私と憲法193号(2017年5月25日号)


安倍晋三首相による「9条改憲、2020年施行」発言を許さない

安倍晋三首相は、5月3日、「憲法9条改憲」を表明した。

3日は、5万5千人が集った東京・臨海防災公園での集会をはじめ、全国各地で憲法施行70年の集会や行動がおこなわれた日である。

この表明は、憲法を護り活かそうとする市民への「明文改憲をして、第9条が果たしてきた戦争の歯止めの役割を外し、文字通り日本を『戦争する国』にする」という安倍の挑戦である。

1)3日、読売新聞朝刊は、一面トップで「憲法改正 20年施行目標~9条に自衛隊明記~首相インタビュー(4月26日に官邸でおこなわれた)」と報じた。また、同日の日本会議が主導する「第19回公開憲法フォーラム」(主催「民間憲法臨調」「美しい日本の憲法をつくる国民の会」)で読売インタビューと同内容の安倍からのビデオメッセージが流された。

安倍が、この中で表明したのは主に次の4点である。

  1. 自民党の改正案を衆参両院の憲法審査会に速やかに提案できるよう、党内の検討を急がせる。
  2. 自衛隊の存在を憲法上にしっかりと位置付け、「自衛隊が違憲かもしれない」などの議論が生まれる余地をなくすべきである。そのため「9条1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込む」。
  3. (高等教育の)教育無償化に関する日本維新の会の提案を歓迎する。
  4. オリンピック、パラリンピックが開催される2020年を未来を見据えながら日本が新しく生まれ変わる大きなきっかけにすべきだ。憲法改正を実現し、2020年の施行を目指す。

2)言うまでもなく、改憲発議権限は国会にあり、行政府の長にすぎない首相には与えられていない。にもかかわらず、安倍はこれまでも、「(改憲案について)憲法審査会で具体的な議論を深めようではありませんか…これは、国民の負託を受け、この議場にいる、全ての国会議員の責任であります」(1月20日、第193回国会における総理大臣施政方針演説)などと、国会に改憲発議を迫る発言をしていた。

そして今回、改憲の期限や条項までも具体的に明示して「改憲方針」を表明し、さらには、「国民投票と国政選挙の同時実施」という「国民投票」のやり方まで指図し始めた。また、安倍は、ここまで踏み込んでおきながら、国会で追及されると、「首相」と「党総裁」の立場を都合良く使い分け、「自民党総裁としての考え方は、相当詳しく読売新聞に書いてありますから、是非それを熟読していただいてもいいのでは」などと説明責任を回避している(読売新聞には「首相インタビュー」として掲載されている。)こうした安倍の言動は、重大かつ明白な憲法99条「憲法尊重擁護義務」違反、立憲主義の破壊であり、断じて許されない。

3)昨年の参議院選挙で、「改憲勢力」が3分の2以上の議席を占めると、安倍は、「我が党の案をベースにしながら3分の2を構築していく」と自民党改憲草案に基づいた改憲議論を進めようとしていた。しかし、世論と野党などの厳しい批判のなかで、自民党は、改憲草案を撤回はしないものの「党の公式文書の1つ」に格下げし、草案を封印する形で192回国会での憲法審査会を再開せざるを得なかった。

自民党大会(3月5日)の「平成29年度運動方針」では、「次の70年に向けて新しい憲法の姿を形作り、国会の憲法論議を加速させ、憲法改正に向けた道筋を国民に鮮明に示す」と明記したものの、改憲草案には触れず、「これまでの衆参憲法調査会以来の運営理念を継承し、議論を尽くし、幅広い合意形成を目指す」とした。これらは、9条や人権関連の条項など、野党の反発が予想される課題は避け、「合意を得やすい」項目を探し、野党を改憲論議に引き込むという「改憲発議への現実的な方針」への戦術転換であった。

今国会(193回)での衆議院憲法審査会は、4月20日までに4回開かれ、論点整理として「参政権の保障をめぐる諸問題」「国と地方の在り方」について自由討議、参考人聴取がおこなわれた。自民党側は、「大災害など緊急事態時の国会議員の任期延長」改憲論を出してきた。これは、これまで自民党が主張してきた緊急事態条項から、ナチスの授権法に連なると言われそうな論点をとりあえず除いて、衆議院議員の任期にしぼって改憲するというものであった。

4)これまでの経過を無視し、党内討議も経ずに突然出された安倍の「改憲方針」。自民党内からも「9条で今すぐに改正することは考えない」(岸田外相)、「『あの憲法改正草案はなし』ということが総裁の発言ひとつで決まるのであれば、組織政党だと思っていない」(石破茂前地方創生担当相)や「総裁として方向性を示すなら、3月の党大会で発言すべきだった」(自民党総務会での発言)などの声が上がった。“憲法族”と称される船田元・党憲法改正推進本部長代行は、「行政の長という立場での発言は我慢していただきたかったというのが本音だ。2020年と期限を切ったことで、『自分の政権のうちに』という気持ちがかなり出てしまった。…国会の議論に一定の期限を切ることは望ましくなく、安倍総理大臣には、発言に十分節度を持っていただきたい」と批判した。

これらの異論や批判に対し、安倍は、党役員人事や党憲法改正推進本部に代わる「新たな組織」設置などをちらつかせながら圧力を加え、保岡興治党憲法改正推進本部長らに自らの「改憲方針」に沿った改憲原案をまとめさせようとしている。また、秘密裏に戦争法制をまとめた自民の高村正彦副総裁と公明の北側一雄副代表のコンビで再び改憲原案を調整するとも伝えられている。これらの動きは、自民党が、民進党をも巻き込みながら憲法審査会で改憲議論を進める協調路線から転換し、自公で改憲を突き進める戦略に舵を切ったかにみえる。

5)安倍は、「(改憲の)機は熟した」(5月1日「新憲法制定議員同盟」大会)と述べた。しかし、国会では、衆議院憲法審査会の「論点整理」が始まったばかりで、参議院の憲法審査会は開会にも至っていない。

世論はどうか。メディアの世論調査では、一般的な「改憲の賛否」の設問でさえ、その多くで賛否が均衡し、賛成が多数だった共同通信調査でも、「安倍政権下での改憲」には、賛成45%、反対51%。NHKの調査では、「国の政治に優先的に取り組んでほしいこと」で「憲法改正」は6%。9つの選択肢中最低であった。「改憲の機」は、国会でも世論でも、全く熟していなのだ。

にもかかわらず、安倍は、「憲法改正を実現し、2020年の施行」を宣言した。なぜか。党則などの改正により総裁任期が「連続3期9年」に延長され、安倍は、来年9月の自民党総裁選で3選を果たせば21年9月までの任期となるものの、レームダックとなる前に改憲するとすれば、実質3年しか残されていない。加えて、共謀罪の強行採決、森友学園や加計学園の疑惑、閣僚の暴言の頻発、それに類することが積み重なることになれば内閣支持率の低下が避けられなくなる。さらには、衆議院選挙で野党の統一候補擁立が進めば、改憲勢力の議席が3分の2を割ることは目に見えている。

「(10年前、国民投票法を成立させたのに)憲法はたった一字も変わることなく、施行70年の節目を迎えるに至った」(ビデオメッセージ)。安倍は、焦りの中で、改憲の突破口を開くために、「今」、宣言せざるを得なかったのだ。そして、オリンピックまで利用した、この「改憲方針」は、明文改憲を「戦後レジームからの脱却」の証しとして歴史に名を残したい安倍個人のレガシー作りだけのために、世論や国会とは全く関係なく出されたものなのだ。

6)安倍は、「在任中に憲法改正をするならせいぜい1回。それなら最も本質的な9条を変えるべきだ」と力説していた(日経)という。インタビューでも「9条の改正にも正面から取り組んでもらいたい」と述べている。安倍のこれまでの主張からすれば、9条2項「戦力の不保持」を削除し、国防軍保持を明記することが「本質的」「正面から」の9条改憲だったはずである。それが、改憲方針で示したのは、「9条1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込む」という「新3項追加」「加憲」であった。

この案は、なにも目新しいものではない。公明党は、すでに2004年に憲法調査会で「加憲」の立場から「自衛隊の存在を認める記述を置くべきではないか、との意見がある」と論点整理に盛り込んでいる。また、昨年の民進党代表選で、前原誠司元外相が「現行の9条に3項目を加えて自衛隊を位置付ける『加憲』を党内で議論したい」と表明したように民進党の一部も言ってきたことだ。安倍が、9条「加憲」を表明したのは、主張を先取りされた公明党が反対できないようにし、民進党を割って、その一部を取り込むことができると計算したのだ。加えて、「教育無償化」をダシに使って日本維新の会も協力させられれば、改憲発議に必要な議席総数の3分の2以上の賛成を固めることができると踏んだからだ。

7)世論は、圧倒的に「9条改憲反対」だ。「9条改憲」についての世論調査で、NHK 賛成25%、反対57%。TBS 賛成31%、反対56%だった。 この世論を掘り崩さなければ、「国民投票」で過半数の賛成を得て改憲を果すことはできない。

そもそも、9条の1項(戦争放棄)、2項(戦力不保持・交戦権の否認)と新3項(自衛隊の根拠規定)は根本的に矛盾することはあきらかであり、それ故に、自民党も改憲草案で2項を削除し、書き換えた。それを、世論の分断・懐柔を謀るために、強引に「3項加憲」の装いをさせたと見ることができる。「9条3項加憲」を押し出すことで、「改憲でないのでご安心を」、「自民党の草案とは違います」、「9条を変えないで、付け加えるだけ」、「自衛隊の存在を憲法で認めるだけ」などとソフトタッチに世論にアピールしたいのだろう。

自民党内で検討されているという「案」の中には、3項ではなく「第9条の2」として「前条の規定は、我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため、自衛隊を設けることを妨げない」との新条文を追加するというものがある。これは、『自民党憲法改正草案』「第9条2項」の「前条の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない」と、「第9条の2」(国防軍)の「我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため、内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持する」を合わせ、「自衛隊」の名称だけを残したのにすぎない。

また、日本会議の伊藤哲夫常任理事は、3項に「但し前項の規定は確立された国際法に基づく自衛のための実力の保持を否定するものではない」と書き込むことを機関誌で例示している。こちらは、『自民党憲法改正草案』「第9条の2(国防軍)3項」の「国防軍は、第一項に規定する任務を遂行するための活動のほか、…国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動…を行うことができる」を「国防軍」ではなく「実力」と書き換えているだけだ。

重要なのは、こうした3項の「書き込み方」の是非にあるのではない。限定的集団的自衛権容認を含む違憲の戦争法を担う「自衛隊」。その自衛隊の根拠規定を憲法にいれることは、どのように書き込もうが、「自衛隊を違憲とする議論」のみならず、憲法学者の9割以上が指摘している「戦争法は違憲」も、「合憲」で塗りつぶすことになる。また、憲法の下位法であった「戦争法」が事実上、9条1項、2項と同列の「最高法規」になることになるということだ。さらに、「第1項、第2項より、直近に『加憲』した第3項の方が優勢」という解釈がなされれば、第1項、第2項は、完全に死文化する。こうして、これまで機能していた第1項、第2項の歯止めがなくなれば、海外での戦争への無制限参戦、フルスペックの集団的自衛権行使への道が開かれ、自衛隊の性格も「国防軍」化するであろう。

