http://www.kobe-np.co.jp/column/shasetsu/201311/0006483492.shtml
神戸新聞社説??? 国民投票法修正/ちゃぶ台返しを許すのか
憲法改正の手続きを定めた国民投票法の改正案をめぐり、巨大与党の危うさが表面化してきた。
自民党の憲法改正推進本部が、投票年齢を当面「20歳以上」に据え置く修正案を了承した。公明党と合意した「18歳以上」の転換である。
自民党が党内保守派の異論を抑えきれなかったためだ。公明党にしてみれば、安倍晋三首相の改憲への熱意に押されて協議を進めた面がある。「自民党はどうなっているのか」と反発を強めるのは当然だろう。
投票年齢は国民投票の「有権者」を確定する制度の根幹である。2007年に成立した国民投票法の本則には18歳以上と明記されており、自民党も賛成した。修正案は積み重ねた議論を振り出しに戻すことになり、混乱は避けられない。
憲法改正の手続きはできるだけ幅広い合意の下で決める必要がある。公務員の政治活動の制限緩和▽国民投票の対象拡大など、年齢確定以外の「宿題」もある。今国会での提出は見送り、議論をし直すべきだ。
国民投票法は付則で、10年の法施行までに民法の成人年齢や公選法の選挙権年齢も合わせて18歳以上に引き下げるよう求めた。それが実現するまでは国民投票年齢も20歳以上に据え置くとした。
その後も民法や公選法の見直しは手付かずのままだ。安倍政権が改憲を目指すなら、付則が求める法的条件を整え、18歳以上による国民投票制度を完成させる努力が先だろう。
ところが、修正案は「民法の成人年齢と食い違う」などとして年齢引き下げに反発する保守派の主張が通った。党内調整を優先させて法整備の努力を怠り、手っ取り早く改憲のレールを敷こうとしていると疑われても仕方がない。
「18歳は精神的に未成熟で、正しい判断は難しい」との慎重論もある。だが、先進国では18歳成人が主流だ。少子高齢化が進む日本では若い世代の意思を広くくみ上げ、政治に反映する重要性が増している。自立を促す教育の在り方を探るのも政治の役割ではないか。
気になるのは、この問題以外にも保守派の強硬姿勢で与党が調整に手間取る場面が目につくことだ。
過去の経緯や政党間の合意を無視した「ちゃぶ台返し」が続けば、巨大与党の意思決定に疑問符がつく。くれぐれも自戒すべきだ。