私と憲法202号(2018年2月25日号)


安倍政権の打倒の旗を高く掲げよう!地鳴りのような怒りの声をあげよう!

2月14日、安倍首相は裁量労働制に関する自らの発言を撤回し謝罪しました。
「裁量労働制で働く人は、一般労働者より働く時間が短い」との発言の根拠がデータの捏造に基づくものであったことが隠しようがなく撤回に至ったのです。

「こんないい加減な事を言うのが安倍政権の典型的姿だ」と立憲民主党の枝野代表は激怒し、痛烈に批判しました。

「働き方改革」などと称しながら、過労死に対する痛みを感じることもなく、ただただ大企業の為に「世界一活動しやすい環境」を作ろうと平気で嘘をつくという本性が暴露されました。

総選挙や会計検査院の検査が終わってから、これまで「廃棄した」「存在しない」と強弁してきた森友問題関連の記録文書が大量に出てきました。これに対して、確定申告を前にした納税者・市民が「我々に記録の提出・保存を厳しく求めながら、隠ぺいすることは許せない」「隠ぺいの張本人である人物を国税庁長官に据えるなど納税者を馬鹿にするな!」と全国各地で怒りを爆発させました。

前文科省事務次官前川氏は「あるものをないとは言えない」と加計疑惑を告発しました。「モリカケ」疑惑は権力者による政治や血税の私物化そのものであり、安倍首相を先頭に「あるものをない」と大々的に嘘をつくという許しがたい国家的犯罪ではないでしょうか。怒りの声は地鳴りのように燃え上がり、燃え広がろうとしています。

「働き方改革」に関するデータ捏造、「モリカケ疑惑」に関する佐川・昭恵・加計の証人喚問を焦点にしながら安倍政権の打倒に向けて追い詰めましょう!

「アベ政治」はデマゴギー政治だ

デマゴギーとは、「特定の政治目的の為に意図的に捏造され、流布される虚偽の情報」と定義されています。

「アベ政治」とは<9条を持つ「戦争しない国」を、9条を壊し「戦争する国」へと変えるという政治目的の為に、意図的に捏造した情報を流布することを主要な手法として行う政治>と定義できるのではないでしょうか。

安倍政権は「憲法上、集団的自衛権は認められない」としてきた歴代の政権とは明らかに断絶しています。「アベ政治」なるものは、集団的自衛権容認を閣議決定することで始まったのではないでしょうか。そして、そのスタート台となったのは、砂川事件最高裁判決を持ち出して「集団的自衛権は否定していない、だから合憲だ」という、とんでもない解釈の捏造だった。つまり、捏造が「アベ政治」の生みの親であり、捏造なくして一日として生き延びられないのが「アベ政治」なのではないでしょうか。

今、世界的に排外主義を特徴とするポピュリズム的政治の台頭が顕在化しています。高度成長が終わり、資本主義の統合力の弱体化を補うものとしてポピュリズムが機能していると言われています。

「アベ政治」もまたその流れにありながら、統合力の強化には「戦争」が最も効果的であることを自覚し、その実現を使命としている極めて危険な政治であり政権に他なりません。

「心の底」に届く運動を

「私と憲法」の本年1月1日号で、共同代表の暉峻さんが巻頭(新春に思う)で「ひとびとが、心の底に抱いている反人権政府への違和感に目覚め、平和ほど尊いものはない、という自覚のうねりを作り出すのは私たち次第なのである」と書かれています。まったくその通りだと思います。

人々の心の底の上には、アベノミクスに期待する心情や北朝鮮に対する憎しみなどが幾層にも積み重なっています。

私たちの運動や声を心の底にまで届かせることは大変なことです。しかし、悲観することは全くありません。

1月5日に東京で行われた「安倍9条改憲NO!全国市民アクション新春の集い」に於いて横須賀で活動する仲間から「横須賀駅でスタンディングを続けていると、はじめは、こわばった顔で通り過ぎていた自衛官たちが、次第に『自衛官です。ありがとうございます。』と声をかけてくれたり、遠くからはっきりと敬礼をしてくれたりするようになった」という報告がありました。

安倍政権によるデマゴギーが最も集中しているであろう環境にあっても、横須賀でスカジャンを着た小泉進次郎氏が持ち上げられていたとしても、それを切り裂いて私たちの思いが自衛官たちの胸に届いていることが確認できるのではないでしょうか。

また2月4日の名護市長選挙では、安倍政権による総力をかけた戦術に敗れたとはいえ、沖縄の人々はさらに意気高く辺野古で、そして秋の県知事選に向かって前進しています。

沖縄の人々の心の底には、支配者が最も恐れ嫌がる「勝つまで諦めない」精神がしっかりと根を下ろしているのです。

「アベ政治」の力の源泉はデマゴギーであります。しかし、それは無内容と脆弱さの裏返しです。だからこそ、デマゴギーを一つ一つ切り裂くような闘いは「アベ政治」の力を確実に削ぎ落し、デマゴギーに封じ込められた怒りを解き放つことになると思います。

「アベ政治」は人々を欺きの対象とするような市民蔑視そのものです。それは、私たちが実現しようとしている「平和ほど尊いものはないという自覚のうねり」の対局物として絶対に打ち破っていかなければなりません。

3000万署名運動で「平和への自覚のうねり」を創り出そう!

安倍首相は国会で「憲法を学校で習ってきた小学校の子どもが家に帰り、自衛官の父親に『お父さんは憲法違反なの?』と聞いてきた」という実話風な作り話を持ち出したり、懸命に災害救助を行う自衛隊の写真をパンフレットに載せ、「ありがとう自衛隊」キャンペーンを大々的に行っている日本会議と連携して「自衛隊を違憲と言いながら、何かあったら命を懸けて守ってくれというのは都合がいいのではないか」という話を繰り返している。そして、「9条に自衛隊を書き込むだけで何も変わりませんよ。1ミリも変わりません。」と囁くのです。

この単純にして分かりやすい物語は、実は心理の動きを織り込んで綿密に練り上げられていて、決して過小評価してはなりません。

「3000万署名は3000万対話だ」と言われていますが、この対話こそがデマゴギーとの対決の場に他なりません。

私は街頭宣伝を「訴える」側と「訴えられる」側という一方通行の関係から、対等に共に交流する場へ変えようとしてきました。署名活動もまた「署名を集める」側と「応じる」側という一方通行関係から、対話を実現し、その中から署名に応じるだけでなく、共に署名活動の仲間になるような運動として展開していくべきだと思います。3000万の対話は必ず「平和ほど尊いものはないという自覚のうねり」を切り拓き、安倍政権の暴走の前に立ちはだかり、その9条改憲の野望を挫くだろう。私たちが今、踏み出そうとしているのは、過去を背負って未来を切り拓こうとする本当に歴史的な大決戦です。
(事務局 菱山南帆子)

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一人でもやれることがある

Qsan(9条を壊すな! 街宣チーム)手応え感じた「イベントで署名集め」
「共謀罪反対署名」が行われていた去年の春。国立公文書館で『誕生 日本国憲法』という展示会が開催されました。そこで、街宣チームの仲間が以前提案していた「イベントで署名集め」をやろうと思い立ち、会期中の日曜日に署名用紙を持って会場前で呼びかけたところ、期待以上の成果を上げて大きな達成感を得ることができました。(筆数失念)

それに味をしめて2度目は去年の大晦日。両国国技館で行われた某歌手の「年越しライブ」の会場前で実施。この時は約1時間で24筆の署名が集まりました。

「イベントで署名集め」に手応えを感じた私は当然3匹目の泥鰌を狙うことになります……

「スタンプラリー」で署名集め

1月、JR東日本が「ガンダム スタンプラリー」を開始しました。これは東京都区内周辺の65の駅にアニメ「機動戦士ガンダム」関係のスタンプが置いてあり、配布されるスタンプ帳に各駅のスタンプを押して一定数集めれば景品がもらえるというイベントです。私はもちろん「ガンダム世代」ではありません(子供のころは「鉄人28号」の正太郎に憧れていました)が、イベント大好き人間としては乗らない手はありません。そこで思いついたのが「どうせやるなら全駅で署名集めをやろう」という実に無謀な計画です。

