私と憲法163号(2014年11月25日号)


「安倍政権」をひきずりおろそう
安倍首相の「行き詰まり解散」に審判を!

<安倍政権の2年間の悪政に審判を!>

11月21日、突然の衆議院解散になった。これは安倍晋三首相の政権運営が追いつめられた中での窮余の大バクチに他ならない。

9月初め、安倍首相は内閣改造をやって、政権の浮上を企てたが、小渕優子、松島みどり両閣僚のスキャンダルによる辞職につづいて、他の閣僚も続々と不祥事が暴露される事態になり、政治不信が広がった。一方、停滞しつつあったアベノミクスの起死回生を狙った10月末の日銀黒田総裁による「バズーカ2」と呼ばれる乱暴な金融緩和政策は、短期的には株高・円安を進めた。しかし、安倍政権が進めてきた新自由主義政策の下で、景況は改善されず、11月中旬に発表された7~9月期の国内総生産(GDP)速報値は、実質の季節調整値で前期比0.4%減、年率換算で1.6%減で、2四半期連続のマイナス成長になった。このことで公約の消費税再引き上げの条件は絶望的になった。安倍内閣の支持率を支えてきたアベノミクスの破綻はもはや多くの人々の目に明らかになった。

7月1日の集団的自衛権行使の閣議決定と「戦争する国」の道に反対する多数の世論は根強く存在し、原発再稼働や秘密保護法施行、TPPなど、安倍政権の悪政への批判もひきつづき大きい。米国の協力で多少は修復したものの、安倍首相の偏狭なナショナリズムがつくり出した中国・韓国との緊張関係は、とてもとてもうまくいっているとは言えない状況だ。頼みの綱だった北朝鮮の拉致問題も解決にはほど遠い状況だ。加えて沖縄の県知事選では辺野古新基地建設反対の翁長候補が圧倒的に勝利した。

安倍政権の政策の行き詰まりは明らかだ。このままでは安倍政権の支持率は早晩、没落せざるを得ない。安倍首相がめざす明文改憲は不可能にならざるをえない。来年9月で総裁の任期期限がくる安倍にとって、ここでの解散は多少のマイナスこそあれ、悪いことではないと考えたのだろう。安倍首相は「憲法改正を考えると、自民党の衆院議席を20~30議席も減らさずに、現在の294議席を可能な限り維持できるタイミングを計りたい。まさに勝負だ」(産経新聞・11月19日)と語っていたという。「念のため解散」などと称して悪ふざけがすぎるが、まさに党利党略ならぬ私利私略解散だ。

<戦後最悪の安倍政権を引きずりおろそう>

従来から、本誌で幾度か主張してきたが、安倍政権は改憲と「戦争する国」への道をひた走る稀代の反動政権だ。この政権は「日本を取り戻す」「戦後レジームからの脱却」を主張する。復古主義的で、右翼ナショナリズムと対米従属を兼ね備えたイデオロギーをもち、大資本に癒着した新自由主義で民衆を収奪するという、何一つよいところのない政権だ。

今回、安倍首相によって仕掛けられた総選挙の争点は、まさにこのような安倍政権を許すのかどうかという問題に他ならない。与党が企てている「争点はアベノミクス」などというキャンペーンは、まさに争点隠しだ。私たちは今回の総選挙を通じて、「戦争する国」を目指して、早ければ2年後の夏にも明文改憲を始めようと企てる安倍政権に打撃を与え、与党の過半数割れを勝ち取り、安倍退陣を実現するよう奮闘しなければならない。

そのためには、この間積み重ねられてきた院外の「総がかり行動」に呼応するような、社民党、共産党、そして民主党内の改憲反対派などをはじめ、安倍政権の悪政に反対するリベラルな勢力の前進をはかる必要がある。沖縄の県知事選の大勝利に学び、街頭宣伝など可能な限りの努力をして、安倍政権に鉄槌をくわえるよう奮闘しよう。
(2014年11月21日 高田健)

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緊急事態条項、環境権など新しい人権の導入を突破口に明文改憲に突き進む憲法審査会

改憲の道をひた走る憲法審査会

最近はあまりメディアが取り上げないが、この臨時国会でも衆参両院で憲法審査会が開かれている。実際、世論の多数は改憲を望んでいないのだから、改憲のための憲法審査会は必要性がない。百歩譲って、もしも憲法審査会を開くなら、それは憲法のあら探しに終始している現状を根底から改めて、この国の政治に、社会に憲法が生かされ実現されているかどうかを検証することこそ重要だ。しかし、衆参両院の憲法審査会の現状は、1強多弱と言われる国会のもとで、自公与党をはじめ、共産・社民を除くほとんどの政党が、明文改憲のための口実作りの議論をしている状況できわめて危ないものがある。

2014年前半の186通常国会では「日本国憲法の改正手続きに関する法律の一部を改正する法律」が自民、民主、公明、維新、みんな、結い、生活、新党改革(参院)の与野党8党の共同提案(!)で成立した。この法律は2007年5月、第1次安倍内閣の下で強行採決された欠陥法の「改憲手続き法」(参議院では18項目の付帯決議が付いたしろもの)が、その根本的な欠陥により施行期限が過ぎてもデット・ロックに乗り上げたまま実施されないという異常な事態に陥っていた。それを18歳投票権に関してだけ、選挙権など膨大な関連法制と切り離して、「法施行後4年間は20歳、5年目からは18歳」に修正し、8党合意の下にしゃにむに成立させたという、改憲優先の欠陥法だ。これを指して、与党などは「いよいよ憲法改正が名実共に実施できる環境が整った」(187国会、船田元・自民党筆頭幹事)と意気込んでいる。

環境権、緊急事態条項などの導入への意図的な運営

187臨時国会で開催された衆議院の憲法審査会では、与野党の委員の多くが相次いで明文改憲を目指す方向の議論を展開した。この議論は黙過できない。

この臨時国会の衆院第1回審査会(10月16日)は、「欧州各国憲法及び国民投票制度の調査」の報告だった。従来からも憲法審査会はなぜか海外への調査団の派遣に熱心だったが、今年の通常国会後にギリシャ、ポルトガル、スペインに派遣された調査団の調査は、はじめに「環境権」「緊急事態条項」の「調査」ありきだった。派遣団員だった自民党の船田幹事は「3カ国では特に緊急事態の種類、これは自然災害、テロ、他国からの侵害、それから内乱……区分して規定されている」とか、公明党の斎藤幹事は「(ギリシャでは)憲法の環境権規定と環境基本法、……これは矛盾しない(と説明された)」などと述べた。しかし、調査は必ずしも改憲派の思惑通りにもならなかった。ギリシャでは、欧州債務危機以降導入された緊急事態事項が「この4~5年は本来の緊急事態ではないにもかかわらず、時間がないからという理由でこの緊急事態条項が何十回も使われており、民主主義の観点からも問題」(武正・調査団副団長報告)というありさまであった。

問題は衆院の第2回審査会(11月6日)の議論だ。

ここで自民党の船田筆頭幹事(自民党憲法改正本部長)は前項で指摘したように「改憲の環境が整った」と発言し、改憲手続き法は「個別発議の原則(内容に於いて関連する事項ごとに区分して行う)」であることを確認し、改憲は「(何回かに分けて)部分的な改正が続く」がバランスを失しないよう、長期間を要したり、途中で止まってしまわないようにしなければならないなどと、改憲手続き法の恣意的な解釈を展開した。そのうえで、改憲は国会も国民も初めての経験だから(優先度の高いものからやるのではなく)、「できるだけ多くの政党が合意できる項目から取り上げて行くのが適切」とし、「具体的には……環境権、緊急事態、財政規律など」と改憲を実行する道筋を具体的に述べた。

ちなみに、この改憲の進め方について船田氏は本年7月5日、熊本市内での講演で以下のように述べている。「閣議決定に基づく法改正が行われても、憲法9条の改正は依然として絶対に必要だ」「(憲法改正案の国民投票への発議は数項目ずつ4、5回に分けて実施すべきだ、9条は)最初は難しい。2回目以降のできるだけ早い段階でやりたい」と。これこそ自民党の主流が考えている改憲のコースだ。

この日の審議を通じて、共産党以外(社民党は衆議院には委員がいない)の全ての政党が改憲項目として環境権、緊急事態条項に言及した。民主党の武正・審査会会長代行は環境権の議論を進めるべきだといい、「2004年には3党合意で、緊急事態基本法を国会に提出することも合意」したと述べた。公明党の斎藤幹事は、環境権を主張した上、「緊急事態についても、衆院解散時における対処方法を初めとして、現行法規定には大きな空白があり」憲法に書き込むべきだと発言した。みんなの党の三谷委員は東日本大震災や、東京直下型地震の危機を引き合いに出して「やはり不可欠なのは非常事態法制」で、憲法上定めよと主張、環境権についても述べた。生活の党の鈴木委員も、「あらかじめ緊急事態宣言の根拠規定を設けておき、立憲主義の枠内で対処できるようにしておく」と主張した。

共産党の反論と船田筆頭幹事のまとめた改憲の方向

共産党の笠井委員は原発再稼働、辺野古新基地建設などを批判して、「個人の尊重と幸福追求権をうたった憲法13条、生存権を定めた25条」などの意義を強調し、「環境権は、文字どおり国民の闘いによって獲得されてきたもの」、「憲法に緊急事態の規定を設け、総理大臣に権限を集中すれば大規模災害に対処できるなどというのは、問題のすりかえ」「外部からの武力攻撃への対処ともいいますが、そのような事態をおこさせないためにこそ日本国憲法がある」と指摘した。

最後に船田幹事は「憲法改正に向けて評論家であってはいけない」と具体的に推進する姿勢を主張し、幹事会で「テーマの絞り込みをやっていく」、「多くの皆さんの共通する課題あるいは話題として出ましたのは、確かに、緊急事態、それから環境権を含めたいわゆる新しい権利」「同じ方向を向いているかなと思うのは、緊急事態、あるいは環境権を含めた新しい人権ということであります」と改憲への意欲を表明した。

