2月13日から「安全保障法制整備に関する与党協議」が始まった。昨年7月1日、安倍首相は全く同名称の与党協議会の報告をうけて、集団的自衛権行使の政府解釈の変更についての閣議決定を強行した。今回、約7ヶ月ぶりに開かれた与党協議会はこの「閣議決定の内容を踏まえてその具体化を図る」べく法制化することが目的であり、毎週金曜日に会議をひらいて、高村自民党副総裁が3月26日に訪米する前までに全体骨格の合意をとり、4月末に閣議決定し、大型連休後の5月中下旬に法案の国会上程を目指すものだ。
先の閣議決定に際しての与党合意づくりにみられたように、安倍政権と与党がやっていることは、こうした憲法の死命を制するほどの重要問題であるにもかかわらず、民意を無視し、国会審議を軽視して与党の密室協議で合意形成をすすめ、既成事実化をはかるという言語道断の政治手法だ。4月の統一地方選挙を控えた今回もまた、有権者の批判を受け選挙で不利になることを避け、密室協議でことを進めようとしている。
すでにこの与党協議でかいま見えていることは、安倍政権と自民党の強硬な姿勢であり、安倍政権のブレーキ役を任じてきた公明党の姿勢がグズグズの腰砕けになりつつあることだ。「ホルムズ海峡での機雷の掃海」や「派兵恒久法」について、公明党は「厳格手続き」という条件付きではあるが容認の方向に転じたとの報道がある。「首相の方針が揺るがないことを踏まえて」のことだという。これが事実なら、あきれるばかりだ。公明党は昨年の「閣議決定」に際して、安倍政権の暴走に「限定容認」の歯止めをかけたと自画自賛していたし、一部知識人からもそうした声が上がっていたが、最近ではこれが幻想に過ぎなかったことが明らかになりつつある。与党協議の中でまたまた公明党の「下駄の雪」が始まった。
「解釈で憲法9条を壊すな!実行委員会」はこうした姑息な政治手法を批判しながら、2月20日午前、緊急に「戦争関連法制反対!密室協議で勝手に決めるな!緊急国会前行動」を行い、80人を越す市民が社民党、共産党の国会議員と共に抗議の行動を行った。実行委員会は、毎週、与党協議への抗議を続ける決意を固めている。
このところの安倍政権による平和憲法体制に対する攻撃は異常であり、立憲主義に反するすさまじいばかりの動きが相次いでいる。安倍政権の下で、かつては考えられなかったような政治反動がすすみ、平和憲法体制の構造は積み木崩しのように崩され始めた。与党が圧倒的多数議席を確保した国会の議論は、かなりの程度で形骸化し、安倍首相を先頭に居直りの議論や聞くに堪えないようなヤジまでがくり返されている。
こうして外国の軍隊をも対象に含むODA新大綱がつくられたり、「イスラム国」の人質事件を奇貨として、国会での議論すらないままに「有志国連合」への参加などが進められ、首相の口からは自衛隊を使った邦人救出などの発言が飛び出すようになった。
これらは第2次安倍政権の発足以来進められてきた国家安全保障会議(日本版NSC)の設置(2013年11月)、特定秘密保護法強行採決(同12月)、武器輸出3原則の撤廃(2014年4月)、集団的自衛権行使容認の閣議決定(同7月)などの一連の流れの延長線上にあるもので、日本国憲法の平和主義に敵対する安倍政権の「積極的平和主義」というキャッチフレーズのもとに行われている「戦争する国」の体制づくりだ。
安倍首相は今国会の施政方針演説を「戦後以来(!)の大改革」ということから始めた。このフレーズは安倍首相がいかに「戦後レジーム」に敵意と嫌悪感を抱いているかを如実に表すものだ。彼がいう戦後体制の枠組みからは日米安保体制は消し飛んでおり、日本国憲法体制しかない。いますすんでいる政治過程は安倍首相による平和憲法体制の破壊の過程であり、彼は昨年の閣議決定による憲法の骨抜きから、その戦争法の法制化へ、そしてさらに明文改憲へと歩みを進めようとしている。
与党協議と並行して、国会では首相や閣僚から、従来の憲法解釈を突破する異常な発言が相次いでいる。
2月19日、衆院予算委員会で中谷元・防衛相は政府が提出をめざす戦争関連法制(安保法制)に関して、「集団的自衛権を含む武力行使に地理的な制約はない」と発言、自衛隊の派遣は「中東のホルムズ海峡の機雷掃海も対象に含まれる」などという見解を示した。そして「日本に資源を運ぶ海上交通路(シーレーン)の安全確保は重要だ」として、「地理的制約が憲法上の要件として直接導かれるわけではない」などと、「日本から遠く離れた地域でも武力行使は可能だ」と強調した。
安倍首相も同様な発言をくり返している。ホルムズ海峡の機雷による封鎖は経済的影響が重大だから、自衛隊の派兵はありうるという。かつて「満蒙は日本の生命線だ」といって日中戦争に突入していった歴史を彷彿とさせるものがある。与党協議の座長・高村自民党副総裁は「安倍総理大臣はごく当たり前で常識的なことを言っている」。「損害が『極めて甚大』になると、単なる経済的な損失を超えて国民生活に死活的影響を与える場合がある」、その場合には集団的自衛権の行使の対象になりうるという発言をしている。これらは昨年7月の閣議決定の際に与党幹部が「地球の裏側まで行くと言うことではない」などと取り繕っていた言辞がまったくデタラメであったことを物語っている。
加えて、自衛隊海外派兵恒久法制定の危険な動きがある。
政府・自民党は自衛隊の海外派兵について、現行の周辺事態法と国連平和維持活動(PKO)協力法を改正して存続させたうえで、多国籍軍への後方支援や人道復興支援などを可能にする新たな恒久法の制定を目指す方針を固めたといわれる。
政府・自民党は当初、周辺事態法、PKO協力法の現行2法を廃止し、PKOや他国軍隊への後方支援など幅広い活動を可能にする「海外派遣の恒久法」の策定を目指していた。しかし、公明党の反発に配慮し若干、軌道修正し、現行2法を維持した上で、〈1〉日本の平和と安全に重要な影響を与える「周辺事態」にはあたらないが、国際貢献として行う海外の紛争での後方支援〈2〉PKOとは異なる有志連合などによる人道復興支援を柱とする海外派兵恒久法を作る方向だ。
この派兵恒久法が作られれば、自衛隊は地球的規模において、いつでも、どこでも、米軍などの軍事活動を支援することが可能になり、時には戦闘参加も辞さないという憲法違反の悪法になる。
安倍首相の暴走は海外での日本人救出に自衛隊を投入する発言にまで至っている。安倍首相は17日、「(海外でテロなどに巻き込まれた日本人の救出について)早期救出に対応することは国の責務」とのべ、自衛隊による救出のための法整備に意欲を示した。同時に「米国など諸外国との協力も重要な課題であり、円滑で効果的な活動のための実施体制も検討していく」と発言した。この発言が安倍首相のトンでもない暴走であることは言うまでもない。
2月12日付の自衛隊の準機関紙『朝雲』のコラムが次のように述べているのは興味深いことだ。
「自衛隊が人質を救出できるようにすべきとの国会質問は現実味に欠けている。人質救出は極めて困難な作戦だ。米軍は昨年、イスラム国に拘束されている二人のジャーナリストを救出するため、精鋭の特殊部隊『デルタフォース』を送り込んだが、居場所を突き止められずに失敗した」「もちろん人質を救出するためであれば、米軍の武力行使に制限はない。それでも失敗した。国会質問を聞いていると、陸上自衛隊の能力を強化し、現行法を改正すれば、人質救出作戦は可能であるかのような内容だ。国民に誤解を与える無責任な質問と言っていい」と。
自衛隊側からみても、国会での安倍首相らの議論は非現実的で、容認しがたいものだという抗議の表明であろう。私たちも、こんな愚かな安倍首相の議論につきあわされるのはかなわないという思いがする。
安倍首相はしゃにむに改憲に向かって突き進もうとしている。必要なら自民党総裁の任期を3期9年にまで延長してでも明文改憲を成し遂げ、戦後レジーム破壊の風穴を開けたいという思いだろう。
安倍首相は米国の了解が得られれば日米ガイドラインの再改定を手みやげに大型連休中に訪米し、オバマ米大統領との間に「戦後70年日米共同声明」を出したいようだ。これには安倍首相が抱える宿痾のひとつである「歴史認識問題をめぐる日米間の矛盾~安倍晋三の歴史修正主義への米国の不信」を、「戦後70年談話」のまえに払拭しておきたいという狙いがある。安倍首相は今夏に発表する戦後70年談話について検討する有識者会議を西室泰三日本郵政社長、北岡伸一国際大学長、中西輝政京大名誉教授、山内昌之東大名誉教授、白石隆政策研究大学院大学長ら16人で組織した。日米共同声明で、この談話の大筋了解という基礎を作っておきたいわけだ。
その後、5月中下旬に戦争関連法制上程(パッケージとして一括提出と言われる)し、両院に特別委員会を設置する。政府は法案審議入りすれば衆院80時間以上、参院はその半分の審議で強行採決ができると考えている。そのためには6月下旬までの通常国会を1~2ヶ月延長してでも成立をはかりたい意向だ。
9月には自民党総裁選がある。安倍首相はこれをクリアして、2016年夏の参院選で与党の3分の2議席の確保を目指す。その上で、16年秋の臨時国会で衆参両院で改憲原案を採決して、改憲の発議をする。
この場合の改憲原案は安倍にとって肝心の第9条からではなく、国会と有権者の支持が得やすいと思われる、環境権、緊急事態条項の加憲と、財政規律に関する条項などかで最初の改憲原案を作る。一定の周知期間を経て2017春から夏にかけて改憲のための国民投票を実施する、というものだ。安倍首相は2月20日の国会で「(改憲の)条件が整ってきた中で、これからはより幅広く議論が進み、どういう条項で国民投票にかけるか、発議するかという最後の過程にある」との答弁をした。
私たちはいま、改憲の「最後の過程」という戦後政治史最大の曲がり角に来ている。安倍政権が企てる「戦争する国」の道を阻止するかどうかの分岐点にある。
全力をあげてこれとたたかおう。戦後70年で戦後を終わらせてはならない。
この闘いにおいて、私たちは昨年、従来になく広範な「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」という共同闘争組織をつくり出した。そして今年の5・3憲法集会はこれより一層幅広い人々の結集で開催されようとしている。従来の「解釈で憲法9条を壊すな!実行委員会」も、密室での与党協議に抗議する連続行動を配置している。「許すな!憲法改悪・市民連絡会」も2月中旬、全国の仲間と共に、第18回全国交流集会を名古屋市で開催し、国会周辺の「総がかり行動」に呼応して5月からは各地で毎週の木曜行動を配置したたかっていくことを確認している。「九条の会」も近く、全国討論集会を開催し、7500箇所の会を活発化させて「戦争する国」に立ち向かおうとしている。これらが全力で闘えば、反戦平和の大きなうねりと世論をつくり出し、安倍政権の企ての前に立ちはだかることは可能だ。(事務局 高田健)