『目指せ!全駅制覇!ガンダム・スタンプラリー & 安倍9条改憲NO!3000万署名拡散行動』とかなり大げさなタイトルを付けたこの行動は、スタンプが置いてある駅ごとに15分ずつ駅前で署名集めをするというものです。スタンプは改札外にあるので必ず一旦改札を出ます。適当な場所に「3000万署名」のノボリを立てて署名を呼びかけました。65の駅をすべて回るのに5日かかりましたが、結果は41筆集めることができました。

署名集めは出会いと対話の場

この行動を通じてたくさんの方々との出会いや対話がありました。ほとんどの方が署名の後で「寒いのにご苦労さん」と声をかけてくれます。その言葉に頑張る力を与えていただきましたが、特に心に響いたのは若い人からの言葉です。我孫子駅で署名を集めていたとき、下校時間と重なりたくさんの高校生が私の前を通り過ぎました。その中から3人が署名をしてくれ、彼らとの対話の終わりが「戦争になったら行くのは僕たちですから」「絶対に憲法変えさせないように頑張るよ」「ありがとうございます」でした。さらに重く響いたのが王子駅で、一度通り過ぎて戻ってきた小学5年生が署名をしてくれました。「僕は将来弁護士になりたい。憲法は大切なものだから変えてほしくない」「うん、君たちのためにも頑張るね」「ありがとうございます。よろしくお願いします」と言われたときには涙が出そうになりました。

不思議な出会いもありました。先ほどの我孫子駅から2時間ほど後に、南流山駅で署名をしてくれた女性が「実はさっき我孫子で見かけたのですが、急いでいたので通り過ぎました。今また見かけたので署名することができました」と言うのです。一つの駅に準備と片づけを含めても20分ほどしかいませんし、駅の出口は北と南にあります。もし私が来るのが10分遅かったら、立ったのが北口ではなく南口だったらこの署名はもらえませんでした。

もちろん改憲賛成の人が議論を仕掛けてくることもあります。市ヶ谷駅は防衛省のお膝元で、完璧アウェーな場所です。駅前で例の「自衛隊ありがとう署名」をやっていました。小学校低学年くらいの男の子を連れて署名をしていた男性が私のところに来て、「北朝鮮は必ず攻めてくる。その時自衛隊が守ってくれるんだから感謝しろ」「北朝鮮とは対話で解決するのが一番です。集団的自衛権は日本の防衛とは無関係です」「集団的自衛権はみんなで日本を守ってくれるということだ。俺はそう思ってる」…残念ながら対話はかみ合いませんでした。

愚公山を移す

私はいま街宣や集会・会議などに行く前に時間があれば1時間ほど署名集めをし、その後一人でプラカードを持ってスタンディングをしています。集まる署名は毎回数筆。少ないですがそれでも続けていればやがて大きな数字になるだろうと思い、自分でこれを「愚公山を移す行動」と名付けています。

今日までに集まった署名は114筆。とりあえず第1目標の100筆は超えました。次は欲張らずに150筆を目標にしています。

「3000万署名」は「2000万人署名」を超える広がりを作り出す必要が有ります。そのためには一人一人ができることを精一杯やることに加えて、「もう半歩」前に出て行動することが必要だと思います。

私はこれからも「愚公山を移す行動」を続けていきます。あなたも「もう半歩」出てみませんか。
さぁ~て、何か面白そうなイベントは有りませんかねぇ?

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第120回市民憲法講座 改憲動向、『発議』をどう止めるか

お話:高田健さん(戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会、許すな!憲法改悪・市民連絡会)

(編集部註)1月27日の講座で高田健さんが講演した内容を編集部の責任で要約したものです、要約の責任はすべて本誌編集部にあります。

第48回総選挙の結果と、そこから見えてきたもの

この前の総選挙からちょうど3ヶ月、その総選挙がどうだったかということを確認しながらこれから私たちの運動がどうあるべきかという話をしたいと思います。

まず、あらためて思い出していただきたいのですが、2015年安保闘争というのはどう意味を持っていたのか。大きな特徴は、総がかり行動実行委員会が結成されて、それが2015年安保を一生懸命たたかったところにあります。自分が属している組織をこんなふうに言うのはちょっと面映ゆい気もするけれども、しかしそれはいっておかなければいけない。

総がかり行動は、ご存じのように市民団体を中心とした9条壊すな!実行委員会と、連合左派――自治労とか日教組とかいう人たちと知識人が一緒になった1000人委員会、それから共産党系と言われる共同センターのみなさん、その3つが一緒になってこの総がかり行動実行委員会をつくった。2014年の暮れにできたわけです。

わたしが高校1年生のころ1960年の安保闘争がありました。1960年の安保闘争は、安保改定阻止国民会議という大変大きな共闘組織ができまして、当時の総評とか社会党とかあるいは全学連とかいろいろな団体が加わった共闘組織ができましたね。中央でできただけではなくて各都道府県あるいは市町村にまでできたところがあります。日本の反戦平和を願うほとんど全ての団体と個人がこの安保改定阻止国民会議に結集しました。今度の総がかりは、実はそれ以来だとわたしは思っています。もちろん途中で東京都知事選挙の共同闘争とか、あるいは大きな課題で1日だけ共闘するとか、そういう共同の運動はあったけれど、恒常的で継続的な共闘組織が、それぞれの立場や政治的な主張を超えて一緒に共闘したというのはたぶん60年安保以来といっていいと思います。3年間もやっているわけですから。この2015年安保で総がかり行動ができたことによって、行動しようと思う人はいろいろ迷わなくて、国会前に行けばいま反対している人がみんな集まっている、そういう場ができた。2015年安保はまさにそうだったと思います。

結果として壮大な共同行動ができて、そして9月19日に強行採決されるわけですけれども、2015年安保をたたかった市民たちは国会外で全力でたたかうこととあわせて、国政の場にも私たちは直接発言していかないとこの国の政治は変わらない、そういうふうに思うようになって、2015年の暮れに市民連合ができたわけです。総がかりとかママさんとか学者とか、いろいろな方が一緒になって市民連合ができる。市民連合は「政治団体」ですから直接選挙と関わっていく。そういうことを目指した組織です。総がかりはデモをやったり集会をやったり、いろいろな市民行動をやりますが、市民連合は直接選挙に市民として関わっていく。選挙は政党だけがやるたたかいではなくて主権者としての市民、私たち自身の課題なのだ。単に選挙で政党を応援するだけではなくて私たち市民の責任において政治に関わっていく。かなり大胆な目標を掲げて市民連合ができたんですね。これもやっぱり60年安保のように、多くの意見の違いを超えて一緒になってきた中での大きな成果だと思います。この市民連合が実は第48回総選挙でも重要な役割を果たしました。

安倍首相による想定外の解散の急襲

昨年総選挙があったわけですが、率直に言いまして、市民連合は総がかりも含めて昨年総選挙があるとは思っていませんでした。安倍さんにまんまと裏をかかれた。それは大きな失敗だったと思います。ただ当時、昨年中に総選挙はないと思っていたのはそれなりに理由があります。

安倍さんの政権は衆議院と参議院で与党+改憲派が3分の2以上議席を持っている。両院合わせて3分の2以上の議席を与党が持ったことは戦後一度もありません。本当にこんなことは2度とないだろうと思うほどの非常に珍しい政治状況です。憲法は国会の両方の院で3分の2以上の賛成を得ないと改憲の発議はできないですから、この安倍自民党、与党が3分の2を持っていることは非常に大事なことで、これを失ってしまえば安倍さんが絶対にやろうと思っている改憲ができなくなります。だからわたしたちは思っていました。いませっかく安倍さんは衆議院で3分の2を持っているのに、改憲の発議をしないうちに総選挙に打って出るということはたぶんないだろう。

