小川 義伸
私たち平和をつくりだす宗教者ネットは、今年になって活動をはじめました。戦争をできる法案がつぎからつぎへ出されてきて、憲法がなし崩しになっている。たんに憲法が壊されるだけではなくて、世界のすべての命が破壊される。こういう事態にたいして宗教者は黙っていることはできない、ということで、積極的に平和をつくりだそうと、宗教の垣根を越えて、平和をつくりだす運動としてこのネットが始まりました。まだ、産声をあげたばかりですけれども、みなさんと一緒に憲法を守り、平和をつくりだしていく、そういう社会のために、私たちもいっしょに歩んでいきたいと願っております。
さて、四月十六日に有事法制が閣議決定されました直後の四月二一日、小泉首相は靖国神社に突然参拝しました。憲法を第一に守らなければならない首相が、憲法に定められている信教の自由、政教分離の原則を侵して靖国神社に参拝をした。このことを、私たちは非常に危惧して、いろいろと抗議の声をあげました。
なぜ、首相が靖国神社参拝にこだわらなければならないのか。それは、靖国神社が戦争で亡くなった方をお祀りするたんなる宗教施設というだけではなくて、戦争と密接した軍事的な宗教施設だったからです。そして、政府はさらに、その過去的なものを現在に再び登場させようとしているからであります。靖国神社には、戦争で亡くなった方が祀られています。そこに国家の代表者である首相が参拝するということは、戦争を肯定することであります。戦争を肯定するばかりでなく、戦争で死ぬこと、また戦争によって人を殺すこと、殺させることを宗教的に肯定する、あるいは、そのように生き方を私たちに求めることでありまして、それはたんに兵士たちだけでなく、私たち一人ひとりに国家が戦争を強要する、そういうものであります。
有事法制は法制度として私たちに戦争を強制するものでありますし、靖国神社参拝は、私たちの良心に、信じる自由という心の内面に国家が介入して戦争を強要しようとするものであります。
私たちは、人が人を殺す、あるいは殺させる、あるいは自らが死ぬことをとおしては絶対に平和はつくりだせない。平和は戦争にはよらない、そのことを固く信じて、平和をつくりだすために皆さんといっしょに行動していきたいと思います。