私と憲法220号(2019年8月25日号)


韓国の友人たちへのメッセージ

日韓市民は連帯して、歴史の逆流安倍政権を必ず打倒そう!

8月15日、韓国ソウル市では終日、さまざまな市民団体による集会が開かれた。この日を韓国では日本の植民地から解放された日、「光復節」と呼ぶ。夕刻6時からは750もの市民団体が共同してキャンドル大集会が開かれ、10万人を超える人びとが参加した。集会を組織したのは広範な市民社会によって構成される「市民社会連帯会議」など4団体だ。筆者は壇上に上がった日本の各界の市民たちと一緒に、日本の市民運動を代表して挨拶をした。これは事前に用意した原稿の全文だが、集会の時間の都合で半分ほどに切り縮めることになった。

アンニョンハシムニカ
こんばんは

韓国のすべての友人のみなさん
私は日本の「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」を代表し、ご参集のすべての皆さんに連帯のご挨拶を申し上げます。
憲法改悪を自らの歴史的任務ととらえる安倍政権は戦後歴代の政権の中でも、もっとも反動的な政権です。平和憲法を変えて、日本を戦争する国にするための政権です。私たちは、戦争に反対し、東北アジアの平和と共生を実現するためには、安倍政権を倒し、政治を変えることなくして不可能であることを知っています。

先ごろ、7月に日本の参議院議員選挙がありました。憲法を変えるためには国会で安倍政権の側が3分の2以上の議席を獲得することが必要なのですが、私たちは国会内の野党各党と共闘して、安倍政権のこの目標を阻止しました。これは日本市民運動の大きな勝利でした。

しかし、私たちはいまだに安倍政権に国会の多数を許し、政権を変えることができておりません。

安倍政権は2017年の総選挙で北朝鮮のミサイルの危機を煽りたて、「国難」と叫んで民衆の支持を引き寄せました。こうした安倍首相の緊張を煽り立てる政策は、歴史的な南北首脳会談、米朝首脳会談で破綻しました。にもかかわらず、今回の参院選では、韓国への敵対感情を煽り立て、自らの政権への支持のために利用しました。徴用工問題で韓国を敵対視していた安倍政権は、G20においては韓国の文大統領とだけ会談を行わないという極めて傲慢な外交対応に出て、日本の右翼的ナショナリズムを煽り立て、選挙戦の最中に半導体などの「対韓国輸出規制」を強行し、この2日には閣議決定をもって「輸出優遇措置を除外する政令」を決定しました。

本日は8月15日。韓国では「光復節」とよばれ、日本の私たちは「敗戦記念日」と呼びます。

安倍政権のように、いたずらに国と国の対立を煽り立て、緊張を激化させる政策を進めるのではなく、かつての日本が朝鮮半島を始めとするアジア諸国を侵略し、植民地化した歴史を直視し、その厳しい反省の上に、東北アジアの非核・平和と共生を目指すことこそ、求められております。

わたしたち日本の市民社会は安倍政権のこの韓国敵視の決定の撤回を求めます。日本では安倍政権が韓国敵視政策を扇動するもとで、政権閣僚や政治家、一部右翼分子による日韓友好に水を差そうとする動きが急速に強まっています。市民の活動家に対する不当な攻撃が増大し、また愛知県で行われている文化的展示会にたいしては日本軍軍隊慰安婦の「少女像」の展示を口実にテロの予告がされ、展示が中止になるようなことも起きています。

日韓両国はもっとも近い友人であり、両国の民衆が手を携えて進むことなくして、東北アジアの非核・平和は実現しません。
東京の新大久保のコリアンタウンには今日も大変大勢の日本や韓国の若者たちが押し寄せ、韓国の文化に触れながら、楽しく買い物をしています。この次世代を担う若者たちの日韓民衆の友好の精神こそ発展させなくてはなりません。東北アジアの歴史をつくるのは民衆であり、とりわけ若者たちです。

私たちは安倍政権がこのすばらしい日韓友好の雰囲気に水を差すのを許しません。
今日、韓国の市民の皆さんのプラカードに「安倍政権NO!」と書かれていることを私は痛恨の思いで拝見しています。このようなスローガンをみなさんに叫ばせている責任は私たち日本の市民にもあります。私たちの安倍政権との闘いが道半ばの故です。私たちは日本市民の責任において、再び戦争の道を歩もうとする安倍政権を打倒するまでたたかいます。

安倍政権の憲法改悪と戦争法推進に反対してたたかう日本の民衆にとって、2017年の韓国のキャンドル革命がどれほど勇気づけてくれたか。韓国市民から贈られた8000本のキャンドルが、安倍政権の盤踞する国会を包囲した光景を想像してください。日韓民衆の闘いはひとつです。

私たちは帰国してすぐの19日、国会前で「韓国敵視を煽るな」という集会を行います。また韓国への経済報復のための政令が発効する前日の27日、首相官邸前で「対韓輸出規制拡大反対」の行動を行う予定です。

私たちは必ず安倍政権を倒し、日本の政治を変えて、日韓市民社会の連帯をいっそう促進し、東北アジアに非核と平和、連帯の新時代を切り拓くために奮闘します。
ともに頑張りましょう。
カムサハムニダ。

2019年8月15日  
戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会
共同代表 高田健

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<声明> 韓国は「敵」なのか

韓国大法院の「徴用工」判決以来、日韓政府の関係悪化は拡大する一方にある。安倍政権が根拠とする「日韓基本条約や請求権協定で解決済み」という判断は、これまでの日本の政府の見解を大きく逸脱するものだ。日本国内のさまざまな市民や団体からは日韓の関係改善と連帯を願う多くの声明が出されているのでいくつかを紹介する。

「韓国は「敵」なのか」声明の会

はじめに
私たちは、7月初め、日本政府が表明した、韓国に対する輸出規制に反対し、即時撤回を求めるものです。半導体製造が韓国経済にとってもつ重要な意義を思えば、この措置が韓国経済に致命的な打撃をあたえかねない、敵対的な行為であることは明らかです。
日本政府の措置が出された当初は、昨年の「徴用工」判決とその後の韓国政府の対応に対する報復であると受けとめられましたが、自由貿易の原則に反するとの批判が高まると、日本政府は安全保障上の信頼性が失われたためにとられた措置であると説明しはじめました。これに対して文在寅大統領は7月15日に、「南北関係の発展と朝鮮半島の平和のために力を尽くす韓国政府に対する重大な挑戦だ」とはげしく反論するにいたりました。

1、韓国は「敵」なのか

国と国のあいだには衝突もおこるし、不利益措置がとられることがあります。しかし、相手国のとった措置が気にいらないからといって、対抗措置をとれば、相手を刺激して、逆効果になる場合があります。
特別な歴史的過去をもつ日本と韓国の場合は、対立するにしても、特別慎重な配慮が必要になります。それは、かつて日本がこの国を侵略し、植民地支配をした歴史があるからです。日本の圧力に「屈した」と見られれば、いかなる政権も、国民から見放されます。日本の報復が韓国の報復を招けば、その連鎖反応の結果は、泥沼です。両国のナショナリズムは、しばらくの間、収拾がつかなくなる可能性があります。このような事態に陥ることは、絶対に避けなければなりません。
すでに多くの指摘があるように、このたびの措置自身、日本が多大な恩恵を受けてきた自由貿易の原則に反するものですし、日本経済にも大きなマイナスになるものです。しかも来年は「東京オリンピック・パラリンピック」の年です。普通なら、周辺でごたごたが起きてほしくないと考えるのが主催国でしょう。それが、主催国自身が周辺と摩擦を引き起こしてどうするのでしょうか。
今回の措置で、両国関係はこじれるだけで、日本にとって得るものはまったくないという結果に終わるでしょう。問題の解決には、感情的でなく、冷静で合理的な対話以外にありえないのです。
思い出されるのは、安倍晋三総理が、本年初めの国会での施政方針演説で、中国、ロシアとの関係改善について述べ、北朝鮮についてさえ「相互不信の殻を破り」、「私自身が金正恩委員長と直接向き合い」、「あらゆるチャンスを逃すことなく」、交渉をしたいと述べた一方で、日韓関係については一言もふれなかったことです。まるで韓国を「相手にせず」という姿勢を誇示したようにみえました。そして、六月末の大阪でのG20の会議のさいには、出席した各国首脳と個別にも会談したのに、韓国の文在寅大統領だけは完全に無視し、立ち話さえもしなかったのです。その上でのこのたびの措置なのです。
これでは、まるで韓国を「敵」のように扱う措置になっていますが、とんでもない誤りです。韓国は、自由と民主主義を基調とし、東アジアの平和と繁栄をともに築いていく大切な隣人です。