実はないと思っていたのはもうひとつ理由があります。それは一昨年の参議院選挙でこの市民連合が全力を挙げてたたかった課題というのは、ひとつの選挙区から1人しか当選しないという1人区で、市民連合と野党4党が結束して候補者を一本化して自公与党とたたかう。こういうふうに野党がばらばらにたたかうことではなくて一本化すれば相当なたたかいができると思いました。実際にやった結果、全国32ある選挙区のうち11か所でわたしたちは勝利を収めた。わたしたち市民連合が確信を持ったのは、このやり方でやれば相当のたたかいができる。選挙とか議会とか国会というのは非常に遠いところにあって、なかなか市民に手の届かないようなところがあるけれども、わたしたちもこれに手をかけるようなことができる、そういう状態があるのではないか。

衆議院の方は比例区と選挙区があり、選挙区は全部1人区です。だからこの32の1人区と同じ状況が、衆議院で当時は295の1人区があった。選挙の直前に定数を減らして289になって、この289の選挙区でもしも参議院の1人区と同じように野党4党とプラス市民で候補者を一本化して与党とたたかえば相当のことができる、わたしたちはそう思っていました。これは安倍さんの方も知っています。野党が市民と一緒になったら非常に手強い、下手をしたら負けると思っている。ですから私たちは、これを進めている間は安倍さんはそう簡単にやってこないと思っていた。

なぜ安倍さんが、せっかく手に入れた3分の2の議席を持っているのにもう一回総選挙に出たか。これには理由があります。ひとつは野党4党の中の第1党、一番勢力の大きい当時の民進党が内部問題などでガタガタになった。これは自民党から見ればすごく有利なことです。もうひとつ大事なのは、わたしたちの市民連合の方です。289の選挙区があるのに市民連合ができていたのは、正確に計算していませんが、当時ほんの3分1か4分の1くらいのところでしか市民連合づくりは進んでいないし、きちんとした一本化をしたところはほとんどない状態でした。市民連合は全然準備ができていないな、まだまだ各地で市民連合は結成されていないと。これも安倍さんから見たら非常にチャンスなんですよ。

だから、この状況で解散に打って出れば相当のことがやれると安倍さんは判断をした。それでも当時安倍さんは、解散に打って出たら50は減ると思っていたそうです。50を減らしても今回安倍さんは、どうしても改憲を訴えて解散をやりたかった。今回はそうだった。そして50減ったら3分の2はなくなりますから、改憲はできないじゃないかという話になります。この減る50は、維新と当時できはじめていた都民ファースト――あとで希望の党になっていきます、これらと政治大再編、改憲大再編をやることで十分カバーできると安倍さんは判断したんですね。だから自公で例え50減ってもそのほかともやれば改憲勢力の3分の2は確保できる、という意味ではいま解散に打って出た方がいいと判断をしてやったわけです。

反故にされた市民連合との約束、枝野新党立ち上げ

これでわたしたちも慌てましたけれども、すごく慌てた人は民進党の代表になったばかりの前原さんだった。どんどん党の主だった人が出ていく、がたがたしている。そこに解散に打って出られたら民進党は選挙にならないと思ったわけです。だからここでどうやるか。当時本当に日の出の勢いだった小池百合子さんの都民ファースト、後の希望の党、これとどう一緒にやるかという話になったわけです。これは先週ですか、「サンデー毎日」で小沢一郎さんがこの間の経過をインタビューで説明をしていますから経過がよくわかりますが、前原さんは非常に慌てて小池百合子さんの党に加わっていこうとする。小池さんの方は、いまから思い出すともう日の出の勢いですよね。小池さんが発言すると新聞が大きく取り上げる。当時はこの党にはすごく前途があるように映っていた。前原さんはこれと一緒になることで民進党の瓦解を食い止めようとしたわけですね。ところが結果はもうご承知の通りですけれども、小池さんは排除の論理をやって大失敗をした。ああいう論理をとったことによって、民進党との合併は結果としてうまくいかなかった。

ただ前原さんが小池さんの党に入るといったときに、民進党は両院議員総会をやります。この方針でいいかという確認を。テレビで何度もご覧になったと思いますけれども、前原さんが立って希望の党と一緒にやるという話をして、これは全員一致でした。それほどあの時点では、この合流を民進党の人たちは期待をした。潰れそうな民進党が小池さんの希望の党に入ることによって、ここと一緒になれば自分達がリードできるに決まっているという、そういう論理ですよね。どうせ自分達は一番人数が多くて、各地にも組織があって、資金も一番持っている。小池さんはそのどれもないわけです。議員も5人くらいしかいない、地方の組織もない、金もない。だから一緒になってうまくやろうとした。トロイの木馬作戦とかいろいろなことをいっていたみたいです。トロイの木馬に隠れて城門をくぐったら、あとでそのお城を乗っ取ることができると思ったとあとで聞きました。全員といえば全員なのかもしれませんけれども、そういうことをやった結果こういう事態になってしまったと思います。

9月の下旬頃、安倍さんがどうも解散しそうだという話がずっと出てきました。それで慌てて、私たちは準備が整っていませんでしたから、いまでも思い出しますが、9月26日に市民連合は4つの野党のそれぞれ幹事長さんたちを訪ねました。そしてもう一回、安倍さんが解散に打って出そうだから、とにかく野党共闘の準備が整っていないところを一気に進めて、これに対抗しなければダメだ。政策ではこういう項目で一緒にやれないかと、原発とか青年政策とか労働政策とかを含めて7つの項目を出しました。どの幹事長さんたちもわかったと、できるだけそういう方向でやろうという話になりました。何とか4党と政策合意ができてほっとして、一本化を急いでやろうという合意できて、安倍さんがやってきても必死で態勢をつくればなんとかたたかえるかもしれないと思って帰ってきました。そのあと前原さんが、小池百合子さんを訪ねて、合流する方向をだし、市民との合意をチャラにした。党首ってそういうものですか、幹事長とかそういう人たちがみんな確認したものを1人でひっくり返していいんですか。

実はそういう文書を取り交わすときは何日も前からやります。事前に文書を各党に渡しておいてこれで4党合意したい、いいですかと。ですから、その文書を前原さんも見ているわけです。見て知っているのに、あの人はとことこ行っちゃったわけですよ。なんだ、政党ってこんなものかと本当にちゃぶ台返しをやりたいくらいの日でしたよね。こんなめちゃくちゃやるのか、一生懸命やってきたのにと思いました。それは本当にひどい状態でした。2015年安保からのあの市民連合とか総がかりをつくってきたたたかいというのがここで無駄になってしまうのかと非常に失望したんですね。ただわたしはすごいなと思ったのは、その時に、あの2015年安保を全国でたたかった、各地でたたかった市民が、ターゲットを枝野さんにして「枝野、起て」というメールをどんどん打ち出したんですね、ツイッター、SNSで、さまざまなかたちで。ファックスもいったといっていました。これはだから各地の市民のみなさんが「大変だ」と思ってやった。たぶんここにいる何人かも枝野さんに発信した人がいると思います。

あとで聞きましたら、一晩それを見ながら枝野さんは悩んだといっていました。そして枝野さんは結局これだけの市民が自分にいま起ち上がれ、いま起ち上がらなかったら大変なことになると思って後押しをしている。これに自分は背くわけにはいかない。これに応えるというふうに枝野さんは決断する。だから2015年安保のあのたたかいが見事に生きていたとわたしは思いますね。野党4党プラス市民というのが壊れたか、もうこれはダメかと思ったときに、枝野さんが立ち上げた。この全国の市民が応援をしたということが、立憲民主党ができた大きなひとつの要因です。