全国の仲間のみなさん 大変悲しいお知らせをしなければなりません。
1999年5月3日、許すな!憲法改悪・市民連絡会の結成以来、共同代表を務めて頂きました奥平康弘先生(東京大学名誉教授、憲法研究者、九条の会呼びかけ人)が2015年1月26日未明、急性心筋梗塞でお亡くなりになられました。
先生はこの間、市民連絡会の前進のため、常に激励してくださり、ご協力して下さいました。許すな!憲法改悪・市民連絡会の今日は奥平先生のご指導・ご援助なくして考えられません。
私は1月19日の九条の会の呼びかけ人会議でご一緒しましたが、元気に今年の安倍内閣の改憲暴走との闘いについて語っておられました。また、1月25日の東京「調布九条の会」の創立10周年集会では奥平先生は、今回の日本人人質事件について言及され、「ヨーロッパとアラブ社会の対立だけの問題ではない。日本は世界から見て戦争への道を進んでいるのに、安倍首相は積極的平和主義を主張する。これでは理解されない」と話されました。これは先生の命をかけた発言と受け止めたいと思います。
全国の仲間の皆さんにご報告し、先生の遺志を受け継ぎ、安倍政権の改憲の企てを打ち砕くたたかいをもって、応えたいと思います。
2015年1月30日 許すな!憲法改悪・市民連絡会事務局
去る1月26日、奥平康弘さんが亡くなられました。25日に、調布で開かれた「調布九条の会 憲法ひろば」の創立10周年のつどいのシンポジウムに参加され、帰宅された夜のことでした。
奥平さんは、日本国憲法とともに歩んでこられました。憲法が保障する人権が侵害され実現を阻まれる事態を告発し市民的自由の定着のために奮闘されました。1990年代に入り、自衛隊の海外派兵とそれを阻んでいる憲法の改変の動きが台頭すると、奥平さんは、憲法擁護の運動の先頭に立たれるようになりました。
1999年以来「許すな!憲法改悪・市民連絡会」の共同代表として活動される中で、2004年には、「九条の会」のよびかけ人の一人に加わり、全国講演会、全国交流集会に参加され、全国各地の九条の会講演会にも足を運ばれました。安倍政権による憲法政治の破壊に反対して2014年に設立された「立憲デモクラシーの会」の共同代表も務められました。奥平さんの晩年は、文字通り9条とともにありました。
奥平さんが危惧し声をあげた憲法をめぐる状況は、一層緊迫の度を加えています。安倍政権は、5月に集団的自衛権の行使を可能とし自衛隊を海外での戦争に参加させる立法を国会に提出します。戦後70年のいま、日本は大きな岐路に立っています。
奥平さんがその生涯をかけて実現しようとした憲法が危機にある今、私たちは、「奥平さんの志を受けつぐ会」を開くことを決めました。
来る4月3日午後、奥平さんが最後に壇上に立たれた調布のグリーンホールにおいて、奥平さんの志をともにする人々が集い、奥平さんを偲ぶとともに、その志を受けつぐ決意を確認し合いたいと思います。 みなさまのご参加を呼びかけます。
2015年2月 「奥平康弘さんの志を受けつぐ会」発起人
梅原 猛 大江健三郎 澤地久枝 杉原泰雄 鶴見俊輔 暉峻淑子 樋口陽一 山内敏弘 山口二郎 渡辺治
なお当日は、平服でお出かけください。
2月14~15日の両日、「第18回許すな!憲法改悪・市民運動全国交流会inなごや」が、名古屋市で開かれた。公開講演会は名古屋学院大学平和学研究会と同交流会実行委員会の共催により名古屋学院大学白鳥学舎曙館で開催され、地元や全国各地から110名以上が参加した。公開講演会は地元の山本みはぎさん(不戦へのネットワーク)の司会ですすめられた。開会の言葉は藤井純子さん(第九条の会ヒロシマ)が行った。つづいて名古屋学院大学平和学研究会を代表して、飯島滋明さんが歓迎の言葉を述べた。講演は「日本を『戦争する国』にしてよいのか? ガイドライン改定と戦争法案」と題して清水雅彦さん(日本体育大学教授)が行い、質疑応答も行われた。特別報告として内田雅敏さん(弁護士)が、「戦争する国と靖国問題」をテーマに30分ほど講演した。最後に高田健さん(許すな!憲法改悪・市民連絡会)が「これからの市民運動の課題についての提起」として、まとめと閉会をかねて発言し、公開講演会は終了した。(公開講演会は次号で詳報)
夕刻から翌15日午前までは、「名古屋働く人の家」に会場を移して交流集会が行われた。参加者60名ほどが、和室で膝を交えながら報告や意見交換を行った。
交流会司会の藤井純子さんから、「運動の発展の工夫と課題」「運動の協働の努力と課題」の2つのテーマで提起の後、できるだけ提起に沿った形で各地の状況報告も交えながら討議する方向が示された。
はじめに東京で活動する菱山菜帆子さんが、街頭宣伝行動について報告した。7月1日閣議決定の際、1万人が集まったが、押し通された。1万人では足りなかったのか。ある時、街頭宣伝が本屋の中でも聞こえた経験から、街頭宣伝は効果があるのではないかと思う。街頭宣伝をツイッターやフェイスブックで呼びかけ、初めは12人。多いときで102人集まった。5時間におよぶロングラン街宣も行った。街頭宣伝には「見守り隊」もいる。職業柄参加はできないが、「見守ること」で参加できる。歌を歌ったり、紙芝居を作って披露することもある。手作りなので、事前に集団的自衛権などそれぞれが学習してくるようになった。ツイッターやフェイスブックでアイデアを募ると返ってきたりもする。若い人たちは人の人権に無頓着。なぜなら、自分の人権が大切にされていないから。若者をこれから取り込んでいかなければならない。
茨城から参加した角田京子さんは脱原発署名活動について話した。日立製作所の「城下町」日立市で署名運動をしている。引っ越していきなり3・11、原発事故が起きた。縁だと思い、プラカードを作り、署名運動を行った。1000筆集めようと決心して始めた。毎週土曜日、必ず行った。24回目で1000筆を超えた。やめるわけにはいかず、続けている。日立駅前には原子力タービンが置かれている。日立市はその「おかげで」成り立っている、とされている町。署名活動は私たちの民主的な活動だと思う。手紙作戦も行った。81回目の時に、男性のお年寄りが加わるようになった。その後、のぼり旗を寄付してくれた人もいて賑やかになり、署名と協力者が増えた。地域の広報誌を見て署名を自宅近所で行ってくれた。すでに6031筆集まっている。目標は1万筆としている。
東京から参加の土井登美江さんは、1月17日、戦争政策に反対し、安倍政権にレッドカードを突きつけようと、赤色を身につけて国会周辺を7000人の女性が囲んだ行動を報告した。「運動は初めて」という弁護士や研究者が呼びかけた。当日は国会周辺にはじめて来たという女性も、また30年ぶりの運動参加者もいて、年令も経験も多彩な女性たちが声をあげた。一方で国民投票の前哨戦がすでに始まっている。「美しい日本の憲法をつくる会」が発足し、こちらも1000万人賛同署名を行っている。住所・氏名・電話番号を記入させるもので、国会提出はせず「国民投票運動」の名簿づくりだ。舞の海、神津カンナなど有名人が呼びかけ、街頭署名も行っている。これに対抗するのは「一人称の憲法運動」が大切だ。一人ひとりがどれかの条文を自分のものとすることだ。漠然とした不安はあるが、自民党の憲法草案など、改憲の動きを知らない人が多数だ。こうした層に働きかけていこう。
大阪の中北弁護士は運動の協働のテーマで提起した。清水さんの講演は、これからの反改憲運動に大いに参考になった。明文改憲の一里塚になるような危機的な状況で、市民が守り切れるのかが問われていると思う。多くの市民に安倍政権は嫌われている。世界的な視点ではとても普遍化できない政権。何とか止めていかなければ、と思う。市民の直接的な運動が明文改憲を止めることになると思う。国民投票で負ければ、安倍は一巻の終わり。そんな局面を作らなければならない国民投票をチャンスととらえたい。大阪では(1)止めよう改憲、、、。(2)九条の会。(3)9条9団体がつながり、御堂筋パレードをした。国会開会日に東京と連帯してデモをした。(4)戦争をさせない1000人委員会・大阪にも取り組んでいる。安倍政権を必ず倒そう。
広島の新田秀樹さん(ピースリンク広島呉岩国)は広島の取り組みを紹介した。戦後70年で安倍談話を出すと豪語しているが、その前に「市民アピール」を出す取り組みをしている。6月に「広島アピール」を作成する集会。8月4日~6日に行動をとる。6つの集会を連続的に行う。はずせないのが、今の沖縄の問題である。暴力的な行為、真相を掘り下げていきたい。広島や呉の市民でも基地のことを本当に知らない。呉は中期防衛大綱を見ると、戦争の最前線になる。呉に伊勢という護衛艦(ヘリ空母)が配置されている。なぜ、必要なのか。それを市民に訴えていきたい。横須賀には出雲が配備される。自衛隊最大の艦船である。海外作戦を念頭に入れているもの。呉にいる大隅、国東、下北も改修して強襲揚陸艦となる。自衛隊が海外で展開することになる。F35戦闘機は出雲と共に展開する。基地の現場から市民に伝えていきたい。岩国は沖縄の負担軽減になっていない。
東京の筑紫建彦さんは「戦争させない、九条を壊すな!総がかり行動」について報告した。これまで、日本の運動が一緒にできなかったが、ようやく共同行動ができつつある。安倍は特別委員会をつくり、2か月で決着をつけようとしている。5月中旬以降集会等を組んでいる。「戦争をさせない1000人委員会」「解釈で憲法9条を壊すな!実行委員会」「戦争する国づくりストップ!憲法を守り・いかす共同センター」が共同した。画期的である。「5・3憲法集会」も新たな5・3憲法集会として横浜パシフィコで行う。小さな運動も、大木のような運動も必要。一人が動くことが大切で、それがなければどんな運動も成り立たない。
問題提起の後、各地の報告や行動についてつぎつぎアイデアも出された。三重県の伊勢九条の会は憲法の歌のCDを作った。神奈川からは世論操作が想定される中で国民投票を迎えることになる。メディアを監視し、電話や苦情、良い報道に対する励ましが必要。また、安倍政権へのシール投票を計画し、憲法改正、原発政策、経済政策、排外派兵。新聞社や国会議員に届ける。政権への支持・不支持のインタビューも、目に見える形(木に葉を貼るなど)で行っている、など。