保利・審査会会長も「それを詰めていったところは最終的には条文案である、法律案であるというふうに考えます……条文があって初めてここの審査会では議論が具体的に進んでまいりますので、……ご努力をいただきたい」と会議を締めた。

一方、参議院では第186通常国会中は衆議院同様、改憲手続き法の改定問題に関する議論が行われた。第187臨時国会では10月22日、11月12日に開かれたが、10月は「憲法に対する認識について」、2回目は「憲法と参議院について」などの議論が行われている。参議院では、まだ衆議院のように改憲項目の絞り込みの議論には至っておらず、一般的な各政党の憲法論の展開に終始している感がある。通常国会でも、臨時国会でも、自民党の代表(赤池誠章、丸山和也)発言で、憲法制定過程の議論が展開され、押しつけ憲法論が語られるのにはうんざりする。この議論は憲法調査会以来14年の歴史の中で、妥当ではないことは決着済みのはずだ。安倍政権の復活の中で自民党の極右派が台頭していることのあらわれであろう。審議の中での改憲派の議論は使い古された「憲法のあら探し」の棚卸しのレベルに過ぎない。

11月6日の衆議院の議論の途中で保利・審査会長が次のように発言した点は注視しておかなくてはならない。「緊急事態の条項は案外難しさがありまして、これは災害だけではなく、国際的なフリクション(摩擦)に対してどう対応するかという問題がやはり緊急事態の一つの側面としてあるわけであります。そこの所をどう組み合わせるのか、あるいは組み合わせないのか、そういった議論が今後されていくと思いますので、非常に時間がかかるかもしれませんけれど、大事な条項として……今後検討していきたい」と。緊急事態条項がともすると先の東日本大震災など自然災害に便乗してショックドクトリンのように議論されているが、実際には「戦争」も含めた議論だということだ。

この保利会長発言の後、みんなの党の三谷委員がすかさず「緊急事態法制の議論というのは、具体的に詰めていくとむずかしい部分があるかもしれませんけれども、各党がそれにたいして、共産党を除いて賛成されているということであれば、しっかり進めていく」ことに賛同すると発言した。

ともあれ、衆議院憲法審査会が以上述べたような方向で改憲条項の議論に踏み出そうとしていることは軽視できない。

改憲派には、2016年、改憲国民投票という選択肢もありうる

この憲法審査会の動向は、10月1日に行われた「美しい日本の憲法をつくる国民の会設立総会」で、衛藤晟一首相補佐官が以下のように挨拶したこととあわせて見すえておくべきだろう。

「いよいよ憲法改正に向かって最後のスイッチが押される時がきた。自民党は結党以来、憲法改正を旗印にしてきた。1993年に自民党が政権を失った時(安倍、初当選)、自民党綱領だった自主憲法制定を外すべきではないかとの提案がされたが、安倍(晋三)首相や我々が「憲法改正を下ろすなら自民党なんていうのはやめるべきだ」などと議論をした。今、その時のメンバーが中心となって第2次安倍内閣をつくった。安倍内閣は、憲法改正の最終目標のために、みんなの力を得て成立させたと言っても過言ではない。2016年7月に次の参院選がある。2年後に国民投票を行い、憲法改正を達成しなければならない」。

まさに改憲派は20年の長期の努力で、自民党の極右シフトを準備し、改憲の第2次安倍政権を登場させた。

安倍政権が幾多の難題を抱える永田町では、時折、野党に対するブラフ(脅し)として、解散風が吹くが、そして現に今も閣僚不祥事や消費税アップをめぐって解散風が吹いている。安倍政権にしても明文改憲の実現は容易なことではないが、再来年の参院選挙は期限が確定しており、これと改憲国民投票のダブル投票というのはあり得ない話ではない(その場合、投票権者は20歳以上で処理できるからダブル投票はそんなに困難ではないだろう)。

安倍政権は解釈改憲を極限まで進めながら、同時に明文改憲を実現し、あらゆる意味でこの国を「戦争する国」に仕立て上げようとしている。当面する日米ガイドライン再改定に反対し、集団的自衛権行使の戦争関連法制策定に反対するたたかいとあわせて、明文改憲阻止を闘い抜こう。
(事務局 高田健 2014年11月12日)

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戦争させない・9条壊すな!11・11総がかり国会包囲行動に際してのアピール

11月11日夜、小雨まじりの天候の中、「戦争させない・9条壊すな!11・11総がかり国会包囲行動」が行われ、永田町の国会議事堂周辺には7000人の市民や労働組合員が集まって、安倍政権の戦争政策に抗議した。集会を主催した2つの団体は参加者に対して連名で以下のアピールを発表した。

戦争させない・9条壊すな!11・11総がかり国会包囲行動に際してのアピール

安倍政権の戦争する国づくり、生命をないがしろにする政策に反対し、憲法を基本に平和・民主主義・脱原発の社会をめざそう

安倍政権は、7月1日に強行した集団的自衛権の解釈変更の閣議決定以来、日米ガイドラインの改定や戦争関連法の制定など、その具体化のための画策を続けています。この動きはアジアと世界において「ふたたび戦争をしない」と誓ってきた日本国憲法の平和主義を根底からくつがえそうとするものであり、断じて許すことができません。

わたしたちは、この憲法違反の閣議決定の即時撤回を求めるとともに、戦争関連法案制定を阻止する巨大なうねりをつくりだしていきたいと考えています。本日の「戦争させない・9条壊すな!11.11総がかり国会包囲行動」はその意思の表明であり、この行動を契機に、いっそう広範な総がかりの行動を全国で展開し、安倍政権の退陣を求めます。

この臨時国会から来年の通常国会にかけて、安倍政権がくわだてるさまざまな「戦争する国」の策動にたいして、私たちは志を同じくする全ての皆さんと協力して、以下のような行動を展開していきたいと考えます。

2014年11月11日
戦争をさせない1000人委員会
解釈で憲法9条を壊すな!実行委員会

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戦争ではなく、平和を作る 2014年秋の憲法集会

ガイドライン反対・戦争法制に反対しよう

11月1日、東京の日比谷図書館内のホールで「戦争ではなく、平和を作る 2014年秋の憲法集会」が開かれた。司会の渡辺多嘉子さん(平和を実現するキリスト者ネット)が、「あいにくの雨だが、音楽を聴き、話を聞いて充電して明日にそなえよう」と呼びかけた後、李政美(い・じょんみ)さんとその仲間の歌と演奏で始まった。

李政美さんは東京・葛飾生まれの在日コリアン2世。済州島から日本に来て学校に行けなかったが霜をよけてくれる自信のお母さんのような歌として「遺言」をうたった。つづいて「荒川」、「京成線」、チリの女性シンガーによる「ありがとういのち」、最後は「アリラン」を会場と一体になってチャンゴを打ちながらうたった。参加者は心にしみる李さんの歌声に浸った。

主催者あいさつは富山洋子さん(日本消費者連盟)。富山さんは「安倍政権が強行している集団的自衛権の行使や秘密保護法、日米ガイドライン改定、原発再稼働などに反対の大きな声を上げていこう。沖縄担当大臣である菅官房長官は、辺野古基地建設が沖縄知事選の結果に影響されないと居直っている。また安倍政権は道徳教育を正式の教科として、“人民”ではなく“国民”をつくろうとしているのではないか。私は13歳の時に平和憲法ができて大変うれしかった。いまの憲法を“おしつけ”という人たちは「大日本憲法を大事にしたい人たちだ」とはなし、最後に「虹立つや戦争しない国が好き」という高校生の俳句を紹介して結んだ。

つづいて高良鉄美さん(琉球大学法科大学院教授)がパワーポイントを使い、戦後70年を射程に入れた内容で1時間にわたり講演した。

高良さん講演
改憲、集団的自衛権、沖縄、そして知事選挙

普天間基地でオスプレイが飛ぶと、排気される熱風の90%以上が下に吹き付けられる。琉球大学は飛行ルートになっていないのに上空を毎日通っていくし、飛行が禁止されている夜間の10時、11時過ぎまで飛び、オスプレイは沖縄の空をわが物顔に占領している状況だ。

憲法改悪については日米両政府関係のなかで、絶え間なく追及されてきた。すでにマッカーサーは1948年には改憲を示唆したが、当時の吉田首相はそのつもりがないことを示した。しかし朝鮮戦争が起こったことで1950年には警察予備隊がつくられた。朝鮮戦争時、日本の後方支援の働きにアメリカは絶賛し、これは使えるとなった。まさに押し付け憲法ではなく、押し付け自衛隊という方がぴったりしている。1952年の日米安保条約締結の時に、安保条約に合致するように警察予備隊が保安隊となり、その後自衛隊になって安保条約と防衛協定に合うように増強された。新安保条約には経済協力関係が入っていて、経済があるからアメリカとつながっていなくてはならず、軍事協定を破棄したくてもできないようになっている。また「憲法の規定に従って」を入れることで憲法を抑え込んできた。

日米ガイドラインは1978年に憲法との関係を不鮮明にしたまま同盟関係が強化され、その後の改定で国民保護法などの法制化もふくめ医療や運輸関係はじめ広範な国民協力を安保に組み込んできた。2014年には予定されている新・新ガイドラインは、集団的自衛権と国民総動員計画、軍産複合体化がいっそう進むだろう。

こうしたなかで沖縄は、完全にアメリカ軍の要塞とされ米軍のための島とされ、平和憲法を適用させないできた。復帰前の米軍車のナンバーは「KEA STONE OF PACIFIKU」だった。今は日米両国が沖縄のキーストーン化を目指している。日本政府は復帰後、自衛隊常駐を3000人から始めて拡大し、現在は7000人だが、2万人態勢を狙っている。那覇空港の自衛隊はどんどん拡大している。復帰前に、基地がなくなったら沖縄はイモとはだしの生活になると言われた。今は基地経済の占める位置は大きくない。復帰42年、沖縄に基地はいらない。

集団的自衛権は、アメリカが国連憲章に盛り込んだもので、自国を守るためではなく他国を攻撃するためのものだ。朝鮮戦争のときアメリカから日本への掃海艇派遣の要請を断れなかった。集団的自衛権が盛り込まれればさらに、アメリカからの出動要請を気が進まなくても派遣しなくてはならなくなる。これまでは憲法をタテに断れた。