「9条3項加憲」は、平和憲法・第9条を破壊する「改憲」そのものなのだ。この国で70年の歴史を刻んできた「平和憲法」は、「戦争する憲法」に取って代わられることになる。

8)憲法を破壊し、立憲主義をないがしろにしながら、教育基本法改悪、秘密保護法、戦争法、共謀罪、辺野古新基地建設…と「戦争する国」への道を進めてきた安倍が、いよいよ「9条改憲」に挑んできた。

私たちは、安倍改憲反対のたたかいを、「共謀罪廃案」「辺野古新基地建設反対」をはじめとする現下の闘いと結びつけながら、大衆行動による「改憲反対」の世論喚起とともに、「総がかり行動を上回る総がかり行動」を実現し、立憲野党+市民の共同をさらに強めて総選挙で改憲勢力の議席3分の2を打破し、安倍内閣を打倒する闘いに全力をあげる。許すな!憲法改悪。(大滝敏市・事務局)

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資料:安倍晋三首相の「2020年9条改憲施行」発言に抗議し、憲法の平和主義と立憲主義を守りぬくために全力で闘います

2017年5月10日   戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会

安倍晋三首相は5月3日、日本会議などが主導する改憲派の集会にメッセージを送り、「2020年に、自衛隊の存在を憲法第9条に書き込んだ改憲を施行する」と表明しました。憲法施行70年の記念日であるこの日に、首相が国会の憲法審査会での議論の経過すら無視して、期限を区切って改憲を施行する決意を表明したことは、第99条の憲法尊重擁護義務に違反し、立憲主義に反する極めて異常なものです。

この間、安倍首相は憲法施行70周年を前にして「憲法施行70年の節目に当たり、私たちの子や孫、未来を生きる世代のため、次なる70年に向かって、日本をどのような国にしていくのか。

その案を国民に提示する」として改憲を主張してきましたが、世論の批判を恐れて、改憲の内容を具体的に明示するのは避けてきました。ところが今回は、「憲法9条(3項)に自衛隊を書き込む」ことを明言しました。9条の1項(戦争放棄)、2項(戦力不保持)をそのままにするとはいっても、この新3項が1、2項と根本的に矛盾することはあきらかです。 もともと、安倍首相らの主張は9条2項の改憲と、国防軍保持であったはずです。

にもかかわらず、こうして自らの主張を変え、ムリヤリ「自衛隊の存在」を書き込もうとする狙いは、これまで第9条が果たしてきた海外での戦争の歯止めの役割を外し、2015年の戦争法によってさえ限定的容認であった集団的自衛権の行使を無制限に容認し、文字通り日本を「戦争する国」にすることにあります。これによって海外で戦争することのなかったこの国の70年の歴史は転換させられ、自衛隊の性格は海外で戦争ができる軍事力として根本的に変化させられることになります。

ときあたかも国会では「戦争法と一体の共謀罪法案」が審議され、森友学園に関わる権力の私物化が問題とされているときです。そしてさまざまなメディアの調査によっても、9条改憲は必要ない、あるいは安倍政権の下での改憲には反対だという世論が多数を占めているときです。今回の首相の改憲発言は自らの政治的危機を回避し、政府に対抗する野党を分断し、世論を分断しようとする政治的な意図と一体のものではないでしょうか。オリンピック開催の時期や自らの任期などと合わせて語られる改憲計画は、安倍首相の個人的な野心にもとづくものに他ならず、断じて許されません。

おりしも、このメッセージが発表された5月3日は、5万5千人の市民が集った東京・臨海防災公園での集会をはじめ、全国各地で憲法70周年を祝し、憲法の理念をいっそう生かしていく決意を固めた日でした。安倍発言はこの広範な市民の声に敵対するものです。 戦争法に反対し、共謀罪の策定に反対して闘ってきたわたしたちは、国会内の立憲野党のみなさんと連携し、全国各地の市民のみなさんとともに、今後いっそうの決意を固めて、安倍首相の改憲暴走に反対してたたかうことを表明するものです。

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資料:「安倍改憲メッセージ」についての市民連合の声明

2017年5月3日(憲法記念日)に安倍首相は、読売新聞インタビューと日本会議系団体へのビデオメッセージにおいて、2020年までに「9条1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込む」など改憲を実現する意向を一方的に表明しました。

そもそも総理大臣が、森友学園疑惑や「共謀罪」法案に関する立憲野党の追及をそらし、自身の独りよがりな野心のためにオリンピックを政治利用してまで、国会や市民社会における議論を一切無視し、勝手に期日を区切った「改憲決意」を宣言したこと自体、許されることではありません。

また安倍政権が、現行9条でも集団的自衛権の行使は容認されるという非立憲的な立場を取っている以上、3項を加えるだけ、と言ったところで、そうすることは1項と2項を根本的に改変し形骸化することであり、自衛隊の明記をよそおって、実際には違憲の安保法制を「既成事実化」「合憲化」しようとする「裏口入学」のような企みにほかならないことは明白です。

安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める私たち市民連合は、立憲主義をさらに壊そうとするこのような策動に対峙し、市民と立憲野党の共同を通じて、一刻も早く「共謀罪」法案もろとも安倍政権を退場させることをめざします。

2017年5月16日 安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合

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5万5千人が結集…施行70年 いいね!日本国憲法5・3憲法集会

池上 仁(会員)

組合の仲間と最寄り駅で待ち合わせて会場の東京臨海広域防災公園に向かう。色とりどりの幟と人の波が途切れることなく続く。橋本美香さん(制服向上委員会)の司会で開会、トークが始まる。

ピーコさん(ファッション評論家)…こういう集会で話すのは殆ど経験ないので緊張している。今月中に現行憲法と自民党改憲草案を比較した本を出す。草案は天皇元首化、9条を変えて国防軍創設を言っている。戦争をするということだ。基本的人権については自由・権利と責任・義務の抱き合わせ。憲法遵守義務を天皇以下公務員でなく、国民に負わせる。改憲派は憲法を守っていない。72歳になって憲法を勉強した、改憲反対を訴えていく。

池内了さん(世界平和アピール七人委員会)…安倍が9条そして23条学問の自由を蹂躙して進めている軍学共同の動きについて。戦前戦中の軍への協力を反省して、学術会議は戦争のための研究をしないと宣言した。世界でも稀なことだ。防衛省は委託研究を制度化し2015年3億、16年6億、今年度は110億円と急増させた。他方文科省の研究費予算は削減され続ける。政府や軍が研究に介入すれば大学自治は破壊され学問の自由が阻害される。3月に学術会議は声明を出し政府の介入は著しく問題であると訴えた。この精神を受け止め各大学で「応募しない・応募させない」運動を貫く。

坂手洋二さん(劇作家・演出家)…外国で講演して日本政府批判をすると、やっと愛国心のある人に会えた、と言われる。自国政府を批判できない人に愛国心などない。子供の頃ことさらに憲法があるから平和、とは言われなかった、憲法が当たり前にあったから。互いにコミュニケーションをとりあい相手を脅かさない、喧嘩しない、戦争をしない、が憲法の精神。若い人たちに語り継いでいかなければならない。宮古島、石垣島に行って、自衛隊配備反対の運動を応援してほしい。

山田火砂子さん(映画監督)…小林多喜二の「母」という映画を作った。85歳の私は13歳までの戦争を知っている。政府の嘘に乗せられて南京陥落だ、上海陥落だと提灯行列に浮かれていた。空襲で自宅を焼かれ日本に騙されたことがはっきり分った。映画で主演した寺島しのぶさんは「自分の子供が多喜二のような無惨な姿で目の前にあったら気が狂ってしまいますよね」と言っていた。戦争で一番悲しい思いをしたのは母親だろう。子どもを守るために戦争をしない、と訴え続けていく。

ここでカンパの訴えが油原通江さん(5・3憲法集会実行委員会)から。次に立憲野党からの挨拶。

蓮舫民進党代表…改めて憲法の大切さを確認する素晴らしい機会を与えてくれたことを有難く思う。私は戦後の日本に生まれ、豊かさや幸せ、平和を当たり前のように享受してきた。それは先人たちが憲法と共に育んでくれたものだ。安倍総理の改憲には絶対に反対する。憲法は国民の国民による国民のためのもの。戦争法は成立しても違憲は違憲、しっかり闘っていこう。テロ対策にならない共謀罪を強行しようとしている現政権は驕りが過ぎる、連帯して未来志向の憲法を守っていこう。

志位和夫共産党委員長…70年も変えてないのはおかしいと一部の人は言うが、70年間変える必要がなかった素晴らしい憲法なのだ。変えるべきは憲法をないがしろにする政治。自衛隊の米艦防護は極めて重大、戦争になりかねない危険なこと。対話と交渉で解決すべきだ。憲法違反の戦争法を廃止しよう。共謀罪は国会論議を見ても出鱈目、内心の自由を侵す違憲立法だ。沖縄では憲法がことごとく踏みにじられている。この状況を全国民のものとし県民と連帯して打破していこう。野党と市民の共闘で総選挙に勝ち新しい政治を作ろう。

森ゆう子自由党参院議員…安倍総理の存在そのものが憲法違反、国会答弁でも思い上がりが甚だしい。出席したNHKの憲法特集番組で、自民党議員が改憲草案は野党の時代にたまたま作ったものであまり意味がないなどと言っていた。とんでもない。草案は基本的人権の本質を規定した97条を削除した。人権侵害の最たるものが戦争だ。憲法3原則プラス国際協調の4原則を踏みにじる如何なる改憲にも反対する。原発を争点にした新潟県知事選は市民と野党の共闘で大勝利した。権力の暴走を許さず、野党が一つになって市民と共に闘い、97条を皆さんと共有していく。

吉田忠智社民党党首…社民党は一貫して憲法に寄り添ってきた。共謀罪は過去3回廃案になったものと全く変わらない、稀代の悪法だ。捜査機関が目をつければ取り締まれる。山城さんを5か月も不当拘留し、別府では警察が違法な盗撮を行った。これまで悪法が強行されても闘いによって歯止めをかけてきた、自信をもっていい。憲法を変えるのでなく活かす活憲運動を国民のものにしよう。参院選は1人区32の内11で勝利した。安倍政権を終わらせるために衆院選を野党・市民連合の共同した力で勝利しよう。

伊波洋一沖縄の風参院議員…施政権返還から45年経ったが沖縄では憲法は実現していない。1960年国連総会は植民地解放宣言を決議した。これを受けて当時の立法院は施政権返還を決議した。独立でなく日本への復帰を選択したのは憲法が輝いていたからだ。しかし、憲法の光は基地の壁に阻まれてきた。米軍奉仕のための新基地建設、民意が無視されている。4野党と共に沖縄も闘っていく。

落合恵子さん(作家)…私たちは憤り、無念さ、屈辱感を抱えてここに集まっている。辺野古埋め立て開始は私たちすべてに対する暴挙だ。森友学園問題はどうなった?浪江では山火事が起こりとても心配だ。東北差別の復興相、安倍は任命責任を取れ!安普請の奴らに憲法を壊されてならない。「いずも」の米艦警護は戦争法の発動で、明らかな9条違反だ。何がオリンピックだ、テロ対策と言えば私たちを誤魔化せると思っている。井上ひさしさんら先人たちの残した言葉を忘れない。私たちの安全保障は「原発をなくす」「米軍基地をなくす」「憲法3原則」にある。今日を改めての一歩に!

