが、編集部に種子島在住の和田伸さんの「通信」が不定期で届きます。この地域の軍事化が急速に進んでいる中で、本誌は今後、できるだけ、「通信」をご紹介したいと思います。なお、長文の時は一部、割愛させていただきます。(編集部)

いきなり馬毛島です

【馬毛島動く!160億円で買収】

11月30日、地元紙・南日本新聞をはじめ、各メディア媒体で同様のニュースが流れた。もちろん寝耳に水ではなく、買収額はともかくとしていずれ買収されることは多くの島民(市民)が覚悟していたはずである。で、私にとっても当然驚くようなことではなく、「いよいよ来たか」でしかない。

また12月16日「政府は地権者から抵当権の無い土地の6割を取得」、そして12月18日「12月16日防衛省が所有権を取得」、12月20日には防衛副相が地元説明とくる。

報道を要約すると、政府は11月29日地権者のタストン・エアポート(以下TA)と、売買契約合意の文書を交わした。今回の買収は、滑走路等の造成に影響のない規模の敷地で、滑走路の整備後残る土地も買収するという。

防衛省は「地元理解が重要なので、意向を聞きながら丁寧に対応したい」というが、YAHOO!ニュースは「手続き終了後、直ちに施設整備に着手する」とあり、地元の理解と協力はどこへやら。南西諸島の例を持ち出すまでも無い。そして12月18日には「防衛省が11月29日、売買予約で所有権移転請求権仮登記を設定していた馬毛島の所有が12月6日付で防衛省に移転した」とも報じている。

今後、馬毛島にFCLP用の滑走路や施設を造成し、南西諸島の防衛態勢強化と災害対応拠点として使われる。

「数件の根抵当権が設定されている土地には、今回の売買金で解消する」(TA幹部)というが、これは公金。防衛省提示約45億円と160億円の差額はこれも公金である。TAは売却金を元に抵当権の抹消を進め、防衛省はその土地を段階的に取得する方針だ。一企業所有の土地の負債を公金で解決してやったということ。馬鹿々々しくないか。その上に160億円は辺野古予算を流用するという(12月25日西日本新聞)。それによると工事の延期に伴い不要となる予算で、内訳は河川工事約71億円と土砂運搬機器設置約56億円の事業費であり、ともに18年度予算で2年分計上している。他にも関連予算で支出が想定を下回った部分も充てるという。このような流用は財政法で認められており、国会審議は不要であるらしいが、どうしても納得が伴わない。20年度予算案に計上すると、たとえ国会で認められたとしても、成立から支出まで数か月はかかるため、この策に出たと思われるが、160億円が適正かも含めて疑問である。米軍の強い要求もあろうが。政府の公害等調整委員会も認めた森林法違反の部分に対しても、公費を上乗せしたとも指摘されていることに、政府は「適正」とするも、その算定根拠の公表は拒否している。また施設整備のための調査費約5億円は20年度当初予算案に計上する。なお17日、買収合意内容については「購入手続きに支障を及ぼす恐れがあるため、答えを差し控える」の答弁書を閣議決定した(この内閣どうにも閣議決定が好きである)。また19年1月から3月に実施した現地調査の結果についても、「自衛隊利用計画の検討や米軍との協議等に支障を及ぼす」として答えない。政府は17年11月頃、行き詰った馬毛島問題の打開策として、「駐留軍用地特措法」の適用による収用を検討したというが、法に基づく行政手法とは言え、強制的な仕組みであり、「収用は政権が吹っ飛ぶくらい、政治的に難しい」と断念したという(20年1月5日毎日新聞)。ここに登場する「防衛省幹部」とはおそらく増田好平元事務次官であろう。「駐留軍用地特措法」は彼の持論である。