一方的に候補者を降ろした共産党、拡がる市民の支持

それからもうひとつあります。わたしは日本共産党の役割だったと思いますね。枝野さんが自分で、1人で党を立ち上げると声明した即座に、志位和夫さんが枝野さんの選挙区では自分達の候補は降ろしますという声明をされる。候補者を降ろすというのは並大抵のことではありませんよね。これはメッセージだった。枝野さんのたたかいを支持するという。そしてそのあと何やかんやあって60選挙区くらいで共産党は候補者を降ろします。これは大したものだったと思うんです。実は前回の2016年の参議院選挙後に共産党は中央委員会をやって、次の総選挙では今度の参議院選挙のように一方的に譲ることはしないという方針を出します。次の総選挙ではちゃんと政策の合意をやり、候補者も調整する。一方的に共産党ばかりが降りるのは不平等だ。相互に支持するような状態にしたいというのが、2016年の参議院選挙が終わった直後の共産党の方針でした。

語弊を恐れず言えば、この共産党の方針に志位和夫さんは、ある意味では反したわけです。この時期に大胆に。すごいことをやるなとわたしは思いましたね。でも当たり前だと思います。何が一番大事なのか。そのときそのときの小さい方針にこだわって、もっとも大事な安倍政権を打倒する、改憲を阻止する、この野党4党プラス市民の連合、いま壊されかかっているこれを何としても踏みとどまって守らなければいけない。これが当時の最大の課題だった。この最大の課題のために、参議院選挙が終わった直後の中央委員会の方針を変更した。これは大変な決断だったと思います。結果としてご存じのとおり共産党は比例区で当選者を減らすわけです。各選挙区で立っていると比例区の宣伝もできるから、「政党は共産党に、候補者はわたしに」という宣伝もできるから、選挙区で立っていた方が比例区にとっては有利です。それを60人以上も降ろしてしまうというのは、比例区の選挙に非常に影響する。その決断をあえて彼らはやったわけですね。一生懸命全国の共産党員が頑張ったのに、比例区で当選者を減らしてしまった。わたしはどこに行っても率直にいっていますけれども、それで共産党員のみなさんががっくりする必要はない。その大胆な行動をとったことで、わたしたちのような市民あるいは中立的な無党派の市民、そういう市民たちから共産党は一定のリスペクトを受けた。だからわたしは、共産党員のみなさんは自信を持ったらいいといつもいっている。そういう選挙が今回の衆議院選挙であったと思います。

結果としてこれは大変な選挙でした。不意を打たれたから準備が全然できていない。枝野さんの新しい党はみんなが新しい党を応援するのにカンパしようと思っても、銀行の口座もできていなかった。口座ができたのはだいぶ後で、市民がみんな勝手にネットで知って振り込んだのが8600万とか何とかいっていました。8600万では選挙はたたかえないけれど、しかし市民が自発的に8600万もカンパしたということは、私はすごいことだと思いますね。多くの市民がこの党は自分たちの党だ、自分たちが育てる党だというふうに思ったことだと思います。そういうふうにして今回のたたかいがありました。

当時立憲民主党の人に聞きました。何人くらい候補者を立てられるか。候補者もいなかったわけですから。そうだな30人立てられたらすごいねってその人はいっていました。30人くらいしか立てられないと思っていたんですね。それからどんどんどんどんと勢いで最後は55人当選するほどのたくさんの人を立て、比例区では候補者が足りなくて、東海ですかね、自民党にとられてしまったということもあります。けれどもものすごい勢いで立憲民主党は前進して、結果として野党第一党になった。口の悪い人は歴史上最小の野党第一党、一番人数の少ない野党第一党。それまでの野党第一党は150人とかそれくらいは持っているのに、枝野さんの党はたった55人で野党第一党にかろうじてなった。この前いろいろな策略があって、この野党第一党を何とか立憲民主党から奪いたいと、希望と民進の統一会派の動きとかありました。これが一緒になると枝野さんの党より上にいきますから、枝野さんのところは野党第一党にならない。

なぜ野党第一党がこんなに大事かというとこれは国会運営上、非常に大事です。副議長は野党第一党と決まっている。それから与党の第一党と議会運営について交渉する権利は、みんな野党第一党が中心です。野党第一党が野党をまとめて自民党と交渉する。どこが野党第一党になっているかによって、国会運動の仕方はものすごく変わってきます。だって枝野さんの代わりに小池百合子さんだったことを考えてみたら、自民党と小池さんが相談したらどんなことになるかだいたいわかっちゃいますよね。不幸中の幸いというか大変な厳しい選挙ではあって、3分の2をとられた選挙ではありましたけれども、そういう結果になった。繰り返しますけれども野党4党プラス市民という、この連合して共にたたかう図式は生き残ったということです。前原さんによって壊されそうになったけれどもこれはいまも残っている。

変わらぬ安倍9条改憲、動揺繰り返す方針・方法

改憲というのはどういうふうになるかというと、自民党がまず改憲の自民党の案をつくります。その案を直接憲法審査会に出すのか、その前に他党と調整をして共同の案を出すのかは色々あります。憲法審査会で自民党の案が議論になってもこれは絶対一致しませんから、たぶん憲法審査会ではめったにやらないのですが、これは強行して採決をすると思います。憲法審査会のどこかで憲法審査会の多数派の案というのが採決される。そして国会にかけられる。または衆議院議員100人、参議院議員50人、それぞれの賛同があれば憲法改正原案を国会に出すことができます。そこでまた一定の憲法審査会での議論などを経て、最終的には国会の本会議で3分の2の賛成があるとこの憲法改正原案は採決され、発議ということになります。3分の2の多数決で発議されたら、その日から60日あるいは180日、2ヶ月から6ヶ月、その間のいずれの時期かに国民投票をやらなければいけないということにいまの法律ではなっています。だから発議をされたら、そこから2ヶ月から6ヶ月以内くらいに国民投票をやって、国民投票で過半数の承認を得たらそこで改憲ということになる。そういう手順ですが、いつどうやってやるかということで、いま自民党の中であれこれあれこれ発信をしています。

安倍さんが去年の5月3日、突然憲法9条に1項と2項はそのままにして、だから9条は変えないで新しく3項なり自衛隊の根拠規定になる、自衛隊という言葉を使った条文を付け加えるということをいいました。これはいままで安倍さんがいってきたことと全然違うことです。安倍さんの方針はいつも変わります。憲法を何とか変えたいというところはそれなりに一貫していますが、どうやって変えるか、どこから変えるかということはしょっちゅう変わります。いつも動揺している。

2006年から2007年の第1次安倍政権の時には、日本国憲法にはおかしなところがたくさんある。中でも一番おかしいのは第9条だ。こういって、第9条から変えるというのが2006年から2007年。それが一斉に批判を浴びる。九条の会なんかもそれを機にたくさんできていく。世論が大きく変わっていく中でどう見ても国民投票をやって勝てそうもないとなったときに、2007年に安倍さんは参議院選挙で負けたこともあわせて、お腹が痛くなったということで政権を突然投げ捨てました。啖呵を切ったことができそうもなくなりましたから、それはそうなりますよね。それが2007年です。このときは9条でした。そのあと色々あって民主党政権になって、自民党が野党になる。野党になったときに自民党のかなり多数から、自民党が考える率直な改憲案を出した方がいい、遠慮することはないということで、すごく率直な改憲案をつくったのが自由民主党憲法改正草案です。2012年春です。

ひどい改憲案でした。天皇元首化とか、国防軍とか、あるいは緊急事態条項とか、大日本帝国憲法への道かと思うような改憲草案だった。この評判は散々でした。全然受け入れられる状況じゃなくて、自民党はこれではダメだなと思うわけです。それでまた安倍さんは考えた。96条ですよ。突然96条というのが出てきて「なんだい、今度は9条じゃなくて96条かい」という話になる。3分の2で国会が発議するというのは民主主義ではない。民主主義は多数決であるといって、過半数でいいはずだということで、96条を変える。これも学者や弁護士や世論から市民運動から、それは「裏口入学」だ、96条を変えて9条を変えるというやり方は卑怯だということでずいぶん批判を受けた。安倍さんはその結果、憲法の条文に手を付けるといまの日本ではどうにでも受け入れられないなと思うわけです。