2、日韓は未来志向のパートナー

1998年10月、金大中韓国大統領が来日しました。金大中大統領は、日本の国会で演説し、戦後の日本は議会制民主主義のもと、経済成長を遂げ、アジアへの援助国となると同時に、平和主義を守ってきた、と評価しました。そして日本国民には過去を直視し、歴史をおそれる勇気を、また韓国国民には、戦後大きく変わった日本の姿を評価し、ともに未来に向けて歩もうと呼びかけたのです。日本の国会議員たちも、大きく拍手してこの呼びかけに答えました。軍事政権に何度も殺されそうになった金大中氏を、戦後民主主義の中で育った日本の政治家や市民たちが支援し、救ったということもありました。また日本の多くの人々も、金大中氏が軍事政権の弾圧の中で信念を守り、民主主義のために戦ったことを知っていました。この相互の敬意が、小渕恵三首相と金大中大統領の「日韓パートナーシップ宣言」の基礎となったのです。
金大中大統領は、なお韓国の国民には日本に対する疑念と不信が強いけれど、日本が戦前の歴史を直視し、また戦後の憲法と民主主義を守って進むならば、ともに未来に向かうことは出来るだろうと大いなる希望を述べたのでした。そして、それまで韓国で禁じられていた日本の大衆文化の開放に踏み切ったのです。

3、日韓条約、請求権協定で問題は解決していない

元徴用工問題について、安倍政権は国際法、国際約束に違反していると繰り返し、述べています。それは1965年に締結された「日韓基本条約」とそれに基づいた「日韓請求権協定」のことを指しています。
日韓基本条約の第2条は、1910年の韓国併合条約の無効を宣言していますが、韓国と日本ではこの第2条の解釈が対立したままです。というのは、韓国側の解釈では、併合条約は本来無効であり、日本の植民地支配は韓国の同意に基づくものでなく、韓国民に強制されたものであったとなりますが、日本側の解釈では、併合条約は1948年の大韓民国の建国時までは有効であり、両国の合意により日本は韓国を併合したので、植民地支配に対する反省も、謝罪もおこなうつもりがない、ということになっているのです。
しかし、それから半世紀以上が経ち、日本政府も国民も、変わっていきました。植民地支配が韓国人に損害と苦痛をあたえたことを認め、それは謝罪し、反省すべきことだというのが、大方の日本国民の共通認識になりました。1995年の村山富市首相談話の歴史認識は、1998年の「日韓パートナーシップ宣言」、そして2002年の「日朝平壌宣言」の基礎になっています。この認識を基礎にして、2010年、韓国併合100年の菅直人首相談話をもとりいれて、日本政府が韓国と向き合うならば、現れてくる問題を協力して解決していくことができるはずです。
問題になっている元徴用工たちの訴訟は民事訴訟であり、被告は日本企業です。まずは被告企業が判決に対して、どう対応するかが問われるはずなのに、はじめから日本政府が飛び出してきたことで、事態を混乱させ、国対国の争いになってしまいました。元徴用工問題と同様な中国人強制連行・強制労働問題では1972年の日中共同声明による中国政府の戦争賠償の放棄後も、2000年花岡(鹿島建設和解)、2009年西松建設和解、2016年三菱マテリアル和解がなされていますが、その際、日本政府は、民間同士のことだからとして、一切口を挟みませんでした。
日韓基本条約・日韓請求権協定は両国関係の基礎として、存在していますから、尊重されるべきです。しかし、安倍政権が常套句のように繰り返す「解決済み」では決してないのです。日本政府自身、一貫して個人による補償請求の権利を否定していません。この半世紀の間、サハリンの残留韓国人の帰国支援、被爆した韓国人への支援など、植民地支配に起因する個人の被害に対して、日本政府は、工夫しながら補償に代わる措置も行ってきましたし、安倍政権が朴槿恵政権と2015年末に合意した「日韓慰安婦合意」(この評価は様々であり、また、すでに財団は解散していますが)も、韓国側の財団を通じて、日本政府が被害者個人に国費10億円を差し出した事例に他なりません。一方、韓国も、盧武鉉政権時代、植民地被害者に対し法律を制定して個人への補償を行っています。こうした事例を踏まえるならば、議論し、双方が納得する妥協点を見出すことは可能だと思います。
現在、仲裁委員会の設置をめぐって「対立」していますが、日韓請求権協定第3条にいう仲裁委員会による解決に最初に着目したのは、2011年8月の「慰安婦問題」に関する韓国憲法裁判所の決定でした。その時は、日本側は仲裁委員会の設置に応じていません。こうした経緯を踏まえて、解決のための誠実な対応が求められています。

おわりに

私たちは、日本政府が韓国に対する輸出規制をただちに撤回し、韓国政府との間で、冷静な対話・議論を開始することを求めるものです。
いまや1998年の「日韓パートナーシップ宣言」がひらいた日韓の文化交流、市民交流は途方もない規模で展開しています。BTS(防弾少年団)の人気は圧倒的です。テレビの取材にこたえて、「(日本の)女子高生は韓国で生きている」と公然と語っています。300万人が日本から韓国へ旅行して、700万人が韓国から日本を訪問しています。ネトウヨやヘイトスピーチ派がどんなに叫ぼうと、日本と韓国は大切な隣国同士であり、韓国と日本を切り離すことはできないのです。
安倍首相は、日本国民と韓国国民の仲を裂き、両国民を対立反目させるようなことはやめてください。意見が違えば、手を握ったまま、討論をつづければいいではないですか。
2019年7月25日   呼びかけ人

<呼びかけ>(*は世話人) 2019年7月25日 現在75名 青木有加(弁護士) 秋林こずえ(同志社大学教授) 浅井基文(元外務省職員) 庵逧由香(立命館大学教授) 石川亮太(立命館大学教員) 石坂浩一(立教大学教員)* 岩崎稔(東京外国語大学教授) 殷勇基(弁護士) 内海愛子(恵泉女学園大学名誉教授)* 内田雅敏(弁護士)* 内橋克人(評論家) 梅林宏道(ピースデポ特別顧問) 大沢真理(元東京大学教授) 太田修(同志社大学教授) 大森典子(弁護士) 岡田充(共同通信客員論説委員)* 岡本厚(元「世界」編集長)* 岡野八代(同志社大学教員) 荻野富士夫(小樽商科大学名誉教授) 小田川興(元朝日新聞ソウル支局長) 大貫康雄(元NHKヨーロッパ総局長) 勝守真(元秋田大学教員) 勝村誠(立命館大学教授) 桂島宣弘(立命館大学名誉教授) 金子勝(慶応大学名誉教授) 我部政明(琉球大学教授) 鎌田慧(作家) 香山リカ(精神科医) 川上詩朗(弁護士) 川崎哲(ピースボート共同代表) 小林久公(強制動員真相究明ネットワーク事務局次長) 小森陽一(東京大学名誉教授) 在間秀和(弁護士) 佐川亜紀(詩人) 佐藤学(学習院大学特任教授) 佐藤学(沖縄国際大学教授) 佐藤久(翻訳家) 佐野通夫(こども教育宝仙大学教員) 島袋純(琉球大学教授) 宋 基燦(立命館大学准教授) 高田健(戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会共同代表) 髙村竜平(秋田大学教育文化学部) 高橋哲哉(東京大学教授) 田島泰彦(早稲田大学非常勤講師、元上智大学教授) 田中宏(一橋大学名誉教授)* 高嶺朝一(琉球新報元社長) 谷口誠(元国連大使)    外村大(東京大学教授) 中島岳志(東京工業大学教授) 永田浩三(武蔵大学教授) 中野晃一(上智大学教授) 成田龍一(日本女子大学教授) 西谷修(哲学者) 波佐場清(立命館大学コリア研究センター上席研究員) 花房恵美子(関釜裁判支援の会) 花房敏雄(関釜裁判支援の会元事務局長) 羽場久美子(青山学院大学教授)  広渡清吾(東京大学名誉教授) 飛田雄一(神戸学生青年センター館長) 藤石貴代(新潟大学) 古川美佳(朝鮮美術文化研究者) 星川淳(作家・翻訳家) 星野英一(琉球大学名誉教授) 布袋敏博(早稲田大学教授・朝鮮文学研究) 前田哲男(評論家) 三浦まり(上智大学教授) 三島憲一(大阪大学名誉教授) 美根慶樹(元日朝国交正常化交渉日本政府代表) 宮内勝典(作家) 矢野秀喜(朝鮮人強制労働被害者補償立法をめざす日韓共同行動事務局長) 山口二郎(法政大学教授) 山田貴夫(フェリス女学院大学・法政大学非常勤講師、ヘイトスピーチを許さないかわさき市民ネットワーク事務局) 山本晴太(弁護士) 和田春樹(東京大学名誉教授)*

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声明-安倍政権の経済侵略・歴史歪曲・平和妨害策動に断固反対する!