伊藤真さん(伊藤塾塾長)…私たちは整備されたインフラのおかげで生活しているが、日本国憲法の制定と施行こそが最大のインフラ整備だった。戦前戦中は教育勅語に見られるように国のために個人が道具にされた。これを否定したのが現憲法。憲法を輝かせる方法は、(1)選挙を通じて政治を変える道、(2)司法を通じる道がある。戦争法違憲訴訟が全国で展開されている。原告6000人以上、弁護士1500人以上だ。施行80年、100年を自由と平和のうちに祝うことができるようにしよう。憲法改正を総理大臣が言うのは憲法違反。覚悟を固めて憲法を壊す動きに対して闘おう。

植野妙実子さん(中央大学教授)…70年間私たちの生活を支えてきた、これこそ憲法の正当性だ。基本的人権の保障が憲法の中心。そして恒久の平和主義を九条がしっかり定めている。選挙制度が民意を正しく反映しているか、国民が判断するための情報が知らしめられているか、が大事。憲法改正を叫ぶ人々は憲法を読んでいない。この人々の生活も憲法によって支えられているのに。憲法を捻じ曲げる法律に反対しなければならない。憲法を読もう。憲法は高みにあるのでなく生活を支えるもの。これだけ多くの人々が集まっている、憲法の先は明るい。

李泰鎬(イ・テホ)さん(朴槿恵退陣緊急国民行動)…皆さんお元気ですか?ごく少数を除いて全く元気のない国韓国からやってきた。北朝鮮の核のせいでも、テロの脅威のせいでもない。国民を抑圧する政府のせいで元気がない。どんなに努力しても国民の大多数が非正規、若者がhell朝鮮と呼ぶ国です。深い絶望の中で人々がローソクに火を灯し集い歌った、“闇は光に勝てない”と。5カ月間に20回のキャンドルデモ、のべ1600万人が参加し、遂に朴槿恵を権力の座から引き摺り下ろした。広場で私たちは不幸ではなかった、主権者としてのプライドが回復されたのだ。「憲法第1条(1)大韓民国は民主共和国である、(2)大韓民国の主権は、国民に存し、すべての権力は国民から由来する」の意味が理解された。日本の2011年福島第一原発事故、韓国の2014年セウォル号沈没事故、共に政府が私たちを裏切った。台湾のひまわり革命、香港の傘の革命、韓国のキャンドル革命、共通のシュプレヒコールは「私たちが主人だ、人が優先だ」。日本でも市民の強い抗議が2011年以降始まっている。正義と平和に向けた平和憲法の主人たらんとする日本の人々に応援を送る。私たちは必ず勝利する。

山城博治さん(基地の県内移設に反対する県民会議)…安倍を止めよう、この国は奴のものではない。戦争屋にこれ以上やりたい放題させない。私の裁判が始まる、辺野古現地とつながりながら絶対に勝つ。辺野古に新基地は作れない。稲嶺市長が河川水路変更、土砂採取を許可しない。稲嶺市長・翁長知事と共に闘う、私たちは負けない、県民は負けないのだ。全国の仲間の闘いを潰す共謀罪を絶対通すな!野党は共闘を、力強い国民戦線でファシスト内閣に立ち向かおう。世界は見ている、日本がどこへ行くかを。(最後に現地の闘争歌を熱唱、会場からも大きな歌声が和した。)

米倉洋子さん(共謀罪法案に反対する法律家団体連絡会)…全国数千人を擁する7つの法律家団体で市民と協力して「共謀罪NO!実行委員会」を結成した。この法案はテロ対策ではない。準備行為は食事することすら対象になる。一般市民は対象外というのは嘘、組織に属していない個人も対象になる。国民に広く網を被せ捜査当局の思い通りの取り締まりを可能にするもの。何故いま共謀罪か?戦争に反対する市民を牢屋に入れる仕組みを作るためだ。 ここで集会参加者が昨年を上回る5万5千人と発表され、大きな拍手が沸き起こった。高田健さん(5.3憲法集会実行委員会共同代表)が行動提起…集会は大成功を収めた。トランプ政権成立を機に異常に高まった北東アジアの緊張に、安倍は戦争法の発動による米艦防護の暴挙を行った。2015年戦争法反対の闘いの中で総がかり行動実行委員会を作り画期的・歴史的な闘いを実現したが、国会での強行採決を止められなかった。参院選での市民と野党の連合した闘いに展望を見出した。私たちの合言葉は「安倍政治の暴走を止めよう!総がかりを超える総がかりの陣形を作り出そう!」だ。現代の治安維持法・共謀罪反対の連続行動と6.10辺野古・共謀罪集会に結集しよう。 パレードに出発。たまたま梯団の先頭になって横断幕を掲げる。「新華社」の記者証を着けた若者3人組が嬉々として取材している。車止めの上に乗って撮影していた女性は、警官に「危ないよ」と声を掛けられていた。

5・3憲法集会行動提起

総がかり行動実行委員会 高田健

ご参集の全てのみなさん、本日の5・3憲法集会は大きな成功を収めました。 とりわけあのパク政権を打倒した熱いたたかいを展開した韓国の市民を代表して来て頂いたイ・テホさん、沖縄で150日を超える不当逮捕に屈せず闘い抜いた山城博治さんをはじめ、連帯挨拶をいただいた各界のみなさんに御礼申し上げます。そして炎天下、会場に結集された5万5千人の市民のみなさんに連帯の挨拶を送ります。またこの集会の準備と運営のためにたくさんの人びとがスタッフとして下支えして頂きました。全ての参加者のみなさんで拍手を送りたいと思います。

安倍政権はいま、戦争する国への道を暴走しています。2015年9月に強行採決した戦争法を発動し、南スーダンでの新任務を付与して失敗した安倍政権は、米国・トランプ政権の誕生を契機に異常に高まった朝鮮半島の軍事的緊張に便乗して、昨日と一昨日、またも戦争法を発動し、太平洋で米艦防護の新任務を命令しました。安倍政権は憲法9条を持つ国の首相として、朝鮮半島の緊張を平和的話し合いと外交交渉によって解決する道を選ぶのではなく、米国の「あらゆる可能性をテーブルに置いた」核戦争の威嚇に同調し、北東アジアで軍事的緊張を増大させる側に立っています。これは日本国憲法の精神が断じて許さない暴挙です。

こうした安倍政権の憲法の精神に反する暴走を許さないため、本日、5・3憲法集会に昨年の参加者を上回る多くの市民が集まり、「憲法施行70年、いいね!日本国憲法~平和といのちと人権を、5・3憲法集会」を大きく成功させました。2015年、安倍内閣が企てた憲法違反の戦争法に反対して、私たちはそれぞれの運動の経過や立場を超え、大きく連帯して、総がかり行動実行委員会を結成して、全国各地で行動し、闘い、画期的で、歴史的な運動を展開しました。しかし、国会で圧倒的多数を占める与党の強行採決を止めることはできませんでした。昨年の参院選では立憲野党+市民連合の共闘が、とりわけ全国の11の1人区で勝利し、今後の運動の展望を切り開くことができました。

しかし、安倍政権の暴走は続いています。森友疑惑隠し、沖縄辺野古の基地建設の強行、共謀罪の強行審議、改憲の準備などなど、かつてない暴走が続いています。私たちはこれまで以上の陣形を構築し、立ち向かわねばなりません。合い言葉は「安倍政権の暴走止めよう!」「総がかりを超える総がかりの陣形をつくりだそう」です。本日の5・3憲法集会を第1波として、9月に第2波を、そして11月3日の憲法公布記念日に第3波を配置し、この間、巨大な行動をつなぐ連続的な、ねばり強い行動を展開して、安倍政権に立ち向かいたいと思います。

当面、連休明けから、共謀罪に反対する国会内外と全国の市民が呼応した連続的な運動に取り組みます。この現代の治安維持法である共謀罪の新設を絶対に許してはなりません。強行されつつある辺野古の新基地建設を阻止しましょう。6月10日には、辺野古埋立てNO!と共謀罪新設反対で国会を包囲します。安倍政権の悪政のもとで被災者の人権をないがしろにし、原発再稼働をすすめる安倍政権を許しません。人権の破壊、格差と貧困に苦しむすべてのみなさんに連帯して闘いましょう。安倍政権が企てる憲法改悪を絶対に阻止しましょう。戦争に反対し、東アジアの平和をかちとるために、韓国などアジアの民衆と連帯して闘いましょう。ガンバロー。

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第113回市民憲法講座 安倍政権と「戦争する国」

高田健さん(戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会) (編集部註)4月15日の講座で吉倫亨さんが講演した内容を編集部の責任で要約したものです、要約の責任はすべて本誌編集部にあります。

トランプの暴走と朝鮮半島の核危機

今日は冒頭に嫌な話をしなければいけない。さっきまで千葉県の柏で講演をしていましたが、私を紹介する前に主催者が話し、いまの朝鮮半島周辺の状況に触れながら非常に心配しているんです。そこでもこの話をしたんですけれども、本当にトランプ大統領が一定の国家戦略なりを持っていまの世界情勢に対応しているのかどうかまったく疑わしくなる、そういうかたちで暴走しています。シリアに対する爆撃も本当に突然の爆撃でした。アサド政権が化学兵器、サリンを使ったとかいろいろ言って、それで爆撃をしました。私は10何年前のイラク戦争のことを思い出しますあのときにワールド・ピース・ナウの若い仲間たちと一緒にとにかくイラク戦争を止めようと行動したけれど、あのときのたくさん写真が出されました。そしてイラクのフセイン政権が大量破兵器を持っているのは確実だ、だから防衛のために先制攻撃をやるという理由で叩いた。ですから今回、また映像を100%信じるわけにはいかないんですよね。

昨日だったかTV朝日の玉川徹というコメンテーターが、戦争を仕掛けた奴の理由は頭から疑ってかかって、それで事態が本当にわかるといったんですが、私も本当にそうだなと思いました。戦を仕掛けたトランプがいっている理由の中には相当のうそがあり、これまでずっと戦争を仕掛ける人たちはそうでした。ところが日本の多くのメディアはアメリカの情報をそのまま横流ししてだからあたかもあの爆撃は当然だ、と取れる話をしている。私は、これは非常に危ないと思います。

それから私たちがアメリカを批判すると、アメリカが殺したよりもずっとたくさんのシリア人をアサドは殺している。たくさんの難民も殺している。それをどうするのかという人がいます。私はリアの政権とトランプ政権の比べものじゃないと思います。明らかに独裁政治をやって大量の爆撃を国内でやって難民をつくっているいまの政権が悪いことははっきりしています。だからといて国連での検証もなく、一切の事前の最低限の検証もないまま爆撃していいものか。こんなやり方は本当にいいのかをやっぱりいわないといけない。と思っていたらアフガンへの「モアブ」投でしょ。「爆弾の母」とか何とかいうとんでもない爆弾ですよ。核兵器以外の兵器を通常兵器といいますけれど、その通常兵器では最大の兵器を落とした。つくってから10年以上も落とさなった、落とせなかった、そういう兵器を使っていいのだろうか。アメリカの政権にすら躊躇があった爆弾を、今回は落とした。私は本当に暴走だと思います。