それで考えたのは条文をそのままにして、解釈を変えちまいましょうということです。それが2014年7月1日の閣議決定です。憲法第9条の解釈を変えて集団的自衛権の部分的行使ができる。歴代の自民党政府が絶対そういうことはあり得ないといってきたものを、安倍さんの内閣が単独でそういうことをやって、内閣の閣議決定を彼はできますからそれでやってしまった。そのあと2015年に安保法制 、戦争法制にいったわけです。安倍さんの意見はこういうふうにどんどん変わっていきます。

ところがせっかくこの戦争法制をつくったのに、自民党はこれで満足しなかった。この戦争法というのは使い勝手が非常に悪い。というのは9条がまだあるわけです。そのもとで、憲法の下位法として戦争法制がある。それが一番はっきりあらわれたのが南スーダンですよね。南スーダンに戦争法に基づいて自衛隊を派遣した。派遣したけれどもとんでもないことになります。戦争法によれば戦場に自衛隊を派遣できないわけです。だから南スーダンでは戦争がないと、一生懸命言い張ったわけです。あとでそれが全部出てきちゃって、これは稲田さんがひどい目にあったわけです。とにかくそういう事態になって、戦争法というのは自民党が好き放題に使える法律ではなくて、非常に使い勝手が悪い法律だということを安倍さんは思うわけです。「なんでだ、やっぱり9条があるからだ」と、2006年、2007年のところにもう一度戻るわけです。。戦争法はせっかくつくったけれども、南スーダンでもうまくいかない。やっぱり9条を壊さないとどうにもならないということで考えた結果が昨年の5月3日です。南スーダンはひどいですよね。あそこにいた自衛隊員の6人に1人くらいがPTSDだというんでしょ。だいたい宿営地の上をどんどん大砲の弾が飛び交うわけですから、いつ落っこちてくるのかわからない。何発か落ちてきたという話がありますよね。上から宿営地の屋根に穴があいた。だからそういう戦場に行かされて、戦争法というものでいったけれどもなかなかうまくいかない。自由にアメリカ軍と一緒に海外で戦争に参加するという法律にはならなかった。

自民党の改憲4項目と石破案のもつ危険性

話は回り回りましたけれども、昨年の5月3日の憲法9条ということになった。ただ安倍さんは憲法9条を変えるといったらうまくいかないということを、もう経験済みです。だから1項2項はそのままにして新しく第3項を付け加える。石破さんは、おかしいんじゃないの、自由民主党の基本法案というのは憲法改正草案だ、これは自民党で採択した案だ。これを何で安倍さんが突然個人でああいう提案ができるの。いくら総裁だからっておかしいんじゃないの、というのが石破さんの意見です。石破さんはスジ論です。たぶん党の運営という考え方だけにこだわったら石破さんの方が正しい。わたしはあの意見は嫌いですけれどもね。党で一回決めたものを、党にもちゃんとかけないで総裁がひっくり返すというのは何か。さっきの前原さんと同じようなやり方でやっている。だからいまそのふたつの案が対立しているわけです。石破さんを中心とした前の改正草案にこだわる人たちと、安倍さんのような意見にこだわる人。

しかし安倍さんにしてみたら、石破は何を馬鹿なことをいっているかということです。そんなことをいって憲法を変えることができると思っているのか。というのは、この間の経験からそれは安倍さんや二階さんやいまの自民党の幹部はみんな知っています。それはやっぱり「正しい」とわたしも思いますね。国防軍で憲法を変えましょうなんていったらもう支持されないのははっきりしている。せっかく苦労してこうやったのに石破は反対しているというのが、いまの自民党の中です。去年中に自民党の改憲案をまとめる方針だったけれども、両方が妥協しなくてまとまらない。それで両論併記ですよ。最近のニュースでは3月25日に自由民主党の党大会までに石破さんたちのような意見と安倍さんの意見とを一本化してそして自民党の案をつくると報道しています。

ただ私はこれは困ったなと思っていることがあります。安倍さんは憲法9条を変えないで自衛隊を付け加えるという意見です。それから石破さんの国防軍という意見があると、このふたつを比べたらどうですか。安倍さんの意見が「柔軟」に、リベラルに見えるんですよ。石破さんは過激派。すごくうまい構図だと思いますね。早速公明党は飛びついて、こっちなら自分たちもちょっと協力できるかなと、いま言い出しています。安倍さんの意見だけだったら、ああだこうだといっぱい叩かれると思うけれど、それより右の意見があるために、これは非常に政治的な詐術ですね。そういうごまかしに使われているのではないかということも見ておく必要があるほどの、いまの自民党の一本化の議論だと思います。

この一本化の中味ですけれど、自民党は9条だけをいうとまずい、だから9条以外のことも一緒に変えるといってまぶしておいておかないとまずいと考えたんですね。それで4つの項目について憲法を変えるというのがいまの自民党の基本方針です。9条はこの中のひとつに過ぎない。あとは教育無償化、合区解消、それから緊急事態のときの議員の選出方法。この4つについて憲法を変えるという提案をしてごまかそうというのがいまの自民党の方針です。ところがこれがまたひとつひとつ石破さんとか自民党の中で意見が違って、かなり両論併記みたいになっています。
ひとつだけ今日紹介しておきたいのですけれども、緊急事態条項、非常事態条項も4つの中のひとつです。これは実は大変な問題で、自民党の改憲草案を勉強したときに、非常事態条項で非常事態のときには内閣が国会に替わって国会の法律と同じような権限を持つ政令を出せる、そういうときには事実上の法律を内閣がつくることできるというのが非常事態の一つです。もうひとつは緊急事態条項の中では財政措置も内閣ができるとしています。さらに、実は日本憲法では地方自治体と政府は同格です。実施上運営は同格ではないですが憲法的には同格です。これが非常事態には内閣が地方自治体に指示命令する。そういう緊急事態条項をつくることで、戦争になったりあるいは地震が来たりしたときに、この国に憲法が間に合わないようにならない、そういうことをやろうというのが自民党の改憲草案でした。

問題はこの非常事態条項、これは多くの、特に九条の会などが全国でこの自民党草案を学習した結果、これはとんでもない、危ない、ナチスの授権法と同じだ。このままいったらヒトラーと同じようなことを安倍さんができるようになる。これを許してはいけないと声をずいぶん上げました。それから市民運動の街宣とかいろいろな場で、安倍さんが言っている非常事態条項は危ないよ、とんでもないよ、とかなり頑張った。そういう声が全体として反映して公明党が動揺します。それで自民党にこれだけはやめておいて下さい、緊急事態になったときに国会議員の任期だけを変えるところに緊急事態条項は絞り込みましょう。今日あたりの新聞もそういっていますから、たぶん3月25日はそういう案が出てきます。緊急事態条項で、政令をつくるとかそういうのはたぶん出てこないです。これは多くのそういうたたかいが功を奏してそうなってきたわけで、これが緊急事態条項のところです。

1ミリも変わらないなら問われる改憲の必要性

どういう改憲案を安倍さんが出してくるかという話ですが、この9条に自衛隊を認める憲法上の根拠規定を入れるというわけです。安倍さんは最近ふたつくらい彼の宣伝の特徴がある。ひとつはある自衛隊員のお子さんが、うちに帰って自衛隊員のお父さんに「お父さん、憲法違反なの」といった。毎日毎日大震災とかそういった24時間自衛隊員が頑張っているのに、息子に憲法違反かと聞かれる。このお父さんはどんな気持ちだったろうかと、安倍さんはいろいろなところでアジります。かわいそうでしょうという。安倍さんはいつもこういう手をつかいますね。もうひとつは5月3日のビデオメッセージですかね。自衛隊員に向かって、君たちは憲法違反の存在であるけれども、いざ大変な事態になったときには命を張って戦いたまえ、こういうことを言えますかっていうんですね。自衛隊に失礼じゃないかって。このふたつが最近の感情を煽るキャンペーンですね。だから自衛隊は合憲だということを憲法に書く必要があるというのが、安倍さんの論理です。この子どもをダシに使うというのは戦争法のときもやった。あのパネルで。内閣で記者会見をやったときにパネルを出して、朝鮮半島で戦争が起きた。アメリカ軍が朝鮮半島にいる日本人を軍艦で守って日本に連れてくる。この軍艦が狙われるかもしれない。このときに日本の自衛隊はアメリカの軍艦を護衛できないんですよ。いまの法律ではこうなっているんですよ。こういうことが許されますかってパネルに書いて、船の上におかあさんと子どもがいるパネルをいまでも覚えていますけれどもね。子どもをだしに使うなとわたしは本当に思いますけれども、そうやって感情に訴えて自分の政策を正当化するというやり方を安倍さんはやっています。