在日韓国民主統一連合

今日午前、安倍政権は閣議で「ホワイト国」から韓国を除外する政令改正を決定した。
今後、日本は打撃を与えられる品目を中心に韓国に対する輸出規制を全面的に強化するだろう。その甚大な影響によって特に韓国経済は大きな困難に直面する。

昨年、韓国の大法院(最高裁)は元徴用工たちの訴えを認め、当該日本企業に賠償を命じる判決を下した。しかし安倍政権は徴用工問題は「1965年韓日請求権協定によって完全かつ最終的に解決された」とし、大法院判決に強く反発してきた。また昨年は南北関係と朝米関係が画期的に改善された年であった。さらに今年6月末に板門店で電撃的に朝米首脳会談が開催されたことで、朝鮮半島の平和への流れは今後より一層進展することが予測される。

軍事大国化と歴史歪曲を共に推進してきた安倍政権に、元徴用工判決および朝鮮半島の平和の潮流が重くのしかかっている。この流れに対抗するために安倍政権は7月1日に韓国に対する半導体関連の輸出規制措置を決定したのに続いて今日、輸出規制の範囲を大幅に拡大する「ホワイト国」除外措置を決定したのである。安倍政権が韓国に対する輸出規制措置を強化する狙いは、△全面的な対韓輸出規制によって韓国経済を徹底的に弱体化させ対日従属化を深化させる△元徴用工問題などの歴史問題に対して、日本の主張に韓国を従わせようとする△朝鮮半島の和解と平和の流れに日本が妨害を加える、ことにある。まさに安倍政権の今回の措置は経済侵略(報復)であり、歴史歪曲であり平和妨害策動である。安倍政権がきわめて侵略的な目的をもって今回の決定を下したことは明白である。韓統連は安倍政権の不当な対韓輸出規制措置に断固反対する。

韓国では安倍政権の不当な経済報復に対して各界各層で反対運動が燎原の火のように拡がっている。自発的な日本製品ボイコット運動や日本への旅行を中止する運動が広く国民の支持を集めている。こうした中、多くの市民社会団体と労働組合などが結集して「安倍糾弾市民行動」が結成され、キャンドル集会を開始した。当面、日本から解放された記念日である光復節74周年(8・15)キャンドル集会が注目を集めている。今日の「ホワイト国」除外決定によって韓国国民の安倍政権に対する糾弾の声はよりいっそう拡大するだろう。今、日本の干渉と侵略を阻止するための挙族的な闘争が求められている。韓統連は韓国の「安倍糾弾・歴史清算・平和実現」の闘いに全力で合流していく決意を明らかにする。

侵略と戦争に染められた日本の不幸な歴史を繰り返してはならない。
最後に韓統連メンバーは韓国の闘いに連帯して8日午後6時半から経済報復反対!歴史歪曲反対!平和妨害策動反対!を掲げて、首相官邸に向けた抗議活動を日本の友人と共に行うことを明らかにする。
2019年8月2日  在日韓国民主統一連合

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平和に逆行した日本政府の対韓政策に強く抗議する!

私たち日韓市民は東アジアの平和を求めている!
日韓市民交流を進める「希望連帯」

日本政府による韓国政府への対応は、礼を失し、節操がなく、常軌を逸しています。
8月2日の「ホワイト国リスト」から韓国除外という閣議決定は、日韓友好を根底から破壊する行為であり、私たちは強く抗議すると同時に、日本社会の一員として韓国の皆さんにお詫びする気持ちでいっぱいです。

自由貿易の恩恵を享受している日本は、先のG20でもそうだったように、率先してこの体制を堅持していく立場にいます。それにも拘わらず輸出手続きの規制を強化し、管理貿易を強めることは、WTO規約違反だけでなく日本経済を傷つける愚かな行為です。 このような日本政府の動きは、韓国を仮想敵国として内憂を外患にして危機を乗り越える、行き詰まった政権の常套手段でもあります。まずは、消費税引き上げによる国内景気の失速への対応、拡大する格差の是正、対ロシアをはじめとした外交政策失敗の回復にこそ努力すべき時です。

日本政府がいくら「安保上の措置」と言っても、昨年の韓国大法院(最高裁)による元徴用工関連判決をはじめ、安倍政権の言いなりにならない韓国政府への制裁にほかなりません。また、朝鮮半島の平和、非核化に関して、安倍政権が関与できないまま南北融和が進められていますが、こういった「置いてきぼり」への報復とも受けとめられます。

さらに、2016年から17年にかけておよそ1,700万人もの人びとが参加し、平和裏に政権交代を実現させた韓国の民主主義改革への危機感の表われでもあります。韓国で民主政権が誕生して、南北首脳会談など南北交流が進んだのは偶然ではありません。戦後、韓国の保守政権は一貫して反共(北)政策を強行し、国内の南北融和勢力を激しく監視、弾圧してきました。経済も財閥企業優遇政策をとり、韓国社会に大きな歪みと格差が拡がり、膨大な貧困層が生まれました。大統領選挙では、その是正へ向けての政策転換が多くの有権者から支持を受け、民主政権が誕生しました。日本とは真逆な転換であり、日本の保守政権はその波及を警戒しているわけです。

韓国は1987年に大統領直接選挙実施などの民主化を実現させています。あらゆる権限が大統領に集中、独裁と化していたことを反省し、国会と司法に権限を振り分け、憲法裁判所や国家人権委員会などを創設しています。近代立憲国家として当然である三権分立に依って、元徴用工判決を司法判断と尊重しました。むしろ「政権が司法判決を左右できる」という日本の保守派や日本政府の主張こそが三権分立に基づいた近代民主主義とは程遠いのです。

韓国では、このような安倍政権の居直りと報復を見抜き、南北融和を阻害していることに危惧し、「NO!ABE」の声が急速に拡がっています。同時に、韓国国内の安倍政権に連動する反共・親日勢力が民主政権への攻撃を強めていることにも怒りを表明しています。

しかし、日本のマスコミは、韓国全体が「反日」を加速させ、日本社会全体への批判を強めているように意図的な報道を繰り返し、韓国保守派マスコミの「朝中東」(朝鮮日報・中央日報・東亜日報)の保守的論調の日本語版をそのまま垂れ流しています。日本のマスコミは、客観的公正な立場で、事実を歪めないで報道すべきです。

最後に、民主主義や東アジアの平和と安定に逆行する今回の閣議決定に抗議し、日本政府に対して冷静な平和外交の実施を強く求めます。私たちは今年3月27日、「東アジアの平和をめざす日韓市民連帯~日本からのアピール」を発表、市民レベルでの平和的国際交流を進めて来ました。今後、日韓市民によるさらなる平和と友好の相互交流、連帯を進めることを表明します。
2019年8月5日  日韓市民交流を進める「希望連帯」

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声明 安倍政権は対韓報復の輸出規制を撤回し、過去清算に真摯に向き合え!- 今こそ日韓民衆は「安倍NO!」で連帯を強めよう -

日韓民衆連帯全国ネットワーク

 安倍政権は7月4日の半導体3部品の対韓輸出規制に続き、8月2日、韓国を「ホワイト国」リストから除外する閣議決定をおこなった。
私たちはこれらの措置に強く抗議し、ただちに撤回を求めるものである。
今回の一連の措置は、昨年10月末以来の韓国大法院による元徴用工への賠償判決を否定し、また朴槿恵政権時の「日韓合意」で作られた「慰安婦」財団の解散措置を進めた文在寅政権に対する政治的報復であることは明らかである。そもそも徴用工問題も「慰安婦」問題も、日本政府が過去の朝鮮植民地支配の真摯な反省の上に被害者も納得のいくまっとうな解決を図ってこなかったことが原因である。
河野外相にいたっては韓国大使を呼びつけ、メディアの前で大使の説明をさえぎり「無礼だ」などと韓国の人々の感情を逆なでする言辞をあえて吐いた。河野こそ礼節を欠いた「無礼者」ではないか。
これに文在寅政権が屈せず、政治的経済報復の禁止を掲げるWTOへの提訴が焦点化すると、こんどはこそこそと何の根拠も示さず朝鮮への横流し疑惑まで持ち出して「安保上の措置」「国内手続きの問題に過ぎない」などと言い逃れを始めている。
また自らを「蚊帳(かや)の外」に追いやった、南北首脳合意や米朝首脳会談を推進する文在寅政権への妨害・報復の意図も込められている。
これにより日韓関係は「過去最悪」といわれる事態に陥った。「過去最悪」である理由は、安倍政権が朴槿恵残党勢力や保守マスコミと気脈を通じ、キャンドル革命で生まれ過去清算と南北対話を強調する”文在寅政権潰し”に照準を合わせているからである。
いま韓国の人たちは、こうした安倍政権の意図を見抜き、「歴史歪曲・経済報復・平和への脅威」としてこれに反対して起ち上がっている。
日本のマスメディアの多くは、韓国の人たちの動きを「反日行動」と報じているが、けっして「反日」ではなく「NO!安倍」の動きなのである。いま韓国の人たちの日本製品不買や日本旅行取りやめなど、安倍政権が放った刃が日本社会にも影を落としつつある。
いま重要なことは日本の民衆が自ら声を挙げ、日韓民衆交流の拡大と「NO!安倍」で連帯を強めていくことである。安倍政権は対韓報復の輸出規制を撤回せよ!過去清算に真摯に向き合え!
2019年8月6日 日韓民衆連帯全国ネットワーク

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【声明】安倍政権は韓国への輸出規制を撤回し、徴用工問題を話し合いで解決せよ

