2016参院選 衆院憲法審、開催せず 自民、改憲争点化回避か 今国会

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2016参院選 衆院憲法審、開催せず 自民、改憲争点化回避か 今国会

毎日新聞2016年5月14日 東京朝刊

 自民党は衆院憲法審査会(保岡興治会長)の今国会中の開催を見送る方針を決めた。安倍晋三首相は夏の参院選で、改憲勢力が参院の3分の2以上を占めることに期待するが、党側は選挙前の改憲論議を避けたいのが本音。国会が改憲案を発議できるようになるかが問われる参院選にもかかわらず、争点隠しの姿勢が際立っている。【飼手勇介】

 谷垣禎一幹事長は12日、党本部で保岡氏から「参院選前に(各会派の意見を)集約するのは簡単ではない。参院選後に仕切り直したい」と説明を受け、了承した。

 自民党にとって誤算だったのは昨年6月の審査会。同党推薦を含む参考人3人の憲法学者が当時審議中の安全保障関連法案を「憲法違反」と指摘し、世論の批判が高まった。これに懲りた与党は、地方公聴会の報告を受けた9月25日の会合を最後に審査会を開いていない。このときはわずか数分間の審議だった。

 在任中の改憲に意欲を示す首相は「どの条文から改正するか、憲法審査会の議論が収れんすることを期待している」と国会の議論を促してきた。しかし、参院選が近づくにつれ先送りムードが自民党を支配した。ある幹部は「審査会は与野党の政治的な駆け引きの場にしないという方針だったのに、安保法制の議論で民主党が破った」と批判するが、世論を刺激したくないという自民党の思惑も透ける。結局、首相や同党がどんな改憲を目指しているのか有権者に見えないまま参院選を迎えることになりそうだ。

 参院憲法審査会(柳本卓治会長)も停滞している。「2院制」をテーマに5カ月ぶりに開かれた2月の会合で、自民党の丸山和也参院議員がオバマ米大統領について「米国は黒人が大統領になっている。黒人の血を引く。これは奴隷ですよ」と発言。審査会は議事録から削除しようとしたが、丸山氏が反省していないことなどを理由に野党が難色を示し、削除決定まで3カ月かかった。自民党は会期中の審議再開を検討しているが、めどは立っていない。

 自民党憲法改正推進本部は昨年10月、党内論議を主導してきた船田元(はじめ)前本部長が衆院憲法審査会を混乱させた責任を問う形で「更迭」された。後任本部長の森英介元法相のもと、毎月1回のペースで有識者からヒアリングしているが、参院選前は26日で終了。主要メンバーの一人は「国会閉会中はなかなか集まれない」と語り、改正項目の絞り込みは選挙後になる見通しだ。

国会は憲法論議に及び腰だった

2015年

 6月 4日 衆院憲法審査会で自民党推薦を含む3人の憲法学者が安全保障関連法案(当時)を「憲法違反」と指摘

   15日 同審査会の地方公聴会(高知市)

 9月 7日 参院憲法審査会で2院制のあり方を議論

   25日 衆院憲法審査会。以後、開かれず

10月23日 自民党憲法改正推進本部長が船田元氏から森英介氏に

2016年

 1月 4日 通常国会召集

 2月16日 自民党が同推進本部を約8カ月ぶりに開催

   17日 参院憲法審査会で自民党の丸山和也参院議員がオバマ米大統領を「奴隷」と発言。以後、開かれず

 5月11日 同審査会が丸山発言の議事録削除を決定