そしていまカールビンソンがこっちに向かっている。横須賀にはロナルドレーガンがある。そしてこのカールビンソンは、たぶん南西諸島の沖か何かで自衛隊が待っていて合同軍事演習をやる。

考えてみて下さい、朝鮮半島、北朝鮮に敵対しようとしているカールビンソンに対して日本の海上自衛隊が共同演習をやるということは、相手側からしたら完全に日本の自衛隊は敵ですよ。アメカと同じ敵になる。その道をわざわざ選んで合同演習をやろうとしている。

今日も、それでも北朝鮮の方がかなり悪いのではないかという質問がありました。そういう理解は十分あり得ると思います。あえてそれには異を唱えませんが、相手が悪い、自分の方が正しいとって戦争した結果どうなるのかということです。私たちにとって一番はそれでしょ、いま。相手が悪かろうが、何であろうが攻撃をしたら戦争になるわけで、戦争になったら沖縄や東京の横田地を含めて日本全体が巻き込まれるのははっきりしています。より北朝鮮が悪い、トランプはそんなに悪くないなどと論評している問題ではないと思います。やっぱり止めなければいけないんすよ、これを。

ところが日本政府は今回の朝鮮半島の緊張に対してまったく無能力ですね。何一つ具体的な、この戦争を阻止するための手立てを打てていない。日本政府がこの緊張を何とか和らげる、戦争に至ないようにするニュースを何か見ましたか?あのトランプでさえ中国に要求して、中国がこの戦争を止めろといっているわけです。そうすれば自分のところも戦争をやらない。これがいいか悪かは別にしてせめてこういうことすら日本政府はやれないわけです。やれないのは当たり前ですよ。安倍政権になって以来ずっと中国敵視政策をしてきた。歴代の自民党政府はそれなりに中国パイプを持って友好的にやってきた。相当悪い政権であっても中国と話し合える状態をつくってきた。戦後最悪の日中関係ですよ、いま。安倍政権になってから中国を事実上包囲するためにアア各国に働きかけ、金をまき、そしていろいろな巡視船のお古をあげたりしてフィリピンにはミサイルまであげるといって断られた。ずっと中国と敵対してきたからこういうときに中国とちゃんと話し合えるパイプがない。河野さんが行ったみたいですけれど、河野さんはもう在野の人ですよ。やっぱり政治に関係する人たちがいま中国に行って中国と北朝鮮が話し合うとか、あるいは中国がアメリカと北朝鮮の間に割って入るとか、そういう働きかけすら日本の政府はできない。これは安倍政権のこの間の政治方針の間違い、外交戦略の間違いだったと思います。価値観を同じする国と一緒にやる、価値観と違う国とは争う、そうやってきたこの間の価値観外交の結果がいま中国と話し合いすらできなくなっている。

韓国はどうですか。戦争になったら大被害を受ける韓国。あの軍隊慰安婦の問題で、後ろに日本会議がいるから格好を付けて大使を引き上げましたが、帰すチャンスがなくなった。向こうだって隊慰安婦の碑をまだ撤去していません。それを理由にして引き上げた。ところがこれだけ緊迫してきて韓国に日本の大使がいなくなったら大変になる。自民党の右派からはすごく批判をされた不格好だ、なんの成果もないのにまた戻すというのはどういうことだ。たぶんそう言うと思います。だけどこっそり戻した。そのときの理由が、いまの韓国大統領代行、首相と大使が話し合いする必要があると。そのことを最大の理由にして帰した。ところがいまだに韓国の大統領代行は日本大使と話し合っていません。安倍さんの外交の大失敗ですよね。外務大臣が外遊しているとに安倍さんが引き上げさせたので、もうめちゃくちゃな話です。だから韓国との関係も、中国との関係もうまくいかない。ここまで緊張した状態があるのに、日本は何ひとつ手を打てない。最悪の外交だと私は思います。なんとかしなきゃいけない。こういう安倍政権を本当に私たちがストップさせることができるかどうかは大きな課題だと思います。

私は今度の件で戦争がすぐ起きるとはいま思っていません。ただ、戦争は「万が一」では困るんですよね。ちょうど「一」に当たって戦争が始まったら本当にダメなんです。だから本当にいまあ らゆる平和的な手段を使ってこれを止める努力をしなければいけない。中国の外務大臣がいっていました。6ヶ国でもいい、4ヶ国でもいい、2ヶ国でもいい、とにかく話し合えと電話会談などでアメリカにそういう要求をしていますね。私もこれしか道はないと思います。北朝鮮の金委員長が悪いとか、どうのこうのいったって始まらない。ともかくも戦争を止めること、この緊張した状>態を和らげることだ。

武力で平和はつくれない

この状況を見ながら、1993年から1994年の朝鮮の核危機を思い起こします。いまにもアメリカが北朝鮮を核攻撃するかという、緊迫した情勢がありました。北朝鮮が核を開発し始め、アメリカとしては放置できない、だから叩く。このときのアメリカ大統領クリントンが北朝鮮を叩く決意をして、日本に対しての協力要求を1400項目くらい出してきた。日本政府はびっくりして、結局できないといった。その中には例えば岩国基地からこういうふうに貨物を運び出せとか、細かいことまで含めて一覧表にして出してきたわけです。当時、日本は法律とかそういうものができる体制になかった。同じ時期に韓国は、もしアメリカが北朝鮮を叩いたら韓国で何百万人が死ぬ、アメリカ人、軍人も何万人が死ぬ、大変な打撃を与えられるというシミュレーションをやりました。それもクリントンに報告した。日本の方もダメです、できませんという報告をした。

クリントンは困ってしまって、核攻撃をやめる決断をする。それでどうしたかというと、そのときは金日成がまだ生きていたはずです。これに対してカーター元大統領、アメリカの最高級の在野の政治家を派遣して、とにかくこの緊張を何とか和らげようということで、カーターと金日成の会談をやらせています。それであのときの朝鮮の核戦争の危機はかろうじて収まって、みんなほっとしたんです。今回はそうじゃない。そのときの教訓で日本がアメリカの戦争に協力できない、法的な整備がないということが分かり、そのあと日本はアメリカの要求でいろいろな法整備をします。有事法制とかを次々とつくります。いまは戦争法までできているわけですから、1994年とは格段と違って、もしかしてアメリカから1400項目の要求をされたらそのほとんどはいま日本はできるかもしれない。状況が大きく違うので余計心配もします。戦争法を持っているのにアメリカに協力しないのかとトランプにいざとなれば言われる。実際に軍事演習に協力しながら、いざ始まったときにどこまでやるのかという問題も出てくる。状況は相当に厳しいと思っています。

狼少年ではありませんから、明日戦争になる、今日戦争になると言うつもりはありません。ただいまの私の心理としては柏まで電車で往復している間も、ときどきニュースはどうなっているかなと本当に気になっています。いまちょっとニュースを見たら大陸間弾道ミサイルのようなものを軍事パレードで出したと言っています。だからもしかしたら、持っているぞという威嚇で終わるかもしれない。それから中国が必死で抑えようとしていますから核実験も今日あるとはなかなか思わない。中国も国家の威信をかけて説得をしていると思いますね。ですからいま核弾頭がとんでくると言うつもりはありませんし、まあ日本政府もだいたいそう思っている。韓国にいる5万から6万人の日本人に対しての引き上げはまだ命令していない。注意報を出しているだけです。それから日本のアメリカ軍も全部臨戦態勢をとっているわけではない。昨日のテレビでは横須賀のアメリカ兵なんかは、まだ特別な指令は降りていないよというようなことを言っていました。いろいろなことを見て今すぐにアメリカが北朝鮮を叩くあるいは北朝鮮がそれに反撃してミサイルを飛ばしてくると慌てるような状態ではないとかろうじて思っています。中国の努力とか世論とかいろいろな努力の中でかろうじていま抑えられているということを私たちは確認しておく必要があるんじゃないかなと思います。

4月5日・立憲野党と市民連合の政策合意

私は運動家ですから、やっぱり事態がどうなっているかということを理解するだけではダメだと思っています。私たちができることは何かという話をしたいと思っています。ご報告したかったことのひとつは4月5日の野党4党と市民連合の政策合意です。

去年の参議院選挙のときに野党4党と、私たち市民連合の政策協定をつくりました。4党と私たちの共通する政策はこういうものですよという確認文書を作りました。それにもとづいて参議院選挙をたたかった。今回は衆議院選挙が近いのでもう一回、野党4党と私たち市民連合の間にどういう共通政策を確認できるのか。選挙ですから政策が一致しないと一緒にやれません。それで去年12月に市民連合から4党のみなさんにA4で4ページくらいの文書を出してその中にいろいろな政策項目を書きました。青年政策とか、女性とか労働とかさまざまな問題について私たちの要求をレジメ的に出しました。原発をゼロにするとか沖縄の辺野古の基地をこれ以上進めさせないとか、いろいろな項目を野党4党に対して、「これで合意できますか、そうしたら選挙を一緒にやりましょう」というものです。野党4党の代表がいて、こちらに市民5団体の代表がいて話し合います。それを出したときに政党の側はさーっと見て「基本的にこれで結構だと思います。たぶんこれで合意できると思いますので少し時間を下さい。党に帰って検討します」ということでした。それで1月あたりに回答が来るかと思ったら、来ないんですよ。答えを延々要求して、ようやっと4月5日に野党4党から回答が来ました。(市民連合の政策、野党4党との政策合意は前号に掲載)

この政策合意は、よく見るとおかしいところは結構あります。例えば「分厚い中間層ができるような社会をつくりたい」という用語はどうでしょうか。この格差社会を「分厚い中間層」に変えるのかということですが、これは民進党の用語なんですね、きっと。それから日米同盟が何かいかにも所与の事項みたいになって書いてあるところもあります。共産党の小池さんも指摘していましたが、そういういくつかの、私から見ても留保しなければいけない点はありますけれど、これも含めてともかくも民進党を含めて私たちにこういう回答を寄こしたということはこれから衆議院選挙を共同でやっていく土台、出発点になると思っています。

12月には共謀罪は大きな問題になっていませんでしたから、この中に共謀罪は入っていません。森友疑惑も入っていません。この中にはこれらかどんどん積み重ねていって改善していかなければいけない課題はいっぱいあります。わかっていただきたいのは、ともかくも4党と私たち市民の間でこういう合意ができた。今度の総選挙は全国に295小選挙区があります。今日わたしが行った柏は千葉8区で、ここで市民連合をつくったという集会です。そうやって295のところにいろいろな市民が市民連合をつくろうとしている。これをつくるときにその地域の4党の人たちと話し合う基盤になるんですね。こういうところで中央では合意したそうだ、われわれの間でもこういう合意を候補者と市民の間で、あるいはその地域の政党と市民の間でつくりましょうということができます。それをこれから一層ドライブをかけてやろうと思っています。まだ数字を掌握していませんが、いまかなりの勢いで、各選挙区に市民連合ができています。今日、千葉県では3ヶ所で市民連合の結成をしていたそうです。千葉は全部で15選挙区があります。そのうちの3ヶ所で今日市民連合を結成したそうです。私は今週4つくらい講演で歩いていますが、埼玉は25選挙区のそのほとんどに5月中くらいに市民連合ができるといっています。東京も1区とかいくつかのところはまだじゅうぶんできていないところもありますが、ほとんどのところで市民連合ができています。そういう市民連合が候補者の一本化を目指して仕事をしていく上でこの4月5日の合意というのは大きな役割を果たすと私は思っています。確かめていないんですけれども民進党のホームページにも載っているという話です。もちろん市民連合のホームページにも全文載っていますのでぜひご覧下さい。