集団的自衛権は平和憲法のDNAを変えてしまう。安倍政権が行った「解釈改憲」は無責任極まりない。これをしたら憲法は教えられなくなる。明文改憲よりもソフトなイメージだが、最もタチの悪い自己矛盾の用語だ。もともと為政者の思い入れで簡単に国政を変えられないように憲法はある。スイスから来ていた留学生が湾岸戦争のときに、スイス国内を武器が通ったことで、もうスイスは終わりだとがっかりしていた。国民の誇りが踏みにじられたからで、意識の強さがわかる。

いま急速に軍事態勢の芽が出てきているようだ。安倍政権は国家安全保障会議を設置した。これは戦前の五相会議とよく似ていて、総理、外相、防衛相、官房長官の最少4人で国の安保政策が決められてしまう。そもそも小泉のときに、外局にすぎなかった防衛庁を防衛省に昇格させた。防衛相は本来平和憲法の下で勝手に出てきてはならない閣僚で、防衛相は任所大臣としては新参者なのに、それが安全保障会議の主要メンバーとなっている。

軍需産業の拡大も無視できない。武器輸出3原則を緩和して軍需経済に乗り遅れるなとばかり世界の軍需産業への売り込みを拡大している。軍需産業依存する経済がアメリカの国家経済の根幹になっている道だ。ゲームもおもちゃも言葉も軍事化し、戦争ゲームも金を稼ぐ産業にしている。ゲームのバーチャル殺人に抵抗感がない子どもがつくられ、価値観が変化させられている。いま急速に軍需産業を拡大している。

政権の国民への情報操作は目に余る。特定秘密保護法はかつての軍事機密保護法を想像させる。国家安全保障局の役割は情報操作が可能で、大本営発表とならないか。密約体制強化にもかかわらず、報道機関にも政権は手をのばし、報道の政権への批判は消極的だ。NHK会長や経営委員にも影響を強め、政府が報道に介入している。国民の知る権利はどうなるのか。

政党はどうなっているか。いま改憲を考えている政党が国会の第1党だ。自民党はもともと改憲のための政党だが、その他の小党も改憲へ右にならえという状態だ。1950年代から政治指導者が憲法を変えたいと思っても国民は許さず、長い間変えたくても変えられなかった。安倍政権は憲法96条を先に変えようとしたが、改憲論者からも反対をされてうまくはいかなかった。教育も重要で、武器を持たない平和主義の教育が憲法とともに改憲の障害になってきた。いまは戦争で前線に行かされる若者が、武器を持たないことをよしとする教育がされている。これが邪魔だとばかり安倍政権は、教育行政を大きく変えて道徳までも教科化した。防衛意識を変え、改憲の道を作ろうとしている。

日本の防衛費はいったい、世界的にどの水準なのか。2013年の防衛費は世界8位だが、この数字には海上保安庁の予算は入っていない。防衛費拡大を許す空気を作り上げること、米軍との友情作戦、東日本大震災のときのTOMODACHI作戦などで米軍との一体化と軍拡の空気をつくっている。

こうした改憲へのロードに沖縄を組み込もうとしている。沖縄の基地負担軽減、尖閣が、安心安全が・・と危機を高めて沖縄を改憲ロードへ組み込もうとしている。

沖縄が1位なのは、人口千人当たりの出生数、米軍基地面積、人口千人当たりの死亡数、失業率。なんで失業率と米軍基地が1位なのか。基地は雇用を生んでいないことの証明ではないか。沖縄にある米軍基地の面積は全部で233平方キロで、本島には222平方キロある。石垣市の面積は229平方キロ、本島内で面積が最大の自治体は、名護市の210平方キロ。このほか自衛隊は6300人で、自衛隊基地面積は6.8平方キロ。

こうした現状にたいして沖縄社会は叫びをあげつづけ、憲法理念を掲げてきた。4・25普天間県内移設反対県民大会、辺野古でのレッドカードとイエローリボンの行動。イエローカードが埋め尽くされた県民大会。普天間を包囲したイエローの布。県庁を包囲した10月9日の「NO」の文字。沖縄社会は「憲法の照らすところ あきらめない!」、そして「軍事的要塞になりたくない!」という思いは強い。「永田町の民意」?と言った防衛政務官は、憲法95条の趣旨を全く理解していない。憲法95条(地方自治特別法)一の地方公共団体にのみ適用される法律は、国会で可決しても、当該地方公共団体の住民投票で過半数の同意を得なければ、効力をもたない。辺野古を頭越しに決めることは、この理念からするとどうなのか。すでに民意は何度もあらわされている。

いま沖縄知事選は辺野古を争点に、移設推進、県民投票、移設反対の3者で争われている。昨年末、現知事の県外移設の公約撤回から大きく変化した。外向きの「県知事を政府から守る」から、内向き「県知事による承認への怒り」に変わり、これに知事の変化を政治家として如何なものかという保守層の意見が重なった。保守層はずっと沖縄が搾取されていると感じてきた。保守の一部と革新の融和という、沖縄から始まった保守の分裂が日本にどのような変化をひきだすか。

少し前の台湾の新聞に、日本の青年が与那国島から泳いで着いたことが大きく報道され歓迎された。沖縄と台湾の人々の関係はもともとつながりが深い。那覇から福岡、上海、台北は、同じくらいの距離だ。那覇から東京、マニラも同じくらい、那覇から札幌、ハノイが同じくらいの距離になる。東京から見たアジアと那覇から見たアジアをみれば地理的感覚が大きく違う。沖縄の海洋領域は日本のそれの約半分を占める。地政学とはこのことで、沖縄はアジアの国際交流と経済発展の要石になれる。
講演の後、会場との質疑が行われた。

トークセッション「わたしの想い、みんなの行動」

つづいて「わたしの想い、みんなの行動」と題したトークセッションが行われた。司会は山口菊子さん(豊島区議会議員)で、内田聖子さん、菱山南帆子さん、毛利孝雄さんの3人によるセッションだ。概略次のように話された。

PARC事務局長でTPP反対運動の先頭に立って活躍中の内田聖子さんは、国会議員へのロビイングで感じることは、議員が選挙公約を変えることを何とも思っていないこと。自民党の議員にとって公約は仮のウソで、民意と議会の乖離は課題だ。法案を作るのは審議会委員や官僚で、議員が勉強していない。安倍政権の動きの危険性を若者はヤバイと感じてネットでつながりながら動き始めている。貿易自由化で自殺者が出ている。戦争でも経済でも人は殺せる。弱い者どうしがどうつながれるか。主権は私たちにあり、私たち抜きに私たちの事を決めないで。

中学生時代に起きたイラク戦争以来の反戦運動・改憲反対運動で活躍中の菱山南帆子さんはいま25歳。菱山さんは集団的自衛権行使が容認されたが、大人として子どもたちの未来を守らなければならない。いま大学生は入学すればすぐ就職活動で、政治に関心がもてない。若い世代は生まれてからずっと不景気なので、よい時代を知らずあきらめることを学習させられている。しかし仲間から言われると関心を持つので、ネット選挙とかイベント的な行動は可能性がある。いま集団的自衛権反対で街頭宣伝を呼びかけて、始めての人ともつながれている。自分のことばで語り行動していく。

退職後、沖縄の大学に編入学して2年半学んだ毛利孝雄さん。沖縄の大学にいったのも学生との交流を考えたから。学生とともに辺野古や高江、普天間で闘っている人と交流した。学生たちは現場に入ることで変わっていった。こちらに戻ってから20か所以上で自分の経験を話しているが、その場にかならず沖縄に行った人がいて沖縄とつながり続けている。これは心強い。

集会の最後に高田健さんがまとめのあいさつをした。高田さんは、安倍政権は暴走しているが自民党の佐藤国対委員長は「政権は崖っぷち」と言った。今後のガイドラインや戦争法制などがあり安倍の気力がなえたら終わりなので、安倍政権は決して強くはない。11月11日の総がかり行動や、12月の秘密保護法反対、ガイドライン学習会などを軸に闘おう、と行動提起した。
(報告・土井登美江)

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第90回市民憲法講座:日本の女性労働の状況および問題点と安倍政権の女性政策

柚木康子さん(均等待遇アクション21事務局) 

(編集部註)10月18日の講座で柚木康子さんが講演した内容を編集部の責任で要約したものです。要約の文責はすべて本誌編集部にあります。

日本のジェンダー平等度

私はいま「均等待遇アクション21」という女性のNGOで事務局を2000年からやっていて13年、ちっとも均等待遇は実現しません。マイナスの均等待遇は実現することはあるんですが、なかなか運動が進まないんです。それから私は労働組合の役員をしていまして、出身は昭和シェル石油という会社で再雇用も含めて45年働いてきました。退職しても組合員になれるようにしたのでいまも組合役員をやっていますし、全労協という、ナショナルセンターではないけれどもそこの役員もしています。研究者ではないということでお話を聞いて頂ければと思います。

安倍の女性政策について言う前に、一体日本の女性労働はどういう状況にあるのかということをみなさんと共有していおいた方がいいと思います。ご存じのとおり日本のジェンダー平等度、毎年秋になると世界経済フォーラムによるジェンダー指数が出ますが、去年は136ヶ国中105位と、名誉なことに毎年下がり続けています。ジェンダー指数については3つ統計があるようですが、国連開発計画などは項目が違っていて、日本は教育が進んでいるとか妊産婦の死亡率が少ないという健康の問題が入ってくると順位が上がっています。世界経済フォーラムは労働と政治における性差別という指数(GGI)です。

非正規の問題は女性差別であり女性の貧困問題

女性労働の実態がどうなのか。私たちが働き始めた頃は、別に正規で働こうと思わなくても、基本的に就職したら正社員でした。それがいまは非常に難しくなっています。これを推進した基本は、1995年の日本経団連、日経連の当時の「新時代の日本的経営」で、基幹的社員、専門的に活用する社員、その他臨時的に活用する社員のピラミッドの三分割です。それから20年経ってほぼその状況の通りに進んでいて、その事の結果大きく影響を受けたのがやっぱり女性だと思うんですね。