日朝協会

 安倍政権は7月1日、半導体製造に必要な3品目の韓国への輸出規制強化を発表し、4日から実施している。さらに8月2日、安全保障上の友好国として規制緩和・優遇措置が適用される「ホワイト国」(日本は27か国を指定)から韓国を除外する閣議決定を行い、いっそうの輸出規制強化を実施した。これは明らかに経済制裁である。安倍政権は、輸出規制の理由として、「日韓間の信頼関係が著しく損なわれた」と主張している。しかし、経済産業省が「旧朝鮮半島出身労働者問題についてはG20までに満足する解決策が全く得られなかった」ことが背景だと認めているように、輸出規制強化は、明らかに徴用工問題に関する韓国への「対抗措置」、経済制裁=報復である。

徴用工問題という政治的な問題を経済問題に利用する安倍政権の措置に対して、「韓国への輸出規制 通商国家の利益を損ねる」(「毎日新聞」7月4日)、「対韓輸出規制 『報復』を即時撤回せよ」(「朝日新聞」7月3日)、「元徴用工めぐる対抗措置の応酬を自粛せよ」(「日本経済新聞」7月2日)など、日本のメディアからも批判が出ている。国の内外からこうした批判が沸き起こると、政府は、徴用工問題とは関係ない安全保障上の問題だなどと、理由を二転三転させている。しかし、今回の経済制裁が、徴用工問題に対する報復措置であり、政治的な目的に経済(貿易)を使うものだということは明白である。

韓国の大法院(最高裁判所)が日本製鉄(新日鉄住金)と三菱重工に元徴用工への賠償金の支払を命じる判決を出したのに対して、安倍晋三首相は、元徴用工の個人請求権は1965年6月の日韓基本条約と請求権・経済協力協定で「完全かつ最終的に解決している」、大法院判決は「国際法に照らしてあり得ない判断だ」と韓国を激しく非難した。河野太郎外務大臣も「判決は日韓友好関係の法的基盤を根本から覆す」「政府はいわれなき要求を拒否する」などと非難し、韓国政府に対し、国際法違反を是正する措置を強く求め、国際裁判や対抗措置を含む対応を行う旨の談話を発表した。さらに、政府は日本製鉄・三菱重工に対して「賠償に応じるな」と指示した。しかし、日本政府はこれまで「日韓基本条約や請求権協定などによって個人の賠償請求権は消滅していない」と国会で答弁している(91年8月、柳井俊二外務省条約局長、当時)。日本の最高裁判所も個人の賠償請求権は消滅しないと判決で認めている。河野外相も18年11月14日の衆院外務委員会で、「個人の請求権は消滅していない」と答弁している。この事実から見て、安倍首相・日本政府の主張は明らかに間違った自分勝手な言い分である。

安倍首相は、6月28日から大阪で開催されたG20(大阪サミット)において、韓国の文在寅大統領からの首脳会談開催の要請を拒否し、20か国中19か国の首脳と会談したが文在寅大統領とは会談を行わず、8秒間の握手だけですませた。ホスト国首脳として極めて異例で失礼な態度だった。経済制裁やG20での対応は、植民地支配下の宗主国のような態度であり、もっといえば韓国を「敵国」とみなす異常な事態である。さらに7月19日、河野外相は韓国の南官杓(ナム・グァンピョ)駐日大使を外務省に呼び「極めて無礼だ」と恫喝した。

現在、朝鮮半島では朝鮮戦争の終結、平和条約の締結など、非核・平和の確立に歴史的な動きがはじまっている。かつて朝鮮半島を侵略し、植民地支配した日本は、その反省を基礎としてこの動きを積極的に支持し、重要な役割を担うべきであるが、これまでの「北朝鮮」敵視政策のために「蚊帳の外」におかれた安倍政権は、この流れに対抗し妨害しようとしているとしか思えない。

私たちは、植民地支配によって重大な被害を与えた加害国である日本が、植民地支配責任を放棄して、被害国である韓国を制裁する異常な暴挙を直ちにやめ、経済制裁を撤回し、徴用工問題など植民地支配責任に正面から向かい合い、韓国との話し合いによる解決をめざすよう強く求めるものである。
2019年8月6日  日朝協会

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2019年の8.6 ヒロシマ

伝わってくる 踏み出そうという勇気

藤井純子(第九条の会ヒロシマ)    

今年の8.6新聞意見広告は「黙らない」

今年も!ご賛同、ご協力くださった皆様のおかげで第九条の会ヒロシマが取組んだ「ストップ!改憲8.6新聞意見広告」を掲載することができました。ありがとうございました。

今年8.6新聞意見広告のタイトル「黙らない」、これを見た多くの人から賛同の声が寄せられました。「自分も声をあげる」「行動する」「あきらめない」という人も。おかしいことには「おかしい」と抗議する、不服従という意思表示。踏み出そうという勇気も伝わってきました。「取組んでよかった、掲載できてよかった」と、この意見広告の掲載に力をお貸しくださった皆さんに感謝の気持ちでいっぱいです。

今年は全国に掲載

8.6新聞意見広告の計画を立て始めたのは今年1月。参院選があるし、もしかしたら衆参ダブル選挙になるかもしれない、その直後の8.6はどうなるのだろう、もし最悪の状況になったとしても、あきらめるわけにはいかない。改憲反対の世論をつくる一助にしたい。そのためには?… と悩んだあげく、今年は「全国に掲載する」という私たちの体力では少し無謀な計画を立てました。

始まりは、2月の「許すな!憲法改悪・市民運動全国交流集会」でした。全国各地から参加された皆さんに「呼びかけ人・団体」をお願いしたところからです。全国集会の民主主義、立憲主義、9条を壊す「アベ改憲を許さない」という皆さんの熱い思いと、その勢いで「今年の意見広告は全国に掲載だ!」となったのです。皆さんの応援を頂いて3月には、呼びかけ人・団体を載せたチラシが出来ました。

4月からはチラシの配布です。私たちの会報にはもちろん、この「私と憲法」ほかいろんなグループのニュースレターの発送に同封してもらったり、憲法集会など、様々な市民集会で配布してもらったり、世話人はいつもチラシを持ち歩き、配布をお願いしました。

7月にはいると紙面作りです。デザインは、広島県府中市九条の会の石岡真由海さん、今年も素晴らしいアイディアを出してくださいました。

また「みんなで作ろう8.6新聞意見広告」として賛同者の皆さんから届いたメッセージを出来るだけたくさん載せようと200以上の中から今年は18のメッセージを選びました。書かれていたのは、憲法、改憲問題だけではありません。核兵器禁止条約を日本政府は批准せよ、原発やめよう、お金は軍事より福祉にまわせ、歴史認識・間違った教育、戦後保障の問題、女性・子ども・マイノリティーほか人権問題や市民の声を無視するアベ政治の批判は多く、皆さんの強い思いを受け止めたいと選ぶのも大変でしたが、これは、賛同してくださった方々と繋がれる楽しい作業でもあります。

次に、名簿整理をして名前を掲載します。名前を落としていないか、字は間違えていなか、掲載不可のお名前を出していないか… 1週間をかけて、名簿を仕上げ、何度も校正し、それでもやっぱり間違いがあり、本当に申し訳ない!

8.6新聞意見広告ついに掲載、そして原爆ドーム付近で配布

8月6日、朝日新聞朝刊、大阪本社版は全15段、その他の全国に全5段を掲載しましたが、5段はお名前が読めないくらい小さくなりました。それでも全国に掲載することが出来たことは喜びでした。

朝7時から「8.6新聞意見広告カラー版」と「市民による平和宣言」を原爆ドームの周りで配布しました。裏面に英語版も載せ、海外の人たちにも興味を持っていただけました。

8.6新聞意見広告への反響

8月6日に意見広告が掲載されると、電話、FAX,メールでどんどん声が寄せられました。憲法について、核兵器について考えるきっかけとなったという声、中でも最初に書きましたように「黙らない」これを見て「自分も声をあげる」という声が多く寄せられ、取組んでよかったと思いました。1月に始まった私たちの取り組みでしたが、これで終わりではありません。「黙らない」に賛同してくださった2500の個人・団体の皆さんと共に、憲法改悪に反対する世論作りの再スタートにしたいと思います。

「8.6ヒロシマ平和へのつどい」と関連行事

「8.6ヒロシマ平和へのつどい」は、毎年8月5日に40年以上続けてきた市民集会です。
毎年、核兵器に限らず、原発や基地・自衛隊、戦後補償問題などで活動している市民運動の人たちが集まって報告をします。長崎の発言も毎年です。その時の大きな状勢にてらしてテーマを考えます。今年のメイン講演は、「今、<反核インターナショナリズム>を考える ― 広島・福島・オリンピック」と題して鵜飼哲さんに話していただきました。日本の対北朝鮮政策を含む核政策、福島原発事故と来年の東京オリンピックが、政治的に関連しており、オリンピックが安部政権によっていかに謀略的に政治利用されつつあるのか、大変、明快なお話でした。

このつどいの実行委員会は、8月6日の朝の行事も合わせて行います。市民による平和宣言は、5日のつどいで採択され、8.6新聞意見広告と一緒に配布します、8時15分には、3分間、ダイインを行い、続いてグラウンド・ゼロのつどい、反原発デモと続き、中国電力前での反原発座り込み集会に合流しました。