イラク訴訟を闘った池住さんからは、戦争立法が通ってしまった場合、秋くらいから、自衛隊が後方支援として税金を使って派遣される。平和的生存権が脅かされるとの思いで、裁判を起こす。全国に発信するので協力をお願いしたい。運動課題に幅があっても、基本的に同意できれば結集を目指している。戦後70年で8月1日に「戦後70年市民平和声明」はどうかという提起もあった。その後、戦争法が成立した時の訴訟について意見交換があった。運動の連携についても地域の実情を出し合いながら討議が続いた。
翌2月15日も、安倍政権の戦争法制強行成立の行程、自民党が狙う環境権、緊急事態、財政規律などのとりあえずの憲法改正項目、また若者への働きかけ、ツイッター、フェエイスブック利用、デモ文化の変化もなど、多岐にわたるテーマが出された。また、講師の清水雅彦さんからは、「左翼的な運動はマイノリティであるとの自覚をすべきで、少しの違いで批判に回るようでは勝てない。『自分とは関係ない』ではなく、自衛官や家族、テロ、みな自分たちと関連がある、と訴えていかなえればならないだろう。市民の声を目に見える形で表現すべきだ」などの指摘があった。
最後に高田健さんは、「今日以降の活動が大事だ。市民運動の役割が大切だ。独自の取り組みをしながら、互いに交流して頑張っていきたい。5月以降、毎週木曜日に行動する。全国各地でも一斉に総がかりの行動をしていくことの確認をお願いしたい」とまとめた。
交流会終了後、自衛隊小牧基地周辺のフィールドワークが行われた。関東からの参加者を中心に30余名が参加した。パック3を設置している自衛隊の岐阜基地を見学後、小牧基地と周辺の三菱重工などの軍事産業を見学した。小牧は航空自衛隊と民間空港が共用していて、その広大さと危険性の強さが印象的だった。基地周辺を熟知している不戦ネットの皆さんの案内のおかげで、現地状況の把握とともに名古屋の運動が身近に感じられる行動だった。(D)
高田 健さん(許すな!憲法改悪・市民連絡会)
(編集部註)1月17日の講座で高田健さんが講演した内容を編集部の責任で要約したものです。要約の文責はすべて本紙編集部にあります。
今日は「女の平和」、赤い色で安倍政権にレッドカードということで国会を7000人で取り囲みました。国会全体を2重にも3重にも重なる状態で取り囲みました。その中で私のような男性は5%いたでしょうか。ほとんどが女性で、運営もみんな女性がやった。これはかつてなかった運動だと思います。女性が直接行動で国会を女性だけで包囲した。反戦平和運動でこれだけ盛り上がったというのは歴史的なことだと思います。今日、この講座に来てくれているみなさんとご一緒できたことは非常によかったと思います。
今日は、安倍内閣に対して、今年どうたたかっていくのかというところにみなさんも関心をお持ちだろうと思うんですね。私は1960年くらいから反戦平和運動に関わり始めました。それから50何年間か、この日本国憲法、平和憲法のもとでそれを足がかりにしてずっとやってきました。その中でも今年はもっとも厳しい、もちろん60年安保とかさまざまな課題があって厳しい時期がありましたけれども、いよいよ戦後の日本国憲法そのものが問われるところが来た。たぶんみなさんも、これからどうしようかということで来られたんだと思うんですね。そういうところの話をみなさんと一緒に考えていけるようになればいいと思います。
簡単な自己紹介ですけれども、「許すな!憲法改悪・市民連絡会」の事務局をやっています。それ以外のさまざまな平和運動のネットワークに関わっています。例えば、全国に7500の「九条の会」がありますが、その事務局として大江健三郎さんなどの「九条の会」の活動を日常的に手伝っています。あるいはワールド・ピース・ナウというイラク反戦運動が盛り上がり、いまも細々とですが続いているんですね。そこの事務局の仕事もやっています。それから去年の初めに大江健三郎さんなどが呼びかけて「戦争を許さない1000人委員会」ができました。事務局次長ということで、そこの仕事も手伝っています。あるいは137の首都圏の市民団体が集まって「解釈で憲法9条を壊すな!実行委員会」という、これも1000人委員会に並ぶような運動体もつくられていて、去年の初めから、そのネットワークの事務局の仕事もしています。原発関連でいうと「さようなら原発一千万人署名運動」の事務局もやっています。
そういうさまざまな運動の中で、それらの運動を大きく統合して、共同してことに当たることはできないだろうか。その事をずっと仲間のみんなと一緒に考えてきました。いよいよ安倍政権がこんな事態になったときには本当にそれが求められていると思うんです。運動体の側がさまざまに分裂しているようではこの安倍晋三の企てを打ち砕いていくことはできない。幸い私はこの間いろいろな運動に関わってきたので、どことでもいろいろとお話もできる。そういう中でこの間の状況の問題について考えてきました。
最初に選挙の話ですが、あれから時間も経って選挙についての評価はみなさんの中でも定まってきているところだと思いますので詳しくは触れません。この選挙で考えなければいけないこととして投票日の翌日の、特に読売新聞、産経新聞は「与党圧勝」「自公圧勝」という見出しなんですね。これには参りました。やっぱり多くの人が与党が圧勝したという印象があって、考え込んじゃった人がたくさんいたと思います。今日も行動の中で会ったある地域の仲間が、選挙の結果を見てがっくりしましたという話をして、ただ「私と憲法」という会報に書いた私の分析をよく読んでくれたみたいで、最後まで読んでいくらかその当時の気分と変わったよと言ってくれました。あれは明らかにマスメディアのミスリード、ためにするリードだと思うんですよね。
よく見ると確かに自公は3分の2を取りましたから、私たちが負けたのは事実です。しかし決して「圧勝」などと言える結果ではないんですね。自民党は議席を減らしています。「維新の会」も選挙の直前から見るといくつかしか減っていないんですけれども、実はこの前の総選挙の54議席が41になっています。ですから維新の会も前の選挙から見ると大きく減らしている。例の「次世代の党」は、ほぼ壊滅的な打撃を受け、選挙前に「みんなの党」はほぼ壊滅した。さまざまに改憲を主張していた人たちが、この選挙を経て大きく後退したこともまた事実だと思うんですね。自民党も減らしましたけれども、それよりも自民党をまわりで支えていた、上智大学の中野晃一先生が言うところの「衛星政党」が惨敗したというのも非常に大きな、私たちが着目すべきところだと思います。
もう一点だけ、自民党の比例区の得票は有権者全体の17%しかないんですね、いわゆる絶対得票率です。小選挙区は24%くらい取っています。この差は種明かしすれば簡単な話なんです。小選挙区は公明党が自民党をほとんどの選挙区で応援したわけです。公明党は大抵の選挙区で6%~7、8%持っていますから、17に7を足すと24くらいになって、小選挙区で自民党が24%だったというのは極めてはっきりうなずける。自公の選挙共闘がどれだけ効果をあらわしてこの数字に出ているのかがはっきりします。棄権が非常に多いという問題は決して安倍さんだけの責任にするわけではなくて、われわれ自身も考えなければいけない問題です。しかしこの棄権も含めて安倍政権・自民党は有権者の17%しか支持を得ていないというのも、厳然たる事実です。
じゃあ他の党は何%かと言えば、これはきりがないわけです。もっと少ないわけですから。しかし政権党は少なくとも17%しか支持を得ていない。そういう安倍政権が独走しようとしているところも見ていく必要があります。選挙の評価はいろいろとやらなければいけませんけれども、議席や数字だけではそういう問題があります。
もうひとつ大きな問題があります。安倍さんはこの選挙で有権者の支持を得たので、このあと例の閣議決定の具体化、それから憲法「改正」だと言うわけです。この選挙で自分たちは支持を得たといっているんですね。これは本当に大嘘です。この総選挙で安倍さんは、閣議決定した集団的自衛権のことを正面から訴えた節はほとんどありません。まして憲法改正―改悪をやることも、正面から訴えていません。彼が言っていたのはほとんどがアベノミクスなんですね。それで「この道しかない」と言ってきたわけです。笑い話ですけれども、「この道しかない」というのはサッチャーさんの「There is no alternative」のパクリです。それからアベノミクスもレーガンの「レーガノミックス」のパクリですね。パクリふたつを使ってこの選挙をやる。まわりに知恵者はいないのかと思うようなスローガンで安倍さんは選挙をたたかって、そして多数の議席を得た結果、そのあと何でもやってもいいかのような言い方をしている。
選挙をやる前に菅義偉官房長官は、この選挙で集団的自衛権とかそういうものは争わないと言った。政策は自分達が選んで国民に提供するといって、アベノミクスを訴えたわけです。ですから今度の選挙では、非常に大きな自民党のペテンがあります。これは朝日新聞の調べですが、公示後の安倍さんの演説が74回やられたうち、集団的自衛権という言葉を使ったのはわずか13回。言葉ですよ、いろいろな演説の中で集団的自衛権に触れたのが74回中13回だというんです。この問題を安倍さんは有権者にほとんど訴えていないんです。それなのに選挙が終わったら、もう支持を得たから自分達は集団的自衛権の行使に走って当然だという主張をしているのが非常におかしいんですね。今度の選挙の大きな問題点だと思います。
実は、今度の選挙はおかしい、原発の問題も正面から取り上げられていない、集団的自衛権も取り上げられていない、格差貧困の問題をどうするんだということでいろいろな運動体が共同で記者会見をやりました。争点隠しだということです。それほどひどい選挙が今回はやられたと私は思っています。そういう意味では非常に欺瞞的な選挙戦略で今回の選挙がやられて、その結果得た安倍さんの3分の2の議席です。
今回抜き打ち解散でした。彼は時期とか野党が準備できていないとかいろいろなことを考えて、いまやればなんとかいけるという計算のもとにやった。そして非常におかしいんですが、目標は過半数なんていうことを以前から宣伝した。結果は過半数どころか「圧勝」になってしまった。前回からわずか2年しか経っていない時期に、なぜ今回の総選挙をやったのかという狙いも非常にはっきりしてきたと思うんですね。普通はあれだけ多数の議席を持っていたら4年いっぱいやるのが当たり前です。ところが2年で解散をした。安倍さんはどうやって長期政権をつくるかということに必死だったわけです。最近は、自民党の規約を変えてでも3期9年まで任期を延長したいと言い出しています。だから安倍さんは計9年やろうとしている。そこまでの任期を確保することによって最終的には明文改憲まで、その過程で日本を戦争する国に持っていく、そのためにどうするかという今回の抜き打ち解散だったんですね。この点では安倍さんは見事に成功したと私は思っています。