図1「雇用形態における雇用者の構成割合の推移」ですが、今年の男女共同参画白書についていたものです。1985年にもう女性は31~32%が非正規で、67.9%は正規の社員だった。それが逆転したのが2003年で50%を超えてしまって、それ以降ずっと逆転しつづけて、いまや女性は55.8%が非正規になります。いろいろな数字があって57.5%くらいいっているのもあります。労働力調査といっても全数ではないので推定だということだと思いますが、ともかく6割近くが女性の場合は非正規であるということです。一方男性ももちろん非正規、派遣労働者も増えましたけれど、平成25年を見ると男性はまだ78.8%、8割弱が正規であって、非正規は21.2%、2割が非正規です。トータルでは4割が非正規と言われていますが、圧倒的に多いのは女性だと言われています。ですから間接差別を言うときに7割もひとつの性に偏っていたらそれは性差別だとよく言われるんですが、まさに非正規の問題は女性差別の問題だと思います。

問題は単に非正規になったということだけではなくて、非正規の結果非常に貧困が恒常化し、かつ深刻になっているということです。これは図3に「給与階級別給与所得者の構成割合(男女別)」とありますが、ここでも女性の場合は年収300万円以下は66.1%、一方同じ分野で男性は23.9%です。女性の貧乏が多い。特に200万円以下は女性が43.2%になります。女性はほぼ半数近くが200万円以下で、男性は11.1%、1割です。それだけに女性の貧困が非常に問題になっています。

その女性の貧困の中でもっとも打撃を受けているのがシングルマザーであって 、全国で108万人くらいいて、昼夜を分かたずふたつの仕事をするのは当たり前、三つやる人もいます。私の知っている人では年間3000時間働いたこともあると聞きましたけれども、やっぱり2000時間以上働いている人が多いです。最新の数字では、シングルマザーの就労者の平均年収は手当込みで223万円で、全世帯平均年収・538万円の41.4%にすぎません。全世帯平均の4割程度の収入しかないということで、非常に女性たちの置かれている状況は貧しいというか、食べるに精一杯、子どもと一緒にいる時間も本当にないということがいまも続いているわけですね。

進まない職場における男女平等

なぜこうなのか、なぜ日本は変わらないのか。ともかくつくれるときにつくらないとダメだということで、男女共同参画基本法がつくられた。その結果5年ごとの行動計画があって、いまは2009年に福島みずほさんが男女共同参画担当大臣のときにつくられた第3次の共同参画基本計画があります。それは福島さんもがんばってNGOの女性たちもいろいろ意見を言ったりしてそれなりにいいものができたんですが、なかなかその中味が実現できていない。この基本計画にも、女性は男性に扶養されるものであって女性の仕事は家計補助ということとか、性別役割分業の意識、これらをなくすことが計画にあります。けれどもそこが、もしかしたら拡大しているのではないかというくらいに(いまの政権は拡大したいのだと思うんですが)、いまだに差別が脈々と続いている状況にあります。結果として女性の労働が正当に評価されず低賃金に置かれています。

なぜ女性の労働が低賃金なのかというと、それは“パートの労働は家計補助だから”ということに尽きると思うんですね。1985年に男女雇用機会均等法ができ、派遣法ができて、そのときに第3号被保険者という制度もできた。ともかく103万円とか131万円というよくわからない壁ができて、女性はそういうふうに働いた方がいいとどんどん誘導された結果です。パートの賃金は高くしないということできたわけですね。

その利益を一番得たのは企業です。とりわけ女性の非正規をたくさん使っているスーパーなどはそれ故に利益を上げてきただろうし、それがゆえにものが安かったのかもしれません。その安い女性の労働対価、高くても時給1000円、800円とか900円です。それで人が食べていくことなんかできるわけはないんですが、それが岩盤のように低賃金を形成していて、だからこそ派遣がどんどん専門職的な派遣から企業の一般事務の中に入っていって、派遣の賃金もどんどん下がっていくわけです。1600円とか2000円近かったのが、いまは1300円を切るとか1100円とか言われています。なぜかと言えば、パートの賃金が一番底にあることだと思うんですね。このことが男女の賃金格差を日本ではずっと是正することができなかった最大の要因だと思うんです。

今回の安倍の「女性活躍」には、賃金の「ち」の字も出てこないことが最大の特徴だと思うんです。2000時間も働かなくても、1500時間で食べていけるようにするのがワークライフバランスだと思うんですが、そのためにはペイを払わなければできないわけです。でもその事はどこにも出てこない。

では正規の中での男女の賃金格差はどうなのかというと、図2はフルタイムで働く非正規の人も入るらしいんですが、一般労働者で男性を100としたときフルタイムの女性たちの賃金は71.3%。これが正規、正職員、正社員、いわゆる官庁の労働者と企業の正社員では73%くらいになるんですが、だいたい71%くらいです。男性の短時間労働者は55.1%で女性の場合は50.7%となっています。世界との比較ではOECDの国々は80~85%くらいで、まだ格差がないことはないんですが、そういうレベルです。日本の場合は短時間労働者を入れるともっともっと男女の賃金格差はふくらむはずだけれど、そう見えないようなグラフを国はつくっていると思うんです。賃金格差が遅々として進まない。

賃金格差解消に実効性ない均等法と労基法4条

労働基準法4条では、性によって賃金に格差を付けてはならないとあるんです。私も男女差別裁判の原告でしたが、労基法4条と均等法で裁判をやります。均等法は当初の努力義務から間接差別、3つしかない不完全な間接差別禁止規定も明文化したけれども、なぜか本則にはない省令-「雇用管理区分」というものが突然入って、雇用管理区分が違うと待遇が違ってもいいということが日本では公然と認められた。その結果、コース別の場合には総合職と一般職で、当初男女賃金差別を住友系の人たちが訴え始めたときに、その当時の雇用均等室の人はこれはコースが違うから対象にならないと言って、役所が蹴ったわけです。これは問題だということで役所も相手にして裁判をして、いまはそういうことはないんです。けれども雇用管理区分が違えば差があってもいいという流れはいまも変わっていない。では差があっていいとして、何割とか何%の差だったらいいとするのかということが問われれば、まだ「雇用管理区分が違って」という論理はあると思うんです。でもそこはいつも言わないんですよね。ともかく雇用管理区分が違うから差があってもいいというんです。

厚労省に、「パートを雇っている企業主のみなさんへ」ということで、パート労働者の納得性を高めるために職務評価をしましょう、というのがあるんです。それは一見職務評価のようにやるんですが、仕事と責任だけなんですよ。職務評価をするとき4つの分野があって、知識・技能、精神的・身体的・感情的負担、評価、労働環境の4つ分野ですが、そのうちの2分野だけで仕事がまったく同じだったとしても、責任が違うとなれば格差がある、格差があってそれは責任が違うからですといって納得してもらいましょうとしか読めない職務評価表があるんですね。

これは非常に評判が悪くていろいろ指摘されて少し方向性を変えていますけれども、あらたにいろいろな職務評価をして、今野浩一郎さんという学習院の先生とか、私たちも知っている女性の学者も入って横浜のあるセンターがやった職務評価があるんです。その職務評価でもパートと正規との格差について、その差のところに何気なく80%なんていう数字が入っているんです。一度、今野さんを呼んで勉強会をしたときに、違うことがあったとしてどれくらいが妥当だと先生はお考えなんですか、8割ですかと聞いたら、「そうです」と言っていました。

ともかく均等法は改正されたけれどもほとんど役に立たない。逆に女性の保護規定をなくし長時間労働を招いたということでは非常に問題です。そのときに労政審議会のメンバーで「先に労働時間を放棄してしまって報告書にもならなかった」と言っていた方がいましたけれども、まさにその通りだと思うんです。確かに職域は拡大したけれども一部の女性にしか平等は手に入らなくて、そして長時間労働が始まってしまったということになっていると思います。

職務評価については、ILOとか国連の女性差別撤廃委員会からもずっと研究しろといわれているわけですけれども、「終身雇用で採用が一括で仕事は変わっていないのだから、そういうことはなじまない」という言い方で政府、厚労省はこの間逃げてきたんです。いまやったとしても本気で是正しようとするところまでは見えていない。法律はそういうところになります。

司法判断の問題

では裁判はどうなのか。この間1990年代のはじめの頃から女性差別裁判は住友3メーカーとか野村證券とか日立とか芝信用金庫とか、昭和シェル石油も1994年にやりましたし、兼松とか、大きいところから小さいところ含めていくつかやりました。その中で住友電工のケースは一審で負けて二審の大阪高裁で、本当にこの裁判長が良かったんですよね、裁判長の和解勧告によって勝利和解し、解決金を取るのと同時に、対象の女性をちゃんと管理職の待遇にしました。その当時のひとりのは再雇用も終わって退職しましたけれども、あとひとりはまだ2年再雇用期間があって、いまもちゃんと管理職をやっています。何が違うかと聞いたら、情報の来方が違うといっていましたね。仕事はずっとやっているわけですが、いろいろな情報が平社員だと遮断されてしまうけれども管理職はやっぱり違うし、情報が違うと判断のところでも違ってくるんだと思うんですが、そういうことを言っておられました。

いろいろな裁判をやってきて、結果として女性差別でやった場合はあまり負けることはなかったんですね。一審で負けても二審でひっくり返すとか、二審で勝利和解するとか、完璧ではないけれども何らかのかたちで勝ってきたのが、男女差別裁判のこの間の流れでした。しかしここに来てちょっと逆行が起こっています。それは中国電力――中国地方で殿様みたいな企業じゃないですか。そこでたったひとりの原告が、いつまで経っても自分は昇格しない、12年も後から来た男性の方がさっと上に行ってしまう。仕事をしていなくても上にいってしまう。ちゃんと判断して欲しいといったら、勝手に好きなようにすればいいといわれたりして裁判になった。職場の中では支援者がいるんですが、裁判をして一審ではべったり負けたんですね。