(実は)これに先立ち11月12日に、市議会馬毛島対策特別委員会(15名)は所管事務調査の一環で、防衛省から馬毛島問題についての聞き取り調査を行っている。主な目的は2011年の2+2共同文書では当初の「移転検討対象」が、19年4月には「早期に施設整備を完了させるために緊密に取り組む」と変更されたことの事実関係の確認その他である。その表現の変更については「日米間で新しい合意がなされたわけではなく、政府の方針にも変わりはない」とする(その裏では買収を着々と進めていたのであり、これが防衛省のやり口だ)。FCLP訓練内容は、訓練回数は年1~2回で、1回あたりの期間は約10日間、準備等を含めて約ひと月で、その間馬毛島には米軍も滞在する。飛行経路については、なるべく種子島上空は通過しないというあくまで防衛省のイメージによる作成で、当然米軍の思惑は考慮されていない。またFCLP・自衛隊施設と種子島の自衛隊誘致については、リンクしていないという一方で、宿舎は種子島に設置すると述べる。事前集積拠点は、災害時の活用に限定しての説明であり、国内に常設拠点は無いと。最後に市長の利活用計画は承知しているが、運用に影響のない範囲でその意向もできる限り取り入れた計画にしたいと、配慮したとも取れるが、これは懐柔策に間違いない。ゆめゆめ市長は誘いに乗ってはならない。この場においても防衛省は地元の理解と協力が重要だと述べたという。何度も。

市民団体「馬毛島への米軍施設に反対する市民・団体連絡会」は12月17日県庁を訪れ、三反園訓県知事に、移転反対を表明するよう、全国からの1254団体の署名とともに「知事の発言は当事者意識が感じられない」「地元の多くは反対。県民の安心安全を守る立場の知事は態度を明確にせよ」と迫った。参加した知人によると、知事はおろか副知事すらも出席せず、桑原毅彦企画課長ほか3名が出席するも、その課長の回答は「知事の欠席理由」には「都合がつかず・・・とりあえず・・・皆さんの要請はあげる・・・」「防衛省の来庁日時」にも「調整中ですのでお答えいたしかねる」。「そのように上に言われているのか」にも「いえ、そのようなことは・・・とにかく調整中」と調整中の連発。なにしろ自己紹介すらしていないと聞く。この日は「鹿児島に米軍はいらない県民の会」も同様に反対表明を求める要請書を提出した。その知事は12月1日県議会において「地元とは一市三町」で「今回は一定の合意。地元の動向を注視」と従来通りで、他にも「地元の今後の対応を注視」「地元に対し十分かつ丁寧な説明を」「何よりも地元の動向が大事で注視」・・・「地元&注視」が好みらしい。結局知事は問題を国と「地元」に丸投げしているとも言える。国から見たら鹿児島県も「地元」であると、地元紙に指摘される始末。

西之表市は買収合意の報道を受け、12月10日「お知らせ版」で「『一定の合意』があったようです」「『確実な段階になったら、市に正式な説明を行う』とのことです」「FCLPについては現状でも検討対象(候補地)のままで、国も地元の理解と協力がきわめて大事だとしています」とまるで他人事のよう。この期に及んでもこれでいいんかい!市長、ダメ県知事とどこが違うのか。

地元漁師らによるTA相手の訴訟2件は、それぞれ地裁、高裁で棄却された。

【来ました!!山本朋広防衛副相が】

12月20日、何故か来庁時間を公表しない、おそらく抗議の声や混乱を嫌ってであろうが。私は連れ合いと二人で7時過ぎから中学校前の交差点でスタンディング。9時前から庁舎入り口で「馬毛島を守れ」「自衛隊は憲法違反だ」のプラカード。副相到着は10時半頃、退庁はおよそ30分後であった。反対派が約100人、賛成派は10名弱で、これが現在西之表市民の実勢であろう。