今回も今いったふたつのやり方で「自衛隊はかわいそうだ」といいます。わたしは教科書にそう書いてあるかどうか調べました。俵さんという教科書問題の専門家に頼んで、そこに関係する8社の教科書のコピーを全部もらって見ました。「自衛隊が憲法違反である」なんて、「子どもがかわいそう」っていうような記述はどこにもありませんでした。これは私からするとちょっと不満です。わたしは自衛隊が憲法違反だという意見ですが、別にみんな一致する人とだけ運動をやろうとはは思っていませんからそういう意見はいいます。ただしこの教科書の中では、自衛隊は憲法違反だということは書いていないんですよね。政府はこういうふうにいっているのが、まず主で書いてあります。そして中に「一部には」とか、あるいは「学者の一部にはこういうふうにいう人もいます」と書いてあります。どの教科書も大抵そうです。もちろん育鵬社の教科書などはもっと露骨です。だから子どもが、お父さん憲法違反なのって質問したなんていうのは、まったく安倍さんがつくった言葉だと思います。でっち上げだと思いますよ。ありえないですよね、こんなことを学校の教科書で。わたしが学校の先生だったらどういうか、わかりませんけれども。自衛隊は憲法違反のおそれがあるということを先にいうかもしれません(笑)。教科書には残念ながらそうは書いていません。安倍さんは明らかにうそをいって、そういうやり方でやっている。

その自衛隊を憲法に書き込む場合、どういうふうに書き込むだろうかということで、4つのくらいの例を挙げました。これらのどれかが、たぶん3月25日に出てくると思います。一般的に自衛隊の存在を妨げないと書くのか、必要最小限度の実力組織としての自衛隊を設けるとするのか、あるいは国際法に基づく自衛のために実力組織――この国際法というのはミソがあって国連法、国連憲章、集団的自衛権の容認を前提にしていると書かれますね。あるいは内閣総理大臣を最高指揮官とする自衛隊、これらのいずれかの案を出してくる。最後に国民投票になると、これらの案のどれかが投票用紙に書かれて、そして投票用紙には賛成・反対とあらかじめ印刷がしてあります。○×式の投票用紙はではありません。この自民党の改正案が印刷してあって、反対の面に「賛成・反対」とあってどちらかを丸で囲みなさい、なんです。国民投票というのはそういう投票です。

こうして憲法9条に第3項あるいは別の2項として付け加えるというようなことをやると、どういうことになるか。憲法というのは日本国憲法全体で人間の身体のようなものですね。その一部だけを手術してメスを入れて変えてしまうとどういうことになるか。いろいろな意味で身体に響きます。憲法9条のところだけ自衛隊を入れたからそこしか変わらないか、あるいはそこだけしか悪くならないかというと、そうではなくていろいろなところに響いていく。憲法9条にそれを書き込むことでほかの条項とたくさん矛盾が出てくる。ここでは76条とか18条も直さないとダメになるということを書きました。憲法の前文なんかもこれに該当します。いろいろなところに響いていくわけで、そうするとこれは1回だけの憲法改正だけでは済まなくなります。次々とそれに合わせて憲法を変えていかなければいけない。

2018年は安倍改憲をめぐる正念場の年

この後どうなっていくかです。3月25日に自民党の案ができて、ちょうどその頃には国会の予算審議も終わっているから、3月後半からはより本格的にこの改憲の議論になっていきます。その前からたぶん憲法審査会は始動させますけれども、より本格的な議論になっていく。いままでのパターンでいうと、国会で一定程度議論したということになって強行採決をするわけです。ただ3月末に議論が始まって、今回の国会の会期は6月20日までですから、連休を入れると実質2ヶ月くらいしかない。2ヶ月で憲法をやってしまうのかという話になります。戦争法はどれだけ掛かりましたか。2014年の通常国会と年秋の臨時国会、2015年の通常国会ですから、国会でいうと3国会かかっています。それも最後の国会は9月20何日まで延長する中で9月19日に採決をした。これほど戦争法でかかっています。憲法の問題はそれ以上でしょう。それをたった2ヶ月くらいでやりますか、という話になります。これはいくらなんでも公明党とかほかの党もついて行けないし、自民党の中からも反論がかなり出ますし、世論はごうごうとわき上がります。

延長するという方法はありますけれども、9月8日が自民党の総裁選挙の期限です。これは自民党の規定では2期6年しか総裁はやれないということになっていたのを、安倍さんが自民党の規約を変えて3期やれることにしたわけです。だから今度の9月8日にやられる自民党の総裁選挙では、安倍さんはまた出るでしょう。そして他の人が出るかどうかどうかなんていうのを新聞がちらちらと書いている。しかしいまの勢いからすれば安倍さんが三選をするという流れです。この前後に国会での憲法審議をやっていられるかどうかということがありますから、すごくやりにくい。だからたぶんどんなに長くても、一旦延長国会は8月には打ち切るだろう。そしてもう一回秋に臨時国会をやる。臨時国会を9月か10月くらいに召集する。そこでまたこの憲法の議論をする。

普通の法案の場合は、ひとつの国会で議論をして審議未了になってしまうと廃案になるんです。ところが安倍さんに都合のいいことに、憲法審査会だけはそれがありません。憲法のこの議論に関しては国会を超えて継続でき、国会が休んでいる間も憲法審査会は審議できます。これが国会法に書いてあるものですからたぶん臨時国会でやることになると思います。これがいろいろな要因があって国会の中がまとまらないという場合に、臨時国会の一番最後のぎりぎり12月頃に強行採決をやれば、国民投票は2ヶ月から6ヶ月以内にやればいいわけです。来年の3月くらいまでの間に国民投票をやればいいかなと。3月というのにはわけがありまして、統一地方選挙がその春にあるのでこれと一緒にやっているわけにはいかない。それから天皇の代替わりというのが4月30日から5月1日にかけてあります。これも全国お祭り騒ぎするでしょう。この最中に憲法をやるわけにはいかない。そしてそうこうしているうちに7月になると、来年7月のはじめは参議院選挙になります。私たちは、この前の衆議院選挙みたいなことは絶対やりませんよ。それに向かって本当に野党4党プラス市民というのを全国でできるだけ多くの統一候補にとりくみます。32の1人区だけではなくて2人区とかそういうところにもできるだけ共闘ができるような努力をしてこの安倍さんの参議院選挙を迎え撃とうとしています。この参議院選挙にぶつかると安倍さんの方も非常に大変ですよね。だからたぶんどんなに遅くても3月くらいまでに国民投票をやりたいというのが安倍さんの狙いだと思います。

ひとつだけちょっと付け加えることがあります。憲法改正国民投票と国政選挙を一緒に、同日選挙をやる可能性があるということを、ときどき新聞がちらちら書きます。わたしはほぼ、99%ありえないと思います。なぜか、それは選挙というのは公職選挙法という法律のもとで、この法律に従ってやります。国民投票は、改憲手続き法いわゆる国民投票法というものに従って国民投票運動をやります。このふたつの法律はものすごく違うんです。例えば公選法では戸別訪問はできないですが、国民投票法のもとでは戸別訪問は自由です。改憲に反対しましょう、安倍改憲反対に丸をつけましょうという運動を、どんどんやれます。戸別に歩いて構わない。宣伝自由。宣伝カーも選挙だと何台と決まっていますね。ひとつの政党の宣伝カーは2台とか候補者カーは何台とか決まっている。国民投票では全然決まっていません。ありえないけれども100台出してもいい。要するに国民投票法というのは、できるだけ自由度を大きくする、憲法の問題だからいろいろ制限しない、そういう建て前のもとにつくられた法律です。だからこのふたつの法律の下で運動を一緒にやるなんてありえないですよ。現場はめちゃくちゃ混乱します。警察もすごく混乱する、選管も混乱する、ありえないとわたしは思いますが、いまでも「でもやるかもしれない」という人は結構いますよね。