福島原発事故刑事裁判報告集会

今年9月19日に福島原発事故刑事裁判の判決が言い渡される予定です。その前に、この裁判で明らかになったことetc…について、いわき市議の佐藤和良さんに報告していただきました。

佐藤さんには、福島原発事故後、いわき市に行った時に、案内をして頂き、頑張っている人たちを紹介していただきました。お陰で放射能測定室「たらちね」との関わりも出来て、広島で自分たちも何かしたいという人たちに呼びかけてカンパを集め、ベクレルモニターを送ることが出来ました。農作物などを送るつながりも続いているようです。

裁判は… 福島第一原発事故から8年が経ちますが、いまだに事故は収束せず、大量の放射性物質を放出し続けていますが、いまだに誰も責任をとっていないのです。

3月12日の結審最終弁論で、東電の被告3人は「無罪」と主張し謝罪はありませんでした。原発は事故が起きれば大きな被害が起こることが明らかになったわけで、最高経営者が許されるはずもありません。被害者救済と二度と悲劇を繰り返さないために、国家への抗議・不服従という意思表示であることがお話や映像から伝わってきました。9 月19 日、東京地裁で有罪判決を勝ち取りたいという思いをヒロシマの私たちもしっかり受け止めました。厳正な判決を求める署名など出来ることをしていこうと思います。

「ヒロシマがヒロシマでなくなる日」元広島市長との対談

8月4日には、平岡敬VS金平報道特集キャスター対談が行われました。平岡敬元広島市長は「ヒロシマ市民は、政府に核兵器禁止条約の批准を求めている。松井市長は、被爆者の願いとするのではなく自分の言葉で語るべきだ」と厳しく批判されました。その上、「ヒロシマは、朝鮮人が被爆した事実、その意味を考え、アジアへの侵略戦争や植民地支配の歴史を常に心に刻むべきだ、廣島の加害を忘れてはならない」と結ばれました。安倍政権によって日韓関係がギクシャクしている今、「無援の海峡」を書かれた平岡さんの言葉をしっかり心に留め、地道に交流を続けている人たちとつながっていきたいと思います。

これから

参院選広島2人選挙区では、国民民主の森本真治現職がトップで当選し、自民2議席独占をとめることができました。広島平和大通りでの演説で森本さんは「もし広島で自民2議席を許すことになったら、ヒロシマが、憲法の改悪を容認することになる」と訴え、今こそ頑張らねばと、とにかく残り数ない時間、電話を掛けまくりました。8.6新聞意見広告で超忙しい時でしたが、それを言っている場合ではありません。こんな思いが大きく票に表れたのだと思います。しかし全体を見ると、与党は過半数を超え、安倍の連勝は止められなかったとも言えます。改憲派3分の2は食い止められましたが、わずか4議席の差で、補選などでは危うくなる可能性もあり、ほっとしている場合ではないことは確かです。

この秋、改憲発議などできるはずはありませんが、第9条を変えることには反対の世論が大きく、この世論をもっと強く、より広げていきたいものです。そのため、早々に広島県内の総がかりで頑張る人たちが集まって、参院選挙の結果とその状況分析を行い、今後の活動について意見交換を行う予定です。9月には3の日行動に加え、安保法から4年の19日には県内一斉共同行動も考えています。

今秋の「憲法のつどい」は11月1日、安田純平さんをお迎えする準備を進めています。ヒロシマの女たちは、11月3日、3回目の「平和のバナーで原爆ドームを囲む」集会を予定しています。広島弁護士会は、11月末、半田滋さんの講演会を企画があり、専守防衛を逸脱する自衛隊に対して学習する場にしたいと思います。
今年中の衆院選がささやかれています。自分たちに政治を引き寄せるために、広島でも大きな枠組みが必要なことは確かです。

あらゆる暴力に立ち向かう

この秋、天皇の代替わりでいろいろな行事があるようで、すんなり受け入れている人も多いのがもどかしいですが、これは差別を生んできた大きな人権問題であり、見過ごしてはならないのではないでしょうか。

第2次別姓裁判の判決日は11月19日となりました。結婚で93%が自分の名前を変えている女性の人権を考え、違っていい多様な生き方を求めて起こした裁判のゆくえを応援して頂ければと思います。

第九条の会ヒロシマの世話人代表として長年私たちを導いて、この7月に亡くなった岡本三夫先生の平和学では、平和とは、戦争がない状態だけではなく、あらゆる暴力のない社会をめざすとものです。差別や貧困など平和に生きる権利を奪うことも、暴力です。その思いを忘れず、広島でも様々なやり方であらゆる暴力をなくすよう、立ち向かっていきたいと思います。

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あいちトリエンナーレ2019、国内外の参加アーティスト72組が声明を発表。「芸術祭の回復と継続、自由闊達な議論の場を」

私たちは以下に署名する、あいちトリエンナーレ2019に世界各地から参加するアーティストたちです。ここに日本各地の美術館から撤去されるなどした作品を集めた『表現の不自由展・その後』の展示セクションの閉鎖についての考えを述べたいと思います。

津田大介芸術監督はあいちトリエンナーレ2019のコンセプトとして「情の時代」をテーマとして選びました。そこにはこのように書かれています。

「現在、世界は共通の悩みを抱えている。テロの頻発、国内労働者の雇用削減、治安や生活苦への不安。欧米では難民や移民への忌避感がかつてないほどに高まり、2016年にはイギリスがEUからの離脱を決定。アメリカでは自国第一政策を前面に掲げるトランプ大統領が選出され、ここ日本でも近年は排外主義を隠さない言説の勢いが増している。源泉にあるのは不安だ。先行きがわからないという不安。安全が脅かされ、危険に晒されるのではないのかという不安。」(津田大介『情の時代』コンセプト)

私たちの多くは、現在、日本で噴出する感情のうねりを前に、不安を抱いています。私たちが参加する展覧会への政治介入が、そして脅迫さえもが――それがたとえひとつの作品に対してであったとしても、ひとつのコーナーに対してであったとしても――行われることに深い憂慮を感じています。7月18日に起きた京都アニメーション放火事件を想起させるようなガソリンを使ったテロまがいの予告や、脅迫と受け取れる多くの電話やメールが関係者に寄せられていた事実を私たちは知っています。開催期間中、私たちの作品を鑑賞する人びとに危害が及ぶ可能性を、私たちは憂い、そのテロ予告と脅迫に強く抗議します。

私たちの作品を見守る関係者、そして観客の心身の安全が確保されることは絶対の条件になります。その上で『表現の不自由展・その後』の展示は継続されるべきであったと考えます。人びとに開かれた、公共の場であるはずの展覧会の展示が閉鎖されてしまうことは、それらの作品を見る機会を人びとから奪い、活発な議論を閉ざすことであり、作品を前に抱く怒りや悲しみの感情を含めて多様な受け取られ方が失われてしまうことです。一部の政治家による、展示や上映、公演への暴力的な介入、そして緊急対応としての閉鎖へと追い込んでいくような脅迫と恫喝に、私たちは強く反対し抗議します。

私たちは抑圧と分断ではなく、連帯のためにさまざまな手法を駆使し、地理的・政治的な信条の隔たりを越えて、自由に思考するための可能性に賭け、芸術実践を行ってきました。私たちアーティストは、不透明な状況の中で工夫し、立体制作によって、テキストによって、絵画制作によって、パフォーマンスによって、演奏によって、映像によって、メディア・テクノロジーによって、協働によって、サイコマジックによって、迂回路を探すことによって、たとえ暫定的であったとしても、それらさまざまな方法論によって、人間の抱く愛情や悲しみ、怒りや思いやり、時に殺意すらも想像力に転回させうる場所を芸術祭の中に作ろうとしてきました。

私たちが求めるのは暴力とは真逆の、時間のかかる読解と地道な理解への道筋です。個々の意見や立場の違いを尊重し、すべての人びとに開かれた議論と、その実現のための芸術祭です。私たちは、ここに、政治的圧力や脅迫から自由である芸術祭の回復と継続、安全が担保された上での自由闊達な議論の場が開かれることを求めます。私たちは連帯し、共に考え、新たな答えを導き出すことを諦めません。