安倍さんは改憲に向かって、あるいは戦争する国を実現する方向に向かってさまざまに動いています。しかしこれだけ多数の議席を取ったからといって、安倍さんにとって必ずしも有利に進んでいない。いま大きな矛盾に安倍政権がぶつかっているのはご承知の通りです。ふたつあります。政権政党内の矛盾、対立の問題、それから日本とアメリカの矛盾、対立の問題です。これがいま安倍さんが進めようとする、この国を戦争する国にする点で非常に大きな困難になってきています。
政権政党内の矛盾は自公の矛盾ですけれども、これも去年を見るとおかしなことがいっぱいあるんですね。5月15日に、もう何年にもわたって安倍さんが準備してきた安保法制懇に報告書を出させました。北岡伸一などを中心に学者たちがこれからの安保法制はどうすべきかという答申を出した。普通は答申を出せばそれを受け入れて政策化するはずなのに、安倍さんは、一部しか受け入れないという表明をしてしまった。あのときは私もびっくりしました。これは安保法制懇の人たちは本当に腹が立ったと思うんですね。安倍さんにこういう方向でまとめろと言われてつくってきて出したら、これは頂きますけれども全部じゃないよと言われたわけです。
そして7月1日の閣議決定の時。このときも、集団的自衛権に関しては彼らの言葉で言えば「限定容認」ですね。「限定」かどうかというのはいろいろな議論をしなければいけないんですが、少なくとも安倍さんは集団的自衛権に関して限定的に取り入れる、限定的に容認すると言った。これもこれまでの安倍さんの方針と違うんですよ。安倍さんは、集団的自衛権を行使できる日本にするとずっと言ってきたのに、7月1日時点では限定容認になった。5月15日で一部取り入れ、そして7月1日に限定容認と打ち出してきている。この背景は公明党問題です。
公明党とどう折り合うかで安倍さんは、渋々安保法制懇の方針を一部取り入れ、あるいは限定容認にすることに踏み切らざるを得なかった。公明党がずっと抵抗したわけです。公明党の背景はご存じの通り創価学会です。創価学会、特に婦人部と青年部の中は非常に平和的志向が強いといわれている。もともと平和の党として出発した政党ですから、そこからそう簡単に切り替えができないんですね。特に青年部、婦人部はそういうことを引きずっている。そういうことが公明党に反映して、安倍さんが言うことに100%ついていくようなことがあれば、公明党は持たない。公明党は必死でこの間抵抗してきたわけで、最後は公明党と折れ合ってああいう方針を出した。
なぜこんなに公明党を大事にしなければいけないかというのは、さきほどの選挙結果ではっきりしていますね。公明党がいないと小選挙区で24%も取れないんですよ。小選挙区ですから1位にならなければいけないわけです。公明党の支持がなかったら落選したであろう議員を洗ってみると面白いと思うんですね。自民党にとって今の議席は公明党の支持がなければ取れない。次世代の党の石原さんとか維新の会の橋下さんなどは、公明党の替わりに自分達の議席で改憲できるようにするから、公明党なんかいらないじゃないかと言うわけです。そんなに自公連立にこだわらなくても大丈夫だと言うんですが、大丈夫じゃないんです。地域基盤は非常に弱い政党ですから、あそこが支持すると言ったからといってもどれだけ自民党に票が回るかわからないんですね。だからいまの自民党も、簡単に乗り換えることができない。そういう状態があるので、公明党があれこれダダをこねることに対しては、一定程度とにかく聞いたふりをしてなだめなければいけないという経過があって、これはいまでも非常に深刻な問題です。
この連休明け以降に出るといわれている一連の戦争関連法制ですが、年末に概要が出るはずだったんですけれども出ない。出せないんです。安倍さんが、本当はこういう法律にしたいというものがあるんですけれども、そのまま出せば公明党から反撃が来る。足を引っ張られる。だから、発表できないんです。ずるずる伸びていて、統一地方選挙が終わってから出すというんですね。地方選挙前にやると公明党の支持に影響するからと。じゃあこういうウソをついていいのかということですよ。黙っていて、選挙が終わったら「実は」なんてやるなんて、そういう政治がいまこの国では成り立っていますが、そういうことで公明党の抵抗があります。
もうひとつは日米間の問題です。もともと今度の日米ガイドライン再改定は日本政府からアメリカに申し入れたものです。すでにガイドラインはあるわけです。アメリカはいまのガイドラインで間に合うんじゃないかと思っていた節があります。でもせっかく集団的自衛権について政府の解釈を変えるという大きな仕事に踏み切ったから、これは日米ガイドラインにもそれを反映したいということが日本政府の狙いで、改定を申し入れた。これも、去年の暮れまでにやる予定だったのが未だにできていない。ついこの前までは3月くらいにといっていたのが、いまは連休明けということになっています。ちょうど一連の戦争関連法制と日米ガイドラインの改定、がほぼ同じ時期に出されてくる状況になっています。
これはアメリカと日本政府の考えが違うんです。アメリカにすれば改定しようとよく言ってくれた。集団的自衛権を行使できるようになったんだから、もっともっとアメリカに対して軍事的な協力をやって下さい。私のところはいま非常に財政が困難で、全世界的に軍事展開するのに困っている。せっかく安倍さんが申し入れてくれたんだから、ぜひやってくれ。その中味が去年中間報告というかたちで出ました。アメリカが今度のガイドラインで書いてもらいたいことを日本政府と話し合って、中間報告、最終報告の時にどうなるかということの概要を出したんですね。
問題はその中味です。アメリカから要求されて日本政府が合意した中間報告には、公明党が到底このままでは受け入れがたい項目がいっぱいあります。どの範囲までアメリカと軍事協力をするのかという問題がいっぱいあるわけですね。アメリカはあなた方から言ってきたことなのにここに来ていろいろと渋るんですか、話が違うじゃないかということは当然あるわけです。日本政府の中でもっときちんとまとめなさい。公明党がああだこうだと言ったって、それは安倍政権の責任じゃないかとアメリカは言いたいわけです。この矛盾が非常に深刻にあって、なかなかガイドラインと戦争関連法をうまく進められない。
10月8日に日米が合意したガイドライン再改定の中間報告についてです。あらためていいますと、ガイドラインというのは国会の承認はいらないんです。これだけ大きな日本とアメリカの安保運用の方針を決める大変な問題は、日米の当局が合意すればOKです。あとは日本の閣議でそれで結構とやればいい。国会での審議は条約じゃないので原則必要ない。そういうものですけれども―10月8日に決めた中味は「日米同盟のグローバルな性質」を強調して、ですから地球規模の日米同盟という考え方ですよね。日本とアメリカの軍事同盟は地球規模の範囲でやろう。自衛隊の海外派兵についても、公明党と問題になっている日本周辺に限るという話ではなくて、グローバルな規模で自衛隊の海外派兵をやって下さい。いままで戦闘地域には自衛隊は出さないと言ってきたことに関しても、戦闘地域での米軍支援、戦時の後方支援もやりましょうとか、だいたい日米政府の間で、中間報告ではいったん合意しているわけです。
これにいま公明党が文句を言っています。全国で公明党の幹部は自分の創価学会の人たちに、「そう簡単に妥協しないから。公明党はブレーキ役なんだ」ということを一生懸命に言っていますね。どういうブレーキになるのかよく見ておかないといけないんですけれども。創価学会の人たちは、「うちの党はそういう大事な役割をしているんだ。戦争に突っ走ることに対してうちの党はブレーキをかけている。そういう党なんだ」と思って、統一地方選挙で「平和の党だ」、「公明党は大事だ」、「福祉もやるこの党を」、という宣伝を進めている。ですから日米間の矛盾あるいは政府間の矛盾がかなり深刻になっていて、安倍さんはこれで行くということをなかなか出せない状態になっています。
ただ最近の話では、戦争関連法について4月28日に閣議決定をするという情報が出ていますね。4月26日が統一地方選挙の2回目の投開票日です。その2日後に閣議決定をする。閣議は一般的には火曜日と金曜日に開かれますが、28日は火曜日ですね。この日に一連の戦争関連法制案を閣議で決めて、連休明けに国会に出すことがかなり濃厚になっています。ただこれは最短でということで、公明党との問題だとかアメリカの問題がそれまでに解決できるのかどうか、そこは本当にわからないと思います。安倍さんが28日にやりたいと思っていても、実際にはできない可能性は非常に強いと私は思っています。
昨年7月1日に閣議決定がされて、日本は憲法のもとで集団的自衛権を行使できるということに踏み込んだわけですね。ところが、いままであるさまざまな戦争に関係する法律、自衛隊や安保に関する法律は集団的自衛権が行使できません。それを行使すると憲法違反だという政府の解釈のもとでつくられてきた法律です。集団的自衛権は憲法違反だということが前提になった法律しかないんですね。これは安倍政権にとっては非常に困るんですね。閣議決定をしたからすぐに戦争する国になってしまうわけではない。これらの法律を変えないと、実際には集団的自衛権を行使する自衛隊になれないという深刻な問題があります。これはいろいろな資料がありますが、とりあえず福島みずほさんのメールマガジンから引っ張り出して参考までに並べておきました。福島さんのところでは戦争に関係する法律は18本だと言っています。いろいろな数え方があるんですが、その中でどんな法律を変えないと海外で戦争をする自衛隊になれないかという棚卸しがここに書いてあります。
【戦争関連法制】内閣官房の資料では次のようになっている(福島みずほさんのメルマガより。下線は高田)
これらの法律を一つ一つ変えていく作業を自民党、安倍政権は5月以降に始めるわけです。ところが、PKO協力法という法律はいくつかの国会をまたがって大論争になった法律です。そういう法律がずらずらと5月から、通常国会はだいたい6月下旬まででこれをやってしまうという話です。とんでもなく乱暴な、立憲主義に反するといったらこれほどひどい話はない。憲法に直接関係するこれだけの問題を、1ヶ月半か2ヶ月の間で修正しちゃうという。本来18本あったら18回の国会を過ぎないと、5年も6年も国会を経ないと達成できないような法律なんですね。安倍さんはこれをやっちゃおうとしているんです。この多数を得たかったわけです。安倍さんはアベノミクスを口実にして議席を手に入れましたけれども、その議席でこれだけ大問題の法律を一挙にやっちゃおうとしているのがいまの状態です。