 報道では防衛省の説明は大筋5点で、(先の所管事務調査と重複するが)①12月19日時点で島の63%を取得。②自衛隊馬毛島基地(仮称)を設置する。年間を通して自衛隊F35戦闘機等の訓練や整備の施設となり、災害等の緊急事態には人員物資の集積拠点とする。③環境調査を再開、施設整備に必要な調査も実施。④FCLP施設としては引き続き候補というが「FCLP候補については馬毛島以外に無い」と断言する。なおFCLPに関して河野太郎防衛相は12月20日の閣議後会見で「FCLPについては硫黄島の代替ということで話が出ておりますので、それについては今後しっかりと検討していきたい」と述べるが、既に2011年の2+2で明記されているのに、今さら検討はあり得ない。(原発反対どこいった?河野太郎議員!)⑤島内の市有地については市が提案する利活用案に配慮したい。以上であるが、会談後記者団との一問一答において我らが市長はFCLPについては「現状は候補地に変わりはなく、という説明であり、まだ賛否を申し上げる段階ではない。FCLP以外の活用法を考えていく」。自衛隊施設を容認するかに「そうではない。FCLPがぼかされて、なし崩し的に進められていく印象がある」で、「整理して防衛省に考えを申し上げたい」と述べた。これが我らの市長であります。なお市長がもっとも主張するFCLP以外の活用案について言及しなかったのは、失念かもしれないと言う。しゃんとせんかい、市長!

 しかし、と言ってはナンだけど、この市長さんは12月議会においては、議員の質問「国が配慮するという市長の利活用について、FCLPとの共存はあると考えているのか」には「馬毛島にはFCLP以外の利活用がある。国からの協力等を受けることはできない」。質問「市長の目指すまちづくりや市民の暮らしのあり方はどのようなものか、そしてその実現に自衛隊施設や演習、FCLPは必要か」にも「市の長期振興計画にはFCLPに関連する計画は無い」と述べ、別の議員質問「次期市長選に立候補するのか。その際馬毛島に関する選挙公約はどうするのか」に市長は「次期選挙については適切な時期に説明したい。馬毛島については前回の選挙時(馬毛島軍事施設絶対反対)から一貫して変わっていない」と明言している。

このように市長は決して賛成でないのを、西之表市民はおおよそ理解しているのだが、市外の人々がテレビ等での市長の発言、姿を見ると、なんともはや情けない姿に見えてしまうのは明らかで、断固反対!と明言すれば済むと私は思うのだが、肝心の市長はそれができない、しない・・・。(手元に防衛省の西之表市に対する「ご説明資料」があるが、それは割愛)

市は12月25日発行の「馬毛島問題。防衛副大臣が本市を来訪」を全戸配布しているが、その中の「未来へ、選択の覚悟」において市長は「私は、市長選でFCLP建設反対を唱えて当選しました。馬毛島にふさわしい利用法をFCLP以外に追求する考えは、一切変わっていません。FCLP施設建設に賛同する声は、人口増や経済効果を期待してのことです。市長として、賛成、反対、それぞれの考えに至る市民の心情を思います(略)住民の対立による地域社会の分断、破壊は不毛です。(略)先祖代々のふるさとを未来の子孫に引き継ぐ重大な選択へ、しっかり責任を果たす覚悟です」と訴えている。多少は進歩かも。

【陳情書】

19年6月市議会に出されていた、農協、漁協、商工会、建設業など6団体からの陳情「馬毛島への米軍空母艦載機離発着訓練(FCLP)及び自衛隊施設設置に関する防衛省による住民説明会の早期開催を求める」は、12月本会議で9対4で不採択となる。全協や本会議において「市議会の意見書が無視されたことに抗議すべき」「買収合意の発表直後だけに市議会が合意を容認したうえで説明会を開くとの誤解を市民に与える」「他自治体の例を見ても防衛省の説明が信頼するには程遠く、それに市、市議会が関与しても陳情が求める『知る権利』の担保にはならず、逆に無責任な結果になる恐れがある」等の意見であった。