あいちトリエンナーレ2019 参加アーティスト 72名  
Information
賛同者:青木美紅、伊藤ガビン、石場文子、市原佐都子、今津景、今村洋平、イム・ミヌク、岩崎貴宏、アンナ・ヴィット、碓井ゆい、エキソニモ、越後正志、遠藤幹子、大浦信行、大橋藍、大山奈津子(しんかぞく)、岡本光博、ピア・カミル、レジーナ・ホセ・ガリンド、ドラ・ガルシア、ミリアム・カーン、キュンチョメ、葛宇路(グゥ・ユルー)、クワクボリョウタ、小泉明郎、こまんべ(しんかぞく)、小森はるか、澤田華、白川昌生、嶋田美子、菅俊一、スタジオ・ドリフト、高嶺格、高山明、田中功起、津田道子、Chim↑Pom 、TM(しんかぞく)、dividual inc.、ハビエル・テジェス、戸田ひかる、富田克也、トモトシ、永田康祐、永幡幸司、パク・チャンキョン、半坂優衣(しんかぞく)、広瀬奈々子、ジェームズ・ブライドル、キャンディス・ブレイツ、タニア・ブルゲラ、藤井光、藤原葵、ヘザー・デューイ=ハグボーグ、BeBe(しんかぞく)、星ヲ輪ユメカ(しんかぞく)、桝本佳子、アマンダ・マルティネス、クラウディア・マルティネス・ガライ、繭見(しんかぞく)、三浦基、ミヤタナナ(しんかぞく)、ジェイソン・メイリング、モニカ・メイヤー、袁廣鳴(ユェン・グァンミン)、弓指寛治、吉開菜央、よしだ智恵(しんかぞく)、梁志和(リョン・チーウォー)+黄志恒(サラ・ウォン)、鷲尾友公、和田 唯奈(しんかぞく)、ワンフレーズ・ポリティクス(しんかぞく)「あいちトリエンナーレ2019」における河村市長・菅官房長官の「表現の自由」侵害行為に抗議する憲法研究者声明

2019年8月11日  憲法研究者有志一同

2019年8月1日、愛知県で国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由・その後」が開催されましたが、8月3日に中止に追い込まれました。中止に追い込まれた理由として、大村知事は愛知県に寄せられた、テロ予告や脅迫を挙げました。

 テロ予告や脅迫はそれ自体犯罪であり、そのような暴力的な方法で表現活動をやめさせようとすることは強く非難されるべきものです。さらに、今回とりわけ問題なのは、この展示会中止にむけての政治家の圧力です。8月2日に現地を視察した河村名古屋市長は「日本国民の心を踏みにじるもの」などと発言して企画展の中止を求めました。8月2日、菅官房長官もあいちトリエンナーレが文化庁の助成事業であることに言及したうえで、「補助金交付の決定にあたっては事実関係を確認、精査したうえで適切に対応していく」などと発言しました。

 わたしたちは、河村市長と菅官房長官の言動は民主主義国家における「表現の自由」の重要性について全く理解を欠いたものであると考えます。企画展の展示内容は、例えば、名誉毀損として処罰されるべきものでも、特定の人種や民族の人々をそうした属性を有するというだけで誹謗・中傷するものでもありません。今回の展示中止の要請は、きちんとした理由のあるものでなく、単に、権力者が自分の気に入らない言論を自分が気に入らないという理由だけで禁止し、抑制しようとするものです。しかし、自由な民主主義社会においては、こうしたことはあってはならないことです。このようなことが許されれば誰も権力者を批判することができなくなり、その結果、わたしたちは権力者を批判する表現を受け取ることが不可能になるでしょう。これはとても息苦しい社会です。

 憲法21条で保障された表現の自由は、様々な考えの人の存在を前提としている民主主義社会にとって不可欠なものです。自分が気に入らないという以外に特別な理由なく展示の撤回を求めた河村市長と菅官房長官の言動は、憲法21条に反するものであり、強く批判されるべきだと考えます。わたしたちは、河村市長と菅官房長官の言動に対して、断固抗議し、撤回を求めます。

【賛同者一覧】2019年8月13日段階91名 愛敬浩二(名古屋大学) 青井未帆(学習院大学) 浅野宜之(関西大学) 足立英郎(大阪電気通信大学名誉教授) 飯島滋明(名古屋学院大学) 井口秀作(愛媛大学) 石川多加子(金沢大学) 石川裕一郎(聖学院大学) 石塚 迅(山梨大学) 石村 修(専修大学名誉教授) 井田洋子(長崎大学) 市川正人(立命館大学) 伊藤雅康(札幌学院大学) 稲 正樹(元国際基督教大学教員) 井端正幸(沖縄国際大学) 岩本一郎(北星学園大学) 植野妙実子(中央大学名誉教授) 植松健一(立命館大学) 植村勝慶(國學院大學)

浦田一郎(一橋大学名誉教授) 浦田賢治(早稲田大学名誉教授) 榎澤幸広(名古屋学院大学) 江原勝行(早稲田大学) 大内憲昭(関東学院大学) 大久保史郎(立命館大学名誉教授) 大野友也(鹿児島大学) 岡田健一郎(高知大学) 岡田信弘(北海学園大学教授・北海道大学名誉教授) 奥野恒久(龍谷大学) 小栗 実(鹿児島大学名誉教授) 小沢隆一(東京慈恵会医科大学) 押久保倫夫(東海大学) 上脇博之(神戸学院大学) 彼谷 環(富山国際大学) 河上暁弘(広島市立大学広島平和研究所) 菊地 洋(岩手大学) 北川善英(横浜国立大学名誉教授) 木下智史(関西大学) 清末愛砂(室蘭工業大学) 清田雄治(愛知教育大学特別教授) 倉田原志(立命館大学) 倉持孝司(南山大学) 小林 武(沖縄大学客員教授) 小林直樹(姫路獨協大学) 小松 浩(立命館大学) 斉藤小百合(恵泉女学園大学) 笹沼弘志(静岡大学) 佐藤信行(中央大学) 志田陽子(武蔵野美術大学) 清水雅彦(日本体育大学) 鈴木眞澄(龍谷大学名誉教授) 芹沢 斉(青山学院大学名誉教授) 髙佐智美(青山学院大学) 高橋利安(広島修道大学) 高橋 洋(愛知学院大学) 竹内俊子(広島修道大学名誉教授) 竹森正孝(岐阜大学名誉教授) 多田一路(立命館大学) 建石真公子(法政大学) 千國亮介(岩手県立大学) 塚田哲之(神戸学院大学) 土屋仁美(金沢星陵大学) 長岡 徹(関西学院大学) 中川 律(埼玉大学) 中里見 博(大阪電気通信大学) 中島茂樹(立命館大学名誉教授) 中村安菜(日本女子体育大学) 永山茂樹(東海大学) 成澤孝人(信州大学) 成嶋 隆(新潟大学名誉教授) 丹羽 徹(龍谷大学) 根森 健(東亜大学大学院特任教授) 畑尻 剛(中央大学) 福嶋敏明(神戸学院大学) 藤井正希(群馬大学) 藤野美都子(福島県立医科大学) 古川 純(専修大学名誉教授) 前原清隆(元日本福祉大学教員) 松原幸恵(山口大学) 宮井清暢(富山大学) 三宅裕一郎(日本福祉大学) 三輪 隆(元埼玉大学教員) 村田尚紀(関西大学) 本 秀紀(名古屋大学) 森 英樹(名古屋大学名誉教授) 山内敏弘(一橋大学名誉教授) 横尾日出雄(中京大学) 吉田栄司(関西大学) 若尾典子(元佛教大学教員) 脇田吉隆(神戸学院大学) 和田 進(神戸大学名誉教授) 以上

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お盆休みは 映画と安保法制違憲訴訟・女の会「Voice 平和をつなぐ女たちの証言」(生活思想社)で

池上 仁(会員)       

戦後74年企画上映の映画から

お盆はバイト先の法律事務所もお休み。母が存命中は毎年この時期に帰省していたがすでに他界してそれもなし、伊勢佐木町にある横浜シネマリンの戦後74年企画上映に通うことにした。「主戦場」「東京裁判」「誰がために憲法はある」「ひろしま」を観た。どれも力のこもった作品だった。

「主戦場」は歴史修正主義者の立論を一つ一つ実証的に反駁していく冷静で抑制された論者の方々の姿勢が印象的だった。評判は高かったが予想していた以上に真摯で緻密な内容だ。
「東京裁判」は長編の貴重な記録。マッカーサーの指示で天皇を戦争犯罪追及の対象から外す工作の顛末が明らかにされている。被告の弁護に立ったアメリカ人弁護士の原爆投下に対する責任追及の鋭さ、立場が逆だったらとてもこうはならないだろうと思う。判決言い渡しの「デス・バイ・ハンギング」が重く耳に残る。

「誰がために憲法はある」は女性俳優陣によって33年間続けられてきた原爆朗読劇と女優の一人渡辺美佐子の原爆をめぐるドラマチックで悲しい個人史。小学生の時淡い恋心を抱いた男の子が原爆で亡くなっていた。その子の名を刻んだ慰霊碑に花を手向け涙する渡辺。朗読劇によってこそ伝えられるものが確かにあると思った。

「ひろしま」についてはEテレで制作秘話が放映されていた。当時の日教組が制作者になり何万人もの市民がエキストラとなって作品を支えたこと。月岡夢路や山田五十鈴それに多数のエキストラが繰り広げる原爆投下直後の地獄絵図に声を?む。「一中」の教師・生徒が身を寄せ合って校歌を歌うシーンがある。渡辺の友達も確か「一中」在学だった。GHQの徹底した情報統制もあったが、原爆症が水俣病と似たような偏見、差別の対象になったこと、原爆孤児の問題、朝鮮戦争の勃発・・・多様な問題を含んだ作品。ちなみに私の父は群馬で女子高の教員をやっていて、ある夏小学生の私を軽井沢の林間学校に連れて行ってくれたことがあった。バンガローで女生徒たちが合唱した「原爆許すまじ」の歌声が耳に残っている、他の歌は忘れてしまったが。1950年代のこと。