しかし常識から考えてできないですよね。たった2ヶ月弱で、ちゃんと法案の説明をして、質問も受け説明もし、という審議をやることはできない。それでいま言われているのは一括法という法律でやっちゃおうという、本当に奥の手なんです。これもひどい話です。昔、地方分権一括法なんていうのがあって、膨大な法律をまとめてしまって、ひとつの法律の中でああだこうだ書いてあるんです。一括ですから、出してしばらく野党の意見を聞いて、「はい、終わり」と強行採決を一回やってしまえばいいわけです。その一括法でやろうという話が去年から出ているんです。こんな大きな問題を短期間でできないというのは最初からわかっていることですから、今度の国会で安保法制関連一括法案のような格好で出てくる可能性があるんです。
法律の修正だけではなくて、いままでの法律をいくつか廃止して新しい法律をつくらなければいけないという問題もあって、修正法と新法を作るというふたつの問題があるので、最低でもこれらについては審議をしなければいけない。どんな新法かというと自衛隊海外派兵のための新法です。恒久法と言われます。一般法と書く新聞社もあります。自衛隊はいま海外に出すときには、日本国憲法のもとで特別措置法をつくるわけですね。この自衛隊の派遣というのは特別の措置だ、平和憲法のもとではそう簡単に自衛隊を外に出せませんから一定の期間を決めてこの期間だけ出します。それからどこに出すかというのも限定してイラクの非戦闘地域に派遣すると決める。いままでの自衛隊の海外派兵は全部それです。
ところが今度の日米ガイドラインで話されているようなことをやろうとすると、そんなことをやっていたら間に合わないわけです。アメリカの戦争を手伝わなければいけないのに1個1個全部特別措置法をつくらなければいけなくなる。イラク特措法はありましたが、例えばイスラム国特措法とかイラン特措法とかいっぱいつくらなければいけない。その都度国会で非常に揉める。いま安倍政権が考えているのは恒久法をつくろうとしています。これは、いつでもどこへでも自衛隊を出せるということです。「いつでもどこへでも」なんです。いままでの特措法は「いつでも」ではないんです。1年間とか2年間という限定付き、憲法違反に属するような大きな問題だからいくら何でも1年だけだよということにして、それを少しずつ延長するやり方です。「どこへでも」では、イラクだけではなくて自衛隊が必要とあれば政府の決定で紛争地域にでもどこへでも出せる。その法律を1本つくっておけばこれは魔法の、すごく便利な法律ですよね。最近の話は地球の裏側でもということで、一時は地球の裏側には行かないなんて言っていましたけれども、そんなことはないんです。どこでもアメリカが戦争をやっているところに、恒久法として自衛隊を派遣できる。この法律を今度の国会でつくろうとしているんです。
大きく分けて問題がふたつあるんですね。ひとつは現存のさまざまな戦争関連法の修正――改悪。さらに派兵恒久法――たぶん名前として派兵恒久法といっておいた方がいいと思うんですけれども、政府は「国際協力ナントカ法」とかわけのわからない名前を付けてくると思うんです。私たちの方からは派兵恒久法と呼んでおく。秘密法とか盗聴法とかいろいろな名前を付けてくるわけですが、そういうものを今度の国会で出そうとしてきています。
この法律について1個1個やっている余裕はないので、自衛隊法関連のところだけ分析してみたいと思います。自衛隊法でどんなところを今度の閣議決定にそって変えようとしているか。法案自身は彼らが準備して、たぶんできていると思うんです。発表しないのでわかりませんが、例えば自衛隊法第3条があります。自衛隊の任務について書いてあるものです。自衛隊は「直接侵略及び間接侵略に対し我が国を防衛することを主たる任務とし」と書いてある。「必要に応じ、公共の秩序の維持に当たるものとする。」これは内乱条項に該当していくようなものです。デモとかそういうものについて、もし警察権力で統制できなくなれば公共の秩序の維持のために自衛隊も出動できる任務規定です。
しばらく前に自衛隊法を変えたときは、ここだけがはっきりしていたんです。第3条の第2項の1と2は、「一 我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態に対応して行う我が国の平和及び安全の確保に資する活動」、そして付け加えられたのが「二 国際連合を中心とした国際平和のための取組への寄与その他の国際協力の推進を通じて我が国を含む国際社会の平和及び安全の維持に資する活動」です。国際協力に対しても自衛隊が行動してもいいということになったんです。たぶん今度の法律の改正=改悪では、ここがさらに集団的自衛権行使――これが自衛隊の基本任務のひとつになると思います。これを入れないと閣議決定とつじつまが合いませんから自衛隊第3条は変えてくると思います。
それから76条がですが、これも関連して集団的自衛権を行使できるということになっていくと思います。それから82条では、例えば弾道ミサイル等に対する破壊措置という話があります。こういうのを入れる。例えば北朝鮮からアメリカに向かって飛んでいくミサイルに対して、それを破壊することは自衛隊の仕事であるという規定を何らかの格好で入れてくると思います。さらに84条の4では、後方地域支援という面倒くさい問題が書いてあるんですが、これはやめるといっているんですね。後方支援に変える。つまり地域限定がなくなるわけです。そういうかたちで自衛隊法を変えることになっています。88条に関して言うと、ここでは武力行使はわが国の防衛だけではなくて、集団的自衛権行使の場合も武力行使ができると変えなければいけなくなります。などなどいろいろ言っていくと、いまの法律がたくさんのところで7月1日の閣議決定と矛盾するところがあって、それを1個1個全部修正案を出す提案をしてくると思います。これら膨大なものが出てくるわけです、他の法律も含めて。
この間よく言われていることをもうひとつだけ付け加えておきますが、東京新聞の半田滋さんが言っているんですが、5月15日でも閣議決定のあとでも持ち出した2枚のパネルがありましたよね。お年寄りとか子どもがアメリカの軍艦に乗って避難をしてくるときに、日本がこれを支援できないのはおかしいでしょう、こんなかわいそうなことをやるわけにはいかない。自衛隊は当然アメリカ軍の支援をしなければいけないといった。でもこれは、いま変えようとしているガイドラインにこのことは確かに書いてあるんです。それぞれの紛争地からの避難の任務は、それぞれの国の部隊が責任を持つと日本とアメリカとで取り決めています。例えば朝鮮半島にいる日本人をアメリカ軍が引き上げてくるというのは、日米ガイドラインからしてあり得ないんですよね。
この間の経過とも事実とも違うことをああいうパネルをつくって、かわいそうでしょう、大変でしょう、だからどうしても今度の法律変えなければいけないんです、集団的自衛権を使えるようにしなきゃいけないんですという説明をするんですが、安倍さんのこれは大ペテンなんです。インターネットでガイドラインで調べると「避難について」という項目でわかりやすいところに出ていますので見て下さい。いずれにしてもこういうさまざまな法律を今回は一括法というかたちで提案してこようとしているのがいまの安倍政権の狙いです。
もうひとつ大きな問題があります。はっきり選挙後に出てきたのは、憲法そのものも安倍政権のもとで変えるという主張ですね。集団的自衛権を行使できるようになった、戦争ができるようになったんですが、さきほどの限定容認などに見られるように、それでも憲法9条は邪魔なんですよ。憲法9条のもとでは、自由に晴れ晴れとして日本を戦争する国にできないという問題があって、最後は憲法を変えなくてはダメだというのが安倍政権の認識なんですね。彼らは戦争関連法をやりながら、あわせて憲法を変える準備をするというのが、とりわけ選挙後非常にはっきりしてきた考え方です。
明文改憲行程表と書きましたが、最近「美しい日本の憲法をつくる国民の会」というのが非常に活発に活動していて、もしかしたらみなさん見たことがあるかもしれません。新宿の南口で派手派手な署名活動をやっています。例えば一千万人署名運動なんですね。どこかで聞いたような名前なんですが、この署名簿を見ると驚きます。どこに提出するものでもないんです。署名は普通、衆議院議長様とか参議院議長様とか、あるいは内閣総理大臣様とかあるんですが、これは違うんです。署名簿に電話番号を書くんです。私も見てびっくりしました。何のことはないこれは工作名簿です。この会がこれから改憲に向かっていま名簿をとっておいて、いざ国民投票となったときに片っ端から電話で改憲に賛成して下さいという説得ができる、住所も取ってありますから訪ねていくこともできる。そういうことのための名簿を一千万人集めるということで、すでに始めています。その一千万人を足場にして三千万票を取ると言っています。三千万票とれば改憲国民投票で勝てるというのが彼らの判断です。こういう動きがすでに出てきています。
それから都道府県の県議会レベルで改憲決議が何本も出始めています。これも活発にやられています。この「美しい日本の憲法をつくる国民の会」の人たちはターゲットを次の参議院選挙と言っています。ですから来年です。彼らは来年の参議院選挙の時にあわよくば第1回目の改憲国民投票をやりたいと思っているんですね。国民投票と国政選挙を一緒にやることは法律的には可能ですから、それをやりたい。そこに向かっていま必死に動いています。ただその動きがあまりどんどん進んでいるものですから、先日官房長官はいくら何でも来年の選挙の時に改憲の国民投票をするのは無理じゃないかなと言っています。しかしそれくらい非常に具体的に日程を設定して、彼らは改憲国民投票に取り組もうとしているということです。やり方も非常に具体的ですよね。櫻井よしこなどがやっています。