中国電力男女差別事件

これで負けてしまうのかと非常に愕然として、その当時WWNという大阪の住友電工の裁判を支援していたメンバーに繋がったんです。私も入っている男女賃金差別裁判を闘っている弁護団・原告団交流会というのがあって、裁判は終わっているから元原告団が多いんですが、そこで話をしてあらたに高裁から弁護団を構成し直した。女性弁護士を中心に大阪の住友の裁判などをやってきた宮地光子さんとか寺沢勝子さんとか東京では中野麻美さんが入って、いまの日本で男女賃金差別裁判を闘うには最良の弁護団で控訴審を闘ったんですね。

それでいろいろなデータ、一審の時は賃金データを出させていなかったので賃金データを出せという攻防から始まって立証していったんです。会社のデータを、高卒の男女の同期135名を、賃金の高い順で早く昇格した順に並べて分析しました。結果は、男性の3分の2は管理3級以上といって、どれほどの職位なのかはわからないんですが管理職です。3分の1は、まだそれに至っていない主任1級とか主任2級とかという人です。女性の場合はこの段階で3名くらいが管理職。あとの女性は男性と資格は同じようでも賃金はさらに低い。順に並べると最後の方の男の十何人が女性にばらばら混じるんですけれども、ほとんどきれいに男女別に分かれるんです。

こういうデータも示し、またこの原告はすごく仕事が好きで営業がしたいといって営業をやって、電気温水器の販売で出雲営業所ではトップクラスの成績を上げているんですけれども昇格しない。自分より上の、係長になった人が病気になったりすると、その人の仕事までやっているのに評価が良くない。業績評価はいいんですがトータルの評価になるとなぜか昇格の規準に当たらなくて、主任1級にはならない――そこに至っていないという評価なんですね。その最大の理由が、ともかく自説に固執する。会議で「こういうふうにしたらどうですか」とか「ああいうのはおかしいと思います」とか「そういう判断じゃなくてちゃんと本社に問い合わせてみましょう」とか、当然仕事をキチンとしようと思ったらそうなりますよね、それが「自説に固執する」ということになって毎年それを考課表に書かれるわけです。それで協調性とかそういうところがマイナス評価になっちゃう。トータルで評価が良くなくて、真ん中くらいで昇格しない。現実にそう書かれているんですね。広島高裁ではここまで立証しているから、私なんかも一審よりも悪くなることはないと判決に臨んだんですけれども、目が点になるほどびっくりしたんですが、負けたんですよ。その理由は、短い判決文だったんですが、「男女間で層として明確に分離しているとは言えない」。男と女できっちり分かれて、ひとりの混じりもなく分かれていない限りは男女で明確に分離しているとはいわないというのが日本の裁判所の判断です。エーって思うでしょ。

もうひとつ判決でびっくりしたことは、職能等級制度の「人事考課の基準等にも男性と女性とで取扱いを異にする定めがない」。だから差別じゃないというんですよ。中国電力は一部上場の企業ですよ。中小企業のおじさんが鉛筆なめなめやっているなら別ですが、上場企業で、女子はこう扱うとか男子はこう扱うなんて書いてあったら一発で労基法4条違反じゃないですか。にもかかわらずそう書いていないから差別じゃないという判断をしたんですよ、広島高裁は。補足する理由として、どこでも人事考課制度は評価基準はあいまいですけれども、こういう項目で評価してABCつけますとかってなっているじゃないですか。それは公表されているとかもちろん管理職の中に女性がいないわけではないので女性も評定者にあるとか、考課研修――今年はこういうことで一応研修する、その結果あなたはAとかBとかフィードバックはされている、だから制度に差別性はない、制度は公平であるということでした。

それから一審でも理由にした、「女性は管理職に就任することを敬遠する傾向もあり自己都合退職も少なくない」というんですね。1997年に均等法が改定されるのを前に、中国電力が女性に1回だけアンケートを取った。その中で75%が管理職になりたくない、なっても大変だという答えが多い。でも、いままで管理職にしてくれるような気配もないのに管理職になりたいかと聞かれても、なりたくないと答えたと思うんですよ。自己都合退職するというのは、結婚したら辞めるという地方柄とか企業の中の事情もあったと思います。問題は、原告は管理職にしろって訴えているわけです。管理職になりたくない人はいいんですよ、ならなくても。「なりたい」って言っている人に、他の人が管理職になりたくないといっているから差別じゃないといわれても、困っちゃうじゃないですか。いうに事欠いて労基法の女子保護規定の存在もありました。電力会社は夜勤もするわけで、彼女はもちろん労基法が変わった以降、夜勤もしているわけです、宿直があるから。20年も経って裁判を始めているというのにそれもあったからと書いてあるんですね。そういう判断でした。

判決の裏に最高裁の男女賃金差別に関する考え方

この問題についていま最高裁に上告して、もう1年たつんですが判断はわかりません。もしこんな判断――規則に「女は」とか「男は」って書いていないからいいんだ――を判決として確定するようなことがあったら世界の恥としかいいようがない。この実態については、ILOの労働基準局の人が日本に来たときにもっと明確なグラフにして見せたんです。見ただけで一目瞭然、こんなの女性差別だとなるわけなんですけれども、日本の裁判所ではならないことがあります。これは高裁判決ですから、最高裁で憲法違反だとかの理由を先生たちは非常に苦労したんです。

統計系上こんなことが性差別がなかったらあり得るのかということで、シカゴ大の山口和男さんに分析してもらったんです。彼の分析結果は、同期生の118名中上から54番目まで男、55番目に女、56番から75番までまた男というようになる確率は、1京分の1のさらに177分の1、ともかくほとんどゼロに近いということで、これはまさに性差別だと統計学上も意見書を出しています。どんなふうに最高裁がこのことに反応するのかわかりません。

なぜこんな判決が出たのかということが少したってからわかったんです。「労働関係民亊・行政事件担当裁判官協議会における協議の概要」最高裁事務総局、「1998年10月27日に開催の協議会にて」という文書があります。それが最高裁の総務局から出されたのは2002年くらいで、読売新聞にすっぱ抜かれました。そのとき私たちは、労基法4条は同一価値労働同一賃金に関する実定法がないというところだけに反応していたんです。けれどもよくよく見たら、「性差による賃金差別がされているか否かを判断するに当たり、重視するべき事情として、どのような事が考えられるか?」と書いてあって、「当該賃金格差をもたらしている賃金規定の中で明確に『男子』『女子』と言う文言が使われているか否か」とあります。これ最高裁ですよ。最高裁はこんなことしか考えないのかとかと思いますよ。

それから「全体的にみた時に、当該企業では男子労働者と女子労働者との処遇上顕著な差異があるか」、「処遇上顕著な差異」だとは広島高裁の裁判官は思わなかったということなんですね。でも男女差別のいろいろな判例も出ているわけです。兼松裁判は1審では完全に負けたんですが、2審の東京高裁ではで職務評価をした。いわゆる総合職と一般職の格差で、男は営業で契約を取ってくる、女はその契約が完了するまでの履行業務をペアでやる。女は定型業務だ、営業はすばらしいと会社は言っていたけれども、職務評価をした結果は女の方が高い場合もあったんですよ、業種によって。でも賃金は半分から、良くて6割5分くらいの格差だった。そういうのを出した結果として東京高等裁判所は、コースは違っても仕事は同質である、だから賃金差別だということを認めて、全員ではないけれども6人中4人の賃金差別を認めたんですね。

にもかかわらず広島高裁は、何かルールとかあんちょこはないのかと調べた結果、まさに「男子は」「女子は」と書いてないとか、明確な差異がないとかということを最大の理由としました。あとは考課表に、営業の成績は確かに良いが彼女は自説に固執してかたくなであるとか、主任1級になるためには協調性やチームワークが求められるが彼女はそこに至っていないから昇格させなくてもいい。昇格させないのは企業の裁量の範囲である、みたいなことで書かれているんですね。こんな判決が出されては、長年男女差別裁判をやってきた弁護士さんたちにとってはたまらない、私たちにとってもたまらないということで、いま最高裁に向けていろいろ取り組みを始めています。

フジスター事件――職務評価は同等

もうひとつは、2014年7月18日に判決が出たフジスターという小さなアパレルメーカーの裁判です。そこでも営業は男、女はデザイナーとかグレーダーというパターンを小さくしたり大きくしたりする仕事をしています。そこでは基本給にも差があるし、決定的なのは期末賞与で、営業の男性は100万円単位の期末賞与が出ます。でも成績を上げるにはいいデザインがあったからこそ売れたに違いないにもかかわらず、グレーダーとかデザイナーの女性たちは10万円単位なんですよ。賃金の格差を含めて提訴をして、職務評価もしたんですね。営業とデザイナーとかグレーダーはほとんど差がない、もしかしたら専門職の方が高いということも出たんです。

裁判所は、手当は差別を認めました。しかし基本給、一時金、期末賞与について、原告たちのいう職務評価によって判断することはひとつのやり方であるとは認めたんですが、営業よりデザイナーの方が点が高いとなるのは、原告たちの意図的なものがあるんじゃないかという感じで認めなかった。そして、どんな人にどれだけの高い一時金を払うかは企業の裁量だというような位置づけで、完全負けではなくて手当の部分は認めて50万円の慰謝料と5万円の弁護士手当ということに終わったんですね。年間200万円にもなる圧倒的な賃金格差に対してこのような判断では、全然男女差別を是正することはできません。これが司法における裁判の問題です。

非正規雇用に対する対策

非正規の雇用に関する政策では2014年4月にパート労働法が改正されて、第8条の「差別的取扱い禁止」の対象になる要件が、同じ職務であるということと、転勤など人材活用の仕組みが同じの2要件になりました。それでもこの要件を満たすパート労働者が1.5%くらいだったのが、2.1%に適用になったにすぎません。女性のパートは969万人いますから差別是正の対象になるのは30万人で、大半の女性はこの法律によっていまの格差は合理的だといわれる状況で、本当に日本のパート法も問題が多いと思います。民主党政権のときに改正労働契約法ができて、5年を超えて反復更新された場合には無期契約に転換できることになっています。実施時期から5年ですからまだ1年しか経っていないんですが、転換後の労働条件は正規雇用と同じでなくても有期の時の条件のままでいいということになっているので問題です。5年未満の雇い止めですでに問題が起きています。これが出たときにすぐ反応したのは早稲田大学の非常勤講師で、5年を上限とするという雇い止めみたいな就業規則を改正して裁判になっています。