「Voice 平和をつなぐ女たちの証言」

もう一つお盆休みの日課はこの書物を紐解くことだった。とても一気に読了というわけにはいかなかった。何日もかかってようやく最終ページにたどり着いた。2016年8月15日、「安保法制違憲」を東京地裁に提訴したすべて女性の原告121名中117名の陳述書をまとめた「この本は、私たちの『平和への思い』を軸にした自分史です。女性たちの貴重な戦後史です」(「はじめに」)。117通りの実に多様で多彩な戦後史、それも多くが苦難の記録であるものを、瞥見するだけで通り抜けることはできない。一つ一つ丹念に読んだ。

「子ども時代は“りっぱな”軍国少女だったという人。残された母親と共に貧しく苦しい少女時代を過ごした人。被曝で多くの友人が亡くなり“生き残ったこと”に苦しんだ人。敗戦後、成立した新憲法に、解放のよろこびを心の底から感じた人。その新憲法下でも存在し続けている女性差別に取り組み闘い続けている人。基地の街で、米軍や自衛隊員による性暴力、また家族、職場、街で起こる女性への暴力に取り組む人。教え子を二度と戦場に送らないと教育をし続けた人。日本軍『慰安婦』問題への取り組みで、今まさに右翼からの攻撃を受けている人…」(同)

著名な方もいる、国会議員であったり新聞のコラムを連載されていたり、大学教授であったり、常に市民運動の最先頭に立たれていたり・・・。しかし、直接お名前を存じてあげていない方々が無名かといえばそうではないだろう。彼女らは皆様々な現場で様々な問題について声を挙げ、つながり合い、力を合わせて解決に向けて尽力し、なお持続している人々だ。いずれもその運動の圏内でネットワークの貴重な結び目となっているだろう。「安保法制違憲訴訟・女の会」はいわばその一つの集大成なのだろうと思う。

多様な体験はとても一括りにできない。全8章は「戦争と私」「軍隊による暴力」「女性に対する暴力を許さない」「働き続けていま」「教育の軍事化」「家父長制に抗って」「アジアの中で生きる」「私と平和憲法」のタイトルがつけられている。女性ならではの体験、視点が自ずと本書の特徴になっている。

憲法の柱の一つである基本的人権、その中の男女同権の問題。家父長制が支配した時代から新憲法にもとづく男女平等の社会へ、そうはいっても権利は棚から落ちてくるものではなかった。女性蔑視、権利不平等に抗って闘ってきた記録が幾つもある。労働運動で獲得された貴重な様々な権利。しかし、これまで積み重ねてきた成果が、支え手としての労働組合の弱体化の中で後退させられて来ているのではないか、というのが、長年労働組合運動に携わってきた私の懸念だ。

私が知らなかったことを幾つも教えてもらった。富国強兵政策の下、明治2年に「堕胎禁止令」が出され、一部修正されたが「刑法第29章(堕胎の罪)」は今も生きている。生活困難から堕胎した母親を密告で逮捕された方がいる。本土では1956年に制定されていた売春防止法が沖縄では1970年(施行は2年後の復帰時)にようやく成立したこと。成立を阻んだのが、再び地域社会に米軍の性暴力が向けられてしまうのではないか、という懸念と、厳しい強制管理売春の下で稼いだドルがなくなってしまうことへの心配であったという。戦時中現地の人々への性暴力による日本軍への反感の亢進を恐れて慰安所を設置したこと、敗戦後占領軍を迎えていち早く特殊慰安施設協会(RAA)を設け、「大和撫子の純潔を守るため」最盛時には7万人の女性たちが働かされたたこと(これについてはジョン・ダワー「敗北を抱きしめて」が詳しい)と通じる問題だ。

「女たちの戦争と平和資料館」(wam)に対するひどい脅迫や妨害行為が、2015年9月19日の安保法制強行採決後一段とエスカレートしたこと。櫻井よしこが産経新聞の記事でwamと代表者を名指ししたことがこれに拍車をかけた。自民党議員の杉田水脈がツイッターでwamの住所を晒し迫害を使嗾したことが問題になったのはここ数日のことだ。どうでもいいことだが、杉田水脈がツイッターに掲げた本人ポートレイトは笑えます。「主戦場」でインタビューに応じる彼女のアップを見たばかりだから。前に三原じゅん子の選挙ポスターを見て気味が悪いなぁと思ったことがある。修正にだって限度というものがあるだろうよ、と。

閑話休題。多彩で重層的な陳述書が共通して主張している事は巻末の弁護団中野麻美弁護士による「女性たちの安保法制違憲訴訟」に集約されている。

「『日本国憲法』は、それぞれが信じたところにしたがって生き抜くよりどころになってきたもので、それには価値があるという『自尊』の源になって、私たちの行動を支えてきました。また、日本国憲法は、教育や福祉など公共の仕事に携わってきた原告には、性別にかかわらず、自らの意思と力で人生を切り開き、平和と民主主義の担い手となる力や相互の信頼を涵養するという職業上の使命と責任の根拠となってきたものでした。私たちは、そうした努力を払ってきたからこそ、平和憲法の精神を、男女平等の価値とともに人々のなかに染みわたらせることができたと自負してきました。」

「密室での閣議決定に至るプロセスもそうですが、オープンになってからの法制化に向けた過程でも、女性の主権者としての政治的権利やジェンダー平等への配慮は皆無でした。国際社会では、ジェンダー主流化の観点から、あらゆる立法政策にジェンダー監査を求め、安全保障をジェンダーの観点からとらえることを求めるようになっています。しかし、そうした観点からの審議は全くなされませんでした。」

「私たちの安全保障に向かう道筋は、人間の歴史を持続・成長させてきた『ケア』と女性が担ってきた役割に着目した人間中心アプローチをとって、家父長制と軍事による女性の道具化と支配から解放するというものです。それを支えるのは非暴力と反差別であり、いのちの序列化や排除、人間に対する暴力と支配は許さないという考え方です。しかし、女性たちのこうした活動と問題提起は、安保法制をめぐる国会審議においてはまったく無視され置き去りにされました。」

立法過程における「ジェンダー主流化の観点」ということについては私自身も全く無知だったと言わなくてはならない。そのことを含めとりわけ男性は本書をじっくり読む必要があるように思う。

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「農業白書」を読む (「食料・農業・農村白書平成30年度版」読後感)

魚沼市 工房茶助 市井晴也(農林業)

 大学卒業後、マレーシア・サラワク州における熱帯林破壊と先住民族の人権問題に関わる市民団体で働いていました。高田さんにはその頃からお世話になっています。南北問題に関わる中で、第一次産業が国の根幹であるという思いは時と共に強くなりました。実際に農林業を生業にしようと北魚沼の山の中に移り住んだのが24年半前。お米を売るようになり毎月近況報告を添えています。その中で連載していたものを転載させてほしいという依頼を受けました。正直、場違いな感もありますが、お付き合いいただければ幸いです。法律に関して詳しくはなく、あくまでも農に携わるものとしての感想です。
有意義なデータやネタを探すつもりで読んでみた白書。釈然とせず疑問符が次々と現れることになってしまうとは…。

(1)食料廃棄と食料輸入

世界の栄養不足人口は8億1,500万人、国連WFP(世界食糧計画)では年間で350万tの食糧援助が行われている。そして日本は年間で600万t強の食品ロス(まだ食べられるのに捨ててしまうもの)が発生している、とのこと。なんという罪深きこと。食品ロスの削減へ向けて「小規模業者では納品期限の緩和の取組が、食品製造業者では品質保持技術の開発による賞味期限の延長の取組が広がりを見せています。」と受け身の言葉が続く。そんなことで解決するレベルではないはず。添加物の助長にも聞こえる。

環境省の公表(2015年度)によれば食品廃棄物は2,842万t。うち食品ロスは646万tで毎日大型トラック1,770台分を廃棄。その一方で食料輸入3,241万t(2014厚生労働省)。自給率38%(2016年水産省)。そして食べ物を捨てないようにしよう、自給率を上げよう、とアピールする。…なんだかおかしい。たくさん輸入してたくさん捨てて自給率上がらないよ~、って、解決するわけがない。

結局、経済至上の歪み。矯正していくしかない。アメリカに屈せず、先ずは輸入量を抑えるしかないはず。輸入するなら、現地で不当労働がないか、使うべきでない農薬を使っていないか、遺伝子組み換えは本当に行われていないかもきちんとチェックすべき。難しくともそこから自給率が上がる可能性が広がるし、より安全な国産のものを食べていけるはず。そして廃棄物も確実に減る。分かっていながらも、結局国は国内農業に優先順位を置いてないだけなのだろう。

一応の体裁もあったのか、かつて「食品リサイクル法」が制定された。それから20年近く経ってもこれだけの廃棄物が出ている以上、功を成していないのは明らか。にもかかわらず「食品リサイクル法の枠組みにより、食品製造業、外食産業など業種別に再生利用等実施率の目標が設定されており、各業者において取組が進められています。」と嘘ではなくとも気の抜けるような記述。フードバンク活動への多少の支援はあるものの、その主体はあくまでも民間。廃棄の問題を取り上げながらも国としての主体的な取り組みは見えてこない。

