5月29日、参議院憲法審査会は「新しい人権」の議論

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この日は市民連絡会の傍聴申し込みは13人。衆参と毎週では傍聴も疲れ、十分に対応しきれない。

5月29日(水)午後、参議院憲法審査会。テーマは「新しい人権について」、参考人を招いて、質疑。参考人は高橋和之(明治大学法科大学院教授)、土井真一(京都大学大学院法学研究科教授)。

冒頭に参議院憲法審査会の清野事務局長が、参議院憲法調査会での「新しい人権についての調査報告書のまとめ」を報告し、その後、2人の参考人から各15分ずつの報告(高橋氏「人権総論の基本的考え方」、土井氏「新しい人権(基本的人権全般)」)の後、各委員から10人ほどの自由質疑があった。

清野事務局長の報告は、憲法調査会では「新しい人権については、憲法の保障を及ぼすべき」という点でおおむね共通認識があった。趨勢としては自公民3党の共通意見では新しい人権(プライバシー権、環境権)を憲法上、明記すべきという意見だったが、他の党からは13条、25条などの包括的規定から読み取るべきで、改憲の必要なしという意見があった。知る権利、自己決定権、生命倫理、知的財産権、犯罪被害者の権利などは憲法に明記すべきと言う意見があったが、趨勢とはならなかった、という報告があった。

2人の参考人からは立憲主義について説明があり、とくに「個人の尊重」規定の重要性が強調された。新しい人権については、憲法に書くかどうかの話は、徹底して立法措置で対応努力した後の話であり、そのうえで「書き込むべき新しい人権はないだろう」(高橋)、「書き加えることがでてくるなら検討すべき」(土井)という意見だった。なんとなく、憲法審査会の改憲派の立場を考えた遠慮がちな発言に聞こえたのは、筆者の深読みしすぎだろうか。

委員の質疑では井上哲士委員(共産)が安倍首相や自民党などにある「立憲主義は古い時代のもの」についての批判がだされ、参考人からは「権力制限規範の点に於いてはかつても、今も同じ」という指摘があった。福島瑞穂委員(社民)からは自民党改憲草案の「99条に国民の憲法尊重擁護義務をいれたり、基本的人権の制限にはしる動き」への批判があり、高橋氏からは「現行99条は立憲主義にかなったものだ」との意見があった。桝添要一委員(改革)からは「自分が関わった自民党の2005年草案では『個人』としていたのに、2012年案では『人』となっているのは正しくない。感情論で『人』としているのではないか」と当時自民党改憲案作成の事務局長を務めていた桝添氏ならではの批判があった。高橋委員は欧州では「人間の尊厳」と書くが、日本は「全体と個人の歴史問題がある。個人という表現には意味がある」と指摘した。

これらに片山さつき委員(自民)が「自民案は前文に基本的人権の保障をいれたように、人権を尊重している。また『公の秩序』をいれたことは反社会的行為を取り締まろうとする意図など持っていない」と反論した。

高橋氏は「表現を変えた意味がはっきりしないと議論にならない」と指摘した。

次回は6月5日に小林節慶応大学教授らを招いて、96条などの議論がある。

明日の衆院憲法審査会は幹事懇談会のみ。読売の報道で流れているように自民党は「3つの宿題」をやりたい意向。