糸井玲子(日本キリスト教協議会)
今、宗教者にとって命をかけた大切な信教の自由が奪われようとしています。憲法調査会報告と自民党新憲法草案に20条の政教分離の見直しが述べられております。また皇室の宮中祭祀、これは天皇が代々の天皇霊を祀ってある宮中の3つの神社のお祭りを主宰する天皇の仕事です。これを公的行為に位置づけるとあります。あの戦争中、国家神道がすべての宗教の上位に格別に位置づけられて、牧師たちは憲兵に引っ張られて、現人神である天皇とキリスト教の神とどちらが本当の神かと尋問され、キリストと答えた牧師は拷問され獄死した方もいます。国民は神である天皇と国のために人を殺し殺されました。その深い反省にたって20条がうまれたのです。
民主党の創憲案、ここに「一神教的な唯一の正義をふりかざすのではなく、日本社会に根づいている多神教的な価値を生かし」とあります。キリスト者は唯一の神を信じるがゆえに、仏教徒の仏様を信じ、イスラム教徒がその神様を信じる信仰を理解し、尊敬します。ですから私たちは、教派を超えて宗教者がともに「殺してはならない」と改憲阻止をたたかっています。さらに民主党案には、「新しい国家追悼施設の建設、整備をすすめ、靖国参拝問題を終焉させる」とあります。私たち一人一人にとって大切な死を国家が評価したり、選別したりすることは許しません。
いま、9条をかえ、戦争する国をつくるということは、戦死者を予定しています。国家が戦争に向かうとき、人の心に介入してきます。憲法20条は無神論の方がたにとっても大切です。9条と一体の20条、信教の自由を守ってごいっしょに平和の実現をめざして進みましょう。