憲法審査会が衆議院、参議院にあります。衆議院の憲法審査会の自民党のリーダーは船田元という人です。この船田が彼らの構想などを憲法審査会で発表しています。市民連絡会は憲法審査会をほとんど毎回10人とか15人の仲間で傍聴しているんですが、非常に具体的に明文改憲に向かって彼らが準備をしていることがよくわかります。、改憲というのはいまの憲法を全部変えるか変えないかという法律はないんです。自民党の憲法草案という対案がありますが、これを出してどちらがいいかという憲法全取っ替えの国民投票はできないことになっている。変えたいところを具体的にいくつか挙げて、それについて賛成か反対かとするしかないんです。
船田さんが言うところでは「改憲発議は、国会法68条の3の『憲法改正原案の発議に当たっては、内容において関連する事項ごとに区分して行う』という個別発議の原則にしたがい、憲法改正は1度に全て行うのではなく、何回かに分けて行う。」となっています。憲法改正は1回で全部をやることはできない。だから今回の国民投票ではこの項目とこの項目とこの項目、せいぜい3つだと思いますね、常識的に考えて。3つくらいのことを挙げてここをこういうふうに変えますということを国民投票にかけて国民の賛否を問うというやり方しかいまの法律ではできない。それをやるというんです。
船田がここで言っているのは、であるならば最初の国民投票を何から始めるか、どこから始めるかということが非常に大きな問題になる。どの項目から改憲をやりたいと国民に提案するか。本当は優先度が一番高いのは9条だと自民党は思っているわけです。でも9条からやったら負けるのがほぼ確実です。世論でも9条は変えないというのは圧倒的に多いんですね。ですから9条を変える国民投票をやっても今のままでは勝ち目はない。それはあの人たちもわかっています。勝ち目のあるところから始めたい。どうするか。それで船田さんが言うには「(優先度の高い9条から始めるのではなく)多くの政党の共通の関心事項である環境権、緊急事態、財政規律などが適当だ」というんです。
国会の中にはいま10個くらいの政党があるんですが、そのうち明確に改憲に反対と言っているのは、社民党と共産党しかいない。生活の党とか民主党の中ではいろいろな条件があって、こういうときに反対だということになりますから、これを反対に分類することもできますが、大多数の政党から支持されるところから始めたいというのが船田さんの考え方です。他の党もみんな賛成してくれそうなのがこの「環境権、緊急事態、財政規律」だ。ただし船田さんが考えるには環境権と言ってもいろいろある、緊急事態も難しいということでいろいろと言っている。共産、社民はもうしょうがないと自民党は思っているわけです。残りの党がみんな足並みをそろえてやれるような改憲提案を、できるだけ近いうちにやりたい。
足並みをそろえるだけではなく、これであれば国民が支持するだろうというものでやりたい。改憲国民投票を提案して、もし否決されたら大変です。政権が吹っ飛びます。当然政権の責任を問われますから、いい加減に出せないんですね。いくら乱暴な安倍さんでもそう簡単に出せない。勝てると思ったとき以外には出せない。私は近くありそうだという話をしていますが、それがあるのは安倍さんがこれで勝てると踏んだときです。だから、まずわれわれがしなければいけないのは、勝てると踏ませないことです。そんなものを出しても負けますよという世論をつくっておけば、明文改憲の提案などは出てきません。
いろいろな改憲論で今年の後半から論争になるだろうという点をいくつかあげます。菅義偉官房長官は「憲法改正で最初に取り組むテーマとして、環境権を創設することや、私学助成が違憲の疑念を抱かれないような表現に変更すること―これは船田さんの言う財政規律のことですね―」などを挙げています。「環境権、緊急事態、財政規律」などから国民投票をやれば多くの国民から支持されるかなということで、彼らの理屈のでたらめさをここで確認しておきたいと思うんです。
環境権は憲法に書かれていないので、これはどうしても必要なんじゃないか。いまの憲法の重大な弱点だからこれはやらなきゃいけないというのが自民党の意見です。これは公明党も賛成しています。変えるんじゃなくて加えるならいいというのが公明党の意見ですね。すでにあるものに何か加えたら改憲だろうと思うんですけれども、公明党の論理ではそれは「加憲」なんです。
環境権について、なぜこの間いろいろな憲法学者とか私たちの運動体がいちいち環境権を憲法に加えろという主張をしてこなかったのか。だいたい環境をあまり守ってこなかった人たち、環境を壊そうとしてきた人たちが、憲法に環境権がないのは問題だと騒いでいること自身が絶対眉唾です。私たちがどういってきたかというと、確かに環境権という言葉そのものは憲法にないけれども、憲法13条の幸福追求権と25条の生存権、これを運用することで実際に環境権はいくらでも保障できる。これまでの環境権のたたかいは、全国の市民が地域でがんばってきた。具体的にそれらの運動をしてきた人たちは、この13条と25条を根拠にして裁判闘争も含めてやってきたわけです。そういう意味では文言が書いてあろうがなかろうが、なんの不都合もない。現実に環境権を保障するたたかいはやれるんです。
そのほかに新しい人権が足りないとか自民党は言うわけです。例えばプライバシーについても書いてないじゃないか、あるいは知る権利についても書いてないじゃないか、犯罪者の権利ばかり守って犯罪被害者の権利を保障していないのはおかしいとか、いかにも聞いた風なことを言うんですけれども、あえて憲法にいま付け加える必要はない。いまの憲法に弱点があるということで実は憲法9条まで持っていこうとする、そういう搦め手からの改憲の動きについて私たちはこれまで批判してきました。
2番目の問題は財政関係で、裁判官の報酬という問題があります。これは憲法80条との関係です。判決を出した裁判官が、とんでもない判決を出したということで、あいつの給料を下げちゃえなんていうことを政治家に勝手にやらせないために、裁判官の報酬は勝手に下げることはできないということが、いまの日本国憲法80条の考え方です。裁判の独立を保障する意味で、そういう財政の考え方になっています。
ところがこの前、国会の決定で勝手に下げちゃった。これは憲法が悪いというんですよ。公務員の給料が下げられているときに、何で裁判官だけ下げないのか、これはおかしいと。これも何となくふむふむと思わされる論理です。裁判官だけ特別にしておくのはおかしい。公務員の給料が下げられるときには裁判官の給料も下げましょう、という憲法違反を実際にやったんです。そうせざるを得ないほど、憲法で裁判官の報酬を保障していることはおかしい。だから改憲の必要があるという理屈です。
同じく財政に関係して私学助成のことも、改憲派が必ず言ってきます。いまの憲法がどんなにおかしいかという理由で。これは憲法89条ですが、「公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない」。公の支配に属していない教育とか私学に国家財政を出してはいけないと憲法に書いてあるのに、実際には私学助成をやっている、憲法違反をやっていると。改憲派に言わせれば、私学助成は必要だというわけです。だからそういうことをやってはならないという憲法がおかしいということで、これも必ず改憲の材料にしてくるはずです。
「公の支配に属しない私立学校」と言いますが、実際には私立大学は学校教育法などによって文科省の統制を受けている。だから必ずしもこの89条には該当しないというふうにして運用してきたんです。だから、いまあえて急いで変える必要はないというのが、この間の憲法学者たちの考え方です。これを取り上げることで日本国憲法は現実から見て遊離している、だから変えましょうという論理で来る可能性があります。
「緊急事態条項を加えよう」というのは、この前の東日本大震災などが使われるわけです。あの大震災に対して、民主党政権がうまく対応できなかったというわけです。その理由は、憲法の中でこういう緊急事態にどう対応するかという規定が明確になく、その中でさまざま法制がつくられていないからだ、というのが改憲派の人たちの主張です。これからも自然災害があり得るから、憲法に緊急事態が起きたときにはどうするかという項目を入れておくべきだ。これも聞いているとなるほどなと思わせるような雰囲気のところなんですね。国民投票をやったときにこの宣伝をバンバンやれば、そういえばそうかなと思う人もいるかもしれない。ただし日本国憲法になぜ緊急事態条項がないのかということから考えなきゃいけないんです。
戦前にはあったんです。大日本帝国憲法にはこれに該当する条項があります。そのもとで軍事政権が緊急事態条項に大権を集約して戦争に持っていったわけです。その反省がありましたから、いまの憲法をつくるときに戦争に結びついた緊急事態条項は全部廃止する、という考え方に立っていまの憲法をつくったわけです。ですから緊急事態条項がないというのは、日本の歴史的な経過の中でつくられてきた問題です。緊急事態条項というのは非常に危ないことで、もっとも民主的だと言われたワイマール憲法のもとで、あのナチス、ヒトラー政権が登場してきたのはなぜか。ヒトラーは直接暴力によって国会を支配したんじゃないんですね、最初は。ヒトラーはワイマール憲法のもとで、それにもとづいてというかたちで台頭してきた歴史があります。そして緊急事態条項、全権委任法をつくることによってヒトラー政権に全権を委任する=自分達が好き勝手ができるようにすることでファシズムを進めていった経験も私たちはしているわけです。
この緊急事態条項を入れるかどうかは非常に大きな問題です。東日本大震災に菅直人政権がうまく対応できなかったとして、果たしてそれは憲法に緊急事態条項が書いてなかったからなのか。こんなことはすぐわかることです。実際には災害対策基本法とか大規模災害復興法とか、こういうことに対応する法律はいくつもあります。もしそれに弱点があるなら、これらの法律を補強すればいいわけです。これは国会でいくらでもできます。だから東日本大震災が起きたときに日本政府がうまく対応できなかったのは、憲法のせいだ、憲法に緊急事態条項を入れなきゃいけないという論理は非常におかしい。
あわせて大変な問題は、災害をダシにしながらこれは戦争も想定しているということです。いまの自民党が緊急事態というのは、災害だけじゃないんです。実は一番考えているのは戦争の問題ですよね。戦争の時にどうするか。いまNSCに全権を一任していくような流れがどんどんできています。4人の大臣によって安保外交防衛問題が何でも決められる体制になりつつあります。これも緊急事態、まわりの国との戦争状態が起きた場合に対応できる方法としてやられようとしています。この緊急事態条項加憲論というのも、今回出てくる可能性があります。