広告以外にも問題山積の憲法改正手続き法(国民投票法)

国民投票法、正式には憲法改正手続き法という名前の法律の問題点について話します。私はこの法律の下で国民投票がやられたらとんでもないことになる、とこの間言い続けています。そうはいうけれども世論調査を見ると、時事通信でも共同通信でも憲法9条改悪に反対だという世論は多いじゃないか、国民投票どんと来いではないかという人がいます。国民投票をやったらわれわれは勝てるに決まっている、これだけ世論があるのだからと。ところが、負けるに決まっているように見える安倍さんの方が、何でそういうのに臨んでくるのかというのにはそれなりの理由があります。いまそういう世論があっても、安倍さんは勝てると思っている。この国民投票法が悪いんです。

公職選挙法って悪いですよね、小選挙区制で。私たちは公職選挙法を悪法だといっています。それよりもっと国民投票は悪法です。例えば、宣伝が自由ということになっています。テレビのコマーシャル、新聞広告、ネット、こういうものを含めて全部自由です。いくらやってもいい。実は厳密にいうと投票日の2週間前までという制限付きですが、2週間前より先はいくら宣伝をやってもいい。テレビのコマーシャルも、タレントをいっぱい連れてきて憲法改正反対ということをどんどんやっていいよという法律です。さあ、みなさんやれますか。15秒スポット、1ヶ月2ヶ月テレビで流したら、この前誰かが350億とか500億といっていました。すごく若者に人気のあるタレントを連れてきて、さっきのように「お父さん、憲法違反なのって、こういうことをいわせていいですか」「かわいそうでしょう、こんなこと、やめましょうよ」「ただ自衛隊って書き込むだけで9条はそのままなのに反対派の人たちはそういう子どもや自衛隊にかわいそうなことをいっています」「ぼくはやっぱり憲法を変えるのに賛成です」というように、タレントが朝から晩まで15秒スポットでバンバンバンバンやられたらどうなりますか。それは世論は変わりますよ。

私たちは2015年安保のときに新聞意見広告を出しました。各紙に7回くらい出した。お金がないから必死で集めました。全国でカンパをすごく出していただいて1億円近く集まり、それで7回新聞各紙に広告できた。でも1億円ですよ、必死に集めて。テレビコマーシャル350億円が1本についてかかる。私たちからは、どんなに逆立ちしたって出てこないですよ。誰に出てくるか。はっきりしていますよ。財界がバックにいる、金持ちや大金持ちがバックにいる政党が強いに決まっている。そして広告の会社は電通とか博報堂とか、大手独占がやっている。この大手独占としっかり自民は結びついて、あいつらがコマーシャルをやりたいといってきても、もうほとんどいっぱいでこの辺の時間帯しかないよなんて、夜中の時間帯だけやっとけとか。一番のゴールデンタイムはみんな自民党にやっちゃえとか、何でもできる。だから自由だという建て前で、この法律はこういう極めて不公平、不公正な選挙運動と国民投票運動がやれる法律です。とんでもない法律だと思います。票を金で買う法律だとわたしは言っている。タレントを金で買い、テレビを金で買い、そうやってやれる。朝から晩までそれがやられますよ。それが例えば問題点の第一です。

もっとあります。初めてやる憲法の国民投票ですけれども、何人投票したらこの国民投票は成立するのか。

こういう問題があります。あまり人気がない選挙だと30%くらいの投票率なんて結構ありますよね。そのうちの15%以上が改憲賛成と言えば、憲法は変えられます。15%、確実にそういう動員力を持っているのはどこでしょうか。あそことあそこくらいです。だから最低投票率という規定がないものですから、そのうちの過半数をとれば、何%しか投票はなくても全部成立です。わたしは前から言っていますが、せめて憲法の国民投票は3分の2くらい投票しなかったらダメじゃないか。最低3分の2の人が投票して意思表示をして、初めて改憲という話になったり、憲法を守るという話になるのが当たり前だ。百歩譲っても5割が投票しないと意味ないじゃないか。そういう規定を設けるべきだとずっと言い続けているけれど、自民党はやりません。これをそのままにして国民投票をやったら、いま世論調査で9条改憲反対が多くてもこれは負ける可能性がある。

先ずは改憲発議をさせないこと

わたしはずっと言ってきた中に、すごく叱られる言葉がたまにあります。高田は市民を信じないのか、昔の言葉で言うと民衆を信じないのか、もっと民衆を信じるべきである、民衆が選択した結果は甘んじて受け入れるべきである。原発でも賛成が多かったら甘んじて受け入れる、改憲でも賛成が多くなったら甘んじて受け入れる。その前に、民衆はそういうことを選ばないということをお前は信じられないのか、とずいぶん言われます。わたしは信じません。いつも多数が正しいとは限りません。本当にそうですよ。アメリカのイラク戦争だって、戦争をやる毎に80%、90%大統領の支持が上がっていきます。民衆を信じて多数が正しいといったら、イラク戦争は正しいんですよ。そんなきれい事じゃない。だからそこは本当に厳しく見ていてこの問題について国民投票法、改憲手続き法の問題点をしっかり見ながら、このもとでやったらダメだ。

先日野党のみなさんと話したときに私はこのことを伝えました。この法律を抜本的に再検討しなかったら大変なことになる。そこに出てきた立憲民主党の福山さんはわかったといってくれました。この問題に取り組むと。いま立憲民主党はこの改憲手続き法の再検討を言い出しています。実は歴史を考えると不思議なことです。この法律は2007年に原案ができて、2014年に修正案ができます。当時の民主党はその案に賛成しています。あのときに反対したのは社民党と共産党だけです。圧倒的少数の反対でこの国民投票法は成立しました。それをいま枝野さんたちがあらためるといっているのは、私はすごいことだと思います。賛成したときに私はずいぶん民主党に対して批判をしました。しかしいま改めると言っている。そしてこの改定に乗り出すと言っている。わたしは立派なものだと思います。政治家というのはせめてそうありたいですよね。間違ったことにこだわって、いつまでも間違ったことをやるような政党であっては本当は困る。枝野さんについてもうひとつ言っておくと、2006年頃、当時の民主党は憲法改正案を出しました。民主党案の改憲案を出した。これも私はこんなときに出してとんでもないと、すごく怒りました。市民連絡会と枝野さんの公開論争についても単行本(「9条がこの国を守ってきた」梨の木舎刊)の一部になっていて、読むことができます。これもあの当時、そんないひどい改憲案じゃないけれども民主党は明らかに改憲案を持っていました。この前、枝野さんはあれはご破算だと言いました。わたしはよかったと思います。それも思い切ったことをよく言ったと思います。

この改憲手続き法のもとでの国民投票は、させたらダメです。だから抜本的にこの法律を直すのか、それとも国民投票をさせないか、このふたつしかありません。先ずやらなければいけないのは国会で改憲発議という強行採決をするな、憲法の問題を議会の多数少数で決めるなという運動をつくって、改憲発議ができない状態に持って行けるかどうかということが非常に大きな課題です。わたしは頑張ればかなりできると今でも思っています。それは自民党を揺さぶること、与党を揺さぶること。公明や維新、その他の政党、希望の一部とかそういう人たちを揺さぶることによって改憲発議ができない状態をつくる。それをつくるのは世論です。世論でいま憲法改正、改悪に反対だという世論をどれだけ大きな運動をつくっていけるかということに関係すると思います。それを政党のみなさんは非常に気にして、自分たちの主張に反映します。安倍さんが急いでやろうとしたときに、ブレーキがかかる状態だとかを含めて改憲の発議ができない状態をつくること。それがものすごく大事なことだと思います。安倍さんは年内に発議するということを事実上言明していますから、これができなかったときに安倍内閣の政治責任が問われると思います。自民党の中からも問われる。安倍内閣を倒せる可能性があるんです。2006年から2007年にかけて第1次安倍内閣が倒れました。安倍内閣を倒すことで、この憲法改悪を阻止する可能性があると思っています。

