活動報告

国際シンポジウム 「平和の海を求めて――東アジアと領土問題」

【趣意書】

「尖閣」「竹島」の領土問題をめぐる日本と中国・台湾、また韓国との対立は、根深い歴史問題を背景に、双方のナショナリズムを引き起こし、突発的な事態が発生する恐れすらでています。とりわけ尖閣諸島(中国名・釣魚島、台湾名・釣魚台)の周辺では、公船の対峙や航空機の接近、レーダー照射問題など、緊張がエスカレートしています。竹島(韓国名・独島)についても、状況の打開は容易ではありません。

日中関係は政府間のハイレベル対話や交流がストップし、国交正常化以来、最悪の事態に陥りました。民間レベルでも、メディアを通して高まる「領土ナショナリズム 」が、相互作用によって炎上する悪循環を招いています。相互依存が深まる経済関係をはじめ、環境、エネルギーなど、国境を超えた共通の取り組みが重要度を増していると誰もが理解しているにもかかわらず、この悪循環から抜け出せないのは、この地域に相互の信頼が培われていないからです。誰も近づけない、そのままでは「ゼロ以下の価値」の島を、どのように地域全体にとって有益な島へと変えていくか、私たち生活者(市民) の知恵と行動が問われています。

私たちは、同じ東アジア地域に生きる者として、領土ナショナリズムを引き起こす悪循環を一日も早く止め、平和的な対話による問題解決に向かうよう、互いに努力をしなければなりません。そのために、まずは日・中・韓・沖・台の国・地域の市民・知識人が対話の広場に集うことを提案します。「争いの海」を「平和の海」に変え、和解と共生の東アジアを創りあげるために、ぜひ英知を出し合いましょう。

【主催】
「国際シンポジウム 平和の海を求めて――東アジアと領土問題」実行委員会

【後援】
庭野平和財団、伊藤塾

【日時】
2013年7月7日(日)

【場所】
日本青年館国際ホール

国際シンポジウム 「平和の海を求めて――東アジアと領土問題」
プログラム

09:30   開会
(総合司会 及川淳子)
挨拶:河野洋平
◆第1セッション:「なぜいま領土問題なのか」
座長:高井潔司(桜美林大学教授)

09:50 基調報告
(日本)岡本厚
(中国)馬立誠
(韓国)金泳鎬

10:35 討論
報告 (台湾)陳宜中
(沖縄)比屋根照夫
(中国)王鍵

12:00 昼食(45分)
◆第2セッション 「日中関係をどう打開するか」
座長:加藤千洋(同志社大学大学院教授)

12:45 基調講演 丹羽宇一郎
13:15 討論
報告(中国)劉江永
(中国)呉寄南

14:45 休憩(15分)

◆第3セッション 「日韓関係」
座長:李鍾元(早稲田大学大学院教授)
14:05 報告(日本)東郷和彦
(韓国)曺 喜?

◆第4セッション 「まとめ 平和の海への英知」
総括座長:朱建榮(東洋学園大学教授)

16:30 座長報告 (各5分)
総括 朱建榮

17:00    主催者総括  岡本厚

記者会見   司会 朱建榮

閉会    (総合司会 及川淳子)

7・7シンポ・主催者の総括

2013年7月7日

(1)私たち(日・中・韓・沖・台の市民)は今日、7月7日――奇しくも日中が全面戦争に入った1937年の盧溝橋事件の起きた日――に、東京に集い、近年東アジア地域で深刻な問題となっている(日中、日韓間の)「領土」問題について、直接に顔を合わせ、膝を突き合わせて議論をしました。

(2)その上で、まず第1に確認されたのは、どの国も決して武力(実力)によって現状を変えようとしてはならない、ということです。武力(実力)の行使は、それがどんなに限定的なものであれ、東アジア地域の未来に巨きな禍根を残します。

(3)第2に確認されたのは、それぞれの紛争当事国は、「領土」について争いが存在していることを認め、相手国と平和的な対話を始めなければならない、ということです。対話の中身がもちろん大切ですが、いまはまず、対話をする姿勢が何より大切です。

(4)第3に確認されたのは、争いが生じている海は、周辺の人々の生活の海であり、生産の場である、ということです。そこに暮らす人々は、争いや衝突を望んでいません。

(5)第4に確認されたのは、メディアが果たす役割の大きさです。どの国のメディアも、この種の問題が起きると国民世論を煽り、ナショナリズムを掻き立てようとします。それは相手国国民への憎悪を助長し、政府の理性的な選択を妨げ、不幸な結果をもたらします。メディアは常に自らの役割を認識し、理性的、抑制的な報道を心がける必要があります。

(6)第5に確認されたのは、こうした紛争における民間(市民)の役割の重要さです。「領土」問題は主権の問題であり、政府は妥協することが難しい。面子もあり、国民からは「弱腰」を非難する声があって、政府が相手政府と対話することや妥協することをさらに困難にしています。それに比べ、民間(市民)は自由な立場で、自由に発想し、交流し、対話し、議論することができます。それはナショナリズムに凝固しがちな国論を和らげ、衝突を避ける様々な回路をつくり、政府の決定をより柔軟にすることに寄与できるでしょう。

(7)それだけではほとんど何の価値もない、小さな島(岩)の領有を争い、傷つけあうのではなく、東アジア地域の大局を見つめ、冷静に対話し、互いに尊敬し、「平和の海」を作り上げることに全力を尽くすことを、本シンポジウムとして確認しました。

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