憲法施行70年と「戦後レジーム」からの脱却

今年は5月3日で憲法が施行されて70年になります。私は以前、幕末明治の民衆運動史を仲間と一緒に研究していたこともあって、明治からの歴史に非常に関心があります。明治からの近現代史を考えると、この70年はだいたい半分です。1945年の日本の敗戦までとそれ以降、だいたい半分くらいになります。そして1945年までの日本の近代史は、江戸時代に北海道のアイヌモシリを併呑して、明治の初年に琉球処分で沖縄を版図に入れて、それ以降日本は台湾で朝鮮半島であるいは中国でずっといろいろな戦争をやってきました。そして植民地をつくってきました。

それが1945年までの日本の歴史でした。司馬遼太郎さんなどは日本の明治はすごく素晴らしい輝くものだといいましたけれども、私は司馬史観とそこはまったく違います。みんな悪かったというつもりはありません。しかし日本の明治がそんなに輝かしいものか、琉球そして朝鮮半島、台湾、こうやって次々ほとんど10年に1回かあるいは5年に1回くらい戦争をやってきた1945年までの歴史を考えると、そんなに輝く時代ではまったくなかった。15、16の若者たちは20歳までしか生きられないかもしれないと思っていたような時代、そして女性は人間扱いされずに参政権すら与えられなかったという、そういう時代が明治から1945年まで続きました。戦争の時代といってもいいと思います。そしてそこから現在です。私はちょうどその時代に育ったから幸いなことに戦争に直接関わることは一度もなかった。日本の武装力が海外で戦争をやって人を殺したりあるいは海外で戦争で殺されることもなかった70数年なんですよねす。ごく対照的な、近代からちょうど1945年で割ると前半と後半ですごく対照的な歴史だと思います。

もちろんあまりきれい事は言えませんよね。ベトナム戦争にだって結構加担したし朝鮮戦争のときだって結構加担した。しかしそれでも日本の軍事力が戦争することはやらないで済んだ時代です。安倍さんは今年の3月5日の自民党大会で「今年は憲法施行70年だ」、ここまではいいですよ。「これからの新しい70年をいまからつくる」といいます。戦争の70年、戦争をやらなかった70年、安倍さんが描く新しい70年というのは何なのかということです。安倍さんが大好きな言葉に「戦後レジームからの脱却」というのがある。2006年の第一次安倍政権のとき以来ずっと言ってきた。戦後レジーム、戦後の政治社会の枠組みのことです。戦後の政治社会の枠組みというのは、日本国憲法のもとであった枠組みです。安倍さんはこれから脱却したいわけです。だから2006年の時点で安倍さんは自分の任期中に憲法を変えると言った。翌年倒れます。しかし安倍さんは任期中に憲法を変える、日本国憲法にはおかしなところがたくさんある、中でも一番おかしいのは憲法第9条だ、2006年にこう言っています。それが戦後レジームからの脱却なんですよ。戦後の枠組みから脱却したいということを、ちょうどこの70年に当たって安倍さんは再度ここで言ったわけです。

自民党大会の引用がありますから見て下さい。「憲法施行70年の節目に当たり、私たちの子や孫、未来を生きる世代のため、次なる70年に向かって、日本をどのようにしていくのか。その案を国民に提示するため、憲法審査会で具体的な議論を深めようではありませんか。未来を拓く。これは、国民の負託を受け、この議場にいる、全ての国会議員の責任であります。世界の真ん中で輝く日本を、1億総活躍の日本を、そして子どもたちの誰もが夢に向かって頑張ることができる、そういう日本を、共に、ここから、切り拓いていこうではありませんか」、安倍さんが描く新しい70年はこれなんですね。「世界の真ん中」にいたいんですよ。そして1億が輝く、全然輝いていないけれど、安倍さんはそういうふうにしたい。安倍さんというのは本当に主観主義だと思いますね。小学校でも習いますかね、世界地図を。必ずメルカトール図法ですから世界地図の真ん中に日本があって赤い色で塗ってあって、確かに真ん中です。安倍さんはそのレベルじゃないかと思っちゃいます。これは地図の上で、日本が作った地図だから真ん中にあるけれども、ヨーロッパから見たら日本はファーイースト、極東ですよ。一番端っこ。丸い地球でどこが真ん中だなんて、表面では言えないです。みんな真ん中と言えば真ん中だし。このレベル。わたしはここに安倍さんが目指すものがあると思うんです。

「世界の真ん中で輝きたい」の意味するもの

よく聞かれますが、どうして安倍さんは戦争が好きなんでしょうかということです。それは、安倍さんを支えている財界とか軍需産業との関連で安倍さんがなぜ戦争政策をやるのかという説明ができます。もうひとつはこれだと思います。安倍さんは世界の真ん中で輝きたい、アジアの真ん中で輝きたい。アジアのそんじょそこらの国になめられる国になりたくない。中国や韓国になめられるもんか、北朝鮮なんかになめられる日本であってはいけない。経済問題を別にすれば安倍さんの思想の中にはこれがすごくあるとわたしは思っています。まして日本会議が背後にいる内閣になってから、一層それが強くなっていると思います。だから子どもの戦争ごっこのように銃をぶっ放すのが好きかどうかということについて言えば、そうじゃないのではないかと思います。安倍さんにはそんな度胸があるようには思いませんから。思わないけれど、安倍さんはやっぱり世界の真ん中で輝きたい。安倍さんは自分の国、この日本を辱める奴、日本の言うことを聞かない奴は

許さない、そういう思想があって日本の軍事力を強め日米同盟を強め、いろいろな法体系を変えてきているのではないかとわたしは思っています。それがこの自民党大会の発言にも非常によく表れている。全くのナショナリズムですよ。これは本当に良くないナショナリズムです。世界の国やいろいろな民族がそれぞれ共生して共に生きあってこの地球の中でどうやってお互いに支え合って生きていくのかということではない、「真ん中で輝きたい」という思想は本当に危ない思想だとわたしは思います。

そういうために一昨年、戦争をつくった。けれどもこの戦争法は安倍さんにとってはすごく不満のある戦争法なんです。私たちから見ればとんでもない法律をつくったと、もちろん言いました。

若い人たちの間では9月19日に強行採決されたあと「これで終わりか」と思った人たちもいました。実際わたしにそういってきた人もいる。ところが安倍さんから見ると、この戦争法はすごく使い勝手が悪い。というのは、日本国憲法は変わっていません。この法律は日本国憲法第9条があって、そのもとで解釈を変えて戦争法をつくったから、やっぱり憲法9条に縛られている。だから南スーダンに派遣してもあそこで自衛隊はいろいろな制限、PKO5原則とか、そういう中でしか動けなかった。それを戦争ではないとかいろいろごまかしながら無理に無理を重ねて南スーダンに派遣した結果、もう持たなくなってしまったわけです、日報問題も含めて。もう防衛大臣のうそは持たない。安倍さんが思うような南スーダンでの自衛隊の動きができない結果、結局撤収ということになったわけです。これは安倍さんがものすごく不満なところです。だからいまでも憲法を変えると言う。戦争法をつくったんだからいいじゃないかという人がいます。公明党はそういいます。公明党の考えによるといまの戦争法のところまでぎりぎりの法律をつくった、いい法律をつくったと言います。だから当面これでよくて、このために憲法を変えることはないと言うんです。安倍さんは、これではダメだ、憲法を変えたい。だからせっかく戦争法をつくって、すぐに改憲の動きに乗りだしていまやっているわけです。

自民党の改憲戦術

ご存じのとおりですけれども安倍さんが憲法9条を変えるといったって、憲法9条を変える条件はないです。国会の両院で3分の2を持っていますが、国民投票で憲法9条を変えると出したときに多くの日本の市民たちは反対すると思います。安倍さんにとって憲法9条を変える見込みは今ないんです。だからいろいろなことをやるわけです。この前は96条改憲、3分の2で改憲が発議できるのは民主義じゃない、何で過半数ではいけないにかという理屈を見つけてキャンペーンをやりましたが、がつんと反撃を、市民運動からも学会からも受けていつの間にかそれはどこかに行ってしまった。この間は自民党改憲草案というのを出して、これは市民運動もすごく勉強しました。とんでもない草案ですよ。天皇を元首にして国防軍をつくって基本的人権、天賦人権説は間違っているからこれは制限をして、緊急事態条項を入れて緊急事態になったときに日本が対応できるようにする云々。自民党改憲草案というのはめちゃくちゃ古い自民党の保守勢力の意向を反映し

た、日本会議のような意向を反映した憲法草案です。これは絶対通りませんよ。無理だというのは自民党の中にもごろごろいる。船田元とか保岡興治とか、この間憲法審査会でずっと憲法問題を議論してきた自民党の憲法の論客の中にはこれではダメだという人はいっぱいいる。自民党自身が信用していない。

いま考えたのはとんでもないことで、それが3月下旬に2回あった憲法審査会で出てきました。緊急事態条項です。自民党憲法改正草案にある緊急事態条項は要旨を簡単に言うと、戦争、内乱、大自然災害、これが緊急事態です。これが起こったときには内閣総理大臣は緊急事態宣言を出す。そこで内閣は国会の法律に匹敵するあるいはそれ以上の政令を出すことができる。だから法律をどんどん出しちゃえるようなものですね。そして予算措置もそのために使える。国家予算というのはいま予算委員会があって国会が延々議論するように、内閣が勝手に使えない仕組みに日本国憲法ではなっています。これを緊急事態の政令のために予算を内閣が使える。そして日本は政府と地方自治体が同格で、地方自治体の自治はかなり尊重されている。これもやめる。政府が自治体に命令し、指示をすることができる。違反したら罰則がある。これが自民党憲法改正草案に書いてある緊急事態条項の主なところです。

これを出したらうまくいきませんよ。また多くの人が疑問を持ちます。それで困って、たったひとつに絞った。考えてきたのは、「いまここで大震災が起きたら」として自然災害のことしか言っていません。戦争と内乱を外してしまった。大震災とかそういう自然災害が起きて、そのとき国会が解散をしていたら国会議員がいなくなってしまうじゃないか。一番端的にはこれです。だから国会議員の任期を憲法が縛っているけれども、そういう場合には自動的に延長できる。そういう憲法にしておく必要がある。そうしないと大震災に対応できないというんですね。今度の憲法改正では、この点だけ変えようというんです。何をいっているんだか、という話ですよね。憲法をよく読めばわかるように日本国憲法はそういう場合を想定して、憲法をつくったときにこの議論をやっています。安倍さんは、まだわかっていないのかもしれない。そこでやっている議論は、だから二院制で、参議院は6年の任期で解散無し、そして半分ずつ改選をする。半分を改選しても半分は3年残っている。だから国会が解散をしていても、最悪2つ3つ重なっても参議院の半分だけは残っている。そして日本国憲法ではそれが緊急集会というものをやって、これが臨時的に議会に匹敵することができる、そう書いてあります。

