糀谷 陽子
私は、有事法制反対とともに、教育基本法改悪反対の運動に立ち上がりましょう、ということを訴えます。
なぜなら、教育基本法改悪のねらいは、有事法制をささえ、推進する国民づくりにあるからです。そして、教育基本法改悪はまだ国会に出されていないにもかかわらず、それと同じことが学校現場でおこっていると考えるからです。
一つは、教育活動をすすめるのに必要な教員の権限を取り上げて、上からの命令どおりに教員を動かそうとしていることです。端的な例が昨年の教科書採択です。危ない教科書こそ採択されなかったものの、教員の意見が無視された地域がたくさんありました。この四月、新しい教科書が使われてから、たくさんの怒りが広がっています。"国語の教科書、実用作文ばかりで、子どもたちにものごとをしっかりと考えさせる、そういう教材が一つもない、どうして私たちが選んだ教科書を採択してくれなかったの"と。私も中学校の教員ですが、私たちは自分の好き勝手に指導したいから教師の自主的権限を言っているのではありません。どの子にもしっかりとした力をつけるために、どんな教材を使ってどう指導すればいいのか、教室に入るギリギリまで考え抜いて子どもたちの前に立ちたいから必要だと考えるのです。ところが、そんなものは認めない。上から言われたように子どもを指導しろ、という攻撃が強まっています。
二つ目は、そうやって教員を命令どおり動かして行われる新しい教育の中身です。四月から実施されている新しい指導要領は、すべての教育活動の目標を愛国心教育の別名である「すすんでこの国の発展につとめる主体性のある日本人の育成」においています。一九五八年、三回目の指導要領に「日の丸・君が代」が持ち込まれてから四十四年、ついに愛国心教育が学校教育全体の目標にすえられてしまいました。
こうした中で、今年は侵略戦争を美化する高校の教科書が検定合格し、採択に付されることになってしまいました。また、子どもの学力低下が心配されています。しかし、この指導要領の元をつくった方は、"みんなが解る必要はない。ごく一部のリーダー以外は実直な精神だけを養ってもらえばいい"と言ったそうです。これは国民一人ひとりが主人公という民主主義の思想を根本から否定するものです。
一昨年、私もコスタリカを訪問しました。その時、さきほどのバルガス弁護士はこう言われました。"コスタリカでいちばん大事なものは市民の力です。私たちは市民の力で軍隊を廃止し、市民の力で死刑を廃止し、市民の力で社会保障を充実させてきました。その市民の力を育てるのが教育です"と言われました。それは、憲法の理想を実現する力は根本において教育の力にまつべきものであるとし、どの子にも人間として、主権者として確かな力を育てると定めた日本の教育基本法と共通する思想だと思います。
いま必要なのは、教育基本法にもとづく教育をすすめることではないでしょうか。ごいっしょにがんばりましょう。