こういう問題があって、このへんからジョブ型正社員、限定正社員の考え方も出てくるのではないかと思います。要するに、無期転換をどうしてもしなくてはならないときにどこにはめるのか。労働条件も違っていいとしているので労働条件を上げたくなければ、言ってみれば1級正社員と2級正社員というものをつくらねばならぬ。2級正社員は非正規から転換した社員、無期にはなったけれども労働条件は1級の人と同じになるなんて思ってはいけませんよ、ということだと思うんですね。

現実に郵政の職場ですでに新一般職という制度が導入されています。いまの正社員を下に落とすのはなかなか難しいので、あらたに採用する人は新一般職にだいたい入っていく。問題は、その新一般職の条件がどの程度でよいのかということです。新一般職の年収は、正確じゃないんですが上限が430万か460万かというところですね。いまの正社員だと600万とか700万になります。それだけの格差を合法化することが、現実に起こっている限定正社員です。それでも郵政の非正規の人たちが正社員になったほうがいいということはもちろんあると思います。でも1級と2級のクラスわけみたいなものになるでしょう。ジョブ型とか地域限定とかいうと、地域のその支店、その事業所、そのスーパーが、閉店すると言えば解雇がしやすくなるだろうし、そういうことが起こりうることが非常に問題だと思います。

労働契約法20条の闘いの一方で派遣法の大改悪

そういう中でも非正規で働いている人たちは一生懸命たたかっています。今年の5月、労働契約法20条(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)を根拠に、非正規雇用労働者が提訴しました。東京メトロで働くメトロコマースの4人の女性が差別の是正求めて提訴したんです。損害賠償額が4200万円くらいの非常に大きな金額なんですね。次いで郵政ユニオンの組合員でやっぱり非正規で働いている人が東京で3人、大阪で9人提訴しています。「期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止」ということがあって、今日の新聞でも、運送会社の人が再雇用になって、同じ仕事をしているのに賃金が25%カットされたのは違法だと訴えたことが出ていました。こういう提訴が増えてくるかもしれません。

再雇用制度についてもいろいろ問題があって、多くの企業で同じ仕事をしていて給与が半分とか3分の1になるとか、月給20万だとかということで、一番儲かっているのは企業じゃないかと思います。労働契約法20条の定めを今後有効に使っていければ、非正規と正規の格差を縮めていくことができるんじゃないかと思います。

民主党政権下の2012年に、こんなのでは改定しても意味がないとかいろいろ問題がありましたが、労働者の保護、日雇い派遣の原則禁止、派遣労働者の無期雇用化の努力義務、賃金等その他待遇改善を明記するという派遣労働法の改正がなされました。けれども安倍政権は、今年の通常国会でいったん廃案になった派遣労働法とまったく同じ法案を9月29日の国会開会日に上程しました。その審議が10月24日くらいから始まるかもしれません。

この大改悪の派遣法は、労働者は3年で期間を切られますが、企業は人さえ変えれば結果的に同じ仕事をずっと派遣でできるわけです。企業が本当にそれを望んでいるかどうかはわからないですが、3年ごとにころころ人が替わることがいいのかと私は疑問に思います。企業にとって派遣は使いたい放題だし、労働者にとっては3年経ったらどうなるかわからない。これまでは、いい悪いは別にして26業種であれば働き続けることはできたわけですが、それができなくなって労働者にとっては非常に困難が出てくるんじゃないか。企業にとっては自由化で万々歳という派遣法が通るかもしれない。その事が女性労働にあらたな問題を起こすことになるでしょう。

ワークライフバランスにはほど遠い

ワークライフバランスということですけれども、日本の長時間労働が世界に冠たるものとしてこれがいっこうに縮まらない。最大の理由は、均等法を作ったときに女性保護規定をそのあとに取ってしまって、女性に適用されていた週6時間、月20時間、年150時間の時間外労働の規制がなくなってしまったことです。青天井なので届けを出せば残業やり放題で、80時間とか100時間という、36協定だって労使で出しているわけです。そんな中で女性が活躍なんていっていますが、働き続けることができるのかということが問題なんです。正社員として働いたとしても62%が第1子出産前後に退職して、1995年に育児休業法が制定されても、その状況は以前と変わっていない。背景にはマタニティハラスメントがあるということで、妊娠出産を理由とする不利益処遇とか解雇だとか、正社員からパートになれとかさまざまな圧力があって働けない。このマタニティハラスメントをなんとかしろと活動を始めている女性たちがいますね。

こういう状況の中で、この「輝く」ことがどういうふうにできるのか。一部ですが育児休暇の給付金が上げられたとかぽちぽちの改定はあるんですが、正社員とか公務員で女性の83.6%が育児休暇を取っているといっても、6割の人が辞めたあとの4割の人の、83.6%です。もともとのトータルからいったらそんなに高いわけではありません。男性正社員は1.89%、13%が目標なのにも関わらず非常に少ない。また非正規労働者は取得できるのかという問題ですが、毎日新聞の東海林さんが非正規でも6割くらい取得できるデータがあると書いていました。確かにデータを見ると5割とか6割とか書いてあるけれど、どこの5割なのか、分母は何ですかということを聞かないとわからないので、東海林さんに問い合わせています。実際には、派遣だったらそれで契約は打ち切り、仮に育児休業を取ったとしても更新が来たらそれで打ち切りということになっているので、取れているとは思えないのが実際ですね。

安倍政権の女性活躍推進で男女平等はすすむのか

日本の働く女性の状況は本当にミゼラブルというか、私たちみたいな年代で大企業とか一部上場企業で働いてきちゃった人はいいけれども、いま、そしてこれから働く人は、一握りの人は大企業に入れるんでしょう。そういう人は総合職で長時間労働になって、ワークライフバランスなどは全然実現しないのが実態としてあると思います。そういう中で安倍君はなぜあんなに女性の活躍というのかよくわからないんです。あの人は国連に行っても、どこか外国に行くたびに女性の活躍、女性の活躍ってふれ回っている。あれだけふれ回れば何かやらないわけにはいけないということになって、今回女性の活躍推進法というのが出てきたんだろうと思うんです。

この安倍さんについてですが、8月30日にヌエック(国立女性教育会館)で男女平等フォーラムがあって、今年は特別講演が厚労省事務次官の村木厚子さんだったんですよ。村木さんはこ~んな分厚い資料で女性の活躍推進が求める日本社会の背景といって、いろいろなデータを分析して、基本的に少子化だから子どもを産んでもらわないと、ということなんです。そのときに彼女が言ったことは、日本の首相は一回は女性の活躍といったけれども、安倍さんはずっと言っている。こういう人は初めてだ。だからいいとか悪いとかは別にして「女性の活躍できるナントカ」をつくりたい。官僚の人たちにはそういう思いがあるんだろうなと私は思いました。

いま話題になっている2020年までに意志決定の場に女性を30%というのは、これは別に安倍が言い出したわけではありません。小泉が2003年に決めた方針です。民主党がやったわけでもない。自民党政権が10年以上前に、小泉の時に掲げた方針です。それで男女共同参画もやってきたはずなんですけれども、全然進んでこなかった。ただ安倍さんの「女性活躍推進」というのは、なぜ男女共同参画基本法があって第3次男女共同参画基本計画があって、均等法もあって――均等法は一昨年の暮れから去年にかけて改定の年で見直ししていたんですよ。そこでもっと有効になるような、ポジティブアクションを補強するとか義務化するとかをやれば、9月に国連の女性差別撤廃委員会に出した政府報告でこういう努力をしていますとか出せるのに、そこでは何もやらなかったんですね。ちょっとだけ省令とか指針を変えたけれども、何もやらなくて、突然「女性活躍」といいだした。安倍は男女「平等」はもちろん嫌だけれども、男女共同「参画」というのが嫌なんだと思うんです。だから女性の「活躍」だといっている。

せっかく男女共同参画基本計画をつくって、いいことも一杯書いてあるのになかなかその実態は進まないことが現実にあります。とりわけ「第3次男女共同参画基本計画」の基本的にやることの中に、(1)固定的性別役割分担意識をなくした男女平等な社会、(2)男女の人権が尊重され、尊厳を持って個人が生きることのできる社会、(3)男女が個性と能力を発揮することによる、多様性に富んだ活力ある社会、④男女共同参画に関して国際的な評価を得られる社会、に向けてがんばるんだ、と書いてあるんです。そういうことには全然ならないでミゼラブルな数字で、審議会に女性を3割にするということはヒットしましたが、それ以外はほとんどヒットしていない。

すべての女性が輝けるのか

その安倍が6月24日に閣議決定した「日本再興戦略 改訂 2014」で、その狙いは日本の稼ぐ力を取り戻す、要するに経済のためにやるわけです。そのための「担い手を生み出す~女性の活躍促進と働き方改革」ということを書いています。最初は「女性の活用」と言っていたんですよね。「活用って、モノじゃないよ」、「まっぴらだ」とか言われてまずいと思って、「活躍」となったんです。

女性の更なる活躍促進のために考えているのが、学童保育の充実。学童保育で働いている女性の労働条件ってすごく悪いんですよね。それから就労に中立的な税・社会保障制度等の実現。こんなこと、とっととやれば良かったと思いますけれども今頃言っている。それから働き方改革の実現ということで、働き過ぎ防止のための取り組み強化。それが何かと言えば、時間ではなく成果で評価される制度への改革。それから「多様な正社員」の普及・拡大――限定正社員とかジョブ型正社員のイメージですよね。予見可能性の高い紛争解決システムの構築。これはお金を払えば解雇ができるという、金銭解雇の法制化です。