別に自然災害が起きたときにはそれで十分です。多少は面倒くさい問題はありまして任期満了で衆議院の任期が終わったときにはいまいった条項に必ずしも当てはまらないとかいろいろな細かい問題はあります。ただそういう大震災が起きたときに選挙になってどうするかということを自民党の議員たちはいま言うんです。大震災で選挙がやれない場合がありますよね。この前の東日本大震災がちょうど選挙の最中だったら選挙に行けません。これは選挙の期日の延長というのは公選法に書いてあり、そういう場合には延期する。そうするとまたいいます。そんなことをいうけれども全部延期するわけにはいかないじゃないか。いま日本列島全部が潰れるような大自然災害は基本的には想定できません。どこからか惑星がとんできて地球が壊滅するなんていうことがあれば別ですけれども、そうしたら選挙どころじゃないです。あるいは原子爆弾が落ちてきて日本列島が吹っ飛ぶとか。自然災害だと言っているんですから、戦争の話は一切今回は抜きでいっていますからそれはありえない。

そうするとまたいうんです。選挙の時期を延長させたら、その地域を代表する国会議員がいないということが出てくるじゃないか。だから間違いです。国会議員は地域代表ではないんです。どこから選ばれても日本国全体の、日本社会全体の政治を議論する、その利益のために活動するのが国会議員です。自民党ですよ、悪いのは。自分はこの町が地盤だからこの町の利益のために一生懸命働く。橋を造るとか、道路を造るとか、これが間違いなんです。その地域の人たちがいないからといって、そこの利益を代表する政治ができないなんていうのはアホじゃないかといわなければいけない。だからああだこうだいろいろな理屈をいいますけれども憲法に国会議員の任期を書き込むべきだというとんでもない低レベルの改憲論というのは96条改憲よりもっと低いレベルだと思います。これだと野党も賛成するに違いない、市民の多くも賛成するに違いないと、自民党はそう思っている。実際そう言います。憲法審査会の場でもそう言います。

野党の引き込みねらう改憲項目しぼりこみ

そしてさっき言った賛成する人が確かに出てきた。細野豪志さん、この任期延長改憲論は自分も賛成だ。彼は任期延長について「180日に限って」と自分で考えたと言います。そういう案を出してきて民進党の中で揉めたんですよね。それでじゃあ辞めたるということで役員を辞めた。自民党はそういうのが出てくるのを期待して今度の改憲案を出してきました。これは本当にぶっつぶしましょうよ。ぶっつぶすのは簡単です。多少憲法なりを勉強してもらえれば、自民党は改憲のためにこんなでたらめなことを言うということがよくわかる見本みたいなものですよ。だからこれは「お試し改憲」と言われている。なんであれとにかく一回改憲をやってみる、一回改憲をやったら日本の市民は改憲に慣れていく。改憲を一度もやったことがないから「嫌だ、嫌だ」と言うけれども国会議員の任期延長みたいなことでともかく一回やっちゃったら意外と簡単だねという話になって改憲慣れするんじゃないかということが自民党さんが考えていることなんですよ。いまそういう改憲論が出てきている。

安倍さんは本来は来年の9月までが彼の任期でした。その間にそれを国会で通す、そして次にそれをまたやって9条まで含めて通すというのは本当に至難の業になったんですね。それでこの大会で総裁任期の延長を決めた。何かどこかの国の悪口を言えないですよ。自分で自分のためにどんどん都合のいいように任期を延長していって、あと3年を手に入れましたから2021年までになった。これまでには天皇の代替わりがあり、オリンピックがある。国内は何となく安倍さん中心で盛り上がる。オリンピックで彼はいろいろなことをやるでしょうね。だってブラジルまで行ってマリオをやっちゃったわけですから。いろいろやればもっと自分の支持が上がって憲法が変えられるのではないかということを安倍さんはいま思っています。

それにつけてもすごく安倍さんが一方で困っているのは、この4党共闘プラス市民です。もしかしたらいろいろなところでこの統一候補に自民党の候補は負けるかもしれないと、安倍さんの方もそう思っている。だから去年の暮れ頃解散するといって解散できなかった。今年の3月か4月も、森友まで出てきちゃったからますます解散できなくなった。秋だという話があります。秋までにもし市民連合が結束を強め、4党との連携を強めていったら、これは3分の2を失う条件ができるかもしれない。いま自民党の中には解散は来年の秋だという話まで出てきた。どんどん先延ばしです。ですからこの4党プラス市民の動きのマイナス面があると、いくつかの新聞は一生懸命報道するようになっています。政治部長クラスが安倍さんといつも酒を飲んでいるわけですからね。だから野党共闘の中で矛盾が出た話は大きく書くんです。細野さんが辞めそうだとか長島さんが辞めた、そういうことを一生懸命書くんですね。ところが4党プラス市民の政策合意ができたなんていうことは書きたくないし書かれない。NHKがちょっと報道したみたいですけれどもね。これがいま安倍さんにとっては非常に頭の痛い悩みどころになっているとわたしは考えています。自分がやっているからって手前味噌なことを言うなと言われそうですけれども本当にそうなんです。安倍さんから見るといま選挙がどうなるか、この4党共闘と市民との連合がどうなるかというのは大変大きな問題です。

2015年安保の4つの特徴・同円多心の共同 これからの課題との関係でもうひとつだけ言っておくことは、わたしたちがこれからどうするかというときに、誰か学者が何かを勉強して政治方針を考えるとか、そういうことで政治方針が出てくるわけではないとわたしは思っています。運動の総括とその教訓を導き出すことから明日の方針が出てくる、昨日のことを明日のために考える、そういう方法によって、わたしたちの方針が出てくる。安倍政権をどうやって倒していくのかという方針もまったくそうだと思っています。昨日のこと、過去のことを考えればいい。特に一番最近で言えば2015年安保だと思っています。国会の前に久々に12万人が集まり、全国で100万人近くの人が行動した。産経新聞によると300万人くらいの人が動く可能性があったみたいな話もありますけれども、とにかく大量の人た

ちが行動して戦争法反対をやった2015年安保。あれがどういうたたかいだったかをきちんと捉まえることが大事だとわたしは思っています。

結論だけ言いますけれども4つだとレジメにも書いています。いままでと大きく違ったのは、2015年安保は総がかり行動としてやられた。日本の反戦平和運動は残念ながらいろいろな意味で

分裂、対立あるいははさまざまに別にやる、そういうことが続いていきました。1960年以来ずっとそういう歴史だったといっても間違いありません。わたしも60年安保にちょこっと引っか

かっていますので、わたしの運動の人生の大半はそういうものです。あれは何党系、これは何党系、あるいはそれらから独立してわたしは市民として独立してやってきたけれども、そういう対立の歴史でした。それが2015年安保では総がかり行動として統一したんです。違いを乗り越えて共闘の機関をつくった。これはすごく大きな成果です。

多くの市民個人が闘争に参加それからもうひとつは、そういう結果でもあるけれども多くの市民個人がこの一連の闘争に参加をしてきたことです。分裂をしていると参加しにくいんです。どれに行こうかなとなっちゃうでしょ。それに行ったら、友達から「なんだあれに行ったの、何党系なの」なんて言われかねない。みんなが一緒にやっているということは、みなさん個人が参加する場があるんですね。そしていまはSNSの時代です。私らが昔やったワールド・ピース・ナウというのがインターネットで市民運動が動き出した最初だとわたしは思っていますが、それから10何年たっていまはほとんどSNSが多くの市民の間に普及してきた。いままではデモに行こうといえば、組合の上部の人たちや民主団体の上部の人たちが何月何日に国会前でデモをやるので行きませんかと呼びかける。それでみんなわかった。それはある意味ではそういうルートを持っている人しかわからない。新聞もほとんど書きませんからね、いつデモがあるなんて。だから一般のそういうルートに属していない市民は参加しにくいんです。インターネットは違いますよね。戦争法が問題になっているからどこかでデモないかなと思って調べればわかる。それで自分に合いそうなのはこれかなと思っていけばいいんです。ものすごく違ってきました。

それだけではなくて、実は総がかり行動は1億円近くかけて延べ8回くらいの新聞広告を出しました。みんなインターネットをやっているわけではない、年配の人たちはインターネットをほとんどやっていないから。「8月30日、国会に行こう」という呼びかけを出しました。ものすごくお金がかかりました。でもこの結果インターネットをやっていない市民・個人がまた参加できるようになった。電話が来るんです。新聞に載ってから1週間くらいはわたしの事務所の電話が朝から鳴りっぱなしです。電話が嫌だと思った、そんな贅沢な思いをしたのは珍しいんですけれども。

普段は一般の市民からいっぱい事務所に電話が来ないかなと思っていますが、なかなか来ない。この時期は本当にいろいろな電話が来ます。「わたしのお母さんは80歳で今朝の広告を見て安保法制の反対のデモに行きたいといっていますけれども大丈夫でしょうか」と聞いてくるんです。デモって怖いと思っているんですよね。娘さんは警察官とぶつかったりして大変だと思っている。

お母さんが行きたいといっているけれども本当に大丈夫かなと思う。これはあとのことにつながりますが、こういう電話が来る。国会議事堂ってどうやっていくんですか、駅はどこが一番近いんですかという質問。近くにコンビニはありますか、食事はどうしていますか、トイレは大丈夫でしょうか、みなさんはどうしていらっしゃいますか、そういう電話がすごく多い。ということはいままでデモに来たことのない人からの電話がたくさんきたということなんです。

わたしはすごくうれしかったですよ。そういう市民が今回はたくさん動いた。だから8月30日の12万人の集会は、だいたい3分の1から半分は市民だった。もちろん組合の人もみんな市民ですから、こういう言い方はあまり良くないけれども個人市民というか、あるいは小さな2~3人でグループを作っている人たち、そういう人たちが国会の正門前に結集する。壮観ですよ、これは。今回の運動の特徴はそれなんです。昔小田実が市民運動の極意は「ひとりでもやる、ひとりでもやめる」ということだといった。小田さんひとりでも、やめるっていわなくていいよとわたしは思うけれども、しかし「ひとりでもやる」ということなんです、市民運動というのは。団体で、集団でしかやれないのではないんです。それが2015年安保のものすごい特徴ですよ。いまだって、自分で政治に腹が立ったらいろいろなところで自分で文句を考えてプラカード書いて町に立っている人がたくさんいるじゃないですか。私なんかは格好付けで、そういうことを駅頭でやるなら最低何十人いないと格好がつかないなとか、マイクとか横断幕をつくるのかとか、いろいろ考えちゃいます。でも、自分で行動しなきゃと思ったら立つんですよね。ベトナム反戦のときは、ベトナム戦争反対とゼッケンをつけた労働者が朝の通勤でゼッケンを付けていたということでニュースになったんです。ひとりですよ。いまはみんなやっているじゃないですか。ゼッケンほど大きくないけれどもカバンにはタグを付けている。いろいろなことをやっていますよね。