【米軍ヘリが連続飛来】

10月21日に米軍普天間飛行場所属のCH53E大型輸送ヘリ1機が給油のため旧種子島空港に着陸以来、機体の不具合のため、離陸できない状態であったが、22日正午過ぎ、同所属のMV22オスプレイによる協力支援で約3時間半後に離陸した。同空港の使用は事前に申請されていたが、機体の不具合や搭乗人数などについての詳細は聞けていないという。また10月26日には米軍ヘリ2機が種子島空港に緊急着陸した。2機のうち、AHI攻撃ヘリの不具合が原因らしい。今回もまた米軍オスプレイが修理部品を届け、もう1機のAHI多用途ヘリと離陸していったが、空港管理側に事前の使用申請は無く、詳細も承知していないとのことである。

このように県内各地で自衛隊そして米軍の活躍が花盛り!奄美大島では初めての「日米共同訓練」、9月23日終了。23日にはサービス精神が旺盛な米軍らしく、地元住民との交流会も開かれ、米兵20人と親子連れの家族ら約170人がゲームや運動を楽しんでいる。「人殺しの心理学」を身に着けている米兵、さすがうまい!

かと思えば鹿屋航空基地では、12月29日、米軍空中給油機による3回目の訓練があったが、9月30日には同基地格納庫で整備中のPC哨戒機の機体からエンジンが落下、自衛隊1等海曹が死亡している。鹿屋も自衛隊機、米軍機が日常の一光景になっている。

そして陸自霧島演習場でも20年1月共同訓練にオスプレイも参加する。訓練名は「フォーレスト・ライト(森の光)」だというが、なんだか童話みたいでファンタスティック!「私たちが行った訓練で日本防衛に焦点を当てたものは全く無かった。重点はいつも海外展開だった」と元在沖海兵隊員は語るのだが。

そして(そしてが続く)お隣の陸自国分駐屯地では、女性新入隊員の訓練教育が初めて行われるという。18~32歳の8人が34人の男性隊員と共に10km行進などを約3か月行う。米軍女性兵士に続けってか。

そして(まだまだ続きます)現在九州防衛局は各県で防衛セミナーを企画しており、奄美大島や鹿児島市でも実施されているが、10月19日の中種子町における防衛講座もその一環であると思われる。

そして(もう終わりです)10月15日には十島村が自衛隊参加で火山防災訓練を行うが、既に9月には十島村は離島奪還訓練場誘致を表明している。なお鹿児島海上保安部には新造ヘリ搭載型巡視船(PLH)2隻が配備される。海保最大級の巡視船「れいめい」(約6500トン)「しゅんこう」(約6000トン)に加え、7隻体制になる。もう鹿児島県は立派な軍県であります。いつでもどこでもあなたと会える、愛される自衛隊です。

11月9日、石破茂元防衛相が来島し、「みんなで創ろう『種子島の希望と未来』」(共催・「種子島の希望と未来」講演実行委員会その他)で講演するが、その中で石破氏は「自衛隊は災害救助隊ではない」と、当然でごもっとも。が、アンチ石破派からの反対が相当あったようだ。

【19年度自衛隊演習】

「令和元年度方面隊演習(西部方面隊の概要について)」が10月18日陸幕広報室より発表あり。続いて11月1日には「令和元年度自衛隊統合演習(実動演習)」の発表が統合幕僚監部よりあった。時期は11月11日~21日、実施場所は「種子島、周辺海空域ほか」、主要訓練項目は1.水陸両用作戦2.総合ミサイル防空を考慮した防空作戦3.海空作戦4.統合電子戦5.サイバー攻撃等対処6.統合後方補給7.共同基地警備8.空挺作戦、演習参加規模は人員約3万2千名、車両約1,600両、艦艇8隻、航空機約160機。なお実動演習は今回7回目となるが実動演習と指揮所演習を毎年交互に行っており、本年度は実動演習であるとの説明である。

この演習について「戦争をさせない種子島の会」は10月23日付で市長宛に「令和元年度方面隊実動演習(西部方面隊)」に関する申し入れを行い、1.市の使用を許可しない2.市への要請事項を詳細に明らかにし、併せて市民への広報も行うこと、以上を求めた。市総務課長の回答は「今回、市に対しては、港と駐車場の一時的な使用のみで特段の訓練での使用申し入れは無い」という。

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