ですからいま申し上げたようないくつかについて、こんなに日本国憲法は足りなくておかしいんだというキャンペーンが一斉にやられてくるだろうと思います。「美しい日本の憲法をつくる国民の会」を含めて、自民党、公明党の支部全部が総力を挙げてこういう説明をしてくると思います。日本国憲法はどんなにおかしいか、なぜいま変えなければいけないのかという説明をしてきます。私たちもそれに対して反撃をしていく必要があって、いまから準備が必要です。もうすでに日程的にも彼らの頭の中に入ってきているものですから、これは考えておかなければいけない問題だと思います。
安倍政権は3分の2の議席を持っているから、何でもできてしまう。いま実際そうやっています。しかし日米間とか公明党との矛盾などを話してきたように、準備万端整っているという状態ではない。そこを見ておく必要があると思います。第1次安倍政権はあっという間に倒れた。小泉政権の時に圧倒的な支持を得ていた自民党政権、それを引き継いだ安倍政権があっという間に倒れた。施政方針演説をやって1週間後くらいに投げ出すという、ものすごく無様なことをやったんです。わたしは政治闘争というのは、こういうことがあり得ると見ておいた方がいいと思うんです。安倍さんはそんなに強い人じゃないことも、またはっきりしていると思います。だから安倍さんがいま目指しているものに対して、安倍さんに大きな困難がある状態をどうやってつくるのかということが、私たちの当面の大きな課題だと思うんです。
その場合に第1次安倍政権を投げ出した原因は、あの時も非常に特徴的でしたが世論と日米関係でした。アメリカがなかなか安倍政権を信用してくれなかった。「軍隊慰安婦」の問題を含めて、安倍さんがナショナリスティックな主張をすることに対して、アメリカはこれは危ないと、日米の矛盾があの当時非常に激化していました。それから安倍さんはあの当時、憲法9条を変えると言っていました。当時は憲法を変えるという割合は世論の中では多かったんですが、安倍さんが公然と憲法9条を変えると言い出した中で、全国の世論が短期間に急速に変わったんです。
2004年に九条の会ができて、各地で毎年1000とか2000ずつ全国で広まった。九条の会だけではなくて、憲法を生かす会とか憲法行脚の会とかいろいろな運動体ができて、安倍さんの動きに一斉に反撃に出て世論が急速に変わりました。憲法9条を変えることに賛成する人は本当に少数になったんですね。改憲するには最後は国民投票ですから、世論でこんなに差があったらもう国民投票はできない、自分は憲法を変えると啖呵を切ったけれども、もうこれは無理だ、アメリカも意地悪するしと、いろいろなことがあってあの人は辞めちゃった。この世論の状態をこれから私たちは半年、1年の間にどうやってつくるのかということが大きな課題になっていると思います。
一昨年暮れの秘密保護法に反対する運動から最近の市民運動の様相は、ご存じのとおり大きく変わりつつあります。すごく力強くなってきています。今日の女たちの集会もそうですけれども、ここ何十年もなかったような市民運動、大衆運動の状況ができていると思うんです。ここに「政治的にはニュートラルな立場を身上とする日本弁護士連合会」と書いたんですが、いま日弁連は全国キャラバンをやっています。全国各地で集会をやっています。集団的自衛権は憲法違反だ、外国で戦争をやるのはおかしいと訴えています。今度横浜で1万人規模の集会を準備しています。市民に来てくれと呼びかけています。ぜひこの運動に協力して欲しいんです。
日弁連というのは、弁護士は無条件で入らなければいけない労働組合のユニオンショップみたいなものです。だから公明党の山口さんも自民党の高村さんも、谷垣さんも日弁連の会員です。それらの人たちも全部まとめている日弁連の執行部が、いま集団的自衛権反対の全国キャラバンをやっている。去年の秋に日比谷野音で集会をやって、私たちも応援しました。あのときに市民もみんな応援してくれる、これはいっそうがんばらなきゃと思ったそうです。いまはがんばり時だと思ったそうです。このときに全国キャラバンを打ち出して、各地で集会をやっています。こういう運動がいま起きてきたということです。
それだけではなく、大江健三郎さんなど文化人が呼びかけて「戦争をさせない1000人委員会」が発足しました。各地で1000人委員会をつくっていこうと、ほとんど全都道府県にできたでしょうか。これは、連合という労働組合の左派系の人たちが基盤になってつくっている運動体です。連合全体はいろいろな問題があるけれど、その中でがんばっている人たちが1000人委員会をつくって、この間の集団的自衛権に反対する運動をやってきています。それからわたし自身も関わっている5・3憲法集会実行委員会などに結集していた市民諸団体の呼びかけで、首都圏の137の市民や民主団体・労働団体などによる「解釈で憲法9条を壊すな!実行委員会」がこの春以来、やはり集団的自衛権に反対する運動をつくってきました。昔で言うノンセクトのような人たちもかなりここにはいて、政党関係の人たちが中心ではない運動体になっています。もうひとつ、5月末には全労連などを軸にして、「戦争する国づくりストップ!憲法を守り・いかす共同センター」が再編発足しました。かなりオーソドックスな、日本共産党系と言われる人たちが中心になった運動体です。
実はこういう運動の世界は市民運動をやっている者から見ると、何でこうなるのと思うようなことがたくさんありました。いつも分裂したり対立したりしてきたわけです。原水爆禁止運動でもふたつあります。世界会議もふたつ行われます。労働組合にしたって連合もあれば全労連もあって、その間に中立系の全労協があってナショナルセンターが3つある。平和運動にもこれらの延長で、さまざまに何々系というものが否応なしにつくられてしまった。だからわたしたちは、これはどこがやっているかと考えながら参加をする。呼びかけている内容はすごくいいけれども、これはあっちじゃないかなとか、友達が嫌いなところじゃないかと考えながら行かなくちゃいけない。同じ時期にいくつも集会がやられて、市民運動の側から見ると何で一緒にやれないのといつも言っていたわけです。ところが本人たちにするとそんなに簡単な問題じゃなくて、私もそれらの人たちとつきあうといろいろな歴史の中で対立があったり理屈がちがったりして、平和運動はいくつか分かれてきたことがイヤというほどわかったわけです。
80年代の終わり頃に、連合という労働組合ができたときに全労連ができて、そのどちらにも行かないという人たちが全労協という労働組合をつくりました。その頃は労働組合の大きなセンターは3つに分かれていました。原水禁運動は60年代から分裂していて、原水禁とか原水協とか核禁会議とかいくつにも分かれてきた。去年からの運動も当初はそうでした。これらの3つの流れができていたわけです。私が属している「9条壊すな~」は比較的市民団体が多く、何党系という人が比較的少ないところですけれども、それにしてもそういうのがいくつかできてしまったわけですね。その当時から多くの人たちがそれぞれ思っていたのは、ここまで安倍内閣がやっていくときに歴史的にいろいろあったとしても、あの人の顔つきはおかしいとかあの人の物言いはおかしいとか言っている場合じゃないだろうと、それぞれぞれの人が言い出した。
私たちの市民運動だけが言っていたわけではなくて1000人委員会にしても共同センターにしてもいろいろな違いはあるけれども、そういうことを言っている時期じゃないんじゃないかと、それぞれが去年の前半から思い始めたんですね。職場に行ったら組合同士がケンカしているというのはいまでもあるんですね。新入社員が来たらこっちに入れと言わなければいけない。言うときにはあっちはおかしいからこっちに入れと言わざるを得ないからどうしてもケンカになってしまうわけです。そういうことがありながら、安倍内閣と本当にたたかっていくときには、これはみんな総掛かりでやらなくてはいけない。そういう意味では私たちの市民運動は非常に有利な立場にありました。どちらにもお話ができる関係がありました。真ん中に立てる関係もありました。
それでちょうどこの3つがお話をする場が去年の前半くらいからだんだんできて、2つの団体で集会をやるとか、いろいろなことがやられるようになった。そしてようやく去年の年末に、3つあったこれらの大きな平和運動のネットワークが共同の実行委員会を初めて結成しました。これは歴史的なことだと思うんですね。さっきの女の平和もそうですが、本当に歴史的なんですよ。絶対に一緒にやらなかったようなところが、20何年、30何年ぶりに一緒にやっているわけです。日比谷野外音楽堂で集会をやると、全教という労働組合と日教組という労働組合の宣伝カーが並んでいたりするわけです。これはすごいことだと私は思いましたね。
みんないまいろいろな違いはあるけれども一緒になってがんばらないといけないと思いだしたんですね。去年の終わりに「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」という大きな3団体の共闘の実行委員会がつくられました。それが今年からの安倍さんの戦争法制に反対する運動に共同して積極的に取り組んでいこうという話にいまなってきています。これはすごいことだと思っています。1月26日に国会が始まるんですけれども、手始めに3000人くらいの規模で、この3団体で国会前に集まって一緒に行動しようと決めています。そして5月・6月・7月には全力を挙げて立ち向かっていって、安倍さんに「おなか痛くさせよう」というか、障害をつくっていこうと覚悟を決めています。
そして5月3日の憲法記念日もいろいろあります。憲法を守るという運動が必ずしも一本化していなかったんですね。いまから14年間くらい前は、いわゆる昔の社会党系、共産党系そして無党派の市民系、同じ日に都心で憲法集会が3つやられていた。そのときに私たちも働きかけて一緒にやろうと、日比谷公会堂を中心にして憲法集会は統一してやってきたんです。しかしその14年間にも、もうひとつ別の集会がありました。これは平和フォーラムという、いま1000人委員会の中心になっている団体が、日比谷公会堂の憲法集会とは別に、同じ日に憲法集会をやっていたんです。ですから14年くらいにわたって憲法集会は都心では2つやられてきました。