(2)食の安全性について

食の安全、と聞いて多くの人は何を思いまた、投票日直前に、「戦略的投票」を呼びかけることの是非についての論議がありました。これについても、予め決めておく必要があります。
いずれにしても、今回の複数区での「市民と野党の共闘」の取り組みは、貴重なものでした。この経験を千葉県第5区市民連合の今後の活動、とりわけ衆議院選挙に向けて生かしていきたいと思います。

浮かべるだろう?僕は先ずは遺伝子組み換えの問題。遺伝子を操作までして得る食料に問題がないとはまだ誰も言えないはず。また食品以外でも「遺伝子操作もいのちの選別、優性思想につながる」と危惧する天笠啓佑氏に賛成。

そしてその遺伝子組み替え作物の導入とも関わる除草剤、ラウンドアップなどのグリホサート系除草剤の問題。WHO(世界保健機関)の専門機関である国際がん研究機関もグリホサートを発がん性物質に認定している。ラウンドアップによってがんになったとしてモンサント社を訴えた裁判では、カリフォルニア地裁はモンサント社に賠償金約320億円を払うよう判決を下している。欧米では同様の訴訟が11000件以上あり(2019年6月時点)、国際的にも規制強化が進んでいる。一方悲しいかな、日本はグリホサートの残留基準値を最大400倍の規制緩和。ホームセンターも農協も売りまくり。回覧板でも注文票が回ってくる始末。アメリカ養護団体か。

 で、農業白書が「食の安全性」の項で何を書いているかというと、「有害微生物・化学物質による農畜水産物・加工食品の汚染実態の調査、調査を踏まえた汚染防止・提言措置の策定、これら措置の関係者への普及、さらには、措置の効果検証・見直しを行っています」だそうです。ものすご~く分かりにくいのですが、例えば「バーベキューの際の食中毒の発生を防止するための注意点を紹介したリーフレットの作成」「学校や保育園向けに学校などの菜園で栽培したジャガイモによる食中毒の発生を防止すための注意点を紹介したリーフレットの作成」などが具体例になります。そんなもの、「よく焼け」じゃだめなのか?

遺伝子組み換えについては表示の義務については述べているものの、生産面において「遺伝子組み換え作物の導入や開発途上における生産技術の普及等による伸びの余地は期待されるものの~」とむしろ推奨しているとしか思えない記述もある。
遺伝子組み換え食品と同等な危険をはらんでいるのが、「ゲノム編集食品」。白書には囲み記事に収まり、技術の進化として品種改良の進展を期待されているだけ。日本ではそのほとんどが食品安全性審査の対象外で表示義務もなし。アメリカでは全くなし。だが、それは遺伝子を破壊する新たな技術で、EUでは遺伝子組み換え食品と同じ規制が課せられている。日本・アメリカとEUでの安全性の認識はあまりに違う。日本の食の安全性はアメリカ絡みの儲け話には抗えないのか。そうした危険性の情報そのものも日本消費者連盟などが声をあげて教えてくれなければ知らないままだ。

食の安全に関し、他にはトレーサビリティ(栽培や飼育から加工・製造・流通などの過程を明確にすること)や家畜の伝染病予防、また海外からの植物病害虫の侵入防止に取り組んでいるとのこと。そうですか…、としか言えない。
「除草剤」という言葉は出て来ず、「農薬」に一括りされ、規制する意思は全く見られない。
自分と国、食を通じた安全への意識の観点はあまりに違う。

(3)大規模化と小農

40代以下の新規就農者は3年連続で2万人を超えた。統計開始以来初めてのことらしい。もっと増えていい、やりがいのある職種だと思う。魚沼界隈でも新たに農業に携わる人が少しずつ出てきてはいる。が、やめていく農家のペースには追い付いていないと思う。そういう現状であるからこそ国や自治体は集落営農の法人化など大規模化を推奨し補助金を出す。同時に高齢者の離農も勧めて集約化を促す。この集落でもいずれは法人化しないと田んぼを維持できないのではないかという意見もあり、研修にも行ったりしている。必要性も認める。法人の方が人を集め易い。

ただ、僕自身で言えば今の兼業の小農生活スタイルが好きだ。自然相手の待ったなしの忙しさはあるとは言え、自分の目の行き届く範囲で、低農薬など作りたいように作り、産直で多くの常連のお客さんとつながり、美味しいと言ってもらえながら暮らしが成り立つ。精魂込めて作られてきた田んぼも維持される。これ以上は望むべくもない。また、農家が減っても水路や農道は減らない。そんな管理上の現実もある。理想を言えば、協力し合える小農家がたくさんあること。元来、小農家は日本の山間地に最も適した形態のはず。それがそれが維持できなくなった原因を先ず見据えるべきだと思う。米の販売価格が以前の通りであれば農家はここまで衰退しなかったはず。国は中間業者だけがうまい汁を吸えるような仕組みを後押ししてきたのではないか。国は米の質と価格を守るべきではなかったのか。ちなみに欧州の農家の収入の90%が補助金(三橋貴明『亡国の農協改革』飛鳥新社)。嘘のような本当の話。我が家は7%足らず。

一般報道されていた記憶はないのだが、去年の12月に国連総会で「小農の権利宣言」なるものが採択された。生存権や種子への権利、土地への権利、環境を保全する権利、価格と市場を決める自由、結社や自由な意見を表明する権利、男女平等の支援など、なかなかに素晴らしい宣言である。でも巨大アグリビジネス企業には要らない宣言。アメリカやオーストラリア、EUの食料輸出大国は反対。日本は棄権。アメリカへのご機嫌取りか。

また国連は今年からの10年間を「家族農業の10年」とすることを全会一致で可決。グロバール化への流れだけでなく、地域を維持する小さな農家の在り方や価値も見直されてきているという現れ。これも一般マスコミからは知らされないけれど。

こうした小農家を尊重する動きは日本の農業政策とは真逆の方向。確かに同じ面積であれば10枚の田んぼよりも1枚の方が効率的に決まっている。かと言って単純に大規模化を推進するだけでは問題は解決しきれない。そもそもが平野の限られている国土なのだ。上記のような国連の動きなどを白書が今後どのように取り上げていくのか。

現政権がなくしてしまった、田んぼの面積に従ってもらえる戸別所得補償。それを元に戻すだけでも新規就農者や小さな農家への大きな助けになることは間違いない。一戸一戸を大切にせずに大規模化を進めることは不可能だと思う。

(4)東日本大震災からの復旧・復興

 明るい内容の文言が並ぶ。「農地は、国直轄の面的除染は完了、市町村等の除染も完了」「復旧対象地の89%で営農再開が可能に」「先端的農業技術の研究が進行」「帰還困難区域を除き、ほぼ全ての避難指示が解除」…。終わらせたいだけに聞こえる。

 僕が福島の方から聞いていたのとあまりに印象が違う。連れ合いが現地に行って見て聞いてきた話とも。避難指示が解除され、営農可能でも戻る人は非常に少なく、居ても多くは高齢者。そもそも年間20mmシーベルト被爆容認の帰還政策がおかしい。一般には1㎜シーベルトで危険としているのになぜ福島だけ20倍なのか。避難住民数も白書には5万人と記されているが、これは避難先や避難元の地区が限定されていて、実際に事故前の家に戻れていない人は約10万人にもなる。震災関連死2,271人、孤独死薬70人、自殺者も100人以上で現在も続いている(伊東達也氏資料)。自主避難者への賠償もこの3月で打ち切られ、子どもの甲状腺がんも多発している。白書はあまりに能天気だ。

賠償に関しての一文、「原子力損害の賠償に関する法律の規定により、東電福島第1原発の事故の損害賠償責任は東京電力ホールディングス株式会社が負っています。」がいやらしい。暗に国に責任は無いと言っている。長い間原発政策を推し進めていたのは国ではないのか?当然、30件もの集団訴訟(原告12000人)が起こっていることや東電が和解案を拒否し続けていることは述べず、○○億円払っていると記されているだけ。

粗捜しをするために読んでいるわけではないが、直接被害にあった方がこれを読んだらいたたまれない気持ちになるのではないだろうか。問題に触れるのであればしっかり現状を調査した上で、今も苦しむ国民のことを念頭において記すべきだと思う。

「農業白書」というのは事実を基に農業における理念を垣間見られるものだと思い込んでいた。間違っていた。「国に都合のいいようにまとめ上げてあるもの」という認識へ格下げだ。それは山間地で農業に自ら携わったり、直接福島の方から話を聞いたから理解できること。25年前の自分には気付けなかったに違いない。また、大事な情報が一般報道で流れてこないということにも注意が要る。国やスポンサーの後ろ盾無く真実を伝え、国に改善を求めるような個人や団体の情報が得られないならば、むしろ「農業白書」は読まない方がいいのかもしれない。「食の安全」の認識始め、偏った情報に安堵してしまいそうだから。

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