さらには外国人材の活用、外国人材のときには「活用」って言っちゃうんですね。外国人は「活用」するものなんだ。それから都合良くオリンピックが来るから、外国人技能実習制度は3年じゃなくて5年に延ばすとか、製造業における海外子会社従業員の受入れ。特区における家事支援人材の受入れというのがあって、介護分野における外国人留学生の活用――外国人留学生は介護の現場に入れてしまえということです。いまフィリピンとかマレーシアからの若い人が介護の現場で非常に訓練しても日本語ができなくて、高学歴の人が来てもなかなか受からずに帰っていて、うまくいっていない。その分野に外国人留学生を入れてしまっています。なぜ特区における家事支援人材なのかと言えば、特区で働く女性たちは家事支援人がいないと働き続けられないのではないかと思いますよね。ということは長時間労働で子育てとか家事とかやっている暇はない、「そんなこと関係なく働きな!」と言っているかのように見えます。

ここで出てきているのが働き過ぎの防止と言うけれども、どうやって長時間労働をなくすのかが見えないですね。関連して労働政策審議会の労働条件分科会で、ひとつは裁量労働制の規定をもっとゆるめようとか、フレックスタイム制をもっと柔軟にしようとか、成果で評価するあらたな時間管理の導入を言っているんです。成果で評価されると、自分の仕事は終わった、成果を出しましたから帰ることができワークライフバランスがとれ、働きながら子育てがしやすいというんです。どうしてそう短絡的になれるのか考えられないんですが、最大のアドバルーンみたいになっています。年功とか時間ではなく成果で評価されるというんですが、いまはどの日本企業でも大概は成果主義ですよね。成果主義賃金の導入は2000年頃から始まっていて、私がいた企業でも、すべての社員は成果で評価するってなっていました。どうやって成果を測るんだよと思いますけれども、成果で評価するといってきたんです。だからといって時間が短くなるなんていうことはないし、だいたい日本の企業は仕事が定まっていないじゃないですか。他の人がやっていることも「課員」として手伝わなきゃいけないとか、チームだったらチームワークが大切と、何より尊ばれるのはチームワークなんですから。

成果主義・昭和シェル石油では

私は、組合間差別とか男女差別で裁判をしてきました。私が昇格しないのはなぜかと言えば、柚木さんは5時半とか時間になると帰ってしまう。「みなさん、ご用はありませんか」って聞かずに帰ってしまう。であるがゆえに協調性がないとかね。口答えするとか、要するに口うるさいとか言われたわけで、ここでまた協調性が効くんですよ、女の評価のときには。総合職、いわゆる男が基幹職で女が一般職で、コース別じゃないけれども資格が上がっていくときに、ここから上が基幹職でここから下が一般職になっていると女はだいたい一般職に閉じ込められていますから、男は評価のところで上位項目がすごく点数が高いんですよ。男は成果が6割だとすると、女は上位項目は4割くらいで成果は2割くらいしかない。女がどんなに成果を上げても点数の中に2割しか反映されない。それで「帰ります」といったらいけないわけですよね。御用聞きをしなくちゃいけない。中国電力と同じですよね。彼女は手伝ったと思いますけれども、そういう種類のことです。

女が何かものを言ったら協調性がない、それでマイナスになる。男が言ったら積極的で責任感があってプラスの評価になる。笑い事じゃなくて本当にそうなんです。裁判では考課表なんかが出てきたりするんですけれども、「あいつも子どももできたしそろそろ上げてやらないといけないからね」、それで女性に「だからあなたは今年昇格できない」と言うんですよ。女性だって早く昇格をさせて下さいよって言うでしょ。そうすると「あいつがいるだろう、もう年だし、子供も産まれたし上げてやらないといけないだろう。ごめんね」ということで男は上がっていくんですね。

わたしたちは裁判の中で全社員のデータをとったことがあるんですね。ふたつの裁判で出てきたのは要するに職能給制度という護送船団方式で、高卒なら高卒、大卒なら大卒で、年次で男は上がっていきます。私たちの会社では女は線が引いてあって、高卒、短大卒、補助って書いてあるんです。男とは書いていないけれども大卒、院卒、高卒って書いてある。製造部門があったので高卒技能職があって、そして二重線を引いて高卒、短大卒、補助って書いてある。女はここだということになっている。男は2年ずつある程度上がっていって、大卒なんかは28歳くらいで基幹職の方に行っちゃうわけです。でも女性は10年経っても1回上がったくらいであとはビタとも動かないという制度で、これは昭和シェル石油だけが特殊ではなくてどこでもそうやってきたと思うんですね。

それを成果主義に変えてきたけれども、なかなか成果は測れないんですよ。成果が測れない職場もあるじゃないですか。経理とかは法律に基づいて決算書をつくるのが仕事なのに勝手なことをやって成果なんか出ちゃいけないわけですからね。そういう仕事っていっぱいあって、それでも成果、成果って言うと、ろくでもない総務課長なんかが電気を消しましょうとか、馬鹿馬鹿しいことが起こるんです。日本の企業では成果を出して自分の今日の仕事は終わっても御用聞をしなくちゃいけないわけで、「ある」って言われたら帰れない。どんなに早く仕事が終わったって早く帰れないことになるだろうと思うんですね。

もうひとつ女性差別の観点からの問題があります。評価を最終的にABCDと付けるとして、Cが普通だとすると昇格年次に当たった男が去年はCだったくせに翌年Aになっちゃったりするんですよ。会社からもらったデータを分析したら、昇格させる時にはAにして、また翌年Cしちゃう。そうやって男は昇進させてきたんです。でも女はいつも、仕事ができても良くてBとC、真ん中のところで特筆すべきものもないからいつまでも昇格しないという評価によって、ずっと昇格から排除してきたのが日本の企業なんです。

成果って言っていながら、先の国会でも年収1000万円の人は残業代0ということを言っている。日本のいわゆる大企業の男だったら、40歳を過ぎたらだいたい1000万円はいきますよ。それを本人の同意にするからとか言っている。日本の企業の中で、会社の意向で「君、どうかね」と言われて断る人なんかいないとしたら、本人同意と言ってもこの「成果による」というところに追い込まれていきます。さらに、当時の田村厚生労働大臣は「私の在任中は1000万円は下げません」と言ったんですよ。もう在任していませんから1000万円という保障もない。そういう状況の中でどういうふうに活躍になるのかということが問題だと思います。

経済特区の外国人労働者・見えない非正規対策

経済特区のことでは、外国人労働者の働かせ方は一体どうなるのかということです。移住連の人たちとか労働組合などと一緒になって厚生労働省とか法務省にいろいろ聞いています。私たちは家事使用人というと、シンガポールとか香港などでメイドさんを雇うような労働をイメージしたんですが、どうもそうじゃないみたいです。日本はウサギ小屋なんだからメイドさんの部屋なんかないので、家事使用人なんて住み込みでおけるわけがないと思ったんです。けれども「そんなことはない。香港なんてバスタブとか玄関で寝ていたりするんだから」っていわれて、目が点になるほどびっくりしたんです。日本の場合は通いだけれども企業が家事派遣のようなものにする。交渉でどんな企業をイメージしているのかと聞いたら、お掃除ナントカとかみたいな、ダスキンという企業名をあげたといっていました。いま移住連なんかを中心に外国人労働者の問題を悪いものにしないようにがんばっておられるようです。まだ派遣労働としての育児と家事がどのように出るかのかわかりません。

多様な正社員とは、非正規の転換の受け皿ということになると思います。それがどういう待遇になるのかということもあります。女性の活躍推進と話されている中で、女性は6割以上が非正規だといっていますが、非正規に対する対策が見えないんですよね。審議会の中では、連合の委員もすべての女性を対象にしろといっているんですけれど、出てきた法律を見るとすべての女性とはとても考えられません。意志決定の場に3割の女性がいくためには、母数を増やさなければいけないわけで、すでに3割5分くらいしか人がいないわけですからそこからの3割ではもっとひどくなってしまう。

決定打は派遣法です。いま民主党は他の野党に一緒に反対を働きかけているようです。維新や次世代の党も嫌だといっているようですね。私たちも一生懸命がんばって労働組合も反対しているんですけれどもどうなるかわからない。派遣法の改悪がこのままもし通ったら、派遣が、誰でも、どんなところにでも使ってもいいということになります。そうしたら、いまの正規で一般職的に使われている女性たちは全部派遣に置き換えられるでしょう。そうすると女性の非正規率はもっと高くなる。私はざくっと8割以上が非正規なってしまうんじゃないかと言っています。女性は、いわゆる総合職になるエリート以外はみんな派遣になってしまうのではないかということです。

女性活躍推進法は企業の自主目標では前進しない

日本再興戦略の見直しに基づいて8月に突然、女性活躍推進法の審議が始まりました。これがまたすごいんですよ。月に3回もやっちゃってね。8月7日から9月30日まで5回の審議会で建議になりました。10月7日に法案要綱が出されて10月17日、昨日閣議決定、本日法案が出されました。上程はされていませんが法案の文章が配られているようです。月曜日には官邸のHPにアップされると思います。昨日の毎日新聞の夕刊に女性活躍法案を閣議決定という報道です。「202030」、2020年に30%という一律の目標は、実態がそうなっていませんからできないということはある面でわかるんですが、4つの必須項目、①採用者に占める女性比率、②勤続年数の男女差、③労働時間の状況、④管理職に占める女性比率というのを企業に義務づけて、その他の項目をこれから決めるんです。具体的な内容はこれからつくる「事業主行動計画策定指針」に任されます。指針はまた労働政策審議会で検討されるんですが、それがどれだけのものになるか、ということです。

流れている情報では行動計画をつくって公表を義務化するけれども、いくつつくるかは企業に選ばせるというようなことです。昨日ラジオのニュースではひとつでもいいというようなこともいわれているようなので、どの程度の有効性があるものかと思います。そしてここにも賃金がない。賃金がないと男女の格差がどうなるかがわからないわけです。ただ官庁は決めたら一応やるでしょうから、官庁はそれなりに進む可能性はあります。でも官庁は、やる気があれば今だってできるんです。問題点を分析して目標を立てて、目標に向けての行動計画を立てて、それを検証する――そういうサイクルをつなげていくことになっているんです。いってみれば女性の活躍推進法はポジティブアクション法だけに特化したもので、10年の時限立法になっています。これ自体は別に毒はないけれども、それに付随した「時間ではなく成果で測る」というものが入っています。派遣法の改悪がその脇にあり、どうなるのか、実際にこんなことができるのかということだと思います。