翌日の新聞を見ると両方書いてある。右翼もいくつか分かれているけれど、こっちもふたつ書いてあった。これも、憲法がここまでピンチになっているときに統一できないものかという話になりました。そして一緒に協力してやることになりました。それだけではなく、憲法の問題は別に9条だけではないんですね。環境の問題も人権の問題も貧困問題も差別の問題も原発の問題だって、もちろん沖縄のような平和の問題だって、みんな憲法問題なんですよ。だから、この2つが一緒になるだけではなくて、原発や秘密法に取り組んでいる人とかも一緒なって、5月3日に巨大な憲法集会をやろうとなって、いまほぼまとまりました。
でも会場がないんです。これは本当にひどい話で、東京には何万人も集まる会場がないんです。明治公園は、オリンピック関連で潰されてしまっていまは使えない。代々木公園はイベントが中心で、私たちのような集会にはなかなか貸してくれない。よほどうまく空いているときに原発の集会とかをたまにやれたんですけれども、簡単に使えない。そのほかにも東京にも大きな公園がいくつかあるんですがなかなか使えない。ただ横浜に臨港パークという何万人か集まれる場所があるんですが、たぶんそこでやることになると思います。いま申請中なので最終的にはまだわかりません。
そういうことで今回初めて5月3日の集会を、これだけ大きな憲法の危機の中で統一してやろうという話し合いがほぼできてきています。これは何10年ぶりの契機だと思います。多くの人が望んでいたことで、これは1+1+1が3になるだけじゃありません。別々だからどこに行っていいかわからない。なにか面倒くさそうなことばかり言って、ケンカばかりしているから結局私は行かないよと言う人も結構いたんです。でもみんな集まったら、わたしでも行っていいところなんだねということになると思います。そういう運動を、どうしても今回は実現したいと思い、ようやく進み始めました。これは本当にわたし個人もうれしいんですね。去年日比谷野外音楽堂の集会で「私には夢がある」とマーチン・ルーサー・キングのまねをして言ったことがあります。これらの運動がみんな統一して大集会をやることで、安倍内閣に反撃するという話をしたことがあるんです。その夢はほぼ実現しそうです。そのツールを使って、その大きな運動を使って安倍内閣を追い詰めていくことが、これからの大きな課題になると思っています。
私たちはずっと、運動の原則は非暴力の運動だと言ってきました。実力で機動隊を突破して、国会に突入して大騒ぎをするという運動は私たちは取ってきませんでした。なぜ非暴力運動だと言ってきたかというと、それを通じて世論を変える。世論を変えることを通じて安倍内閣を包囲していく。そうやって安倍内閣を窮地に陥れるようなたたかいをやることが、この間ずっと言ってきたことです。それはいま、全体の運動の共通の原則になってきはじめています。ですから大きな運動をつくっていくのは可能だと私は思っています。
大事なことは、そういう共同行動をつくることは決してどこかの一党一派が中心になって、自分達がリードするんだということでは運動では大きくならないんです。それぞれが協力してやる、私は「同円多心」と言っていますが、大きな丸の中にそれぞれの一党一派がいっぱいいればいいんです。自分のところだけが正しいというのではなくて、異論があり、同質ではない異質である。それぞれみんなが協力してやる大きな同円多心の運動をつくることによって、この共同行動をなんとしてもつくって、世論を変えていきたいと思っています。そしてその力と国会内の力が呼応することだと思うんです。
国会では、いま圧倒的に改憲に反対する力は小さいです。社民党と共産党を合わせたって、そんなに多くはないです。ですからこれだけでは勝てないのははっきりしています。だから、あの人のあの格好が悪いとかいろいろな文句はあるかもしれないけれど、やっぱり民主党の中にも安倍の改憲に反対だという人がいる。あるいは小沢さんだってもともと改憲派ですけれども、あの生活の党も安倍さんの改憲には反対だと言っているから、多少は目をつぶってでもやっぱり一緒にやる。国会の中でせめて50人、60人、70人という人が結束して、安倍さんが今回やってくる一括法のようなやり方に反対だという動きをつくることができれば、向こうは何百と議席を持っていますけれども私は相当の論戦ができると思っています。そういう結束をつくり出すのは、繰り返しますが、国会外の大きな共同の力なんです。みんなが共同してやっているんだから国会議員の人たちも共同してやってくれ、そういう運動をつくっていくことによって国会の中と外で安倍内閣に反対する運動をつくっていくことができると思うんです。
私もずっと市民運動をやっていますから、政党の代表が市民集会に来て長い演説するのはあまり好きじゃないたちなんです。市民運動の中にはそういう人がいっぱいいます。でもそんなことを言っていたら、このたたかいはできないと思うんです。国会議員やいろいろな政党の人たちと市民運動が一緒になって、この安倍内閣に団子になって立ち向かっていくような行動を今年はやりたい。大きな集会を1回やるだけではなくて、5月以降連続してさまざまに闘争をやって、たぶん今日の「女の平和」も明日の新聞にかなり出て全国に伝わっていくでしょう。そうやって国会の周辺でもたくさんの運動が起きている状況を、いろいろなメディアを通じてでもインターネットを通じてでも必ず全国に知らせていく。そして全国でたたかいを盛り上げていく。そうしたらかなり可能性が出てくると私は思っているんですね。
最後に、ふたつ引用したいと思います。作家の大江健三郎さんが明治公園で話したんですね。「私らに何ができるか、私らにはこの民主主義の集会、市民のデモしかないんです」(2011・9.19 明治公園の脱原発集会で)。私たちが何ができるか、何を安倍内閣に対して回答とするか、それはこのデモだ。それが民主主義の力だと大江さんは言っています。大江さんはこれからほとんど小説は書かないと言っています。そしてこの仕事をやると言っています。「九条の会の大江です」と自己紹介をする。「さようなら原発の大江です」と自己紹介をする。「小説家の大江です」と自己紹介しないというんですね。かつて加藤周一さんという方がいらっしゃいました。この人は日本の知性の最高峰の一人だと思うんですが、この人も晩年は九条擁護の運動に全力を挙げたんですね。あの人が文章を書けばいろいろな影響力があったと思うんです。それも非常に残念ですけれども、しかし加藤さんは運動に力を入れた。いま大江さんはそういう決意をしています。私は大江さんのそういう決意を本当に偉いなと思うんですね。彼もいま最後必死になってがんばろうと思っています。
中国の作家・魯迅の言葉も書いておきました。これは短篇小説『故郷』(1921年11月)の中の言葉です。「思うに希望とは、もともとあるものともいえぬし、ないものともいえない。それは地上の道のようなものである。もともと地上には道はない。歩く人が多くなれば、それが道になるのだ」(ちくま文庫『魯迅文集』竹内好・訳)。これはずっと昔の魯迅が言った言葉です。私たちはこの集団的自衛権に反対する運動、安倍さんの戦争法制に反対する運動をみんなと歩いて、本当に平和に繋がる道をつくっていけるかどうか、それが今年にかかっていると思います。
冒頭に申し上げたように50何年運動をやってきて今年はいままでになく大変なとき、戦後の憲法のもとでずっと私は生きてきましたけれども、その憲法そのものが壊されようとするときに、私たちはこの後に続く世代のためにもこの憲法をそのまま残していかなければいけない。この仕事をやる年になったと思うんですね。だからお互いの力をできるだけ出し合って、お互いの知恵もできるだけ出し合って協力してやっていければいいと思っています。市民連絡会もそういう方向で全力を挙げてやろうと思いますので、今日お話しを聞いて頂いた方もぜひ一緒にやれたらいいなと思います。
安倍政権は、昨年暮れの衆院総選挙での「勝利」をテコに、戦争する国づくりから憲法改悪へとますます暴走の勢いを強めようとしています。そのために秘密保護法を強引に制定・施行し、武器輸出を促進し、防衛予算を急増させ、沖縄・辺野古への新基地建設を強行し、集団的自衛権の行使など海外で戦争することを「合憲」とする憲法違反の閣議決定を行い、日米防衛ガイドラインを改定し、戦争関連法案を国会に提出しようとしています。さらに安倍首相は、明文改憲をめざすと明言しています。
この暴走を止めるには、国会で与党が圧倒的多数を占めている現状では、大きな世論の力を強め、それを体現する広範な人びとの声と行動を示す必要があります。そのため私たち3団体は、これまで独自に、また随時共同して行動してきた経過のうえに立ち、一つにまとまって総がかりで共同行動を進めていくことにし、2014年12月15日に「総がかり行動実行委員会」を結成しました。この共同行動は、これまで私たちの運動がなかなか超えられなかった相違点を乗り越え、戦争する国づくりをくいとめ憲法理念を実現するために大同団結し、広範な方々との共闘をめざすものです。
安倍政権は、5月の連休明けには戦争関連法案の国会提出とガイドラインの再改定をセットで行おうとしています。すでに「密接な関係にある国」が先制攻撃した場合でも支援を否定せず、集団的自衛権の行使には「地理的限定はない」とし、また日本人人質の痛ましい殺害事件をも利用して「邦人救出に自衛隊派兵を」と発言するなど、危険きわまりない内容が想定されます。このため、5月、6月、場合によっては7月と、平和といのちと憲法を守り生かすための私たちの行動はヤマ場を迎え、連続行動も必要になるでしょう。
くわえて安倍政権の暴走は、辺野古新基地建設の強行、原発再稼働と輸出の促進、福祉の切り捨てや労働法制の改悪などによる貧困と格差の拡大、歴史認識の改ざんと教育への国家統制の強化、TPPや企業減税の推進など大企業と富裕層への優遇策など、あらゆる分野で進められています。このため私たちは、これらの分野で行動している人びとともしっかりと手をつなぎ、総がかり行動を名実ともに拡大・発展させていきたいと考えています。当面、具体的には、5・3憲法集会が呼びかけられており、それに全力で結集します。
この重大なときにあたり、みんなの力で「総がかり行動」を成功させるため、みなさんの積極的なご参加とご協力を心から呼びかけます。
2015年2月
戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会(略称:「総がかり行動実行委員会」)
戦争をさせない1000人委員会
解釈で憲法9条を壊すな!実行委員会
戦争する国づくりストップ!憲法を守り・いかす共同センター
連絡先:
1000人委員会:03-3526-2920
壊すな!実行委員会:03-3221-4668
憲法共同センター:03-5842-5611