そしてそういう市民の立ち上がりの一番の典型だとわたしが思うのは「保育園落ちた、日本死ね」というあのブログですよ。お母さん、ママさんが本当に腹が立ったんですよね。一億総活躍とかいって保育園に預けようと思ったら落としちゃう。何言っているんだ、おかしいじゃないかということで書いた。そうしたら国会で本当に書いたかどうかわからない、言葉が汚いとか、誰だかわからないと言われた。そうしたらその2、3日後から国会の正門前に「保育園落ちたのわたしだ」と書いたプラカードを持った人たちが何十人も勝手に集まった。どこかの団体にプラカードに書いていけといわれたわけではないんですよ。そのブログを見て、そして政府関係者がそういうことを言ったことに腹を立てて、保育園落ちたのはわたしだという運動が広がる。国会でも質問になって大きな問題になる。笑っちゃうんですが、東京都知事選挙の主な候補者のほとんどが保育園問題を書いたんですよ。何を言っているのって、いままで保育園問題なんて見向きもしなかった方々まで含めてみんな保育園問題ですよ。だからひとりの市民が立ち上がるような行動がこんなに政治に影響を与えるようなことが2015年安保で新しい市民の登場としてあった。だから東大の名誉教授か何かの先生が日本の市民運動の文化が変わったと言いました。どこかの党の委員長は、これは市民の文化革命だといいました。明らかにデモの様相が変わった。わたしのように何十年もデモをやってくると本当に変わったなと実感します。それが今回の特徴ですよね。

非暴力のたたかい

そしてさきほどの80歳のお母さんの話です。大丈夫でしょうかと聞かれて、そのときに「いやあ80歳ならやめた方がいいんじゃないでしょうか、おまわりさんは弾圧してくるし、結構厳しい局面もありまして」なんてわたしが答えたら、その人は来ないですよ。わたしは来て下さいと言ったんです。私たちはそういうお母さんもちゃんと参加できるような運動をつくろうと思っています。病人が出たらそれに対応する。実際に80月30日は現役の医者50人以上そろえました。並大抵じゃないですよ。そして国会議員のパトロールが出た、弁護士のパトロールが出た。もちろん私たちはたくさんのスタッフをつくった。みんなが参加できるような運動をどうやってつくるか、必死で対応して考えました。それは10万人でも100万人でも、呼びかける側の責任でもあります。そこをやらなかったら信頼してもらえないんですね。それをやりました。

ちょっと余談があるんですけれども、病人が出たんですよ。出たときにそこにいた係のお医者さんが運び出そうとしても人がいっぱいいて運び出せない。みんなもうぎゅーぎゅーだったですから、隣の人との間が満員電車並みになっている。そのときに呼びかけたというんです。「いま病人がいる、運びたい、協力して下さい」と。そしたら彼が言うには「モーゼになった」と。わたしは感動しましたね。その場面は見ていないけれども、それだけぎゅーぎゅーのところをみんなが必死で道をあけてくれたというんですね。だから個人参加の市民でもそういう自覚をみんなそれぞれお互い支えながら自覚を持って集まってきたんですね。30日に警官隊の阻止線が決壊したでしょ。バリケードをつくったのが人がぎゅーぎゅーで、もうどうしようもないということで、あの国会正門前の10車線が埋まりましたよね。あのときも本当に心配しました。下手をしたら多くのけが人が出ますよ。警官隊が阻止しているところをだだーって出ていくわけですから。だからマイクでわたしとか菱山さんは、一生懸命押すなという趣旨のことと隣の人をしっかり見ながら進んでくれ、ゆっくり進んでくれというアピールをしました。見事にみなさんやりましたね。だーっと何人かの集団が突っ込むなんていうかたちではなくて、本当にあれだけの10車線の国会前の大きな通りを占領するという運動がほとんどけが人もなしにやられた。わたしは市民運動はすごいと思いましたね。非暴力の運動なんです。

政党と市民の連携・共闘が生んだ16年参院選の「希望」ある「敗北」

最後の特徴はこの市民運動が国会議員、野党と結びついたことです。わたしが主として関わってきた市民運動はこれらの、野党とはいえ政党の人たちとはあまりつきあいがありませんでした。すぐ何党系とかいわれそうですし、すぐ選挙の話をされそうで、ひとつの独立した市民運動です。いろいろな日本の反戦運動が分裂している中でそういう流れだった。今回はそうではありません。

本当に安倍政権の戦争法を止めるなら、私たちが国会の外で、総がかりで意見の違いを超えて、何党支持であれ支持政党を持っていない人であれ団結してやっている。だから国会の中でも野党4党は協力して安倍政権と対決してくれ。そして国会の中で共闘している野党4党が国会の外の市民と一緒にやってくれ。そうして力を集めることでしか、この安倍政権一強政治に立ち向かえないじゃないかということが第4番目の特徴だった。

それは去年の2016年参議院選挙になっていきました。全国32の1人区で、私たちの要求は野党の候補者を一本化しろということです。自分のところは勝てるという人はいることはいます。

例えば岩手の選挙区だったら小沢さんは圧倒的に強いですから前の参議院選挙でも小沢さんの仲間が当選している。それから沖縄は民衆運動がすごくある島ですから、ここでも1人区で当選している。前回の参議院選挙では、32の選挙区のうちでこの2人しか当選していなかった。今回はそこで野党が一緒になることで何とか自民党と対決しようということで、一本化が最後はできたんですね。

一本化も今できてみると当たり前のことみたいに思えますが、そのときはできると思わなかったと共産党の志位和夫委員長も言いました。正直ですよね、たぶん本音でしょう。わたしも昨年の1月頃、市民連合で新宿の街頭宣伝を5000人集まってやったことがあります。そのときにはまだ32の選挙区では全然一本化していなくて、いくつかのところだけ話し合いをやっていた。わたしは本当に腹が立って、街宣車の上で「各政党は何をやっていますか、6月の選挙がこれだけ近づいてきているのにいまだに一本化ができない、本当に安倍政権とたたかう気があるんですか」といいました。政党から見たら生意気に見えるかもしれないけれども本当に厳しかった。簡単にできませんでした。でもいろいろな人の努力があって最後は32の選挙区全部候補者がひとりになりました。その結果、11選挙区で勝った。東北6県のうち5県。わたしは東北出身ですから言えますが、1人区の多くはものすごく保守的なところです。社会党だって「アカ」といわれるところですからここで勝つというのは並大抵じゃない。わたしの若い頃は参議院選挙というと、福島ですから会津藩の松平という人が昔からいてその系統の人が出て当選するという、こんな選挙ですよ。今回は野党統一候補が福島でも勝ちました。

全国11選挙区で勝った。前回は2人で21敗でしょ、今回は11です。そんなことで喜んでいるなよといわれたこともあります。それは負けたんですよ。3分の2の改憲議席を与えてしまったのだから負けた。でもただ負けたんじゃない。すごく希望のある敗北だったと本当に思います。希望があると思う。どうやったら、あの一強政治と言われる政治を破れるのかという可能性がここで出てきたわけです。少なくともいろいろな共通政策をつくり、野党4党と市民が一緒になって1人の候補者を立てて自民党か公明党に立ち向かえば、かなりの戦いができるということが今回の参議院選挙の教訓であったわけです。これは大きいですよ。このあとどう闘えばいいかがわかってきます。

今度の総選挙。2014年の12月にも総選挙があった。あのときのデータがあります。この話をもうひとつしておきます。前回負けたあの総選挙で、野党4党の得票をあわせれば自民党を上回るという選挙区が61くらいあります。野党が一緒にやっていさえすれば、あんなふうに自民党を大勝させなかった。そして差が1万票以内という選挙区があと30選挙区くらいありますから、90選挙区くらいで逆転の可能性が出てくるというデータがあります。選挙ですから、これからの運動にもかかわって得票がそのままとは限りません。ただ例えばという話で言うと、それだけ変わる。そうしたら自民党は単独過半数を失います。自民党は単独では過半数も取れない。60選挙区、90選挙区で変わっていったら、これは安倍政権退陣ですよ。前回の2007年に安倍さんが退陣したのは、いろいろな理由の中の一つに参議院選挙で負けたということがあります。たぶん今度の総選挙でそれだけ減っても、自民党は第一党でしょう。だけども安倍政権の政治責任が問われ、安倍政権に対して不信任を突きつけたことになります。また共産党の志位さんは、これが勝利の方程式だと言います。自民党に対して野党4党と市民が一緒になれば勝てる、勝利の方程式を掴んだと演説する。「志位さん違います、勝利の足し算です。方程式のような中学生の話ではなくて小学生の高学年で何万+何万の足し算をやっているようなものです。それをやれば誰にもわかる、小学生にもわかる選挙のたたかい方です」。まさに野党4党と市民が一緒になったら、そういうふうに逆転します。これは自民党が一番よく知っているわけですから、これをやらせたくないわけです。せっかく3分の2を取って改憲が目前かと思ったらこれが失敗しちゃう。これなんですよね。だから勝利の算数、これを実現できるかどうかだと思います。真似して言えば「この道しかない」、です。安倍さんは選挙ポスターに「この道しかない」と書きましたけれど、わたしは安倍さんに勝つにはこの道しかいまはないと思っています。この道ならかなりやれると思っている。

今度の総選挙で295の選挙区でどこまでそういうことを実現するか。全部で一本化するというのは難しい問題がいっぱいあります。政党と政党では、自分の選挙はこの県で、この選挙区だけは自分の党でどうしても取りたいというのがあるんですよ。そうすると別の党の有力候補者がいるとかすると、どうするんだという話がある。ものすごく難しい話があります。市民連合の出番はそういうときなんです。市民連合はそういうところでもなんとしても一本化するための働きかけをしなければいけない。

「政治を変える。選挙を変える 」が意味するもの

もうひとつ市民連合のすごく大事なところは、前回の参議院選挙の中で市民連合が非常に大きな役割を果たしたのは、市民連合が直接政治に関わっていったことです。いままでは選挙というと、政党とその支持者の人たちが頑張って私たちが投票するというパターンが結構多いんですね。今回の場合は違います。各地の市民が、選挙は政党だけの問題じゃない、私たち自身のたたかいだということで、市民の活動のやり方を持って選挙に参戦していった。だから新しいパターンの運動がいっぱいできました。例えば候補者の前で市民連合の人たちがみんなプラカードを持って立つとか、いろいろなパターンができてきました。選挙のパターンが変わったと民進党の人たちは言っていましたね。東京で当選した小川さん、選挙がすごく変わったと感想を言っていました。もちろん公選法の枠内ですけれども、市民連合が自分の課題として自分らの運動の仕方で関わって選挙を自分の問題として取り組んだ結果として選挙が変わった。