企業の自主目標を立てるとき、組合がしっかりしているというのは日本ではなかなか難しいです。労使で計画を立てて、組合とあわせて行動計画をつくり実施して、お互いで検証することがやれれば、少しは前進すると思うんですが、どこまでそれができるのか。多くの企業は、組合がなければなかなかできないのではないですか。

女性が輝けない非正規化の拡大と成果主義

内閣府でも厚労省でも「見える化」というデータを見られます。内閣府は東洋経済が集めているデータを元にして「見える化」といって、東洋経済に報告した企業の、賃金、年収が見えます。男女の統計があって差がわかるけれども、なぜか金のところに行くと男女差がなくなって見せない。そこを見せなければ男女の格差は縮まらないと思うんですね。男女の賃金格差は1999年まで有価証券報告書にばっちりでていました。従業員数、平均年齢、平均勤続、平均賃金、全部男女別に出ていたんです。昭和シェル石油だと男100に対して女66くらいでした。いまは出さなくなって日本の男女の賃金格差は藪の中に入ってしまった。企業はわかっているはずだからいつでもデータは取れるはずですが、なかなか出さない。一番重要なのは男女の賃金格差をどうやって出させるかだと思います。

何度も繰り返しますが、ポジティブアクションだけでは女性は輝けない。なぜなら該当するのはほんの一部で、圧倒的多数の非正規がどうなるか何もわからない。それから、成果による賃金では長時間労働はなくならないで逆に増えてしまい、不払い残業が増えるだけで労働者は貧しくなります。派遣法が改悪されれば女性の非正規がさらに進むだろうということで、どうやっても女性が輝くようにはなりません。

法律だけでは満足しないらしくて、「すべての女性が輝く社会づくり本部」を10月10日に内閣府に発足させ、「女性が輝く政策パッケージ」に基づいて13ページにわたって具体化しています。でも前からやっているようなことを書いているんじゃないの、という感じです。この政策パッケージではっきりしているのは、いついつまでに何をしますということでは時間ではなく成果で測る。そのための労働時間法制を来年の通常国会に出す。税制については26年度内に検討と書いてありますけれども、どうなるか。ワークライフバランス実現に向けたあらたな法的措置の検討といって一見さもいいようだけれども、その実やることは労働時間法制の「時間ではなく」ということで、労働基準法に該当しない労働者をいっぱいつくり出すことになっています。働く女性の処遇改善プランというのもあるのですが、具体的に何をするのか。私も初めて「均等待遇」という言葉が入ったと思ったら「均衡待遇」だったんですね。働き方を見直したい、働く女性の処遇改善プランの推進ということで、各地域においてパートタイム労働者派遣法、労働契約法の集中的な周知を実施する均衡待遇実現キャンペーンを推進する。これでどうして均衡待遇になるのかちょっとわからないんですが、一応不合理な労働条件はいけないということが労基法20条にありますので、そういうことなのかどうか。そう書いてあるだけです。

時短と女性労働の正当な評価こそ男も女も輝く

まとめですが、女性が本当に仕事も家庭もワークライフバランスを取って働くことができるという最大のポイントは、男の労働時間を短くすることです。男が家に帰ってこないんだから家事はひとりで担うしかないんですよ。12時過ぎて帰ってくるとか、朝も6時に出て行っていたら、できないんですよ。それをまず直すことです。同時にやらなければいけないのは、女性の労働の対価を公正に作り替えること。パートの賃金を上げなければいけないですよね。

いま時給1000円を実現しよう、最低賃金を1000円にともいっています。1000円だって年間1800時間働いて180万円ですよ。200万円の貧困レベルを落ちてしまう。それが掲げる目標なのかということはありますね。2000円でも360万円で、この日本で360万円で豊かな暮らしになるのか。家賃が10万円位するのに、一体いくらが妥当な賃金なのかをもっと考えなければいけない。最低でも2000円ないと。2000円が2人働きで、1800時間ないしもうちょっと少ない労働時間であれば、子どもを育てて、大学はなかなか大変かもしれないけれども学校教育を受けさせるのは可能かもしれない。でも1000円くらいでぐちゃぐちゃ言っているような状況ではどうしようもない。女も男も輝けない。

何よりも、女のこの低い賃金とかパートとか非正規を放置することは、これからさらに男もその舞台に合流していく道を開くようなものです。女は安くてもよく働くわけです。スーパーだってどこだって女性はよく働きます。だから長く働いてもらいたいという経営者の本音もあると思うんです。安く働く女がこっちにいて、男は3倍も高い人もいるから、女に変えちゃったっていいと思うんです。だとしたら、この人たちの最低の賃金を引き上げない限り男の労働だって絶対守れない。それはずっと昔から非正規の労働者をこのまま放置していたら、男の労働だってダメになると言い続けてきました。けれども日本の労働運動はなかなかそこに依拠できなくていまがあるわけで、このままいったらそれがさらに進むと思うんですよ。男も女も安すぎる労働と一握りの高い労働の人に分かれる。それで実際に日本は活力があって輝いて子どもが増えるのかといったら、絶対に子供なんか増えないことを保証してやりたいくらいです。

本当に子どもを増やしたいと国が思うのであれば、男を家に帰す、女の賃金を上げる、ちゃんと子どもと一緒にいられる、家族がいたら家族で普通に暮らせる、という社会をつくらないかぎりはあり得ないと思うんですよね。それが最大の重要なポイントで、それなくして女性が輝けることはないでしょう。

その点はこの「女性活躍推進法」に抜けていますが、村木さんではないけれど、こういうことを言い続けている人はあの人しかいないので、使えるところは使う。ここでああいうふうに言ったでしょ、すべての人が輝くんだよね、ということを安倍に突きつけながら、じゃあ私たちのことはどうしてくれるのよって言っていかないといけないと思うんですね。ポジティブアクション法は10年の立法で、どれだけ反対が出るか、野党がどういう攻め方をするのか。こういうものも入れろということで、付帯決議の中に私たちの願いを盛り込むことはもちろん大事だけれども、ポジティブアクション法ができたとしたら、それも使っていくことです。それ以外のものについても要求を突きつけていかないと、ダメだといっただけでは変わらないので、安倍がこう言っているんだからやってもらおうじゃないかと、どんどん声を上げていくことが必要だと思っています。

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【要請書】

11月18日、「秘密保護法廃止へ!実行委員会」の呼びかけに応えた100数十人の市民が正午から、国会正門前と、内閣官房秘密保護法施行準備室に対して抗議行動を行った。以下は、内閣官房に対して提出した「要請書」です。

【要請書】
内閣総理大臣 安倍晋三 様/内閣官房長官 菅義偉 様/内閣官房特定秘密保護法施行準備室 御中/内閣官房内閣情報調査室 内閣情報官 北村滋 様

秘密保護法の12月10日施行に向けた準備作業を中止し、施行延期と抜本的見直しを

8月末まで、秘密保護法施行のための施行令と政令、運用基準案がパブコメに付されました。難解な内容にもかかわらず、約2万4千の意見が提出されました。さらに、自民党総務会でも異論が噴出し、了承がいったん先送りされるという異例の事態が生じました。しかし、こうした意見がほとんど反映されないまま、10月14日に政府は同法の運用基準と政令を閣議決定しました。

さる7月31日、国連自由権規約委員会は、秘密指定には厳格な定義が必要であること、ジャーナリストや人権活動家の公益のための活動が処罰から除外されるべきことなどを日本政府に勧告しています。こうした国内外からの強い批判と懸念の声の高まりにも関わらず、政府はよりによって「世界人権デー」の12月10日に秘密保護法の施行を強行しようとしています。

秘密保護法は、次のような本質的な問題点だらけであり、私たちは、これを廃止する以外にないと考えています。

別表と運用基準を総合しても、秘密指定できる情報は極めて広範に及んでおり、恣意的な秘密指定の危険性は解消されていません。また、違法・不当な秘密指定や政府の腐敗行為、大規模な環境汚染の事実などを秘密指定してはならないことを法律に明記すべきですが、このような秘密指定を禁止する明文規定が存在しません。運用基準にこうした規定が盛り込まれたものの、本来は法自体に盛り込むべきです。

特定秘密を最終的に公開するための確実な法制度もなく、多くの特定秘密が市民の目に触れることなく廃棄される可能性があります。政府の恣意的な秘密指定を防ぐために、すべての特定秘密にアクセスでき、人事、権限、財政の面で秘密指定行政機関から完全に独立した公正な第三者機関が必要であることは国際的な常識ですが、独立公文書管理監などの制度にはこうした権限と独立性が欠けています。

スタッフの秘密指定機関へのリターンを認めないこと、すべての秘密開示のための権限を認めること、内部通報を直接受けられるようにすることなど、運用基準レベルで容易に対応できる重要なパブコメ意見が出されていたにも関わらず、修正案には取り入れられませんでした。運用基準では通報制度が作られましたが、実効性のある公益通報制度とは言えません。適性評価制度は評価対象者やその家族等のプライバシーを侵害する可能性が高く、また医療従事者などの守秘義務を侵害する可能性もあります。

刑事裁判において、証拠開示命令がなされれば、秘密指定は解除されることが逐条解説によって明らかにされましたが、証拠開示が命じられるかどうかは、裁判所の判断に委ねられています。特定秘密を被告人、弁護人に確実に提供する仕組みとはなっていません。つまり、暗黒裁判となってしまう危険性があるのです。

ジャーナリストや市民を刑事罰の対象としてはならないことは、ツワネ原則にも明記されており、国連自由権規約委員会からも指摘を受けましたが、法は公務員以外の第三者を対象とした特定取得行為の処罰を規定しています。

現在、衆議院の解散総選挙が行われようとしています。国会の監視機関も機能していない衆議院の解散中に法を施行することは暴挙以外のなにものでもありません。私たちは、秘密保護法の施行に向けた準備作業をただちに中止するとともに、12月10日の施行を延期し、法律と運用基準の抜本的見直し作業にこそ着手するよう求めます。
2014年11月18日
「秘密保護法」廃止へ!実行委員会

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