そして第2番目は、来年の参議院瀬挙まで改憲発議が延びた場合には参議院選挙で安倍内閣を倒す。そういうたたかいをやります。だから憲法改正、改悪に反対する運動と安倍内閣を倒す運動を結びつけ、私たちはこの1年全力を挙げてたたかっていく必要がと思っています。

私たちの闘い方

最後に4項目くらい当面の戦い方を書いておきました。第1には、いま改憲を求めているのは国会の中だけです。自民党や公明党の国会議員が改憲、改憲と言っているだけであって、世論調査を見ればいま改憲をすべきだというのはほとんど少数です。多くの人は改憲を求めていない。同じことを枝野さんが言っていましたね。国民が市民が求めていない改憲を、国会が勝手にやるなという、この論理と運動を広げていくことだと思います。

第2番目には、安倍さんは事ある毎に憲法問題で意見があるなら対案を出せと言います。自民党はひとつの案を出す、それに対して各党は対案を出せと言う。これは枝野さんが見事に言いました。対案は日本国憲法である、今のところ。これはそうなんですよ。別に変える案を出さなくていい。それどころか、この憲法は実行されていないことはたくさんあるわけです。まず憲法を守って実行してから変えるという話をしなさい。人権にしても平和にしても民主主義にしても、いまの憲法はまだまだ実践されていない。それが国会の責任だということが第2です。

第3に、これは運動の中の問題を書いています。実は市民運動のごく一部ですけれども、安倍内閣あるいは改憲派が実際上は憲法を守っていないことから立憲主義に反する状態が起きている。憲法が守られない政治状況ができている。だから一回、専守防衛は合憲だというところまで憲法を書き換えよう。そして専守防衛を守れという運動をつくった方がいいのではないか、という意見が残念ながら市民運動の中あるんです。わたしは何を言っているのかと思いますね。そうまで丁寧に改憲派を思いやってあげても、あの人は、あの人たちは守りませんよ。新しい憲法をつくったって、自分らの憲法を変えたって守るはずがないんですから。まして市民運動の方から自衛隊を合憲だと言い、専守防衛はいいと言い、ここまで妥協して9条を守りやすくするという、こういう親切な考え方はわたしは運動にはなじまない、運動ではこういうことはありえないと思います。

結構優秀な弁護士さんや評論家の一部は言っています。「新9条論」というかたちで言われる。新聞はこういう新しいことが出てくると喜んで飛びつきますね。珍しいものにだけに飛びつくから、新9条論というのはさも大きな潮流のように書かれています。この前ある新聞社の記者さんがきてわたしと話しているときに「新9条論って市民運動にどのくらい影響ありますか」というから、「ほとんど影響ないと思います。影響があるのはあなた方のところだけではないですか」といいました。ここで新9条論がいいと思う人がどのくらいいるか。ほとんどいないと思います。守れないから守れるように変えてあげて守ってもらおうなんて、こんなでたらめな話ありますか。これが3番目で、間違ってもそこに踏み込まないようにしましょうと書いておきました。

4番目は、改憲手続き法の問題点です。これはこれ以上触れませんが、先ほど言い忘れたことがあります。改憲手続き法のもうひとつの大きな問題点は、国民投票運動期間が60日から120日というこの期間の短さです。初めてやる国民投票で、最低2ヶ月で投票に持ち込めるというのはおかしい。これは1年でも2年でもやった方がいいとわたしは言っていますが、他にもいろいろな問題があります。

有権者に政権構想を示すことは可能だ

最後です。これは直接憲法の問題ではないけれど、安倍内閣を倒してどうするのか。どうやって倒すのかという問題と関係しています。安倍内閣を倒すということは、それに取って代わる新しい政権を誕生させるということと不可分です。もちろん安倍さん以外の候補が自民党の中から出てきて倒れることもあります。それではあまりわたしたちは満足できませんね。安倍さんの亜流が出てきてもそんなに世の中が良くなるとは思わない。では本当に野党がそれに取って代わることができるのかという問題です。これだけで2時間くらいやらなければいけない問題ですが簡単にいうと、私はいまの野党4党と市民の間で、いくつかの基本的な政策合意を作り上げることは可能だと思います。例えば日米安保条約の問題でいうと、これは立憲民主党も日米安保条約は維持、続けると言う立場です。共産党は反対だという立場です。わたしも反対です。日米安保条約があるから今の沖縄の問題がああいうことになっています。抜本的に解決しなければいけません。これをやり合っていたら統一した政策はできません。どこで合意して次の、とりあえず安倍政権に替わる政策をつくるのか。例えばですけれど、この前の戦争法の前のところまでかろうじてとりあえず戻す。戦争法がない状態のところで、あの当時の安保防衛の問題で野党4党がとりあえずの一致点をつくって合意できないかと思います。生活と権利の課題とかさまざまな課題で、原発ゼロとかいろいろな一致する課題があります。一番難しい安保防衛の問題ではそういうことをやってでも、野党4党が市民と一緒になって安倍政権に替わる新しい暫定的な政権をつくったらいいと思います。

これは政党の間で論争があります。例えば、そのために候補者をお互い支持しあわなければなりません。共産党推薦で立憲民主党の誰々さん、立憲民主党推薦で共産党の誰々さん、そういうふうにしなければ不平等だという意見は共産党の中にもあります。そこら辺もどうやるのかというのは、わたしはすごく難しい問題があると思います。お互いにそこで突っ張っていたら、それこそ統一候補はできなくなる。そこでは市民連合が頑張らなくてはいけないと思うけれど、多少それぞれの党の立場は主張していただいても、わたしはいろいろなやり方があると思います。内閣に、大臣でみんな入るという状態がいいのか、あるいは閣外協力ということだってあるかもしれないし、知恵はいくらでも出てきます。問題はいまの安倍政権をどうやって倒して、とりあえずでも一歩でも前進する新しい政権をつくることができるかどうか。それを次の参議院選挙、その次の総選挙に向けて野党と市民の間で統一的な方針をつくり上げていくことと、国会外で大きなたたかいをやることをあわせてやっていけば、わたしたちの前をもう少し見通せることができるのではないかと思っています。

いま総がかりは3000万署名運動を通じて大きな世論をつくろうとしています。大変ですよね、3000万。4人に1人くらい集めようって、ぞっとしますよ。新宿駅頭に立っていても、署名してくれるのは4人に1人どころじゃないですものね。50人に1人かもしれない。一生懸命手を出してもビラをとってもらえるのもそれくらいです。これを最終的には4人に1人が署名したという状況にしないと3000万署名はできない。それを何とかしてやることで世の中の世論を変えていく、声を変えていく、この国の社会の雰囲気を変えていく。そして署名だけではなく、デモや集会や勉強会やさまざまな行動をやる。総がかり行動の誰かが言っていますが、万万が一強行採決などが近いということがあったら、永田町を本当に埋め尽くすような全国から市民が結集して大きな行動をやっていくような、そういうことをもやらなければいけない、韓国の人たちはやったじゃないですか。それを通じてあの朴槿恵独裁政権を倒した。それがいま平昌五輪とか含めて、あの朝鮮半島の危機をどんなに和らげるのに役立っているか。韓国の民衆のような闘いを日本の市民が本当にこれからつくれるかどうか。2015年安保をさらにさらに大きく上回るような闘いを3000万署名などと合わせてやっていく必要があると思います。

だから今年は本当に大変な年になったと思いますけれども、全国の多くのみなさんがいま本当に頑張ってこれをやろうとしています。

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