私たちはスローガンとして2015年9月19日に強行採決をやられたときに「戦争法は憲法違反、野党は共闘」ということを夜通し叫び続けた。「野党は共闘、野党は共闘」とずっと叫び続けました。それから野党がずっと共闘していく中でこういうところに来ました。市民連合が言ったスローガンの中に「政治を変える。選挙を変える 」というスローガンがありました。国会前の集会で小さなステージがあって、そこで話すのですけれど、わたしのところに2、3人の女性がきて「高田さん、選挙を変えるって何だ。日本語が間違っているじゃないか。選挙で変えるでしょ」って怒られたんです。私は「いや、これは選挙を変えるなんだ」と応えました。ああいうところの立ち話ですから説明しきれなかった。でもわたしはやっぱり「選挙を変える」なんです。従来の政党主導の選挙ではなくて市民が主体として参加する選挙というのはどういうものなのか、その走りを今回のたたかいは実現してきたと思っています。そういうことをやれるかどうかです。2015年安保と2016年の参議院選挙の教訓からそういうことを導き出して、いつあるかわかりませんけれども、今度の総選挙でそういうことを実現できれば安倍一強政治を打倒することは不可能じゃないとわたしは思っています。

これもどこでも言われることですが、安倍さんは森友とか、悪い政治をいっぱいやっている。原発だって多くの人は反対だ、なのに安倍内閣の支持率だけが高いのはどうしてですか、何で変わらないんですかと聞かれます。わたしはそうだろうなと思います。政党の方には申し訳ないけれども、多くの人にとって安倍さんの自民党に代わってこの人たちなら大丈夫だという政党が野党の方に見えていない。結局安倍さんしかいないじゃないか。ましてトランプさんと仲のいい安倍さんでよかったね、みたいな話になっていく。それ以外の道が野党の方から力強く指し示していない。

野党のみなさんは頑張って指し示しているんですよ。しかしばらばらで言っていたら、みんなから見たらそう見えない。安倍さんの支持率が高い理由で一番多いのが、替わるものがいないからということでしょ。この替わるものをつくるかどうかです。参議院選挙の全国の1人区の一本化は、有権者から見て代わるものをつくったんです。いままでずっとうちの選挙区は自民党のこの人だけれども、こんど野党が一緒になって固まってたたかっているそうだ、これなら少しは期待が持てるかなと思ってくれた。

市民運動と選挙は車の両輪

その一番典型が新潟知事選挙です。最初は圧倒的に不利だった。圧倒的に不利だった新潟知事選挙、最初は3党しか支持しない。連合新潟は相手の自民党の候補者を支持した。3党に民進党は入らず、自由党と社民党と共産党です。これで出発した選挙です。これではどう見ても勝てそうにない。ところがたたかっていく中で中央の民進党の国会議員たちはどんどん新潟に出かけた。「義勇軍」と称していたそうです。党の決定と違う行動を取って、米山さんを当選させるために応援に行きます。最後は党の代表まで行っちゃった。何で民進党は推薦しないのかという話になりますね。県連の代表も支持しちゃった。そうやって事実上の4党共闘が新潟ではできました。候補者もいい候補者だった。市民はすごく広い共同をつくって頑張った。いろいろな大学の先生とかYWCAの方とか、わたしも知っている方がいろいろいますけれども、そういう市民連合と4党が一緒になって米山さんを担いだ結果、奇跡の逆転ですよね。そして彼は堂々と脱原発を主張し、原発を動かさないと言った。新潟でそれは大丈夫かなと心配した方もいっぱいいましたけれども、見事に通りました。

この結果、新聞社のデータによると自民党、公明党の支持者の2割から3割が米山さんに投票したということです。そういうふうになっていくんですね。力強そうだな、この人だったら大丈夫かもしれない、そういう政治勢力ができたときに中間的な人たちの票は動くと思います。だからいま野党4党が、ただ一緒になっただけではなくて、市民連合をはじめ新しい市民の運動と一緒になってたたかっているという、そういう図を有権者に示すことができれば、有権者はもう一回期待してみようかなと、この前の民主党にはずいぶん裏切られて、期待して損したけれどももう一回やってみようかなと思うことができると思うんですよ、

それをなんとか今度の選挙でわたしは実現をしたいと思います。ただし選挙というのは選挙独特の運動があって結構面倒くさいですよね。ポスターとかビラの配り方とか街頭演説では何ができるとか、いろいろ面倒くさいことがある。だから相当に選挙に特化してやらないと、市民が運動をやるといっても楽ではありません。しかしそればっかりをやれば勝つかというとわたしはそうは思いません。もうひとつ大事なのは、今日冒頭から申し上げているような、ある意味で万が一かもしれない戦争の危機、こういうものに対してどうするのか。共謀罪、これに対してどうたたかうか。森友疑惑、昭恵さんなんて頭の先から足の先まで真っ黒なのに、いまだに黒じゃなくてほとんど白に近いグレーみたいにしてごまかそうとしている。こういうことをひとつひとつ運動としてた

たかう。韓国の人たちがやったたたかいですよ。政治的に行動する、デモをやる、一人でも街頭に立つ、いろいろな方法で世論を盛り上げる、この市民運動の力とそして市民が選挙にも関わる。

よく昔から言われるのは車の両輪だということです。片方だけ一生懸命やっても車はくるくるまわっちゃうだけです。市民運動と4党プラス市民連合という新しい選挙運動と、この両方をもって今年の秋になるのか来年あるのかわかりませんけれども、安倍政権に立ち向かっていくような新しい流れをつくっていく。それができたら、この本当に嫌になってしまうようなこの国の政治に、

もしかしたら私たちは突破口を切り拓くことができるかもしれない。一見無力のようですけれども無力な私たち、微力な私たちでもたたかいかたによっては突破口が切り拓けるんじゃないか。これは決して行動の激しさ言葉の激しさによって争う問題ではありません。多くの人たちが願っている要求を共通政策にまとめ上げ、それに基づいて多くの人にできるだけ返していく、一緒に考えていく、そういう運動をこれからつくっていくことができるとすれば、わたしは希望はあると思っています。いますごい勢いで全国で市民連合をつくっている人たちがいますから、そういう流れとも一緒にやりながらお互いにこれから頑張っていけたらいいかなと思います。

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宗教者九条の和 声明:内心の自由を奪い処罰する「共謀罪」の廃案を求めます

2017年4月25日

4月19日、国会で「テロ等準備罪」の本格的な審議が始まった。この法案 は、「共謀罪」の趣旨を盛りこんだ組織犯罪処罰法改正案であるが、与野党の質疑を聞いていて、ますます内心の自由を脅かす憲法違反の法案である、との確信を深めている。計画や準備の話し合い段階での「合意」という「心の中」を調べて、これを 処 罰の対象とするという政府の説明では、捜査機関による解釈次第で、一般市 民の思想・信条の自由が侵されることは自明の理である。過去の治安維持法 の例を挙げるまでもなく、政府の恣意的判断で政府に逆らう市民が犯罪集団 の一員と認定され、監視、捕縛される恐れは十分にある。

林真琴法務省刑事局長の「捜査機関によって嫌疑があるかないか、集められた資料に基づいて判断される」という答弁からも、その懸念はますます強められた。安倍首相の「そもそも犯罪を犯すことを目的とした集団」の説明は、基本的 に宗教教団も捜査対象となる、ということで、私たち宗教者も監視下に置か れ、それぞれの信仰から、政府の方針に異を唱えれば、「合意」の段階で処罰 されるということである。いまや信教の自由も危うくなった。戦時下、反戦平和を願った多くの宗教 団体・宗教者が徹底的に弾圧されたあの悪夢が再びよみがえろうとしている。沈黙しているわけにはいかない。安倍政権のこの暴走を宗教者として許してはならないのだ。

「共謀罪」を葬り去り、「秘密保護法」を停止させ、「新安保関連法」を撤回 させるため、宗教者が教団・組織の枠を超え、一致団結して立ち上がろう。
戦前の失敗を繰り返さないため、「平和」の一点共同、祈りを行動に移して いこう

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「共謀罪」の廃案を求める団体共同声明

呼びかけ:さようなら原発1000万人アクション実行委員会/核燃サイクル阻止1万人訴訟原告団/原子力資料情報室

1.原子力反対運動は市民の権利

原子力施設の事故は、戦争と並んで、人間の生存と営みを脅かす現代社会における最悪の人災であり、最大の人権侵害である。このことは、2011年の福島第一原発事故が明白に証明している。原子力に頼らない社会を作ろう、危険な原子力施設の立地、稼働をやめさせようという願いは、今や市民の大多数の合意に支えられている。ところが、原子力政策は国策と位置付けられていることから、これに反対する運動は必然的に政治色を帯びざるをえず、集会、デモ、抗議活動などの反対運動は常に警察の監視下に置かれているのが現状である。しかし、上記の反対運動は、憲法が保障する幸福追求権(13条)、生存権(25条)、集会・結社・表現(言論)の自由(21条)に由来するものであり、国家権力とりわけ警察権力によって、万が一にもその権利が侵害されてはならない。原子力基本法(2条)は、原子力情報の公開を義務付けている。原子力施設の安全性は情報公開によって担保されるからである。従って、住民、市民及び報道機関の知る権利は最大限に保証されなければならない。

2.「共謀罪」の乱用を許さない

政府は、組織的犯罪処罰法を一部「改正」する形で「共謀罪」を国会上程した。「改正」の目的は、東京オリンピックを控えテロ対策の必要性があると強調する。しかし、共謀罪の対象はあまりにも広範であり、処罰条件はあまりにもあいまいである。従って、捜査機関の恣意的拡大解釈による人権侵害の恐れが極めて大きい。まず第一に、「テロリズム集団」は例示にすぎず、「その他」の集団も広く犯罪主体となりうるし、対象となる罪条は277の多くを数え、テロとは全く無関係な法律が多数混在する。また、処罰条件は、「計画+準備行為」となっているが、保護法益の現実的侵害(既遂)若しくは危険性(未遂)があって初めて罪に問うという近代刑法体系から大幅に逸脱している。

「計画」は、計画を黙認しただけで成立し、一堂に会して話し合わなくても順次の共謀で足りる。「準備行為」として「資金、物品の手配、関係場所の下見」などが例示されているが、預金の払戻し、航空券の予約、スーパーでの買物など普段の市民の日常生活に密接した行動も準備行為に該当する場合があることから、捜査権の乱用による不当拘束のおそれが危惧される。例えば、集会で原発建設、稼働阻止のアピールを決議して、現地集合のビラづくり、製作費用の預金払い戻しだけで威力業務妨害(次頁へ)罪や往来妨害罪の嫌疑をかけられるし、使用済燃料やプルトニウム輸送に反対して、輸送経路を調査したりすることは、実際現場へ足を運ばなくても処罰されかねない。起訴されなかったり、無罪になっても、不当逮捕による被害は容易に回復されない。また、原子力情報を聞き出そうとして取材、面会をするために相手方の住所を調査することも強要罪の共謀とされかねない。共謀罪は、反核運動や基地反対闘争のみならず、市民社会全体を暗黒の警察国家に組み込み、監視社会の弊害を生む。

3.共謀罪は廃案しかない

私たちは、スリーマイル、チェルノブイリを経験し、福島第一原発事故の悲惨な体験を共有している。同じ過ちを繰り返さないために、私たちは脱原発、反核燃の運動を継続していかなければならない。今回の「共謀罪」の新設は、原発被害の救済と再発防止を阻害し、ひいては憲法が市民に保障した人権をないがしろにするものである。よって、私たちは、本法案に強く反対し、廃案を要求する。(脱原発団体など131団体が賛同しました)

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